アプリで救急搬送先を検索―、医師版SNS「Whytlink」の運営元が4億円を調達

 

LINEやFacebook Messengerなどのコミュニケーションアプリが個人ユーザーには普及したが、今後医療現場でもチャットアプリの普及が加速するかもしれない。医療系ITサービスを提供するリーズンホワイは本日、総額4億円の第三者割当増資を発表した。引受先はアンテリオ、ファストトラックイニシアティブ、DBJキャピタルの3社だ。

リーズンホワイの主要サービスは、2015年6月から提供を開始している医師向けSNS「Whytlink(ホワイトリンク)」だ。Whytlinkは医師版LinkedInのようなサービスで、各医師の経歴や実績を掲載している。医師同士の推薦や患者の紹介情報などもWhytlinkに集約することで、専門医の得意分野などを可視化するためのサービスだ。Whytlinkに登録している医師は、2016年12月に1000名以上になったという。

2017年1月からはiOSアプリもリリースしている。これは主に医師同士のコミュニケーションを効率化することを目的としている。LINEやFacebook Messengerでも連絡は取れるが、患者の医療相談を扱う場合はセキュリティー面が不安だったり、他の病院の医師とは連絡しづらかったりという課題があった。このアプリが使えるのはWhytlinkに登録している実名の医師に限り、アプリは患者情報のやりとりを想定していてセキュリティー対策も万全だという。これまで救急搬送の場合など、医師同士は電話で連絡を取ることが多かったが、チャットであれば画像も添付でき、的確なコミュニケーションが取れる。また、近くの病院を検索する機能などもある。

今回の調達と同時に、リーズンホワイはこのアプリに新しく「症例検討機能」を実装したと発表した。これは、患者の症例ごとに院内外の医師と症例を共有して、治療法を検討するための機能だ。患者の情報を共有する際には、患者の同意を事前に取得するための機能も実装しているという。

また、リーズンホワイは今年の秋にも患者が医師から治療提案を受けられるサービス「Findme」をローンチする予定だという。これは、患者が提供する診断情報をコーディネーターとなる総合診療医が見て、患者をWhytlinkに登録している専門医とつなぐ仕組みだとリーズンホワイの代表取締役社長を務める塩飽氏は話している。

Findmeについては2016年3月に取材した時、2016年夏頃にはローンチする予定と話していた。リリースが延期となったのは、Findmeのモデルを考え直したからと塩飽氏は言う。当初は例えば、整形外科など領域を絞ってFindmeを展開する予定だった。しかし、実際の事例を見ると、腰の痛みから整形外科にかかりたいと話していた患者は、実際は別の病気が痛みの原因になっていたというようなこともあった。患者にとって最良のオプションを提示するためには、総合診療医によって適切な専門医とつなげるモデルにする必要があると考え、リリース時期を延期してそのモデルの実現に注力してきたと塩飽氏は説明する。また、Whytlinkの登録医師も徐々に増えているが、これが数千人規模まで増えた段階でFindmeをローンチすることが事業にとっても適切と考えているという。

リーズンホワイは他にも、製薬メーカー向けにどの病院がどういった疾患の治療が得意なのかを把握できるサービス「Whytplot(ホワイトプロット)」を提供している。Whytplotは2017年3月に提供開始以来、26の医療機関、製薬会社、医療品や医療機器販売会社などで導入が進んでいるそうだ。また、2014年4月から提供している患者が疾病や医療機関について深く知るためのサービス「yourHospital」は提供を終了している。

リーズンホワイは2011年7月に創業し、2016年3月にはファストトラックイニシアティブと東大総研から総額1.6億円を調達している。今回調達した資金は、既存サービスを拡充していくこと、そしてこれから展開するFindmeの開発に充てると塩飽氏は話している。

Alphabet傘下Verilyのスマートウォッチは大量の生命徴候データを長期にわたって集め医学研究に奉仕する

長期的な医学研究を念頭に置いて設計されたStudy Watchは、ふつうのスマートウォッチとはまったく異なる要求に応えている。このデバイスを設計したVerilyはGoogleの持株会社Alphabetの傘下で、多発性硬化症の観察やグルコースレベルをモニタするコンタクトレンズなど、本格的な医学研究をターゲットにしている。

Study Watchも重要な研究を支えることが目的で、Personalized Parkinson’s Projectなど、今同社が抱えているプロジェクトのために生命徴候(体温、脈拍などの基本的測度)を集める。ちなみにPersonalized Parkinson’s Projectは、疾病(この場合はパーキンソン病)の進行のパターンを調べて、治療法の手がかりを見つけるプロジェクトだ。

この一見して平凡なウェアラブルは、今後Baselineプロジェクトにも使われる。これは2014年に発表されたプロジェクトで、175名の生命徴候を長期にわたって調べ、“健康な人間”をこれらの測度で定義しようとする試みだ。

Googleはそのプロジェクトを、自動運転車や気球によるインターネット接続サービスなどと並ぶ“ムーンショット”(moonshot, 月へのロケット打ち上げ, 夢のような超未来的プロジェクト)と呼び、批判を浴びたこともある。でも、自動運転車ほどの派手さはないものの、Verilyの大風呂敷的なミッション声明には合っている: “健康データを集めて整理し、それらの健康データから得られたインサイトをよりホリスティックな診療に用いる介入やプラットホームを作る”。 〔この場合は、医学用語としての‘介入’〕

だからStudy Watchには、Googleの消費者向け電子製品の華やかさはないが、でも同社の説明からは、主力製品であることが伺える。ごくふつうの腕時計としても使えるこの地味なデザインは、毎日のデータ収集を気にならないものにする狙いもある。しかも、それほどまずいデザインでもない。

このデバイスは、特殊な設計により、リアルタイムの計算処理にもデータを供給できる。それにセンサーの数がとても多くて、そこらの心拍計つきスマートウォッチとは一線を画している。

“複数の生理的センサーや環境センサーを用いて、心血管疾患や運動失調などさまざまな分野の研究に使えるデータを測定する”、とVerilyの発表声明は言っている。“集めるデータは、心電図、心拍、皮膚電気の変化、慣性運動などだ”。

長期的な使用に耐えるためには、電池寿命が長いことが重要だが、このデータ収集ウォッチは常時onのeインクふうディスプレイを使って、1週間の寿命を実現している。内蔵ストレージも大容量だから、頻繁にシンクしなくてもよい。そのことも、このデバイスの‘気にならなさ’に貢献している。

このデバイスの発表は、タイミングも良い。一日前には、Appleが糖尿病患者のグルコースレベルをモニタする秘密プロジェクトが、うわさで広まったばかりだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Appleの秘密チームが採血する必要のないグルコースレベル測定製品を研究開発中

Appleは生物医学方面の研究者集団を雇って、センサーを利用して糖尿病患者をモニタする秘密のプロジェクトに取り組んでいる、とCNBCが報じている

糖尿病患者は世界中で3億7100万人いる、と推定されていて、近年ではいくつかのテクノロジー企業が新しい治療法の開発に取り組んでいる。たとえばVirtaという新進のスタートアップは、患者の行動をリモートでモニタし完全に治癒することを目指している。またベイエリアのLivongo Healthは5250万ドルを調達して、血糖値監視製品を開発している。

通常、患者が自分のグルコースをモニタするためには、腕などに針を刺して自分の血液を採取していたが、それをしなくてすむようになれば、大革命だ。CNBCにそのニュースを教えた人は、Appleが開発しているのは皮膚の下に埋め込む光学式のセンサーで、その光り方でグルコースの値を測定できる、と言っている。

針を使わない方法はこれまでにもいくつか考えられたが、いずれもうまくいかなかった。Alphabetの生命科学企業Verilyは、グルコースレベルが分かるコンタクトレンズを考えたが、一部の報道によると、すでに3年経ったそのプロジェクトは、あまり快調ではないようだ。

しかし報道ではAppleのプロジェクトも少なくとも5年は経っており、今ではフィジビリティテストを行うべき段階だ、という。また、この種の製品に対する規制をクリアするために、コンサルタントを雇った、とも言われている。

チームを指揮するのはAppleのハードウェア技術担当SVP Johny Srouji、メンバーは30名だそうだ。その中の少なくとも10数名は、Appleが生物医学分野(ZONARE, Vital Connect, Sano, Medtronicなどの企業)から熱心にスカウトした人たちのようだ。

このプロジェクトについてAppleに確認することはできない(Appleからの返事がない)が、同社はかなり前からこのようなビジョンを持っていた。Walter Isaacsonが書いたSteve Jobsの伝記によると、彼はAppleをテクノロジーと生物学が交わる場所にしたい、と考えていた。今すでにその場所にいるのが、ウォーキングの歩数を計り、燃焼カロリーを計算し、心拍などの生物学的測度を計るApple Watchだ。そして皮膚に埋め込むグルコースセンサーも、同じくユーザーがどこにいてもグルコースレベルを計ることができて、採血の必要もないから、業界を一変させる製品になるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

トヨタが歩行回復を助けるロボット、レンタルへ―WW-1000は半身麻痺のリハビリに朗報

トヨタはWelwalk WW-1000という装置のレンタルを開始すると発表した。これは半身麻痺の患者が再び歩けるようになることを助けるロボットだ。WW-1000にはある種の外骨格が組み込まれており、麻痺が起きている側の脚に取り付ける。患者が歩けるよう強力なモーターが膝関節を支える。この装置の利用により患者はやがて自力歩行ができるようになる。

このロボット補装具には専用の大型トレッドミルとハーネスが用意されており、全体として歩行の練習ができ、また安全を確保する。患者はハーネスにより頭上から支えられる。リハビリを助ける医療スタッフは扱いやすいタッチスクリーンを通じて装置を調整し、練習を見守ることができる。

Associated Pressによれば、Welwalkシステムは今年後半にまず日本の医療機関に導入される予定だ。レンタル料金は初期費用が100万円、月額料金が35万円程度という。これは医療機器の水準からすれば負担になるような金額ではない。しかも脳出血その他の原因によって半身麻痺を起こした患者の歩行能力の回復に要する期間を劇的に短縮する効果がある。

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    A model demonstrates how the rehabilitation-assist robot Welwalk WW-1000, developed by Japan's Toyota Motor Corporation, helps to assist in flexing and extending the knee while walking on a treadmill during a press preview in Tokyo on April 12, 2017. Toyota Motor Corporation announced that the company will launch a rental service for the Welwalk WW-1000 robot from the fall of 2017. The Welwalk WW-1000 is designed to aid in the rehabilitation of individuals with lower limb paralysis as a result of stroke and other causes. / AFP PHOTO / Kazuhiro NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)
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    A model demonstrates how the rehabilitation-assist robot Welwalk WW-1000, developed by Japan's Toyota Motor Corporation, helps to assist in flexing and extending the knee while walking on a treadmill during a press preview in Tokyo on April 12, 2017. Toyota Motor Corporation announced that the company will launch a rental service for the Welwalk WW-1000 robot from the fall of 2017. The Welwalk WW-1000 is designed to aid in the rehabilitation of individuals with lower limb paralysis as a result of stroke and other causes. / AFP PHOTO / Kazuhiro NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)
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    A model demonstrates how the rehabilitation-assist robot Welwalk WW-1000, developed by Japan's Toyota Motor Corporation, helps to assist in flexing and extending the knee while walking on a treadmill during a press preview in Tokyo on April 12, 2017. Toyota Motor Corporation announced that the company will launch a rental service for the Welwalk WW-1000 robot from the fall of 2017. The Welwalk WW-1000 is designed to aid in the rehabilitation of individuals with lower limb paralysis as a result of stroke and other causes. / AFP PHOTO / Kazuhiro NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)
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    A model demonstrates how the rehabilitation-assist robot Welwalk WW-1000, developed by Japan's Toyota Motor Corporation, helps to assist in flexing and extending the knee while walking on a treadmill during a press preview in Tokyo on April 12, 2017. Toyota Motor Corporation announced that the company will launch a rental service for the Welwalk WW-1000 robot from the fall of 2017. The Welwalk WW-1000 is designed to aid in the rehabilitation of individuals with lower limb paralysis as a result of stroke and other causes. / AFP PHOTO / Kazuhiro NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)
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    A model demonstrates how the rehabilitation-assist robot Welwalk WW-1000, developed by Japan's Toyota Motor Corporation, helps to assist in flexing and extending the knee while walking on a treadmill during a press preview in Tokyo on April 12, 2017. Toyota Motor Corporation announced that the company will launch a rental service for the Welwalk WW-1000 robot from the fall of 2017. The Welwalk WW-1000 is designed to aid in the rehabilitation of individuals with lower limb paralysis as a result of stroke and other causes. / AFP PHOTO / Kazuhiro NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)
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    A model demonstrates how the rehabilitation-assist robot Welwalk WW-1000, developed by Japan's Toyota Motor Corporation, helps to assist in flexing and extending the knee while walking on a treadmill during a press preview in Tokyo on April 12, 2017. Toyota Motor Corporation announced that the company will launch a rental service for the Welwalk WW-1000 robot from the fall of 2017. The Welwalk WW-1000 is designed to aid in the rehabilitation of individuals with lower limb paralysis as a result of stroke and other causes. / AFP PHOTO / Kazuhiro NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)
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    A model demonstrates how the rehabilitation-assist robot Welwalk WW-1000, developed by Japan's Toyota Motor Corporation, helps to assist in flexing and extending the knee while walking on a treadmill during a press preview in Tokyo on April 12, 2017. Toyota Motor Corporation announced that the company will launch a rental service for the Welwalk WW-1000 robot from the fall of 2017. The Welwalk WW-1000 is designed to aid in the rehabilitation of individuals with lower limb paralysis as a result of stroke and other causes. / AFP PHOTO / Kazuhiro NOGI (Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP/Getty Images)

Welwalkシステムは患者が自力で歩ける最低限の力で補助を行うようモーター出力をきめ細かく調整できる。これが回復期間の大幅短縮をもたらす秘密だ。麻痺のある患者のリハビリでは補装具による支えを次第に減らしていくことで患者の自力歩行の回復を促す。支える力が強すぎると助患者は補装具に頼り切ってしまう。逆に支える力が弱すぎれば転倒などの事故に結びつきかねない。トヨタのロボット補装具は内蔵されたセンサーにより患者ごとに、また患者の回復に合せて最適な力で支えを行うことができるという。

トヨタは各種のロボティクスを以前から研究してきた。トヨタの人工知能研究の拠点、TRI(Toyota Research Institute)では高齢者の生活の質を高めるためのテクノロジー の開発を大きなテーマとしている。韓国のHyundaiも昨年ロボティクスを応用した補装具のデモを行っている。全体として自動車メーカーは自動車関連だけでなくさまざま形態での人間移動を助けるシステムの開発に力を入れ始めたようだ。

画像:: KAZUHIRO NOGI/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

スイスで血液サンプルの病院間搬送にドローンの遠距離自律飛行が認められた…交通渋滞の悩み解消

スイス連邦民間航空局(Swiss Federal Office for Civil Aviation, FOCA)がMatternetに、同社の配達ドローンが昼夜を問わずいつでも、都市の上空を自律飛行してもよい、と認可した。この規制のハードルをクリアしたことによって来年早々から、MatternetのパートナーSwiss Post(スイス郵便)は、Matternetのドローンを使って血液サンプルなどの小荷物を、人口56000人の小都市ルガーノの病院間で配達できることになる。

MatternetのCEOで協同ファウンダーのAndreas Raptopoulosは語る: “わが社にとって大きな進歩だ。これからはわが社の技術を、スイス全域で運用できる。医療とeコマースの大きな機会が開ける”。彼がとくに強調するのは、Matternetのシステムをボタンひとつで利用でき、しかもスイス国内では見通し線を超えたドローンの飛行が可能になることだ。

配達ドローンで競合するZiplineFlirteyなどは、ドローンを作って顧客のためにそれらを飛ばす仕事をするが、Matternetは同社の技術を、Swiss Postに代表されるような物流企業に売っている。

今回スイス政府が自律飛行を許可したMatternetのM2ドローンは、航続距離20キロメートルで2キログラムの荷重を運ぶ。平均速度は、毎時36キロメートルだ。クワッドコプターで、二重化センサーと自動操縦システムを搭載している。機上の電子機器がだめになったら、パラシュートを開いて着陸する。離陸も着陸も基地局から行い、そこには赤外線信号によるピンポイントの着陸ができる。

今月(2017/3)の初めにSwiss PostとMatternetは“共同イノベーションプロジェクト”を立ち上げ、手始めに、ティチーノのEOC病院グループのうちルガーノの2院間のドローン配達をテストした。それまでは血液サンプルも陸上輸送だったから、渋滞などで緊急の検査に間に合わないこともあった。病院間でサンプルを空輸できるようになり、しかも有人のヘリや飛行機は不要だから、検査と、その後の診療行為に遅れがなくなる。

ドローンの医療利用はすでに各所で始まっている。ドイツでは、DHLの“小荷物コプター”が、北海の孤島ユイストの住民に薬を届けている。ルワンダでは、Ziplineが政府の事業により、血液や医療用品を病院と診療所に配達している

でも、MatternetとSwiss PostとティチーノのEOC病院グループの取り組みは、先進国の人口稠密市場における初めての、ドローン配達の医療利用だ。

Swiss PostとMatternetとのパートナーシップは2年前に始まったが、血液サンプルなど“バイオハザードな”素材に関しては、ドローンの利用に特別の許認可を要する現状が、今でもある。しかしドローンによる配達のテストを今後さらに重ねたのちには、ドローン配達の医療利用がSwiss Postの通常のオフィシャルなサービスになるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ホウレンソウの葉が血管網の生成を助けるなど再生医療で大活躍

あなたがサラダは健康にいいと思っているまさにそのときに、ウースター工科大学の研究者たちは、脱細胞したホウレンソウの葉で、医師が器官を再生するときに必要とする血管網を作れることを発見した。このプロジェクトを専門誌Biomaterialsが特集しており、現状はまだ概念実証の段階だが、その真価は、別のもので前にあった血管系を代行できることを証明した点にある。

研究者たちはこう書いている: “セルロースには生体適合性があり、これまでも、軟骨組織や骨の組織の再生医療への利用や、傷の治療などに広く利用されている”。

そこで、ホウレンソウの葉のようなものを、デリケートな体組織のためのカバーや足場として利用できるのだ。このような葉は損傷した心臓の組織に酸素を送って、新しい器官や再生組織が移植後に死なないようにする。また、これらの酸素ポンプ役の葉は、シェフがすばらしいサラダを作るためにも使える。


[ホウレンソウの葉が血液を運んで人間の組織を成長させる]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

スウェーデンの科学者たちが人間の軟骨細胞でインプラントを3Dプリント、マウスへの移植に成功

3Dプリントで体の部品を作るこ技術が、また一歩前進したかもしれない。スウェーデンのSahlgrenska Academy(サルグレンスカ・アカデミー==ヨーテボリ大学医学部)とChalmers University of Technology(チャルマース工科大学)の科学者たちが、人間の軟骨の細胞を生後6週間のマウスに移植することに成功した

研究者たちは人間の軟骨細胞からゲルを作り、それを3DバイオプリンターCELLINKでプリントし、実験用マウスにインプラントした。するとその組織は成長を開始し、動物の体内で増殖した。やがて血管が生成し、血管はインプラント素材の中で成長した。2か月後にその素材は人間の軟骨に似たものになり、それをさらに幹細胞を加えて刺激した。

素材のインプラントは同じ大学の形成外科医が行ったが、同じやり方が、耳や鼻や膝などを事故やがんなどの疾病で失った患者に、もっと自然に近いインプラントで応用できると考えられる。

指導教授のPaul Gatenholmは次のように語る: “これまでは、耳を失った患者には、プラスチックやシリコンで作ったインプラントをチタンのネジで取り付けるような方法しかなかった。形成外科の方法は、患者の肋骨から軟骨を取り、それを形成していたが、痛みがひどくて結果も良くない。でも鼻や耳の細胞を、患者の髄や脂肪から取った幹細胞で育てれば、3Dプリントで完全な構造を得ることができる”。

Gatenholmは、期待を込めてこう述べる: “この方法は組織を再生して実装する医療技術を大きく進歩させるだろう。最初のブレークスルーはたぶん皮膚、次が軟骨、そして骨だ”。さらにその後は、臓器のような複雑な器官にも使えるようになるかもしれない。

Gatenholmは昨年の2月に研究論文を発表している。そこでは再生医療の教授Anthony Atalaと共に、3Dバイオプリンティングと、そのプリンターのノズルをモデルに従って制御するコンピューター画像技術を使い、骨や筋肉を作る技術が述べられている。後者のプログラムにより、細胞を正しい離散的な位置に供給するのだ。

従来の形成外科のモデルよりも本物の器官に近い部品を3Dプリントで得るためには、CAD用の3Dモデルの方が良い、とも言われている。

このプロセスはまだ、再生外科の治療現場で実際に利用できる段階にはない。技術の完成度のほかに、規制と当局の承認という面倒な問題もある。でも、これが、これまでよりも一歩前進した、将来性のありそうなプロセスであることは確実で、今後は軟骨だけでなく、そのほかの重要な組織にも応用されていくだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

心臓発作防止プラットホームのAliveCorが製品をAI化、Omronなどから$30Mを調達

心電図のデータを利用して心臓発作を防止するアプリKardiaを作っているAliveCorが、Omron HealthcareとMayo Clinicから3000万ドルの資金を調達し、また、Kardiaの医師用バージョンKardiaProを発表した。

すでにFDAの承認を得ているAliveCorのモバイルアプリKardiaは、99ドルの心電図読み取り機と併用するが、昨年Mayo Clinicとのパートナーシップにより、4500名の患者に対して心臓発作に関する大規模な調査を行い、その結果として新しいプラットホームの開発を迫られた。今度のKardiaProは、発作など心臓の諸症状のリスクを抱える患者の心電図をモニタしたい、と願う医師向けの高度な製品だ。

KardiaProは、リスクを抱える患者の体重、活動、血圧など複数の要素を調べて、それらのデータをAliceCorのAIに分析させ、医師が気づかないかもしれない兆候を見つける。そしてAliveCorのCEO Vic Gundotraが患者の“パーソナル・ハート・プロフィール”(personal heart profile)と呼ぶものを作り、そのデータを元に、医師が次の診療内容/方針を決めるための注意情報(アラート)を送る。

AliveCorはこの前、Khosla Ventures, Qualcomm, そしてBurrill and Companyから1350万ドルを調達した。今回の資金と合わせると、調達総額は4540万ドルになる。しかしより重要なのは、今回、Mayo Clinicという、数百万の患者を対象としている大手のヘルスケア企業とパートナーしたことだ。またOmronも、血圧計などのヘルスケア製品を世界中に提供している企業なので、貴重な情報が得られるだろう。

[循環器疾患による死亡率(人口10万人あたり)]

心臓疾患は世界の死因のトップであり、血圧計や心電図などを定期的にチェックすることは、心臓病の早期発見と有効な症状管理に寄与する。その部分でKardiaProのAI成分は、不規則な心電図などの異状を、ほとんどリアルタイムで医師に伝えることができるだろう。

KardiaProはAliveCorの新製品だが、同社はApple Watch用の心電図読み取りバンドAliveCorのKardiaバンドも発売した。すでにヨーロッパでは使われているが、アメリカではFDAの承認待ちだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

リキッドバイオプシーのFreenome、アンドリーセン・ホロウィッツから6500万ドル調達

2017-03-02-freenome

Freenomeは創業以來2年のスタートアップで、バイオプシーという血液サンプルのDNA解析によるガンの早期発見を目指している。このほど同社は巨額のシリーズAラウンドを成功させた。Andreessen Horowitzをリーダーとするベンチャー・キャピタルのグループが6500万ドルを投資した。このグループは昨年6月に550万ドルの シード資金を投じている

Andreessen Horowitz以外の投資家はGV、Polaris Partners、Innovation Endeavors、Spectrum 28、Asset Management Ventures、Charles River Ventures、AME Cloud Ventures、Allen and Companyに加えて、さらに最初期からの支援者であるData Collective、Founders Fundだ。

ラウンドAの金額はFreenomeのビジネスが直面する可能性と同時に激しい競争を物語っている。最近、大学や研究機関からリキッドバイオプシーのスタートアップが数多く現れた。こうした会社は患者の組織を採取するのではなく、血液のDNA解析でガンを発見しようとしている。しかしこうした検査は、まだガンの部位、脅威の程度、治療に対する反応などを正確に指摘することができない。

研究者は努力しているし、膨大な資金注ぎぎ込まれているにもかかわらず、リキッドバイオプシーのスタートアップはこうした問題に直面している。

カリフォルニア州Redwood Shoresの創立以來4年になるGuardant Healthではリキッドバイオプシーによる非侵襲的遺伝子解析によるガンの検査に小さい試験管2本分の血液しか必要としない。このGuardant HealthはOribMed Advisors、Khosla Ventures、Sequoia Capitaなどの投資家からこれまでに1億9000万ドルの資金を得ている。

これも創立4年になるカリフォルニア州ベニスのGrailもガンの早期スクリーニングを目的とするスタートアップで、DNA解析の大手、Illuminaからのスピンアウトだ。こちらは17億ドルを調達しようとしているという。この資金はは大規模な臨床試験をスタートするために用いられるらしい(同社は昨年1月にシリーズAのラウンドでIllumina、Microsoftの共同ファウンダー、ビル・ゲイツ、Amazonのファウンダー、ジェフ・ベゾス、それにGVから1億ドルを調達している)。

Freenomeの共同ファウンダー、CEOのGabe Otteは昨年TechCrunchが取材した際に、「われわれわれのテクノロジーは〔ライバルに比べて〕さらに正確な答えを出せる点が大きな違いだ。このテクノロジーは生化学的に〔ライバルとは〕別の部分に着目している。ガンがあるかないかだけでなく、良性か悪性か、どの部位にあるのかについても答えようとしている。つまりガンに関係することが知られている特定の遺伝子の変異だけでなく〔血液中に漂う〕あらゆる遺伝子を担うサンプルを解析する」と述べた。

われわれが取材したとき、 Otteは「Freenomeの検査は数百の例で有効性が確認されている。ただし1億ドルのベンチャー資金を導入するのはテクノロジーが疑問の余地なく証明されてからだ」と述べた。

今回のラウンドAをみれば、Freenomeはテクノロジーの成果に自信を得たようだ。実際、社員25人の小さい会社はであるものの、数千件に上る血液生検を実施し、前立腺ガン、乳ガン、結腸ガン、肺ガンという4分野に関して現行のスクリーニングより優れた結果を得たという。

今後Freenomeは医療としての実用化を目指して大規模なテストに入る。研究のパートナー25組織にはカリフォルニア大学サンディエゴ校、サンフランシスコ校などが含まれる。【略】

Otteによれば、Freenomeは向こう1年間に自社内および提携研究機関で最大1万件の血液生検を実施する予定だという。順調に進めば、その後規制当局に承認を求める手はずとなる。Freenomeではこのテクノロジーがライバルに先んじて、病院に導入される最初のリキッドバイオプシーとなることを期待している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

バーチャルナースが退院後の患者の病状を確認―、Sense.lyが800万ドルを調達

Doctor holding heart in hands, medical concept

サンフランシスコ発のスタートアップSense.lyが、この度シリーズBで800万ドルを調達した。同社は、さまざまな病状に悩む患者や病院のためのプロダクトとして、バーチャルナースを開発している。このプロダクトを利用することで、内科医は退院した患者とも連絡を取り続けることができ、再入院の可能性を低減させることができる。CEO兼ファウンダーのAdam Odesskyは、同社のプラットフォームを「人の健康状態に関する重要なサインを読み取ることができる、WhatsappとSiriの掛け合わせ」のようなものだと説明する。

まず患者サイドから見てみると、ユーザーはSense.lyのナースアバターが行う5分間の「チェックイン」を通して、毎日もしくは2、3日に1回、自分の健康状態をスマートフォンに記録するようになっている。ナースの質問には声で答えるだけでよく、文字を打つ必要はない。また、ユーザーが入力した情報は、医療機関の担当者のみが見られるカルテに記録される。レポートにはそれ以外にも、ユーザーが日常的に利用しているさまざまな医療機器やウェアラブルデバイス、その他のインターネットに接続された機器からSense.lyが引っ張ってきた情報も含まれている。

さらにSense.lyには、MindMeldBeyond VerbalAffectivaなどと似たAIが搭載されており、患者の症状や行動だけでなく、彼らの気持ちも感知できるようになっている。つまり、アプリはユーザーの話を親身になって聞けるようにできているのだ。この点についてOdesskyは、肥満や心臓病などについて真剣に心配している人に対して、冷たいロボットっぽい声やビジネスっぽい反応を返したいと思う人はいないと話す。感情を分析することで、Sense.lyは患者が精神的なケアを必要としていると思われるときや、処方薬や生活の変化から、気分が落ち込んだり不安を感じたりしているときに、医療機関にその状況を知らせることができる。

"Molly" is a virtual nurse app made by Sense.ly.

Sense.lyが開発したバーチャルナースアプリ「Molly」

Sense.lyでは、さまざまな疾患や年齢層に対応できるように、慢性病の診断や治療に広く利用されている医療手続きを参考に、コアコードやルールベースのエンジン、アルゴリズムが組まれている。さらに同社は、主にパートナーシップを結んでいる病院やクリニックから入手した、新しい手続きなどの情報を常にプラットフォームに追加し、アプリが対応できる疾患や人の範囲を広げようとしている。

これまでにSense.lyは、60歳以上のユーザーをターゲットとして、肺気腫や心不全、肥満といった年齢と関係の深い疾患に悩む患者に向けてサービスを提供してきた。一方でSense.lyは拡大を続け、今ではイギリスのNational Health Serviceや、アメリカにある大手病院やクリニックにもプロダクトを提供している。同社の他にも、HealthLoop、Your.md、Babylon Healthなどの競合企業が、AIメディカルアシスタントを開発している。

Chengwei Capitalがリードインベスターとなった今回のラウンドには、Mayo ClinicやBioved Ventures、Fenox Venture CapitalStanford StartXのファンドが参加していた。Chengwei Capitalでマネージング・ディレクターを務めるRichard GuはTechCrunchに対し、Chengwei Capitalは「中国戦略」がとれるようなスタートアップにだけ投資していると語った。つまり、投資先企業のプロダクトが巨大な中国市場でも通用するかや、中国でも再現できるかといった点をもとに彼らは投資判断をしているのだ。

「Sense.lyの中国でのビジネス拡大に向けて、キーパーソンと彼らを引き合わせることができるでしょう。ただ、今回の調達資金はコアとなる研究開発に充ててほしいと考えています」とGuは話す。さらに彼は、Sense.lyのテクノロジーによって、人はより健康に長く生きることができるばかりか、今よりも病院ではなく家にいる期間を伸ばすことができる可能性があると話す。またOdesskyは、アメリカ以外にも医療従事者数の減少で困っている国があることを考えると、Sense.lyによって高品質の医療をもっと安く、たくさんの人に届けられるかもしれないと言う。

一方でバーチャルナースは、人間の仕事を「奪って」しまうのだろうか?Odesskyは、その可能性を否定し「現在Mollyの仕事をしている人はいません。これだけの数の患者に電話をかけて、データを分析するというのは人間にはできないことです。Sense.lyはむしろ、医療従事者が効率的に業務を行うサポートをしており、彼らの生活を脅かすようなものではりません」と語った。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

睡眠薬ではなくアプリを処方する未来——不眠症治療アプリのサスメドが1億円を調達

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次の日早く起きなければならないのに、布団に入ってもなかなか寝付けないという日もあるだろう。1日であれば問題はないが、不眠が慢性化すると昼間のパフォーマンスが落ち、仕事や日常生活に支障をきたす可能性もある。日本ではおよそ5人に1人が不眠症で悩んでいるという。サスメドが開発する「yawn」は不眠症の治療を目的としたアプリだ。サスメドは、本日Beyond Next Venturesからの約1億円を調達したことを発表した。

yawnは、認知行動療法に基づいて不眠症を治療するためのアプリだ。患者は毎日の睡眠時間や寝付くまでの時間、1日の行動、考え事などを入力していく。これらのデータをアルゴリズムで解析し、自動でその患者に合った対処法を提示することで不眠症の改善を促す。現在は臨床試験に参加している人のみ利用できるが、サスメドは2020年を目処に医療機器の承認を得て、医師が患者に処方できるようにしたい考えだ。

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データを活用したデジタル医学の確立

サスメドの代表取締役、上野太郎氏は睡眠医療を専門とする医師で、病院で診療にあたる他、睡眠の基礎研究を行ってきた人物だ。不眠症の原因は人によって違うが、テレビやスマホが普及したことは、不眠症に影響していると上野氏は指摘する。仕事から帰ってきて、夜遅くまでインターネットやテレビを見ている人は多いだろう。しかし、夜にパソコンやスマホ画面の人工的な光に当たると体内時計がズレて寝付きが悪くなり、不眠を引き起こす原因となると上野氏は説明する。

通常、不眠症の治療には臨床心理士による認知行動療法と薬物療法が用いられるという。認知行動療法とは、患者の物事に対する認知や行動に働きかけて病態を治療する方法だ。長期的には薬物療法より効果があるとされているが、臨床心理士が不足していることと現時点では臨床心理氏は国家資格ではなく、保険適用ではないため普及が進んでいないという。一方で、日々の外来では、多くの睡眠薬を処方されている患者が訪れ、薬以外の治療法がない状態に疑問を感じていたと上野氏は話す。最初は薬物療法で治療を始めたとしても、並行して治療アプリを使うことで、この現状を解決することができないか考えたと話す。

不眠症に特化した治療アプリを開発した理由は、データ活用がしやすい領域なのも一つの理由だという。患者の入力データから行動パターンや睡眠パターンが分かり、それにより適切な治療が可能となる。また、不眠症をしっかり治療することで、うつ病などの精神疾患や高血圧、糖尿病といった疾患リスクを抑えることにもつながることが期待できる。実際、不眠症とうつ病を併発している患者の場合、不眠症を治療することでうつ病も改善するという研究結果もあるそうだ。

「スマホで詳細なデータがリアルタイムで取れる時代になり、デジタル医療が変わると考えています」と上野氏は話す。データがあれば、診療でこれまで不眠症と一括りにしていた症状でも、さらに細かく分類し、それぞれに合った治療法が提供できるようになると考えている。睡眠の治療から働く人の生産性の向上、そして社会保障費の適正化に貢献していきたいと上野氏は言う。

サスメドは2016年2月に設立し、2016年7月にはDeNAと住友商事の共同出資会社であるDeSCヘルスケアと業務提携を実施した。2016年9月より、複数の医療機関とyawnの臨床試験を進めている。順調に進めば、2020年を目処にyawnは医療機器として、医師が患者に処方できるようになるという。

今回の資金調達では、人材を強化し、サービス開発とビジネスの展開を図っていくと上野氏は話す。開発面では、Androidアプリの開発を進めるという。またyawnを治療目的以外にも、アプリの一部機能を切り出し、企業や健康保険組合が従業員の健康促進に用いられるようにすることも視野に入れていると話す。

ケンブリッジ大学が癌の診断治療への3D VR技術の応用を研究中

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テクノロジーが癌の治療に貢献、というお話は、いつ聞いても嬉しいけど、そこに仮想現実が登場するとは、ぼくも含め多くの人が思ってない。でも、今ケンブリッジ大学の研究者たちが100万ポンドの補助事業で研究に取り組んでいるのは、VRと3Dの視覚化を利用する診断と治療の技術だ。

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同大のニュースサイトで、研究チームのリーダーGreg Hannonが語っている: “私たちが作ろうとしているのは、腫瘍の忠実な対話的立体マップで、それを科学者たちが仮想現実で調査研究し、いわば腫瘍の内部を‘歩きまわって’検査できるようにしたい”。

腫瘍の標本として最初は乳がんを用い、きわめて薄い小片にスライスしたそれを画像化し分析する。この方法により、個々の細胞の遺伝子的組成まで分かるようになる。すべてのスライスを再編成して仮想現実のための3Dモデルを作り、その中へ研究者たちが‘飛び込む’。

腫瘍や癌の成長を3Dスキャンする技術はすでにあるが、仮想現実の3Dモデルの中に研究者が入り込めるこの方法には、はるかに幅広い対話性がある。

同大が公開しているビデオの中でHannonはこう述べている: “癌に限らず、有機体の組織の成長発展を理解するための、最先端の方法と言えるだろう。生物の問題はすべて3Dで生じているし、細胞間のコミュニケーションも3Dで行われているから、従来のノン3Dの検査技術では、その詳細な理解が得られなくて当然だ”。

チームはイギリスの任意団体Cancer Research UKの研究補助金を交付されることになり、その総予算2000万ポンドの一部(100万ポンド)を、期間6年の研究事業に使えることになった。6年もあればこの、腫瘍の中を歩いて見て回れる3D VR技術の実用化も可能ではないか、と期待したいところだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

機械学習を利用して肺がんの兆候を早期発見する技術でKaggleが賞金100万ドルのコンペを主催

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データサイエンスのコンペを毎年主催してほぼ10年になるスタートアップKaggleが、今度の賞金総額100万ドルのコンペでは、肺の中の癌になりそうな病変組織を見分ける今よりも良い方法を募る。この2017 Data Science Bowlと名付けられたコンペの資金提供者はLaura and John Arnold FoundationとBooz Allen Hamiltonだ。

目標を限定したコンペで高額賞金、というケースは、今回が初めてではない。昨年の同コンペでは心臓病の兆候を見つけるデータ分析技術に20万ドルの賞金が提供された。さらにその前年は、海の健康診断、という課題だった。

でもこれまでで最高額の賞金は、今年の100万ドルだ。優勝者が50万ドル、2位、3位、4位がそれぞれ20万、10万、2万5000ドルとなる。〔4位は複数か?〕

Kaggleは2010年にAnthony GoldbloomとBen Hamnerが創設した。これまですでにKhosla Ventures, Index VenturesなどからシリーズAで1100万ドルを調達している。

Goldbloomは本誌に、“うちは、データサイエンスのホームのような企業でありたい”、と語った。

同社の収益源は、このサイトでコンペを行う企業や財団などからの出資金の一部だ。また80万名近い会員のための求職求人掲示板からの収益もある。

2017 Data Science Bowlがローンチしたのは今朝(米国時間1/12)だが、すでに300のチームからの提出物がある。Goldbloomによるとこれらの提出物の多くは、提出の早さを競って自慢するためだ、という。しかし2017年4月12日の締め切りまでに、一日平均5件の提出がある、という予想だ。

参加チームは、国立癌研究所(National Cancer Institute)が提供する肺のスキャン画像を使って自分たちのモデルを作る。目標は、今のソリューションが不適切である最大の理由、すなわち高い偽陽性率を、大幅に減らすことだ。

GoogleのDeepMindMicrosoftには、どちらにも、目のスキャン画像を分析して今後失明になりそうな兆候を見つける機械学習モデルとそのためのリソースがある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

スマートウォッチが毎日勝手に健康診断をしてくれる…病気の早期発見のための強力なツールだ

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自分の健康を気にして、さまざまな不具合の兆候に気をつけている人は多いが、そんな人たちの中にも、心拍や体温など測定できる項目を毎日チェックしている人はあまりいない。これまで、そんな人が一人もいなかったとしても、これからはスマートウォッチが毎日、勝手に測定してくれるだろう。

スタンフォード大学のMichael Snyderの研究チームが最近発表した、長期的な実験の結果によると、スマートウォッチは確かに、疾病の診断や監視の役に立つ。

この2年がかりの実験には43名の人が参加して、その間さまざまな測度を決まった時間に測り、そしてそれらの結果と、旅行、睡眠障害、病気など、現実世界の事象との相関関係を調べた。彼らが発見したことを一般化して言うと、スマートウォッチは全般的な健康をチェックし監視するツールとして、とても役に立つ、ということだ。ただしもちろんそのためには、ユーザーである人間の正しい知識や、デバイスの正しい扱い方が重要だ。

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研究論文の図表は、いろんなデバイス(図左端)でいろんな活動を調べたことを示している。

たとえば空の旅では、血中酸素が少なくなって疲れる人が多い。また、ライム病の発症もチェックでき、2型糖尿病の診断に役立つインスリン感受性も生理的測定から分かる。

病気の兆候は自分で分かることもあるが、でもスマートウォッチがやるような検査項目の定期的な測定が加われば、兆候の発見が発症の数時間〜数日前にできるようになる。本格的な診断ではないけれども、いろんな値が基準値を外れていたら、睡眠を多くとるとか、風邪の予防に努めるなど、した方が良いかもしれない。チームは今、測定アルゴリズムの精度を上げる努力をしている。

PLOS Biologyに発表された彼らの研究論文には、こんな記述が: “全体として、これらの結果は、ポータブルなバイオセンサーが個人の活動や生理状態の監視に役立つ情報を提供できることを、示している。今後それらは健康管理に重要な役割を演じ、低所得層や僻地の人びとでも低費用でヘルスケアにアクセスできるようになるだろう”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

医薬品のメルクとデータ解析のPalantirが提携―新薬開発で数十億ドル規模の効果を目指す

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ドイツを本拠とする医薬・化学品の世界的巨大企業、メルクは、今朝(米国時間1/12),、シリコンバレーの著名なデータ解析ソフトウェア企業、Palantirと提携したことを発表した。メルクはこれにより新薬開発を加速し、患者に対する薬効も改善されることを期待している。

この提携はまずヘルスケア、生命科学、パフォーマンス改善物質というメルクの3つの重要な事業分野で実施される。

TechCrunchはPalantirのサイトでの提携発表にリアルタイムで参加することはできなかったが、同社の共同ファウンダー、CEOのアレックス・カープは声明で 「世界で毎年ガンで820万人もの人々が亡くなっている。Palantirは発足当初から適切なパートナーを助けてガンとの戦いにわれわれのテクノロジーとノウハウを活かしたいと考えていた」と述べている。

Palantirは財務面も含めて提携の詳細について明かしていないが、同社を動かしているのはもちろん人類愛だけではない。この提携によって新たな薬品の開発が加速し、あるいは投薬の効果的なノウハウが得られるなら両社にとって巨大な利益をもたらすはずだ。

TechCrunchでは今日の午後、PalantirのカープあるいはメルクのCEO、Stefan Oschmannからもっと詳しい話を聞けるものと期待している。特に確認したいのはPalantirがメルクと提携が排他的なものであるかどうかだ。われわれはPalantirのソフトウェアをBristol-Myers Squibbなど他の製薬会社が利用できないことになるのではないかと予測している。

Palantirにとっては大きなビジネス上の達成といっていいだろう。比較的小規模な非公開企業にしては評価額がきわめて高いことで知られているPalantirだが、顧客がアメリカ政府だけに限られないことが証明されただけでなく、この提携が成功すれば医薬品という巨大なマーケットに影響を与えることになる。Bloombergによれば、肺がんだけで毎年100億ドルの市場だという。

〔日本版〕 Palantir CEOのアレックス・カープは昨年トランプ次期大統領とテクノロジー企業のリーダーとの会談に参加している。またトランプ政権移行チームの重要メンバー、ピーター・ティールはPalantirの共同ファウンダーでもある。この会談については今日のTechCrunchのAmazonの記事に詳しい。

Featured Image: panda3800/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

わずか20セントの子どもの回転おもちゃで1000ドル相当の医学用遠心分離器を作れた

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高速回転により液体中の物質を分離する遠心分離器という器具は、世界中の医学研究所にある。しかしその良いものは2000ドルぐらいするし、もちろん電気が必要だ。お金も電気も、世界の最貧国の田舎の病院にはないだろう。スタンフォード大学の研究者たちが作った代替品は、わずか数セントの費用でできるし、充電も要らない。彼らのヒントとなった子どもの玩具は、遠心分離器として意外にも高品質なのだ。

その回転玩具は、単純な構造だ。ボタンのような小さなディスク(円盤)に、糸を2本通す。その糸をゆっくり引くと、ボタンは相当速く回り始める。子どものころ自分で作った方も多いと思うが、研究者の一人も、自分の子どものころを思い出しながら、そのPaperfugeと呼ばれる器具を作った。

彼は大学が作ったビデオの中でこう言っている: “これは、ぼくが子どものころ遊んだおもちゃだ。でも、その回転速度を測ったことはなかった。そこで、試しに高速カメラで撮ってみたんだが、それを見たときは自分の目が信じられなくなった”。

その回転おもちゃは、10000〜15000RPMで回転していた。それはまさに、遠心分離器の回転速度だ。その後チームは、回転おもちゃの動きを詳しく研究し、それが。線形の動きを回転運動に変換する、すばらしく効率の良い方法であることを発見した。

チームは独自の回転おもちゃを作り、それに紙製のディスクを取り付け、そこに血液などの液体を入れたバイアル(小型ガラス瓶)をはめられるようにした。糸には扱いやすいようにハンドルをつけ、1〜2分糸を引き続けると、1ドルにも満たないその器具が、その何千倍以上もするデバイスの仕事を見事に演じた。回転数は125000RPM、30000Gに達した。

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“このような、お遊びのような試行方法はきわめて有意義だ。正しい解はどうあるべき、という固定観念から、われわれを解放してくれる”、指導教授(TEDのフェロー)のManu Prakashはそう語る。

実用試験は、マダガスカルで現地のパラメディカルたちと一緒に行った。そこでは、血液からマラリア原虫を分離することに成功した。次は、もっと公式の臨床試験が待っている。

このようなシンプルで安上がりな実験器具は、前にもあったな、と思われた方は、きっとFoldscopeを見た方だろう。これもやはり、Prakashのプロジェクトだ。それはボール紙を折りたたんで作った顕微鏡で、製品化されたものでも数ドルで買える。これを使えば、安い費用で科学研究や医学の研究を行うことができる。

PrakashらのチームによるPaperfugeとその開発の詳細は、最新号のNature Biomedical Engineeringに載っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Touch Surgeryは手術の教育訓練に拡張現実を大々的に利用、手術室で術中の医師のガイドにもなりえる

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外科医に、それぞれさまざまな特定の手術手順を教育訓練することは、費用もかかり困難だ。ロンドンのTouch Surgeryは、200種以上の手術手順の、スマートフォンやタブレットの上で行う教育訓練プログラムを作った。そしてCESでは、新しいタイプの、深く没入的な手術の教育訓練法…手術室でのアシスタントにもなりうる…を発表した。それは、スマートグラス(眼鏡)DAQRIと、Microsoftの混成現実(VR/AR)技術HoloLensを使用する。

“外科医たちと協働して今日最高の手術手順をさらに最適化およびスケールアップできれば、全世界の患者にとって安全な手術の教育訓練と実施が可能になると信じている”、と語るのはTouch SurgeryのCEO、ドクターJean Nehmeだ。“これまで、教育訓練のための出力先はモバイルデバイスだった。2017年は、新たなパイプラインにより、拡張現実のプラットホームも利用できる。

今週ラスベガスで行われているCESでは、同社はその拡張現実を初めてテストしている。

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Touch Surgeryの教育訓練コンテンツは、タップやスワイプという手術動作とはあまり関係のない手の動きでシミュレーションをするスマートフォンから、本物の手術室へ持ち込むことが重要な課題だ。外科医が手術用メスやそのほかの鋭利な器具を取り上げたまさにそのときに、これから始まる手術を助ける適切なARオーバレイが加われば(右図)、大いに助けになるだろう。

あまりにも未来的な話に聞こえるかもしれないが、手術中の外科医がHololensを装着している姿は、十分ありえるとぼくは思う。ARによるリアルタイムの教育訓練が適切なら、複雑な手術における失敗も防げるだろう。しかしただしそのときには、医師が教材や教育訓練システムの使い方を誤らないようにする、という別の課題が存在する。また、上のGIF画像を見たかぎりでは、ARが術中の手の上を浮遊しているのが気になる。

拡張現実の、手術室劇場での上映は、まだきわめて初期的段階だ。しかしそれによって手術がより安全迅速になり、合併症も減らせるなら、その将来の利便性を疑う理由はない。今は、自分が手術室に今いる執刀医になったつもりで、“ちょっとHololens持ってきて”、と言ってみたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

十分な治療を受けられていない精神病患者に対してテクノロジーができること

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【編集部注】執筆者のAdam Seabrookは、B Capital Groupの投資家。

あなたの周りの誰かも、たった今精神疾患で苦しんでいる。気づいていないかもしれないが、これは事実だ。

実際に成人の5人に1人が精神を患っている。

社会的な慣習によって、私たちは精神疾患は恥ずかしいものと認識していることから、精神を病んでいる人のほとんどはその事実を隠し、治療を受けることなく過ごしてしまっている。さらに、精神病患者は危険で何もできず、回復の見込みもほとんどないと思われてしまっていることが多い。

私は社会全体が段々と精神疾患を受け入れていると主張したいが、その逆を示す例がポップカルチャーには散見する。最新曲「Two Birds, One Stone」の中でDrakeは、仲間のラッパーであるKid Cudiが憂鬱感や自殺願望から苦しんでいることを認めた上で治療を受けようとする姿を批判している。Tony Soprano(HBOのTVシリーズの主人公)でさえ、人々の尊敬を集める迫力あるキャラクターとは裏腹に、家族や友人から精神科のアポイントメントを隠さなければならなかった。その他にもたくさんの例があるが、恐らくもう現状はおわかりだろう。

社会が作り上げた悪いイメージに加え、これまでに築かれてきた医療制度の下では、コストや人員の制約を理由に治療を受けられていない精神病患者がいる上、ガンや心臓病といった代表的な疾患の治療が優先されてしまっている。今こそ、鬱や不安神経症、双極性障害、統合失調症といった精神疾患は、身体疾患と同じくらい深刻で、患者を衰弱させる病気なのだと認識し、患者のもとへ治療が行き渡っていない状況を変えていかなければならない。

精神病患者の50%が選択肢もなく置き去りにされている

精神疾患の現状を俯瞰するため、まずアメリカに住む成人の18.5%が何らかの精神疾患を持っていると認識してほしい。これは心臓病(11.5%)とガン(8.5%)という、アメリカ人の死因のトップ2を占める病気の患者数を足し合わせたものと同じくらいの数だ。もしも心臓病やガンの患者に何の治療法も準備されていないとしたら、どのくらい社会が混乱するだろうか。そんな状況に精神病患者は直面しているのだ。彼らの半分以上が治療どころか診断さえ受けておらず、その経済的な損失は約2000億ドルに達すると考えれれているほか、もっと重要なこととして、毎年3万7000人が自らの命を断っている。また、実際に精神疾患の治療法をみつけることができた残り半分の患者に対しても、年間2000億ドルが投じられている。問題の規模は極めて大きく、これまでの取り組みは全てにおいて失敗してきた。

  • 治療を求める人が非難されてしまう
  • 全ての疾患を効率的に診断できるようなツールがない
  • 医療従事者は全精神病患者の需要の半分以下しか満たせていない
  • 多くの人が治療を断念するほど高額な費用がかかる

治療受けられない人がいるという事実に関して最も悩ましいのは、精神疾患に対する治療には効果があるということだ。治療を受けた人の最大90%が、症状の軽減を感じている。治療に効果があるとすれば、それを患者のもとへうまく届けることが重要になってくる。医療系テック企業がソリューションをみつけるために、業界を引っ張っていくときが来たと私たちB Capitalは信じている。

今こそイノベーションと状況の改善が求められている

これまでの精神疾患に関する失敗が報われるかのように、この分野では今ディスラプションが起きようとしている。アメリカの市場規模も大きいが、他国でも状況は似通っており、全世界の精神疾患に苦しみ治療を受けられていない人の割合はアメリカの数字と近いものがある。つまり何億人もの人が治療や昔ながらの処置(対面でのセラピー)を受けられないでいるのだ。また、旧来の手段では実現性・効率性の観点から、患者全員の需要を満たせるほどスケールすることは不可能なため、その代わりとなる手段が必要とされている。

精神疾患は身体疾患と同じくらい深刻で、患者を衰弱させる病気なのだと認識しなければならない。

そして、テクノロジーがそのソリューションの重要な要素になり、実現に必要なテクノロジーの多くは既に存在すると私たちは考えている。遠隔医療は治療を受けづらい地域に住む人へ従来の治療法を提供する上で有効なツールだ。デジタルセラピーは、従来の方法よりも安く良い結果を得られるという評判に反し、長らく成果をあげることができていなかったが、最近は自主学習用のテキストや宿題、オンラインセラピストによる質疑応答やガイダンスから構成され、インターネットを介して提供される認知行動療法(iCBT)のような処置が、社会不安障害や鬱、PTSDなど幅広い疾患の治療に役立つとわかっている。

新たな分析ツールを使って山のようなデータを解析することで、これまで医師も気づかなかった兆候や症状を見つけることにも成功している。デジタル医療は、患者の診断や治療の方法を大きく変える力を持っており、コストも大幅に軽減できる。私たち以外にも、デジタル医療の可能性に気付いた投資家は存在し、過去18ヶ月には同分野への投資が相次いでいる。

会社名 最新ラウンド クローズ日 調達額
Talkspace シリーズB 2016年6月 1500万ドル
Quartet シリーズB 2016年4月 4000万ドル
Lantern シリーズA 2016年2月 1700万ドル
Ieso Digital Health シリーズA 2015年12月 400万ドル
Joyable シリーズA 2015年11月 800万ドル
Lyra Health シリーズA 2015年10月 3500万ドル
AbleTo シリーズC 2015年6月 1200万ドル

11月8日の大統領選以前は、規制面でもデジタル医療に対して明らかな追い風が吹いていた。例えば医療保険制度改革(ACA)には、精神疾患の治療が健康保険の必須項目として含まれていた。次期大統領のトランプは、大統領としての最初の仕事はオバマケアの撤回だと当初は強固な姿勢を示していたが、その後彼のスタンスは軟化し、ACAの一部は変更無く続けるとまで話していた(詳細はGavin Teoの最近の記事を参照してほしい)。規制環境に関わらず、私たちは低コストの治療によって既存の医療ネットワークが広がることで、大きな結果が生まれると考えている。

高品質な治療へのアクセスが鍵

精神疾患市場の仕組みは複雑でソリューションを求める人の数も多い。医療従事者は、従来の治療環境にいるかいないかに関わらず、より良い診断ツールを必要としている。保険会社には、対面でのセラピーと同じ効果を持っていると臨床によって実証されたプロダクトが欠かせない。大衆には、精神治療を求める人に対する悪いイメージを払拭もしくは回避できるような方法が必要だ。そして治療費は大幅に削減されなければいけない。一方で市場は需要で溢れかえっており、イノベーションが必要な環境は整っている。それではこの市場で成功をおさめるには何が必要なのだろうか?一言で言えば、高品質な治療を受けやすい環境をつくることだ。

いいニュースとして、既に精神医療の状況が改善しているという明らかな兆候が見られている。Northwestern Universityの研究者たちは、鬱の兆候を読み取るために、ユーザーの動きや携帯電話の使用状況をトラックするPurple Robotというアプリの開発に成功した。SilverCloud Healthは、従来の対面でのセラピーと同じくらいの治療効果とエンゲージメントレートを達成している。Ieso Digital Healthは、患者がリアルタイムでセラピストと半匿名でメッセージをやりとりできる仕組みをつくり、悪いイメージの払拭に取り組んでいる。JoyableやLantern、SilverCloudはオンラインのツールやコンテンツを使った一対多数の治療モデルを確立し、既存の精神医療従事者のキャパシティを拡大すると共に医療費の削減に貢献している。

このような動きが増えれば、精神医療の品質が向上し、新しいサービスを利用する患者、医療機関、消費者の数が増えていくうちに、治療を受けていない精神病患者の数も大幅に減っていくことが期待できる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

人工葉が太陽光を捉えて化学反応を起動し、薬を生産する

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製薬といえば、一日に何百万錠ものアスピリンやイブプロフェンをこね上げ成形している大工場を連想するが、近年では、よく使う薬をユーザーの近くで少量だけ作ることも、重要な課題として検討/研究されている。オランダの研究者たちはそのために、植物が自分自身のリソースを作るために使っているのとよく似た方法を着想した。

人工葉(artificial leaves)は、かなり前からある。それらは光を、さまざまな目的のためのエネルギーに変換するパッシブなデバイスだ。もちろん植物は光合成によって自分自身の重要な化学物質を作っており、それはこれまで人間が作った最良の人工光合成システムよりも巧みで効率的だ。しかしアイントホーフェン工科大学のTimothy Noëlのチームは、薬の分子を組み立てるときのような化学反応を光の力で起こす方法を見つけた。

彼らは発光型集光器(luminescent solar concentrator, LSC)と呼ばれる新しい素材ないしデバイスを使って入力光の波長を最適化し、それを人工葉のあるエッジへ導く(もちろん形は本物の葉っぱに似ていなくてもよい)。そこには細い脈路が掘られていて、そこへ薬のための化合物〔複数形〕を汲み上げる。そこに導かれている光(の波長)を正しく同調(tune)してやると、化学反応が始まる。

LSCを使ったことによって効率が大幅にアップし、複雑で高エネルギーなプロセスも可能になった。曇りの日でもよい。

“個人や小集団でも気軽に入手/利用できるこの強力なツールによって、薬などの貴重な化学物質を、持続可能な太陽光方式により作れるようになった”、とNoëlが大学のニュースリリースに書いている。“このような反応器があれば、どこででも薬を作れる。ジャングルでマラリアの薬を作ったり、火星で鎮痛解熱剤パラセタモールを作ることもできる。必要なものは、太陽光と、このミニ工場だけだ”。

今後の短期的な改良としては、錠剤を成形して瓶につめる、などが考えられるが、もっと長期的には、地球上のリソースの乏しい地域が、高度な医薬品を入手/服用できるようになるだろう。研究者たちの論文は、今日(米国時間12/21)発行されたAngewandte Chemieに載っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Microsoftがインドで目の健康のために機械学習を活用、Google DeepMindに対抗

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同じ企業間競争でも、障害者の生活が少しでも良くなるための競争なら、大いに奨励したいね。Microsoft Indiaは、GoogleのDeepMindのやり方に倣って、インドにデータドリブンの視覚障害者支援サービスを導入するための研究グループ、Microsoft Intelligent Network for Eyecare(目のケアのための人工知能ネットワーク)を立ち上げた

DeepMindの眼科医学へのアプローチはイギリスがターゲットだったが、Microsoftは必ずしも対象国を限定しない。同社はアメリカ、ブラジル、オーストラリア、そしてもちろんインドの研究者たちの協力を求めながら、機械学習モデルを教育訓練し、失明の原因となる症状をシステムが同定できるようにする。

Microsoftの中心的なパートナーとなるハイデラバードのL V Prasad Eye Instituteは、インドの名門病院のひとつだ。このプロジェクトはとくに子どもに力を入れ、屈折矯正手術の結果や、子どもの近視率の変化の予測、といった意欲的な課題に取り組んでいく。

GoogleのDeepMindは、イギリスのNational Health Serviceとパートナーして目のスキャンを分析し、湿性で年齢と関連する黄斑変性や糖尿病性網膜症を検出する…これら二つは、失明に導く症状だ。それは、症状の早期発見によって早期治療を可能にし、目の損傷の重症化を防ぐ、という考え方だ。

アイケア(eyecare, 目のケア)は、これまで医学とは無縁だったような企業が、保健医療分野で機械学習のポテンシャルをテストするための、人気分野になりつつある。人間の健康状態の中でも目の状態や症状は、画像分析によくなじむからであり、それはイコール、機械学習の当面の得意分野でもある。医療診断へのコンピューターの利用は決して新しい技術ではなく、放射線画像の分析などは何年も前から行われている。しかしテクノロジー企業はこのところとくに熱心に、独自の研究開発テーマとしてこの分野に取り組んでいる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))