中国政府、WeChatの削除済みメッセージを収集していることを認める

中国政府当局は先週末、ほぼ全国的に使用されているチャットアプリのWeChat の削除済みメッセージを取得するしくみを持っていることを明らかにした。多くの人にとって驚きではなかったが、このような議論を呼ぶデータ収集手法を公式に認めることはかなり珍しい。

South China Morning Postの記事によると、安徽省の汚職防止委員会は土曜日(米国時間4/28)、当局は「あるテーマに関わる一連の削除されたWeChat会話を回収した」とソーシャルメディアに投稿した。

投稿は翌日削除されたが、それまでに多くの人が読み、起こりうる影響を理解した。(私を含め)10億人近い人々が利用するWeChatを運営するTencentは声明で「WeChatはチャット履歴を保存していない —— ユーザーの携帯電話やコンピューターにのみ保存される」と説明した。

この保存に関する技術的詳細については明らかにされていないが、関心を持つ当局が何らかに方法でアクセス可能であることは、委員会の投稿から明らかだ。アプリはもちろん、特定の話題の検閲を含む政府の要件に対応している。

まだ多くの疑問があり、その答はユーザーの脆弱性を説明するのに役立つだろう。メッセージーは安全に暗号化されているのか? 削除メッセージの復活にユーザーのIDとパスワードは必要ないのか? それとも「マスターキー」やバックドアで突破できるのか。ユーザーはWeChatでメッセージを永久的・完全に削除することが可能なのか?

中国政府が中国企業の保有、操作するデータをアクセスすることに対する恐怖は、対象となる企業に対する世界的な反発を呼んでおり、一部の国々(米国を含む)では、中国製のデバイスやサービスの機密情報や公式での利用を禁止している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

より本格的な健康データデバイスを目指すFitbitがGoogle Cloud Health APIの利用へ

ヘルスデータ・ブレスレットのFitbitが今朝(米国時間4/30)、単なるエクササイズツールから本格的なヘルスケア製品へのステータス・アップをねらって、GoogleのCloud Healthcare APIを利用していく、と発表した。これはまるで、筋書き通りのようなパートナーシップだ。

アメリカの保健医療市場は2016年の支出額で3.3兆ドルと言われるが、GoogleはCloud Healthcareでこの巨大な市場へ食い込むことをねらっている。この市場の成長を止めるものは何もないから、数年後にはさらに額が肥大していると予想される。

Googleはこれまで、同社の既存のクラウド製品を利用して、ヘルスケアという巨大な世界のための情報共有基盤を提供してきた。その初期の段階では同社は、Stanford School of Medicine(スタンフォード大学医学部大学院)など医療専門機関とパートナーしてきたが、今回のFitbitとの契約は、さらにメジャーな路線への進出になる。

またFitbitにとっては逆に、より正統的なヘルスケアの世界への接近になる。最近のイベントでCEOのJames Parkは、ヘルスケアは消費者電子製品の企業がそこへ向かっていくべき大きな世界だ、と語った。それはもちろん、Jawboneのように消費者分野を切り捨てるという意味ではなく、正統的な医療保健データの収集を一般化大衆化することに大きな市場機会を見出している、ということだ。

正統的というのは、医師が患者の電子的医療データとまったく同格に、Fitbitによるモニタリングデータを利用する、できる、という意味だ。最近同社が買収したTwine Healthは、エクササイズデータに加えて糖尿病や高血圧などのデータを提供してくれるはずだ。

Google Cloud Healthcareからの新しいサービスについて、具体的な日程等の発表はまだない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Google、NvidiaのTesla V100 GPUをクラウドで提供開始

Google は今日(米国時間4/30)、Nvidiaの高性能GPU Tesla V100がCompute EngineおよびKubernetes Engineで利用可能になったことを発表した。現在はまだ公開ベータだが、GPU作業でGoogleの完全サポートを必要とする利用者には、やや性能の低いNvidia P100 GPUがベータを終え一般公開された。

V100 GPUは、今もNvidiaの高性能コンピューティングのラインアップの中で最も強力なチップだ。登場からしばらく時間がたっており、Googleはやや遅れた参入となった。AWSIBMはすでにV100を顧客に提供しており、Azureではプライベートプレビューを行っている。

GoogleはNvidiaのマルチGPUプロセッシングのための高速インターフェースであるNVLinkも使用していることを強調しているが、ライバル各社もすでにこれを使っていることは指摘しておくべきだろう。NVLinkはGPU-to-GPUのバンド幅を従来のPCIe接続より9倍速くすることで作業によっては40%性能が高くなるとGoogleは約束している。

もちろん性能のためにはお金が必要だ。V100の使用料は1時間につき2.48ドル、P100が1.46ドルだ(これは標準価格であり、Preemptible仮想マシンは半額で利用できる)。これ以外に通常の仮想マシンまたはコンテナを動かすための料金を払う必要がある。

現在V100マシンは、1 GPUまたは8 GPUの2種類の構成で利用可能で、将来は2または4 GPUの構成も加わる予定。P100には、1、2、または4GPUが用意されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

TwitterもCamridge Analytica関連の研究者にデータを売っていた

Cambridge AnalyticaFacebookユーザー数百万人の個人データを不正アクセスしたことが発覚して以来、人々の頭の中にある疑問が残っていた。Dr. Aleksandor Koganはほかにどんなデータを手に入れていたのだろうか?

米国時間4/28にTwitterは、Koganが所有する民間企業、GSRが2014年12月から2015年4月までの5カ月間、公開ツイートの無作為サンプルへの一回限りのAPIアクセスを購入していたことをTelegraphに伝えた。またTwitterは、内部レビューの結果Twitter利用者の個人データをアクセスした形跡はなかったことをBloombergに話した。

Twitterは、様々なイベントや特定の話題や考えに対する感想や意見を調査する目的で、大企業や組織に対してAPIアクセスを販売している。

Twitter広報担当者はThe Telegraphに次のように語った:

Twitterは、Cambridge Analyticaが所有・運用する全アカウントによる広告を取り下げる方針を決定した。これは、Cambridge AnalyticaがTwitterの広告ビジネス方針に本質的に反するビジネスモデルを使用しているという当社の判断に基づくものである。Cambridge Analyticaは今後、当社プラットフォームでTwitterのルールに則り一ユーザーであり続けることは可能だ。

このデータは、Facebookのユーザーに関して収集されたデータとは明らかに性質が異なる。Twitterのユーザーデータは個人的内容がはるかに少ない。サービスを利用する際の位置情報はオプトイン方式であり、ユーザーは実名を使うことを強制されていない。

今日午前Cambridge Analyticaは、Kogan/GSRがTwitterから入手したデータをCambridge Analyticaが購入あるいは使用したことはないとツイートした。

本誌はTwitterにコメントを求めているので情報が入り次第続報する予定。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

国防省、自動車を遠方から停止させるマイクロウェーブ兵器を開発中――自動車テロの抑制に期待

自動車がテロに使われる例は増え続けている。しかしアメリカ国防省が開発している自動車その他のエンジンをリモートで停止させるテクノロジーが実用化されれば多くの人命が救われることになるかもしれない。ペンタゴンのJNLWD(合同非致死性兵器開発)プログラムでは電波エンジンストッパーを開発中だ。これはDefense One の記事によれば、車両等を利用した民間人をターゲットとしたテロを防止することを目的としている。

車両を利用したテロなどの暴力行為や違法行為(たとえば許可を得ない車両がセキュリティー・ゲートを突破しようとするなど)を防止するため、JNLWDでは強力なマイクロウェーブを車両に照射し、エンジンをコントロールしている電子装置を無効化することで車両を停止させようと試みている。下のビデオでこのテクノロジーの実験を見ることができる。

Defense Oneによれば、 JNLWDは2つのバージョンを開発中だ。一つは有効距離が50メートルと短いがトラックの荷台に搭載できる程度の小型版で、もうひとつは有効距離100メール以上の大型据え置きタイプだ。この装置は繁華街やショッピングセンターなど人々が密集する公共スペースを自動車を利用したテロ行為から防衛するのに役立つと期待されている。

電波兵器は以前から開発されてきたが、電力消費量が膨大なことで知られており、マイクロウェーブをきわめて細いビームに収束させるテクノロジーにおけるブレークスルーのおかげでこれらの装置が可能になったという。

自動車を利用したテロはアフガニスタンやイラクなどの紛争地域以外ではほとんど発生していなかったが、最近では都市の中心部や観光客の集まるスポットなどが狙われる例が目立っている。先週はカナダのトロントで車両によるテロで10人が殺害されるという事件が起きた。

この例でも分かるように、自動車テロは実行が容易で不意を打たれた歩行者に多大の被害をもたらす。車両停止装置のようなデバイスが必要とされる事態は不幸だが、こうした電波エンジン・ストッパーが実用化されれば車両テロの抑制に効果があるはずだ。攻撃があったときすばやく遠方から車両を非致死的に停止させることができれば犠牲者の数を抑えるだけでなく、警察が犯人を無傷で逮捕し、情報を得るためにも役立つだろう。(トップ写真はニューヨークで起きた車両テロのもの)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

連続殺人犯逮捕へと導いたDNA分析サイトは、ユーザープライバシーに関する懸念を再燃させる

ゴールデンステートキラー(カリフォルニア州連続殺人事件の犯人)であると疑われた男性の逮捕の詳細が明らかになるにつれて、この歴史上最も悪名高い未解決事件が、人気のある無料オンライン家系図データベースを利用して解決されたことが明らかになった。

GEDmatchと呼ばれるこのサイトは、すぐに利用できるコンシューマーテストサービスを通じて自分自身のDNA情報を入手し、さらに分析を行うために家系図の欠けている部分を埋めようと考える人びとに、人気のあるリソースである。23andMeのような洗練されたサービスと比較すると、GEDmatchは、より多くのメインストリームプラットフォームで見られるような、ユーザーデータを管理するためのプライバシーならびに法的制約がないオープンプラットフォームなのだ。

容疑者にたどり着くために捜査官たちは、1980年にベンチュラ郡で起きた連続殺人犯の物とされる、完全なDNAを利用した。チームはサンプルからデータをGEDmatchにアップロードし、容疑者の遠い親戚を特定することができた。これが重要なブレークスルーとなり、すぐにJoseph James DeAngelo(72歳)の逮捕へとつながった。

DNAデータの重要性と、このボランタリーオンラインDNAデータベースの人気の高さから、この事案はすぐにデータプライバシー擁護者たちの注意を喚起した。

金曜日にGEDmatchは、ログインのためのランディングページ上で、法執行機関が事件の捜査のためにDNAデータベースを精査していることを告知した:

大いなる誤解が生じているので訂正したいと思います。私たちはGEDmatch上のいかなる人物のDNAも開示していません。私たちはが開示しているのはDNAマッチ結果のようなデータの操作結果だけです。

私たちはゴールデンステートキラーの特定に、GEDmatchデータベースが使用されたことを知っています。私たちはこの事件や問題のDNAに関して、法執行機関や他の誰からもアプローチを受けていませんでした。サイトポリシーに定められているように、データベースが他の用途に使用される可能性があることを、ユーザーに知らせることは、GEDmatchの方針でした…

このデータベースは家系図研究のために作成されたものですが、GEDmatchへの参加者は、自身のDNAが、犯罪を犯したりあるいは犯罪の被害者となった親戚の特定などへの、使用の可能性があることを理解することが重要です。

DNAの家系図以外への利用が心配なときには、DNAをデータベースにアップロードしないでください。また、すでにアップロードされているDNAは削除して下さい。登録した情報の削除に関してはgedmatch@gmail.comまでご連絡ください。

最初の段階では、法執行機関がゴールデンステートキラーの捜査に、23andMeやAncestry DNAのような主要な消費者遺伝子テスト機関を利用したのではという誤解が生じていた。しかし捜査官たちはその代わりに、面倒な手続の不要なボランタリーDNAデータベースを利用したのだ。23andMeとAncestryの両者は、特定の遺伝的情報または個人情報にアクセスするためには、捜査令状または裁判所命令を発行するように法執行機関に要請している

23andMeは、法執行機関との関係に特化した特別ページで、法医学に対するポリシーを説明してる。

ケースワークやその他の犯罪捜査に23andMe Personal Genetic Serviceを使用することは、当社のサービスの目的外の使用に該当します。

したがって、法執行機関の職員が囚人あるいは犯罪容疑者のサンプルを登録することは、私たちの利用規約に違反します。

捜査官たちが、長きに渡る未解決事件の容疑者を逮捕したということそのものは良いニュースだ。しかしこの事件は消費者DNAテストに関するもっともな懸念を再燃させている。

ニューヨークタイムズとのインタビューで、この事件の解決を手伝ったコントラコスタ郡の調査官Paul Holesは、GEDmatchの力に驚いたと言う。そこでHolesは「私はそれを使ってできることに、心底驚きました」と語っている。

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(翻訳:sako)

Emissaryはセールスネットワークの変革を狙う

セールスに必要なのは最高の製品ではない。スタートアップは、最高の製品、最高のビジョン、そして最も説得力のあるプレゼンテーションを持ちながら、結局営業チームが話していた相手が、間違った意思決定者だったり、相手に適切な種類の話題を振っていなかったことが後になって判明することがある。残念なことに、そうした重要な情報(キー人脈情報)はどこかの本やオンラインフォーラムには書かれておらす、通常は広範囲の人脈と噂を通して明らかになっていくのだ。

Emissaryを創業したDavid Hammerと彼のチームにとっては、それこそが解決すべき問題だった。「人脈作りに長けたものが勝つ世界が必ずしも良いとは思っていないのです」と彼は私に説明した。

Emissaryは、営業チームを、ターゲットとなる企業の営業プロセスをよく知り、ガイドできる人物(エミッサリーと呼ばれる)と結びつけるハイブリッドSaaS市場である(注:エミッサリーには使者の他に密偵という意味合いがある)。一般的には最高のエミッサリーとなるのは、対象となる企業を最近辞めたばかりの元幹部や従業員たちである。こうした人びとは意思決定プロセスや組織のポリシーを熟知しているからだ。「私たちの第一のミッションはとてもシンプルなものです:世の中の取引の全てに、エミッサリーがいるべきだ」とHammerは語る。

GLGのような専門家ネットワークは、何年も前から存在してきたが、こうした組織は伝統的に、対象企業の戦略思考を理解するために、喜んで大金を支払う投資家たちむけのものだった。Emissaryの目標は、より広い範囲の意思決定者と顧客を対象にした、より大衆化されたものである。そのプロダクトはインテリジェントに設計されており、販売プロセスの調子が悪くなる前に援助を求めるよう顧客たちに促す。Crunchbaseによれば、このスタートアップは現在までに1400万ドルを調達しており、最新のシリーズAラウンドはCanaanによって主導されている。

Emissaryは確かに創造的なスタートアップだが、私が最も興味深いと考えるのは、それが提起する、知識仲介、労働市場、倫理にわたる諸問題だ。

社会科学者たちは一般に、著名な学者マイケル・ポラニーの研究から生まれた、知識の2つの形態を区別する。最初の形態は明示的な知識である。書籍やTechCrunchで見つけることができるような知識だ。これらは事実と数字である ―― 資金調達ラウンドはこの金額だった、ある会社のCEOはこの人物であるといった知識である。他の形態は暗黙的な知識である。典型的な例は自転車に乗ることだ ―― それを学ぶには実際にやってみなければならない、そして乗り手が自転車から転落することを防いでくれる物理学の数字も、力学の教科書も存在しない。

組織図は明示的な知識かもしれないが、暗黙的な知識はすべての組織の中核をなすものだ。それは政治、人物、興味、そして文化である。こうしたトピックに関するハンドブックはないが、ある組織で十分に長い時間働いてきた人は、何かを成し遂げるために必要なプロセスを正確に知っている。

その知識は 重要かつ貴重であり、それゆえにマネタイズできる価値があるのだ。それこそがHammerが新しいスタートアップを設立する際に感じていた、元々のインスピレーションだった。「なぜGoogleが間違った決定を行うのだろう?」Hammerはそのとき自分自身に問いかけたのだ。ここには、世界で最も多くのデータを持ち、それを検索するツールを持つ会社がある。「どうして必要な情報を持っていないなどということがあるのだろうか?」。その答は、彼らは世界のすべての明示的な知識を持ってはいるが、必要とされる暗黙的な知識を何も持っていないということだ。

最終的にはその思索は、顧客とセールスパーソンとの間の情報の非対称性が明らかな、セールスという行為の考察へとつながった。「セールス関係者と話せば話すほど、彼らがその顧客の考え方を理解する必要があることが分かりました」とHammerは語る。セールスオートメーションツールは素晴らしいものだが、結局どんなメッセージを送るべきなのだろう、そしてそれを誰に対して?それこそが解決するのがもっと難しい問題だが、結局のところそれが契約書への署名につながる問題なのだ。Hammerが気が付いたことは、価値のある知識に、価格をつけて取引することのできる個人がいることだった。

そうしたマネタイズは、そうした種類のコンサルタントたちにとっての新しい労働市場を生み出す。大企業の従業員たちはいまや、退社したり、引退したあとに、その組織について知っていることを語ることで、収入を得られる可能性があるのだ。Hammerは「基本的に人びとは、自分が役に立つ方法を探しているのです」と語る。確かに報酬は重要だが、多くの人びとが単に関与する機会を探しているのだという。明らかにその命題は魅力的なようだ、なにしろプラットフォームには現在1万人以上のエミッサリーが登録されているのだ。

しかしこの市場を長期的により魅力的なものにできるかどうかは、転職の間に行う一時的な仕事から、より長期的でプロフェッショナルなものに変えていけるかどうかにかかっている。政府調達システムに関わる企業をサポートする人びとのネットワークと同様に、例えば「Oracleの購買はどのように機能しているのか」といった命題に特化することができるだろうか?

Hammerはこの点に関しては少々意義を唱えた「そうしたことに関わる多くのものが、壁の向こう側にあるのです」と指摘した。潜在的なコンサルタントが、セールス担当者よりも簡単に、会社外からその意思決定を学ぶなどということはできない。さらに、社内のプロセスに関する知識は、組織によって異なる速度ではあるものの、着実に劣化していく。いくつかの企業は急速な変化と変革を経験する一方で、他の企業の知識は10年以上続く可能性もある。

そうは言うものの、Hammerは企業が自社への売り込みを考えるセールスパーソンたちの支援に、エミッサリーを推薦し始める転換点がやってくると考えている。自社の複雑な調達プロセスを認識している企業の中には、最終的にはその調達プロセスを全ての側面から円滑に運んでくれる人物からのアドバイスを、セールパーソンが受けることを望むところも出てくるだろう。

明らかに、お金や知識をやりとりすることによって、重大な倫理的懸念が発生する。「倫理は私たちが行うことの中心になければなりません」とHammerは語る。「皆は大切な機密情報を共有しているわけではなく、組織の文化に関する知識を共有していのです」。Emissaryは、倫理的コンプライアンスを監視するための仕組みを導入している。「Emissariesは同時に競合他社と協力することはできません」と彼は言う。さらに、明らかにエミッサリーは会社を辞めていなければならないので、購入意志決定自身に介入することはできない。

人脈作りはすべてのセールス担当者の進むべきステップだった。それは時間のかかる作業であり、電話攻勢やコーヒー消費が売上を改善するのかに関するデータはほとんど存在していなかった。もし、Emissaryのビジョンを受け容れるならば、こうした作業はみな置き換えられていく可能性がある。知識を持つ人のガイドを受けることで、のらりくらりとしたセールスプロセスを、適切な話し合いポイントを適切なタイミングに行うことのできるスムーズなプロセスに変えることができるだろう。そうなれば結局最高の製品が勝てるかもしれない。

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(翻訳:sako)

画像クレジット:Prasit photo/Getty Images

テスラの株主、Elon Musk氏を取締役会議長から外すよう提案

テスラの株主総会が6月に開かれるのを前に、株主のJing Zhao氏はCEOのElon Musk氏が2004年から務める取締役会議長の職を、社外取締役が担うよう提案書を提出した。

Zhao氏の主張はこうだ。議長とCEOを同じ人物が担うというのは、社の創成期であればリーダーシップとして有効だったかもしれない。しかし、競争は厳しく、変化の激しい時代にあって、議長とCEO職を兼ねるのでは、事業や首脳陣の監督をする(特に、起こりうる対立を最小限に抑える)のは難しくなるばかりだ−。

テスラの普通株を保有しているZhao氏はまた、SolarCityやSpaceXでのMusk氏の役職にも言及し、これら2社にMusk氏が関与することは、今後混乱を招くかもしれないとしている。しかし、実際、ここでいう混乱は起こることは考えにくい。

取締役会はこの提案に対しすでに反対の意を表明し、かつこの提案を採決にかけることを勧めている。取締役会が表明した声明では、テスラの成功はMusk氏の取締役会議長として、そして社の代表としての舵取りなしにはあり得なかった、としている。

また取締役会は「将来、会社が成長するため、それをなし得るために必要なことを実行するという観点においても、Musk氏が今後も議長を務めるのがベストだと信じている」と述べている。さらには「仮に、社外からではない取締役が議長を務めることに伴ってガバナンスで問題が生じたとしても、筆頭社外取締役が社を守ることになる。この役職は、社外取締役の意見を反映させ、また代表取締役と定期的に意思疎通を図るという幅広い権限を取締役会により付与されている。加えて、社内には現在、2017年7月に加わった2人を含め計7人の社外取締役がいる」としている。

この件に関しテスラにコメントを求めたところ、取締役会の声明が送られてきた。下記が全文だ。

Elon Musk氏は日々社のビジネスに全力を傾けているが、そうではない取締役が取締役会を率いていたら、社のこれまでの成功はなかった、と取締役会は確信している。また、将来、会社が成長するため、それをなし得るために必要なことを実行するという観点においても、マスク氏が今後も議長を務めるのがベストだと信じている。

仮に、社外からではない取締役が議長を務めることに伴ってガバナンスで問題が生じたとしても、筆頭社外取締役が社を守ることになる。この役職は、社外取締役の意見を反映させ、また代表取締役と定期的に意思疎通を図るという幅広い権限を取締役会により付与されている。加えて、社内には現在、2017年7月に加わった2人を含め計7人の社外取締役がいる。取締役会としては、筆頭社外取締役が幅広い権限を持ち、そして他に6人の社外取締役がいることから、取締役会の独立性は保証されていると考えている。このような取締役会の構造は他の大企業と同じものであり、2017年Spencer Stuart Board Indexによると、S&P500社の72%の取締役会議長は社外取締役ではない。

今回の提案者は、社が多大な競争やテクノロジーの急速な変化に直面するまでの創成期において、CEOが議長を兼ねていたのはリーダーシップをとるという点で効果的だったことを認識している。まさに今も、社はめまぐるしい変化や外部からのプレッシャーに素早く適応しなければならず、そのためには取締役会は社の運営で足並みをそろえる必要がある。社はこれまで大きな成果を上げてきたが、それでも長期的目標を達成するには、まだなすべきことは多く、我々はゴールに向けその途上にいる。そうした観点から、現時点でCEOと議長の役割を分けることは、社にとって、そして株主にとっても最善ではないと考えている。

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(翻訳:Mizoguchi)

このロボットはあなたに代わって壁にペンキを塗ってくれる

部屋の壁にペンキを塗ったことのある人なら、隙間なく塗るのが簡単でないことを知っているだろう。MISTの作ったロボットなら、抽象画家のジャクソン・ボロックのようにペンキを塗ってくれる。

ロボットはマッピング・テクノロジーとエレベーター風の台に乗ったノズルで壁を上下にわたってスプレーしていく。ウォータールー大学出身の開発チームはプロトタイプを完成させ、Marverickと名付けた。チームにはApple、Facebookといった有名企業に在籍したメンバーもいる。

Maverickにとってこれはまだ始まったばかり。開発チームは使いやすくするために機能を追加していく予定だ。

「スプレー機の後ろにカメラをつけて、画像処理によって塗装するかどうかを判断することを考えている。そのためのソフトウェアロジックは完成していて、塗装品質の検出アルゴリズムもある。ただ、ビデオに写っているものにはカメラがまだ設置されていない」とチームは言った。

ビデオにあるように、プロジェクトは土台とアームとスプレーシステムからなる。ロボットは部屋のマップを作ったあと、塗るべきところを塗り、そうでないところを避けていく。必要に応じてマスキングテープを貼ることにはなるだろう。ペンキを買いに走る時間があればMarverickは何層かペンキを塗ることができるだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

T-MobileとSprint、合併で最終合意――最大の課題はアメリカ政府の承認

SprintとT-Mobileはアメリカ最大級となる携帯電話キャリヤを実現させるべく長年交渉を繰り返してきたが、今朝(米国時間4/29)、両者はついに合併に最終的に合意したことを発表した。合併はすべて株式交換によって行われる。今後は規制当局による審査をクリアできるかが最大の課題となる。

これはアメリカ携帯キャリヤとして第3位と第4位の企業が合併するというだけでなく、両者を外国資本がコントロールしているためだ。日本のSoftBankがSprint株式の過半数を、ドイツのDeutsche TelekomがT-Mobile株式の相当部分を握っている。大型買収に関しては、BroadcomのQualcomm買収をアメリカ政府がストップさせたことを考えると、今回の合併に対してどのような態度が表明されるか予測は難しい。

Bloombergの報道によれば合併後の新T-Mobileの42%をDeutsche Telekomが、27%をSoftBankが所有するという。

予想どおり5Gネットワーク建設がいよいよ目前となったことが合併を加速させたようだ。T-Mobileは発表中で、この合併は、次世代5Gネットワークの提供が始まる中、AT&TとVerizonという巨大テレコム企業との競争力を保持していくために必要だったと述べた。同時に「アメリカの消費者にネットワークの選択の自由を与えるものとなる」としている。

T-Mobileのプレスリリースは.「新T-Mobileはアメリカ全土に5Gを迅速に提供するために十分な能力を備えることになる。4Gネットワークの普及にあたってアメリカ企業と起業家が果たしたリーダーとしての役割を来るべき5G時代においても果たそうとしている。新会社はそれぞれ単独で対処するのに比べてはるかに迅速かつ広域的に5Gネットワークの建設に当たることができる。かつてT-MobileはLTEネットワークの全国展開においてVerizonの2倍、AT&Tの3倍のスピードだった。合併後の新会社は5Gネットワークの建設において必要とされる多様な能力とネットワーク容量を備えることになる」と述べている。

両社は先週金曜に合併に最終合意したものとみられる。このとき両社の評価額を決定し、今朝の発表の準備を始めたようだ。これによると、Sprintの企業価値は590億ドルと評価されたもようで、合併後のT-Mobileの価値は1460億ドル前後となる。日曜時点でのAT&Tの時価総額は2140億ドル、Verizonは2130億ドルだ。

T-MobileとSprintの合併を報告できることを欣快とする。両社は親会社を作ることで合意に達した。より大きく、より強力な新会社の誕生はアメリカのすべての消費者、企業に好ましい影響を与えるだろう! クリックして詳細を知ることができる。

この合併は今後規制当局の審査を受けるわけだが、プレスリリースによれば、「2019年上半期中に」結論が出るはずだという。

情報開示:VerizonはOathの親会社で、OathはTechCrunchの親会社

画像:Michael Loccisano

〔日本版〕T-MobineのCEO、John Legereの発音はジョン・レジャーに近い。CNBCビデオの32秒あたりなど。学生時代はマラソン選手で2004年にはチャリティーの一環としてボストン・マラソンを走っている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

レポート:中国のスマホ出荷21%減、2013年以来最低水準に

かねてからアナリストたちは中国のスマホ市場の成長に警戒感を示していた。それが、とうとう現実のものとなったようだ。

10億超もの人口を抱える中国では多くの人がスマホに飛びつき、スマホ市場はしばらく右肩上がりで、これにより中国国内のOEMメーカーの業績は目覚ましいものだった。しかしそのスマホ市場は2017年に飽和点に達し、初めて成長が止まった。そして今年の第一四半期では、状況はさらに悪化している。

調査会社Canalysが今日発表したレポートによると、2018年第一四半期のスマホ出荷台数は前年同期に比べ21%減だった。

四半期の全モバイル端末の出荷台数としては2013年10~12月期以来初めて1億台を下回ったとしている。

Gionee、Meizu、Samsungの出荷台数はそれぞれ2017年第一四半期の半分以下に落ち込み、スマホメーカー10社のうち8社が年間を通しての出荷減となる、と分析している。

大変な事態となった。

そうした中で、1000億ドル規模のIPOが予想されているXiaomiだけが数字を伸ばした。出荷台数は37%増え、1200万台を達成した。これにより、Appleを追い越してシェア第4位になっている。ただ、Xiaomiの数字は、ハイエンドモデルに比べて利益の少ない150ドルのRedmiによるところが大きい。

中国のスマホ市場はHuwei、Oppo、Vivoの3メーカーが引っ張ってきた。信じられないことだが、この3メーカーとXiaomiで市場の73%を占めている。Canalysは「こうした状況は中国の消費者やスマホ愛用者にとっては好ましいものではない」と指摘している。

「競争が激しさを増す中で、どのメーカーも他社のスマホの機能やマーケティング戦略を真似せざるを得なくなっている」とアナリストのMo Jia氏はレポートの中で述べている。「Huwei、Oppo、Vivo、Xiaomiは縮小するマーケットと戦わなければならない。一方で、今後メーカーの淘汰が進み、これは4大メーカーにとってプラス材料となる。この4メーカーは中小メーカーより長く生き残れるだろう」と分析する。

もしかすると、間もなく明るい兆しが見えるかもしれない。Canalysは、Oppo、Vivo、Huweiの3社が次々に旗艦モデルを投入する第二四半期は成長を見込んでいる。しかしながら、現在、米国の消費者はキャリアが望むほどには頻繁にスマホをアップグレードしない。すでにブームを経験した中国のスマホ市場は、米国とまさしく同じ問題を抱えることになる。

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(翻訳:Mizoguchi)

 

Androidの父Andy RubinのスマートフォンEssentialに日本語ネットショップができた

それはスマートフォンメーカー企業の、すなおすぎるような立ち上げだった。Androidの作者Andy Rubinのその新しい事業は、出足があまり良くないと外部からは見られているが、しかし今日(米国時間4/27)同社は、その潤沢な資金を生かして一気に、オンラインストア(ネットショップ)のグローバル展開を図った。

今日の同社はTwitter上で、それら重要拠点のストアを発表した。カナダ、フランス、日本、そしてイギリスだ〔ドイツも買える…後述〕。Engadgetによると、これらの市場の一部では、前から買うことが可能だったが、しかしそれは同社自身のショップからではなく、たとえばカナダではAmazonやTelusからだった。

一部には、特定の国に固有の注意点もある。それらは同社のTerms of Sale(販売規約)に書かれていて、そこには、ドイツでも買える、とある。

このように、同社は市場展開も遅かったが、無理もない。この種のビジネスをスクラッチから立ち上げるのは、容易ではない。手持ち資金が3億ドルあっても、だ。Essentialは最初の1年を国内市場の開拓に費やした。AmazonやBest Buyに卸し、キャリアはSprintと契約した。

今回行った流通チャネルの構築で、今後バージョン2が出るとき、展開がかなり楽になるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebookは個人的目的のための募金で手数料を無料にした

Cambridge Analyticaに関するあらゆることで責められているFacebookは、それでもまだ、何か良いことをしたい、と望んでいる。今日Facebookは、個人的目的で活動資金などを募金する場合、手数料を無料にする、と発表した。

これまではアメリカで4.3%、カナダで6.2%徴収していた手数料が無料になる。これらの手数料は、募金の目的や募金者の人物を審査するための費用、とされている。これからは、これら安全と保護のための方策に関わる費用を、Facebookが負担する。

Facebookの社会福祉ツール部門のトップAsha Sharmaは、次のように述べている: “この件についてはわれわれもまだ勉強中だが、とにかく人びとの福利を最大にしたいのだ”。

Facebookが無料でも、決済の費用や税金はかかる。アメリカとカナダでは決済の処理費用が2.6%+30セントだ。Facebookは、資金募集ツールの新しい機能を二つ発表した。

ひとつは、人びとが寄付を非営利の資金募集者宛てにできること。もうひとつは、個人の募金目的の種別の拡大だ。これまでのように、動物愛護や個人的緊急事態だけでなく、これからは医療目的のためのコミュニティの旅行や、養子縁組のような家族関連の目的、宗教的イベント、ボランティア活動の支援などでも募金ができる。

これまでに集まった募金の額をFacebookは明かさないが、同社の社会福祉ツールは、75万あまりの非営利目的の寄付獲得を助けた、という。Sharmaは個人的募金目的について、“これらすべての分野や種別で活動があるから、対象に含めざるをえなかった”、と言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

IoT会話と、文脈から意を汲み取るということ

modern cityscape and business person, IoT(Internet of Things), ICT(Information Communication Technology), abstract image visual

(日本語版注:本稿を執筆したJim Hunterは、Greenwave Systemsのチーフサイエンティスト兼エヴァンゲリストだ)

数年前、テクノロジーとコミュニケーションをとる方法について書いた。当時、身の回りにあったアプリや電話、車、半自動のコーヒーメーカーといった便利なツールを使うときに体験するちょっとした不都合が、何かしら革新的なものの登場でなくなるだろうというのは明らかだった。そうした接続機器を使うのに、たくさんタイプやスワイプしたり、アプリで管理したりする必要があったからだ。

その革新的なものというのは、ある程度、現実のものとなったといえる。

音声でのやり取りがそれだ。いまスマホの音声アシスタント、家や車と接続するスマートスピーカーを使うとき、音声操作が大きな役割を果たしている。この音声操作技術の進歩は現在進行形だ。それはすごいことではある。しかし、やり取りは会話と呼べるものではない。

というのも、この音声操作のほとんどは、友達や同僚との実のある会話のようなものではなく、むしろ4歳の子に「言われた通りにしなさい」と命令するのに近いからだ。

ツールを使うにあたっての不都合を最小限に抑え、そして音声でテクノロジーを最大限利用できるようにするためには何かが必要だ。それは、「文脈から意を汲み取る」ということだと私は考えている。

文脈から意を汲み取るというのは、会話の中で何を意図しているのかを考えることになる。誰が、何を、どこで、いつ、といったシンプルな質問に答えるのはそう難しいことではないし、IoTは私たちの暮らしに関するあらゆる情報を取り入れるようになっている。私は以前、アメリカの心理学者マズローの欲求段階説のチャートに倣って、IoTデバイスに必要とされることをピラミッド式に描いたことがある。テクノロジーが分析手法を用い、ロジックや予測することを学習し、そしてより複雑なことをできるようになるというものだ。AmazonのAlexa、AppleのHomePodなどで使われている音声操作や自然言語処理の技術は、まさしくIoTデバイスに必要とされることの実現例だ。リアルタイムに情報を収集し、複雑な機能でもって処理するという、予知解析や機械学習を取り込んでいる。

それでもまだ、AlexaやHomePodとのやり取りは会話とは呼べない。役には立っているが、コミュニケーションとしてはまだ初期段階にあり、成長の余地はある。

というのも「どのように」「なぜ」といった掘り下げた質問が、会話の中で重要な意味を持つからだ。真の双方向会話を実現するには、そうした質問に対する答えを複数用意するだけでなく、学習し記憶しなければならない。Googleはそうした手法をいくつかのオンライン検索に取り込んでいる。しかし、自然な会話を実現するためにはまだたくさんの課題がある。

文脈から意を汲む能力の開発、それが接続機器の最終目標

人の会話の多くは要約されている。会話の量がどれだけあろうが、やりとりに分解することができる。名詞や固有名詞を代名詞に置き換えるのがいい例だ。「Daveの休暇について尋ねたところ、Janeは“私が彼を空港に送って行って見送る”と言った」。こうした文章は序の口で、簡略してはダメ、となったら会話はすごく不自然なものになる。毎回、きちんとした名称を使うとなったらやりづらく、スムーズではない。

会話というのをシンプルに定義づけると、それは感情やアイデアのカジュアルなやりとりということになる。それは人々がコミュニケーションをとるために自然に行う。くだけた会話というのは、文脈的な要素が大きく、また凝縮していて包括的なものだ。物語を語るような要素も含まれる。会話はあちこちに飛ぶし、時間軸も動く。新しいことについて情報交換するとき、過去に共有したことをベースに話すこともある。推測を伴うこともあれば、厳密に会話に執着しなくてもいいこともある。こうした会話手法は、IoTに仕込まれたものとは全く正反対のものだ。機械によるコミュニケーションというのは、コードに基づいている。それは二分法であり、供給源に制約があり、杓子定規だ。情報はあるが、文脈というものに乏しい。あまりにもカチッとし過ぎていて、物語を語るにはほど遠い。

IoTを活用するときに私たちが感じる違和感は、こうしたアプローチの違いによるものだ。デバイスを操作するときに新しいアプリをダウンロードし、起動の言葉を設定する。そして別のデバイスのために違う言葉を設定し、アップデートを繰り返す。そんな調子だから、買って2週間後にはデバイスは引き出しへとお蔵入り、ということになるのだ。人が望むようなやりとりではないのだ。

不気味さプライバシー問題はさて置き、私たちの身の回りの情報を絶えず収集するデバイスに関していうと、人間が好む会話ができるよう文脈を読む技術を獲得しつつある。目指すところは、人がいつでも違和感なくデバイスを使えるようになることだ。

今後取り組むべき課題は、マシーンに人間のような会話能力を持たせることだろう。会話が自然なものとなるよう、文脈や推測、そして形式ばらないよう吹き込まなければならない。こうした取り組みをすでに始めているのが国防高等研究計画局であり、AmazonGoogleでもある。実際のところ、テクノロジーを開発するにあたって、もっとも注力されるのはインターフェースの使いにくさをいかに少なくするかという点だ。そうした意味でいうと、会話の質を高めるというのは、使いやすさに直結する。

IoT、拡張現実、アシスタント知能(AIという言葉を私はAssistive Intelligence ととらえている)、さらにはモバイル機器ディスプレイでの小型化や拡張、電気まわりの改善といったものも、全ては質の改善を追求した結果といえる。それらテクノロジーにより、文脈を読み取る、究極的には自然な会話をする機能を開発することができると考えられる。これを活用すれば私たちの暮らしは会話にあふれたものとなる。そして、ひとたびテクノロジーと有意義な会話を経験すれば、夢中になること間違いなしだろう。

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(翻訳:Mizoguchi)

このソフトロボットアームは、ベイマックスの腕そのものだ(しかもディズニー製)

Disneyのベイマックス(原題:Big Hero 6)で活躍するチャーミングなロボット(ベイマックス)は、現実的な存在ではない。しかし、そのぷっくりとしたボディは、確実に成長しているソフトロボットの分野の例だ。そして今、ディズニー自身が、まるで映画から抜け出してきたプロトタイプであるかのような、ソフトなロボットアームを製作した。

ディズニーリサーチのロボットチームが作成したこの腕は、その膨らんだ姿や繊細なウインナーのような指、そして現在の状態や情報を近くの人に示すことのできる内部のプロジェクターなど、あきらかにベイマックスの影響を受けているように見える。

研究者たちはシステムを説明する論文の中に「人間とロボットの物理的な接触が考えられる場所では、人間の怪我やハードウェアの損傷を避けるために、ロボットは従順であると同時に、反応性を備えていなければならない」と書いている。「われわれの目標は、人間と物理的にやりとりしながら、オブジェクトを優しく扱うことのできる、ロボットアームとハンドシステムの実現である」。

アームの機械部品はごく普通のものである。肘と手首があり、他の多くのロボットアームのように動作し、同様のサーボモーターを使っているといった具合だ。

しかし関節の周りは大きな枕のように見えるもので覆われていて、研究者たちはこれを「力感知モジュール」(force sensing module)と呼んでいる。これは空気で満たされていて、それに加わる圧力を検出することができる。これには、サーボモーターを人間から保護し、また逆に人間をサーボモーターから保護するという二重の保護効果がある。また自然な接触相互作用を行うことも可能になる。

「ロボットのさまざまな関節上に個々のモジュールを配備することで、ロボットの広い範囲で接触した力を感知し、空間認識を実装することが可能になり、物理的な人間=ロボット相互作用が実現できる」と彼らは書いている。「個別の感知領域は、人間がロボットとコミュニケーションを行ったり、触ってその動きを導くことを可能にする」。

例えば研究者の一人がデモしている、ハグのようなことが可能になる:

この場合にはおそらく、このロボット(と、おそらくロボットの残りの部分)は、自分がハグされていることを理解し、同じ動作を返したり、他の動作を行ったりすることになるのだろう。

その指も柔らかく、中空構造になっている。これらは剛性材料と柔性材料の両方を利用することのできる3Dプリンタで作成されている。例えば膨張式の各指内の圧力センサは、1つの指先が強く押されていたり、全ての体重を支えているなどという情報を感知して、その情報をグリップの調整のためにロボットへ伝達する。

もちろんこれはまだプロトタイプに過ぎない。センサはまだ力の方向を検出することができず、材料や構造は気密を目指したものではないため、連続的にポンプで空気を注入しなければならない。しかしそれでも、それは研究者たちが見せたかったものを表現することに成功している。すなわち、従来の「ハード」なロボットが、ちょっとした創意工夫で「ソフト」なものに改造できるということを示しているのだ。ベイマックスを実現する道のりは遠いが、今はまだフィクションよりもサイエンスに近い段階なのだ。

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(翻訳:sako)

任天堂が今年の夏にモバイルのRPGをリリースする、Cygamesを起用して

Shadowverse(シャドウバース)Granblue Fantasy(グランブルーファンタジー)のメーカーとNintendoが組んで、新しいモバイルRPGを作っている。それはDragalia Lost(ドラガリアロスト)と呼ばれる日本的なアクションRPGで、プレーは無料だがルートボックス的な仕組みがあるので、NintendoとデベロッパーのCygamesの財布は膨らむだろう。

予告ビデオでは、ストーリーがよく分からないが、タイトルから察すると、ドラガリアという人がいなくなって(lost)、一見弱そうなヒーローたちがチームを組み、ドラガリアを見つける旅の途上でモンスターと戦うのだろう。たぶん。

NintendoはZelda(ゼルダ)やXenoblade(ゼノブレイド)をモバイル向けに作りなおすことをせず、Cygamesの力を借りてこの新しいタイトルを作ることにした。このゲームは、キャラクターをランダムにアンロックしたりアップグレードするCygamesのシステムを使っているらしい。ルートボックスに似ているが、ルートボックスとは呼ばれていない。ゲームの売上の源泉は、プレーヤーが、お金を払ってアンロックをたくさんしたくなるところにある。

この契約に伴い、NintendoはCygramesの5%を取得する。Nintendoは、スマホ向けプラットホームのメーカーDeNAの株主でもある。こちらはCygramesの25%を保有しており、Nintendoのモバイルゲーム進出の遅さを象徴している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Appleが8+8=16Kの超精細VRヘッドセットを開発中か

Appleはかなり前から、拡張現実グラスを開発していると噂されていたが、今日はある記事が、同社は仮想現実でもGoogleやMicrosoftやFacebookと競合しようとしている、と示唆している。

そのCNETの記事によると、AppleはARとVR両用のワイヤレスヘッドセットを2020年に出すつもりらしい。その記事は、T288というプロジェクトのコードネームまで挙げている。そしてCNETの情報筋によると、そのヘッドセットはディスプレイが片目8Kで、専用の“ボックス”にワイヤレスで接続する。

VrvanaのTotemヘッドセット

市場ではこれまで、Appleはユーザーと現実世界との間にライフスタイルにフォーカスしたARを置くことに関心があるので、エンターテインメントにフォーカスしたVRは“スキップする”、という想定が一般的だった。

ぼくも、この記事のAR/VR両用説には懐疑的だ。むしろそこで“AR”と呼ばれているものは、MicrosoftがそのVRヘッドセットで実装した“混成現実”(mixed reality)に近いものではないか。それは、ヘッドセットの中で体験するVRの世界を、まわりの現実の情報でコントロールしたり、より豊かにする技術だ。Appleが昨年買収したVrvanaは、まさにそれをやろうとしていた。Appleが本当にARとVRをその解像度で合体させようとしたら、ARとは思えない相当でっかいデザインになってしまうだろう。

片目で8Kの画像は、microLEDだろう。それは現状ではものすごく高価なものになり、電力消費もすごいだろう。今の8Kのディスプレイを二台並べてテストすることを想像すると、複数のハイエンドのGPUをつないで動かすことになる。記事によれば、これはワイヤレスで、Appleが設計したチップが動く外部システムに接続する。二本の8Kフィードをワイヤレスで送るとなると、それもまたたいへんなチャレンジだが、アイトラッキング(eye-tracking)によるレンダリングだから、そのストリーミングの負荷はそれほど大きくはないかもしれない。

Magic Leapのライトウェア(lightwear)

今から2年先とは遠い話だが、Appleはディスプレイのコストを下げる技術に自信があるのだろう。Bloombergの最近の記事では、Appleは、ある特定タイプのディスプレイの製造工場をひそかに作り、その重要なユースケースがヘッドマウントディスプレイだ、という。レンズがあって、しかも人間の目にとても近いから、画素の高密度が重要な要素になる。

その記事でも、このディスプレイの完成を2020年としている。もちろん、それが変わることもありえるが。

VRは着実に改良が進んでいるようだ。初期のブームの原動力だった誇大な扱いは萎えてしまったが、実力に余裕のある大手のテクノロジー企業は、今もVRをひとつの産業に育てようとしている。FacebookとOculusの取り組みは、ある面ではとても洗練されている(限界はまだとても多いけど)。そしてAppleは、バスに乗り遅れたときの大損害を、今から意識しているようだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

DeepCodeはAIの力でコードを洗う…未来のフロントエンドはプログラミングの自動化

チューリッヒのDeepCodeは — 基本的にはコードを分析して改良するためのツールだが — プログラマーのための文法チェッカー/文章改良ツールGrammarlyみたいだ。このシステムはユーザーのGitHub上のリポジトリを読み、25万のルールのコーパスを使って問題とその修復方法を教え、ただしそれによって互換性が壊れないように、そしてもっと良いプログラムになるようにする。

Veselin Raychevが創業し、アドバイザーとしてMartin VechevとBoris Paskalevが加わった同社のチームは、機械学習とAI研究の幅広い経験がある。このプロジェクトはスイスのチューリッヒ工科大学からスピンオフした独立の研究プロジェクトが、プログラミングのためのユーティリティになったものだ。

で、その実際の仕事ぶりはどうか? かなりよろしい。自分の公開リポジトリのひとつをこのシステムに通してみたが、449のファイルに対して49件の提案をもらった。その中には文字通りのコード書き換え — name: String,name: {type: String},に変える — もあるし、必要なファンクションコールがないようだ、という示唆もある。自分のコードに隠れているバグを見つけたいときには、なかなかおもしろいツールだ。このツールがくれるアドバイスは、驚くほど正確だ。それは、人間が見逃しがちな間違いのあるコードを大量に読んだ(学習した)結果作りだすリコメンデーションだからだ。

Paskalevは語る: “コードの意図を理解するプラットホームを作った。それは何百万ものリポジトリを自動的に理解し、デベロッパーがやろうとしている変更に注目する。そしてAIエンジンをそれらの変更で訓練し、プラットホームが分析するコードのすべての行に、ユニークな提案を提供する”。

“今は25万あまりのルールがあり、毎日増えている。競合システムはルールを手作業で作ってるから、最大のシステムでも、長年かけてやっと3000か4000のルールを作った程度だ”。

自己資本のみだった同社は最近、ドイツのbtov Partnersから110万ドルを調達した。ファウンダーたちはいずれも複数回の起業経験がある。PaskalevはVistaPrintとPPAGの創業に関わったし、Raychevは、プログラミング言語のセマンティクスの機械学習という分野の研究者だが、以前はGoogleで働いていた。

DeepCodeは単純なデバッガーではなく、コードを“読んで”それを他の実装と比較する。そしてそれにより、どの行も最高のパフォーマンスを発揮できるように、改良を示唆する。今チームは、多くのプログラマーがそれを使ってくれることを待っている。

“われわれのは、Grammarlyが書かれた言葉を理解するようにソフトウェアのコードを理解する、ユニークなプラットホームだ。その最初のサービスだけでも、ソフトウェア開発のコミュニティは数十億ドルを節約できるし、その次には業界をコードの完全な自動合成へと変身させるフロントエンドを提供できるだろう”、とPaskalevは述べている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

DropboxがオンラインドキュメントサービスPaperにテンプレートを導入

Dropboxは、現在市場に出回るコラボレーションツールよりも、よりシンプルなものを提供することで、さらに大規模なビジネスに訴求しようとしている。同社はこの目的に迫るために、オンラインドキュメントツールPaperに、さらに便利な機能を追加した。

Dropboxの発表によれば、Dropbox Paperのために用意された新しいツールによって、ユーザーはテンプレートを使ったドキュメント作成を行うことが可能になった。Google Docsのようなオンラインドキュメントツールを作成しようとしている企業にとって、これは当たり前の仕掛けのように見えるかもしれないが、Paperのコアユースケースがどのように見えるべきかを検討するためには、実際の導入の前に慎重な検討とユーザーリサーチが行われた筈だ。Dropboxは利用者がプロダクトに親しみを感じるようになって欲しいと願っているため、より堅牢なツールの構築は、この新規公開企業にとっての大きな課題である。

このテンプレートツールは、他のツールでも見られるものとほぼ同様に動作する:Dropbox Paperのページを開くと、沢山のテンプレートからドキュメントを作成するオプションが提示される。Dropbox Paperの一般的な利用法としては、製品開発タイムラインやデザインスペックへの継続的な利用などがある、しかし同社はそうした利用法を、ドキュメントプレビューなどの新しい機能の統合を続けて、拡大していこうとしているようだ。Dropbox Paperは白紙の状態から始まったが、世の中にある沢山の類似製品を前にして、最終的には自分自身を差別化する手段を探し出さなければならない。

同社は、他にもいくつかの小さな機能を展開することを公表している。例えば、文書をピン止めしたり、プレゼンテーションを開始したり、テキストに書式設定したり、他の文書やステッカーを挿入したりする機能だ。Paperのコメントセクションには、新しい会議ウィジェットと書式オプションが追加された。さらには、最近利用したPaperドキュメントをアルファベット順に表示したり、iOS上でコメント通知を解除したりドキュメントのアーカイブを行ったり、ドキュメント間でToDoリストを集約したりするなど、数多くのささやかな便利機能アップデートを追加している。

Dropboxは今年の初めの上場を劇的に成功させ、望んでいた注目を集めたあと、2012年の最初の大ヒットIPOの1つとして、多かれ少なかれその勢いを維持してきた。そしてDocuSignなどがその波に続こうとしている。新規IPOに対する投資家の需要への窓が開かれたように見える中で、複数の企業たちがドアを出ようとしているのだ。

どうやらPaperはDropboxの思い描くパズルの重要なピースのようだ。同社は、消費者向け会社としてのルーツから出発して、シンプルなコラボレーションツールを中心とした会社を常に目指してきた。これは徐々に大きな企業に食い込もうと考える企業が(Slackなども同様だが)取ってきたアプローチである。そのシンプルなアプローチのおかげで、ユーザーたちを引きつけることはできたが、企業向けの取引はより利潤の高いものであり、Dropboxに対してより強力なビジネスを提供してくれるだろう。

Dropboxは、Google Docsや他のツールとの差別化を図り続けるだけでなく、オンラインドキュメントツールの中核的なユースケースを追求するスタートアップたちとも差別化を図らなければならない。例えば、Sliteは、組織内のwikiとGoogle Docsのようなオンライン文書システムによるノート作成機能を取り込もうとしている。このスタートアップは今月初めに440万ドルを調達した。また、ドキュメントの見え方そのものを完全に再考しようとするスタートアップCodaもあり、こちらは6000万ドルを調達した 。こうした中で、テンプレートは、ユーザーの手間を減らしシンプルなドキュメントツールのように感じさせ、大企業の注意を自社の製品に引きつけるための手段の1つである。

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(翻訳:sako)

任天堂の新スマホRPG『ドラガリアロスト』夏配信、事前登録受付中。Cygamesと共同開発

eng-logo-2015任天堂とCygames がスマートフォン向けアクションRPG『ドラガリアロスト』を発表しました。

対応機種はAndroid と iOS。この夏の配信に向けて、スマホゲームらしいガチャアイテムが貰える事前登録キャンペーンも実施しています。

任天堂はこれまでスーパーマリオランやどうぶつの森ポケットキャンプ、ファイアーエムブレム ヒーローズなど、ゲーム機で長く展開してきた人気IPをスマホゲーム化してきましたが、新作『ドラガリアロスト』はゲーム機版がない新規IPです。

ゲーム内容は、等身の低いキャラクターが戦うアクション要素のあるRPG。舞台は剣と魔法っぽい世界。主人公が竜に変身するような描写、多数のドラゴンがPVに登場することから、キャラクターごとに必殺技的に竜に変身できるのか、あるいは竜とキャラクターの組み合わせなどで強力なドラゴンの登場がポイントのように見えます。

仲間を集める要素や「召喚」の言及、事前登録で石ならぬ「竜輝晶」が貰えるとの表記から、つまりはガチャでキャラクターを揃える系のスマホソシャゲのようです。

本日から始まった事前登録キャンペーンでは、ニンテンドーアカウント、Google Playストア、Twitter 、YouTubeで事前登録が可能。総数に応じてボーナスが増える、よくあるタイプです。

ニンテンドーアカウントの場合はログインして登録ボタンを押す、Twitterでは公式 @dragalialost をフォローする、YouTubeでは公式チャンネルのフォロー、Google Playストアではアプリページの事前予約ボタンを押した時点で登録となります。

事前登録者数が10万人に到達したら「竜輝晶」300個(ガチャ2回分)、あとは10万人刻みで増えてゆき、50万人で1500個までプレゼントとのこと。

配信はこの夏予定。

Engadget 日本版からの転載。