次世代型mRNA創薬の実用化に向けた名古屋大学発スタートアップCrafton Biotechnology設立

次世代型mRNA創薬の実用化に向けた名古屋大学発スタートアップCrafton Biotechnology設立

名古屋大学は3月18日、メッセンジャーRNA(mRNA)の製造、分子設計・医学に関する知見、AI、データサイエンス、シンセティックバイオロジー(合成生物学)などの最先端技術を融合し、次世代型mRNA創薬を目指す名古屋大学発スタートアップCrafton Biotechnology(クラフトンバイオロジー)を3月1日に設立したと発表した。国産mRNAワクチンの速やかな供給をはじめ、がんや遺伝子病の治療、再生医療にも応用されるmRNA創薬に取り組むという。

Crafton Biotechnologyは、名古屋大学、京都府立医科大学、早稲田大学、理化学研究所、横浜市立大学の共同研究を実用化することを目的に設立された。10年以上にわたりmRNAワクチンと医薬品の開発に取り組んできた名古屋大学大学院理学研究科の阿部洋教授と京都府立医科大学大学院医学研究科医系化学の内田智士准教授らが、AI、データサイエンスを専門とする早稲田大学の浜田道昭教授、シンセティックバイオロジーを専門とし進化分子工学の手法を採り入れた次世代mRNAの製造法と設計法を開発する理化学研究所の清水義宏チームリーダー、さらに、副反応の少ないmRNAワクチンの開発を進める京都府立医科大学大学院医学研究科麻酔科学の佐和貞治教授と横浜市立大学眼科学の柳靖雄教授らが連携し、「強固なベンチャーエコシステム」を構築するという。そのとりまとめを行うのが、代表取締役を務める名古屋大学大学院理学研究科の金承鶴特任教授。そのほか、安倍洋教授が最高科学責任者、内田智士准教授が最高医療責任者に就任した。名古屋大学インキュベーション施設に拠点を置き、各研究機関の技術をライセンス化して一元的に集約。mRNA技術の事業基盤を確立し開発を促進する。

同社は数年以内に国内でmRNAを製造できる体制を整備し、安定供給を目指す。また独自の創薬技術を整備して、新型コロナウイルスに限らず、感染症のパンデミック時に独自開発したmRNAワクチンの迅速な供給を可能にすると話す。また、治療技術の海外依存度が大変に高くなっている現在、医薬品産業における日本の国際競争力を高める上で非常に重要な「ワクチンを超えた医薬品としてのmRNAの応用」として、がんや遺伝性疾患、再生医療への応用にも取り組むとしている。

「デスクレス」ワーカーを対象とした企業向け学習プラットフォームの拡大に向けて英EduMeが約23億円調達

B2B市場で新たなチャンスを狙うテック企業が注目を寄せる「デスクレス」ワーカー。2022年1月、この分野を対象としたeラーニングツールのスタートアップが成長を促進するための資金調達ラウンドを発表した。

ロンドン発のEduMe(エジュミー)は、急成長中のテック企業やさまざまな場所から働く従業員やパートナーを抱える企業を対象に、企業が自由に構築できるオンライントレーニングや教育を「マイクロラーニング」モジュール形式で提供するスタートアップだ。今回のシリーズBラウンドで2000万ドル(約22億9000万円)を調達した同社は、これまで一定の成長を遂げてきた米国でのさらなる事業拡大を図るためにこの資金を活用する予定だという。

今回のラウンドはWorkday(ワークデイ)の戦略的投資部門であるWorkday Ventures(ワークデイ・ベンチャーズ)とProsus(プロサス)が共同でリードしており、EduMeのシリーズAをリードしたValo Ventures(ヴァロ・ベンチャーズ)も参加している。HRプラットフォームであるWorkdayによる投資は、企業内学習やデスクレスワーカーをターゲットにした取り組みを同社が検討しているということの表れでもあるため(どちらも同社の現在のプラットフォームにとって最適な補足要素である)非常に興味深く、また将来M&Aにつながる可能性もなきにしもあらずである。一方EduMeは、IT分野でeラーニングをより使いやすくすることができれば、そこに成長のチャンスがあると踏んでいる。

EduMeのCEO兼創設者であるJacob Waern(ジェイコブ・ワーン)氏はインタビュー中で次のように話している。「デスクレスワーカーへのサービス提供方法のエコシステムが変化しています。アプリを10個持つのは邪魔なので、CRMプラットフォームなどと統合し、従業員が簡単に繋がれるコンテンツを提供したいと考えています」。

EduMeへの投資の他にもProsusは複数のEdTech企業に注力しており、同じく1月に同社は若い消費者ユーザーをターゲットとするオンライン家庭教師プラットフォーム、GoStudent(ゴースチューデント)の大規模ラウンドを主導すると発表した。

かつては敬遠されていたものの、今や主流となったデスクレスワーカー市場への着目は、EduMe自身のDNAを反映している。

もともとは新興国(現在はラテンアメリカ、当時はラテンアメリカとアフリカ)を中心に事業を展開する通信事業者、Millicom(ミリコム)により、通信事業者の顧客層にeラーニングを提供する目的で始まったのが同サービスだ。当時Millicomに在籍し、同サービスを構築したワーン氏は、同サービスが消費者や個人事業主ではなく企業に最も支持されていることを知り、先進国も含めたより広い市場でこの機会を倍増させるために事業のスピンアウトを決行した(EduMeはMillicomからの出資を受けていないとワーン氏は話している)。

急速に規模を拡大し、多様なチームとのコミュニケーション方法を必要としていたライドシェアリングや宅配業者などの業種を初期ユーザーとして見いだした同社。その後、物流、モバイルネットワーク事業者、小売、接客業、ヘルスケアなどの企業にも導入が進められ、現在では、Gopuff(ゴーパフ)、Deliveroo(デリバルー)、Deloitte(デロイト)、Uber(ウーバー)、Vodafone(ボーダフォン)など、約60社のグローバルな顧客を有している。EduMeは、総ユーザー数、使用されている学習モジュール、その他の指標を公開しておらず、評価額についても触れていない。

同社の成長の影には、B2Bのテクノロジー市場における一大トレンドが存在する。デスクレスワーカーは従来、いわゆるナレッジワーカー層に隠れ無視されてきた。1日中パソコンに向かっているナレッジワーカーは、オンライン学習ツールを購入して使用するターゲットとしてあまりにも明白だったからだ。簡単に言えば、こういったユーザーを対象に製品を開発し、販売する方がはるかに簡単だったのだ。

それがここ数年で大きく変わることになる。最も重要なのは、モバイルテクノロジーとクラウドコンピューティングの進歩によってこの進化が促進されたという事実だ。ナレッジワーカーもそうでない人も、今では誰もがスマートフォンを使って仕事をし、より高速な無線ネットワークを利用して小さな画面での利用を想定したアプリケーションを外出先で利用している。

そして最近、その変化を加速させたのが新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックだ。リモートワークが当たり前になったことで、より多くの人に向けたソリューションが民主化されるようになった。ワーン氏によると、現在世界の労働人口の約80%がデスクレスと推定されているという。

リモートワークの台頭が拍車をかけたのはそれだけでない。物理的な共通スペースでともに仕事をすることができなくなったため、オンライン学習ツールは、企業がチームとコミュニケーションをとったり、トレーニング、オンボーディングや専門的能力の開発に利用したりするための、最も重要かつ中心的な存在となった。

このトレンドの成長は非常に大きなビジネスへと変革しており、2020年の企業内学習関連の市場は、2500億ドル(約28兆6211億円)と推定されている。パンデミックの他、ビジネスや消費者の長期的な習慣の変化がもたらす成長の加速により、2026年には4580億ドル(約52兆4247億円)近くにまで膨れ上がる見込みだという。

リモートワーカーおよびデスクレスワーカーに焦点を当てているという点が、現在の市場におけるEduMe独自のセールスポイントだと同社は考えているようだが、実際はこの分野唯一のプレイヤーと呼ぶには程遠く、激しい競争に直面することになるだろう。企業内学習を促進するために多額の資金を調達したスタートアップには、360Learning(360ラーニング)LearnUpon(ラーンアポン)Go1(ゴーワン)Attensi(アテンシ)などがあり、さらにLinkedIn(リンクトイン)もこの分野に大きな関心を持っている。

「パンデミックによって私たちの働き方は、想像もつかないほどの変化を遂げました。それにともない、従来のようなデスクを持たない従業員を多く持つ急成長中の業界をサポートする必要性は高まる一方です」。Workday Ventures のマネージングディレクター兼代表の Mark Peek (マーク・ピーク)氏は声明中でこう伝えている。「EduMeの革新的なトレーニング・学習プラットフォームは、拡大し続けるデスクレスワーカーに対応しながら、組織が変化を乗り越えて成長するのを支援しており、弊社が EduMe をサポートする理由はそこにあるのです」。

画像クレジット:Smith Collection/Gado/Getty Images / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

パンデミック後の世界で折りたたみスマホは成功するか?アナリストはその継続的な成長を予測する

先週Samsung(サムスン)はNoteを永遠に葬ってしまった。それは象徴的な行為だった。なんと言ってもスマートフォンは、同社のGalaxy S系列の最先端であり続けるだろう。でもそれは、10年続いたブランドの終わりを表している。それはまた、フォルダブルへの自信を示す機会の1つでもあり、Noteからモバイルのフラグシップの王座を奪うことでもあった。

出だしでさまざまなつまずきを経験したにもかかわらず、Samsungは折りたたみ式スマートフォンという技術の先導者だ。同じぐらい長い企業は他にもいるが、先鞭をつけたのはこの韓国のハードウェア大手であり、同社はモバイルの未来と信ずるこのカテゴリーに他社よりずっと多い投資をしているらしい。

Samsungは少し前に、フォルダブルの市場はニッチより大きいと宣言した。私がSamsungの経営者だったら、やはりそう言っただろう。市場全体の一部として考えても、答はやはり「イエス」だ。まず、それは依然として、大企業とはいえ1つの企業の領域であり、しかもその企業の全台数の小さなパーセンテージにすぎない。

いろいろなアナリスト企業が過去数年間、このカテゴリーの成長を予測しているが、最近のCanalysの予想は、過去にあまり見たことも聞いたこともない、おもしろい視点を提供している。すなわちそれは「パンデミックはこのカテゴリーの成長に貢献するか」という問いだ。

確かにそれは、ちょっとわかりづらい視点だ。そもそも、パンデミックはこれまでも、スマートフォンに負の影響を与えているではないか。理由はいくつかある。まず、誰にとっても明らかなのは、人びとがあまり出かけなくなっているので、新しいスマートフォンなんかいらない。休業で職を失い、可処分所得が減り、しかも前からスマートフォンは更新サイクルが遅くなり価格が高くなっている。もっと最近では、半導体の不足とサプライチェーンの問題が業界を押さえつけている。

人びとが電子製品にお金を投じる機会といえば、家で仕事をするためのPCの購入ぐらいだ。でもこの曇り空が晴れ渡ったら、これらの反対を見ることになるのだろうか?

CanalysのRunar Bjørhovde(ルナー・ビョーロフデ)氏は、プレスリリースで次のように述べている。「フォルダブルの今後の成長の契機は、パンデミックの間に、多くの人びとが画面の大きいデバイスを使い始めていることだ。消費者は、自分が日常使うモバイルデバイスに、絶えずもっと良いユーザー体験を求め続けている。特に生産性とエンタープライズの方面では、欲求のバーがさらに高くなり、大きな画面を求めている。だからパンデミックの回復とともに、消費者のニーズと欲求を満たすフォルダブルスマートフォンのような製品を提供する新たな機会が、スマートフォンのベンダーに訪れる」。

これはおもしろい理屈だが、はたして人びとは、パンデミックの前に比べて大型画面のデバイスにもっとなじんでいるのだろうか?この疑問に対し、人びとは家を出なくなっているのに、スマートフォンを使う機会は増えている、と反論できるかもしれない。

1月に公表されたオーストラリアの研究者たちの報告によると「この悪質なウイルスの地域社会への伝染を防ぐために多くの国がロックダウンを課し、それにより私たちの日常生活が変わっている。ステイ・ホームやワーク・アト・ホームが、もっとも有効な感染予防措置として、個人のレベルとコミュニティのレベルの両方で、世界中で推奨されている。この自己隔離が人びとをますますスマートフォンに向かわせ、それにより互いの接続を維持しようとしている」という。

現時点では、フォルダブルの台数が増え続けていることに疑問の余地はない。Canalysは具体的な数字を挙げて、2021年には890万台のフォルダブルが出荷され、2024年には3000万台を超えると予想している。これまでの需要の停滞への反作用として、パンデミックがこれらの数字に寄与するのではないか。パンデミックでアップグレードが2年遅れ、サプライチェーンの問題もあり、新しいハンドセットを買う気になっている消費者が増えていて、しかも少々高い機種を買うのではないか。

Canalysのもう1人のアナリストによると、高級機の売上減少がメーカーを刺激してハイエンドのイノベーションを推し進めた、という。Toby Zhu(トビー・ズー)氏は次のように主張する。「Androidのベンダーは高級機の分野で大きなプレッシャーに圧されている。800ドル(約9万2000円)以上のスマートフォンが2019年には18%下落し、その間にiOSは68%伸びたからです。Googleと主なAndroidデバイスのベンダーは、製品の差別化と最先端のユーザー体験に重点投資して、ハイエンドの顧客へのアピールを続ける必要があります」。

そんな中でSamsungがある程度成功していることが、一気にフォルダブルのダムの水門を開いた。最も顕著な例であるOppoは、Find Nが初期から好評で「フォルダブルの正しい姿」という褒め言葉を、あちこちからもらった。それは、Motorolaなどによる初期のフォルダブルとは極端に違う設計だ。私の場合は、2021年のGalaxy Z Flipが、フォルダブルを本気で検討する気になった最初の機種だ。そのフォームファクタはGalaxy Foldより扱いやすく、お値段も安い。

Googleなどがもっと投資をして、フォームファクタの選択肢の幅を広げれば、関心を持つ人が増えるだろう。デバイスの生産量が増えれば、コストも下がる。ただし上記2024年の予測である3000万台は、Counterpoint Researchによると2021年に13億9000万台と言われる、スマートフォン全体の出荷量の中ではバケツの中の水一滴だ。

こんな話でいつも大きな疑問符になるのが、Apple(アップル)だ。何年も前から、折りたたみ式iPhoneの噂はあるし、発売は早くて2023年とも言われている。それらの噂によると、今は生産の問題を解決中であり、市販されるのかどうかも未定だそうだ。しかし初期のフォルダブルたちが辿った道を見れば、慎重になるのも当然だ。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

レトロなアーケードでゲームを楽しめるハイブリッドな没入型プラットフォームをPortalOneが年内提供予定

過去2年間のパンデミック生活において、最も人気のエンターテインメントの1つはやはりゲームである。このカテゴリーの「ゲームチェンジャー」になると信じ、新タイプのプラットフォームを構築しているゲームスタートアップが今回、その高まる波に乗るための資金調達を発表した。

没入型ゲームプラットフォームを開発するPortalOne(ポータルワン)は、自らを「あらゆる意味でハイブリッド」と表現しており、モバイルやコンソール、VRヘッドセットなどさまざまなデバイスで動作するように設計されたゲームショーやトークショーの形態をミックスしたゲームを開発している。オスロを拠点とし、ロサンゼルスでも活動を広げている同スタートアップは、今回調達した6000万ドル(約69億円)という資金を使い、レトロな「アーケード」を舞台にさまざまなゲームを楽しむことができる「PortalOne Arcade」の初となる一般販売に向けてプラットフォームと運用の構築を進めていく予定だ。

PortalOne Arcadeは2021年からクローズドベータ版を実施しており、試してみたいゲーマーのためのサインアップリストも用意しているようだが、すでに同社の動向にはあらゆるビッグネームからの熱い視線が注がれている。

シリーズAとなる今回のラウンドは、Tiger Global(タイガー・グローバル)がリードし、Scooter Braun(スクーター・ブラウン)氏のTQ Ventures(TQベンチャーズ)、Temasek(テマセク)、Avenir Growth(アベニール・グロース)、Founders Fund(ファウンダーズファンド)、Talis Capital(タリス・キャピタル)、Connect Ventures(コネクト・ベンチャーズ)、Animoca Brands(アニモカブランズ)、Access industries(アクセス・インダストリーズ)、Coatue Management(コートゥー・マネージメント)などに加えて「多くの著名なエンジェル投資家」も参加しているという。PortalOneが前回1500万ドル(約17億3000万円)のシードラウンドを実施したのは約8カ月前のこと。当時もその規模と支援者の顔ぶれで注目されていたが、その中にはゲーム業界の象徴的存在であるAtari(アタリ)も含まれており、同社はPortalOneと協力して、同社のブランドやIPの一部をArcadeのローンチに加えようと取り組んでいる。

PortalOneを弟のStig Olav Kasin(スティグ・オラフ・カシン)氏と共同で設立したCEOのBård Anders Kasin(ボード・アンダース・カシン)氏はインタビューの中で、PortalOne Arcadeのリリースは2022年の後半を予定しているが、クローズドベータ版ではすでに約200のショーを制作したと伝えている。最先端のゲームデザイン、ライブ放送、インタラクティブ機能、そしてビデオの撮影と処理をすべてクラウド上で行う低コストのアプローチを組み合わせた技術が拡張可能である、という同社の考えがこれで証明されたのではと同氏は話している。

「複雑な要素が絡み合っているため、これはかなりの数だと思います」。

スティグ・オラフ・カシン氏は現在LAに拠点を置き同社のスタジオを建てている最中だが、今後は世界各地の他の都市にもスタジオを設置していく予定だという。

PortalOneの事業はこれ以上ないタイミングで展開されている。

まず第一に、他のストリーミングエンターテインメントと同様、パンデミック渦中、家に閉じこもっていた多くの消費者にとってゲームは救世主となっていた。そのためゲームへの興味や関心が記録的なレベルに達し、その結果この分野に多くの新規参入者が現れた(Netflixのような他のエンターテインメント分野からの参入もある)。

その結果、同カテゴリーは現在テック系スタートアップの中で最もホットなカテゴリーとなっており、投資家たちはこの分野で最も有望と思われるプレイヤーに資金を投入しようと必死になっている。この数週間だけでもYahaha(ヤハハ)が5000万ドル(約57億6000万円)、Spyke(スパイク)が5500万ドル(約63億4000万円)を調達したと発表しているが、どちらもまだ実際には何もローンチしてはいない(両社ともクローズドベータやその他のパイロットプロジェクトは行っている。この分野ではそれ自体が高価な取り組みなのである)。一方、まだ設立間もなくも実績のあるDream Games(ドリームゲームズ)というスタートアップは、2022年1月初めに発表されたラウンドを経て27億5000万ドル(約3168億4000万円)の評価額に達している。

第二に、PortalOneは時代の流れにぴったりはまっているのである。「メタバース」は今最もホットな言葉の1つとなっており、乱用されて意味をなさなくなる危険性もはらんではいるものの(すでにそうなっている?)、現在のところこの新領域にどう適合させるかを検討している大手企業や中小企業から多くの関心が寄せられている。

PortalOneはまるでカスタムメイドで作られたかのように、メタバースの隙間を埋めているのである。メタバースの先駆けとなったコンセプトであるVRやARには、魅力的なコンテンツが決定的に不足しており、またハードウェア面などのハードルも高くなっている。PortalOneは「ハイブリッド」をキーワードに、ユーザーの手元にあるあらゆるプラットフォームで利用できる最高にフレキシブルな製品として自らを位置づけている。

また「リーンバック・エンターテインメント(リラックスして観る番組などのエンターテインメント)」と「夢中になれるゲームプレイ」の両方に焦点を当て、馴染みのあるゲームブランドとまったく新しいタイトルをともに提供することで、さまざまな層、さまざまなユーザー、さらにはスクリーンに向かうときの消費者のさまざまな心境にアピールするのである。

ボード・アンダース・カシン氏によると、同社はプラットフォームを運営する企業からコンソール大手、コンテンツを提供する企業、そしてそれらを実現する技術を開発する企業まで、ゲームやソーシャルのエコシステムに関わる幅広い企業と話をしているという。しかし少なくとも現時点では同社のゲームで遊べる独自のウォールドガーデン「Arcade」の構築に注力しており、たとえPortalOneが誰かのメタバース(より平凡に言えばサードパーティのコンソール)で使える体験を作ったとしても、自社の「メタバース」世界にゲーマーを呼び込むことを目的とし続けるという。

その理由は、PortalOneがこれまでにどうプラットフォームを構築してきたかという点にある。

「初期段階で我々が解決した主要な課題の1つは、規模をいかにして拡大するかということでした。モジュール式の効率的なプラットフォームでこれだけの量のコンテンツを制作することができるというのは、コスト効率の面で画期的なことです。当社のハイブリッドゲーム制作は、業界標準よりもはるかに低コストで実現されています」とボード・アンダース・カシン氏は説明する。ビデオやプレイの取り込み方だけでなく、PortalOneがさまざまなゲームの構成要素を再利用する方法にもモジュール式のアプローチが使われているという(コンポーネントはすべてクラウド上にある)。「これが当社の秘密のレシピなのです」。

そしてこのレシピは大衆にも気に入られるだろうと投資家たちは目論んでいる。

Tiger GlobalのパートナーであるEvan Feinberg(エバン・ファインバーグ)氏は声明の中で「我々は、PortalOneがゲームとエンターテインメントの間で革新的な体験を構築していると感じています。ビジネスを構築し、成長させていくカシン兄弟と才能あるチームを支援できることを楽しみにしています」と伝えている。

「PortalOneは最も人気のあるエンターテインメントを1つのシームレスな体験に集約するプラットフォームを構築しており、これはあらゆる分野のパフォーマーにアピールできるものです。これこそが、無限のコンテンツの可能性を秘めた、没入型ゲームの世界における次なる場所なのでしょう」とスクーター・ブラウン氏は話している。

画像クレジット:PortalOne

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

欧州の半導体法案、スタートアップやスケールアップ企業を対象に最大約2640億円の資金援助へ

欧州連合(EU)の欧州委員会は現地時間2月8日、半導体法案を公表した。2021年秋に予告されていたたこの計画は、半導体生産における地域主権とサプライチェーンの回復力を強化するためのもので、研究開発などの分野を含むEU域内の半導体生産に的を絞った支援パッケージや、この分野の最先端技術に取り組むスタートアップや大企業への資金提供が盛り込まれている。

関連記事:EUが半導体の自給体制の構築を目指す法律を制定へ

法案には、EUの厳しい国家補助規則の緩和も含まれており、加盟国は斬新な「この手のものは初」の半導体工場に財政支援を提供することができるようになる。

法案の包括的目標は、あらゆる種の機械や装置を動かすために現在必要とされているハイテクな半導体に、EUが継続してアクセスできるようにすることだ。

「半導体は、世界の技術競争の中心にあります。もちろん、現代経済の根幹をなすものでもあります」とEU委員長のUrsula von der Leyen(ウルスラ・フォン・デア・ライエン)氏は、法案に関する声明で述べた。EUのパンデミック後の経済回復の遅れは世界的な半導体不足と関連しており、需要が供給を上回っていることが原因だ。

欧州委員会は、世界の半導体生産に占めるEUの割合を、2030年までに現在の9%から2倍以上の20%に引き上げたいと考えている。

欧州委員会は、半導体法が「研究から生産まで」の活発な半導体分野の基礎を築くことを期待していると述べた。一方で、欧州は単独ではやっていけないことも認識しており、同法案は米国や日本など他の半導体生産国との連携を強化することによって、グローバルなサプライチェーンへのアクセスにおける回復力を高めることにも取り組む。それゆえ、フォン・デア・ライエン氏は「バランスの取れた相互依存関係」と語っている(ただし、半導体生産に対する国家支援は、貿易摩擦のリスクをともなうかもしれない)。

資金援助に関しては、EUはすでに、より広範な政策目標(デジタル化、グリーン転換、欧州の研究開発)を支援するために430億ユーロ(約5兆6710億円)超の公的および民間資金を動員しているが、欧州委員会は同法における「Chips for Europe Initiative」のもと、半導体能力支援として110億ユーロ(約1兆4510億円)を「直接提供」する予定だと述べた。これは「2030年まで研究、設計、製造能力における技術リーダーシップ」の資金調達に使われるという。

また、半導体関連のスタートアップのイノベーションのために、欧州のスタートアップの研究開発資金や投資家誘致のための費用を支援する専用の「半導体ファンド」という形で、特別な資金が確保される。

欧州委員会によると、半導体専門の株式投資機関(InvestEUプログラムのもと)も、市場拡大を目指す大企業や中小企業を支援する。

半導体分野のスタートアップや大企業に対する半導体法「支援株式」は20億ユーロ(約2640億円)に達する見込みとのことだ。

投資と生産能力の強化を促すことにより、欧州における半導体供給の安定性を確保するために計画されている枠組みは、高機能ノードやエネルギー効率の高い半導体といった分野での技術革新と投資の促進も目指している。この分野で欧州委員会はスタートアップのイノベーションを促すことも期待している。

半導体法案には、半導体の供給を監視し、需要を推定し、不足を予見するための欧州委員会と加盟国の間の調整メカニズムも含まれている。そして、EUの執行部は加盟国に対し、同法の成立を待つのではなく、調整のための取り組みを直ちに開始するよう促している。

EUの共同立法機関である欧州議会と理事会が、EU法として採択される前に詳細について意見を述べて合意する必要があるため、法案が採択される時期についてはまだ示されていない。

欧州委員会のデジタル戦略担当副委員長Margrethe Vestager(マルグレーテ・ベスタガー)氏は声明で次のようにコメントした。「半導体はグリーンかつデジタルな移行に必要なものであり、欧州の産業の競争力にもつながります。半導体の安全な供給を確保するためには、一国や一企業に依存すべきではありません。欧州がグローバル・バリュー・チェーンの主要な役者としてより強くなるために、研究、イノベーション、設計、生産設備において我々はもっと協力しなければなりません。それは、我々の国際的なパートナーにも利益をもたらすでしょう。将来の供給問題を回避するためにパートナーと協業します」。

また、EUの域内市場担当委員であるThierry Breton(ティエリー・ブルトン)氏は別の声明で「我々の目標は高いものです。2030年までに世界市場シェアを現在の2倍の20%に拡大し、最も洗練されエネルギー効率の高い半導体を欧州で生産するというものです。EU半導体法により、我々は卓越した研究を強化し、研究室から製造工場への移行を支援します」。

「我々は多額の公的資金を動員していて、それはすでに相当額の民間投資を引き寄せています。また、サプライチェーン全体を保護し、現在の半導体不足のように、将来的に経済が打撃を受けるのを避けるために、あらゆる手段を講じています。未来のリード市場に投資し、グローバルなサプライチェーンのバランスを整えることで、欧州の産業が競争力を維持し、質の高い雇用を創出し、増大する世界的需要に対応できるようにします」。

どのような種類の半導体工場が国家補助規則の適用除外となるかなど、法案の詳細については、欧州委員会のQ&Aを参照して欲しい。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

旅行体験アプリHeadoutがオミクロン株流行を乗り切り約34億円の追加資金を獲得

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、旅行予約スタートアップのHeadout(ヘッドアウト)のビジネスはほぼ壊滅状態に陥ったものの、ここ数カ月の国内旅行の回復にともない、同社は成長を取り戻している。消費者が世界中の都市でのツアーやイベント、その他の体験やアクティビティを予約できるこのサービスは、海外旅行ではなく国内旅行や地元の需要に応えることで、2021年1月以降800%の成長を実現した。7月までに同社はEBITDAで黒字化を達成した。2021年秋には1200万ドル(約14億円)のシリーズBラウンドを完了し、そして今、既存投資家たちはHeadoutの最新ラウンドにさらなる資本を追加するために戻ってきた。

Headoutの3000万ドル(約34億円)の新ラウンドは、Airbnb、Uber、Instacartといった他のマーケットプレイスを支援してきた先行投資家のGlade Brook Capitalがリードした。既存投資家であるNexus Venture Partners、FJ Labs、500 Startupsなども参加している。

Headoutの共同創業者でCEOのVarun Khona(ヴァルン・コナ)氏は「我々は積極的に資金調達をしていませんでした」と語る。「9月からの投資家であるGlade Brookは、当社の継続的な成長を見て、当社への投資を倍増させたかったのです」。その結果、Headoutはさらに数件のインバウンドリクエストも受け、追加資金を調達することを決めた。「提供された条件と、長期的なビジョンに対する彼らとの整合性が非常に良かったので、断るのは非常に難しかったのです」とコナ氏は付け加えた。

同社は、本来なら倒産しかねないような難局を乗り越えてきた。

シリーズBの最初のクローズ時にコナ氏が言ったように、パンデミックの初期にHeadoutの「事業は2億5000万ドル(約285億円)超からものの数週間で取るに足りない規模」になった。しかし、同社は店を閉める代わりに、国内旅行により重点を置き、自分の住む都市やその近辺を探索したい人々に対応する方針へと転換した。現在では、国内旅行が同社のビジネスの80%近くを占めており、パンデミック以前とは打って変わっている。

そして今、Headoutはオミクロン流行を見事に乗り切った。

画像クレジット:Headoutのユーザー

2021年11月までに、年初と比較して約10倍の成長を遂げたとコナ氏はTechCrunchに語った。しかし、オミクロン感染拡大にともない、12月と1月はその成長が鈍化した。しかし、この数週間、最新新型コロナウイルス変異種の感染がピークを迎え始めたことで、Headoutのビジネスはまたもや成長した。

おそらく直感に反しているが、パンデミックはもはや旅行体験の需要を完全に抑えないと、コナ氏は指摘する。時には、需要を刺激しさえする。

「人々は追加資金を手にしています。そして外国へ旅行することはできません。しかし、旅行したい、さまざまなものを見たい、いろいろなことをやってみたいという欲求は、これまでと同じように高いのです」と同氏は話す。「実際、ある意味では、お金や時間を使いたい、経験したいという消費者心理や欲求は、新型コロナ後さらに高まっています。私たちは今、大好きなものが奪われたらどんな生活になるのか、時間的にもアクセス的にも限界を感じているのです」。

Headoutは月間アクティブユーザー数、収益ランレート、評価額の詳細を明らかにしておらず、コナ氏は「数億」としか言わない。しかし、これまでに190カ国超から1000万人が同社のプラットフォームで体験を予約したと明らかにした。

現在、Headoutのマーケットプレイスは、世界50都市で旅行体験予約を提供している。提供する商品のデジタル化で現地のサービスプロバイダーと直接連携し、直前の予約にも対応し、ダイナミックに価格を設定することで収益を上げている。Headoutは、予約手数料を取るが、現在試験的にサブスクリプションにも挑戦している。

同社の顧客は、若いカップルや家族連れが多く、平均予約人数は2〜3人だ。また、都会に住んでいて、教養があり、そしてもちろん旅行好きの人が多い。

今回の追加資金で、同社は事業の急拡大を目指している。今後24カ月で500都市にサービスを拡大する予定だ。そして短期的にはすべての職務で採用し、今後数カ月で150人のチームをさらに200〜250人増やす計画だ。

コナ氏はまた、買収でチームを成長させる機会もあると考えており、パンデミックを生き残るための資本を持たないが、優れた才能を持つ旅行やエンターテインメントのスタートアップがたくさんあると指摘した。

「当社はそのような企業にも目を向けたいと考えており、すでに話を進めています」と同氏は仄めかした。

製品面では、パートナーと消費者の両方の経験を向上させるのに資金の一部を投入する予定だ。例えば、パートナー向けには、駆け込みサービスの一覧や、ツアーに遅れて参加したいという人のために、ガイドの現在のライブロケーションを表示できるツールなどを提供する方法に取り組んでいる。また、Headoutユーザー向けとしては、まだ詳細は詰まっていないが、ディスカバリーの改良に取り組んでいる。

今後数カ月間の成長が予定されているにもかかわらず、コナ氏は新資本があまり失われることはないと考えている。

「Headoutの取引はすべて利益になるので、取引が増えるたびに収益が改善されます。規模が大きくなればなるほど、収益も利益も大きくなります。火傷の心配はあまりしていません」と同氏は述べた。

画像クレジット:headout

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップル、パンデミックの影響を受け続ける一部デベロッパーに対してアプリ内購入免除の特例措置を再度延長

パンデミックはまだ終わっていない、とAppleはいう。同社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のためにバーチャル開催を強いられた一部サービスのための、アプリデベロッパーがアプリ内購入システムを回避することを認めるというCOVID時代のApp Store猶予措置を再び延長した。具体的にAppleは「有料オンライングループサービス」を提供するアプリはアプリ内購入を利用しなければならないとするApp Store Reviewガイドライン3.1.1の適用を引き続き延期する。

影響を受けているデベロッパー(元来のビジネスモデルが、バーチャルではなく、対面イベントを中心に作られていた)は、パンデミック中、アプリ内購入を使用しなくてはならないというAppleの要件に従わずにすんでいる。

当初Appleは,1対1のサービスに限りアプリ内購入要件を免除した。医者と患者による医療相談や、教師と生徒の個人指導、不動産屋と顧客の物件ツアー、トレーナーと顧客のフィットネストレーニングなどだ。しかしAppleはその後すぐ、グループサービスのイベントから手数料の徴収を続けることは世界的パンデミック下で小企業に害を及ぼすとMeta(Facebook)から批判された

もちろんFacebookには別の思惑があった。自社の決済システムで手数料を免除していたFacebook Pay(フェイスブック・ペイ)を、Appleのアプリ内購入の代わりに使うことをAppleに認めさせたかったのだ。一時的にせよ、Appleがそれを認めれば、Facebookは何千何万人のユーザーを自社の決済エコシステムに引き込むことができる。

そうではなく、Appleは自社の手数料をオンライングループサービスに対しても一時的に免除した。オンラインセミナーやグループ・ヨガクラスなど、1対少人数や1対多人数のイベントも含まれる。これによってAppleは、パンデミックの打撃を受けている小企業から利益を上げているというMetaの批判に答え、かつFacebook Payには何の利益も与えない。

しかしパンデミックが長引くにつれAppleは、猶予期間が過ぎて対象企業がAppleのアプリ内購入システムに戻る期限を延期せざるを得なくなった。2020年11月、Appleは猶予期間を2021年6月までに延長した。そして2021年4月、同社は期限を2021年12月31日まで延期した。2021年11月、Appleは期限が迫っていることをデベロッパーに再通知した。

悲しいかな、オミクロン株の影響によってAppleは再度期限を延ばすことになった。

現在同社は、対象デベロッパーは2022年6月30日まで、Appleのアプリ内購入システムに戻ることを猶予されるとしている。この日は、失った収入源を取り戻し始められることが確実だとAppleが期待している日付に違いない。

さらに同社は、アカウント作成が可能なアプリ内にアカウント削除機能を実装する期限も延長したことを示した。「この要件の実装の複雑さ」が理由だ。つまり、もともと時間がかかり実装が困難な変更が、店舗の閉鎖や新型コロナによる従業員の病休や子どもの家庭でのバーチャル授業などによって、いっそう大変になっているということだ。

この延長は、先週末Appleのデベロッパーサイトの投稿で静かに発表された。それはAppleのアプリ内購入ビジネスモデルがさまざまな角度から攻撃されているさなかだった。同社のEpic Games(エピックゲームズ)と裁判は現在上訴中であり、つい最近オランダ規制当局からは、デベロッパーのサードパーティー決済に自社のアプリ内購入インフラストラクチャーの使用を強制していることは反トラスト法に違反しているとして罰金を課された。さらに同社は、最近韓国でもアプリ内決済をめぐる同様の規則に従わざるを得なかった

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

需要減退の中、Pelotonがバイクとトレッドミルの生産を一時停止との報道

ここ数年はPeloton(ペロトン)にとってアップダウンの激しい日々だった、というのは控えめな表現だ。パンデミックによる爆発的な需要に支えられていた同社は、今度はトレッドミルやエクササイズバイクなどのコネクテッドフィットネス製品市場の「大幅な縮小」という問題に直面している。

米国時間1月20日にCNBCがニュース報道の中で指摘した内部資料によると、エントリーモデルの「Bike」は、2月から3月にかけて2カ月間生産が停止される予定だという。プレミアムモデルの「Bike+」はすでに生産を停止しており、資料によると生産を再開するのは6月になるとのこと。同社のトレッドミル「Tread」の生産は2月から6週間停止し、2022年度は「Tread+」の生産をまったく見込んでいないとのこと。

Pelotonは当初、パンデミックの影響で世界中のジムが閉鎖される中、最大のテック勝者の1つだった。実際、同社は最初、逆の問題に直面していた。つまり、一夜にして急増した製品需要に供給システムが対応しきれなかったのだ。2021年5月、同社はオハイオ州の工場に4億ドル(約456億円)を投じ、拡大する製品ラインを生産すると発表した。

長年コネクテッドホームフィットネスのリーダーとして存在してきた同社は、大方の見方では、コロナ禍は人々のワークアウト方法の一時的な変化というよりも、パラダイムシフトであると考えていた。そして、パンデミックが長引いている間にジムが再開され、他のスタートアップやSamsung(サムスン)、Apple(アップル)などの大企業によって競争が激化したことで、売り上げが低迷している。今週初めには、同社が財務状況の悪化を食い止めるために、コンサルティング企業のマッキンゼーと契約したというニュースが流れたが、これにはリストラと解雇がともなうと予想されている。前年の天文学的な上昇を経て、2021年末には、Pelotonの株価は76%も下落した。

初期の成功にもかかわらず、ここ数年は問題が多発していた。最も顕著な例は、安全性への懸念から同社のトレッドミル製品をリコールしたことだ。同社は当初、幼い子どもの死亡を含む70件の安全事故を受けて、米国消費者製品安全委員会と協力してリコールを行うことを躊躇していた

「創業者の1人である私の視点では、このカテゴリーの枠組みは十分ではありませんでした。カテゴリーとして考えていた安全性も十分ではありませんでした」と、John Foley(ジョン・フォーリー)CEOは2021年末のDisruptで筆者に語った。「私たちは、トレッドミルを市場に投入しようと考えました。ハードウェアの観点から見ると、最高のデザインのトレッドです。何十年にもわたってこのカテゴリーに存在する安全性を見て、私たちが学んだことは、さらに改善しなければならないということでした。当社はほとんどすべての分野で優れていますが、今度は安全性の面で改善する必要があります。

同社はパンデミック以前にも、人気のインストラクターやコンテンツプレイにより、カルト的な人気を集めていたことで知られている。しかし、その継続的な成長を過大評価し、継続的な支出で太陽に近づきすぎたといっても過言ではない(少なくとも短期的には)。同社は2021年末に「Peloton Guide」を発表した。Peloton Guideは、ホームフィットネスのエコシステムへの参入障壁を低くするために設計された、495ドル(約5万6500円)のコネクテッド筋力トレーニングシステムだ。また、ローイングマシンなどの追加製品の開発も進めていると報じられている。

20日のニュースがこれらの製品の発売にどのような影響を与えるかについては不明だが、大幅なリストラが行われた場合、支出を抑えるためにあらゆる手段を講じることは間違いない。同社の主な競合他社のいくつかも、最近、それぞれ変換期をむかえている。1月初めLululemon(ルルレモン)は、2021年9月に創業者が突然退社した後、Mirror(ミラー)に新しいCEOを任命したと発表した。

TechCrunchはPelotonに連絡し、今回の報道内容について確認を求めている。

画像クレジット:Mark Lennihan / AP

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

米国で1日早く家庭用新型コロナ検査キットの注文を受け付け開始

米国の人々は、予想より1日早く、米国郵政公社(USPS)のウェブサイトから無料の家庭用新型コロナ検査キットを注文できるようになった。先にバイデン政権は、米国時間1月19日から注文をすることができるようになると述べていた。発表の時点では、COVIDtests.govはプレースホルダ・サイトだった、現在はUSPSにユーザーを誘導して、そこで注文をするようになっている。

各家庭では、4種類の迅速抗原検査をそれぞれ1セットずつ申し込むことができる。USPSは2022年1月末からキットの発送を開始し、通常、注文から7日から12日以内に発送する予定だ。

CNNのホワイトハウス特派員Kaitlan Collins(ケイトラン・コリンズ)氏によると、このサイトはベータ版の一部として1日早く公開された。政府関係者は、サイトのトラブルシューティングを行い、1月19日の正式な立ち上げがスムーズに行われることを望んでいる。案の定、この記事を書いている時点では、サイトの読み込みに問題がある人もいるようで、すぐに注文ができないかもしれない。
COVIDtests.govのサイトでは、テストに関するいくつかの詳細な情報を提供している。30分以内に結果が出るはずで、どこでも受けられる。いつテストを受けるか、また、結果に基づいて何をすべきかについてのガイダンスも提供されている。また、検査会場や自宅での検査に対する保険の払い戻しに関する資料も掲載されている。

バイデン政権は、米国人に配布するために、家庭用の迅速な新型コロナ検査キットを10億個購入すると発表した。そのうちの半分は今週中に注文できるようになる見込みである。ホワイトハウスは、その目的は、特に検査の需要が高く、しばしば店頭で見つけるのが難しいことを考えると、誰もが必要なときに検査が利用できるようにすることであると述べた。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のKris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Jorg Greuel / Getty Images

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(文:Kris Holt、翻訳:Yuta Kaminishi)

米政権、1月19日より自宅コロナ検査キットをオンライン注文で無料配布

世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスのパンデミックを宣言してから1年10カ月と8日後、米国人は政府から無料で簡易検査キットを注文できるようになる。米国時間1月19日から、COVIDTests.govにアクセスしてオンラインで注文することができ、検査キットは自宅に郵送されるという。

今のところ、このサイトには英語とスペイン語のランディングページしかない。また、送料も無料だと書かれている。

バイデン政権は、家庭用の簡易検査キットを10億回分購入し、米国居住者に無料で配布するとしている。この目的は、すべての人が必要なときに検査を受けられるようにすることだ。ホワイトハウスによると、1月19日には5億回分のテストが提供可能になるとのこと。当初は、1つの住所につき4回分の検査キットを注文することが可能となる。

ウェブサイトにアクセスできない人でも注文できるよう、電話回線を設置しているとも。政府は、国や地域の組織と協力して、リスクの高い、大きな打撃を受けたコミュニティの人々が検査キットを確保できるように努力していると述べた。

注意すべき点は、検査キットは通常、注文から7〜12日以内に発送されるということだ。そのため、新型コロナの症状が出ている人や、陽性者と濃厚接触した場合、すぐに使える家庭用検査キットが手元にないため探している人にとってはあまり意味がない。

しかし、簡易検査キットの需要の高さを考えると、これらの無料キットをストックしておく価値はあるだろう。売り切れている新型ゲーム機を人々が見つけるのを支援することで知られるTwitterアカウントでも、最近は新型コロナ検査キットの在庫アラートを行っているぐらいだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Kris Holt(クリス・ホルト)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:georgeclerk / Getty Images

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(文:Kris Holt、翻訳:Aya Nakazato)

世界中のファクトチェック団体がYouTubeに誤報・偽情報対策を要求

世界中の80以上の著名なファクトチェック団体が、YouTube(ユーチューブ)に新型コロナウイルスに関する誤報への対策を求めている。この誤報は新型コロナウイルス感染拡大から2年が経過した現在でも、依然としてこの動画共有サイト上で広まっている。

「ファクトチェック機関の国際的なネットワークとして、私たちはオンラインでどのように嘘が広がるかを監視しています。そしてYouTubeがオンラインの偽情報や誤報を世界に広める主要な導線の1つとなっていることを、毎日私たちは目の当たりにしているのです」と、ファクトチェック機関の連合はPoynter(ポインター)に掲載された公開書簡で述べている。「これは、世界のファクトチェッキングコミュニティの重要な懸念事項です」。

この公開書簡に署名したファクトチェック機関は、PolitiFact(ポリティファクト)、The Washington Post Fact Checker(ワシントンポスト紙のファクトチェッカー)、PoynterのMediaWise(メディアワイズ)といった米国を拠点とする団体に加え、アフリカのDubawa(ドゥバワ)とAfrica Check(アフリカ・チェック)、インドのFact Crescendo(ファクト・クレッシェンド)とFactly(ファクトリー)、さらにはインドネシア、イスラエル、トルコといった国々の団体など、世界中に広がっている。

同グループは、YouTubeが長年にわたって健康に関する誤った情報の温床になっていると指摘。その中には、がん患者に非科学的な治療法で闘病を促す内容も含まれている。

「2021年は、いくつもの陰謀集団が繁栄し、国境を越えて協力し合うのを、我々は目にしてきました。その中には、ドイツで始まった活動がスペインに飛び火し、ラテンアメリカにまで広がった国際的な運動も含まれます。これらはすべてYouTubeで展開されているのです」と、書簡には書かれている。「その一方で、何百万人ものYouTubeユーザーが、予防接種を拒否するよう勧めたり、ウイルス感染症をインチキな治療法で治すことを奨励するギリシャ語やアラビア語の動画を見ています」。

この書簡では、英語以外の言語の動画で誤った情報が広がるという特殊な危険性も強調している。Facebook(フェイスブック)の内部告発者であるFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)氏は、英語圏以外でのコンテンツモデレーションに十分な投資を行っていないFacebookでも、同様の懸念があることに注意を促していた。ファクトチェック団体グループは、YouTubeに対して「国や言語ごとのデータや、あらゆる言語に対応した字幕サービスを提供する」ことで、英語以外の言語から誤報の流出を防ぐよう働きかけている。これはYouTubeが注力しているモデレーションの方法だ。

ファクトチェッカー団体は、問題点を指摘するだけでなく解決策も提示しており、YouTubeは誤報や偽情報に関するポリシーの透明性を高め、それらの問題を専門とする独立した研究者を支援すべきだと指摘している。また、同グループはYouTubeに対し、誤報を否定して迅速にその件に関する事情や背後関係をプラットフォーム上で提供する取り組みを強化するようにも求めている。この2つの取り組みは、ファクトチェック機関との連携を深めることで実現可能だ。

FacebookやTwitter(ツイッター)は、プラットフォーム上での誤った情報の拡散について、長い間、世間の厳しい目にさらされてきたが、YouTubeはしばしばそれらの監視の目をかいくぐっている。YouTubeの推薦アルゴリズムは近年、危険な主張を広めることに能動的な役割を果たしているが、TikTok(ティックトック)と同様にテキストベースではなく動画であるため、一般的に研究者にとっては調査が困難で、テクノロジーの説明責任に関する公聴会を開いている議員たちにとっては理解することが難しい。

「YouTubeは、不謹慎な行為者が他人を操って利用したり、組織化して資金調達したりするために、自社のプラットフォームを武器にすることを許している」と、ファクトチェッカー団体はいう。「現在の対策では不十分です」。

画像クレジット:Olly Curtis/Future / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

コネクテッドフィットネス企業にとってパンデミックが続く2022年もビッグイヤー

毎年、CESの週は、筆者にとって健康的ではなかった。意図的でない断続的な断食はともかく、TechCrunchは展示会でのチームディナーで本当にそうする習慣がある。そしていうまでもなく、同僚のMatt(マット)はメキシコ料理レストランの「Tacos & Beer」に宗教じみた情熱を捧げている。

断っておくが、筆者は毎年、展示会の期間中は毎日必ず、何度も歩数をカウントしていた。ラスベガス・コンベンション・センターのホールを歩き回るテックジャーナリストならそうするはずだ。2022年は、TechCrunchがオミクロン関連の懸念からバーチャルでの参加にしたため、もちろん歩数は減った。

正直にいえば、筆者も同じ懸念のために、ジムに戻るべきか迷っている。そう思っているのは筆者だけではないだろう。2021年末、ジムなどの営業が再開したために、Peloton(ペロトン)のような企業の業績が後退したのは事実だ。しかし、パンデミックはまだ終わっていない。現在、全国の多くの地域で寒すぎて屋外で運動ができないとはいえ、狭い室内で息の荒い人たちと一緒に過ごすというのは、あまり理想的とはいえない。

この種のトレンドが長く続くかどうかを予測するのは常に難しいが、ここ数年でホームフィットネスの世界が大きく変化したことは間違いない。筆者は個人的に、こういったことがすべて終わった後(まあ、本当に終わると仮定しての話だが)、ジムに戻るつもりはないという多くの人と話をした。もちろん、すべてがパンデミックの結果というわけではない。PelotonやMirror(ミラー)といった企業は、私たちの多くが新型コロナウイルスというものを知る前から、多くの支持を得ていた。

もちろん、この手のことは、必ず度が過ぎる。この2年ほど、筆者の受信箱には、家庭用フィットネスサービスのメールが大量に送られてくる。できるだけ多くの企業がこのチャンスに便乗しようとしていることは明らかだ。Pelotonの収益やLululemon(ルルレモン)によるMirrorの買収などを前にしては、彼らを責めることはできないだろう。2021年の「オールバーチャル」CESでは、確かに盛り上がりを見せた。2022年も間違いなくそうなるだろう。

他の超ホットなテック分野と同様、生き残るのはごく一部だ。Pelotonは、CEOのJohn Foley(ジョン・フォーレー)氏による基調講演など、さまざまな形でこのイベントに大きく関与する予定だったが、今週初め、参加を見合わせる企業の長いリストに加わった。それにも関わらず、それを穴埋めする製品がたくさん登場した。

画像クレジット:LG

LGがこのカテゴリーで提示したのは、実用性よりもコンセプト性の方がはるかに高いものだった。どちらかといえば、同社のフィットネスバイクは、ホームフィットネスに同社の曲面モニター技術をどう取り込めるかを示すためにデザインされたものだった。自宅に運動器具を備えようとする多くの人にとってスペースと価格が割高であることと、この製品の大きさを考えると、選ばれることを自ら拒否しているように思えた。

2022年のホームフィットネス製品に「メタバース」という言葉があまり出てこなかったのが率直にいって驚きだった。VRフィットネスアプリのLiteboxer(ライトボクサー)は、そこで得点を稼いだ。「メタバースの夜明けは、より深いつながりの感覚への需要を示しています」と共同創業者でCEOのJeff Morin(ジェフ・モリン)氏はプレスリリースで述べた。「バーチャルリアリティでのワークアウトは、タブレット、電話、コンピュータといった二次元の画面よりも意味のある方法で人々をつなぎます。VRヘッドセットとあなたの勝利への意志さえあれば、誰でも最高のトレーナー、音楽、フィットネス技術とともに、世界のどこにいてもワークアウトができます」。

前述のプレスリリースでは「メタ」という言葉が4回出てくる。プレスリリースでは、ほぼ「VR」という言葉に置き換えて使われたようだ。Quest 2ヘッドセットの商品名だからだ。Liteboxer VRは3月3日にQuest Storeに登場し、月額19ドル(約2200円)のサブスクリプション制となる。

Echelon(エシュロン)は、Peloton(ペロトン)の高価格帯バイク「Bike+」に対抗するために設計した「EX-8s Connect Bike」を展示した。価格はBike+をわずかに下回る2399ドル(約27万8000円)だ。Walmart(ウォルマート)向けの超お手頃な製品も作っている会社としては、高い価格設定だ。この価格で、24インチの曲面1080pディスプレイが手に入る他、車輪部分のライトをカスタマイズできる。1月末に発売される予定だ。

画像クレジット:Wondercise

一方、Wondercise(ワンダーサイズ)はソフトウェアファーストのソリューションだ。同社は、離れた場所にいるエクササイズ愛好家同士を結びつけ、ジムから自宅への移動で生じる孤立感を解消するためのプラットフォームを提供することを目指している。以下は、同社のプレスリリースの資料から。

ライブリーダーボードでは、個人の技量に応じてスコアが表示され、セッションを楽しい雰囲気に演出します。画面上のカラフルなパワーバーやプロフィールは、ゲーム感覚で楽しめるよう意図的にデザインされており、ワークアウトに競争的な側面を加えています。Wonderciseは、いつでも誰でも必要とするパフォーマンス解析とデータが得られるよう、フィットネス業界にIoTを導入することに注力しています。

家庭用機器のカテゴリと同様に競争は激しくなっているが、ソフトウェアファーストのソリューションに比べれば、たいしたことはない。WonderciseはApple(アップル)やSamsung(サムスン)などのビッグネームと直接競合することになる。

一方、Hydrow(ハイドロウ)は家庭用ローイングマシンを代表する重要な企業の1つ。トレッドミルやバイクの先にある、これから本格的な成長が期待されるカテゴリーだ。自転車と比べると、漕ぎ手はより全身を鍛えることができるが、一般に消費カロリーは少ない。Pelotonが手漕ぎボートゲームに参入すると噂されているが、今のところHydrowがこの分野でのビッグネームとして存在感を示している。

画像クレジット:Echelon

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】「セキュリティ・バイ・デザインの時代がやってきた

近年、サイバー犯罪者の手口はますます巧妙になっている。最新のトレンドや世間の関心が高い問題を悪用してマルウェアを拡散し、無防備なユーザーから個人情報を盗むのである。

お気に入りのテレビ番組に関するアプリであろうと、新型コロナ関連の政府の健康情報であろうと、荷物の不在配達の追跡であろうと結果はどれも同じで、結局はデバイスを感染させて詐欺や盗難を行うのだ。

ごく一般的な種類のマルウェアからデバイスを保護するためには、日頃からの基本的なサイバーセキュリティ衛生が鍵となる。しかし、非常に巧妙なサイバー攻撃を防ぐためには、テクノロジーにあらかじめ組み込まれたセキュリティが欠かせないのである。

シークレットサービスは大統領を守ることで有名だが、彼らの別の主要任務には米国の金融インフラと決済システムを保護し、米国の偽造通貨、銀行・金融機関詐欺、不正資金操作、ID窃盗、アクセス機器詐欺、サイバー犯罪など、幅広い金融・電子犯罪から経済の健全性を維持するというものがある。

モバイル機器が広く普及した現在、国土安全保障省(DHS)が推奨しているように「ユーザーはアプリのサイドロードや未承認アプリストアの使用を避けるべきであり、企業もデバイス上で禁止すべき」なのである。

サイバー犯罪者にとって今回のパンデミックは実に好都合であったと話すのは連邦捜査局のPaul Abbate(ポール・アベイト)副局長だ。「社会のテクノロジー依存から利益を得る機会を利用して、インターネット犯罪が盛んになった」のである。

FBIのインターネット犯罪苦情センターに寄せられた苦情は、2020年には79万1790件を記録し、前年の約2倍、前年比で過去最大の伸びを記録している。特に陰湿な例としては、ワクチン予約のためのアプリをダウンロードするよう促すテキストメッセージが送られるというもので、そのユーザーの連絡先にあるすべてのデバイスにマルウェアを送り、個人データや銀行情報を盗み出すというものがあった。

2021年初め、英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC、National Cyber Security Centre)は、パンデミック時に多発した不在配達の荷物の追跡リンクを装った新種のマルウェアについて注意を呼びかけた。このリンクは、FluBotと呼ばれるマルウェアアプリケーションをダウンロードさせ、ユーザーの銀行口座やその他の金融口座の詳細を危険にさらすのである。サイバーセキュリティの研究者によると「悪意のあるSMSメッセージ(FluBot)の量は、1時間あたり数万件に上ることがある」という。さらにハッカーたちは大ヒットテレビ番組「イカゲーム」の人気に乗じて、同番組に関連するアプリに隠されたマルウェアを使ってモバイル機器を狙うというサイバー犯罪の新風を巻き起こしてさえいるようだ。

モバイル端末は今やインターネットの主要なアクセスポイントとなっており、2020年の米国におけるウェブサイトアクセス数の61%はモバイル端末によるものである。これは2019年に多数派に転じたばかりの傾向だが、すでに確固たる事実として確立されている。これを反映するかのようにモバイル端末へのサイバー攻撃が増加し、FBIに寄せられたフィッシングやスミッシング攻撃(悪意のあるリンクが貼られたメールやSMSテキストメッセージ)の苦情は2020年には倍以上に増え、2019年の11万4702件から2020年は24万1342件となっている。

ある調査によると、年末商戦を迎えるにあたり、買い物客の55%以上が少なくとも1回はモバイル端末で買い物をすると言われており、端末の所有者が攻撃から身を守るための予防策を講じることが不可欠だと言える。

NCSCが推奨する対策は、頻繁にデバイスのバックアップを取る、ウイルス検出ソフトウェアを使用する「メーカーが推奨するアプリストアからのみ新しいアプリをインストールする」などのごく基本的な保護策だ。DHSの指針も同様だが、加えてOS、アプリ、その他のソフトウェアを定期的に更新することの他、ユーザーと企業が多要素認証を採用することなどの勧告も含まれている。

サイバー衛生のシンプルな推奨事項を実行することで攻撃に対する防御の層を形成し、モバイル機器への不正アクセスの脅威を劇的に減少させることができる。しかし、このようなユーザーの行動が重要かつ効果的であるのと同時に、サイバー犯罪者は人間の心理や行動を利用した高度な技術を駆使してユーザーを欺き、デバイスに侵入するのである。

ソーシャルエンジニアリング攻撃と呼ばれるこの種の攻撃は、人間同士の交流や社会的スキルを利用してユーザーを騙し、攻撃者がデバイスやシステムにアクセスできるようにするだけでなく、時にはオプションのセキュリティ保護をユーザー自らに無効化させてしまうことさえある。FluBot、偽の予防接種サイト、悪意のある「イカゲーム」アプリなどの攻撃は、すべてソーシャルエンジニアリングの一例だ。

DHSのサイバーセキュリティ・インフラストラクチャ・セキュリティ庁(CISA、Cybersecurity and Infrastructure Security Agency)によると、モバイル機器の所有者は、テキストメッセージを通じたソーシャルエンジニアリング攻撃に対してより脆弱である可能性があるという。モバイル機器は「メール、音声、テキストメッセージ、ウェブブラウザの機能を統合しているため、操作された悪質行為の犠牲になる可能性が高くなる」のである。

2021年初めに開催されたホワイトハウスのサイバーセキュリティサミットでは、不正アクセスから保護するための、サイバー衛生に留まらない方法が話し合われた。「今後、テクノロジーの安全性はデフォルトとして構築されていく必要があります。我々は皆、安全な技術を購入していることを確信できなければならないのです」とホワイトハウスの高官は述べている

セキュリティ・バイ・デザインのモバイル機器は、サイバー衛生管理をあらかじめデバイスに組み込み、セキュリティの方程式から人間の心理を排除するのである。シートベルトやエアバッグも当初は自動車購入者のオプションとして始まったが、今ではすべての自動車に必須の安全装備となっているのである。

多要素認証や公式アプリストア以外からのアプリのダウンロード禁止など、基本的なサイバー衛生管理は、設計上システムに組み込むことが可能である。このような保護機能が最初から組み込まれているモバイル端末であれば、端末所有者が人気番組に興味を持ったりパンデミックを心配したりしたとしても、ソーシャルエンジニアリング攻撃に対して脆弱になることはないだろう。

確かに市民は、サイバーセキュリティ機関が推奨する基本的なサイバー衛生に従うべきである。しかし、作り手が高度なソーシャルエンジニアリング攻撃を回避し、技術の設計に高度なセキュリティ保護を組み込むことが必要不可欠なのではないだろうか。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Mark Sullivan、翻訳:Dragonfly)

オフィス勤務再開需要に向けて、室内に新型コロナ感染者がいたかどうかを調べられるPhylagenが全力疾走

パンデミック開始から2年が経った今、世の中の企業は安全な対面業務の再開に向けて奮闘中だ。Apple(アップル)はオフィス勤務再開の計画を延期し、Google(グーグル)は2022年中には週3回のオフィス勤務を義務づける予定だが、ワクチン未接種者は最終的には職を失うことになると先日の発表で明言している。「従業員を守り、業務を進めるためには、ワクチン接種の義務化が最も効果的な方法となります」と同社は CNBCへの声明で伝えている。

しかし、ワクチンを接種した人でも感染力の強い新型コロナウイルスに感染する可能性はある。サンフランシスコを拠点とする設立7年目の企業、Phylagen(フィラゲン)は、微生物ゲノミクスとデータ分析を組み合わせて、物理的な空間に新型コロナウイルスの感染者がいたかどうかを調べることができるという。

その方法は次の通りだ。Phylagenは、センサー、スワブ、サンプルコレクターを活用し、これらを週に2回パッケージに入れて研究所に発送する。そして感染者が建物内(トラッキングのためにフロアやゾーンに分けられている)に細菌を持ち込んだかどうか、あるいは建物内の空気が安全かどうかを72時間以内にデータとして提供するという仕組みである。

同社はこれを「サービスとしての企業病原体モニタリング」と呼んでいるが、元生物学教授で、土木技師とマイクロバイオーム科学者の両方で正式な訓練を受けた創業者兼CEOのJessica Green(ジェシカ・グリーン)氏は、その実現可能性に長い間魅了され続けてきた。

しかしグリーン氏いわく、これまでの道のりは孤独なものだったという。「私たちは90%の時間を室内で過ごしていますが、自分が口から何を吸い込んでいるかについては何も知りません。この会話の間にも、私たちは何百万もの微生物を放出し、健康やウェルビーイングに深刻な影響を及ぼす可能性のある何百何千ものウイルス、バクテリア、カビを吸い込んでいるのです」。これは「何十年も前から分かっていた」ことだが、一般の人々の理解が「今回のパンデミックで結実した」のだと同氏は話している。

Phylagenは当初から我々が呼吸している空気に焦点を当てていたわけではなく、創業当初から2020年の春まで、同社はサプライチェーントラック&トレースと呼ばれる市場で事業を展開していた。これは企業が自社の製品が最終目的地に向かって予定通りの経路をたどっているかどうかを確認するためのセグメントである(迂回した場合、製品に手が加えられた可能性も出てくるため、企業の評判を落としたり、特に医薬品に関しては致命的な結果を招いたりすることもある)。

グリーン氏によると、パンデミックの発生にともない、新型コロナウイルスを追跡する手段として同社の製品にも関心が寄せられたという。しかし、ウイルスが表面ではなく空気を介して広がっていることが明らかになると、同社は同社の技術を別の用途に使用するため完全シフトすることにした。これまでに得た知見や増え続ける微生物のデータベースを、トレーサビリティーのためではなく、建物の中にいる微生物を捕獲し、その情報をデジタル化して顧客に提供するというのがその考えである。

顧客数も増え続けているようだ。グリーン氏は具体的な顧客名を明かしておらず、多数の大手テック企業や商業用不動産会社と密接に連携しているとだけ伝えているが、産業用バイオテック企業Solazyme(ソラザイム)を共同設立したHarrison Dillon(ハリソン・ディロン)氏とともに共同設立された同社の事業は2022年に向けて大繁盛しているという。

収入は前年比10倍、従業員も20人から40人へと増加した同社。Phylagenはこの夏、ヨーロッパの上場企業で、ビルの防火・空調・セキュリティ機器を製造しているJohnson Controls(ジョンソンコントロールズ)から戦略的資金をひそかに調達したこともあり、人員をさらに倍増させる計画だという。

Phylagenはこれまでに3M(スリーエム)、Breakout Ventures(ブレークアウト・ベンチャーズ)、Cultivian Sandbox(カルティビアン・サンドボックス)などから合計3000万ドル(約34億円)を調達している。

しかし当然、次々と現れるライバルたちを出し抜けるかどうかという疑問も残る。

「これがニューノーマルだからこそ、新たな競争相手が現れたのです」とグリーン氏は話す。「誰もが安全な室内空気を求めるようになるでしょう。現在、室内空気の質を測定できる方法は非常に古く、空気に関連する生物学的要素を検査する、手頃で信頼性の高い方法もありません」。

Phylagenが所有するサンフランシスコとマンハッタンの研究所や、提携研究所からの結果を72時間も待つと聞くと、Phylagen独自のプロセスも時代遅れだと感じる人もいるかもしれない。新型コロナウイルスがいまだに急速に広がっていることを考えれば、2~3日というのは決して迅速な提供とは言えない(更新:この記事の掲載後、Phylagenから連絡があり、グリーン氏の発言は誤りであり、Phylagenは24時間以内に顧客に結果を返すことができるとのことであった)。

この速度は近い未来に短縮されるだろうとグリーン氏は考えている。「次世代のテストではすべてが自動化され、現場で行われるようになるでしょう。CO2センサーや、温度と相対湿度の情報を提供するサーモスタット のNest(ネスト) を想像してみてください。これと同じように空気中のDNAやRNAを検出できるようになるのは確実で、私たちは今それを目指して取り組んでいます」。

確かにPhylagenがその潜在能力を発揮すれば、同社のチャンスは絶大なものになるだろう。新型コロナウイルス以外にも多くのものを検査することができ、アレルギー誘発物質も計画に含まれているという。

商業利用のみならず、家庭での使用にも可能性はある。初期投資家である3Mはすでにデータ駆動型の消費者向け製品の開発に取り組んでいるようだ。9月にはPhylagenの技術を使った家庭用清浄度キットの販売を開始しているが、Amazon(アマゾン)で約180ドル(約2万円)という価格はほとんどの家庭にとっては高価すぎるため、現時点では試験的なものなのだろう。

一方でグリーン氏は、今はまだ企業顧客に集中していると主張している。これには他の製品を検討する時間がないという理由もあるようだ。

「3Mの製品から得られる最大のポイントは、検査したい有機体の一覧を自由に作ることができるということです。しかし、現在最も重要で、最大の市場機会と市場ニーズがあるのは商業ビルの分野です」。

「私たちがどんな機能を提供できるかということにかかっています。今、私たちは需要に追いつくために全速力で走っています」。

画像クレジット:Phylagen

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

米FDAがファイザーの新型コロナ経口薬を12歳以上に認可

米食品医薬品局(FDA)は、Pfizer(ファイザー)の抗ウイルス剤Paxlovid(パクスロビド)を緊急認可し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の軽度から中等度の症例を治療する最初の経口療法となった。この治療法は、重症化のおそれのある12歳以上のリスクの高い患者だ。FDAは数日以内に使用を認めているため、オミクロン株の襲来に対して有効かもしれない

Paxlovidは処方箋のみで入手可能で、新型コロナの症状に気づいてから5日以内に服用することになっている。Pfizerのテストによると、高リスクの患者でも入院や死亡を88%防ぐことができる。この治療薬は、ワクチン接種者と非接種者の両方に処方することが可能で、30錠を5日間かけて服用する。タンパク質阻害剤であるニルマトレルビルと、その阻害剤が体内で分解されないようにするリトナビルが含まれており、副作用として味覚障害、高血圧、下痢、筋肉痛などがある。

FDAの医薬評価調査センターのディレクターであるPatrizia Cavazzoni(パトリツィア・カヴァッツォーニ)博士は「この認可により、新たな変異種が登場したパンデミックの緊急事態において、新型コロナウイルスと戦う新しいツールを提供し、重症化のリスクの高い患者に抗ウイルス治療へのアクセス性を高めることができた」と述べている。

ニューヨーク・タイムズによると、これまで米国は1000万人分の薬を注文している。同社は、1週間以内に6万5000人の米国人をカバーするのに十分な錠剤を納入する予定だ。その後、2021年1月に15万個、2月に15万個と生産が拡大される予定となっている。この薬は唯一の抗ウイルス剤というわけではない。Merck(メルク)の対抗となる治療薬も間もなく承認される見込みで、Pfizerよりも容易に入手できるようになる可能性が高い。ただし同社の治療薬ははるかに効果が低く、入院や死亡を30%しか防ぐことができない(それでも、何も治療しないよりはましだ)。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のDevindra HardawarはEngadgetのシニアエディター。

画像クレジット:Pfizer

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(文:Devindra Hardawar、翻訳:Hiroshi Iwatani)

オミクロン株でCES出展者が参加を迷う中、主催は断固開催の意向

少々MWCのようになってきた。もちろん、2020年にバルセロナで開催が予定されていたMobile World Congress(モバイル・ワールド・コングレス、MWC)とは、これまでのところ少し異なる展開になっている。その理由は明らかだ。当時、パンデミックは事実上、未知のものだった。2年近く経った現在、我々は少なくとも、パンデミックをより把握しており、より効果的なツールを手に入れている。たとえ、すべての人がそうした方法を選択していないとしてもだ。

CES 2020は、世界的な封鎖という点では、ぎりぎりのところで間に合った。2021年の展示会では、主催者のCTA(全米民生技術協会)は(非常に賢明にも)そのリスクを回避し、完全にバーチャルで開催することを選択した。CES 2022は、多くの関係者にとって一種のハイブリッドイベントとして、控えめながら復活の道を歩んできた。

これまでのところ、バルセロナで見られたような根本的なドミノ倒しにはなっていない。しかし、オミクロン変異株の急速な広がりは、主催者にとって大きな脅威となっている。ホリデーシーズンの旅行関連の感染者急増(その数値的な影響はCESが終わるまでわからない)が非常にあり得ること、そしてラスベガスの一般的な予測不可能性(友人が最近述べたように、カジノを通らないと中心地のストリップのどこにも行けない)と相まって、なぜ最近多くの人が怖じ気づいたかは理解できる。また、イスラエルなどの国々の渡航制限も難しさに拍車をかけている。

CTAは声明の中で、計画どおり進めることを堅持している。CTAはTechCrunchに、これまでのところ、出展者のキャンセルはフロアスペースの7%に達しており、最新の変異株にもかかわらず、展示会に出展する企業は増え続けていると語った。

CES 2022は、強力な安全対策を取りながら米国時間1月5日から8日までラスベガスで開催されます。また、ラスベガスに行きたくない、あるいは行けない人々のために、デジタルでの参加も用意されています。私たちの使命は、業界を結集させ、実際の会場で参加できない方々にもCESの魅力をデジタルで体験していただくことにあります。

このほど42社の出展キャンセル(展示フロアの7%未満)がありましたが、12月17日以降、実際の会場への出展で新たに60社が加わりました。デジタルアクセスとラスベガスでのイベントの両方への登録はここ数日で数千件増え、力強い勢いを見せています。

CES 2022では世界の健康と安全、モビリティ、問題解決のための重要なイノベーションが展示されるため、計画通り進めます。さらに、何千もの中小企業がビジネスのためにCESに依存しています。出展者数は2200社以上に増え、12月21日に発表したように、両政党から選出された多くのトップがCESに参加します。

ワクチン接種の義務化、マスク着用、新型コロナ検査提供といったCESの包括的な健康対策、そして出席者数の抑制、社会的距離対策と合わせて、参加者、出展者は社会的距離を置きながらもラスベガスでの有意義で生産的なイベントに参加し、我々のデジタルアクセスで実りある体験ができると確信しています。

T-Mobile(Tモバイル)は米国時間12月21日、この展示会会場から撤退する最初の主要スポンサーとなった。同社は、資金面でのスポンサーとしての役割を果たし続けるが(おそらく契約無効化のようなことはまだ起きていない)、チームの大半を派遣しないことにし、CEOのMike Sievert(マイク・シーベルト)氏は対面でもバーチャルでも基調講演を行わない予定だ。奇妙なことに、WeezerはどうやらT-Mobileの祝福を受けながら、中心地ストリップで無料コンサートを行う

WeezerのボーカルであるRivers Cuomo(リヴァース・クオモ)氏のプレスリリースには「大好きなラスベガスに戻り、2021年の壮大なドローンレーシングリーグのラスベガス選手権レースにT-Mobileと一緒に参加できることにとても興奮しています」とある。

Meta(メタ)、Twitter(ツイッター)、Amazon(アマゾン)、Pinterest(ピンタレスト)は最初から手を引いている。しかし、いずれもビッグネームではあるものの、伝統的にこの展示会では目立つ存在ではない。

12月20日の週の初めには、The Verge、CNET、Engadget、PCMag、Gizmodo、Tom’s Guide、TechRadarと同様、TechCrunchもこの展示会にチームを派遣しないことを発表した。私たちとしては、簡単な決断ではなかった。この2年間でオンライン会議の世界へ移行するという著しい変化があったことは事実だが、我々にとってCESのような展示会にはまだ価値がある。

特に、Eureka Park(エウレカパーク)を歩き回り、そうでもしなければ騒音に満ちた受信トレイに埋もれてしまうような新しいスタートアップを直接見ることができるのは、大きな価値がある。筆者は、Venetian(旧Sands)エキスポホールのフロアで多くの企業を発見してきたので、前年の休みを経て再び同じことができることを非常に楽しみにしていた。

CES 2021は、世界(より具体的にはCTA)がすべてオンラインで開催されるハードウェア展示会に対応できるかどうか、大きな試金石となった。自身の体験からいうと、時期尚早だったと思う。バーチャルCESの体験はさほど良いものではなかった。特に、これらの展示会で最も難しく、重要な要素である「発見」に関してはそうだった。

2022年の展示会でどれだけのものが実際に展示されるかは別として、効果的なオンライン開催が必要だ。すでに多くのメディアが遠隔からの取材を計画している。また、このパンデミックが終息すると仮定した場合、今後どのように展示会をカバーするのか、多くの人が疑問に思っているはずだ。

CTAはこれまでのところ、こうした事態に揺るぎない態度を示している。CTAは、新しい健康プロトコルを導入しつつ、予定どおり展示会を開催すると繰り返している。ワクチン接種証明とマスク着用に加え、参加者には無料の迅速検査キットを配布し、参加者は会場に入る前の検査で陰性であることを証明する必要がある。

CESのソーシャルメディアアカウントは、ラスベガス・コンベンション・センター内部の画像や新しい講演者の発表に専念している。講演者には現在のところ、運輸長官のPete Buttigieg(ピート・ブティジェグ)氏や「NFT、WTF?!?!」というパネルでブロックチェーンについて話すことになっているParis Hilton(パリス・ヒルトン)氏などがいる。

Google(グーグル)、HTC、John Deere(ジョン・ディア)、TCL、BMWなどは「状況を注視し続けている」と語っている。NVIDIA(エヌビディア)を含む他の企業は、バーチャルの記者会見を行い、出展は行わないという、十分に警戒することを最初から選択した。

画像クレジット:Photo by ROBYN BECK/AFP / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

Panicの人気携帯ゲーム機Playdateにバッテリー問題、2022年初頭まで出荷できず

Panicが、レトロな雰囲気のかわいい携帯ゲーム機Playdateの予約販売を開始したとき、最初の2万台はホリデーシーズンに向けて2021年末までに出荷される予定だった。そして、この最初のロットは、20分以内に完売した

しかし残念なことに、出荷直前に発生したバッテリー部品の問題により、最初の注文も2022年にずれ込んでしまった。

予約者に送られたメールには、次のように書かれている。

最初の5000台のPlaydate完成品が2021年に向けてカリフォルニアの倉庫に到着したとき、私たちはそのうちの数台をテストし始めました。その結果、期待していたバッテリーの寿命が得られないものがあることに気がつきました。Playdateのバッテリーは非常に長持ちするように設計されていて、しばらく使わなくても、いつでも使えるようになっています。しかし、実際にはそうではなく、バッテリーが消耗してPlaydateの電源が入らなくなり、充電もできないものがいくつかありました。これはバッテリーにとって最悪のシナリオです。

この問題は、数カ月に及ぶ総力を挙げた研究の負担となり、工場での生産を中止しました。

その結果?

私たちは、既存のすべてのバッテリーを、まったく別のバッテリーサプライヤーの新品に交換するという、困難で高価な決断を下しました。

Panicは、新しいバッテリーを受け取り、それらは正常に動いているが、すべてをマレーシア送り返し、電池を交換し、海を越えて戻ってくるまでには時間がかかるだろう。

一方で、2022年に出荷するPlaydateの全機種に搭載する予定だったCPUが、文字通り数年分のバックオーダーになっていることも判明した。

たくさんの予約が入っていたので、2022年以降に必要な部品をすぐに工場に発注しました。その結果は……厳しいものでした。多くの部品が大幅に遅れているのです。実は、Playdateの現在のCPUは、信じられないかもしれませんが、2年間は入手できないのです。そう、730日です。

多くの人が話している「世界的なチップ不足」という話を、もしかしたら聞いたことがあるかもしれません。私たちはそれが現実であることをお伝えしたいと思います。新型コロナウイルスは、世界的なサプライチェーンの障害を連鎖的に引き起こし、多くの電子部品が単に……なくなってしまいました。

この問題を回避するために、同社はプレイデイトの基板を再設計し、より入手しやすく、ユーザーが気づくような動作への影響のない別のCPUをサポートするようにした。

同社によると、1号機から2万号機までは2022年にずれ込んだが、これまでに発注した分が2023年にずれ込むことは今のところないという。

相変わらず、ハードウェアは難しい。さらに、パンデミックが加わると……。

画像クレジット:Panic

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Yuta Kaminishi)

【ロボティクス】パンデミックの影響、看護支援ロボットDiligent Robotics CEOとの興味深い話

筆者はここ数日、大きなプロジェクトに関わっていた(詳細については近日公開予定)ため、残念ながら最新ニュースにしばらく目を通しておらず、ロボティクスに関する今週の大きなニュースについてまったく把握していなかった。そこで、このコラムでその遅れを少し取り戻したいと思う。

そのニュースを取り上げる前に、少し別の話を紹介しよう。筆者は、パンデミックの期間中にユニークな経験をした興味深いロボティクス企業と対談する機会があった。

Diligent Robotics(ディリジェント・ロボティクス)がシリーズAを発表したとき、世界はそれまでとはまったく違ってしまったと言っていいだろう。2020年3月は今からそれほど遠い昔ではないが、現在に至るまでパンデミックによって世界中の医療機関は非常に大きな負担を強いられ続けており、その影響がこれほどまでに広範囲かつ長期間に及ぶとはほとんど誰も予想していなかった。病院スタッフの過労と人手不足の傾向は、新型コロナウイルス感染症の流行以前にも見られたが、流行後にはその傾向が顕著になり、同社の看護支援ロボットMoxi(モキシー)の需要が急激に増加した。

2020年実施された1000万ドル(約11億円)の資金投入がディリジェントの成長に貢献したことは間違いないが、同社は在宅勤務に移行する際に誰もが遭遇する課題に対処しながら、生産能力を高めるという難しいタスクに取り組んでいた。

2017年にVivian Chu(ヴィヴィアン・チュー)氏とともにディリジェントを設立した、Interactive Computing at Georgia Tech(ジョージア工科大学インタラクティブ・コンピューティング学部)のAndrea Thomaz(アンドレア・トマス)准教授は筆者たちと今週会い、2020年経験したユニークな課題と機会について話してくれた。

ロボティクス業界とディリジェントが、パンデミックによって受けた影響の度合いは?

さまざまな業界で労働市場が実に劇的に変化した。これはロボティクス業界とディリジェントの両方に言えることだが、この劇的な変化は、多くの従業員が退職しようとしていること、すなわち何か別のことを始めようとしていることと関係しているように思える。そして実際、多くの人が職を変えている。この傾向はあらゆる技術的な職業に見られ、我々の業界や医療業界で多くの事例が上がっている。とにかく、多くの人が何か別のことを始めようと考えている。パンデミックが始まる前も労働力に関する課題はあったが、今やそれが危機的なレベルになりつつある。

技術的な仕事に就きたいと思う人は常に少ないが、技術的な仕事の需要は常に高い。これはある意味、危機的な状況と言えるだろう。

この傾向はパンデミック前から始まっていた。パンデミックでそれが顕著になったに過ぎない。この傾向は、医療保険改革法(オバマケア)に端を発している。より多くの人が医療を受けられるようになったということは、病院に行って医療を受けられる人が増えたことを意味する。これが高齢化と相まって、必要な医療を提供するスタッフのさらなる不足を引き起こしている。

パンデミック発生の時点でロボットを採用していた病院の件数と、需要がその後どのように急増したかという観点から、需要を把握することはできるか?

我々はまだその情報を公開していない。来年の前半までには、その規模についてより具体的な数値を発表できるだろう。ただし、四半期ごとにロボットの出荷台数を2倍に増やしていることは確かだ。

そのようなロボットの運用に至るプロセスはどのようなものか?

これは、病院市場に関して非常に興味深いテーマであると考えている。このプロセスは、倉庫や製造における従来の自動化とは異なる。ロボットを運用する環境では、看護師や臨床医が働いている。ロボットは、そのような環境で人と一緒に作業をしなければならない。我々は、まず初めにワークフローを評価する。つまり、その環境で現在どのように業務が行われているかを評価するのだ。

画像クレジット:Diligent Robotics

パンデミックは企業の成長にどのような影響を与えたか?

パンデミック前は、製品の市場適合性が満たされていた。我々の研究開発チームの作業は、製品に変更をわずかに加えるだけの非常に小規模なものだった。製品を顧客に見せて価値を示すだけでよかった。しかし現在は契約の締結と納入が重要で、最短期間で導入し、耐久性を最大限高めることを考えることが必要だ。特にハードウェアの面では、製造プロセスと信頼性に関してどのように設計すべきかが大切だ。現在、当社のロボットが現場で1年以上稼働しており、以前と比べて信頼性が高まっている。今や、ロボティクスのロングテール現象が起こりつつあり、今後が楽しみだ。

パンデミックによって、ロボティクスの分野で驚くべき機能や需要が生まれたか?

当社の顧客のどの現場でも「そのロボットはコーヒーを持ってこられるようになるか」と看護師は口を揃えていう。モキシーがロビーのStarbucks(スターバックス)に行き、みんなのためにコーヒーを買ってくることを看護師たちは期待している。自分たちはスターバックスに行って並ぶ時間がないから、時間の節約になるというわけだ。実現できないわけではないが、積極的に試してみようとは考えていない。

つまり、モキシーにエスプレッソマシンを搭載する計画はないということか?

その計画が来年のうちに実現することはないだろう。

近い将来、資金をさらに調達する予定はあるか?

現在、増資の計画中だ。今のところ順調だが、顧客からの需要が非常に高まっているため、チームを増強してロボットの出荷台数を増やすのは、やぶさかではない。

現時点では米国市場に注力するつもりか?

当面はその予定だ。当社では、世界的に展開する戦略について検討を始めている。2022年中に当社の製品が世界中に行き渡るとは考えていないが、すでに多くの引き合いが来ている。現在、販売パートナーを選定中だ。世界各地のクライアントから、1カ月に何件も問い合わせが来ている。今のところ、それらのクライアントと積極的に進めているプロジェクトはない。

画像クレジット:Tortoise / Albertsons

資金調達とコーヒーの配達については、別の機会に取り上げよう。今週は、配送関連で注目の話題がいくつかあるので紹介しよう。まず、過去に何度も取り上げたTortoise(トータス)だが、同社のリモート制御による配達ロボットのチームに追い風が吹いてきた。米国アイダホ州を拠点とするKing Retail Solutions(キングリテールソリューションズ)との取引によって、ラストワンマイル配送用に500台を超えるトータスのロボットが米国内の歩道に導入される。

CEOのDmitry Shevelenko(ドミトリー・シェベレンコ)氏は「未来の姿がニューノーマルになるというこの新しい現実に、誰もが気づき始めている。ラストワンマイル配送で時給20ドル(約2300円)稼ぐスタッフを動員しても、想定されるどんな状況でも消費者の期待に応え続けるということはできない。単純計算は通用しないのだ」と語る。

先に、Google(グーグル)のWing(ウィング)は、同社による提携を発表した。ウィングは、オーストラリアの小売店舗不動産グループであるVicinity Centres(ビシニティ・センターズ)と提携し、ドローンを使用した配達プログラムの範囲をさらに拡大する。ウィングは、10万件の配達を達成したという先日の発表に続き、オーストラリアのローガン市にあるグランドプラザショッピングセンターの屋上からの配達件数が、過去1カ月間に2500件に達したと発表した。

ローガン市の住民は、タピオカティー、ジュース、寿司を受け取ることができる。今や美容と健康に関する製品まで配達できるようになった。ウィングは「一般的な企業の建物には屋上があるため、当社の新しい屋上配達モデルによって、ほんの少しの出費とインフラ整備だけで、さらに多くの企業がドローン配達サービスを提供できるようになる」と語る。

画像クレジット:Jamba / Blendid

ジュースといえば(といっても、まとめ記事で筆者がよく使う前振りではない)、米国サンフランシスコのベイエリアを拠点とするスムージーロボットメーカーのBlendid(ブレンディド)は先に、Jamba(ジャンバ)のモールキオスク2号店に同社の製品を導入すると発表した。このキオスクは、米国カリフォルニア州ロサンゼルス郡のダウニー市のモールに今週オープンした。ちなみにダウニー市は、現在営業しているMcDonald’s(マクドナルド)の最も古い店舗がある都市でもある(Wikipediaより)。

これは時代の波だろうか。それとも何かのトリックだろうか。答えはどちらも「イエス」だ。

ジャンバの社長であるGeoff Henry(ジェフ・ヘンリー)氏はプレスリリースで「Jamba by Blendid(ジャンバ・バイ・ブレンディド)のキオスク1号店オープン後に、Stonewood Center(ストーンウッド・センター)に試験的にキオスク2号店をオープンして、モールの買い物客に新鮮なブレンドスムージーを販売できることをうれしく思います。ジャンバ・バイ・ブレンディドでは最新の非接触式食品提供技術を採用しているため、当社の現地フランチャイズ店は、ジャンバ好きのファンにスムージーを簡単に提供できます」と述べている。

画像クレジット:Abundant Robotics

ここで、フルーツに関するビジネスの果樹園サイドに注目しよう。Robot Report(ロボットレポート)に今週掲載された記事には、Wavemaker Labs(ウェーブメーカーラボ)が今夏に廃業したAbundant Robotics(アバンダント・ロボティクス)のIPを取得したことが紹介されている。残念ながら、アバンダントのリンゴ収穫ロボットが復活するわけではなさそうだ。どうやら、ウェーブメーカーのポートフォリオスタートアップ企業であるFuture Acres(フューチャー・エーカーズ)のロボティクスシステムに、このIPが組み込まれるようだ。

最後に、アームに搭載されたRFアンテナとカメラを使用して紛失物を探す、MITが研究しているロボットを簡単に紹介しよう。以下はMITの発表からの引用文だ。

このロボットアームは、機械学習を使用して対象物の正確な位置を自動で特定し、対象物の上にある物を移動させ、対象物をつかみ、目標とする物体を拾い上げたかどうかを確認する。RFusionにはカメラ、アンテナ、ロボットアーム、AIが包括的に統合されており、どんな環境でも的確に機能する。特別な設定は不要だ。

画像クレジット:Diligent Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

UVC殺菌システムR-Zeroが「目と耳」となる室内の占有センサーCoWorkrを買収、「職場にとってのOS」を作る

パンデミック渦に誕生したバイオセーフティ企業のR-Zeroは2021年7月下旬、室内の占有センサーを開発する企業であるCoWorkrの買収を発表した。人々が職場に戻り、ワクチンが広がりを見せる今、新型コロナウイルスの出現によって生まれた企業たちはパンデミックの次の段階を見据えて適応し始めている。R-Zeroにとって今回の買収は、同社の焦点のシフトと言えるだろう。

2020年4月に設立されたR-Zero。同社は主に病院グレードのUVC殺菌システム、つまり特定の種類のウイルスを中和できる照明の開発に注力していきた(詳細は後述)。企業が建物内を除菌する方法を求めて奔走する中、同社は2億5650万ドル(約282億円)の評価額で合計5880万ドル(約65億円)の資金を調達。R-Zeroは現在、複数の矯正施設、Brooklyn Nets、Boston Celtics、サウスサンフランシスコ統一学区など、約1000の民間および公共部門の顧客を抱えている。

CoWorkrは2014年に設立され、Crunchbaseによると総額約20万ドル(約2200万円)のシードファンディングを調達している。

CoWorkrの買収により、R-Zeroは職場の人員と清掃の両方を管理するモノのインターネットのようなセンサーネットワーク開発を計画していると、R-Zeroの創業者であるGrant Morgan(グラント・モーガン)氏は話している。単に空気や物の表面を消毒するだけではなく、公共スペースにおける人(およびウイルスやバクテリア)の流れを管理する事に重点を置いていくようだ。

「職場のOSのようなモノです。健康と生産性を核とした室内環境の構築と維持を支援するツールを作っています」とモーガン氏はTechCrunchに話す。

CoWorkrの共同設立者であるElizabeth Redmond(エリザベス・レドモンド)氏とKeenan May(キーナン・メイ)氏は引き続きフルタイムで勤務することとなっており、企業の不動産関連の取り組みを運営し、IoT能力を開発していく予定だ。

「我々はお客様と多くの時間を過ごし、お客様の取り組みを理解できるよう努めてきました。中でも特に商業用不動産に対して注力しました」とレドモンド氏はTechCrunchに話している。

「大半の企業がハイブリッドな働き方に移行しているため、占有率情報はとても必要とされています。私たちがR-Zeroに加わったのは、ハイブリッドワークの未来、そして商業不動産の未来がどうなっていくのかという点が非常に注目されているためです」。

CoWorkr買収前のR-ZEROの主力製品はUVCライトの「Arc」というもので、これは清掃員が退社した後のオフィススペースに持ち込めるホイール付きの長方形のライトである。また、居住空間で使用可能な製品として提供されていた、同じくUVC光で除菌するエアフィルター「Arc Air」もある。

2020年半ばにUVCライトが脚光を浴びたのにはいくつかの理由がある。1つには共同スペースを消毒するための強力な手段だと考えられたこと、そしてもう1つには企業が新型コロナに対して技術的なソリューションを用いると一定のインセンティブが受けられたことなどが挙げられる。

UVCライトは何十年も前から病院で使用されており、スキャナーなどの表面を除菌したり、UVエアダクトに挿入して空気を除菌したりするために活用されてきた。研究によると、UVCは空気中のインフルエンザウイルスを不活性化することができるとされており、また限られた証拠しかないものの、UVCはウイルスの外側のタンパク質コーティングを破壊することで、SARS-CoV-2その他のコロナウイルスも不活性化できるという研究結果もある。

これらのライトは実際にパンデミック渦でも活用されていた。例えばニューヨーク都市交通局は、毎晩地下鉄車両を消毒するために100万ドル(約1億1000万円)相当のUVCライトを購入。2020年3月に可決されたCARES法は、企業や公的機関がUVライトなどの清掃サービスを購入する際に、政府の融資を利用できるようにするものだった。

しかし、消費者向けのランプの中には批判的な意見も存在した。1つは長時間照射すると目を傷つけたり、火傷をしたりする可能性があること。またUVC消毒に関するあるレビュー(UVC消毒会社と関係のある2人の科学者によって書かれたもの)では「性能に関する非科学的な主張」が広まっているとの厳しい評価がなされている。

一方で第三者機関によるテストを行なったところ、R-ZEROのArcは一般的な風邪のコロナウイルスと、表面に付着したノロウイルスの代替ウイルスの2種類のウイルスを99.99%減少させることが確認されている。また、大腸菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しても99.99%の除菌効果があったという。

UVCライトの殺菌技術としての有用性については賛否両論あるものの、この業界が消え失せてしまうことはないと複数のアナリストが指摘している(例えばLGはUVベースのクリーニング分野に参入したところだ)。William Blairの商業サービス株式アナリストであるTim Mulrooney(ティム・マルルーニー)氏は、ワシントン・ポストに対し、人々の衛生に対する考え方が「パラダイムシフト」していると伝えている

2020年に行われた世論調査によると、衛生管理は従業員と顧客の両方にとって最重要事項であることが示唆されている。Deloitteが3000人を対象に実施した調査では、従業員の64%が共有スペースの定期的な清掃を重要視していると回答し、顧客の62%が毎接客ごとに表面を清掃して欲しいと回答している(新型コロナウイルスは表面接触では感染しにくいと考えられているのにも関わらずである)。

ワクチン接種の増加が、今後のオフィス衛生に対する認識にどのような影響を与えるかはまだわからない。しかしモーガン氏は、企業(および従業員)は身近な細菌の存在をパンデミック前よりも意識し、オフィス内の人の流れを管理することも含め、その蔓延を抑制する方法を模索し続けるだろうと考えている。

R-ZeroはCoWorkrを買収したことでUVC殺菌だけでなく、占有管理にも力を入れることになったわけだ。

モーガン氏はCoWorkrのセンサーをR-Zeroの「目と耳」と呼んでいる。R-Zeroは居住空間の空気清浄度に対応したUVCベースの2つの製品を発表する予定で、CoWorkrのセンサーを使って「完全な自動化」を実現していくという。

例えばCoWorkerのバッテリー式熱センサーを使えば、従業員はオフィスのどの部屋が使われているかを知ることができる。その情報をもとにUVベースのエアフィルターやその他の清掃用品を活用することができるという。

この情報をもとに、その日の晩にその部屋をより徹底的に掃除するよう清掃員に指示することができ、逆に一日中誰も触っていない部屋は掃除しなくてもよいことになる。

「お客様はすぐにROIを高めることができ、30〜40%の人件費を削減しています」とモーガン氏は話す。

パンデミックの「傷跡」が癒えることはまだなく、人々は今後も依然として衛生的な職場環境を求め続けるだろうと同社は考えている。

「ほぼ100%、お客様はこれを長期的な投資として考えています」とモーガン氏はいう。

画像クレジット:R-Zero

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

新型コロナウイルスの影響から液体酸素が不足、ロケット打ち上げ延期の原因に

新型コロナウイルス流行の余波は、宇宙飛行というおそらく最も似つかわしくない場所にまで及んでいる。米国時間8月27日、NASAは新型コロナウイルスの影響による液体酸素(LOX)の不足を理由に、9月の衛星打ち上げを延期するという予想外の措置を取ったが、今後も打ち上げの延期は続くかもしれない。

酸素の需要はデルタ変異株で高まる一方だ。多くの都市で入院やICUへの入室率が、新型コロナウイルス流行開始時の状態にまで戻ってしまった。酸素は人工呼吸器に使われるだけではない。宇宙産業では、LOXをロケット推進剤の酸化剤として使用しており、液体水素など他のガスと組み合わせて使用されることが多い(打ち上げ時に大量の蒸気が発生するのは、水素が酸素と反応して水になるためだ)。

Boeing(ボーイング)とLockheed Martin(ロッキード・マーチン)の合弁会社であるUnited Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)とNASAは、Landsat 9(ランドサット9号)衛星の打ち上げ日を9月23日に変更すると発表した。

LOX不足の影響を受ける可能性のある打上げ会社はULAだけではない。SpaceX(スペースX)のGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)社長は、先週開催されたSpace Symposium(スペース・シンポジウム)のパネルディスカッションで「2021年は打ち上げ用の液体酸素が不足するため、実際に影響を受けることになるでしょう」と述べ「もちろん、病院で必要な酸素が確実に手に入れられるようにすることが大事です。しかし、どなたか余分に液体酸素をお持ちの方はメールでご連絡ください」と続けた。

SpaceXの創業者でCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、数日後にTwitter(ツイッター)でLOX不足について「リスクではあるが、まだ制限要因ではない」と発言した。

SpaceXのグウィン・ショットウェル社長、COVID-19による液体酸素の不足により、ロケット打ち上げの頻度が減ると語る。

ヴィンセント・ユー

リスクではありますが、まだ制限要因ではありません。

イーロン・マスク

実際に酸素の供給量が少ないだけでなく、新型コロナウイルスによる混乱がサプライチェーンに影響を与え続けているため、出荷の遅れが広まっていることも液体酸素不足を悪化させている。ULAのTory Bruno(トリー・ブルーノ)CEOはTwitterで、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地への窒素輸送を担当している業者が、フロリダ州でLOX配送を支援するために転用されたことを付け加えた。

9月16日の@ulalaunchによるSLC 3の打ち上げ予定時刻に関して、新たな情報はありませんか?

ムーン・トゥ・マーズ

VAFBに液体GN2を輸送しているUSGの業者は、フロリダでCOVIDの影響によるLOXの問題に協力しています。現在そのような状況で作業を続けています。

トリー・ブルーノ

LOX不足の影響を受けているのは、宇宙産業だけではない。NASAが打ち上げ延期を発表する少し前、フロリダ州オーランド市の当局は、住民に節水を呼びかける通知を送った。同市の水道処理にLOXが使われているためだ。

「当然ながら人命救助を優先するため、全国的に液体酸素の需要が非常に高まっており、OUC(オーランド市水道局)への供給が制限されています」と、オーランド市のBuddy Dyer(バディ・ダイアー)市長は、Facebookで述べている。「処理に必要な水の量を直ちに減らさなければ、私たちの水道水の水質に影響が出る可能性があります」。

非営利団体「Center for Global Development(グローバル開発センター)」は、2020年5月の時点で、新型コロナウイルスを、病院への十分な酸素供給に対する「警鐘」と呼んでいた。

画像クレジット:Heather Paul Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)