米国の州検事総長がTikTokとSnapに対して他社製ペアレンタルコントロールアプリに対応するよう要望

TikTok(ティックトック)とSnapchat(スナップチャット)にはペアレンタルコントロールの強化が必要だとする書面に、44人の州検事総長が署名した。

米国時間3月29日、全米検事総長協会(NAAG)は10代の間で広く使われているTikTokとSnapchatに対し、一連の懸念を書面で送った。

州検事総長のグループはソーシャルメディアアプリに関して、広い意味で子どもの身体、感情、精神の健康に与える悪影響などさまざまな問題点を挙げている。虐待的な性的関係を表現したコンテンツは子どもの健全な関係に対する考え方を著しく傷つけることがあり、家庭内虐待や人身売買の継続を助長する恐れもあると指摘している。そして書面では、TikTokとSnapchatが他社製ペアレンタルコントロールアプリと効果的に連携して保護者がプラットフォーム上での子どもの行動を監視し制限することに努めていないと強調している。

NAAGはBarkというアプリの調査を引き合いに出した。2021年に30種類のアプリで34億通のメッセージを分析したところ、10代の74.6%が自傷や自殺の状況に関わり、90.73%がオンラインでヌードや性的コンテンツに接し、93.31%がドラッグやアルコールについて話したという。

書面では「ペアレンタルコントロールアプリは保護者や学校に対し、プラットフォーム上のメッセージや投稿が有害で危険な恐れがあることを警告します。子どもが自傷や自殺の願望を示した場合にも保護者に警告できます」と述べられている。

Snapchatにはすでにアプリ内のペアレンタルコントロール機能があり、TikTokにもあるが、州検事総長のグループはプラットフォームに対し他社製ペアレンタルコントロールアプリとの互換性を高めるように要望している。ただし、特定のプロダクトは推奨していない。州検事総長のグループは、ペアレンタルコントロールアプリはプライベートなメッセージなどアプリに内蔵のペアレンタルコントロールでは監視していないソーシャルメディアアプリの機能にもアクセスできることに言及している。さらに他社製アプリは、アプリのメインのフィードに表示されるユーザー生成コンテンツのフィルタリング機能も優れているとしている。

ただし、他社のコントロールアプリには子どもを監視する方法に関して独自の問題がある。

TikTokとSnapchatにはペアレンタルコントロール機能があるが、競合のInstagram(インスタグラム)にはなかった。ソーシャルメディアが10代のメンタルヘルスに与える影響に関する一連の上院公聴会の後、Meta(メタ)はようやくInstagramにペアレンタルコントロールの導入を開始した。

しかしペアレンタルコントロールの有無に関わらず、こうしたプラットフォーム上での10代の安全について米国政府は今も懸念を持っている。バイデン大統領は一般教書演説でソーシャルメディアが10代のメンタルヘルスに与える脅威に言及した。この一般教書演説にはFacebook(フェイスブック)の元従業員で内部告発をしたFrances Haugen(フランセス・ハウゲン)氏がゲストとして参加していた。

10代の間ではInstagramよりTikTokの方が人気があり、Instagramはそれに負けじとTikTokによく似たリールに投資している。しかしTikTokは急速に成長してソーシャルアプリとして地位を守っているため、Metaは自社の存在感を維持するために驚きの行動に出た。The Washington Postが米国時間3月30日に報じたところによると、Metaは共和党系コンサルティング企業のTargeted Victoryを使ってTikTokに対する大衆の反感をあおったという。Targeted Victoryが危険なクチコミトレンドがTikTokで始まったと主張して世論に影響を与えようとしたが、それは実際にはFacebookで始まったものだったというケースもあった。TechCrunchも2018年に、FacebookがTargeted Victoryと組んでFacebookプラットフォームの政治広告費に影響を及ぼす法案の進行を遅らせようとしたことを報じた

Targeted VictoryのCEOであるZac Moffatt(ザック・モファット)氏は声明で「Targeted Victoryの企業活動ではクライアントに代わって両党のチームに対応しています。我々が数年間にわたってMetaと協力しているのは広く知られていることで、我々はこれまでの仕事を誇りに思っています」と述べた。

いずれにしても、アプリを10代にとって安全なものにするためにペアレンタルコントロールにできることは限られている。アプリそのものが、危険なコンテンツを10代に提供しないように努めなくてはならない。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Kaori Koyama)

NFTやDeFiにとっても逆風?米国のステーブルコイン規制の最新情勢と論点整理

NFTやDeFiにとっても逆風?米国のステーブルコイン規制の最新情勢と論点整理

編集部注:この原稿は千野剛司氏による寄稿である。千野氏は、暗号資産交換業者(取引所)Kraken(クラーケン)の日本法人クラーケン・ジャパン(関東財務局長第00022号)の代表を務めている。Krakenは、米国において2011年に設立された老舗にあたり、Bitcoin(ビットコイン)を対象とした信用取引(レバレッジ取引)を提供した最初の取引所のひとつとしても知られる。

今や220兆円を超える市場に成長した暗号資産ですが、2022年、業界全体を揺るがしかねない問題として注目されているのが、ステーブルコインに関する規制です。ステーブルコインに対して厳しい規制がかけられれば、最近ブームとなっているNFT(ノン・ファンジブル・トークン)やDeFi(分散型金融)にとっても逆風になるという見方もあります。

本稿では、クラーケンの本社がある米国におけるステーブルコイン規制の最新情勢と論点の整理を行います。

そもそもステーブルコインとは?

ステーブルコインは、暗号資産エコシステムにおける潤滑油的な存在です。ビットコイン(Bitcoin)のような資産性はありませんが、機関投資家が暗号資産取引を行うときに入れる担保であったり、NFTやDeFiといった新たなサービスにおける決済や担保手段として使われています。

代表的なステーブルコインは、米ドルと連動するUSDT(テザー)とUSDC(USDコイン)です。ブロックチェーンデータ企業CoinMetricsによりますと、ステーブルコイン市場は1400億ドル(約21兆円)。そのうちUSDTとUSDCは90%近いシェアを持っています。

NFTやDeFiにとっても逆風?米国のステーブルコイン規制の最新情勢と論点整理

ステーブルコインの市場規模

「銀行並み」の規制

2021年から米国ではステーブルコインに対する規制の必要性を訴える声が多く聞かれるようになりました。例えば、米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長は、2021年9月、ステーブルコインについて「ポーカーのチップのようなもの」と独特の表現でリスクに警鐘を鳴らしました

そして2021年11月、大統領直下の金融市場ワーキンググループ(PWG)がステーブルコインに関するレポートを公開してから、規制をめぐって雲行きが怪しくなりました。PWGのレポートは、米議会議員に対してステーブルコインの発行体を「銀行のような機関」として規制する法律を通すように提案しました。その中で特に注目されているのが、保険加入金融機関(IDI)のみにステーブルコインの発行を許可するという部分です。

2022年2月、PWGレポートの主な執筆者である財務省の幹部が、上院の公聴会で、ステーブルコイン発行体に対する銀行並みの規制案に関して、柔軟に対応すべきであると発言し、これまでのスタンスから軟化したといわれていますが、詳細は明らかになっていません。

暗号資産業界の反応

2021年11月のPWGレポート公開後、米国の暗号資産関連の業界団体ブロックチェーン協会(Blockchain Association)は、すぐにPWGレポートの分析レポートを公表しました。同協会は、ステーブルコインの流動性の向上や担保となる資産の証明といった観点から規制を歓迎する一方、ステーブルコイン発行体を保険加入金融機関として規制することには明確に反対しました。理由として、数多くのステーブルコインがある中で特定のステーブルコインを規制面で優遇することになること、大手銀行などが競争上の優位性を持ってしまうことを挙げています。

「そのような規制はイノベーションを窒息させて、新しいステーブルコインプロジェクトが米国に来なくなり、現在のフィンテック企業に対する規制の流れと逆行することになるだろう」

この他、PWCによる規制案は「ステーブルコイン発行体に必要不可欠な活動をするすべてのエンティティ」も規制の対象としていますが、同協会は、この定義はあいまいであり、「マイナーやソフトウェア開発者」も含まれてしまうのではないかと懸念しています。

クラーケンは、ステーブルコイン規制の動向を注視しています。グローバル市場でUSDT、USDC、DAI、PAXGという4つの主要ステーブルコインを取り扱っており、ステーブルコインの暗号資産市場における役割の大切さを実感しています。ブロックチェーン協会同様に、「古いルール」を新しい市場に無理矢理導入するといったような拙速な対応はするべきではなく、まずはステーブルコインついて正しく理解することが先決と考えています。

また、米国以外で英国やEUでもステーブルコインの規制が検討されていますが、国ごとに異なるルールと基準が設けられる「つぎはぎの規制」を避けるため、国際的な協調関係の強化が重要になるとクラーケンは考えています。

2021年末から日本でもステーブルコインの発行体に対する規制について議論があり、2022年の通常国会に資金決済法改正案の提出を目指すと報じられ、2022年3月に入り実際に提出されました。ただ、米国をはじめ世界各国では規制当局と業界側の対話が続いている状態であり、日本でもステーブルコインの発行体や暗号資産交換業を含む様々なステークホルダーの意見を取り入れて議論を続ける必要があると考えています。

画像クレジット:Tezos on Unsplash
CoinMetrics

米証券取引委員会が企業に気候変動に関する目標や温室効果ガス排出量の開示を義務づける新規則を提案

米証券取引委員会(SEC)が提案した新しい規則は、上場企業に自社が排出する温室効果ガスの開示を義務づける。これはバイデン政権が、気候変動リスクを特定し、2030年までに排出量を52%も削減するという目標を達成するための取り組みの一部だ。SECの3人の民主党委員はこの提案を承認したが、共和党委員のHester M. Peirce(ヘスター・M・パース)氏は反対票を投じた

「私は本日の提案を喜んで支持します。なぜなら、この案が採用されたら、投資家が投資判断をする際に、一貫性があり、比較可能で、意思決定に有用な情報を提供できるようになり、そして上場企業にも一貫性があり、明確な報告義務を与えることになるからです」と、SECのGary Gensler(ゲーリー・ゲンスラー)委員長は述べている。

この新規則の下では、企業は気候変動リスクが自社の事業や戦略にどのような影響を与えるかを説明しなければならなくなる。企業が排出するCO2を公表することが求められ、大企業はその数値を独立したコンサルティング会社に確認させる必要がある。また、仕入先や顧客からの間接排出が、自社の気候目標にとって「重要」な場合は、その排出量を開示する必要もある。

さらに、カーボンフットプリントの削減を公約している企業は、その目標を達成するための計画を説明する必要がある。これには植林などのカーボンオフセットの利用も含まれるが、Greenpeace(グリーンピース)が最近の報告書で述べているように、実際の排出量削減の代用にはならないとの批判もある。

SECはすでに自主的な排出量ガイダンスを考慮しているが、新規則はこれを義務化するものだ。Ford(フォード)などの多くの企業はすでに、工場の生産過程における排出ガスから、販売した自動車の燃料消費量まで、排出量データを公開している。しかし「義務化されないとやらない企業もたくさんある」と、気候関連財務情報開示タスクフォースのチーフを務めるMary Schapiro(メアリー・シャピロ)氏は、報告書の発表に先立ち、The Washington Post(ワシントン・ポスト紙)に語っている。

この規則案がSECのウェブサイトで公開された後、一般市民は60日の間にコメントを出すことができる。最終的な規則は数カ月後に投票で採用が決まると、数年かけて段階的に導入されることになりそうだ。これに対し、ウェストバージニア州などの共和党員は、企業団体とともに、近い将来において気候変動は投資家にとって重要な問題ではないとして、法廷で争うことになる可能性がある。

しかしながら、専門家たちは時間が非常に重要であると警告している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は最近、地球温暖化の影響の多くは「不可逆的」であり、最悪の事態を回避するための時間はわずかしかないとする報告書を発表した。Antonio Guterres(アントニオ・グテーレス)国連事務総長は、この報告書を「気候変動に関するリーダーシップの失敗を痛烈に非難するもの」と呼んだ。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のSteve Dent(スティーブ・デント)は、Engadgetの共同編集者。

画像クレジット:Luke Sharrett/Bloomberg / Getty Images

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(文:Steve Dent、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ホワイトハウスが暗号通資産に関する大統領令を発表

バイデン大統領のホワイトハウスが米国時間3月9日に、暗号資産の規制に関する新しい大統領令を発表しました。大統領令は基本的に、政府が消費者保護のバランスを取りながら、米国がこの分野のイノベーションのための空間であり続けることを保証する計画について幅広い戦略を打ち出している。

政府の強力な介入を懸念していた業界人にとって、この大統領令の言葉遣いは、バイデン政権が包括的な短期の改革には関心がなく、むしろ暗号資産産業の国防にとっての含意の調査と観察で全省庁が確実に歩みを揃えることを重視していると映るだろう。

ホワイトハウスが発行したファクトシートでは「デジタル資産の登場で、世界の金融システムと技術の最前線における米国のリーダーシップを強化する機会が生じている。しかしそれはまた、消費者保護と金融の安定性、国防そして気候の危機に関する重要な意味も持っている」と述べている。

この大統領令のプレスリリースは、7つの主要目標を詳しく挙げている。

  • 米国の消費者と投資家と企業を保護する
  • 米国と世界の金融の安定を保護し内在的なリスクを軽減する
  • デジタル資産の不法な使用による金融と国防の不法なリスクを軽減する
  • テクノロジーと経済的競争力における米国のリーダーシップを増進し、世界の金融システムにおける米国のリーダーシップを強化する
  • 安全で誰もが利用できる金融サービスへの公平なアクセスを振興する
  • 技術の進歩を支援しデジタル資産の責任ある開発と利用を確保する
  • 米国の中央銀行デジタル通貨(U.S. Central Bank Digital Currency、CBDC)の検討

暗号資産技術の投資家はこぞって安堵の吐息を漏らしたかもしれないが、この分野に対して厳しく批判的だったElizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)氏などは、納得しなかったかもしれない。最近ウォーレン氏は業界を批判し、特に暗号資産の環境への影響と、いわゆるステーブルコインの発行者とDeFi(分散化金融)のエコシステムのプレイヤーに対する緩い規制がもたらす、投資家のリスクへの注意を促している。

この大統領令に関するホワイトハウスのコミュニケーションは概して、特定のコインやプロジェクトへの言及を、Bitcoinの価格の乱高下を除いては避けているようだ。またDeFiやNFTのような、特定の技術分野への言及もない。

一部の業界人が特に気にしていたのは、裕福なロシアのエリートが制裁を逃れるために暗号資産を利用して取締りを招くことだが、報道陣向けの説明会に登場した某政府高官は「特にロシアでは、暗号資産の利用が、我々がロシア経済全体およびその中央銀行に科した一連の金融制裁に対する有効な回避策になることは考えられない」とそのその可能性を否定した。。

今回の大統領で特に目立つのは、いくつかの政府省庁に対して公式に、国定の暗号資産(CBDC)の開発に関する調査研究の開始を指示していることだ。これについてホワイトハウスの高官は「この調査研究は、国際的な参加と競争性に関して我々が今後開発するフレームワークとともに、世界の金融システムにおける米国の重要な役割を私たちが確実に保全することを支えるだろう」と述べている。

ホワイトハウスによると、バイデン大統領はこの大統領令に本日、米国時間3月9日に署名する。

画像クレジット:撮影:Al Drago/Bloomberg, Getty Imagesより/Getty Images

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

バイデン大統領がソーシャルメディアのメンタルヘルスへの影響について訴え、一般教書演説で

ホワイトハウスは、バイデン大統領による初の一般教書演説に先立ち、米国におけるメンタルヘルスの危機に取り組む計画を発表し、特にソーシャルメディアが子どもや10代の若者に与える影響について強調した。この問題は、一部の議員の間で重要視されている。特に、内部告発者のFrances Haugen(フランシス・ホーゲン)氏がFacebook(フェイスブック、現在はMeta)に不利な内部文書を大量にリークした後はそうだ。内部文書には、10代の若者への悪影響を同社が認識している証拠も含まれていた。

ホワイトハウスによると、バイデン大統領は議会に対し、プライバシー保護の強化、子どもへのターゲット広告の禁止、テック企業による子どもの個人情報収集の停止を要請する。

一般的に、一般教書演説でテック企業が重要な役割を果たすことはない。バイデン大統領が米国3月1日夜、ロシアのウクライナ侵攻に関するより差し迫った危機を考慮し、言及さえしない可能性もある。とはいえ、大統領はソーシャルメディアのプラットフォームに対し、若いユーザーの安全を守るよう呼びかけている。ファーストレディのJill Biden(ジル・バイデン)博士がホーゲン氏を特別ゲストとしてこのイベントに招待したことは、ソーシャルメディア幹部に対する5回にわたる上院公聴会のきっかけとなったホーゲン氏の主張に、大統領が注目していることを示している。

「大統領は、子どものデータとプライバシーの保護をはるかに強化すべきと考えているだけでなく、プラットフォームやその他の双方向デジタルサービス提供者は、製品やサービスの設計において、利益や収益よりも、子どもや若者の健康、安全、幸福を優先させ確保すべきだと考えています」。ホワイトハウスのブリーフィングには、こう書かれている。

この文言は、ホーゲン氏が議会に登場した際に使っていた言い回しを彷彿とさせる。同氏は「60 Minutes」のインタビュー以来、元社員としての立場から、Facebookは安全性よりも利益を優先していると繰り返してきた。

大統領はまた、ソーシャルメディアが私たちにどのような害を及ぼすのか、およびその害に対処するためにどのような臨床的・社会的介入が可能かについての研究に、少なくとも500万ドル(5億7500万円)を投資する計画の概要を示した。また、米保健福祉省は「ソーシャルメディアとメンタルウェルネスに関する全米センター」を立ち上げ、10代のソーシャルメディア利用がもたらす影響について一般市民に啓蒙していく予定だ。

バイデン大統領はまた、子どもたちを対象とした過剰なターゲット広告やデータ収集を禁止するよう議会に要求する見通しだ。2000年に施行された児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)は、13歳未満のユーザーの追跡やターゲティングを制限することを目的としているが、プラットフォームがユーザーの年齢を認識していることが証明されない限り、この法律を適用することはできない。つまり、子どもが「はい、私は13歳です」というボックスをクリックするだけで、子ども向けではないコンテンツにアクセスできてしまうため、COPPAは簡単に適用できないことが多い。

すでに一部の議員は、COPPAをより効果的なものにするためにアップデートを試みている。Ed Markey(エド・マーキー)上院議員(民主党、マサチューセッツ州)とBill Cassidy(ビル・キャシディ)上院議員(共和党、ルイジアナ州)は2021年、インターネット企業が13〜15歳のユーザーの個人データを本人の同意なく収集することを違法とする法案を提出した。この法案はまた「消去ボタン」を設け、ユーザー(またはその親)が、企業が収集した自らに関するデータを手動で消去できるようにするものだ。

「消去ボタン」のコンセプトは、Richard Blumenthal(リチャード・ブルメンタール)上院議員(民主党、コネチカット州)とMarsha Blackburn(マーシャ・ブラックバーン)上院議員(共和党、テネシー州)が最近提出した「Kids Online Safety Act(KOSA)」にも登場する。2021年10月には、YouTube(ユーチューブ)、TikTok(ティクトック)、Snap(スナップ)の代表者が上院の公聴会で、親が自分の子どもや10代の若者のオンラインデータを消去できるようにすべきだという意見に同意した。

ホワイトハウスのブリーフィングでは、アルゴリズムが選ぶコンテンツが、特に若い有色人種の女性の間で、メンタルヘルスに悪影響を与える可能性があることも取り上げている。

「『黒人の女の子』、『アジア人の女の子』、『ラテン系の女の子』と検索すると、ロールモデルやおもちゃ、アクティビティではなく、ポルノなどの有害なコンテンツが並ぶことがあまりにも多い。プラットフォームは、子どもたちが何が可能かを理解し、アクセスする機会に方向性を与えます」と報告書は述べている。「私たちは、プラットフォームやその他のアルゴリズムによって強化されたシステムが、差別的に子どもたちを標的にすることがないようにしなければなりません」。

ここ数年、ホワイトハウスがこのブリーフィングで説明したような問題を解決することを目指す法案がいくつか議会を通過したが、ほとんどは可決されるに至っていない。法案が成立するほどの勢いになっても、意図したことが達成されないこともある。トランプ前大統領は2018年「オンライン性的人身売買対策法(FOSTA)」に署名し、法制化した。その名の通り、人身売買を抑制するための法律だったが、かえって合意の上で働くセックスワーカーにとって、より危険な状況を作り出しただけだった。

バイデン大統領は、研究に500万ドル(約5億7500万円)を投じ、ソーシャルメディアとメンタルウェルネスに関する全米センターを設立したが、ソーシャルメディアとメンタルヘルスに関するコメントは、長年にわたって議会で議論されてきたことを繰り返したに過ぎない。しかし、これらのメッセージから、大統領が少なくとも、米国人のオンラインでの生活にいくらか注意を払っていることがわかる。

バイデン大統領は一般教書演説で、ソーシャルメディアの巨人に関する計画を示唆した。

「パンデミック以前にも、子どもたちは苦労していました。いじめ、暴力、トラウマ、そしてソーシャルメディアの害。今夜ここにいるフランシス・ホーゲン氏が示したように、我々はソーシャルメディアプラットフォームが利益のために子どもたちに対して行っている国家的な試みに対して責任を負わせなければならないのです。今こそ、プライバシー保護を強化し、子どもへのターゲット広告を禁止し、テック企業に子どもの個人情報収集をやめるよう要求するときです」。

また、ホーゲン氏は演説後、バイデン大統領の発言についてコメントした。

「バイデン大統領が一般教書演説でこの問題を提起し、これにより我々がソーシャルメディアが子どもたちの精神衛生に与えている真実の暴露を続け、この恐ろしい現実を変えるためにすべての関係者に力を与えられることに感謝しています」とホーゲン氏は報道機関にメールで送った声明で述べた。声明はTwitter(ツイッター)にも投稿された。「FacebookとInstagram(インスタグラム)は、私たちを中毒にし、また子どもと私たち自身の最悪の事態を増幅させるために設計された欠陥商品です。彼らは私たちの子どものメンタルヘルスを犠牲にして利益をあげているのです」。

【更新】3月2日米国東部時間午前9時20分、バイデン大統領とフランシス・ホーゲン氏の言葉を盛り込んだ。

画像クレジット:Al Drago/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

半導体製造大手の台湾TSMC、インテル、AMDがロシアへの半導体販売を停止―ウクライナ侵攻をめぐる制裁として実施

半導体製造大手の台湾TSMC、インテル、AMDがロシアへの半導体販売を停止―ウクライナ侵攻をめぐる制裁として実施

Eason Lam / Reuters

ウクライナ侵攻をめぐる米バイデン政権の制裁実施を受けて、半導体製造大手のTSMCとインテルおよびAMDの3社がロシアへの販売を停止したと報じられています。

すでにApple PayやGoogle Payといった米国拠点のデジタルウォレットは、現地の主要銀行口座と紐付けられているものに関しては機能を停止しています。今回の措置は、米国の対ロシア制裁が半導体メーカー、とりわけTSMCにまで広げられたかっこうです。

米The Washington Postによると、TSMCはロシアへの直接販売と、ロシアに製品を供給しているサードパーティへの販売を両方とも停止したとのことです。TSMCが制裁条件を完全に遵守するために調査している間、販売を止めたとの匿名情報筋の話も伝えられています。

またTSMC公式にも「発表された新しい輸出管理規則を遵守することに全力で取り組んでいる」との声明が出されています。

TSMCはiPhone用のAシリーズチップやiPad/Mac用のMシリーズチップ製造で知られています。その一方でロシアで設計され、ロシア軍や治安機関で使われている ELBRUSブランドのチップも製造しているため、その販売停止はとても重要といえます。

TSMCのほか、インテルやAMDなどもロシアに半導体の販売を停止しているとのことです。SIA(米国半導体協会/インテルやAMDも参加)はWashington Post紙に「ウクライナで展開されている深く憂慮すべき出来事を受けて」すべての会員が規則を「完全に遵守することを約束する」と述べています。

またSIA会長のジョン・ニューファー氏は「ロシアへの新ルール(輸出管理規則)の影響は大きいかもしれない」ものの「ロシアは半導体の重要な直接消費者ではなく、世界のチップ購入の0.1%未満にすぎない」とも指摘しています。半導体製造メーカーにとっては大した痛手にならない一方で、ロシア軍の動きや兵站を制約するものとして、しっかりと守られることになりそうです。

(Source:The Washington Post。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

ウクライナ侵攻に対する経済制裁により、ロシア国内でApple PayやGoogle Payなどが利用停止

ウクライナ侵攻に対する経済制裁により、ロシア国内でApple PayやGoogle Payなどが利用停止ロシアのウクライナ侵攻を受けて、米国政府およびEUはロシアの大手銀行5行に対して外国為替取引の制限を含む経済制裁を実施しました。その結果、現地の主要銀行口座と紐付けられたApple PayやGoogle Payなどのデジタルウォレットがロシア国内で利用停止となったと伝えられています。

ロシア中央銀行は25日、制裁対象となった銀行の顧客は海外でカードを使用できなくなり、制裁を支持する国に登録されている企業のオンライン決済ができなくなると発表しました。

公式声明によると、影響を受ける銀行はVTBグループ、ソブコムバンク、ノビコムバンク、プロムスヴィヤズバンク、オトクリティの5つ。これら5つの銀行が発行するカードは、Apple PayやGoogle Payで使えなくなったと指摘しています。

なおロシアの顧客は、ロシア国内では物理的なカードを使って非接触決済を行うことができるとのこと。現時点では、上記の5行と紐付けられたApple PayとGoogle Payの決済は同国内で無期限で停止されており、再開のめどは立っていません。

今回のできごとは、あくまで「Apple PayとGoogle Payと取引ある地元銀行が経済制裁の対象となった」ためです。しかし米バイデン政権は追加制裁として半導体などハイテク製品の輸出規制も決定しており、その範囲がうわさ通りソフトウェアや通信プロトコルにも及べば、ロシア国内でApp StoreやGoogle Playストアが使えなくなる事態もあり得そうです。

(Source:Bank of Russia。Via BusinessInsiderEngadget日本版より転載)

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Egor Lyfar on Unsplash

米国郵便公社が次世代配送車にガソリン車を選択、EV派のバイデン大統領はがっかり

米国郵便公社(U.S. Postal Service、USPS)は最初の計画どおり、同公社の郵便配達車隊の車両の90%を更新し、Oshkosh Corp.のガソリン車を採用する。

この決定は、バイデン政権の希望を打ち砕く。政権はこの独立機関を説得して、ほとんどが電気自動車で構成される車隊に変えるよう望んできた。また少なくとも短期的には、推計で合計60億ドル(約6933億円)となる契約の一部を、いかなるEVメーカーといえども手にする機会はない。郵便公社は環境保護庁のコメントを検討して、同公社の次世代配達車両事業が環境に及ぼす影響を評価し、その決定の最終決裁をした。その概要は384ページの文書で発表された。

その承認された事業では、USPSはウィスコンシンのOshkoshから5万台から16万5000台の郵便トラックを購入する。そして10%は電気自動車になるが、圧倒的多数の最大90%まではガソリン車になる。

USPSの総裁でCEOのLouis DeJoy(ルイス・デジョイ)氏は、声明で次のように述べている。「この問題の検討に際して、現状の古い車隊および私どもの脆弱な財務状況と、車両と安全性の緊急の必要性を考慮して、電気自動車の車隊を採用することは高望みだと判断された。私たちの財務的位置づけが、現在進んでいる10年計画、Delivering for America(米国のための配達)の進捗により改善されていけば、内部的または議会筋よりの新たな資金調達により、電気自動車のさらなる追求を継続できるだろう。

しかしながら車隊の更新は、待ったなしのプロセスであり、米国郵便公社の社員は男女を問わず、安全できれいな車両により私どもの普遍的なサービス義務を満たし、1週間に6日、すべての天候と地域の1億6100万の住所への配達を行えることを、もう待ちきれないほど待っていた」。

USPSによると同公社が選んだOshkoshの代替車両は、最も実用性が高いと判断された。なぜなら、バッテリー駆動の電気自動車は総保有コストがガソリン車よりも高いからである。USPSによると、同公社が新たな車隊の電気自動車の比率を10%に抑えたのは、そのためだ。

この決定は、バイデン政権とElectrification CoalitionなどのEV推進団体から非難された。

Electrification CoalitionのBen Prochazka(ベン・プロチャズカ)理事長は「USPSがその不透明で欠陥のある環境影響分析に対する正当な批判を無視し、ほとんどがガソリン車の新たな車隊を選んだことは、失望を通り越している」と述べている。

USPSは、2015年に新車両の探索を開始した。この次世代車両は人間工学的な改良が為され、エアコンと暖房を備え、360度カメラや最新のブレーキ、トラクションコントロール、エアバッグ、フロントとリアの衝突回避システムでビジュアルと音声の警告があるもの、そして自動ブレーキなどの安全技術を装備している必要がある。また、積載量も前より大きくなければならない。

2021年、USPSはOshkosh Defenseと契約したことを発表した。EVスタートアップでトラブルがあった上場企業Lordstown Motorsは契約を失った

画像クレジット:USPS

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

バイデン大統領の民主主義サミットのコミットメント拡大にはパートナーシップが鍵となる

TechCrunch Global Affairs Projectとは、ますます複雑に絡み合うテクノロジー分野と世界政治の関係性を検証するためのプロジェクトである。

バイデン米大統領は2021年12月、100カ国を超える国々の首脳を招き、待望のバーチャル民主主義サミットを開催した。1年間の協議、調整、行動の後、これらの指導者たちは再び2回目のサミットに集まり、人権尊重の促進、権威主義への対抗、腐敗との戦いへの1回目のコミットメントの進捗状況について報告した。

旧ソ連出身の私は、このサミットに楽観的な思いを持たずにはいられなかった。ごく幼少の頃でさえ、表現や言論の自由が制限され、情報や生活のほぼすべての側面が国家や選ばれた少数の権力者により大きく支配されている場所に住むことから生じる冷たさを感じていた。この個人的な経験は、米国市民であることに感謝の気持ちを抱かせる。一方で、権威主義体制の下で暮らした経験から、このサミットが開催されている理由、つまり世界中で起こっている民主主義の後退に非常に神経質になっている。

この民主的競争において、技術ほど重要な領域はないだろう。首脳たちがサミットの3つの柱を前進させることを望むなら、技術が民主主義と人権に貢献することを確保する必要がある。これには、デジタル権威主義に対抗する方策としてのオープンインターネットと重要なインフラへの投資の促進、偽情報への対処、社会的レジリエンスの強化、そして民主主義的価値観と多様性に調和する先端技術およびテック系起業家精神への投資の増進が含まれる。

報道によると、インターネットの強化、メディアリテラシーと市民教育のための資金の増強、二重使用技術の輸出規制の実施などに向けたイニシアティブ実行へのコミットメントが表明される可能性が高い。これらはすべて有用なステップである。しかし、サミットを超えて存続していくには、真に実行し、規模を拡大するために、官・民・市民のパートナーシップが必要となる。ここでは、私たちが共有すべき留意に値する3つの領域を取り上げたいと思う。

第1に技術の規制、検閲、輸出を通じ、国内的に市民を抑圧する目的で技術を利用するデジタル権威主義は、世界的に蔓延する問題となっている。先駆的な国家管理インターネットを構築している中国や、インターネットインフラ、オンラインコンテンツ、プライバシーに対する統制を強化し続けているロシアはその最たる例である。さらに、このような権威主義形態をアフリカや中南米など世界の他の地域に輸出することで、これらの国は民主主義国と権威主義体制との間の「システム競争」を助長している。

この進化する脅威に対抗するために、民間セクター、市民社会、政府が協働できることは多く存在する。具体的には、抑圧的な技術の輸出管理を強化しながら、新興市場における重要なインフラを共同で開発することが挙げられる。地方レベルで言えば、米国とその同盟国は、特に周縁化されたコミュニティに焦点を当て、インターネットへのアクセスを増やし、インターネットの自由を促進することに取り組むべきである。市民社会においては、政府と民間セクターの双方の説明責任が維持されるように、地域の規制と慣行を支持する声を上げる必要がある。多国籍企業も、事業展開する国で人権評価を行うことで、自らの力を有効に活用し、人権侵害に加担したり、意図せず独裁政権の商慣行を助長したりしないことを保証するべきである。

第2に、虚偽と半真実の意図的な拡散である偽情報は、世界の民主主義にとって深刻な脅威であり続けている。近年、選挙や新型コロナウイルス関連の偽情報が、ソーシャルメディアプラットフォーム、メインストリームメディア、そして信頼できるネットワークを通じ、米国および世界中で山火事のように広がっていくのを私たちは目にしてきた。ロシア中国イラン、および国内の当事者は、カオスと混乱を引き起こすだけではなく、2021年1月6日の暴動の際に見られたように、深刻な損害をもたらす偽情報キャンペーンを展開している。さらにこうした偽情報キャンペーンは、女性や少女、LGBTQ+コミュニティやジャーナリストを含む周縁化されたコミュニティに対するヘイト的なレトリックにまで広がっている。これは、今後1年間に政府、民間セクター、市民社会が自らのコミットメントに基づいて行動すべき、また行動しなければならない領域の1つである。そうしなければ、民主主義国は、オンラインでもオフラインでも、情報汚染に対処することなどできないであろう。

その方法はいくつかある。私が所属していた超党派の組織、Task Force on the U.S. Strategy to Support Democracy and Counter Authoritarianism(民主主義と反権威主義を支援する米国の戦略に関するタスクフォース)は、情報環境における信頼を築く目的で、Global Task Force on Information Integrity and Resilience(情報の完全性とレジリエンスに関するグローバルタスクフォース)の設立を提唱した。私たちの提案の根底には、このタスクフォースは志を同じくする国々のリーダーによって主導されるかもしれないが、民間セクターと市民社会の両方が強固な関与を確保すべきであり、これらの脅威を予測し、先手を打って対抗するために協働して、偽情報、オンラインヘイトおよびハラスメントに関する情報を共有していくことが重要であるという信念が置かれている。最終的な目標は、長期的な社会的レジリエンスを構築することにある。

第3に、民間セクターと市民社会は、政府とのパートナーシップに投資して規模の拡大を図り、資本を越えて市民に届くような形で、既存および新興の民主主義国におけるデジタルとメディアリテラシー、市民教育に関するイニシアティブを実行しなければならない。同時に、2022年に向けて、民間セクター、とりわけデジタルプラットフォームやメインストリームメディアは、信頼性が高く質の高い情報を市民へ提供することに一層の努力を払う必要がある。アルゴリズムバイアス、データの悪用、悪意あるコンテンツ拡散の防止を目的とした、デジタルプラットフォームの透明性と説明責任の向上に関する提案が数多くなされている。究極的には、可能な限り最高の情報エコシステムを構築していく上で、これらの原則は市民、コンテンツプロバイダー、政府、業界の間に信頼を築くことにつながるものである。

人工知能、機械学習、自然言語処理などの先端技術への多額の投資がなければ、こうした脅威への対策に目立った変化をもたらすことはできないであろう。脅威を特定して顕在化させ、そのインパクトを把握することへの投資は、米国や欧州に限定されるものではない。スタートアップがこれらの技術を開発する際には、自分たちのプロダクトが安全に新興市場に拡大できることを確保すべきである。

新興市場におけるイノベーションと起業家精神の促進は、民間セクターと市民社会が政府と協働する有意義なオポチュニティが存在する最後の領域である。イノベーションと起業家精神が経済成長を生み出すことが研究で示されており、これは技術セクターにも当てはまる。発展途上国に権威主義的な技術を予防する接種措置を行う最も確実な方法は、次世代の人材、特に若者、女性、少女、その他の周縁化されたコミュニティに投資することである。自国にもたらされる権威主義的な脅威に先端技術を使って対抗できる、確かな地域の声、起業家、イノベーターを育成することは、私たちが求める成果に到達するための最善の方法かもしれない。

技術に関して言えば、私たちは民主主義的価値観と権威主義によって強要される生活様式との間で影響力を競っている。2021年のサミットは、意味のある民主主義復活への道を開くものだ。しかし行動と協議の年に入り、民主主義のための技術的アジェンダに必要な規模の拡大と実行を可能にするのは、官・民・市民のパートナーシップである。

編集部注:本稿の執筆者Vera Zakem(ベラ・ザケム)氏は、Institute for Security and Technologyのシニアテクノロジー・政策アドバイザーで、民主主義とテクノロジーに関する取り組みをリードしており、Zakem Global Strategiesの創設者でもある。2020年から2021年まで、超党派の「民主主義を支援し権威主義に対抗するための米国戦略に関するタスクフォース」のメンバーを務める。

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(文:Vera Zakem、翻訳:Dragonfly)

米国で1日早く家庭用新型コロナ検査キットの注文を受け付け開始

米国の人々は、予想より1日早く、米国郵政公社(USPS)のウェブサイトから無料の家庭用新型コロナ検査キットを注文できるようになった。先にバイデン政権は、米国時間1月19日から注文をすることができるようになると述べていた。発表の時点では、COVIDtests.govはプレースホルダ・サイトだった、現在はUSPSにユーザーを誘導して、そこで注文をするようになっている。

各家庭では、4種類の迅速抗原検査をそれぞれ1セットずつ申し込むことができる。USPSは2022年1月末からキットの発送を開始し、通常、注文から7日から12日以内に発送する予定だ。

CNNのホワイトハウス特派員Kaitlan Collins(ケイトラン・コリンズ)氏によると、このサイトはベータ版の一部として1日早く公開された。政府関係者は、サイトのトラブルシューティングを行い、1月19日の正式な立ち上げがスムーズに行われることを望んでいる。案の定、この記事を書いている時点では、サイトの読み込みに問題がある人もいるようで、すぐに注文ができないかもしれない。
COVIDtests.govのサイトでは、テストに関するいくつかの詳細な情報を提供している。30分以内に結果が出るはずで、どこでも受けられる。いつテストを受けるか、また、結果に基づいて何をすべきかについてのガイダンスも提供されている。また、検査会場や自宅での検査に対する保険の払い戻しに関する資料も掲載されている。

バイデン政権は、米国人に配布するために、家庭用の迅速な新型コロナ検査キットを10億個購入すると発表した。そのうちの半分は今週中に注文できるようになる見込みである。ホワイトハウスは、その目的は、特に検査の需要が高く、しばしば店頭で見つけるのが難しいことを考えると、誰もが必要なときに検査が利用できるようにすることであると述べた。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のKris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

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(文:Kris Holt、翻訳:Yuta Kaminishi)

【コラム】バイデン大統領は本当に技術独占を取り締まることができるだろうか?

ジョー・バイデン大統領は2021年7月、米国経済における「競争促進」の行政命令を出した。この命令の中で、大統領は特に大手テクノロジー企業に対して「現在、少数の有力なインターネットプラットフォームがその力を利用して、市場新規参入者を排除し、独占的利益を引き出し、自分たちの利益のために利用できる個人の秘密情報を収集している」と述べている。

米上院は11月、ハイテク企業の反競争的買収を規制する法案を提出した。米国ではこの20年間、重大な独占禁止法事案はなかったが、最近の勢いは、現政権が運用の透明化を望んでいることを示唆している。

これまでのところ、独占禁止法違反を適用するためには、ルールや市民の間に曖昧な領域があまりにも多かったが、アプローチへのいくつかの変更で、大衆の意見が、新しい政策、罰則、さらには起訴につながる可能性がある。

この1世紀の間に、独占禁止法はその効力を失い「消費者福祉」という曖昧な基準の下に、より大きな目標は放棄されてきた。1980年代に確立された独占禁止法適用の判断基準はすべて、疑惑の独占行為が消費者物価の上昇をもたらしたかどうかだけに還元されていた。

だが独占禁止法の運用を、こうした1つの経済的影響テストに帰すこの手法は、過度に単純化されていることが証明されている。独占禁止法に対するこの特異な消費者価格ベースのアプローチの擁護者たちは、現在の技術の価格低下が公正な競争が支配的であることの明白な証拠だと主張している。

技術独占の解体は容易ではないが、それは以下の3つのアプローチで実現できる。すなわち、反競争的なM&Aを阻止すること、政策を書き換えてデータを市場の力として位置付けること、そして市民が独占禁止政策に関心のある政治家を選ぶことができるようにこのトピックへの公共の関心を駆り立てることだ。

キラーM&A

非常に緩い金融政策が長期化し、株価が非常に高騰しているこの金融緩和の時代にあっては、将来の競争相手を高値で買い取ることが現在のビジネス戦略の一部となっている。

テクノロジーの世界には例がたくさんあるが、たとえばFacebook(フェイスブック)によるInstagram(インスタグラム)とWhatsApp(ワッツアップ)の買収は議論の余地のない例だ。過度の規制はイノベーションを殺すが、自由市場が公正で自由なままでいるためには規制が必要だ。

現行法では、9200万ドル(約104億4000万円)以上の取引は、ほとんど例外なく、審査のために米連邦取引委員会(FTC)と司法省(DOJ)に報告しなければならないと定められている。

バイデン命令の意図の1つが、M&Aに対する監視の強化であることを考えると、この先消費者は「競争を大幅に減少させる」取引を阻止するための法的措置を目にすることになるかもしれない。

提案された、特定の買収を阻止する法案は、これまでその濫用があったことを両陣営が認識している証拠だが、データの独占が反競争的だと広く考えられていない場合は特に、違反認定の基準は依然として高いままだ。FTCとDOJは、ビッグテックに対して独占禁止法を適用する能力を発揮できるようになる必要があるが、これは、今回の新しい法律でより適切に行うことができるだろう。

データ=お金=市場支配力

一部のテック大企業にとって、無料の製品を提供することは、その他の資産を蓄積するための秘密裏の戦略であることが判明している。特にその中には、無意識のうちに「無料」で使う顧客の個人情報が含まれていて、それらの資産は数十億ドル(数千億円)規模の莫大な利益をもたらしただけでなく、そうした資産の独占も行われている。検索エンジンマーケティングとソーシャルメディア広告はまさにこの方法で構築された。このようなデジタル資産は現在、他のすべての企業にマーケティング予算に対する税金として貸し出されている。これは市場支配力の明白な例である。

私たちはほとんどの産業で前例のない集中に出会っている。集中が高まっている産業の企業は、市場支配力をより容易に行使できるため、実際には投資を減らしてさえいるのだ。

しかし、少し天候が悪くなると、自分で規則を変える都合の良いときだけの友たちはチームをすぐに変えて、連邦準備制度がパンデミックの最中に市場を支えるために臆面もなく行った、複数の異常な市場介入を支持するだろう。

バイデンの大統領命令で歓迎されたのは、オンライン監視とユーザーのデータの蓄積に関する新しい規則を確立するようFTCに促したことだ。独占的なテクノロジーの巨人たちは、このゲームのルールをあまりにも長い間作り続けていて、騙されやすい議員たちの目を、笑えるような自己規制の誓いでくらましている。

データの大量収集と管理が市場支配力として適切に分類されるまで、正義の手段は消費者ではなくビッグテックの手に握られ続ける。この場合、新しい政策と法律は、国民の抗議の声が立法者を動かしたときのみ実現するだろう。

大衆意識の変化を

緩い独占禁止法の執行と緩い政策の影響を最も受けているのは、消費者と市民だ。個人情報が取り込まれたり、サービス料を払い過ぎることになったり、商品を選択できなかったりするという形で、独占は消費者の福祉を侵害する。しかし、消費者にできることはあるだろうか?

バイデンの大統領命令は、米国内の独占禁止法をめぐる世論の圧力の高まりを直接反映したものだ。同じことが新しい上院法案にも当てはまる。ますます民間企業たちは、選出された公務員が多くいる州裁判所で、独占に対して訴訟を起こすようになっている。

今はバカげているように聞こえるかもしれないが、独占禁止法は、政治家が挑戦しなければならない主要なトピックになる可能性がある。有意義な独占禁止政策改革は、政治団体によって選出された改革派によってもたらされる。そのため、独占禁止法の執行に対する意見に基づいて候補者を選出することは、現状を変えるために極めて重要である。

私たちは今、より強力な独占禁止法とプライバシー規制を必要としている。私たち市民のプライバシーと幸福が危機に瀕しているからだ。チャリティーのように、独占禁止法への取り組みは身近なところから始めなければならない(訳注「チャリティはまず身近なところから始めよ」という諺のもじり)。

関連記事:サードパーティーがユーザーデータを知らぬ間に収集する副次的監視の時代を終わらせよう

編集部注:著者のVijay Sundaram(ビジェイ・サンダラム)氏は、大手テクノロジー企業と競合しつつ、消費者のプライバシーをポリシーの最優先事項としているビジネスソフトウェア企業Zoho Corporation(ゾーホー・コーポレーション)の最高戦略責任者。

画像クレジット:Glowimages / Getty Images

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(文:Vijay Sundaram、翻訳:sako)

【コラム】米国特許商標局はイノベーションを推進するために今すぐ行動すべきだ

近年、発明を促進すべき米国の特許システムの乱用がはびこりイノベーションを阻止している。即刻刷新が必要であり、そこにはあらゆる規模のイノベーターと起業家のためにシステムが働くように変える「今すぐ」実行可能な決定的修正方法がある。

バイデン政権が米国特許商標庁(USPTO)長官に指名したKathi Vidal(カシー・ビダル)氏は最近、上院司法委員会で指名承認公聴会を行った。両党の上院議員(民主党のバーモント州選出Patrick Leathy[パトリック・リーヒ]氏と共和党ノースカロライナ州選出Thom Tillis[トム・ティリス]氏)がともにビダル氏に質問したのがNHK-Fintivルールに関連する問題だった。これは米国特許商標庁の前長官が強要したルールで、議会で承認された超党派法案と真っ向から対立する。NHK-Fintivとは、特許商標庁における専門家による透明な侵害請求レビュープロセスの利用を制限し、イノベーターが費用のかかる訴訟や和解に関与することを強要するものだ。

短時間の公聴会の中でこの質問が際だっていたことは、USPTOおよび米国にとってこの問題がいかに重要であるかを示している。就任が承認されれば、次期長官はほぼ間違いなくNHK-Fintivのさまざまな問題に取り組まなくてはならない。しかし、特許商標庁は待つべきではない。米国のイノベーターたちを守るために今すぐ行動を起こすことができるのだから。

10年以上前、米国発明法によって米国特許商標局における当事者系レビュー(IPR)プロセスが生まれた。IPRは、特許侵害申請が偏見のない専門家審査員による透明な方法で解決されることを可能にするもので、企業はしばしば根拠のない訴訟や和解に巨額の費用と時間を割く必要がなくなる。このレビューが極めて重要なのは、誰もが特許侵害申請に善意で携わっているわけではないからだ。近年、特許訴訟の 60%近くに、特許不実施主体(NPEs)、いわゆる「特許ゴロ」グループが関わっている。

特許ゴロはダミー会社(その多くをヘッジファンドなどの訴訟資金提供者が支援している)で、使われけていない広範囲の特許を買い取り、米国の真っ当なイノベーターたちに対する武器として使用する。特許ゴロには、購入した特許を使って価値ある物を作る意志が一切ない。自分たちの出資者のために、価値ある商品を作っている企業から判決と和解金をゆすり取るためだけに存在している連中だ。

我々Intelは、相当数の特許ゴロに直面している。しかしこれは大メーカーだけの問題ではない。ゴロたちは数千通もの同一の要求書を小さな会社に送りつけることを、まるでネットビジネスを運用するように日々行っている。彼らは、多くの小企業が高額な費用のかかる訴訟に関わることを避けて和解金やライセンス費用を支払うことを当てにしている。さらに、時折専門知識のない陪審員が都合の良い判決を下して大当たりクジを引くことも期待している。

特許ゴロ訴訟は米国企業に深刻な影響を与えている。標的にされた企業は、年間総額290億ドル(約3兆2931億円)の現金支出を強いられ、和解金の平均は650万ドル(約7億4000万円)に及んでいる。これは本来であればビジネスを成長させ、新たな労働力を雇い、研究開発に使われるべきだったものであり、費用と時間のかかる裁判に関われる会社は多くない。IPRプロセスはこの種の搾取行為に対する効果的な保護措置であった。

不幸なことに、米国特許商標局前長官がNHK-Fintivルールを強制した結果、状況は特許システムを乱用する者たちに有利な方向へと逆戻りしてしまった。NHK-Fintivの下では、係争中の訴訟がある場合、当事者系レビュー(IPR)は拒否され、侵害申請の内容すら吟味されない。これは、IPRによって無効な特許や侵害申請に高価な訴訟を減らすことを目的とした米国発明法を無視するものだ。さらに、ビダル氏の公聴会でリーヒ議員は、最近の分析によると、USPTOがこれらの「自由裁量による拒否」を発行する際に基づいていた公判期日の90%以上が不正確だったことを指摘した。

議会が意図したIPRプロセスを復活させるために、NHK-Fintivは破棄されるべきだ。これはビダル氏の承認プロセスが進行する中で今後も重要事項として扱われるべきだが、商務省と特許商標庁には、米国のイノベーターたちを守るために「今すぐ」行動を起こす権限がある。

彼らはこれ以上待つべきではない。特許ゴロが米国のイノベーターを食い物にする時期は1日たりとも延びてはならない。

編集部注:本稿の執筆者Steven R. Rogers(スティーブン・R・ロジャーズ)氏は、
Intel Corporation(インテル・コーポレーション)の執行副社長兼法務顧問。上級幹部チームに属し、同社の法務、政府および貿易グループを担当している。

画像クレジット:Supawat Kaydeesud / EyeEm / Getty Images

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(文:Steven R. Rogers、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【コラム】米議会はインフラ法案が暗号資産に与える影響を明確にしなければならない

先日、Joe Biden(ジョー・バイデン)米国大統領が署名した1兆ドル(約114兆円)規模のインフラ法案には、暗号資産取引に課税する条項が含まれており、これによって米国政府は年間約28億ドル(約3200億円)の税収を得ることになる見込みだ。

率直に言って、これは大した金額ではない。

問題は、この法律の暗号資産税の部分が明確に記されていないことだ。米国政府は急成長している経済の一部を潰してしまう恐れがある。

このインフラ法案では「ブローカー(仲介者)」に税務報告義務が課せられるとしている。しかし、ブローカーを介さなくてもスマートコントラクトを締結することはできる。その場合の報告義務は誰が負うのだろうか? 採掘業者がブローカーとみなされるのだろうか?

あるレベルにおいては、他の投資利益と同様に、暗号資産取引で得た利益に政府が課税するべきであることは疑いの余地がない。一般的には、暗号資産を清算するとき、あるいは譲渡するときだ。しかし、この法律の曖昧さは、取引プラットフォームが米国市民のアクセスを排除したり、あるいは単に小規模な暗号資産投資家が市場に参入または残留することを妨げる危険性がある。

以前にもこんなことがあった。FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)が施行された際に、一部の金融機関は、リスクと潜在的な利益に比べてコンプライアンス法の負担があまりにも大きいため、米国市民のサービス利用を拒んだのだ。

単純なものから複雑なものまで、考えなければならないシナリオをいくつか紹介しよう。

  • ビットコインを使って自動車を購入する場合、自動車を購入するためにビットコインを使った時点で課税されることになる。これは簡単なことだ。
  • 暗号資産取引所でドルを使ってEther(イーサ)を買った場合、どうやって課税するかを考えるのは簡単だろう。これもわかりやすい取引だ。
  • 他の人が購入するNFT(非代替性トークン)を保持するために、自分が使用しているスマートコントラクトに自分の暗号資産を転送する場合。物事はあっという間に面倒になり、個人が法人取引のような複雑な税金に対処するリスクが発生する。

その最低額は1万ドル(約114万円)で、これは銀行秘密保護法から引き継がれたものだ。この金額以下の取引には課税されないが、1万ドルというのは複雑な税務処理が必要になるにしてはかなり低い金額だ。

取引プラットフォームや投資家にとっては、税金の申告が大変なものになり、さらなる投資意欲を削ぐ可能性がある。それによって、最終的には課税が無意味になるか、少なくとも推定よりもはるかに少ない税収しか得られなくなるかもしれない。

そしてIRS(米国内国歳入庁)にとっては、これは複雑な監査対象となる可能性が高い。IRSには、IDとこれらの取引を結びつける方法が必要になる。これは、Coinbase(コインベース)のような取引プラットフォームではすでに行われているが、個人の採掘者は通常行っていない。

この法案で注目すべき点は、多くの税法は当初は問題があっても、時間の経過とともに明確になっていくことがほとんどだが、今回のインフラ法案はその逆を行っているように思えることだ。議会はまずインパクトのある数字(1.1兆ドル、約125兆6000億円)を提示し、それに見合うだけの税金を生み出す方法を探ろうとした。

これはいくつかの意味で異常なことだ。しかし、おそらく米国の現在の政治状況を示しているのだろう。これまでの政治家は、まず資金を供給したい具体的なプログラムを考え、そのコストをできるだけ小さくしようとしたものだ。今回は、どちらの政党も、自分の政党が政権を取ったときに、より多くの数を約束するために戦っていた。Trump(トランプ)元大統領は、2兆ドル(228兆円)規模のインフラ法案に取り組んだものの、結局それが法律として成立されることはなかった。

米国では政治的に少々奇妙な時代になっている。マイアミやニューヨークの市長をはじめ、さまざまな自治体の長が給与を暗号資産で受け取ることを提案している一方で、国レベルでは、連邦政府の長期的な計画における明確な指針はない。

最終的には、暗号資産は何らかのかたちで存続することになるはずだが、連邦政府は経済学者や研究者、暗号資産プラットフォーム開発者などの専門家と話をして、アプローチを真剣に考える必要がある。

編集部注:本稿を執筆したChristopher MortonはCognito(コグニート)のCOO。

画像クレジット:hamzaturkkol / Getty Images

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(文:Christopher Morton、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

バイデン大統領、ファーウェイやZTEなど国家安全保障上の脅威になりうる通信機器に対する規制強化法案に署名

バイデン米大統領、ファーウェイやZTEなどなど国家安全保障上の脅威になりうる通信機器から政府を保護する規制強化法案に署名

Barcroft Media via Getty Images

バイデン米大統領が、国家安全保障上の脅威になりうる通信機器から政府の「機器認可プログラムおよび競争入札プログラムによる通信サプライチェーン」を保護するための「Secure Equipment Act」に署名しました。この法律によってHuaweiやZTEといった米連邦通信委員会(FCC)の「対象リスト」に掲載されている企業に対してFCCは免許の発行や審査プロセスを実施できなくなります。

FCCコミッショナーのブレンダン・カー氏は「我々はすでにこれらの企業の機器が国家安全保障に受け入れがたいリスクをもたらすと判断しており、これは私が “ファーウェイの抜け穴 “と呼んでいるものを粛々と、適切に塞いでいるということだ」と述べました。

2020年にFCCはHuaweiとZTEを国家安全保障上の脅威とみなし、中国政府(中国共産党)と緊密な関係にあると確認しました。しかし、米国の連邦予算が関与しない部分においては、それら企業は依然として通信機器としてのライセンスを申請できる状態にあり、カー氏はその”抜け穴”をなくすために今回の法制定を呼びかけていました。FCCは2021年より19億ドルの予算を投じて、米国内の通信企業がHuaweiやZTEの機器をリプレースための補助金プログラムを実施しています。

今回のSecure Equipment Actの成立に対し、2社は記事執筆時点でコメントを出していませんが、2020年にはFCCが提出した法改正案に対しHuaweiが「見当違いかつ不当に懲罰的だ」としていました。

FCCは今回成立した法律以外にも、すでに機器に付与されているライセンスを取り消し可能にする新たな法律を提案しています。また先月には、FCCが国家安全保障上の懸念を理由としてチャイナテレコムの米国子会社の米国内事業許可を取り消すことを決議しています。

(Source:ZDNetEngadget日本版より転載)

バイデン政権が米連邦政府機関に数百のセキュリティバグ修正を指示

米国のBiden(バイデン)政権は、ほぼすべての連邦政府機関に対し、数百におよぶセキュリティバグを修正するよう命じた。それらの中には、10年ほど前に発見されたものも含まれている。

サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)から米国時間11月3日に発令された新たな拘束力のある運用指令では、連邦政府の各機関に対し、ネットワークに「重大な危険」をもたらすと認定された300以上のセキュリティ脆弱性を、6カ月間で修正するよう求めている。ただし、2021年に入ってから見つかったより新しいバグについては、わずか2週間しか修正するための期間が与えられていない。

CISAによると、これらのセキュリティバグは、2014年や2015年にさかのぼるものもあり、連邦機関を狙うサイバー犯罪者にとって「頻繁に攻撃のベクトル」になっているという。

The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)が最初に報じたこの指令は、ほとんどの連邦民間機関に適用されるが、軍が運営するネットワークや、国防総省や情報機関の下で運営されるネットワークについては、例外として別個に管理されることになっている。

連邦政府機関は、セキュリティパッチの展開など、サイバーセキュリティへの取り組みの主な管理を任されている。2015年以降、連邦政府機関はまず「重要な」セキュリティバグを公開後1カ月以内に修正することが義務付けられていた。2019年にはそれが拡大され、深刻度の高いバグの修正も含まれるようになった。

しかし、米政府の監視機関は、一部の連邦政府機関がいまだにサイバーセキュリティの基本的な知識を身につけていないと述べている。The Wall Street Journalによると、今回の指令に含まれるバグの多くは、これまで対象となっていなかったもので、一見影響が少ないように見えるバグでも、悪用されれば大きな損害や混乱を引き起こす可能性があることを暗に示している。

「この指令は、連邦民間機関が脆弱性管理を改善し、サイバー攻撃に対するリスクを劇的に減らすために、ただちに行動を起こすべき明確な要件を示しています」と、CISAディレクターのJen Easterly(ジェン・イースタリー)氏は述べている。

「この指令は各連邦民間機関に適用されますが、重要インフラ事業者を含む全国の組織が、同じ脆弱性を利用した攻撃の標的とされていることがわかっています。したがって、すべての組織がこの指令を適用し、CISAの公開目録に挙げられている脆弱性を優先的に緩和することが重要です」と、イースタリー氏はいう。

国家軍事委員会のサイバー小委員会のメンバーであるJim Langevin(ジム・ランゲヴィン)下院議員は、今回のCISAの指令について「ネットワークセキュリティの強化と連邦政府のサイバー衛生の向上に大きく貢献するだろう」と述べている。

画像クレジット:Busà Photography / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米小売大手が中国企業の防犯カメラを店舗から撤去、人権侵害を指摘され

米国の大手小売企業であるHome Depot(ホーム・デポ)とBest Buy(ベスト・バイ)は、中国の防犯ビデオ技術メーカーであるLorex(ロレックス)とEzviz(イージービズ)の製品を、人権侵害との関連性を理由に店舗から撤去した。

Home Depotは「当社は最高水準の倫理的な調達を行うことを約束しており、この件が明るみに出たとき、直ちにLorex製品の販売を中止しました」と、TechCrunchに送られてきた声明の中で述べている。同社はまた、Ezviz社製品の販売も中止したことを広報担当者が認めた。Best Buyは、LorexおよびEzvizとの「関係を打ち切る」と発表した。

Lowe’s(ロウズ)はコメントを控えていたものの、TechCrunchや防犯ビデオ関連情報サイトのIPVMからの問い合わせを受け、Lorex社製品を店舗の棚から撤去した。

LorexはDahua Technology(浙江大華技術、ダーファ・テクノロジー)の子会社であり、EzvizはHikvision(ハイクビジョン)のセキュリティ機器ブランドだ。中国に本社を置くDahuaとHikvisionは、ウイグル族のイスラム教徒が多く住む新疆ウイグル自治区で、中国が継続的に行っている少数民族の弾圧に関係した企業として、2019年に米国政府の経済ブラックリストに追加された

関連記事:ムスリム少数民族に対する人権侵犯に加担した8つの中国企業が米商務省の禁止リストに載る

米国政府によると、中国はウイグル人を監視するための監視機器の供給を、HikvisionやDahuaなどの技術系企業に大きく依存しているという。Biden(バイデン)政権は、新疆での人権侵害を「ジェノサイド(大量虐殺)」と呼び、中国のビデオ監視機器メーカーが、「ウイグル人やカザフ人などのイスラム系少数民族に対する中国の弾圧運動、独断的な集団拘束、ハイテクを駆使した監視の実行において、人権侵害や虐待に関与している」と非難した。

国連の監視団によると、中国当局は近年、100万人以上のウイグル人を収容所に拘束しているという。中国はこの疑惑を長い間否定してきた。

しかし、この制裁措置はDahuaやHikvisionの子会社であるLorexやEzvizには及ばず、また、連邦政府以外には適用されないため、現在も一般的に消費者はこれらの技術製品を自由に購入することができる。

先週までLorexは、Home Depot、Best Buy、Lowe’s、Walmart(ウォルマート)、Costo(コストコ)を5つの国内正規販売店として自社ウェブサイトに掲載していた

コメントを求められたLorexの広報担当者は次のように答えた。「2018年の買収以来、Lorexは当社の親会社について、小売店パートナーと完全に透明性を保ってきました。また、FCC(米国連邦通信委員会)の規則制定案に関する質問への対応も含め、当社は様々な規制やコンプライアンスの問題に関して、これらの企業の代表者と定期的に連絡も取っています」。

Lorexは、同社製品が撤去された後のフォローアップメールには応じていない。Lorexは自社のウェブサイトから大手小売企業5社のロゴを削除したものの、依然としてWalmart社を除く4社を同社の販売店として掲載している。

WalmartとCostcoは、LorexとEzvizの製品を引き続き在庫しているが、コメントの要請には応じていない。

世界ウイグル会議の会長であるDolkun Isa(ドルクン・エイサ)氏は、米国政府による強制労働防止や中国企業への制裁などの「意味のある行動」を歓迎しつつも、「弾圧をさらに進めることを直接支援している米国企業がまだ存在することは受け入れられない」と述べている。

Hikvisionは、TechCrunchとIPVMのコメント要求に応じていない。

編集部注:この記事は、防犯ビデオ関連情報サイト「IPVM」との協力で取材したものとなる。

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画像クレジット:Lorex / YouTube
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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アドビが米国の全従業員に12月8日までのコロナワクチン接種を義務付け、未接種の場合は無給休暇

アドビが米国の全従業員に12月8日までのコロナワクチン接種を義務付け、未接種の場合は無給休暇

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Adobeが、12月8日までに新型コロナウイルスのワクチン接種を義務付けるとして、米国の全従業員にメールを送信しました。これは、米国のバイデン大統領による大統領命令に従うためのもの。

バイデン大統領は9月、全ての連邦政府職員と契約職員、請負業者、医療関係者に12月8日までのワクチン接種を義務付けると発表しています。Adobeは米国政府との取引が多く、2021年3月には、50州すべてと提携しAdobe Experience CloudとAdobe Document Cloudでサービスのデジタル化を支援すると発表しています。このこともあり、政府と取引をするならワクチン接種が必須になると判断したようです。

なお、社内アンケートによれば、米国従業員の93.5%がすでにワクチンを接種済みか、接種過程にあるとのことです。ワクチン未接種の場合、無給休暇の扱いになるようですが、宗教的・医学的理由でワクチンを接種できない場合は考慮するとしています。

ワクチン接種の義務付けはAdobeに限ったことではなく、IBMでも同様の措置を発表済み。また、Googleも7月に出社するすべての従業員にワクチン接種を義務付けるとしています。Appleはワクチン接種を義務付けてはいませんが、11月1日以降ワクチン未接種の従業員は毎日の検査報告が義務付けられます

(Source:CNBCEngadget日本版より転載)

【コラム】気候変動を解決するのは米国のイノベーターであり規制当局ではない

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領は米国の温室効果ガス排出を2030年までに半分に削減することを誓約した。大統領は相次ぐ新たな予算と政府事業計画によってこの野心的目標を達成しようとしている。

しかし、炭素排出削減で我々が最も期待しているのは新たな財政支出ではない。それはテクノロジーの大転換であり、実現できるのは民間セクターだけだ。

実際、政府は排出削減テクノロジーが市場に出ることを妨げる規制を設けることで、気候変動の進展を遅らせている。もし我々の指導者たちが本当にこの惑星を救いたければ、実際にそれを実行できる起業家たちの邪魔にならないようにする必要がある。

政府に期待するのは、炭素汚染を削減する可能性のあるテクノロジーを支援することだ。そもそもバイデン大統領は自身の気候変動政策の中で、米国の技術革新を促進することを約束している。

残念ながら、最も有望なグリーンテックのブレースクルーの数々は、誤った、あるいは時代遅れの政策によって、厳しい逆風に曝されている。

そんなテクノロジーの1つで、イノベーターと規制の関係を描いた新しいドキュメンタリー「They Say It Can’t Be Done(みんな出来ないと言った)」で紹介されているのが、人工樹木であり、アリゾナ州立大学の物理学者・エンジニアのKlaus Lackner(クラウス・ラクナー)氏が開発した。その人造の木に含まれる特別なプラスチック樹脂は、二酸化炭素を吸収し、水に浸されると排出する。天然の木と比べて大気から二酸化炭素を取り込む効果は1000倍以上だ。捕獲された二酸化炭素は回収されて燃料に変換される。

ラクナー氏のデザインは、1台で1日当たり1トンの二酸化炭素を除去できる規模に拡大できる。主な障害は炭素捕獲テクノロジーを巡る明確な規制の欠如であり、特に捕獲した炭素の輸送と貯蔵が問題だ。

統一された枠組みができるまで、このテクノロジーを市場に出すためのプロセスはありえないほど複雑で、かつリスクをともなう

あるいは、大規模な畜産農業の必要性を低下させるテクノロジーを考えてみよう。数十億の鶏や豚や畜牛を育てるためには膨大な水と餌と土地が必要だ。その結果の炭素排出量は膨大で、年間約7.1ギガトンの温室効果ガスを生み出す。

ここでも新たなテクノロジーが排出量削減にひと役買う。研究者らは細胞培養肉をつくっている。飼育場ではなく実験室で生まれた鶏肉、豚肉、牛肉だ。代替タンパク質は安全で健康的で、従来の飼育食肉よりも炭素排出が少ない。

代替肉をつくっているスタートアップであるEat Just(イート・ジャスト)は、最近シンガポールで細胞培養鶏肉を販売するための認可を取得した。しかし、今も米国では規制当局の青信号を待っている。同社のファウンダーによると、米国の承認を得るまでには1年あるいはそれ以上かかるという。

関連記事:Eat Justが世界初の認証を取得しシンガポールで培養肉の販売を開始

代替肉生産のように大きな資本を必要とする業界では、このゆっくりとした承認プロセスによって、スタートアップが開業し、製品を市場に出すことが不可能になりかねない。

このようなハイテクソリューションこそ、気候変動の脅威から地球を守るために必要だ。果たして、代替肉が将来の持続可能食料なのか、それとも大気中の二酸化炭素を固定する最高のソリューションが人工樹木なのかはわからないが、参加しやすく公正な戦いの場は、最高のイノベーションの繁栄を可能にするはずだ。

気候変動に関することは政府だけの仕事だと信じている米国人があまりにも多い。事実は、持続可能なテクノロジーの大規模な導入の主要な障壁は、政府の介入が無いことではなく、過剰な、あるいは少なくとも誤った介入だ。

国の炭素排出量削減の約束を遂行するためには、それを実現する可能性のあるテクノロジーの開発と展開を、政府がいかに妨害しているかを、大統領とチームは認識する必要がある。

編集部注:本稿の執筆者Quill Robinson(キル・ロビンソン)氏は環境保護団体、American Conservation Coalitionの政府業務担当副社長。

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(文:Quill Robinson、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米テック大企業トップがホワイトハウスで会合、サイバーセキュリティ強化で巨額拠出を約束

テック大企業のApple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)は、Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領との会合に出席し、米国のサイバーセキュリティ強化で巨額の拠出を約束した。

金融や教育の分野からの出席者も含まれた今回の会合は、重要なインフラやいくつかの政府機関に対する有名なサイバー攻撃を受けて開かれた。サーバー攻撃ではサイバーセキュリティのスキルギャップがあることが明るみに出た。CyberSeekのデータによると、現在米国ではサイバーセキュリティに関連する約50万人の求人があり、それらはまだ埋まっていない。

「我々の重要なインフラの大半は民間セクターによって所有・運営されていて、連邦政府だけでこの問題に対処できません」とバイデン大統領は会合の冒頭に述べた。「今日みなさんにお集まりいただいたのは、あなた方がサイバーセキュリティについての水準を引き上げるパワー、能力、そして責任を有していると考えているからです」。

増加傾向にあるサイバー攻撃に対する戦いで米国をサポートするために、テック大企業はサイバーセキュリティ防衛を強化し、スキルを持つサイバーセキュリティ労働者を訓練するために多額を投資することを約束した。

ホワイトハウスによると、Appleは多要素認証の「浸透」とセキュリティ訓練を促進するために米国内の9000超のサプライヤーと協業すること、そして引き続きテクノロジーサプライチェーン全体でセキュリティ改善を促進するために新しいプログラムを設けることを約束した。

Googleはゼロトラストプログラムを拡大し、ソフトウェアサプライチェーンを安全なものにするために、そしてオープンソースのセキュリティを強化するために今後5年間で100億ドル(約1兆1000億円)超を投資すると述べた。検索と広告の大手である同社はまた、ITサポートやデータ分析、そしてデータプライバシーとセキュリティを含む最も需要の高いスキルの習得といった分野で米国人10万人を訓練することも約束した。

「強固なサイバーセキュリティは最終的には実行する人がいるかどうかに左右されます」とGoogleのグローバル問題責任者、Kent Walker(ケント・ウォーカー)氏は述べた。「中でも、サイバーセキュリティソリューションをデザインして実行することができる、あるいはサイバーセキュリティリスクとプロトコルの啓発を促進することができるデジタルスキルを持つ人が必要とされています」。

そしてMicrosoftはデザインでサイバーセキュリティを統合し「高度なセキュリティソリューション」を提供するために200億ドル(約2兆2000億円)を拠出すると述べた。また、キュリティ保護のアップグレードで連邦政府や州政府、地域の行政をサポートすべく、テクニカルサービスにただちに1億5000万ドル(約165億円)をあて、サイバーセキュリティ訓練で地方の大学や非営利組織との提携を拡大する、と発表した。

Amazonのクラウドコンピューティング部門であるAmazon Web Services (AWS)やIBMも会合に出席した。AWSはセキュリティ啓発トレーニングを一般も利用できるようにし、全AWS顧客に多要素認証デバイスを整備すると明らかにした。IBMは今後5年間で15万人にサイバーセキュリティスキル訓練を提供すると述べた。

多くの人がテック大企業の約束を歓迎し、Nominet CyberのマネージングディレクターDavid Carroll(デイビッド・キャロル)氏はTechCrunchに対し、これらの最新の取り組みは「強力な前例」となり「本気で戦う」ことを示していると話した。その一方で、サイバーセキュリティ業界の一部の人は懐疑的な目を向けた。

発表を受けて、一部の情報セキュリティのベテランは、米国が埋めようとしているサイバーセキュリティ職の求人の多くは給与面や福利厚生面で遅れをとっている、と指摘した。

「50万件のサイバーセキュリティの求人があり、ほぼ同じだけ、あるいはそれを上回る人が職を求めています」とテクノロジー分野の女性をサポートする財団TechSecChixの創業者、Khalilah Scott(カリラ・スコット)氏はツイートした。「理に適うようにしましょう」。

画像クレジット:Drew Angerer / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

バイデン大統領のEV販売目標達成に向けて、自動車メーカーが政府の投資拡大を要請

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領は、2030年までに米国の新車販売台数の半分を低エミッションまたはゼロエミッション車にするという意欲的な新目標を発表するが、この計画について、ビッグ3の自動車メーカーは、政府による多額の支援が必要であるとしながらも、一定の支持を表明している。

General Motors(ゼネラルモーターズ)、Ford(フォード)、Stellantis(ステランティス、旧Fiat Chrysler)の3社は現地時間8月5日に共同声明を発表し、10年後までに新車販売台数に占める電気自動車の割合を40~50%にするという「共通の目標」を掲げた。ただし、この目標は「ビルド・バック・ベター(より良い復興)プランで政府が約束した一連の電化政策が適切に展開される場合にのみ達成できる」と注記されている。

具体的な投資としては、消費者へのインセンティブ、米国全土の「十分な量」のEV充電ネットワーク、研究開発への資金提供、製造・サプライチェーンへのインセンティブなどが挙げられている。

現地時間8月5日に大統領令として発表される予定のバイデン大統領の目標は、拘束力はなく、完全に自主的なものだ。この目標には、バッテリー、水素燃料電池、プラグインハイブリッドを搭載した車両が含まれる。

ホワイトハウスで開催される新しい目標に関するイベントには、自動車メーカー3社の幹部と全米自動車労働組合の代表者が出席。Elon Musk(イーロン・マスク)CEOのツイートによると、テスラは招待されなかったようだ。

ホワイトハウスが同日発表したファクトシートによると、バイデン大統領は、トランプ大統領の任期中に緩和された2026年までの乗用車および中・大型車の新しい燃費基準も強化する。この新基準は、米国運輸省と米国環境保護庁の管轄下で策定されるが、自動車メーカーにとっては驚きではない。この新基準は、すでにバイデン大統領の、いわゆる「Day One Agenda(初日のアジェンダ)」に含まれており、気候変動への取り組みの基礎となっている。

新基準は、2020年カリフォルニア州で可決された、自動車メーカー5社(BMW AG、Ford、本田技研工業、Volkswagen AG、Volvo AB)の連合体と協力して決定された基準を参考にしていると思われる。これらの自動車メーカーは8月5日、ホワイトハウスの排出量削減計画を支持するとした別の声明を発表したが、ビッグ3と同様、排出量削減目標を達成するためには、米国政府による「大胆な行動」が必要であるとしている。

2030年への道のり

Edmunds(エドモンズ)のインサイト担当エグゼクティブディレクターであるJessica Caldwell(ジェシカ・コールドウェル)氏は、声明の中で、バイデン大統領の拘束力のない命令は象徴的なものに過ぎないが、目標は達成可能であると述べ、自動車業界のリーダーたちは、誰が大統領であろうと、電化に関しては「以前から『壁に書かれた文字(不吉な警告の意味)』を見てきた」と続ける。

製品開発のリードタイムが比較的長いこともあり、大手自動車メーカーの多くが、少なくともこの10年の半ばまでは、EV(電気自動車)やAV(自動運転車)に数十億ドル(数千億円)規模の投資を行うことをすでに発表している。General MotorsFordは2025年までにそれぞれ350億ドル(3兆8000億円)、300億ドル(約3兆3000億円)の投資を発表しており、Stellantisも同様の発表を行っていることはいうまでもない。フォルクスワーゲンはバッテリーの研究開発に数十億ドル(数千億円)を投じており、さらにVolvo Cars(ボルボ・カーズ)は2030年までに全車を電気自動車に移行するとしている。

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これらの膨大な数字は、自動車メーカー各社の販売目標に沿ったもので、ほぼバイデン大統領の目標と一致している。

一方で、燃費規制については、これまで自動車メーカーの反応は芳しくなかった。General Motors、Stellantis(当時はFiat Chrysler)、トヨタ自動車の3社は、カリフォルニア州が独自の排ガス規制を設定する権限を剥奪しようとするトランプ大統領時代の訴訟を支持していたが、各社とも最終的には180度方針転換し、バイデン大統領は2021年、独自の基準を導入できることとなった。

本質的には、バイデン大統領の発表は気候変動と同様に地政学的な意味合いが強い。彼もまた、電気自動車に関しては「不吉な警告」を見ているのだ。バイデン政権は、ファクトシートの中で、電気自動車や電気自動車用バッテリーの材料について「中国が世界のサプライチェーンを支配しつつある」と指摘し「(中国を筆頭とする)各国は、電気自動車の販売目標を明確に設定することで、部品・材料から最終組立に至る製造部門に民間投資を呼び込む存在となっている」と述べている。

国際エネルギー機関(IEA)によると、米国では2020年、2016年の3倍の電気自動車が登録されたものの、電気自動車の市場シェアではヨーロッパや中国に後れをとっている。

このニュースにはさまざまな反応があり、その中には政権側にもっと断固とした行動を求める環境保護団体もある。Ceres(セレス)の交通部門シニアディレクターCarol Lee Rawn(キャロル・リー・ローン)氏は、将来的な規制は、二酸化炭素排出量を60%削減し、2035年までに電気自動車の販売を100%にするという「明確な軌道」を目指すべきという声明を出している。

現地時間8月5日にホワイトハウスでバイデン大統領と同席する全米自動車労働組合は、Ray Curry(レイ・カリー)会長が声明を出し「(同組合は)厳しい期限やパーセンテージではなく、米国の中産階級の心と魂を支えてきた賃金と福利厚生を維持することに焦点を当てている」と述べた。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)