女性起業家が調達した資金は米国VCのわずか2.2%(今年も)

女性起業家に公平な活躍の場を与えようとする数々の努力にもかかわらず、2018年に米国女性が設立したスタートアップの調達金額はベンチャー資金全体のわずか2.2%だった。

この数字に見覚えがあるかもしれない。PitchBookによると、これは昨年、女性ファウンダー単独あるいは女性のみのチームのスタートアップが調達した資金の割合とまったく同じだ。

この数字は、女性起業家や支援者たちがこの長きにわたる問題の解決を試みる際の一種のスローガンとして使われている。女性起業家が調達する民間資本は男性起業家と比べて著しく少ない。いくつかの新しい試みや、All Raiseのような専門組織が、メンターによる指導プログラムによってこの問題を解決しようとしているが、変化を達成するだけのリソースを追加するためには1年以上必要なのは明らかだ。

現在ベンチャーキャピタル会社の意思決定者に女性の占める割合は10%以下であり、米国VC会社の74%には女性投資家が一人もいない。こうした数字が変わり始めるまで、資金調達のギャップが縮まる見込みは小さい。

良いニュースもある。2018年を2ヶ月残した時点で、女性たちが調達したVC資金の額は過去最高を記録している。過去10ヶ月間に女性が起業したスタートアップは計391件、23億ドルの調達契約を完了し、2017年の20億ドルを超えた。男女混合チームによる今年の資金調達も132億ドル、1346件で、昨年の127億ドルより増えている。

一方米国スタートアップ全体では2018年に967億ドルを調達しており、年内に1000億ドルを超えるペースだ。女性が起業した会社はそのわずか2.2%しか調達していない。男女混合チームの数字は12.8%で前年の約10.4%より増えている。

昨年米国のスタートアップは9000件以上の案件で総額820億ドルを調達し、ベンチャー業界にとって今年同様に印象的な年だった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

宇宙飛行の予約エージェントShuttleはこんな会社

Avery Haskellは、NASAJohnson Space Center近くのヒューストンで育ち、物心ついた頃から宇宙飛行士になりたいと思っていた。

スティーブン・ホーキングとカール・セーガンがヒーローだったスタンフォード大学卒の24歳のAveryは、起業家の家庭に育った。インターネットが生まれてすぐの頃、石油・ガス産業で会計士として働く母親と鉄道のIT技術者の父親が“Neighbornet”というスタートアップを立ち上げたーZillowの初期バージョンだ(Zillowは結局スタートしなかった)。

Haskell自身は現在手がけているベンチャーShuttleに落ち着く前は、クラウドファンディングスタートアップの立ち上げに手を出したり、いくつかのモバイルテクノロジー会社にいたりと、スタートアップ業界の中でちょろちょろと動いていた。

Shuttleは今年初めにAlchemist Acceleratorから生まれ、サイバーセキュリティの専門家でWickrの共同創業者であるNico Sellと共同で設立された。ウェブ・モバイルベースの宇宙飛行予約エージェントになることを目指している。

「宇宙は僕の初恋だ」と、母校スタンフォードでスペースイニシアチブの立ち上げに関わったHaskellは語る。「僕はいつだって宇宙飛行士になりたかったし、多くの人が宇宙飛行士になるのを手伝いたいと思っている。より多くの人が宇宙へ行き、そしてより多くの人が宇宙旅行に興味を持つようになればいいと考えていた」。

HaskellはSellにAlchemist Acceleratorで出会った。Sellはそこでは初めに若い起業家のためのメンターを務めた。しかし彼女はすぐに新たなフロンティアマーケットの先端で働くというアイデアに夢中になった。くしくも、SellがShuttleの会長に就くことに合意した日は、イーロン・マスクのSpaceXが2つのブースターロケットをほぼ同時に地球に着陸させた日だった。

「イーロンに続いて宇宙に足を踏み入れる」とSellは語る。「Averyと働き始めたとき、“我々は本当に準備ができているのだろうか?”と尋ねた。その後、彼と働きながら、準備ができていると確信した」。

Shuttleのフライトリストにあるチケットを購入するのは、Kayakで航空券を買うのとは同じではない。それは、あなたが超お金持ちでなければの話だが、価格が不条理に近いほど高いことが主な理由だ。

Shuttleが提供するのは、25万ドル超もするVirgin Galacticでの宇宙旅行から、無重力を体験できるボーイング747の1席5000ドル以下のローエンドパッケージなどだ。

Shuttleは実際、2019年3月にサンフランシスコから打ち上げられる予定の無重力が体験できる初のフライトの予約を受けている。このフライトでは34人が無重力を約8分にわたって体験できる。

「我々のミッションは、誰もが宇宙を楽しむ機会を持てるようにすること」とHaskellは話す。「より多くの人に宇宙に行ってほしい。そうすると価格が下がり、そしてより多くの人が宇宙から地球を眺めることができ、プライベート宇宙飛行士になる」。

ゆくゆくは、多くの宇宙旅行が利用可能になったところで、Shuttleはさらに商品を増やす。「現在、建設中のラグジュアリーな宇宙ホテルもある」とSellは語る。「1泊100万ドルで最低12泊、90分おきに日の出と日の入りを見ることができる。かなり近い将来、ムーンウォークとスペースウォークも商品として提供できるようになる」

Shuttleは、惑星探査に興味があり、これまでに何人かしか行ったことがないような場所に果敢にも行きたいと考えているコンシューマー向けに、1カ所で商品を購入したり情報収集したりできるハブになりたいと考えている。またShuttleは、実際に宇宙に行く費用を払えない人のために、ヴァーチャルスペースツアーも提供する予定だ。

さしあたっては、かなり金持ちの人か、まとまった額の助成金をもらった人だけがこの宇宙旅行に参加できる。Sellは、ビジネス客向けの企業パッケージにも商機があるとみているープロフェッショナルサーファーKelly SlaterのSurf Ranchでのエグゼグティブの静養先としての旅行にたとえた。

Sellは、宇宙に行くのにかかる5万ドルから25万ドルを喜んで払う人が今後10年間で10万人超出てくると見込んでいる。

すでに同社は、4回のVirgin Galacticのフライトと、同じく4回のZero Gravityチャーターで顧客8人から予約金166万ドルを受け取っていて、チケット1枚あたりの平均価格は25万ドルであるフライトの手数料レートは5〜10%だ。

次に来るものとして、Haskellには心に描いているものがある。「我々はおそらく、近い将来、月に基地を作ることができる。2030年までには可能ではないか。私が生きている間に宇宙の他の惑星に行ったり来たりするのはかなり一般的になるだろう」と語った。

Haskellにとって、Shuttleの重要性は地球に住む人間に、共有している青い惑星での我々の存在がはかないものであることを認識してもらうことにある。Haskellは、お気に入りのカール・セーガンの言葉「宇宙が自らを知る方法、それが私たちなんだ」を引用した。そしてもしそれが本当なら、宇宙を旅することは人間にとって自らをより理解することにもなるとHaskellは考えている。

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(翻訳:Mizoguchi)

VCたちはどれだけ稼いでいるか

ベンチャーキャピタルは不透明な業界と思われているので、われわれの多くが、平均的なVCの年収などを知らなくても当然だ。

しかし、ベンチャー企業の報酬に関するJ. Thelander Consultingの調査報告書を見ると、やはりVCたちは大金を稼いでいる。

では、どれだけ? そう、VCたち204名のうち(男172女32)、平均的なゼネラルパートナー(GP)の今年の予想年収は63万4000ドルだ。この中には2017年の業績に対するボーナスも含まれる。

VC企業の規模によって、平均年収に差がある。たとえば運用資産残高(AUM)が2億5000万ドル未満のVC企業のVCたちは、それより大きなVC企業のVCよりも年収が低い。

[VCたちの2018年平均総報酬]

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VC企業でランクのトップにいるGPたちは、報酬パッケージも最大だ。彼らの年額ボーナスの平均は、アソシエイトパートナーやエントリーレベルの投資家たちの平均基本給より大きい。

この調査は、Sequoias, NEAs, Kleiner Perkinsといった、AUM 数十億ドルクラスの世界的VC企業を調べていない。しかし上の結果を外挿すれば、彼らはもっと稼いでいるだろう。

注記: 実際の年収は、上記にVC企業の運用益の分け前、いわゆるcarried interestを加えた額である。

〔訳注: VCといえば個人のVC、VC firmといえばVC企業のこと。〕

[あるミーティングでVCたちの真実を垣間見た](未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

スマートキッチン・サミット・ジャパン 2018開催――デモスペースは大混雑、飛び入りプレゼンも

デジタル事業のコンサルティング企業、シグマクシスと食産業のスペシャリスト、シアトルのNextMarket Insightsがミッドタウン日比谷でスマートキッチン・サミット・ジャパン 2018を開催した。8月9日の2日目に参加できたので簡単にご紹介したい。昨年のスマートキッチン・サミットに比べ講演者、参加者、デモ、いずれも倍以上に増え、食のデジタル化、スマート化がメインストリームになりつつあると実感した。

クックパッドはAWS、SHARP、LIXILなどパートナー企業10社を発表しOiCy事業を本格化させることを発表した。OiCyはクックパッドに集まった膨大なレシピをアルゴリズムによって標準化し、スマートキッチン家電と連携させていく試みだという。パナソニックも社内ベンチャー、「ゲームチェンジャー・カタパルト」がさらに前進していることを発表した。

このカンファレンスはNextMarket Insightsがスタートさせたもので、アメリカ発のカンファレンスらしくグローバルな視点が特長だ。今年も機械学習を利用した生鮮食品トラッキングサービスのChefling、オンライン・レシピ・アシスタントのSideChefのファウンダーとクックパッドの吉岡忠佑氏によるパネルではNext MarketのCEO、Mechael Wolf氏がモデレーターとなってさまざまな意見を聞き出していた。SideChefのKevin Yu氏が「データ処理はもちろん重要だがさらに重要なのはユーザーのエンゲージメント」だとして吉岡氏らも賛同した。

Yu氏によればEU市場は日米市場よりセグメントが細かく、いっそうきめ細かいローカライズが必要だという。われわれ日本人はヨーロッパが言語、文化とも非常に多様であることを忘れがちだが、現実にビジネスをする上では重要なポイントになるはず。

しかし今年のSKSでは日本の大企業、ベンチャーのスマートキッチン事業が大きく勢いを増していると感じた。ランチブレークのデモスペースは朝の電車なみに混み合っていて、デモの手元を見るには頭上に流されたライブ映像を見るしかないほどだった。デモではパナソニックの社内ベンチャーで開発された「おにぎりロボット」が面白い。パナソニックで「ごはんひとすじ」で来たという担当者の説明によれば「外はしっかり、中がふわり」というおむすびの理想形を作れる装置だという。

 

ちなみにライブストリーミング用のデジタル一眼のプラットフォームにTechCrunch Japanでも最近紹介したDJI Roninジンバルが使われていた。

セッションの合間に飛び入りのプレゼンを募ったところ、主催者の予想を超えてたちまち5、6チームが登場した。「ひっこみ思案で黙り込んでいる」という日本人のステレオタイプはスマートキッチンに関しては過去のもののようだ。とかく後向きといわれがちな行政からも農水省、経産省、総務省から若手官僚が登壇した。総務省の岸氏が「数字だけみていくのではダメ。まず明るい未来のビジョンを作り、そこに到達するためにどういう具体的な方策があり得るか考えるのでなければ」と力説していたのが印象に残った。

 

最後に昨年に続いて、外村仁氏が登壇。外村氏は元Apple Japan、元Evernote Japan会長などを歴任したシリコンバレーの連続起業家であるだけでなく食のエバンジェリストでもあるというスーパーマン。外村氏はAnovaの低温調理ヒーターの最新版を会場で紹介しながら、食がますますスマート化、サイエンス化しているグローバルなトレンドに日本が遅れかけていることに注意を促し、「これはやっていけないコトなのかもしれないと、自己規制してしまうのが一番いけない。最初から明示的に禁止されたこと以外は全部やっていいんです。どんどんやりましょう」とベンチャー・スピリットを力強く応援した。

 

カンファレンスの詳しい内容についてはシグマクシスのサイトFacebookページに詳しく紹介されている。Facebookページにはスピーカー、参加者全員の写真も掲載されている。

中小企業の若手後継者の支援を目的とする一般社団法人、ベンチャー型事業承継が発足

中小企業庁によると、今後10年の間に、平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、そのうち約半数の127万人(日本企業全体の1/3)が後継者未定という。

中小企業庁長官の安藤久佳氏は2018年1月の年頭所感で、「現状を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性がある」と述べていた。

このように後継者不在による廃業が深刻化する中、中小企業の若手後継者の支援を目的とする一般社団法人、ベンチャー型事業承継が本日6月25日、発足した。

同団体は、官民さまざまな組織と連携し、家業の経営資源を活かして新たな事業を起こす若手後継者の挑戦を後押しするプラットフォームを構築することを目標にしているという。

発起人で代表理事を務める千年治商店の代表取締役、山野千枝氏は都内で開催された記者会見で「家業というフィールドで新しい挑戦をする全国各地の後継の方々を応援したい」と意気込んだ。

ベンチャー型事業承継とは「若手後継者が、先代から受け継ぐ有形・無形の経営資源をベースに、リスクや障壁に果敢に立ち向かいながら、新規事業、業態転換、新市場参入など、新たな領域に挑戦することで、永続的な経営をめざし、社会に新たな価値を生み出すこと」だと山野氏は説明する。

同氏いわく、若い世代は家業を継ぐことを「なんとなく後ろめたい」「かっこ悪い」と感じていることが多いそうだ。そこで「中小企業の新規事業として片付けられていたことをあえてベンチャーと呼んでいく」ことで「起業家もかっこいいけど、後継社長もかっこいいと若い世代が思えるカルチャーをつくる」のが同団体のねらいだ。

「若手後継者の人たちの取り組みをベンチャーと呼んでいきましょうというような考え方。家業の有形・無形の経営資源に自身が持ち込むノウハウとか経験とかをかけ算し、新しいビジネスを起こしていく」(山野氏)

一般社団法人ベンチャー型事業承継の代表理事、山野千枝氏

会見に出席した経済産業省 新規事業調整官の石井芳明氏は「日本の中小企業の技術力であったり、商流であったり、商人のこころ。そういったところからベンチャーが出てきてほしい」と語った。

ベンチャー型事業承継の主な事業内容は以下のとおりだ。

  • 若手後継者対象の研修事業
  • 若手後継者対象の新規事業開発支援
  • 若手後継者対象の事業化サポート
  • ベンチャー型事業承継事例の収集・蓄積・発信
  • ベンチャー型事業承継政策への提言

初年度は、協賛企業を開拓するとともに、金融機関や自治体に向けて、若手後継者を対象としたベンチャー型事業承継支援サービスの導入を働きかけていくという。

また、アイデアソンやピッチイベントなどのイベント支援なども行っていくようだ。

ゲイツ、ザック、ベゾスらがVillage Globalを支援――スタートアップ育成のシード・ファンドがスタート

Y Combinator出身のスタートアップ紹介サイト、Product Huntの社員1号、Erik Torenbergは有望なスタートアップを見つけて世界に紹介するだけでなく、自ら投資しようとしている。今日(米国時間9/26)、静かにスタートしたVillage Globalは、シード資金とプレ・シード資金を最初期段階のスタートアップに投資することを目的とするベンチャーファンドだ。

このファンドは起業家に資金を提供するだけでなく、起業家と世界的に有名なメンターとを結びつけようとしている。Facebookのマーク・ザッカーバーグ、Amazonのジェフ・ベゾス、LinkedInのリード・ホフマン、Googleのエリック・シュミット、Yahooのマリッサ・メイヤー、Microsoftのビル・ゲイツといったスーパースターがリミッテッド・パートナー(LP)として、またアドバイザーとしてVillage Globalに加わっている。

Village Globalのパッケージ、Erik Torenberg

SEC〔アメリカ証券取引委員会〕の規則によりベンチャーキャピタリストは資金調達中のファンドについて公に論ずることを禁じられているためTorenbergはわれわれの取材に答えることを控えた。Village Global自体はファンドの規模について明らかにしなかったものの、同社が規則に従って6月にSECへ提出した書類をTechCrunchが調べところによれば、調達目標とする金額は5000万ドルだ。ただし、資金調達が完了していないため、実際に集まった資金の総額はまだ分からない。

上に挙げた以外にも前ニューヨーク市長、マイク・ブルームバーグ、VMWareのファウンダー、ダイアン・グリーン、DisneyのCEO、ボブ・アイガーなど数多くの著名人がこのファンドに加わろうとしている。皆大富豪だから、目的は利益ではなさそうだ。Village Globalは事業を紹介するリリースで「こうしたイノベーターたちはスタートアップ・ゲームへの関心を失っていない。彼らは自らの企業運営の経験からさまざまな知恵を起業家に伝えたいと考えている。同時に次世代の起業家たちとの交流を通して新たな洞察を得ようとしている」と書いている。

実際、ここに名前を挙げたテクノロジー界の巨人たちがVillage Globalに信頼を置く理由は、TorenbergがProduct Huntを通じて「草の根」的に次世代の起業家を熟知しているからだろう。

ホフマンと共著でスタートアップの戦略の教科書、スタートアップ シリコンバレー流成功する自己実現の秘訣(日経BP)(The Startup of You)を書いた後、ホフマンの側近としてLinkedInに加わったベン・カスノーカがVillage Globalのチームに加わった。またパートナーには IACの事業開発担当幹部、500 StartupsのIR部門の責任者、Queensbridgeのパートナーを歴任したAdam Corey、Cheggの最高ビジネス責任者、Harvard Business Schoolの客員起業家、Anne Dwane、SuccessFactorsの前副社長でCanaanのパートナー、Ross Fubiniなどが含まれる。

最初期のスタートアップへの投資を目的とするため、Village Globalはさほど巨額の資金を集めたりAndreessen HorowitzやGV(以前のGoogle Ventures)のような大規模な組織なしに意味のある影響を与えることができる。人材獲得や組織のデザインの面でも負担が軽いはずだ。その代わり、Village Globalはテクノロジー界のスターをアドバイザーとして網羅しようとしている。 【略】

Village Globalでは一般のベンチャーキャピタルのように少数の中心的メンバーがすべての投資の決定を行うのではなく、幅広いスカウトのネットワークを通じて行おうとしている。この「スカウト・ネットワーク」のリーダーにはYouTubeのVRの責任者、Erin Teague、Quoraの副社長、Sarah Smith、Dropboxの社員1号、Aston Motes、Target、Hilton、 Verizon[TechCrunchの親会社]の取締役を務めるMel Healeyなどがいる。

Village Globalのビジネスモデルはスタートアップの起業は投資家にとって二極化―大成功を収めるかゼロになるかで、その中間が少ない―という現実を前提としている。Village Globalはスタートアップのスカウトに有利な条件を示しているが、これはいくつかの大成功ですべての投資の元を取ろうという戦略だろう。

上場や買収などにより現金化に成功し資産を築いたファウンダーなど富裕な個人が続々と初期段階のスタートアップへの投資に参入してくる現状なのでこの分野は今後激しい競争にさらされるはずだ。しかし幅広いネットワークとテクノロジー界のスターをメンターに擁することでVillage Globalから次のユニコーン〔企業価値10億ドル以上のスタートアップ〕が生まれるなら、健全なエコシステムを築くことができるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Boomの超音速旅客機に注文76機――パリ航空ショーで新デザインも発表

Boomはパリ航空ショーでXB-1 Supersonic Demonstratorの新デザインを発表した。これは商用超音速旅客機を製造する前段階の実証試験機だ。同時にBoomは航空会社6社から実機76機の注文を受けたことを明らかにした。小さなスタートアップのまだ存在しない新型機に対する注文としては驚くべき数だ。

航空会社が超音速機の実現にいかに強く期待しているかわかる。Boomの計画によれば、この新型機は大陸間の人気路線の所要時間を著しく減少させると同時に、料金を現在のビジネスクラス程度に抑えて、航空会社に維持可能な利益をもたらすことができるという。

技術実証機XB-1の新デザインには推進システムの安定性、全般的な安全性の改良が含まれる。このデモンストレーター機の部品に対するストレス試験が進行中であり、おそらくはその結果が新モデルのデザインに組み込まれたのだろう。

すぐにそれと見てとれる変更は胴体後部、尾翼の直前に新しく設けられた第3の空気取り入れ口だ。同時に主翼や胴体の形状も微妙に修正されている。

〔上のビデオはEtherington記者が今年4月にBoom本社を取材した際のもの〕

Boomの説明によれば商用機の予約には払い戻し不可の頭金が含まれる。これはBoomの当面の経営を助けるだろう。また同社は商用モデルのキャビンについても水平に倒せるシートなど豪華な装備をイラストで発表した。

BoomではXB-1 Demonstratorを来年に飛行させる計画だ。最初はコロラド州デンバーの本社付近で亜音速のテストとなる。その後カリフォルニア南部のエドワーズ空軍基地を利用して超音速の飛行試験に移る予定だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

退屈するのは創造性を十分発揮していないから、BoxのCEOは語る

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BoxのCEOのAaron Levieは、その役割を10年以上務めている。かろうじて30歳を過ぎたばかり、それが意味することは、これが彼が大人になってプロフェッショナルに行ったことの全てであるということだ。もし彼が他のチャレンジを考えていたとしても無理も無いと思うことだろう。しかしこれだけの期間が過ぎても、Levieの情熱ははっきりと燃え盛っている。

今週BoxWorksで対面インタビューを行った際に、ひょっとして退屈しているのではと尋ねたとき、彼はUberのCEOであるTravis Kalanick(彼はBoxの顧客でもある)の言葉を言い換えながら、こう言った「もし退屈だと言うならば、創造性を十分に発揮していないのですよ」。

Levieがその若いスタートアップに注目を集めようと努力していた2009年から、私は彼と定期的に話を続けて来た。公開会社であること、それに必然的に伴う一切の責任に対して、まだ彼はそれを掴みとる最中のように私には思えた。彼は自らの企業を、この分野で最大のソフトウェア企業となれるような強大なものにして行きたいと願っている。

彼は、Boxの周りで大企業が買収に動いているという噂に関してはコメントしなかったが、まだ独立企業であることに注力していると答えた。

「もしここ3-6ヶ月を振り返って、M&A市場を眺めれば、破壊的成長を遂げつつあるテクノロジー企業に対する嗜好は旺盛だったと思います。私たちは3億9600万ドルの収益を今年の目標として動いています。私たちが挑んでいるのは300から400億ドルの市場です。私たちは、達成したい場所へのおそらく1パーセントの位置にいるのです。私たちは10年以上これを行って来ましたが、このミッションと旅は、まだ始まったばかりです。独立であることと、会社の構築を自分たちで成し遂げることに、重点を置いています」。

もし価値を株価で計るなら辛い気持ちになるでしょうけど、私たちの価値を認めてくれるお客さまの声は届いています。

— Box CEO Aaron Levie

問題の一部は、これだけの時間を費やしたあとでも、多くの人々がまだBoxが何をするためのものかを理解していないということのように思える。とはいえLevieはそのことではイライラはしていないようだ。彼はただコツコツと努力しこう語る、一般の人やウォール街は彼がやろうとしているものをまだうまく認識できていないようだが、そのことが彼の最終的なミッションに影響を与えることはない、と。

 「私たちは長期的視野において、とても一貫して来ました」とLevieは私に語った。「もし価値を株価で計るなら辛い気持ちになるでしょうけど、私たちの価値を認めてくれるお客さまの声は届いています。それが私たちがテクノロジーを開発する理由です」。

人々の働き方が変化していることを見ているので、同社は変化し成長し進化し続けているのだと彼は言う。そしてそれこそが彼の興味を惹き続けているのだ。「私たちは何年も前から変革側にいました、同時に次の10年に世の中の企業がどのように動くかを考えてみると、今日のトレンドがより広くそして重要なものになるでしょう ‐ ビッグデータ、機械学習、分析 – 2005年にBoxに求められていたものよりも、はるかに大きいトレンドが生まれています。私たちは、未来のためのプロダクトを構築する必要があるのです」と彼は言った。

彼は、そのビジョンに伴うものと、同社がどうやってそこへ辿り着く計画をしているのかを、ウォールストリートと既存顧客を越えた広い世界へ説明するのが、彼自身の仕事であることを理解している。もし彼らが理解していないのなら、より明確にするために彼のメッセージを改良する必要がある。とはいえ、成長と変化の余地は沢山あり、それが彼を突き動かしているように見える。

「これの何が素晴らしいかと言えば、いつでも何らかのワクワクさせるものがあるということなのです。変化は退屈することを許してくれません。私たちはエキサイティングで変革的である事に注力しようとしています」と彼は言った。

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(翻訳:Sako)

Instacartが普段の食料品の買い物の仕方を変える


普段の食料品の買い物を支援するアプリのInstacartは、商品の選択、包装と配送をオンデマンドで簡便化する独自の方法を考え出した。

TechCrunchでは同社において人とテクノロジーが実際にどのように機能するのか、サンフランシスのコストコに実際に出向いて取材を行った。明らかになったことは、このサンフランシス発のスタートアップは食料品店の売り方を永遠に変えてしまったということだ。

同社の最高執行責任者であるRavi Guptaによれば、Instacartの核となるイノベーションはそれほどハイテクという訳ではない。肝となるのは、同社が食料品店で量の多いオーダーをさばく為の専用のレーンを確保して、そこに会計、袋詰め、タグ付けを行う専属スタッフを配置することだ。

Instacartで買い物を実際にする人は、顧客がオンラインで注文したもの全てをピックアップし、料金を支払い配送用に袋に詰める。Instacart専用の特別レーンがコストコ、Whole Foodsやサンフランシスコ地元のMollie Stone’s、Andronico’sやBi-Riteなどの食料品店で用意されており、買い物はあっという間に終わる。

最終的には、Instacartはまず同社で働いているショッパーに対して、レジでの支払いをスキップできるようにしようとしており、ゆくゆくはその機能を同アプリを使っている人全員が使えるようにするつもりだ。これが実現すれば、買い物客はレジでの支払いをスキップでき、代わりに品物をスマホでスキャンして支払いを済ませることが出来るようになる、とGuptaは言った。

今の時点では、Instacart専属ショッパーにとっては、同社専用レーンだけでも十分にショッピングのスピードアップが図られているようだ。

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ハイテクに関して言えば、Instacartは主要な食料品店チェーンから品目のリストと店内レイアウトのデータを取得して、協力して店内の売り場マップを作成することも行っている。店内マップがあれば、買い物客は買い物リストに並ぶ品々を簡単に見つける事が出来る。目眩がするほどたくさんのパッケージやラベルの並ぶ売り場の棚から、探し回ることなく欲しいものを素早く見つけることができ、以前一度も買ったことがないものでも容易に探し出せる。

この店内マップのサービスについては、協力関係にあるすべての店舗で展開している訳ではないが、現在そのサービスを拡張中だと、Guptaは言った。

Instacartのシフト・リードであるGloria Shuによれば、店内マップのサービスは現在のところサンフランシスコのコストコでは行われていない。しかし、それはInstacartのアプリ中にある数多くの重要な機能の内の一つである、そういった機能の多くは現在同社のショッパーとドライバーに使われているが、顧客には見えないようになっている。

バックエンドにおいては、Instacartアプリは同社のショッパーが効率よく買い物が出来るよう手助けをする、と彼女は付け加えた。つまり、ショッパーの買ったアイスクリームが溶けてしまわないように、また調理済みの暖かい食料が冷めてしまわないように、Instacartはショッパーに最も効率が良い買い物ルートを教えて、そういった冷凍物や温かい食料は最後にピックアップするよう指示を出す。

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Instacartが大量のオーダーを処理する店舗においては、温かい食品や冷たい食品は袋詰めされた後、運転手がピックアップに来るまでの間、温度コントロールがされた場所で一時保管される。

次回にWhole Foodsやコストコ、もしくは他の主要食料品店で買い物をする時は、Instacart専用のチェックアウトレーンや買い物の一時保管場所、Instacart専属ショッパーがスマホ片手に店内を動き回っている様子に目を向けてみよう。同社特有の緑のTシャツが目印だ。

Instacartは今の所競争をリードしているようだが、競合他社も間違いなく同様の特別レーンを店内に確保しようと躍起になるだろうし、独自のテクノロジーを開発して優位に立とうとするだろう。

同じベンチャー・スタートアップであるPostmatesからGoogleのShopping Expressサービス、さらには地元の物流サービス会社に至るまでの全てがInstacartと競合する可能性があるのだ。

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(翻訳:Tsubouchi)

マネーボール理論を企業でも、ビズリーチが採用管理システム「HRMOS」公開

映画「マネーボール」といえば、貧乏球団のアスレチックスを強豪チームに変えた実在のGM(ジェネラルマネージャ)、ビリー・ビーンの活躍を描いた物語である。

ブラッド・ピット演じる主人公のビリーは、野球のデータを統計学的に分析して、選手の評価や戦略を決める「セイバーメトリクス」という手法を採用。これによって、資金不足にあえぐ弱小チームを、ア・リーグ記録の20連勝を遂げるまでに育てあげた。

このセイバーメトリクスを企業人事で実践しようとしているのが、転職サイトを手がけるビズリーチだ。

ビズリーチが発表した戦略人事クラウド構想

ビズリーチが発表した戦略人事クラウド構想

人事業務のムダをなくす

人材の採用から育成、評価までをクラウド上で最適化する構想「HRMOS(ハーモス)」を6月14日に発表。第一弾として、求人媒体ごとの採用状況を一元管理するサービス「HRMOS 採用管理」をスタートした。

例えばリクナビやマイナビといった求人媒体からCSVファイルを取り込むと、ダッシュボード上で応募者のステータスを一覧表示する。ビズリーチの転職サイト経由の応募者情報は自動的に、人材紹介エージェントや社員紹介による応募者情報は手動で入力すれば、ダッシュボード上で一元管理できる。

設定済みの面接や要対応メールの有無などのタスクをダッシュボードでわかりやすく表示する

ダッシュボード上では、「書類選考」「最終面接」「内定」といった応募者のステータスがわかり、人事担当者はやるべきタスクがひと目でわかる。応募者とのメールのやり取りもHRMOS上で完結する。

応募者の情報や面接の進捗状況をExcelで管理して、そこからメールアドレスをコピペして連絡する……といった人事業務にありがちな面倒な事務手続きから開放されそうだ。

02

応募者ごとの選考ステータス

応募経路別の採用単価をグラフ化する機能もある。求人媒体や人材エージェント、社員紹介によるリファラル採用などで、一人あたりの採用にかかるコストを比較することで、もっとも効率のよい採用方法に注力できる。

04

応募経路別の選考状況

面接官が応募者に出した評価もグラフ化する。面接官の山田さんは内定者に「A評価」を出す傾向があるが、面接官の鈴木さんは内定者に「C評価」を出す傾向があるので、「山田さんの判断を重視すべき」といった意思決定を支援してくれそうだ。

05

面接官別の選考評価レポート

企業経営でマネーボールの理論は実践できるか

採用管理サービスに続き、第二弾として「HRMOS 勤怠管理」を今秋、第三弾として「HRMOS 業績管理」を来春にリリースする。これらのモジュールが連動しながら、自社で活躍する人材の行動や成果を人工知能が学習し、戦略的な人材活用の意思決定を支援するという。

ビズリーチの南壮一郎社長は「人事関連のデータを活用した企業経営が実現できる」と意気込む。

「◯◯さんは現在、どれだけ会社に貢献していて、採用時はこんなパラメータだった、ということがわかるようになる。自社で活躍する社員のデータと照らし合わせることで、高い実績を残すハイパフォーマーの採用や育成にもつながる。」

とはいえ、企業の業績は市場環境や競合などの外部要因で左右するもの。南氏も「経営は野球ほどシンプルな指標で分析できない」と認めるが、人事領域では「採用したら終わり」で完結しているのが問題点だと指摘する。

「営業やマーケティングでは効果検証を行うにもかかわらず、なぜか人事領域は例外。採用した人材が3〜5年後にどんな成果を出したかを数値化し、次回の採用の改善に役立てている企業は少ない。」

プレイヤーが乱立するATS業界

HRMOSをリリースするにあたっては、セールスフォース・ドットコムと業務提携し、機能面での連携を視野に入れている。今年3月に実施した総額37億3000万円(37.3億円で「みなみ」ということらしい)の資金調達では、Salesforce Venturesからも投資を受けている。

スタート時は特別価格として月額5万円で提供。すでに試験提供を開始していて、スタートアップ業界ではRettyやSansan、ラクスルなどが導入済み。2019年6月までに、ビズリーチの利用企業を中心に2000社以上の導入を目指すという。

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ビズリーチの南壮一郎社長

クラウド型採用管理システムは、ATS(アプリカント・トラッキング・システム)と言われ、米国では大企業向けのOracle「Taleo」やSAP「SuccessFactors」が先行、スタートアップではairbnbやsnapchatが導入することでも知られる「greenhouse」がある。

国内でもTaleoやSuccessFactorsが先行するが、古株では2005年に開始した「リクログ」、2008年に開始した「ジョブスイート」、直近3年では「jinjer」や「talentio」、シンガポールに本拠を置く「ACCUUM」も日本市場に進出するなど、新興サービスの参入も相次ぐ。

ちなみにマネーボールの舞台となったアメリカでは、人事にもビッグデータを活用するのは当たり前という風潮になってきている。このあたりの話は過去記事「経験や直感による採用はもう古い、人材採用に広がるデータ・ドリブンなアプローチ」に詳しいので、興味のある方は読んでほしい。

Alibaba、上海のレストランの宅配スタートアップ、Ele.meに12億5000万ドル出資か

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Alibabaグループは上海の料理宅配サービス、Ele.meに12億5000万ドルを出資する方向だと中国のニュースサイト Caixin〔財新〕が報じている〔URLは中国語記事〕。この投資が行われればAlibabaはこのスタートアップの株式の27.7%を握り、最大の株主となる。

われわれの Crunchbaseによると、Ele.meはこれまでに10億9000万ドルのベンチャー資金を調達している。投資家のリストにAlibabaのライバルであるTencentとJD.comが含まれている点が注目だ。Ele.meが実施した最大の資金調達は今年8月に発表された6億3000万ドルに上るシリーズFラウンドだった。

TechCrunchはAlibabaとEle.meにコメントを求めている。

この投資が実施されればAlibabaのO2O戦略は大幅に強化されるはずだ。 O2Oというのはオンラン・トゥー・オフライン、ないしオンラン・トゥー・オンラインの頭文字で、eコマースのプレイヤーはオンラインで金を使う顧客にオフラインでも金を使わせようと努力している。逆に、というか、同時に、普段は実店舗で買い物をしている顧客をオンライン消費に引き込む努力でもある。

Alibabaの他のO2O分野での投資には中国最大のモバイル支払サービス、Alipay、eコマース・チェーン、Suning〔蘇寧電器〕、タクシー配車アプリのDidi Kuaidi〔快的打车〕などがある。

画像: aaron tam/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

シリコンスロープ―テクノロジー・スタートアップの新たな聖地、ユタはユニコーンを量産中

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この季節、オグデンからプロボにかけての山の斜面、地元のユタ州民が「シリコン・スロープ」と呼ぶワサッチ郡にはすでに雪が降っている。しかしロッキー山脈のこのあたりは単なる雪山ではない。そのニックネームから想像されるとおり、ユニコーン―評価額10億ドルを超えるスタートアップ―を多数産みだしているのだ。

ユタ州の新たな特産となったユニコーンのうち、4社はワサッチ地区に本拠を置いている。Omnitureのファウンダーとして有名なJosh Jamesのビジネス・インテリジェンスのスタートアップ、Domoもその一つだ。さらにPluralsightQualtricsInsideSalesもユニコーンだし、他にいくつかの「半ユニコーン」も存在する。

ユタの経済成長は主として最近の2年間に集中している。リードしているのはテクノロジー産業だ。こうしたテクノロジー・スタートアップの特長はベンチャーキャピタリストが注目する前からすでに黒字化を達成している企業が多いことだろう。

「蜂の巣」効果

ユタのテクノロジー・スタートアップでは地元コミュニティが以前から大きな役割を果たしてきた。ユタはOmniture、WordPerfect、Landeskの誕生の地であるだけでなく、Pixarの共同ファウンダー、エド・キャットムル、Atariの共同ファウンダー、ノーラン・ブッシュネルの2人はどちらもユタ大学の卒業生だ。付近の大学やカレッジは高度な学位を取得したエンジニアを毎年何百人も社会に送り出している。ユタはさほど生活費も高くなく、十分な教育を受けた人材が地元には多数住んでおり、彼らの大部分は他所に移ることを望んでいない。しかもユタのスタートアップの多くはベンチャーキャピタルの資金を受け取る必要なしに運営されている。

「ユタには時間をかけて良好なファンダメンタルを備えた企業を育てる文化がある」とFarmingtonに本拠を置く教育スタートアップ、PluralsightのCEO、Aaron Skonnardは言う。Pluralsightは外部の資金援助なしに9年近くやってきた。「シリコンバレーにはわれわれのところのような強い忍耐心の強さはない」とSkonnardは考えている。

最初からそのような財政規律の教育を受けていたため、長期にわたってじっくりスタートアップを育てることができたファウンダーを何人も知っている。

—QualtricsのRyan Smith

ユタではシリコンバレーに比べてベンチャーキャピタルが遠い存在だったのは事実だが、それだけに当地のスタートアップは生まれた瞬間から収益性に注意を払わざるを得なかった。「われわれはスタートアップはどうしたら企業を黒字化できるか常に考えることを規律として叩き込まれている」とプロボのスタートアップ、InsideSales.comのCEO、Dave Elkingtonは言う。

しかし最近、ベンチャーキャピタルはユタで珍しい存在ではなくなってきた。数年前、名門VCのSequoiaはQualtricsのファウンダー、Ryan Smithに7000万ドルのベンチャー資金をシリーズAラウンドとして投じた。以来、Qualtricsには2億2000万ドルのベンチャー資金が流れ込んでおり評価額は10億ドルを超えている。

SmithとSkonnardはいくつかの点で同意見であることがわかった。たとえば、スタートアップは最初期の時点から収益性を考えなばならないという財政規律だ。「最初からそのような財政規律の教育を受けていたため、長期にわたってじっくりスタートアップを育てることができたファウンダーを何人も知っている」とSmithは言う。

急がずIPOへ

Smithはユタで生まれた有名なワープロ・ソフトウェアを例にこういう。「WordPerfectはものすごいイノベーションを起こしていたかもしれない。しかし1992年に売却されている。、もしこの売却がなかったらどうなっていただろう?」

ユタのユニコーンは現在の10億ドルの評価額を得るまでに非常に長い期間、多くは10年以上をスタートアップとして過ごしている。これはSnapchatやPinterestとは比べものにならないくらい長い期間だ。

TechCrunchはNational Venture Capital Associationが収集したデータを検討したが、今年の第1四半期から第3四半期までに7億ドル弱がユタのテクノロジー・スタートアップに投資されている。

ユタに投資したこうしたベンチャーキャピタリストの狙いはもちろん高配当だ。教育テクノロジーのスタートアップ、Instructureは昨年上場した。 Domo、 Pluralsight、InsideSales.comの3社も間もなく後に続きそうだ。2016年には相当数のユタのスタートアップが上場を果たすに違いない。

InstructureのCEO、 Josh Coatesは「ユタのエコシステムは信じられほど急速に拡大している。ユタには現在5、6社の極めて活気あるテクノロジー企業が存在するが、いずれも近く上場を果たす準備ができている」と言う。

Smithがわれわれに語ったところによると、Qualtricsも来年か再来年には上場するという。「あらゆる面でそうなるだろうという兆候が見える。いずれにせよ、われわれは上場企業として自らを律している」とSmisthはTechCrunchに語った。

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スーニコン―「すぐにユニコーンになる」存在

一般のメディアの注目を引かないステルス的スタートアップにも検討を要する存在が多数だ。Entrataは不動産管理ソフトの企業で、そう聞けば想像がつくとおり、AirbnbやUberのような分かりやすい派手な存在ではない。しかし同社には通年換算で1億ドルの売上があり、しかもこれまでベンチャーキャピタルの支援を全く受けていない。完全に自己資金のみで運営されている。

紙の健康情報をデジタル化することを目的とするユタのスタートアップ、Catalystは最近5億ドルの評価額でベンチャー投資を受け、ユニコーンへの道の半ばまで来た。これまで総額1億6500万ドルの資金をユタ内外のベンチャーキャピタリストから調達しており、これにはユタきっての大手ベンチャーキャピタル、Sorenson Capitalも含まれる。手元資金の総額は10億ドルを超えるだろう。

エンタープライズの成長も有望

ユタの成長の大きな部分は大企業の成功のせいでもある。これまでユタの大企業はスタートアップ以上にメディアや投資家の注目を引くのが難しかった。注意を引くにはきわめてど高い利益を産み出すか巨額の評価額を獲得する必要があった。

「当地の大企業にはSnapchatのような爆発的急成長もAmazonのような持続的巨大化も難しい。そいう土地ではないのだ。しかし投資家がユタの企業をじっくり検討すると、満足して次の会社、またその次の会社と投資すjることになる」とSmith。

ベンチャーキャピタルのAccelはQualtricsだけで7000万ドルを投資している。Accelはまたユタのフラッシュメモリー・メーカー、Fusion-ioにも投資中だ。

「ほぼすべての主要なシリコンバレーの投資家がユタを注視している」とElkingtonは言う。

「ユタの企業文化は長続きする会社を育てる」Skonnardは胸を張って主張する。

F画像: Andrew Zarivny/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

日本発・非ネット分野の「世界基準ベンチャー」がTechCrunch Tokyoに登壇

ネット系のスタートアップではメルカリやスマートニュースが米国進出したり、海外ユーザー比率が95%の対戦型脳トレ「BrainWars」が国境を超えた感があるが、“非ネット”な分野にも世界を狙えるスタートアップはある。

11月17日、18日に開催するTechCrunch Tokyoでは、そんな非ネット分野の「世界基準ベンチャー」にスポットを当てる。登壇するのは、工場の生産ラインなどに導入される産業用ロボットの制御機器を手掛けるMUJINの滝野一征さんと、電気自動車(EV)を開発するGLMの小間裕康さんの2人だ。

GLM小間裕康さん(左)とMUJIN滝野一征さん

GLM小間裕康さん(左)とMUJIN滝野一征さん

産業用ロボットに“考える力”を与える

MUJINをざっくり言うと、産業用ロボットの“脳みそ”を作る研究開発型ベンチャーだ。ロボットと聞いてガンダムのような人型ロボットを思い浮かべる人にはピンとこないかもしれないが、通常、産業用ロボットを稼働させるには、専門のオペレーターがロボットを手作業で動かし、その動作をプログラミングする「ティーチング」が必要となる。この作業は膨大な時間とコストがかかるうえ、教えた動作以外に応用がきかないのだ。

こうした産業用ロボットに“考える力”を与えるのがMUJINだ。主力製品のひとつ、「ピックワーカー」は、ティーチングせずにバラ積みの部品を取り出せるのが特徴。対象部品を3次元で認識し、その情報をもとに産業用ロボットを制御するコントローラが瞬時に動作プログラムを計算する。ロボットや3次元センサーは汎用品が使用可能で、MUJINはコントローラを開発している。

ばら積みピッキングを可能にする「ピックワーカー」

ばら積みピッキングを可能にする「ピックワーカー」

MUJINの設立は2011年7月。今年5年目のベンチャーだが、すでに自動車工場や物流、食品仕分けなどで導入実績があり、取引先にはキヤノンやデンソー、日産、三菱電機といった大企業が名を連ねる。海外からの問い合わせも多く、世界展開を見据えている。2012年7月には東京大学エッジキャピタル(UTEC)からシリーズA資金として7500万円、2014年8月にはUTECとJAFCOからシリーズB資金として6億円を調達している。

最後にピックワーカーの動画をご紹介する。産業用ロボットが自律的に考えてばら積みの部品をピックアップする様子は、まるでSF映画を見ているような気にもなる。

「日本版テスラ」国内で初めてEVスポーツカーを量産

登壇するもう1社、GLMは2014年4月に設立した京都大学発のベンチャーだ。電気自動車(EV)向けの独自プラットフォームを開発している。プラットフォームというのは、ギアやドライブシャフトで構成されるドライブトレイン、そしてシャーシのこと。GLMはこのEV向けプラットフォームを利用した完成車を販売し、一部では「日本版テスラ」と呼ばれたりしている。

2014年7月には、量産を前提としたEVスポーツカーとしては国内で初めて、国土交通省の安全認証を取得。公道での走行が可能となった。これを受けて同年8月から、国内初の量産EVスポーツカー「トミーカイラ ZZ」の納車をスタートしている。トミーカイラ ZZは静止状態から3.9秒で時速100キロに達する加速性能がウリ。価格は800万円ながらも、限定生産の99台は受付初日で限定数を超える予約が集まった。

静止状態から3.9秒で時速100キロに達する加速がウリの「トミーカイラ ZZ」

静止状態から3.9秒で時速100キロに達する加速がウリの「トミーカイラ ZZ」

GLMはEVスポーツカーだけでなく、資金調達でも話題を呼んだ。2012年10月の増資では元ソニー会長の出井伸之氏や元グリコ栄養食品会長の江崎正道氏らが出資。2013年12月にはグロービス・キャピタル・パートナーズなどVC4社と日本政策金融公庫から約6億円、2015年5月には既存株主や複数国の政府系ファンドから約8億円、8月には総額17億円のシリーズB資金調達を完了するなど、すでに多額の資金を集めている。

産業用ロボットと電気自動車。どちらの業界も、いちベンチャーが参入するには障壁が高そうに思えるが、MUJINもGLMも夢物語ではなく、テクノロジーで世界市場をつかもうとしている。イベントではそんな世界基準の研究開発ベンチャーの魅力をお伝えできればと思う。

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元GoogleのSebasitan ThrunのUdacity、急成長続く―シリーズDで1億ドルを調達、評価額は10億ドルに

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正統的なコンピュータ言語教育サイトとして有名なUdacityが、いわゆるユニコーンの仲間入りをする。この水曜に同社はシリーズDラウンドで1億500万ドルを調達したことを発表した。これにともなって、会社評価額はついに10億ドルの大台に乗った。これでユニコーン・クラブへの加入を果たしたわけだ。

シリーズDをリードしたのは国際的なメディアと教育のコングロマリット、Bertelsmannで、これにスコットランドのBaillie Gifford、Emerson Collective、 Google Venturesが参加した。同時に既存の投資家、Andreessen Horowitz、Charles River Ventures、Drive Capitalもこのラウンドに加わっている。

Bertelsmannの教育事業グループのCEO、Kay Krafftはこの投資にともなってUdacityの取締役に就任した。

Udacityの社長、COOのVish Makhijaniは声明の中で次のように述べた。「Udacityの使命はコンピュータ言語の教育を民主化し、全世界の何十億もの人々に手頃な料金で均等に習得のチャンスを与えることだ。コンピュータ言語の学習によりこれらの人々は適切な職を得ることができ、生活は大きく改善されるだろう。われわれは急成長を続けているが、目的の達成までの道のりは長い。今回の資金調達ラウンドで、Udacityの会社評価が10億ドルとなったことを光栄に思っている。われわれの歴史を振り返るとき、身の引き締まる思いだ。」

今回のラウンドは同社が世界的に規模を拡大しているさなかに行われた。この秋に入ってUdacityはサービスをインドに拡大している。

この資金調達のニュースは同社のnanodegreeプログラムのスタート1周年と重なった。Ucacityが認定するコンピュータ言語のnanodegreeは、現在シリコンバレーでも最大の企業であるGoogleやSalesforceで資格の一つとして認定されている。Udacityによれば、世界の168ヵ国で1万1000人がnanodegreeの取得を目指して各コースに登録しているという。

〔日本版:Udacityは元Google、元スタンフォード教授のSebastian Thrunが創立した企業。TechCrunch Japanでもたびたび紹介されている。〕

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

オンライン英語スクールのベストティーチャーがベネッセと提携、GTEC CBT対策コースを提供

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英語が苦手な日本人は多い。中学と高校の6年間で英語を履修しているにも関わらず、2013年度のTOEFL国別ランキングでは日本はアジア31カ国中26位だ。中でもスピーキングのスコアはアジア最下位であり、座学型カリキュラムの弊害と言えるだろう。インターネットの普及でグローバル言語としての英語が存在力を強める中、この英語力の低さは由々しき問題である。

文部科学省もこの点は認識しており、2020年の大学入試センター試験廃止に伴い英語試験もこれまでのリーディング、リスニング中心(2技能)のものから、英検やTOEFLなどの民間による試験を活用し、スピーキング、ライティングを含めた4技能評価を導入するとしている。

ベストティーチャーの提供する「ベストティーチャー」はそんな4技能を総合的に学ぶためのオンライン英語スクールだ。自分が話したいことを英文で書き、それをオンラインで講師が添削、正しい英文を読むことができる。さらに講師の録音する英文を聞いた上で、Skypeで実際に講師と会話をする。そんなベストティーチャーが6月15日、オンラインスクールで初めてとなる「GTEC CBT対策コース」を開講した。

GTEC CBTというのはベネッセコーポレーションが2014年8月より提供している4技能対応英語試験の名称。年間約73万人が受検する「GTEC for STUDENTS」をベースにしており、すでに多くの大学で入試に活用されている実績がある。2021年にはセンター試験が廃止されるなど大学入試改革が行われる。その際には4技能試験の重要性が増していくと考えられるが、ベストティーチャーはいち早くその流れに乗った形だ。

ベネッセ公認の対策コースとなっており、公式問題集に掲載されている問題を元に、トレーニングを受けたネイティブの講師から学ぶことができる。料金は月額1万6200円で、ベストティーチャーの通常コース(月額9800円)に加え、GTEC CBT対策用のカリキュラムを受講できる。

ベストティーチャー代表取締役社長の宮地俊充氏は、入試の改革に伴い勉強方法にも改革が必要な時代だと訴える。「親の世代には無かった方法でありコストをかける事に抵抗があるかも知れないが、『オンラインで話すのは当然』という世の中にしたい」(宮地氏)

なお、同社は英語4技能試験の対策情報サイト、4skillsもリリースしている。GTEC CBTのみならずIELTSやTEAP、TOEIC SWなど英語能力判定テストの情報を掲載する。

クレディセゾン、FinTech特化のコーポレートベンチャーキャピタルを設立

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screenshot_371先日のGoogle I/Oでも決済サービスのAndroid Payが発表されたばかりだが、金融(Finance)とIT(Tech)を掛けあわせたいわゆる「FinTech」に注目が集まっている。そんなFinTech関連のスタートアップにも影響のありそうな動きがあった。

クレディセゾンは6月1日、国内カード業界初となるコーポレート・ベンチャーキャピタル、「セゾン・ベンチャーズ」の設立を発表した。資本金は1億円で、クレディセゾンの100%子会社となる。

クレディセゾンでは、これまでにもOrigamiやコイニーをはじめとしてスタートアップに積極的な出資をしてきた。新設したセゾン・ベンチャーズでは、シード・アーリーステージのベンチャーを対象により機動的に活動したいとする。

主な投資対象はFinTechの分野で新世代の金融・決済ソリューションに取り組むスタートアップ、もしくはカード会員資産や永久不滅ポイントなど、クレディセゾン固有の資源を活用し新たな経済活動を生み出すポテンシャルを持つスタートアップ。クレディセゾンでは、3500万人の顧客基盤、30年以上のカードビジネス経験でスタートアップを支援するとしている。

企業の規模やアイデアにもよるが、1社あたり数百万円〜数千万円をイメージしているとのこと。将来的には、数年で数十億円規模にまで投資規模を拡大していきたいと意気込む。

Open Network Labが第10期のデモデイを開催、最優秀賞はKUFUの「SmartHR」に

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Open Network Lab(Onlab)が手がけるインキュベーションプログラム「Seed Accelerator Program」。2010年4月から続くこのプログラムもすでに第10期。4月2日にはその成果を発表するデモデイが開催された。

第10期には80チームが応募。ステルス(非公開)1チームを含めて合計7チームが採択された。デモデイに臨んだ6チームの概要を紹介する。

MOOB「MAKEY

ユーザー同士でメイク方法を共有する、いわば「クックパッド」のメイク版。ユーザーはメイクのビフォーアフターを投稿、閲覧できる。新規投稿数は3カ月で3倍に増加。サービス運営に加えて、花王やコーセーとコラボしたメイクのリアルイベントなども開催しているという。4月中旬以降サービスを本格化する。

フラップ「FLAP

「美容室」ではなく「美容師個人」にフォーカスしたマッチングサービス。12月にブラウザ版をリリースしている。美容師が得意な技術などを投稿。それを見たユーザーは、自分の気に入った美容師に対して予約を取ることができる。現在は登録美容師の42%が情報を発信し、35%が継続利用している。また美容師の7.5%がこのサービスを通じて新規顧客を獲得した。

KUFU「SmartHR

労務手続きをクラウド上で解決するサービス。これまで手書きで書く必要のあった各種の書類をオンライン上に入力するだけで自動的に生成する。ランディングページ公開後、2週間で125社(社員数ベースで1449人)の利用申し込みがあり、テストした10社の全社が「お金を払っても利用したい」と回答したそうだ。将来的には政府の公開するAPIと連携。さらに財務など各種業務システムとのつなぎ込みを検討している。

TSUNAGU「tsunagu Japan

訪日旅行者向けの英語メディアを運営。「日本のライフスタイルを知るコンテンツ」「まとめ記事形式の観光記事」の2つに特化した独自記事を配信している。現在のユニークユーザーは43万人、Facebookページは100万人、アンバサダー(記事拡散支援のユーザー)は320人。diggTripZillaと連携。7月をめどにUU100万人を目指す。将来的にはホテルや飲食などジャンル特化型メディアを提供する。

iDEAKITT「LifeCLIPS

書き手満足度重視のテキストベースSNS。書き手にとって重要なのは投稿の手軽さと表現の自由さを重視している。現在高校生から60代までが文章を綴っている。現在2万以上のCLIP(投稿)がなされている。アクティブ率は50%。平均滞在時間は10分を超える。アクセスの7割はモバイルからだというが、投稿される文字数は平均で400文字以上と長文が多い。3月31日にはiPhoneアプリもリリースした。(以前の記事はこちら

マミーケア「HouseCare

1時間2500円のハウスクリーニングサービス。ここは最近スタートアップが続々参入している領域でもあるが、HouseCareの強みは「速さ」。申し込みしたユーザーの37%が当日〜2日以内のブッキングを実現している。スタッフは日本語と英語に対応。もちろんレビューなどの仕組みも整えている。

最優秀賞はKUFUの「SmartHR」に

デジタルガレージ代表取締役グループCEO林郁氏をはじめとする審査員がBest Team Award(最優秀賞)に選んだのはKUFUのSmartHRだった。

僕もプレゼンを聞いていて「今人事労務が抱えている課題を解決する」という点では6チームで一番明快だと思ったのだけれども、ちょっと気になったのはサービスの参入障壁の低さだ。ビズグラウンドの「Bizer」なんかも、実はこのあたりの領域を狙っているサービスだったりするし、大手企業だって参入の可能性がある領域だ。

実際審査員の間でもこの点で評価が分かれたそう。林氏は「まだ完成していないがマーケット広い。だが参入障壁は低い。ささっと(資金)調達して勝負して欲しい」と評していた。

なおOnlabでは第11期のプログラム参加者を募集中だ。支援内容についても第10期からアップデートしているので、詳細はこちらの記事を確認して欲しい。

ディズニーやナイキに見る、大企業がアクセラレータで成功するためのキーワード

編集部注:この原稿はScrum Venturesの宮田拓弥氏による寄稿である。宮田氏は日本と米国でソフトウェア、モバイルなどのスタートアップを複数起業。2009年ミクシィのアライアンス担当役員に就任し、その後 mixi America CEO を務める。2013年にScrum Venturesを設立。サンフランシスコをベースに、シリコンバレーのスタートアップへの投資、アジア市場への参入支援を行っている。

Disney Acceleratorのデモデー(筆者撮影)

 
「部長、そろそろうちの会社もアクセラレータを始めた方がいいんじゃないでしょうか?」

こうした会話が世界中で行われているのではないかと思うくらい、さまざまな大企業がアクセラレータを始めた、もしくは計画しているという話を耳にする。事実、企業が主体となって行うベンチャーキャピタル、いわゆるCVC (Corporate Venture Capital)の規模は近年拡大を続けており、米国では2014年の3Qに過去最大の投資額(9億9360万ドル)となり、スタートアップへの投資額全体の10%にも達している。スタートアップが生み出すイノベーションを取り込もうと多くの大企業が必死に取り組んでいる様子が伺える。

私は、アーリーステージのベンチャーキャピタルとして、そのソーシング(投資先企業の発掘)の一環として、毎月1つか2つのアクセラレータのデモデー(支援企業の発表会)に参加をしている。その経験から、本稿では大企業が運営するアクセラレータの「トレンド」、そしてその「成功のキーワード」をご紹介したい。

ディズニーからナイキまで

日本では、携帯キャリアのKDDIが2011年からいち早くアクセラレータに取り組んでいるが、近年でもNTTドコモや学研、オムロンなど、新たにアクセラレータをスタートするというニュースも多い。

一方、米国では昨年くらいから大企業によるアクセラレータの動きが加速している。ディズニー、マイクロソフト、スプリント、ナイキ、クアルコム、カプラン、RGAなど様々な業種、業態の大企業が争うようにアクセラレータの運営を開始している。

「総花型」から「特化型」へ

2005年に設立され、DropboxやAirbnbなどを生み出したY-Combinatorに代表される「アクセラレータ」という業種であるが、元々は「テクノロジースタートアップ全般」を対象にするアクセラレータが多かった。その後、雨後のタケノコのようにアクセラレータそのものの数が増えたことと、テクノロジースタートアップがカバーする領域が非常に多様化したことなどを背景として、ここ数年は「特化型」のアクセラレータが増加している。具体的にはヘルスケアに特化したRockHealth 、教育に特化したImagine K-12、エンタープライズに特化したAlchemist、IoTに特化したLemnos Labsなどがある。総花的なアクセラレータはすでに淘汰が急速に始まっており、今後この「特化型」のトレンドはさらに進行していくものと考えている。

「アクセラレータ支援企業」の存在

冒頭にも述べたように多くの大企業でアクセラレータの展開が検討されている状況であるが、そこで問題となるのが「どうやって運営するのか?」という点だ。ディズニーやクアルコムにそう言う人材が最初からいたのか? それとも、新たに採用したのか?

そういうした大企業の悩みに答えているのが、「アクセラレータ支援企業」の存在だ。

米国で代表的な「アクセラレータ支援企業」は、コロラド州ボルダーに本拠を置くTechStarsだ。ナイキやディズニーなど、近年成功を収めている大企業アクセラレータの多くはTechStarsが仕掛けたものだ。TechStarsは2006年に、Y-Combinatorなどと同様に専業アクセラレータとしてスタートしたが、近年支援事業に力を入れている。

TechStarsの支援内容は非常に幅広く、基本的にアクセラレータ運営に必要な業務のすべてを担ってくれる。必要となる予算はかなり大きいと聞いているが、ウェブサイトの構築・運用、支援先企業の募集、審査、メンタリング、デモデー運営など通常3カ月の運営期間に必要な作業のほとんどがマニュアル化されている。ウン億円を支払ってTechStarsとパートナーシップを組めば、どんな大企業でもすぐにアクセラレータをスタートできるというわけだ。日本では、私がアドバイザーを務めるアーキタイプ社などが同様のサービスを提供している。

成功のための「3つのキーワード」

最後に、数多くの大企業によるアクセラレータを見て来た立場から、成功のためのキーワードを3つご紹介したい。

①「アセットへのアクセス」

数多くのアクセラレータがある中で、成功した先輩起業家が運営するアクセラレータでなく、なぜ大企業を選ぶのか?そのシンプルな答えは、スタートアップにはない、数多くの既存アセット(資産)が大企業にあるからだ。それは、販売チャネル、コンテンツ、ブランド、キャラクター、技術、特許、人材、設備など、企業によって様々だ。

今年、ディズニーがスタートしたアクセラレータ、「Disney Accelerator」は、ディズニーが持つ様々なキャラクターやコンテンツを、採択企業が自由に使ってよいと謳ったことで話題となった。実際に、デモデーでは、多くのキャラクターやディズニーランドなど、スタートアップであれば誰もが実現したいと思えるパートナーシップがすでに実現していた。

「自分たちがもつどんなアセットがスタートアップにとって魅力的か?」そこからアクセラレータの検討を始めてもいいのかもしれない。

②「トップのコミットメント」

アクセラレータやCVCなどは、新規事業の一環として一部の部署が主導して行われることも多いと思う。しかしながら、それでは会社全体でその重要性が理解されず、うまくいかないことも多い。一方で、最近はCEOや経営陣が自らアクセラレータにコミットし、積極的にスタートアップのイノベーションを取り込もうとする例を見かける。

例えば、昨年スタートした広告代理店、RGAによるIoT特化型のアクセラレータ、RGA Acceleratorでは、CEO自らがデモデーのオープニングに登場し、趣旨や意気込みを説明していた。「スタートアップのイノベーションを本気で取り込む」という外側に向けての強いメッセージになると同時に、前述の「アセットへのアクセス」という大企業としてはなかなか難しいテーマも、トップもコミットして進めることで実現が可能になるという側面もあるのかもしれない。

RGA Acceleratorのデモデー(筆者撮影)

③「レイターステージ」

通常、アクセラレータというと「創業間もないスタートアップ」を対象にすることが多い。だが最近は、Y-CombinatorがQ&A大手のQuaraをバッチに加えたり、Disney Accleratorでもすでに大きな実績のあるロボットの企業、Spheroなどがバッチに加わっていた。

アクセラレータの意義の一つは、まだ形になっていない新しいアイディアを3カ月という短期間でものにするというものであるが、当然うまくいかないことも多い。一方で、すでに実績のあるレイターステージの企業であれば、そうしたリスクもなく、大企業側のアセットを提供することで大きな成果も期待できる。つまり、最初からパートナーシップとしての成果を狙いながらバッチに加えるという訳だ。こうしたパートナーシップドリブンのアクセラレータというのも、大企業が主導する形としては今後増えて行く形態のような気がしている。

大企業のイノベーションにスタートアップとの連携は不可避

私はサンフランシスコを中心に投資活動を行っているが、ニューヨークやロスアンゼルスにも多くの投資先企業がおり、非常に重要視している。それはサンフランシスコに限らず、かつて大企業に行っていたような優秀な人材がこぞってスタートアップをスタートしているからであり、その流れは加速することはあっても逆戻りすることはないと感じているからである。

「うちの社内の技術の方が優れている」
「そんなの社内で同じことできるじゃないか」
「うちの事業と競合するかもしれない」

大企業の中でスタートアップとの取り組みにはまだまだ反対意見も多いかもしれない。ただ、今後の大企業のイノベーションにはスタートアップとの連携は不可避だ。ぜひ、御社でも経営陣を巻き込み、スタートアップのイノベーションを取り込む活動をスタートしてはいかがだろうか? 本稿が少しでも参考になれば幸いである。


ヤフー、ミクシィ、グリーはどうやって構造改革を実現? 当事者が振り返る

PC時代の王者からスマホに舵を切ったヤフー、老舗SNSからゲームで再生を果たしたミクシィ、約1割の従業員を削減してネイティブゲームに注力するグリー――。こうしたネット企業はどのように構造変革を実現したのか。12月3日に京都で開催された「IVS Fall Kyoto 2014」でヤフー執行役員の小澤隆生氏、グリー取締役の山岸広太郎氏、ミクシィ前社長で現在はジョッキンゼー代表取締役の朝倉祐介氏らが「当事者」としての体験談を語った。

構造改革の「助っ人」には賞味期限がある

楽天からヤフーへと渡り歩いた小澤氏は、構造改革を成功させるには「トップダウン」が欠かせないと語る。「例えば孫さん。ソフトバンクはもともとソフトウェアの卸売や出版業の会社。ピボットどころかトラベリングですよ」と言い、強烈なトップダウンで変革を進めていくべきと話した。

ヤフーが新体制で宮坂学氏を社長に据えたように、人事制度を変えることも秘訣だという。「気持ちをいくら伝えてもそうそう変わらない。明日から変えるという時に人事を変えるのはロジカル。『自分じゃできない』という時は後継者を自分で指名して変わるのは有効」。

2006年にオリコンのデジタル化を進めるために招へいされた、ボストンコンサルティンググループの平井陽一朗氏は、「助っ人」には賞味期限があると語る。「私のように途中から入った人間は、3カ月くらいで期待された結果が出ないと『おつかれさん』となってしまう。すばやく勝つことが求められている」。

「当時のオリコンでうまくいったのは、着メロに数十人くらい貼り付けていたのを切った。最初に思い切ったことをやると、いなくなってほしくない社員も辞めたりするが、雨降って地が固まる。結果が出るとドライブがかかり、みんなゴキゲンになって連鎖反応が起きてくる。」

ボストンコンサルティンググループの平井陽一朗氏

社内外のアナウンスの難しさ

構造改革はポジティブな面で語られることが多いが、当然ながら「痛み」が伴う局面もある。ヤフーで構造改革に立ち会った小澤氏が頭を悩ませたのは、「PC時代の王者であっても今後は安泰ではない」という意識を、社内外をどのように話すべきかということだった。

「上場企業なので、真正面から『危ない』と話をすると『おいヤフー大丈夫か?』と心配されてしまう。その一方で、従業員には危機感を持ってもらいたい。なぜ構造改革をしなければならないのか。このまま行っても失敗しないかもしれないけれど、今の立ち位置はまずいと。」

ヤフーの小澤隆生氏

この発言には、事業再生の請負人としてミクシィ社長に就任した朝倉氏も強く同意する。「社内には厳しいことを言うが、あんまり外で『再生』と言ったりすると『ミクシィは死んでるのか』と思われてしまう。成長する目線があることを示しつつ、社内にはがんばってやろうと呼びかけるのが大事」。

ミクシィの事業再生が実際どうだったかと聞かれた朝倉氏は、「SNSで大成功してしまったがゆえに方針転換が極めて厳しかった」と振り返った。「戦略はシンプルで、既存事業の採算性をいかに改善するか。新しい事業をどう生み出すか。そのための施策を考え、社名変更すらも考えた」。

ジョッキンゼーの朝倉祐介氏

「古参」からの反発はどうする?

構造改革は、売上や利益が下がってから行うのでは遅すぎる。それでは経営陣はいつ決断すべきなのか。先回りして構造改革のタイミングを図ることが求められるが、これが難しいと小澤氏は語る。「自分たちの事業はうまくいってると思いたいもの。でも、一寸先は闇ですからね」。

実際に構造改革に踏み切ると、時として社内で反発が起こる。それが「古参」の社員だったりすることもあるが、こういったケースではどのように対応すべきか。VOYAGE GROUP社長の宇佐美進典氏は、マクロな動きが見えない人とは、いかに危機感を共有するかが重要だと話す。

「自分が感じるマクロな変化を言語化して共有するべき。現状の前提条件が伝われば、反対者も『じゃあしょうがない』となる。社内で説明する前には、ネガティブなオーラを出す社内のキーマンを先に押さえることも大事。『ネガティブなオーラを出さないでね』と握った上で、全社集会で発表した。」

VOYAGE GROUPの宇佐美進典氏

メディアで叩かれても耐える強さ

ここまでは各社の「成功体験」が語られたが、「あの時こうしていれば」という後悔はなかったのか?

2005年12月にサイバーエージェント(CA)の取締役に就任した経験を持つ宇佐美氏は、同社の組織作りを参考にすべきだったと振り返る。「僕らは事業戦略ばかり考えていたが、CAが力を入れていたのは、いかに良い人材を採用して事業を任せるかということ。熱い組織を作るのはもっと最初からやっていればよかった」。

グリーは事業急成長を背景に2011年以降、グローバルプラットフォームとネイティブアプリシフトに取り組むも失敗。同時にコンプガチャ問題が同時にコンプガチャ問題が起こって業績が悪化した。2013年には従業員の約1割を削減するなど事業再編し、現在は再びネイティブゲームに注力している。山岸氏は当時を振り返って「組織のストレス耐性を作るのが大事」と話す。

「まず、外から言われることに強くなること。メディアで叩かれると社員が傷ついてダメだと思ったりするが、自分たちがやっていることに誇りを持つ強さが必要。もう1つは、人の出入りに強くなること。ほとんどの人が辞めない会社から、多くの人が辞める会社になって僕らも傷ついたが、志やその時にやることに合わなければ、去る人を前向きに送り出せる風土を作らなければ、変革には耐えられない。」

グリーの山岸広太郎氏


アンドロイドの父、アンディー・ルービンがGoogleを離れてハードウェア・インキュベーター創立へ

GoogleにAndroidをもたらしたアンディー・ルービンが同社を離れることになった。Wall Street Journalによれば,、ルービンは今後先進テクノロジー・ハードウェア製品を開発するスタートアップを育成するインキュベーターを設立するという。

GoogleもCEOのラリー・ペイジの予め用意された声明でこの情報を確認した。 ペイジは「アンディーの出発を心から祝いたい。アンディーはAndroidで真に驚くべきことを成し遂げた―10億人以上のハッピーなユーザーだ。ありがとう!」と述べた。

ルービンが設立を予定しているインキュベーターをGoogleが資金、運営面で支援するのかについてGoogleはコメントを避けた。またこのインキュベーターの名称もまだ明らかになっていない。

ルービンが指揮していたロボティクス事業は部下のJames Kuffnerが昇進してルービンの後任となる。

Rubinが開発したAndroidがGoogleに買収されて急成長したことは彼にとって大きな幸運だった。しかしAndroidが世界最大のモバイル・プラットフォームに成長するとルービンはその責任者の地位から外された。2013年にChromeブラウザーとChrome OSを担当していたスンダル・ピチャイがAndroid事業の指揮も兼任することになった。

数日前にピチャイはさらに多くの責任を追う立場に抜擢され、Googleでは事実上ラリー・ペイジに次ぐ地位を確立した。.

Android事業から外れた後Rubinは実験的なロボット事業部門の責任者の地位についていたが、今回発表されたルービンの今後の事業展開と一致する方向だった。

ルービンの経歴はもともとハードウェアから始まっている。ルービンは1989年にAppleに入社、Appleの子会社General Magicを経て独立、Dangerの共同ファウンダーとなってSidekickというモバイル端末を開発する。Dangerはルービンが去って5年後にMicrosoftに買収された。続いてルービンはRich Minerと共に2003年にAndroidを創立した。Googleは2005年にAndroidを買収し、これと共にルービンはGoogleに移籍した。

最近Googleを去った著名なエンジニアとしてはルービンの他に、教育スタートアップのUdacityに専念するため辞任したGoogle Xで自動運転車担当副社長を務めていたSebastian Thrunがいる。

画像: JOI ITO UNDER CC BY 2.0 LICENSE (IMAGE HAS BEEN CROPPED)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+