英国警察が「Lapsus$」のハッキングに関連して16歳から21歳までの容疑者7名を逮捕

英国警察は、Samsung(サムスン)、NVIDIA(エヌビディア)、Microsoft(マイクロソフト)、Okta(オクタ)などのテック大手各社をここ数週間で標的にしたハッカー集団「Lapsus$」との関連が疑われる7名の容疑者を逮捕した。

TechCrunchに寄せられた声明の中で、ロンドン市警のMichael O’Sullivan(マイケル・オサリバン)警部は次のように述べた。「ロンドン市警は、ハッカー集団のメンバーについて、パートナー組織と連携して捜査を進めてきました。この捜査に関連して、16歳から21歳までの7人が逮捕され、全員捜査中は釈放されました。我々の捜査はまだ続いています」。

今回の逮捕のニュースは、Bloombergの報道で、英国のオックスフォードを拠点とする10代の若者が、最近立て続けにハッキングを仕かけたハッカー集団「Lapsus$」の首謀者である疑いがあることが明らかになった数時間後に発表された。このグループの最近のハッキングを調査している4人の研究者が「White」または「Breachbase」というオンライン名を使っている16歳の若者がLapsus$の中心人物であると思うと述べ、Bloombergは、彼の個人情報がライバルハッカーによってオンラインで流出した後に、ハッカー容疑者を突きとめることができた。

セキュリティレポーターのBrian Krebs(ブライアン・クレブス)氏によると、この10代の容疑者は2021年、他人の個人情報を共有したり探したりできるサイト「Doxbin」を購入したが、2022年1月にサイトの管理を放棄し、DoxbinのデータセットをすべてTelegram(テレグラム)に流出させたという。Doxbinコミュニティは、自宅の住所、ソーシャルメディアの写真、両親の詳細など、彼の個人情報を公開することで報復を行った。

TechCrunchは、このハッカー容疑者の流出した個人情報のコピーを確認したが、それは公開しない。だが、Bloombergの報道と一致するとだけ報じておく。

通常は金融犯罪を主に扱うロンドン市警は、逮捕者の中にこの16歳の若者が含まれているかどうかは明言しなかった。

クレブス氏によると、Lapsus$の少なくとも1人のメンバーは、最近Electronic Arts(EA、エレクトロニック・アーツ)で起きたデータ流出事件にも関与していたようで、もう1人はブラジル在住の10代の若者と疑われている。後者はハッキング能力が非常に高く、研究者は最初、目撃している活動は自動化されたものだと考えたという。

研究者がLapsus$のメンバーと思われる容疑者たちを追跡できたのは、このグループがTelegramチャンネルに4万5000人以上の登録者を持ち、頻繁にインサイダーを勧誘して被害者のデータをリークしていたため、よく痕跡を隠せていなかったからかもしれない。Microsoftは3月22日のブログ記事で、このグループは標的の組織に最初にアクセスするために大胆な戦術を使っており、これには公然と会社のインサイダーを勧誘することも含まれていると述べていた。今週Bloombergが報じたように、このグループは、侵入した企業のZoom(ズーム)通話に参加し、ハッキングを一掃しようとする従業員を愚弄することまでしていた。

ハッキンググループLapsus$が最初に明るみに出たのは2021年12月で、同グループは主に英国と南アフリカの組織を標的にしていた。今週初め、最新の被害者はOtkaであることが確認され、Otkaは米国時間3月23日に、約366社の法人顧客が侵害の影響を受けたことを認めた。

画像クレジット:Richard Baker / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Den Nakano)

英国で制裁を受けたチェルシーFCのロシア人オーナー、Truphoneの株式に影響を与える「関連利益」なし

サッカー・プレミアリーグで大成功を収めているチェルシーのオーナーでロシアのオリガルヒ(新興財閥)のRoman Abramovich(ローマン・アブラモビッチ)氏は今週、ロシアのウクライナへの正当な理由なき侵攻を理由に、英国政府が自身などに科したロシア制裁の一環としてクラブの資産を差し押さえられた。しかし、現在のところ、アブラモビッチ氏のテクノロジーとの結びつきには触れられていない。同氏を主要な資金提供者とする2つのファンドから2億ドル(約233億円)超を調達し、事実上その2つのファンドを主要オーナーとしていることを明らかにしているTruphone(トゥルーフォン)は、アブラモビッチ氏と同社の関係は「間接的」であるため、現在、制裁は同社のビジネスや持ち株に影響を与えていないと述べている。

Truphone Limitedの顧問弁護士Rachel Chapman(レイチェル・チャップマン)氏は「3月10日に英国政府によって、Truphoneと間接的な関係を持つローマン・アブラモビッチ氏に制裁が科されたことを承知しています」とTechCrunchに提供した声明の中で述べている。「しかしアブラモビッチ氏は、英国の制裁法の目的に照らしてTruphoneとの『利害関係』はありません。これは、Truphoneの事業が通常通り続くことを意味します。Truphone がいかなる制裁措置の対象にもなっていないことは強調する必要があります。法的なアドバイスを受けながら、常に状況を監視しています」。

このスタートアップの2大株主が事実上アブラモビッチ氏の投資ビークルでありながら、アブラモビッチ氏自身から手の届かない距離にいるという事実は、テック業界で資金調達を追跡することがいかに難しいかを浮き彫りにしている。特に「直接」投資と「間接」投資、つまり公式にも非公式にも制裁の影響を受けるものを紐解くことの難しさがある。

アブラモビッチ氏は、従来のネットワークを迂回したグローバルな音声・データ接続を可能にするeSIMやその他の技術を開発する通信技術企業であるTruphoneに、自身が出資する投資ビークルを通じて、数年にわたって一連の投資を行ってきた。

2013年に同氏の会社Minden(ミンデン)は7500万ポンド(約115億円)のラウンドをリードし、うち7000万ポンド(約107億円)を出資した。2018年には、今度はMindenとVollin Holdings(ヴォリン・ホールディングス)の2つのアブラモビッチ氏所有の会社を通じて、Truphoneはさらに5400万ポンド(約82億円)を受け取っている(1800万ポンド[約27億円]を前払い、残りを「条件付き」で後払い)。そして2020年には、さらに3000万ポンド(約46億円)をやはりVollinとMindenから受け取っている。

PitchBookによると、VollinはTruphoneの72.45%、Mindenは22.77%を所有しており、両社には他にアクティブな投資先はない。Truphoneの評価額は2020年に5億1600万ドル(約603億円)とされている。

(補足:これらの投資をTechCrunchが取り上げた際、Truphoneは投資会社周辺の詳細を控えめにしようとした。広報担当者から「記事で名前を出さないでくれ」と少し慌てた様子の電話が筆者にかかってきて、自身の関与を軽くしようとしたのを覚えている。まったく怪しくない)

アブラモビッチ氏は先週、状況を踏まえてチェルシーFCを売りに出し、ウクライナの救済に寄付をすると発表していた。しかしその手続きは、アブラモビッチ氏がそれまでに持ち株からいかなる利益も得られないようにするため、3月10日政府によって保留にされた。今後チェルシーFCは、新規のチケット販売(すでに代金を支払ったシーズンチケット保持者のみ入場可能)、グッズ販売、選手の移籍・放出が認められないなど、制限付きライセンスのもとで運営される。

アブラモビッチ氏のテック分野への関わりに何が起こるか、また、政府が間接投資と言われるものをどのように、そして実際に追求するのかを見守る価値はありそうだ。

アブラモビッチ氏は、英国国外にも投資ビークルを持っている。PitchBookでTruphoneを唯一の投資先としているMindenとVollinに加えて、同氏は英領ヴァージン諸島に拠点を置くNormaと、Impulse VCという2つのVCにつながっている。Impulseはモスクワに拠点を置き、合計61件の投資を行っている(同じスタートアップに対して複数回のラウンドを行ったものもあり、また撤退したものもある)。Normaは、バッテリーのスタートアップStoreDot、OpenWeb(旧Spot.IM)、BrainQ Technologiesなど13件に投資している。

アブラモビッチ氏は、数年前のTelegram(テレグラム)の不運なICO(新規暗号資産公開)で、複数のロシア人投資家の1人として名を連ねている。しかし筆者はTelegramのPavel Durov(パーヴェル・ドゥーロフ)氏に連絡を取り、アブラモビッチ氏が現在投資家であるかどうかを尋ね、そうではないことを確認した。

「いいえ、幸いにも彼らは誰も当社の投資家ではありません 」とドゥーロフ氏はTelegramのメッセージで筆者に話した。

ある人がいうには、欧州のベンチャーマネーの45%はロシアに由来するという。鉄のカーテン崩壊後、自由になったソ連のインフラで富を築いた人々による、いわゆる「オリガルヒ」資金や、(ある人が主張するように)再建のためにロシアに流れ込んだ資金が別の場所に流れただけではない。そのような資産の裏側で、その間に何十億もの利益を得てきた。その後の他の事業からの配当、そしてもちろんロシアの事業家が長年にわたって通常の手段で稼いできた金もある。

Index VenturesEQTなど、いくつかの投資家はここ数日、ロシアやロシアマネーとの関係について声明を発表している。これらの声明は、ロシアやロシア出身のLPからの資金が「直接」ではないことを注意深く指摘している。そのため「間接的」というのがどのような役割を果たすかという疑問が生じる。一方、彼らはロシアのスタートアップへの投資から撤退し、ロシアで事業を展開する投資先企業にもその事業を縮小するよう促している。

画像クレジット:Alexander Hassenstein – UEFA / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

Workbounceの「GoogleとSlackの融合」B2B営業チーム向けツール、Index Venturesから約3.1億円を調達

Workbounceの創業者たち(画像クレジット:Workbounce)

商用製品の販売は昨今かなり複雑なプロセスになっており、パンデミックはそれをさらにややこしくした。営業チームは、特にやりとりの多くがバーチャルであるハイブリッドな世界では、自社製品への信頼を築くことの難しさに阻まれがちだ。Highspot、Seismic、Showpadのようなレガシーセールスツールは、異なる時代に作られたということもある。

英国を拠点とするWorkbounce(ワークバウンス)は、複雑な製品に関する膨大な量のコンテンツを検索できるようにし、営業担当者が案件を獲得するために必要な情報を見つけられるようにすることが解決策になると考えている。これは、プラットフォームに依存せず、Googleドライブ、Slack(スラック)、Notion(ノーション)などのツールに接続することで実現される。同社は、この製品を営業チーム向けの「Google meets Slack(グーグルとスラックの融合)」と呼んでいる。

このたび同社は、Index Venturesとエンジェル投資家のグループから270万ドル(約3億1300万円)の初期段階の資金を調達した。この資金調達はタイムリーなものだ。Crunchbaseによると、セールスイネーブルメントツールへの投資は過去5年間で22倍に成長しており、2017年の2100万ドル(約24億3300万円)から2021年には4億7700万ドル(約552億6500万円)に増加している。

Rowan Bailey(ローワン・ベイリー)氏とAdam Smith(アダム・スミス)氏(2021年3月にWorkdayが7億ドル / 約811億円で買収した従業員フィードバック企業Peakonの最初の採用者の1人)によって2021年初めに設立されたWorkbounceは、営業チームが使用するすべての異なるナレッジハブへの単一のエントリポイントとして機能するという。

共同創業者兼CEOのスミス氏は声明でこう述べている。「企業が営業やカスタマーサービスチームを通じて顧客と1対1でエンゲージする方法は変化しており、それは顧客の期待の高まりと、我々の働き方のシフトの両方が原因です。次世代のB2B関係は、単に製品やサービスを販売するだけでなく、ソリューションに向けたコラボレーションが重要になるでしょう」。

Workbounceは、そのリモートファーストの構造は、ポストパンデミックの世界のために構築されているという。

「Workbounceは、営業ナレッジにアクセスし、B2Bの顧客関係を改善するための主要なツールになる可能性を秘めています」とIndex Venturesのパートナー、Hannah Seal(ハンナ・シール)氏は付け加えた。「職場が変化するにつれ、適切な情報を適切なタイミングで見つけることがますます困難になっています。Workbounceはこの問題を解決し、営業チームが顧客とエンゲージし、取引を成立させることを支援します」。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Den Nakano)

女の子にコーディングを教えるオンラインゲーム「Erase All Kittens」、英スーパーマーケットTescoと配信契約を締結

英国のEdTechスタートアップErase All Kittens(EAK)は、子どもたち、特に女の子にプログラミングを教えるオンラインゲームだ。同社はこのほど、英国の大手スーパーマーケットTescoと流通契約を結んだ。その日、米国時間3月8日はたまたま国際女性デー、女性と少女たちをグローバルに支援しましょうという年に1度の日だった。Erase All Kittensはこれまで、100万ドル(約1億2000万円)ほどのシード資金を調達している。

この契約により、Tesco Clubcardの金券を使ってErase All Kittensの1年のサブスクリプションを9.99ポンド(約1530円)でTescoのウェブサイトから購入できる。Tesco Clubcardの会員は2000万人いて、そのうち660万人がストアのアプリをいつも使っている。

「Erase All Kittensとチームを組むことができたのはとてもうれしいことです。少女たちをプログラミングに誘う同社の労作は、デジタルのリテラシーが日常生活で重要になってきた今の世界ではとても貴重なものです」とTesco Clubcardの広報担当者はいう。

Erase All Kittensは子どもたちにプロフェッショナルなプログラミングを教えるオンラインゲームで「インターネット宇宙の魔法の世界で猫たちを救う」というアドベンチャーだ。これまでに、いくつかの賞を受賞している。

EAKによると、このゲームの教材は7歳から13歳ぐらいまでの子どもたちの想像力を刺激するよう作られていて、プレイヤーは本物のソースコード使って各レベルを作ったり直したりできる。女の子と男の子の両方に向いているが、EAKの調査によるとゲームをプレイした後では女の子の95%がプログラミングをもっと勉強したくなるそうだ。

同社によると、この「マリオ」のようなウェブ上のゲームは、これまで100カ国ほどの4000の学校、その16万人以上の子どもたちがプレイした。2021年はTwinkl Educational Publishingがリードするシードラウンドで100万ドルを調達し、このラウンドにはA Black Square家族事務所のChristian Reyntjens氏や、Shazamの創業者を含むエンジェル投資家たちが参加した。

CEOで共同創業者のDee Saigal(ディー・サイガル)氏は次のように語る。「プログラミングやエンジニアリングは男の子のものという大きな偏見が現在でもあります。それは本当は、女性をSTEMのキャリアから排除する性差別です。もっと多くの少女や若い女性がテクノロジーの使い方を学んで世界を作っていこうとしないかぎり、性差別は大きくなる一方です。私たちはこの問題をグローバルな規模で解決するためにErase All Kittensを作りました。このたびTescoとパートナーして全国のもっと多くの女の子たちにプログラミングと創造へ向かう気持ちを持ってもらえることは、とてもすばらしいことです」。

現在のEAKは3時間から4時間ぐらいのゲームプレイでHTMLとCSSを教えている。2022年中に、Javascriptを加えた新しいレベルを作る予定だ。

画像クレジット:Erase All Kittens game

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Atlantic Moneyはさらに安い国際送金でWiseに挑戦する

他の外国為替サービスよりも安くすることを計画している外国為替スタートアップ、Atlantic Money(アトランティックマネー)を紹介する。この売り込みに聞き覚えがあるとすれば、それは、以前TransferWise(トランスファーワイズ)として知られていたWise(ワイズ)が、同じ約束でスタートアップシーンに登場したからだ。

だが、Atlantic Moneyは、WiseやRevolut(レボリュート)でさえ高すぎると考えている。同社によれば、彼らは一度に多くのことをやろうとしすぎて、結局は必要のないものを顧客に請求しているのだという。

Atlantic Moneyの国際送金の料金はいくらか?同社は一律3ポンド(約457円)の手数料を徴収し、それでおわりだ。彼らが確保できる為替レートに上乗せすることはない。

少額の送金の場合、3ポンドはかなり高い。しかし、1000ポンド(約15万2000円)以上の送金となると、Atlantic Moneyはより競争力を持つようになる。

そして、これがAtlantic Moneyのビジネスモデルのカギなのだ。段階的に手数料を徴収するのではなく、取引ごとに固定された手数料に移行したいと考えているのだ。

画像クレジット:Atlantic Money

設立者のNeeraj Baid(ニラージ・バイド)氏とPatrick Kavanagh(パトリック・カヴァナー)氏は、もともとRobinhood(ロビンフッド)での前職で出会った。このスタートアップは、Amplo(アンプロ)とRibbit Capital(リビット・キャピタル)の主導で450万ドル(約5億2100万円)のシードラウンドを調達している。Robinhoodの創業者であるVlad Tenev(ヴラド・テネフ)氏とBaiju Bhatt(バイジュ・バット)氏も出資している。Webull(ウェブル)のAnquan Wang(アンカン・ワン)氏も投資家だ。

このスタートアップは、まず少数のコリドーを立ち上げる。具体的には、今日サインアップしたユーザーは、英国からGBPで、USD、EUR、AUD、CAD、SEK、NOK、DKK、PLN、CZKの9通貨に送金することができる。支払い方法については、Atlantic Moneyは現在、現地の銀行振込を中心に行っている。標準的な送金は2、3営業日かかり、特急送金は1日以内に到着する予定だ。

その裏側には、同社は良い為替レートを提供できるいくつかの大手金融機関と提携している。Atlantic Moneyは、その中から最適なレートを選択し、手数料は上乗せしない。Atlantic Moneyが競合他社より良いレートを提供できるかどうか、興味深いところだ。

本稿執筆時点では、5000ポンド(約76万2000円)を米国に送金しようとすると、現在Wiseでは手数料が17.79ポンド(約2700円)かかり、6648.51ドル(約76万9000円)を受け取ることができる。Revolutの無料口座では、換金したい5000ポンドに加え、20.96ポンド(約3100円)の手数料を支払うことになる。しかし、5020.96ポンド(約76万6000円)と引き換えに約6700ドル(約77万5000円)を受け取るので、為替レートは若干良くなっている。

もちろん、Revolutは他にも銀行口座やカード、株や暗号資産を取引できるなどのサービスを提供している。月額6.99ポンド(約1000円)を支払ってプレミアムアカウントを取得すれば、為替に関する手数料を免除することができる。ただし、12カ月プランなので、Revolutの利用状況によっては、FX手数料よりも利用料の方が高くついてしまうかもしれない。

同様に、Wiseでは12カ国の現地口座情報を作成できるため、住んでいない国で支払いを受ける際に便利かもしれない。また、Wiseは送金をできるだけ早くするようにしており、Wiseの送金の45%は20秒以内に到着する

つまり、外国為替商品は1つだけではない余地があるのだ。外国為替取引は1つの商品だけでは成立しないのだ。カスタマーは、最も頻繁に使用するコリドー、平均的な送金サイズ、必要と思われる追加機能に応じて、結局はサービスを選ぶことになる。しかし、英国からヨーロッパや北米へ大金を移動させるだけなら、Atlantic Moneyのユーザーになる可能性がある。

画像クレジット:Atlantic Money

画像クレジット:Philip Veater / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Yuta Kaminishi)

身元確認、マネーロンダリング、詐欺の検知ツールを開発する英ThirdFortが22.7億円調達

英国では最近、マネーロンダリング(資金洗浄)が話題だ。同国は圧力に直面している。国内の一等地の不動産のような、巨額の資産に費やされた資金の出所を追跡するために規則を厳格にするだけでなく、ここ数週間のロシアへの制裁を受け、そうした規則を実際に適用すべきだという圧力だ。この国の首都は一部で「ロンドンの洗濯屋」と呼ばれている。

ロンドンのスタートアップThirdfort(サードフォート)が現地時間3月7日、1500万ポンド(約22億7000万円)の資金調達を発表した。同社は、プロフェッショナルサービス企業がより徹底したデューデリジェンスを行い、不審な点があれば警告できるようなプラットフォームを開発している。

今回の資金調達はシリーズAでBreegaがリードし、B2Bフィンテックに特化したElement Venturesの他、ComplyAdvantage、Tessian、Fenergo、R3、Funding Circle、Fidelの創業者らも出資した。

社長のOlly Thornton-Berry(オリー・ソーントン・ベリー)氏によると、同氏とJack Bidgood(ジャック・ビッドグッド)氏がThirdfortのアイデアを思いついたのは、友人がロンドンでアパートを購入する際にフィッシング攻撃を受けて2万5000ポンド(約380万円)を失ったことがきっかけだった。詐欺師が取引に関するデータを入手し、友人が購入手続きに使っていた法律事務所と似たようなドメインを作成し、友人の弁護士になりすまし、リンクを介して金額を送金するよう求めるメールを送ってきた。数週間後、その友人は同じ金額を、今度は本物の弁護士から要求されたため、皆は不正を疑い始めた。その友人がお金を取り戻すことはなかった。

ソーントン・ベリー氏は、この事件が、顧客が取引に入る前に専門サービス企業が要求する情報がいかに少なく、より巧妙な詐欺の試みに対して顧客がいかに保護されていないかを浮き彫りにしたと話す。

これがThirdfortという姿で結実した。同社は、LexisNexis、ComplyAdvantage、Companies Houseなど複数のリソースのビッグデータツールキットを提供する。ツールキットによって、複数のリソースを比べ(顧客が選び)、個人とその資金源に関するさまざまなデータポイントを提供できる。同社は、法律と不動産市場の企業のニーズに対応するツールをまず開発した。

現在の製品は2つの部分がある。まず、法人顧客向けに開発された「リスクエンジン」があり、これはKYC(know your customer)チェックだけでなく、企業がマネーロンダリング防止規制に準拠するためにも使用することができる。法律事務所のDAC Beachcroft、Penningtons Manches Cooper、Mishcon de Reya、不動産業のKnight Frank、Strutt & Parker、Winkworthなど、すでに約700社がこのプラットフォームを利用している。

第2に、そうした企業の消費者顧客向けに作られたアプリがある。このアプリは、オープンバンキングのインフラを利用して作られており、銀行自身の銀行アプリを経由して、企業と顧客の銀行を接続し、安全な方法で取引の決済を行うことができる。このアプリは、これまで約50万回ダウンロードされた。

米国のAlloy(この会社とThirdfortのどちらかが、もう片方の市場に参入すると、AlloyはThirdfortの競争相手となる)と同様、Thirdfortの売り文句はこうだ。しっかりやろうとすれば、本人確認や資金源調査にはもっと時間がかかり、多くは手作業になり、金もかかるというものだ。というのも、残念なことに、企業にとっては多くの場合、できるだけ早く取引を成立させることだけが利益となるからだ。そのため、資金が実際に届いたかどうかを確認する以上の徹底したデリジェンスを実行する意欲が失われてしまう。これが、決められたプロセスをきちんと実行させるための規制が重要となる理由の1つだ。

英国では長年にわたり規制強化が検討され、何度も押し戻されてきたが、世界情勢や世間の監視の目が厳しくなり、時代は変化しつつあるようだ。つまり、企業はより多くの業務をこなさなければならなくなり、Thirdfortのような企業にはチャンスとなる。

以前は、身元(ID)チェックは、大規模なIDデータベースのうちの1つを選択し、そのデータと一致することを確認していたが、ごまかすことは可能だった。また、銀行取引明細書が必要な場合、専門サービス会社にはファックスやPDFで送れば済んだが、偽物はオンラインで簡単に入手することができる(ここにサイトのリンクを貼ることはしない)。

「今、求められているのは、もっと多くのことです」とソーントン・ベリー氏は話す。「銀行から入手した明細で入出金の動きを見たり、顧客に具体的な質問をしたり、贈与された金額が明記されている場合には、それを精査をしたりと、徹底したデューデリジェンスを行う必要があるのです。AML(マネーロンダリング対策)の要求水準が高くなり、まったく新しい種類のワークフローが誕生しつつあります」。

Thirdfortは現在、主に詐欺の発見に焦点を当てているが(顧客の関わる約12件の疑わしい取引を止めることができたとソーントン・バリー氏はいう)、それはまた、AMLディリジェンスとコンプライアンス規制のために開発されたものでもある。もっと広く利用されれば、特に国際的な資金が絡む大きな取引で本領発揮する可能性がある。

「消費者とプロフェッショナルサービス双方にとって、詐欺のリスクとコンプライアンスの必要性は大きな負担となっています」とBreegaのプリンシパルであるMaxence Drummond(マクセンス・ドラモンド)氏はいう。「消費者は取引のたびに認証を受ける必要があり、規制を順守するプロフェッショナルらは顧客の確認とコンプライアンスに貴重な時間を費やしすぎているからです」。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

アストンマーティン、Britishvoltと電池セル技術を共同開発

英国の高級車メーカー、アストンマーティンが、リチウムイオン電池技術会社であるBritishvolt(ブリティッシュボルト)と覚書を締結した。両社は、高性能車向けのバッテリーセル技術の開発に向けて協力する。

アストンマーティンは、2025年に同社初のバッテリー式電気自動車を発売する計画で、現行のスポーツカーの1つを直接置き換えることになると見られている。また、2026年までにはすべての新商品ラインに電動パワートレイン(動力伝達装置)の選択肢を提供し、2030年までには中心ラインナップを完全電動化することを目標としている、と同社はいう。

完全電動化へのロードマップはまだ公表されていない。

アストンマーティンとBritishvoltの共同研究開発チームは、特注モジュールとバッテリー管理システムを含むバッテリーパックの設計、開発、量産化を共同で行う。この共同研究開発がどこで行われるのかについての問合せに、両社はまだ回答していないが、現在Britishvoltは、ノーサンバーランド州カンボワにある45GWhのギガプラントに取り組んでいる。同プラントは2027年にフル稼働する予定で、年間45万台の電気自動車用の電池パックを生産できるようになる予定だ。

2022年の1月、Britishvoltはこのプロジェクトのために英国政府から23億ドル(約2642億円)の資金を確保した。この資金を使って、Britishvoltは大量生産を後押しするために、ニッケル含有量の高いバッテリーとエネルギー密度の高い材料の開発に注力することになる。さらに先月には、Britishvoltはコバルト採掘の巨人Glencore(グレンコア)から5400万ドル(約62億円)の投資を受けてシリーズCを開始した。このラウンドでは合計2億6400万ドル(約303億3000万円)の調達が目指されており、その一部は計画中のバッテリー工場と研究開発センターに向けられる予定だ。

Britishvoltは先月、4つの自動車メーカーと契約を結んだことも発表しているが、そのうちの1つは英国の自動車メーカー・ロータスだ。アストンマーチンもその4社のうちの1社である可能性があるが、Britishvoltはそのことについて回答していない。

アストンマーティンは電動化ロードマップの一環として、同社初のプラグインハイブリッドカー「Valhalla(ヴァルハラ)」の納車を2024年初頭までに開始する予定だ。Valhallaに、Britishvoltのバッテリーが搭載されるかどうかについては明言されていない。

画像クレジット:Aston Martin

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

コンテンツクリエイターに無料の音楽を提供する英国のUppbeatが約7億円を調達

英国を拠点とする音楽プラットフォームのUppbeatは、コンテンツクリエイターがYouTubeやTwitch、TikTokなどのプラットフォームで公開する動画に使用できる無料で高品質の音楽を簡単に見つけられるサービスを構築し、現在50万人以上のユーザーが利用している。同社はビジネスを成長させるためにシリーズAで460万ポンド(約7億500万円)を調達したと発表した。

Uppbeatを構築したのは、英国を拠点とする音楽ライセンス企業のMusic Vineを共同で創業したLewis Foster(ルイス・フォスター)氏とMatt Russell(マット・ラッセル)氏だ。2人は、自分たちの専門性を活かしてクリエイターの間で高まっている無料の音楽リソースのニーズに応えるチャンスがあると考えた。現在、1億人以上がソーシャルプラットフォームでコンテンツを共有しているが、無料でありながら高品質の音楽の選択肢は多くないと2人は確信していた。

Uppbeatは2021年1月にサービスを開始し、費用のかかる音楽ライセンスプラットフォーム、あるいはYouTubeのオーディオライブラリやクリエイティブ・コモンズの音楽といった無料の音楽に代わる選択肢を提供することで、クリエイターが作るコンテンツで使われる音楽の著作権に関する頭痛の種を取り除いている。

Uppbeatはフリーミアムのモデルを活用して、クリエイターがアカウントを作成するとサイトのカタログの約50%にアクセスでき、1カ月に10件ダウンロードできるようにしている。プレミアムのサブスクリプション(月額6.99ドル、約800円)ではすべてにアクセスし、無制限にダウンロードできる(3年間と永続のサブスクリプションも用意されている)。

2021年9月にはサイトを拡張して、音楽だけでなく「ミームスタイル」のコンテンツに適した効果音とクリップのライブラリも提供している。

画像クレジット:Uppbeat

曲にはライセンスのない使用への対抗策としてフィンガープリントが必要であるため、Uppbeatの音楽を使う際に著作権の主張が発生することもある。しかしおよそ5分以内でシステムが必要なクレジットを確認してから主張を自動で処理する。無料ユーザーはYouTubeの動画の説明にクレジットを追加して著作権の主張をクリアすればよい。YouTubeを利用するプレミアムユーザーは自分のチャンネルをホワイトリストに登録して自動で著作権の主張から保護することができる。

このシステムはYouTube限定ではない。音楽と効果音はストリーマー、ポッドキャスター、ブロガー、その他のソーシャルメディアクリエイターが利用する、ほぼすべてのプラットフォームで動作する。

一方、Uppbeatのアーティストは音楽の所有権をすべて保持し、レベニューシェアベースで報酬を受け取る。

Uppbeatによれば、毎月7万5000人以上の新規ユーザーを獲得し、サイトへのトラフィックは月間100万セッションを超えるという。リテンションは高く直帰率は10%未満の低さであると、同社はTechCrunchに対して語った。セッションタイムの平均は5分以上だという。

Uppbeatのカタログはサービス開始時の1000曲から3000曲以上へと増えている。2500種類の効果音とクリップも追加された。同社は、年間収益ランレートは71万8000ドル(約8300万円)で、Music Vine全体としてはおよそ240万ドル(約2億7600万円)と発表している。

同社は、シリーズAの投資家は戦略的支援者でありこの分野のリーダーで、当人が公表を望まないため発表できないと述べた。

今回の資金調達により、Uppbeatは同社の音楽をYouTubeで公開してブランドのプレゼンスをさらに高め、オンラインのコミュニティとこれまで以上に直接関わっていくとしている。バックエンド全体を見直して、パーソナライズ機能を備えたスマートなユーザーインターフェイスの構築も予定している。

さらにクリエイター向け新機能を公開する計画もある。例えばクリエイターが独自のプレイリストを作成して共有する機能が挙げられる。これによりUppbeatのアーティストの露出が増え、クリエイターの収益化につながる可能性もある。すでに同社はユーチューバーと連携し、厳選された「パートナーのプレイリスト」を公開してユーチューバーが自分のチャンネルでよく使う音楽を紹介している。

従業員も現在の9人から増員し、新しいオフィスに移る予定だ。

共同創業者でCEOのフォスター氏は次のように述べた。「Uppbeatの公開以来、クリエイターコミュニティの反応はまさにすばらしいものです。クリエイターの積極性とフィードバックによりこのプラットフォームは現在の地位を得ることができました。Uppbeatがエキサイティングな新しい展開を始めるにあたり多額の投資を受けられたのはクリエイターのみなさんのおかげです。今回の調達はUppbeatが目指す成長戦略の資金となるゲームチェンジャーであるだけでなく、クリエイターコミュニティにとってエキサイティングな出来事であり誰もが自由に創作活動ができるようにするという我々の道のりにおける大きなマイルストーンです」。

画像クレジット:Uppbeat

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

オックスフォード大からスピンアウトした英QuantrolOxは機械学習で量子ビットを制御する

2021年にオックスフォード大学からスピンアウトした新しいスタートアップ、QuantrolOxは、量子コンピュータ内部の量子ビットを機械学習(ML)で制御しようとしている。オックスフォード大学のAndrew Briggs(アンドリュー・ブリッグス)教授、テック起業家のVishal Chatrath(ヴィシャール・チャトラス)氏、同社のチーフサイエンティストのNatalia Ares(ナタリア・アレス)博士、量子技術責任者のDominic Lennon(ドミニク・レノン)博士が共同で設立した同社は西ヨーロッパ時間2月23日、Nielsen VenturesとHoxton Venturesが主導して140万ポンド(約2億1700万円)のシードラウンドを調達したと発表した。Voima Ventures、Remus Capital、Arm(アーム)の共同創業者であるHermann Hauser(ハーマン・ハウザー)博士、Laurent Caraffa(ローラン・カラファ)氏もこのラウンドに投資している。

同社の技術はテクノロジー非依存型で、標準的な量子コンピューティング技術のすべてに適用できる。QuantrolOxのシステムは、手動調整の代わりに、量子ビットの調整、安定化、最適化を大幅に高速化することができるというものだ。QuantrolOxのCEOであるチャトラス氏は、既存の方法はスケーラブルではないと主張し、特にこれらのマシンが改良され続ける限りはそうだと語る。

「ある米国の投資家と話していた時のことです。彼は、量子コンピュータが有用であるために収益を得るのを待つ必要はないという点で、我々は量子業界のスコップやつるはしのようなものだと言いました」とチャトラス氏。「5個の量子ビットから、願わくば数百万個の量子ビットになっていく中で、デバイス特性評価と量子ビットの調整を行うために、毎日私たちのソフトウェアが必要になります」。

同社は当面は、固体量子ビットに焦点を当てるという。フィンランドの研究所との緊密な連携など、同社がアクセスできるシステムであることも理由の1つだが、同社はそのパートナーシップについてはまだ公表する準備ができていない。すべての機械学習の問題と同様に、QuantrolOxは効果的な機械学習モデルを構築するために十分なデータを収集する必要がある。

チャトラス氏も述べているように、我々はまだ量子コンピューティングの非常に初期の段階にいる。しかし、QuantrolOxのようなツールが研究者のデバイステストのプロセスを加速するのに役立つなら、それは業界全体にとって恩恵となる。業界ではすでに多くの企業が、同社の制御ソフトウエアの利用を打診していると同氏は指摘した。

同社は現在7人の正社員を擁しているが、近い将来、さらに10人程度を採用する予定だという。だがチャトラス氏は、今後2年間で人数がそれ以上増えることはないだろうと述べている。「ニッチな分野に特化しているため、大きなチームは必要ありません」と彼はいう。「フルスタックにするつもりはありません。スタックの上位には行きたくないし、スタックの下位はハードウェアですから、そこにも行けません。当社がフォーカスしているのは非常に狭いエリアです」。

今のところQuantrolOxは、量子コンピュータの開発者とより多くのパートナーシップを構築することに注力している。チームは物理的なマシンだけでなく、これらのシステムと統合できるように、それらを制御するソースコードにもアクセスする必要があるため、かなり深いパートナーシップとなるからだ。

もちろん、今の業界には標準規格がほとんどないという問題があり、チャトラス氏はそれを痛感している。「量子産業が成功するためには、我々のようにある特定の分野に超特化したスタートアップがたくさん必要です。超特化した企業でなければ、規模の経済が得られないからです」と彼はいう。「フルスタックの(1つですべてなし得るという)ストーリーを語るのは、遅かれ早かれ止めなければならないと思います。人々は、企業のエコシステムを構築し始める必要があります」。

画像クレジット:hh5800 / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Den Nakano)

英国政府、ポルノサイトの年齢確認の復活なるか?

英国政府は、インターネットプラットフォームのコンテンツに関する包括的な規則を定めた次期法案に、ポルノサイトの年齢制限の設置義務を新たに追加することを発表した。これは、子どもがポルノにアクセスしたり、偶然見つけたりすることを防ぐために、アダルトサイトに「年齢認証技術」の使用を義務付けるという政府の長年の目標の復活である。

デジタル・メディア・文化・スポーツ省(DCMS)は「セーファー・インターネット・デー」に合わせてこの発表を行い、子どもの保護に関する大衆的なレトリックを強化している。

DCMSによると、未成年者のアクセスを防ぐためのポルノサイトに対する法的義務は、ポルノサイトをOnline Safety Bill(オンライン安全法案)の対象にすることで実現されるという。オンライン安全法案は、2021年5月に政府が制定した、でに非常に広範な法案を、さらに拡大するものである。

この法案は当初、ユーザーが作成したコンテンツに付随するさまざまな「害悪」に焦点を当てていた。しかし、児童安全の活動家は、実際のポルノを提案された法的義務の対象外とすれば制度全体が弱体化すると警告し、政府もその点を認めたようだ。

Chris Philp(クリス・フィルプ)デジタル大臣は声明の中で次のように述べる。「子どもはあまりにも簡単にオンラインでポルノにアクセスできます。保護者が『子どもはオンラインで見てはいけないものを見ないように保護されている』という安心感をもてるようにしなければなりません」。

「私たちは現在、オンライン安全法案を強化し、すべてのポルノサイトに適用して、子どもたちにとってインターネットをもっと安全な場所にするという目的を達成しようとしています」。

DCMSによると、今回の法案には、ポルノサイトはどのような年齢認証技術を使用して、利用者が18歳以上であることを「確実に」確認する必要があるかは明記されていないという。

DCMSは「成人側が、安全な年齢認証技術を使用してクレジットカードを所持していることや18歳以上であることを証明したり、第三者サービスに政府のデータと照らし合わせて年齢を確認することなどが考えられる」と提案している。

「新しい法的義務をどのように遵守するかを決める責任は企業自身にあります。Ofcom(英国放送通信庁)は、ユーザーデータの処理を最小限に抑えることができる、幅広い年齢認証技術の利用を企業に推奨する可能性があります」と政府は延べ、次のように続ける。「 この法案は、特定のソリューションの使用は義務付けていません。イノベーションと、将来のより効果的なテクノロジーの開発と利用を可能にする柔軟性が不可欠だからです」。

児童安全の活動家は、オンライン安全法案のさらなる拡大を求めているが、市民の自由権やデジタル権(個人がデジタルコンテンツにアクセスする権利)を訴える活動家たちは、個人の権利や自由に対するリスクを引き続き警告し、あらゆる種類のインターネットコンテンツを規制するという大規模な計画の実現性にも疑問を投げかけている。彼らによると、この法案は、オンライン上の表現を萎縮させる恐れがあると同時に、英国でのデジタルビジネスの障壁にもなりかねないという。

後者についてはともかく、現在検討されているように、ポルノサイトへの年齢確認の義務化や、何らかの形で年齢確認を行い責任を軽減するようプラットフォームに働きかける「注意義務」制度などを盛り込んだ法案が実際に成立すれば、少なくとも年齢認証業界は大きな収益を上げることになりそうだ。

プライバシーや市民的自由に関する批判に対応するために、DCMSのプレスリリースでは、ポルノサイトが導入を義務付けられる年齢認証技術は「完全な身元確認は必要としない」としている。

また、ユーザーが身分証明書などを使って年齢を証明する必要がある「かもしれない」としながらも、企業が導入するソリューションでは「年齢確認の目的とは無関係のデータを処理または保存してはならない」と規定している。

(DCMSのプレスリリースは)「現在利用可能なソリューションには、携帯電話会社が保有する情報とユーザーの年齢を照合する方法、クレジットカードを使って照合する方法、パスポートデータなど政府が保有するデータを含むデータベースを使って照合する方法などがある」として「使用する年齢認証技術は、安全かつ効果的で、プライバシーを保護するものでなければならない」と強調する。

DCMSは、年齢認証技術を「使用または構築」する企業は、英国のデータ保護規制を遵守する必要があり、さもなければ英国個人情報保護監督機関(ICO)から強制措置を受ける可能性があると指摘する。

しかし、政府が同時に国内のデータ保護体制の簡易化を検討していることは注目に値する。DCMSは、人々のプライバシーを低下させることで、デジタルビジネスの「革新」を促進するかもしれないと示唆しているが、より明白な影響、すなわち、商業的なデータマイニングを野放しにした場合、個人のデータ侵害や誤用のリスクは大幅に拡大し、セキュリティ違反やスキャンダルのパイプラインを並べることで、デジタルサービスに対する国民の不信感を確実に高めることになる、という点を考慮していない。

DCMSは、英国の既存の個人情報保護法は、年齢・身元確認の義務化などにともなうポルノユーザーやインターネットユーザーの不正な追跡を防ぐことができると主張しているが、ICOがアドテックによるインターネットユーザーの不正な追跡をまったく阻止できなかったことを考えると、DCMSの主張も批判的に検討する必要がある。ICOが方針を180度転換し、英国のポルノユーザーが私的に楽しむ権利を強固に守るために、注意が大好きで企業に優しい規制当局がポルノサイトの年齢確認基準を積極的に尋問することを想像すると、控えめに言っても相当の不信の停止(批判を一時停止し、非現実なものを受け入れること)が必要がある。

しかし、政府のプレスリリースにはこのような詳細は書かれていない。むしろDCMSは、提案されているオンライントラッキングの拡大を「オンラインでの年齢確認は、オンラインギャンブルや年齢制限のある販売など、他のオンライン分野ではますます一般的になっている」として単に常態化しようとしている。

その上で「業界と協力して、企業が年齢認証技術を利用する際に従うべき強固な基準を策定し、Ofcomもオンラインの安全体制を監督する際にそれを利用できることを期待している」と述べる (つまり「産業界が年齢認証技術をどのように利用するかについては、我々が産業界と協力して考えるから、ユーザーが心配する必要はない」というのが政府の方針なのだ。えーっと……)。

英国政府は以前、ポルノサイトに年齢確認を義務付けようとしたことがある。しかし、年齢確認を義務化することは技術的にも規制的にも困難であり、また、アダルトサイトの利用者全員に本人確認を求めることはプライバシーの観点からも問題があるとの批判を受け、2019年にこの計画をひっそりと取り下げざるを得なかった。それにもかかわらず、政府は、このコンセプトを、すでに準備中のオンライン上の有害性に対するより包括的なアプローチに組み込めるように取り組むとしている。

このような「ポルノブロック」の波乱に満ちた過去や、拡大し続けるオンライン安全法案の範囲と野放図な表現の制限をめぐる現在の論争にもかかわらず、DCMSは法案の見直しを提案するのではなく、さらに項目を追加してインターネットコンテンツの規制を倍増しようとしている。

2月5日、DCMSの国務長官であるNadine Dorries(ナディン・ドリーズ)は、メディアのインタビューに応じ、犯罪コンテンツに新たに追加された項目について言及した。それにはオンラインでの麻薬や武器の取引、密入国、リベンジポルノ、詐欺、自殺の助長、売春を扇動・管理して利益を得ることなどが含まれ、取り締まりを強化するために法案の文言に追加されるという。

同氏は、オンラインやデジタルデバイスを使用したDV(ドメスティックバイオレンス)や強姦・殺害の脅迫に対処するために、新たな刑罰を法案に追加することも発表した。

この追加により、対象となるプラットフォームでは、積極的に識別して削除することが求められるコンテンツの種類が大幅に拡大される(単にユーザーからの問題コンテンツの報告に対応するだけには留まらない)。

つまり、これまでプラットフォームが何十年にもわたって享受してきた法的責任体制が大きく変わることになり、プラットフォームの運営やコスト、オンライン上の言論に大きな影響を与えることになる。

DCMSは2月4日に発表したプレスリリースで、次のように示唆している。「優先度の高い犯罪に積極的に取り組むために、企業は自社サービスの特徴、機能、アルゴリズムが、これらの犯罪への遭遇を防止し、これらのコンテンツの利用時間を最小限に抑えるように設計されていることを確認する必要があります」「これは、自動または人力によるコンテンツの修正、違法な検索ワードの禁止、疑わしいユーザーの検出、利用を禁止されたユーザーが新しいアカウントを作成できないようにするための効果的なシステムの導入などで実現可能です」。

法案で提案されている、この高度に規制されたコンテンツモデレーション体制(コンテンツをチェック・評価して不適切なものを除外する体制)を実施するために手段には、規制に準拠していないプラットフォームに対して最大で全世界の年間売上高の10%という大規模な金銭的罰則が含まれている。また、テロリズムや児童の性的搾取、自殺の助長や詐欺などの増え続ける害悪から人々を守ることができないアルゴリズムやプロセスが発見された場合、上級管理職に対しては懲役刑が科せられる可能性もある。

この法案には、英国の新しいインターネットコンテンツ規制機関であるOfcomにサイトをブロックする権限を与え、英国内でアクセスできないようにすることも含まれている(ということは、これは年齢認証技術を促進するだけではなく、VPNサービスの急成長も後押しすることになるはずだ)。

規制により創出されるかもしれないニッチなビジネスチャンスとしては、政府はエンド・ツー・エンドの暗号化サービスに組み込むことができる技術の開発を奨励しようとしている、という点が挙げられる。この技術では、監視を回避するために強固に暗号化されたコンテンツでも児童の性的虐待に関する情報をスキャンできるようにすることで、法律が適用されるようになる(ただし、ある種の違法なコンテンツをスキャンできるようになれば、他の犯罪や単に有害なコンテンツをチェックする機能を追加しようとする政治的圧力に抵抗するのは難しくなるだろう)。

1つの法律(実際には多くの二次的な法律も存在する)で非常に多くの複雑で微妙な問題を解決しようとすることは、本来ならば政治的な自殺行為であるはずだ。しかし、終わりの見えないコンテンツスキャンダルのおかげでハイテク企業を無責任な利益追求者として描くことが容易になった今、政府はこの法律に過度に単純化した「児童保護」という要素を付け加え、長く待たされたFacebook(フェイスブック)などを「調教」することに対する大衆的な支持を得られる理想的な状況を作り出したのである。

この法案の「ありとあらゆるものを詰め込んだ」性質と曖昧な定義が相まって、結果を予測することは非常に困難になった。連動する要件すべてが実際に何を意味するのかについての明確な指針の欠落は、この提案を推し進める閣僚にさらなる援護射撃となっている。

今回の追加提案の前にオンライン安全法案を精査した2つの議会委員会は、多くの懸念を表明しており、最近では、DCMS委員会が「この提案は言論の保護と有害性への取り組みに欠ける」と警告している

12月には、別の議会委員会が、ビッグテックによる自主規制の時代に終止符を打つという政府の広範な目的を支持しながらも、一連の変更を要求した。

政府は、児童保護活動家から寄せられたポルノサイトへのアクセスに関する広範な懸念とともに、これらの意見を最新の追加法案に反映させたとしている。

画像クレジット:Harshil Shah / Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

アマゾン、VISAカード決済の継続にグローバルで合意

米Amazon(アマゾン)とVISA(ビザ)が、英国などでの決済手数料をめぐる対立を解決したとReutersが報じた。Amazonの広報担当者は「VISAとグローバルな合意に達し、すべての顧客がAmazonでの買い物でVISAのカード決済が継続利用できるようになった」とReutersに述べた。

Amazonは、クレジットカード取引にかかる手数料が高いことを不服として、1月19日から英国でのVISAの取り扱いを停止すると脅し圧力をかけていた。EUではカード発行会社の手数料に上限が設けられているため、欧州の他の地域には影響がなかったが、ブレグジット後の英国でMastercardとVISAの両カード発行会社が手数料をつり上げたのだ。英国の規制当局は最近、これらの値上げを調査すると発表した。

決済市場におけるVISAの優位性を考えると、Amazonがその脅しを実行に移すことはないと思われた。案の定、期限の少し前に、Amazonは結局VISAカードの受け入れを継続すると発表し「VISAと緊密に協力して可能な解決策を検討している」と述べていた。

Amazonは、他の地域ではVISAカードの使用を禁止したり、取り扱い停止の圧力をかけたりはしていなかったが、オーストラリアとシンガポールでVISAを使用する顧客には「サーチャージ」として追加の取引手数料を請求していた。この手数料は現在取り消されており、VISAとAmazonはこの問題をすべて解決したようだ。VISAの広報担当者は、声明で次のように述べている。「今回の合意には、今日(米国時間2月17日)からAmazonのすべてのサイト・ストアでVISAが継続利用できるようになることに加え、新製品や新技術への取り組みについて共同で取り組むコミットメントが含まれています」。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Matt Cardy / Getty Images

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

英歳入関税庁が2.2億円相当の脱税案件の捜査にともないNFTを押収、英法執行機関として初

英歳入関税庁が2.2億円相当の脱税案件の捜査にともないNFTを押収、英法執行機関として初

Dinendra Haria/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

英国の歳入関税庁(HMRC)が、詐欺事件に関わる調査の一環としてNFT3つを押収したことを明らかにしました。当局によると、このNFTに関して140万ポンド(約2.2億円)以上の付加価値税(VAT)詐欺の疑いがあり、調査の一環としてのNFTおよび5000ポンド(約78万円)相当の暗号資産を押収したとのこと。英国の法執行機関がNFTを押収するのは今回が初めてとされます。

容疑者は偽造身分証明書、プリペイド電話、VPNなどを使い、250以上の偽装企業を通じた金品の売買に応じて徴収されるVATの額をごまかしていたとされ、脱税の疑いで逮捕されました。

調査はまだ進行中ですが、HMRCの経済犯罪担当副局長ニック・シャープ氏は、このNFTの「押収事例が暗号資産を脱税に利用すれば金を隠しおおせると思っている人たちへの警告になる」と述べ「われわれは常に新しい技術に対応し、犯罪者が資産を隠そうとする方法を研究把握している」としています。

NFTとは、デジタルアートワークやビデオゲームのキャラクターなどバーチャルなアイテムの所有権を追跡するために、ブロックチェーン技術を応用した非代替性トークンのことで、これが添付されたデジタルアートや、何らかのデータが本物かどうかを証明する鑑定書のようなものといえばわかりやすいかもしれません。

巨額の案件がいくつかニュースになり、その結果2021年には総額400億ドルを超えるNFTが販売、取り引きされたと伝えられています。しかしNFTには法的な規制や保護が整備されていない状況であり、たとえば自己売買(いわゆるウォッシュトレード)を繰り返すことによる価格つり上げから、まがい物、盗作品などを使った詐欺案件も急増しています。

NFT売買大手の米OpenSeaは、今回のNFTの押収について「犯罪者が暗号のしくみを隠れ蓑にできないことを示している」とし「執行機関がその取り引きを追跡して違法行為に使われたNFTと暗号資産を押収し犯罪者に利益を得させないようにできる」とコメントしています。

(Source:BBC NewsCNBCEngadget日本版より転載)

英国外務省が「深刻なインシデント」のために緊急サイバーセキュリティ支援を要請

英国の外務省が「深刻なインシデント」の対象となり、緊急のサイバーセキュリティ支援を要請せざるを得ない事態となっていたことがわかった。

このインシデントは、最近発表された公開入札書類で確認されたものだ。現地時間2月4日に公開されたこの書類では、外務・英連邦・開発省(FCDO)が、サイバーセキュリティの契約先であるBAE Applied Intelligence(BAEアプライド・インテリジェンス)社に「緊急の業務支援」を要請したことが明らかになっている。

この通知によると、FCDOは、2022年1月12日に締結された「当局のサイバーセキュリティインシデントを分析するためのビジネスアナリストおよびテクニカルアーキテクトの支援」を行う契約を発行した後、同社の援助に対し46万7325.60ポンド(約7300万円)を支払っている。

しかし、これまで公表されていなかったこの事件の詳細は、依然として不明のままだ。

「当局は深刻なサイバーセキュリティインシデントの対象となったが、その詳細は公表できない」と、この書類には書かれている。「このインシデントを受けて、修復と調査をサポートするために緊急の支援が必要となった。この業務の緊急性と重要性のため、当局は一般手続きや制限手続き、あるいは競争的交渉手続きの期限を遵守することができなかった」。

BAEとの契約については、The Stack(ザ・スタック)によって初めて報じられた。

名前を明かさなかったFCDOの広報担当者は、TechCrunchに対し、同局はセキュリティについてはコメントしないが「潜在的なサイバーインシデントを検知し、防御するためのシステムを持っている」と語った。この広報担当者は、機密情報へのアクセスがあったかどうかなど、この事件に関する詳しい質問には答えなかった。

TechCrunchは英国のデータ保護当局にも連絡を取り、この事件が報告されたかどうかを確認したが、まだ回答は得られていない。

なお、今回明らかになった事件が報じられる数日前には、国際的な文化交流と教育機会の促進を専門とする英国の公的機関であるBritish Council(ブリティッシュ・カウンシル)でも、重大なセキュリティ上の過失が発覚している。Clario(クラリオ)のセキュリティ研究者が、保護されていないMicrosoft Azure(マイクロソフト・アジュール)のストレージ・サーバー上に14万4000の暗号化されていないファイルを発見したが、その中にはブリティッシュ・カウンシルの学生の個人情報やログイン情報が含まれていたのだ。

2020年12月には、サセックス州にあるFCDOの執行機関であるWilton Park(ウィルトン・パーク)がサイバー攻撃を受けており、英国の国立サイバーセキュリティセンターによる調査の結果、データが盗まれた証拠はないものの、ハッカーが6年間にわたって同機関のシステムにアクセスしていたことが判明している。

画像クレジット:Chris J. Ratcliffe / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Q5Dは手作業で行われてきた電子機器製造工程の配線作業をロボットで自動化

Q5Dの提案はシンプルだ。「ロボットを使って電子機器用ワイヤーハーネスの製造工程を自動化する」こと。電子機器用ワイヤーハーネスの製造は、その全体的な複雑さゆえに、意外にもいまだに手作業で行われていることが多い。この工程は前世紀からあまり変わっていないと、同社は事あるごとに指摘する。これらを機械に任せることで、製造工程のスピードアップ(現在のような遅れの中では絶対的なプラス要因)、コスト削減、ヒューマンエラーの減少につながる。

英国ブリストルに本拠を置くこのスタートアップ企業は、Cella Energy(セラエネルギー)やCEL-UK(セルUK)に携わっていたSteve Bennington(スティーブ・ベニントン)氏とChris Elsworthy(クリス・エルスワーシー)氏が、2019年に設立した。現在はそれぞれCEOとCTOを務めている。実はこの会社は、Robox(ロボックス)ブランドを含む3Dプリンターを製造しているCEL-UKと、電子機器製造用の工作機械を製造しているM-Solv(Mソルブ)のジョイントベンチャーなのだ。

画像クレジット:Q5D

Q5Dは、ハードテックのベンチャープログラムであるHAXの卒業生であり、今回発表されたシードラウンドには、HAXを運営するSOSVも参加している。「製品の内部に配線を施すことは、製造工程の中で最も手作業が多く、うんざりする作業です。Q5Dのプロセスと製品は、先進的な製造業において自動化を完結するために必須のものです」と、HAXのパートナーであるDuncan Hunter(ダンカン・ハンター)氏は、今回の資金調達に関するリリースで述べている。

今回の270万ドル(約3億1000万円)の資金調達は、Chrysalix Venture Capital(クリサリックス・ベンチャー・キャピタル)が主導し、Rainbow Seed Fund(レインボー・シード・ファンド)も参加した。この資金は、同社の技術をさらに拡大するために使用される予定だ。現在はSafran(サフラン)やOxford Space Systems(オックスフォード・スペース・システムズ)など、主に航空宇宙分野の顧客に使用されているが、この技術は民生用電子機器や自動車、特に配線システムが内蔵された電子機器など、非常に幅広い分野で展開が可能であることを、同社は即座に強調する。

「今は大きな変化の時代です。交通機関の急速な電化や、洗濯機から携帯電話まであらゆる機器の高機能化により、配線はさらに複雑で手間のかかるものになっています」と、ベニントン氏はリリースの中で述べている。「この世界で過去80年間行われてきた配線のやり方は、変わらなければなりません」。

画像クレジット:Q5D

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

手持ちのモノを売り支払いに充てられる決済プラットフォームTwigが約40.3億円調達、「グリーン」を謳うがそのサステナビリティにはほころびが見える

Z世代と若いミレニアル世代の消費者をターゲットとし、電子マネーアカウントで衣類や電子機器を売って即座に換金できるロンドン本拠のフィンテックTwig(トゥイグ)が3500万ドル(約40億3000万円)のシリーズAラウンドをクローズした。

今回のラウンドを率いたのは、フィンテック投資専門のFasanara Capital(ファサナラキャピタル)で、Twigによると、LVMH、Valentino(バレンチーノ)、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の現幹部や旧幹部など、他にも数多くの匿名の戦略投資家たちが参加したという。

Twigは2020年創業の新興スタートアップで2021年7月に英国でサービスを開始したばかりだが、英国内で急速に成長しており(Twigのアプリのダウンロード回数は月間10万回を超えており、iOSのApp Storeでファイナンス関連アプリの第6位にランキングされた)、すでに海外進出に向けて準備を開始している。

Twigは、シリーズAで獲得した資金で、米国(2022年第1四半期)およびEU(第2四半期。まずはイタリア、フランス、ドイツを予定)に進出すると目されている。また、Web3とデジタル収集品の流行に注目して製品の機能拡張も予定している。

現時点では、Twigのアカウントは英国内でのみ使用できる。創業者兼CEOのGeri Cupi(ゲリー・クピ)氏によると、現段階で約25万人のユーザーを確保しているという。

同氏によると、典型的なユーザーは大学を卒業したばかりの22歳の働く女性だ。こうした女性は、おそらくワードローブに着れなくなった衣類が山のようにあり、いつでも売りたいと考えているからだ。

Twigでは、他の金融機関のアカウントに送金すると1ユーロの手数料を請求されるが、Twigアカウント同士の送金では手数料はかからないため、口コミで広がり成長したことが初期段階での急成長を加速させたようだ。

また「your bank of things(モノの銀行)」というマーケティングスローガンを掲げているものの、Twigは実際には銀行ではないことも指摘しておく必要がある。Twigのアカウントは「電子マネーアカウント」だ。このため適用される規制に関して銀行とは大きな違いがある(例えばTwigのアカウントは英国の預金保証制度の対象にはならない)。

正式な銀行ではないため、Twigは新市場でいち早く成長することができる。銀行業務ライセンスを取得する必要がある場合に比べて、提供サービスに適用される規制が軽減されるからだ。クピ氏によると、現時点では性急に正式な銀行になるつもりはないという。

数十年前、インターネットおよびオープンバンキングを背景とするフィンテックブームなど存在しない時代の昔ながらの銀行は、バッグ、文房具、音楽などの無料のおまけをつけることで学校を出たばかりの新社会人に営業して口座を作ってもらっていた。最近のフィンテックスタートアップは、最も魅力的な機能セットを競って提供することで若い年齢層の顧客を捕まえようとしている。

ただし、お金を口座に入れてもらうことが依然として主たる目的であることは間違いない。

とは言え、TwigはB Corp認証を取得申請中だ。B Corp認証は社会的目的と環境への配慮、透明性、説明責任を重視していると認められる企業に与えられる。クピ氏によると、同社は、申請の最終段階にあり、現時点では保留状態だが、第一四半期には完全な認証を受けられる見込みであるといい、ユーザーにブランド品を捨てる代わりに売るよう勧めることでサステナビリティと経済循環性を実現していることを強くPRしている。

Twigのウェブサイトでも、環境への影響を抑えるためにカーボンオフセットの取り組みを行っており、その他のイニシアチブにも参加していることが掲載されている。

要するに、人類が気候災害を回避するには、世界レベルでのCO2排出量、つまりは全体的な消費の削減が必要となる。そこで疑問視されるのが「サステナビリティ」を再販売というコンセプトに無理矢理結びつける主張の信憑性だ。再販売には、すぐに査定してもらって現金が手に入るため、逆に消費量が増すリスクがあるからだ。

現在所有しているモノを売って現金が手に入るなら、一度購入したアイテムを手放さずに長く使う場合に比べて、消費者はお金をどんどん使って新しいモノを買うよう仕向けられる可能性がある。別の言い方をすれば、消費を削減してCO2排出量を削減するつもりなら、循環経済とモノの寿命をセットで考える必要があるということだ。再販売に必要な面倒な手続きが削減されることで消費者がモノを買わなくなるかどうかはわからない。逆にもっとモノを買うようになる可能性もある。

これがTwigの謳うサステナビリティにほころびが見える点の1つだ。

この難題をクピ氏にぶつけたところ、同氏は次のような議論(いくらか循環論法的ではあるが)を展開して巧妙に解決して見せた。「中古品の流動性を高めるというTwigの目的はサステナビリティの向上と消費量削減の推進を実現します。というのは、より多くの中古品が買えるようになるからです。その結果新しいモノに対する需要が減り、より多くのアイテムがこの(より活発な)中古品経済を介して循環するようになる。

「基本的に、当社のビジネスは、消費者が自分が持っている古いアイテムをお金に変えられるようにすることで、その古いアイテムに新しい命を与えるというものです。これによって、少なくとも中古市場の供給が増大します」と同氏はいう。「中古市場の需要はずっと増え続けています。当社が中古市場の供給側だけでやっていけるのは、現在、中古市場には供給の追加を求める大きなニーズがあるからです。消費者が手持ちの中古品を売ってお金を得たとしても、そのお金で別のモノを購入するとは限りません」。

「これは当社のユーザーの行動からわかることですが、Twigに送られてくる資金のうち約42%は新しい経験、つまり旅行や経験主導の活動に使われています。ですから、流動性が向上したからといって、必ずしもモノの消費が増大して環境に悪影響を与えるとは限りません。それがこれまでのユーザーの行動から分かっていることです」。

クピ氏はTwigのビジネスを非常にシンプルな次の宣伝文句に集約させている。「当社は資産をトークン化します」。

「Twigでは、例えばGucci Marmont(グッチ・マーモント)のハンドバッグをプラットフォーム上にアップロードします。そして、アップロードされた資産をトークン化して、その価格を提示します」と同氏は説明する。

「当社の目標はこの仕組を外部でも使えるようにすることです。そこで役に立つのが、ブロックチェーンです。当社は資産の流動性を向上させて、消費者が物理的なモノを売って仮想的なモノを入手し、その仮想的なモノを使って物理的なモノや体験を購入するという行為を簡単に行えるようにします」。

「基本的に、ユーザーが簡単に取引できるようにすることが目的です」。

クピ氏にはブロックチェーンと循環経済に関するバックグラウンドがある。例えば、2018年には、デニムのアップサイクルビジネスをLevi’s Albania(リーバイス・アルバニア)に売却している

Twigのホワイトペーパーによると、よく売れる物理的なモノとしては、Nike(ナイキ)、Gucci(グッチ)Chanel(シャネル)、Hermes(エルメス)、その他の高級品メーカーのブランド品などがあるという。このペーパーには「所有の未来の再定義」と「 循環型ライフスタイルで生活を送るためのパワーをZ世代に付与」という内容が記載されている。

クピ氏によると、Appleの電子機器も中古市場で高値がついているという。同氏は、購入対象中古品に、不要になった衣類だけでなく電子機器も追加したところ、それまで女性が9割以上だったTwigの利用者構成が、女性7割男性3割くらいに変化したと指摘する。

Twigは中古品の再販売に関する手続きを代行する。具体的には、中古品を即座に査定して、Twigがその中古品の購入を承諾するとすぐに現金が手に入るので何でも好きなものを買える(Twigでは極めて詳細な購入対象品リストを用意している)。

Twigまでの配送料は無料なので、Twigのサービスを利用することで、Vinted(ヴィンテッド)Depop(ディポップ)といった中古品マーケットプレイスにアイテムを自分で直接販売する場合に発生する面倒な手続きやリスクは基本的に排除される(ただし、自分で直接販売した場合よりも売値は低くなる)。

Twigの倉庫に到着したアイテムが品質チェックに引っかかると、ユーザーは返送料を請求される(そして、おそらく即金で支払われた代金も全額Twigに返金される)。アイテムが売れなかった場合は、アップサイクルとリサイクルが適切に行われているかどうかが確認され、どちらの方法でも対処できない場合は、慈善団体に寄付される。環境に悪いため、ごみ廃棄場送りにはしない。

クピ氏によると、Twigは現在成長重視フェーズであるため、再販ビジネスで大きな利益を出すことは考えていないという。

提示する買取価格は、動的に変化するさまざまな要因によって変わる。前述のホワイトペーパーによると、Twigは「市場ベースの価格設定アルゴリズム」を使用して、中古市場の100万点を超える商品を分析し「ブランド、アイテムのカテゴリー、市場セグメントに応じた適切な再販価格を提示している」という。

その前提の中核をなすのは、消費者にとっての総所有コストという概念を再販価値の変化に織り込むという考え方だ。これは購入パターンをシフトさせるパワーを秘めている可能性がある(例えば消費者は、環境的なダメージを与える低再販価値のファストファッションではなく、高級ファッションを選択してその価値を長期間に渡って楽しむ選択をするようになるかもしれない)。

Twigは銀行のような機能(Twigの口座を作るとTwigVisaデビットカードが発行され、国内および国際送金を行うことができる)と本業の中古品再販サービスを組み合わせたものというが、ターゲットであるZ世代と若いミレニアル世代向けの宣伝文句だ。こうした世代の若者たちは中古品市場の倹約性とサステナビリティの両方にますます強い関心を寄せている。

Twigがターゲットとする年齢層を見れば、同社のマーケティングが循環経済による環境への配慮に重きを置いている理由がわかる(「Twigは循環経済を簡単に実現し、サステナビリティの高いライフスタイルを選択できるようにします」とグラフィックを多用したレトロ風のウェブサイトは謳っている)。

特にZ世代はサステナビリティ世代と呼ばれ、この世代の若い消費者は「モノを所有することよりも使うことを優先する」とTwigのホワイトペーパーに書かれている。

こうしてみると、銀行の機能を、文字どおり経済的価値を保存する場所ではなく、再販価値の交換所および仲介者として捉え直すことが非常におもしろく見えてくる。消費者は、あらゆるモノを擬似通貨に変えて、所有したいモノややりたいことの支払いに充てることができる(ハイテクによるバーター取引の再発明と言ってもよいだろう)。

しかし、Twigのビジネスにブロックチェーンが深く組み込まれていることを考えると、同社の主張するサステナビリティには別のほころびが見えてくる。

Twigのテクノロジーは最初からブロックチェーンを基盤として構築されているが、同社のウェブサイトのユーザー対面型の説明からそのことに気づくのは難しい。TwigのシリーズAで公開されたプランでは、Z世代向けの環境配慮型マーケティングがまったくうまくいかない危険がある。というのは、PRでは、Twigを「世界初のWeb3対応グリーン・ペイメント・インフラストラクチャー」と称し、その立ち上げに、最近のWeb3ハイプをうまく利用しようとしているからだ。

この来たるべき機能により、ユーザーは、実世界の資産を「トークン化」して「数秒で取引可能にできる」と、リリースノートには書かれており、さらに次のように続く。「Twigを使用すると、デジタルアイテムと物理アイテムをマネタイズして新しい方法で取引できます。このアプローチにより、ユーザーはチェックアウトページで手持ちのアイテムを売って、暗号資産を購入したり、衣類や電子機器を売ってNFTを購入したりできます」。

暗号資産とNFTの取引が「グリーン」に行われることが本当に希望のあることなのかどうかはよく考えてみる必要がある。

結局、暗号資産に使われるエネルギーコストそれ自体、地球に壊滅的な悪影響を与える要因のように見えなくもない。

例えばケンブリッジ大学が2021年行った研究は、1つの暗号資産(ビットコインなど)だけで、アルゼンチン全体の年間エネルギー消費量を超えていることを示している。

2021年3月に実施された別の研究によると、ビットコインはノルウェーと同じ量のエネルギーを消費したとし、ビットコインのCO2排出量はまもなくロンドンの大都市圏全体で生成される排出量に匹敵するようになると予測している。

要するに、ブロックチェーンベースの暗号資産(もちろんトランザクションを承認するためにプルーフ・オブ・ワークを必要とするもの)の悪名高い非効率性は、サステナブルとは程遠いものに思えるということだ。

しかもブロックチェーンはもっとひどいエネルギーの浪費に関わっている。すなわち、NFT(代替不可能なトークン)の台頭である。NFTでは、ブロックチェーンの上にデジタル収集品を取引するレイヤーを追加することで、エネルギー集約的なトランザクションが必要となり、そうしたトランザクションが促進される。

(ファッションやステータスシンボルとしての)NFTをめぐる現在の騒動と そうしたデジタル資産の小売取引、およびエネルギーを燃やして収集品ピクセルをシフトさせることで非常に手っ取り早くお金を作り出すことができるという提案によって、このエネルギーの焚き火にさらなる燃料が注入されている。

2021年、あるデジタルアーティストの分析によって、1つの平均的なNFTは、EUに住んでいる1人の人間の1カ月分の電力消費量に相当するCO2を排出することが示された。以前と同様、ユーザーにトークン化とモノ(または、デジタル収集品)の取引で忙しくするように促す機能を、どのような形であれ「グリーン」に稼働させる方法を思いつくのは難しい。

しかし、クピ氏はこの反論にもひるまない。

第一に、Twigが基盤としているブロックチェーンインフラストラクチャーは他のブロックチェーンよりもエネルギー効率が高いと同氏はいう。

「ブロックチェーン自体はテクノロジーとして環境に悪いわけではありません。ブロックチェーンにはさまざまな応用事例があります」と同氏はいう。「当社の基盤となっているHyperledger Sawtooth(ハイパーレッヂャーソートゥース)というブロックチェーンは、他のソリューションに比べてエネルギー消費量が極めて小さいという特長があります」。

「つまり、当社はエネルギーを大量に消費するソリューションの使用を最小限に抑えたいと考えています」。

また、Twigは内部のエネルギー消費量を計算して、環境への影響を数量化しており、対抗策としてカーボンオフセットの取り組みも行っているという。

さらには、大気圏からCO2を排除するプロジェクトも支援している。

ただし、個々のプロジェクトがどの程度実行可能で信頼できるものかは、まったく別の問題だ。

Twigは自社のエネルギー消費を最小化し、CO2排出量をオフセットしようとしているかもしれないが、それより大きな環境への影響が、二次使用つまり、TwigのユーザーとサプライヤーがTwigを利用した結果として発生する消費、エネルギー使用、CO2排出量によって起こる可能性がある。

こうした関連のある間接的な影響(サステナビリティレポートの用語でScope 3排出量と呼ばれる)を計算することは、企業の直接的なエネルギー使用を内部的に監査するよりもはるかに難しい。とはいえ、Scope 3排出量は企業のCO2排出量の大きな部分を占める傾向があることも確かだ。このため、そうした間接的な取引、排出量、影響をなきものとして片付けてしまうことはできない。

Twigは、カーボンオフセットによって商品の配送にともなうCO2排出量を相殺するなど、明確な姿勢でScope 3排出量対策に取り組んでいる。また、B Corp認証を取得しようという野心も称賛に値する。

しかし、Twigによって拡大も縮小もするかもしれない消費者需要やトレンドに基づいて、最終的に発生するエネルギーコストを予測するのは非常に難しい。

ユーザーに暗号資産を購入し、NFT取引を始めるよう促すことによってエネルギーコストが発生することは間違いない。そして、たとえTwigが中古品の流動性を高めることで、消費者が新品を購入する需要が低下し、新製品の実質生産量を削減することができるとしても、このような大量のエネルギー消費にともなうコストによって環境へのプラスの影響が相殺されてしまう危険がある。

とはいえ、支払いに使用できるものがこのように根本的に見直されると(あらゆるモノで支払いができる。トークン化された価値の世界では、理論上、消費者は実際のお金を使う必要がない)、消費活動の大きなシフトにつながり、循環経済に実際に目立った変化をもたらすことができる。その結果、数十年に渡る資本主義を特徴づける使い捨て消費の悪循環から抜け出すことができる。

別の言い方をすれば、(認証をサポートすることで偽物に対抗できる)ブロックチェーンベースのトークン化と(分散台帳インフラストラクチャによって完全な所有履歴を把握することで実現される)安定度の高い査定のおかげで、モノの再販時の価値をもっと確実に予測できるなら、消費者は、持っているモノを丁寧に扱う気持ちになるかもしれない。モノの寿命が維持されれば高い売値がつくからだ。そうなれば、世界の産業はそもそも現在の半分だけモノを作れば足りるようになり、資源の枯渇によって地球が機能不全に陥る重圧から解放される。

これには確かに一理ある。

あらゆるモノを売って極めて簡単に支払いができるようにすることでお金の価値が重要視されなくなることは、価値、所有、富に対する考え方を修正するために必要な最初の一歩になるかもしれない。

クピ氏は次のように説明する。「現金を使う代わりに、自宅にある不要になったモノを使ってNFTを買うことができます。例えば使わなくなった古いiPhone(アイフォーン)を売ってNFTや暗号資産を買ったり、体験を買うことができます。ニューヨークまでの旅行費用に充てたり、次回の職業教育コースの支払いに充てたりできます。つまり、Twigの目的は、市場の流動性を高めることです。人々が使わなくなった資産を売ることでその資産に新たな第二の命を与えることなのです」。

「当社の信念は、財布にも地球にもやさしい結果をもたらすことです」。

Twigのビジョンは自身を支払いプラットフォームに変えることです。ユーザーや顧客の代わりに物理的なモノを支払い代金に変えるプラットフォームです。

「現時点では、Twigは単なるB2Cプラットフォームに過ぎませんが、ゆくゆくはB2B2Cプラットフォームにしたいと考えています。将来的には、さまざまなプロバイダーの決済ゲートウェイとして接続する予定です」とクピ氏はいい「いくつかの大手小売業者」とTwigのインフラストラクチャへの接続を許可する契約を結んでいると話した(小売業者の名前は明かしていない)。

「当社がやろうとしているのは、要するに、富の定義の再発明です」とクピ氏は付け加え、お金の概念が大きく様変わりしていると説明する。「自分が所有しているものがすべてお金として扱えるとなると、富の見方も変わってきます」。

「富とは、従来の定義では、家や車など、大きな資産の価値です。しかし、たとえばワードローブの価値は通常資産の一部とはみなされません。我々はこれを変えたいのです。すべてのモノに即時の流動性があれば、モノを現金とみなすことができます。現金だろうとGGマーモントのハンドバッグだろうと違いはないのです。ポンドで何かを買いたい場合、現金でもハンドバッグでも使えるのです」。

Twigが普及すれば、決済の未来は今よりずっとビジュアルで物質的なものになる可能性があります。例えばeコマース決済ウインドウに鋳造しておいたNFTをドラッグアンドドロップして中古のiPhoneを購入する。

あるいは、限定版のナイキのシューズを売って、ずっと楽しみにしていた都市滞在型の春休みを取る。

ダイヤモンドで覆われたすばらしい宝石を売って高級不動産を買うといった具合だ。

若い消費者たちはコモディティ化された価値交換可能なモノの世界をすでに違和感なく受け入れているようだが、年配の消費者たちはどうだろう。クピ氏は、ブーマー世代やX世代が大枚をはたいて買ったモノを手放して支払いに充てるという新しいやり方に納得できると考えているのだろうか。

サイン入りの初版本や貴重なビニールのレコードが将来の決済方法の一部に取り込まれることになるだろうか。

「正直、その答えは私にもわかりません」とクピ氏はいう。「現時点では、Twigに対するZ世代の反応は極めて良好です。また、英国のミレニアル世代、我々がターゲットとしている20代の若者たちの反応も上々です。英国外の市場に進出した際には状況は変わるかもしれません」。

画像クレジット:Twig

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

がん患者のためのデジタルサポートと研究開発向けのSaaSを提供する英Vinehealth、米国でのローンチを目指して6.2億円調達

2018年にロンドンで設立されたデジタルヘルスのスタートアップVinehealth(ヴィネヘルス)は、がん患者のためのパーソナル化されたサポートを提供すると同時に、薬の開発や臨床試験を含む患者報告アウトカム(PRO:Patient Reported Outcome)データの収集を容易にするアプリを構築した。同社は米国進出の準備を進める中、550万ドル(約6億2000万円)のシードラウンドを完了した。

共同創業者でCTOのGeorgina Kirby(ジョージナ・カービー)氏が「後期シード」と呼ぶこのラウンドは「今後12〜18カ月の間に」予定されているシリーズAに先立って行われたもので、Talis Capital(タリス・キャピタル)がリードし、既存投資家のPlayfair Capital(プレイフェア・キャピタル)とAscension(アセンション)が参加した。

AXA PPP Healthcare(AXA PPPヘルスケア)の元CEOであるKeith Gibbs(キース・ギブズ)氏をはじめ、多くのエンジェル投資家もこのラウンドに参加している。Newhealth(ニューヘルス)のパートナーPam Garside(パム・ガーサイド氏)、Wired(ワイアード)の創刊者兼編集者David Rowan(デビッド・ローワン)氏が率いるVoyagers Health-Tech Fund(ボイジャーズ・ヘルス-テック・ファンド)、ヘルスケア起業家でPI Capital(PIキャピタル)の創業者David Giampaolo(デビッド・ジャンパオロ)氏、Speedinvest(スピードインベスト)とAtomico Angel(アトミコ・エンジェル)のベンチャーパートナーDeepali Nangia(ディーパリ・ナンジア氏)、Bristol Myers Squibb(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ)のVP兼元医療ディレクターFaisal Mehmud(ファイサル・メフムード)氏、King’s College London(キングス・カレッジ・ロンドン)とKing’s College Hospital NHS Foundation Trust(キングスカレッジ病院NHS財団トラスト)およびGuy’s and St Thomas’ NHS Trust(ガイズ&聖トーマスNHS財団トラスト)のコラボレーションであるKHP MedTech Innovations(KHPメドテック・イノベーション)が名を連ねている。

このスタートアップは、2019年に創業者たちがEntrepreneur First(アントレプレナー・ファースト)のデモデーにピッチしたとき、私たちが「注目すべき」と評した企業だ。同社は、行動科学とAIを組み合わせて、患者にタイムリーなサポートとナッジ(薬の服用を促すリマインダーなど)を提供することで、患者が自分の治療をより簡単に自己管理できるようにしている。

Vinehealthのプラットフォームは、患者が症状に関するフィードバックを提供したり、治療の副作用を報告したりする際に、臨床医が患者をリモートで監視できるチャネルとしても機能する。

このアプリは2020年1月に公開されて以来、これまでに約1万5000回ダウンロードされている。カービー氏が確認したところによると、そのダウンロード数はこれまですべて利用に及んでおり、純粋な患者サポートと試験・研究の両方が含まれているという。

同社の患者支援アプリは、がん患者が自分でダウンロードできるように無料で提供されている。現在は英国とアイルランドで利用可能となっている。

製薬業界向けには、VinehealthはそのプラットフォームをSaaSとして提供しており、製薬会社が試験のために患者を募集したり、研究開発や医薬品開発のためにPROを集めたりするのを支援している。

「私たちは最初から製薬業界に注力してきました。トラクションを豊富に獲得しており、多くの機会を見出しています」とカービー氏は語る。「患者支援プログラムと臨床試験は極めて類似性が高い(プロダクト)です【略】製薬業界向けのものは、薬の開発プロセスの一部であるという点で異なりますが、ソフトウェアの提供という観点では、そのプロセスを通じて患者が必要とするものであり、非常に類似しています。そのため、こうしたライフサイエンスのオファリングに的を絞っています」。

同氏は、Vinehealthがヘルスケアサービスに直接売り込む調達ルートを進んではいないことを強調した。つまり基本的には、患者への支援ソフトウェアの無償提供にライフサイエンス研究が資金を提供する、という考え方だ(ただし、現時点では製薬業界の顧客名を公表することはできない)。

収益化に関しては、製薬会社のニーズに応えることに焦点が置かれている。Vinehealthは患者中心のアプリとして見られることも同様に切望しており、より良い患者アウトカムを促進する重要な臨床医サポートの役割を果たすことを目指している。

「どのブラウザからでもアクセス可能なウェブダッシュボードを用意しています。患者をリモートで追跡したいと考えている臨床医や医師は、調査研究の実施を通じて、あるいは臨床試験の中でも、それを行うことができます」とカービー氏。「こうした医師や看護師はデータをリアルタイムで見ることができる一方、それをケア経路の適切なポイントのいずれかに送り込むことも可能になっています。もちろん、彼らは1日中ダッシュボードの前に座っているということはありませんが、特定の危険信号を確認してどの患者を最初に診察すべきかを把握することや、そのようなリアルタイムのデータを使ってより良い臨床判断を下す方法を知ることは、通常(隔週や月ごとの患者追跡)よりも非常に有益な場合があります」。

「これまでに得たことのないコンテキストと豊富な長期的データを提供するものです」と同氏は付け加えた。

Vinehealthは従来の紙ベースの質問票をデジタル化した。がん患者が臨床チームを訪問する際、症状を報告し、より広範なフィードバックを提供するために記入するよう一般的に求められるものだ。

その前提は、レガシープロセスを専用のユーザーフレンドリーなデジタルインターフェイスに移行することで、より良い患者の自己管理、治療アウトカム、そしてがんとともに生きる人々の生活の質の向上をサポートすることにある。アプリ経由でデータを報告するのが相対的に簡単であることに加えて、同社はそこにより幅広いサポートパッケージを組み合わせている(アプリにサポートコンテンツを提供するために慈善団体Macmillan[マクミラン]およびBowel Cancer UK[バウエル・キャンサーUK]と協力している)。

例えば、A/BテストとAIを利用して、適切なリソースを抽出するためのパーソナライズされたタイムリーなレコメンデーションの設定、患者の薬の服用に対する注意喚起や動機づけの最善方法の決定、がん治療のための複雑な投薬レジームとなり得るものの管理などを行っている、とカービー氏は説明する。

Vinehealthのアプリラッパーは、患者にPROを提供するよう促すポジティブなフィードバックを施すこともできる。

カービー氏は、患者がPROのデータを効果的に追跡すれば、生存率が最大20%上昇する可能性があるというエビデンスを挙げている。「より良い自己管理は、生存に多大なインパクトを与える可能性があります」と同氏は話す。「私たちは生存率の改善だけではなく、生活の質の向上も提示したいのです」。

行動科学とデータ駆動型サポートを融合したVinehealthのアプローチは、共同創業者たちの専門知識を組み合わせたものだ。

「レイナ(Rayna Patel[レイナ・パテル]氏、共同創業者兼CEO)の経歴はまさに行動科学にあり、私の経歴はデータ科学にあります」とカービー氏は語る。「私たちが協働を始めたとき、ここで双方を有効に活用できると考えました。データを使用することで、人々がどのような状況に置かれているかを把握し、そのナッジが最も効果的なのはどこかを特定することができます。また、行動科学を利用して、適切なタイミングで重要なポイントを的確な言葉で提供することで、人々が習慣を身につけ、よりコントロールできるようになり、何が起こっているのかを実際に理解し、自分のケアのためにより良い決定を下せるようになります」。

「アプリにはいくつかのナッジがあります。大小さまざまです。実際に効果があり、患者に見過ごされてしまうことのない、特定の方法で提供される薬のナッジやリマインダーを開発しています。特定の症状や、それが何につながるのかを記録するためのナッジであり、特定の支援コンテンツを形成するものです。特定のレベルで懸念を記録していくことができます。ここには、具体的な症状や薬の副作用に対処するのに本当に役立つ支援コンテンツがあるのです」。

「時によって、タイミング、言葉の使い方、そしてそのナッジを届けることに関する要素に配慮します」と同氏は言い添えた。「一度にあまりにも多くのことを変えようとすると、何も変えられないという研究結果が出ています。ですから私たちは、どのように患者を少しずつ動かしていくか、どのように患者がより良い習慣を身につける手助けをするのか、またそれをどのくらいの頻度で行うのかについて、慎重に検討を重ねています」。

カービー氏によると、AIを利用して、将来的には予測症状のログ記録など、より高度な提案をプラットフォームに組み込むことも目標に据えているという。例えば「この特定の患者に対して、この特定の薬で何が起こり得るか」といったことだ。

現在のところ、Vinehealthは腫瘍学に特化し、患者に合わせてカスタマイズされたコンテンツレコメンドシステムを構築している。患者の診断に合わせて調整し、患者の継続的なインプットに適応し、他の同様の患者が閲覧し支持しているコンテンツを考慮に入れていくものである。

研究面では、9つのNHSトラストと300人の患者が関与する進行中の研究がこれまでに同プラットフォームで利用された中で最大の研究であり、これはVinehealth自身が行っている研究の一部でもあるとカービー氏は述べている。

健康データはもちろん非常に機密性が高く、Vinehealthが医療情報を処理してサービスを提供し、個別化された治療サポートを行うためには、患者支援プロダクトのユーザーに求められる同意とは別に、第三者による研究目的のための同意が求められることをカービー氏は認めている。

「そのデータは誰とも共有されないものです。ただし、明示的に同意した場合を除きます。プラットフォームにサインアップするだけで、臨床試験の一環としてデータを共有することに同意することにはなりません。これはまったく別の同意です」と同氏はいう。

「私たちはそれを極めて明確にしており、いかなる形であっても共有を隠すことを望んではいません。それは患者にとって真に明白かつ明確でなければなりません。最終的には誰もが患者をサポートしたいと考えています。患者が臨床試験に参加する機会を増やし、そのデータを収集し、例えば自宅で関連する副作用に苦しんでいて、製薬会社に戻ることがないような状況でもそのデータをフィードバックできる方法を提供したいと思っているのです。だからこそ私たちは、自分たちが何をしているのか、なぜそれをしているのかを真に明確にし、患者に選択肢を提供していこうと努めています」。

将来的には、同スタートアップは、患者から提供され、純粋に集計されたインサイトに基づいて「適切に匿名化された」データセットを提供できるようになるかもしれないことをカービー氏は示唆した。例えば、特定の薬剤の特定の副作用を経験している人口統計学的グループをハイライトすることができるかもしれない。しかし現時点では「臨床試験と患者支援プログラムに重点を置いているため」それは行っていないと同氏は付け加えた。

短期的には、Vinehealthは米国でのローンチを通じた成長に向けて準備を進めており(「2022年の早い時期」に実現したいと考えている)、18人強のチームは今後6カ月ほどで倍増する見込みで、最初の米国人雇用者はすでに確定している。

「資金調達を行って以来の私たちの主要な焦点は、優秀なチームを採用して成長させ、チームを築き上げることに時間を投資すること、そして全員がミッションに整合し、この新規市場に参入できる拡張性の高いプロダクトを私たちが実際に構築しているのだと明確に認識することに置かれています」とカービー氏。「スタートアップを立ち上げるには優秀な人材が必要です。優れたテクノロジーを持つことはできますが、優秀な人材がいなければ意味がありません」。

Talis CapitalのプリンシパルであるBeatrice Aliprandi(ビアトリス・アリプランディ)氏は声明の中で次のように述べている。「レイナ(・パテル氏)やジョージナ(・カービー氏)と提携することを非常に楽しみにしています。私たちは、ヘルスケアのアウトカムが財務的なアウトカムと直接的な相関関係にあるという独自のバリュープロポジションを考慮して、投資を行う数カ月前からVinehealthの成長に注目していました。これは患者、病院、製薬会社にとってWin-Win-Winの関係であり、医療業界ではほとんど見られないものです」。

「最初のミーティングから、創業者たちのレジリエンスとミッション主導の姿勢はすぐに明らかになり、そのことがこのオポチュニティを非常に魅力的なものにしました。レイナもジョージナも、がん患者の生活と生存を改善することへの極めて強い動機を持っていることは間違いありません。チームとして、彼らはVinehealthを成功に導くための専門知識、スキル、動機の独自の組み合わせを備えています」。

画像クレジット:David Albatev / under a license

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

妊娠・子育て中の親と専門家をつなぐ「bloss」Antler主導のプレシードで約1.5億円を調達

blossは、これから親になろうとしている人やすでに親になっている人と、事前に審査された子育ての専門家をつなぐ英国のスタートアップだ。このたび、アーリーステージVCであるAntlerが主導するプレシードラウンドで100万ポンド(約1億5000万円)を調達したほか、シリコンバレーの起業家Narry Singh(ナリー・シン)氏、元サッカー選手のAndriy Shevchenko(アンドリー・シェフチェンコ)氏、英国系ジャマイカ人の起業家Alexandra Chong(アレクサンドラ・チョン )氏などのエンジェルが支援している。今回の資金は、2022年後半にblossアプリをローンチするために使われる。

このスタートアップは、161カ国で9万5千人以上のユーザーと200人以上の専門家を抱え、6カ月前の立ち上げ以来、530%の成長を記録しているという。

blossは、妊婦を対象としたアプリをすでに提供しているtintoなど、この分野の既存のアプリと競合することになる。

同社は、Uberの初期の社員の1人であり、英国の創業チームのメンバーでもあるStephanie Desmond(ステファニー・デズモンド)氏が、パンデミックの最中に第3子を妊娠しているときに創業した。デズモンド氏は妊娠するために何度も体外受精を繰り返していたが、信頼できる専門家のアドバイスが不足していると感じた。つまり、blossは「子育て専門家のUber 」と言えるかもしれない。共同設立者は「マミーインフルエンサー」であり、リアリティ番組のスターであるBinky Felstead(ビンキー・フェルステッド)氏だ。

blossでは、助産師、睡眠コンサルタント、栄養士、児童心理学者などの専門家がマッチングされ、24時間以内に親の質問に答えてくれる。

デズモンド氏は次のように述べている。「人々は助けを求めていますが、どこで助けを得られるのかわからないことが多いのです。インターネットは悪いアドバイスの宝庫なので、私たちは何百人もの専門家へのアクセスを民主化することで、子育てを少しでも楽にしたいと考えています。私の家のキッチンテーブルの周りでブレインストーミングをしたのが始まりでしたが、今では世界中の専門家とユーザーが急速に増加しており、毎月平均88%の成長を遂げています」。

AntlerのパートナーであるOllie Purdue(オリー・パーデュー)氏は、次のように述べている。「ステフ(・デズモンド)は、この初期の期間にビジネスを非常にうまく成長させてくれました。私たちはAntlerの全リソースを投入して、世界中のより多くの親御さんにブロッサムをお届けできることを楽しみにしています。blossは多くの家庭にとって大きな価値のある製品であり、この製品が家族に与えるポジティブな影響を楽しみにしています」。

画像クレジット:Bloss / Bloss founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

コンビニ市場で存在感を高めたい食品デリバリー事業の英Zappが約231億円調達

2020年にロンドンでスタートしたインスタント食料品配達スタートアップのZapp(ザップ)は、Getir(ゲチル)、GoPuff(ゴーパフ)、Jiffy(ジフィー)、Deliveroo(デリバルー)、その他オンデマンドコンビニ市場のシェアを狙う多くの企業と真っ向勝負するために、かなりの額の資金調達を行った。シリーズBラウンドで2億ドル(約231億1900万円)を調達した同社は、ホームの市場での存在感を高めると同時に、共同創業者で事実上のトップであるJoe Falter(ジョー・ファルター)氏のいう「メガシティ」に進出するために使うとしている。Zappは現在、ロンドンに加え、マンチェスター、ケンブリッジ、ブリストル、アムステルダム、ロッテルダムで事業を展開しており、パリではソフトローンチを実施中である。

Zappによると、このラウンドはLightspeed(ライトスピード)、468 Capital(468キャピタル)、BroadLight Capital(ブロードライト・キャピタル)が共同でリードし、以前の支援者でもあるAtomico(アトミコ)、Burda(ブルダ)、Vorwerk Ventures(ボーワー・ベンチャーズ)も、F1チャンピオンのLewis Hamilton(ルイス・ハミルトン)氏と並んで参加している(したがって「超速」サービスを売りにする会社のブランドとして、かなり適切だと思う)。

しかし、このラウンドについて報じられているのは、それだけではない。PitchBookは、2021年12月にこの投資の第1トランシェがクローズした際「ライバルのGorillas(ゴリラズ)」もその一部であったと述べている。そして先週、Sky Newsは「シンガポールの国営ファンド」も後援者に含まれていると報じた。現地時間1月28日のZappの発表では、どちらも言及されていない。我々は、どちらかが実際に関与しているかどうか確認するよう同社に求めたので、詳細が分かり次第、更新する。

Gorillasは、2021年秋に10億ドル(約1156億円)を調達したドイツのスタートアップ企業で、ライバルのGetir同様、その資金の一部を使って、パリのFrichti(フリッチ)など、他の市場で競合になりそうな企業を買収したり投資したりしている。ここに登場するのには、ありえない名前ではないだろう。また、デリバリー企業はお互いに投資し合ってきたこれまでの流れがあり、ひょっとしたらさらなる統合を前にした最初の動きなのかもしれない。Delivery Hero(デリバリー・ヒーロー)はGorillasを支援し、DoorDash(ドアダッシュ)は同じくドイツのスタートアップ企業Flink(フリンク)に投資している。

Zappは評価額を公表しておらず、これまでに処理した顧客や注文の数についても語っていない。現在、同社は3億ドル(約347億円)を調達している。

スタートアップや既存の食料品メーカーの間で、コンビニエンスストア市場で主要な存在になりたいという意欲は強く、コンビニの食料品部門は、英国だけでも2021年に約430億ポンド(約6兆6580億円)の価値があると推定されているその規模を考えると、複数の勝者が存在する余地もありそうだ。

しかし、この物語がどのように展開されるかについては、まだ多くの疑問が残っている。最終的にどれだけの消費者が、どれだけの期間、これらのサービスを利用するのだろうか?典型的なインスタント食品会社が利益を上げるには、どれだけの顧客が必要なのか?また、1つの都市に何社のデリバリー企業が存在できるのだろうか?

しかし、投資家は、この分野でより興味深い事業を支援することに非常に意欲的である。Zappの今回のラウンドとGorillaの2021年の10億ドル(約1156億円)の資金調達に加えて、Flinkは12月に7億5000万ドル(約867億4600万円)を調達し、インドのZepto(ゼプト)は1億ドル(約115億6600万円)を、Jokr(ジョーカー)は2億6000万ドル(約300億7200万円)を調達し、GoPuffとGetirはともに数十億ドル(数千億円)調達している。

Zappは、顧客サービス、注文を満たすための大規模な流通センターと組み合わさった、戦略的に配置された小規模なダークストア(「ザップストア」)のネットワーク、幅広い商品構成(50種類のアイスクリーム、21ブランドのテキーラ)と同時に、ユーザーが直前に実際に欲しいだろと思われる商品の組み合わせ、卸業者だけでなくブランドと直接つながるサプライチェーンという、これらのバランスがとれた、クイックデリバリーの分野で長く活躍するための方式を発見したと信じている。

これは、例えばGoPuffやFlinkのように、大衆消費者が、毎週大きなバスケットで買い物をするよりも、より頻繁に、より少量のインスタント食料品で買い物をするように説得できると考えているのとは対照的だ。

「私たちは、顧客体験を重視しています。それが、ここでの勝利につながるのです」とファルター氏はインタビューに答えている。彼は、競合他社がユーザーに複数の割引を提供することで、注文を事実上補助することで市場シェアを狙うことを選択したことが「おかしい」と述べた。「私たちはクーポン券や割引商品の提供はしていません」と述べ、すぐさま修正するように「最初の注文は50%オフですが、それ以外何度もクーポン券を提供するということはありません。私たちは、顧客体験、より良い製品を時間通りに届けるサプライチェーン、そして、週1回の買い物を邪魔するというよりも、コンビニ関連の品揃えを信じています」と述べた。

その平均注文額は、Gorillasが1件あたり「15ポンド(約2300円)以下」であるのに対し「20ポンド(約3000円)台半ば」であると彼は言っている(Zappが提示した数字)。また、Zappの注文の3分の2は、利益になっているという。

平均受注額の低い会社については「私が彼らなら、少し不安になるでしょう。持続可能な基盤とは言えません」と述べた。

多くのインスタント食品会社が、新型コロナウイルスのパンデミックが世界を覆ったたときに出現し、その本領を発揮した。このラウンドは、Zappがそれが終わった後の可能性を持っているということを示すための準備をするということだ。

Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)のパートナーであるRytis Vitkauskas(リティス・ヴィトカウスカス)氏は「コンビニエンスストアは、完全にオンライン化される最後の小売セグメントの1つですが、ロックダウン後に本当にその瞬間を迎えようとしています」と声明で述べている。「忙しい日常が戻ってきたとき、人々は迅速なデリバリーで『今を生きる』ことができるようになります。Zappは、この消費者行動を活用するために一から構築され、その結果、並外れた顧客ロイヤリティを獲得しています。私たちは、コンビニ市場のお客様にまったく新しい体験を提供し、長期的な投資を続ける同社の歩みに参加できることをうれしく思います」と述べた。

編集部注:TechCrunchのライターを長く務めたSteve O’Hear(スティーブ・オヒア)氏は、現在Zappに在籍していますが、そのことはこの記事の報じ方に影響を与えるものではない。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)

AIが自動で動画内の顔やナンバープレートにぼかし加工し匿名化、プライバシーを保護するビデオツールのPimlocが約8.7億円調達

英国のコンピュータービジョン関連のスタートアップであるPimloc(ピムロク)は、動画の匿名化を迅速に行うAIサービスを販売するために、顔やナンバープレートのぼかしを自動化したり、その他の一連のビジュアル検索サービスを提供したりするなど、事業内容を強化してきた。同社は今回、新たに750万ドル(約8億7000万円)のシード資金を調達したと発表。このラウンドはZetta Venture Partners(ゼッタ・ベンチャー・パートナーズ)が主導し、既存投資家のAmadeus Capital Partners(アマデウス・キャピタル・パートナーズ)とSpeedinvest(スピードインベスト)が参加した。

このスタートアップ企業は、2020年10月にも180万ドル(約2億1000万円)のシード資金を調達しているが、今回の資金は欧州と米国での事業拡大と、データ法制の広がりや生体認証のプライバシーリスクに関する世論の高まりへの対応に使用されるという。後者に関しては、一例として顔認識技術のClearview AI(クリアビューAI)に対するプライバシー面からの反発などを挙げている。

Pimlocは営業、マーケティング、研究開発チームを強化するとともに、動画のプライバシーとコンプライアンスに焦点を当てた製品ロードマップの拡大のために、この資金を投じると述べている。

同社が狙うビジネスニーズは、小売業、倉庫業、工場などの業界で、安全性や効率性を高めるためにビジュアルAIの利用が拡大していることに焦点を当てている。

しかし、AIを活用した職場の監視ツールの増加は、労働者のプライバシーリスクを生み、リモートでの生体認証を導入する企業にとっては、これが法的リスクや風評被害の原因となる可能性がある。

そこでPimlocは、AIがプライバシーのために機能する第三の方法を提案している。それは「生産効率を高めるために使われるビジュアルデータを匿名化し、労働者のプライバシーを優先するために役立てる」というものだ。これについて、企業と協議しているという。

Pimlocによると、同社の「Secure Redact(セキュア・リダクト)」は、SaaSとしてまたはAPIやコンテナを介して販売されており、現地のビデオワークフローやシステムに統合することができる。この製品は、データプライバシー規制(欧州の一般データ保護規則やカリフォルニア州の消費者プライバシー法など)に準拠したビデオ証拠を提供しなければならない団体で、すでに使用されているという。

Pimlocは、顧客数を明らかにしなかったものの、CEOのSimon Randall(サイモン・ランドール)氏はTechCrunchに次のように語った。「欧州と米国を中心に輸送、製造、教育、健康、自動走行車、施設管理、法執行機関など、さまざまな分野で多くのユーザーにご利用いただいています。興味深いのは、そのすべてが同じニーズを持っているということです。つまり、CCTVでも、ダッシュボードでも、装着式カメラの映像でも、いずれもデータプライバシーやコンプライアンスのために映像の匿名化を必要としているのです」。

画像クレジット:Pimloc

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

英国の暗号資産ブームに影、マーケティングと利用に関する制限を検討

広告によって盛り上がりを見せている英国の暗号資産取引ブームは、大幅な速度制限に向かうようだ。同国の金融監視当局は、暗号資産をカバーするために規制当局の権限を拡大することを政府が現地時間1月18日に確認したのに続き、暗号資産のマーケティングに関する規則を強化し、利用対象に制限を設ける可能性もあると述べた。

近年、暗号資産の広告がロンドン中のビルボードに貼られ、取引ブームを煽っているが、広告基準監視当局から何度か叩かれている

広告規制局は2021年12月、「消費者の経験の浅さを無責任にも利用し、投資のリスクを説明しなかった」として7つの暗号資産広告を禁止し、暗号資産の広告に関する新しいガイダンスを作成することを望んでいると述べた。

しかし、金融監視当局の介入が、英国の暗号資産バブルを大幅に減衰させることになりそうだ。

金融行動監視機構(FCA)は、2021年に発表した「消費者投資戦略」に沿って、ハイリスク投資の「容易さとスピード」についての懸念に対応するため、今回の変更案を発表した

FCAが2022年夏までに明らかにするという新しい暗号資産規則の計画には、 暗号資産のマーケティングと利用に関する制限案が含まれている。

「FCAは、適格な暗号資産を『制限付き一般向け投資』に分類する計画で、消費者は制限付き、富裕層、洗練された投資家に分類される場合のみ、暗号資産の金融プロモーションに対応することができる」と規制当局は書いている。

「このようなプロモーションを行う企業は、明確で公正、かつ誤解を招かないという要件など、FCA規則を遵守しなければならない」と付け加えている。

規制当局は、3月23日を回答期限として、この提案に関するコンサルティングを行っている。

FCAの市場担当エグゼクティブディレクターであるSarah Pritchard(サラ・プリチャード)氏は「あまりにも多くの人々が、理解できない商品に投資させられています。それはリスクが大きすぎます。消費者が安心して投資するためには、明確で公正な情報と適切なリスク警告が必要であり、これは我々の消費者投資戦略の主要目的です」と述べた。

政府は1月18日、誤解を招く広告に対処するため、暗号資産のプロモーションを金融プロモーション法の範疇とするよう立法することを確認し、次のように書いている(あるいは、警告している)。「これは、適格な暗号資産のプロモーションが、流動資産、株式、保険商品などの他の金融プロモーションと同じ高い基準でFCA規則の対象となることを意味します」。

財務大臣のRishi Sunak(リシ・スナック)氏は声明の中で「暗号資産は、人々に取引や投資の新しい方法を提供し、刺激的な新しい機会を提供することができます。しかし、誤解を招く主張で消費者に製品が販売されないことが重要です」と付け加えた。

「消費者の保護を徹底すると同時に、暗号資産市場のイノベーションを支援しています」。

FCAが2021年夏に発表した暗号資産消費者調査によると、(英国人口約5200万人のうち)約230万人が暗号資産を所有しており、これは英国人の4.5%弱に相当する。2020年にFCAは、約190万人の英国人が暗号資産を保有していると発表しており、つまり前年比21%増となっている。

暗号資産を保有する英国人についての他の推定値は、ここ数カ月の暗号資産宣伝によってさらに大きなものとなっている(しかし、暗号資産取引宣伝はそれ自体がしばしば宣伝バブルの内側にある)。

英国では暗号資産取引に関するマーケティングが盛んで、人々の間の認知度は高まっているようだ。FCAは、成人の78%が暗号資産について聞いたことがあると報告しており、これは2019年の42%、2020年の73%から増えている。

しかし、FCAは、認知度の上昇にもかかわらず、暗号資産に対する理解度は低下していることも確認し「一部の暗号資産ユーザーは、自分が何を購入しているのかを十分に理解していない可能性がある」ことを示唆した。本当にそうなのだろうか。

FCAの調査では、暗号資産をギャンブルと考える暗号資産ユーザーは減少し(47%から38%に減少)、主流の投資の代替または補完と考えるユーザーが増え、暗号資産ユーザーの半数がより多く投資するつもりだと回答している。

つまり、無知な英国人が、輝かしい暗号資産のマーケティングに包まれたねずみ講のようなものにお金をつぎ込むのを阻止するために、英国政府と金融規制当局が、そろそろ規制強化に踏み切るときだと判断した理由は理解できなくはない。

他の国も同様の措置を取っている。

ちょうど今週、シンガポールの金融規制当局が暗号資産マーケティングに対する独自の締め付けを発表した(Nikkei Asiaより)。

さらに進んでいる国もある。中国インドでは暗号資産の禁止が計画されている。

自由奔放な取引お祭りはまだ終わっていないが、世界中の規制当局が暗号資産ランドのギャング・パラダイスに徐々に迫っている。

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画像クレジット:Cory Doctorow / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi