2017年のアプリケーション購入額は1064億ドル。2022年には1565億ドル見込み。

App Annieの最新レポートによれば、全世界を通じたアプリケーションストアでの売上額は、本年末の段階で1064億ドルに達する見込みであるようだ。さらに、2022年段階では1565億ドルにも届きそうだとのこと。昨年12月の段階では、売上額が1100億ドルに達するとしていたので、若干の下方修正ということにはなってはいる。成長著しいのはアジア太平洋地域(Asia-Pacific region)で、もちろん中国が、全世界における支出の40%を占めてNo.1となっている。

レポートによれば、全体の支出額が増加しただけでなく、デバイス毎の支出も増加傾向にあるとのこと。1台あたりの支出額は、2017年の20.94ドルだったが、これは2022年には25.65ドルまで伸びそうだとしている。

さらにダウンロード数も2022年までに45%の伸びとなり、2582億に達する見込みであるようだ。

2022年までのダウンロード数予測で、大きく伸びが期待されているのはインドを含むアジア・太平洋地域だ。インドネシアやベトナム、そして中国の郊外エリアにおける成長が期待されている。ちなみにアメリカ大陸において成長を引っ張るのはブラジルで、EMEA(Europe, the Middle East and Africa)地域をリードするのはエジプト、ウクライナ、ポーランド、そしてロシアだと予想されている。

アメリカや日本などの安定的成熟市場にあっては、2022年までのダウンロード数は安定成長となりそうだとのこと。もちろんダウンロード数自体は多く、アメリカでは年間21本の新しいアプリケーションをダウンロードし、日本では15本となっている。

そうはいっても成長の鈍化によって、開発者としては新たなユーザーを獲得するための方策を探っていく必要も生じるのだろう。

利用者の支出額は2022年までに92%の伸びを示し、1565億に達する見込みだ。

支出額の多い国々は中国、アメリカ、日本、韓国、ドイツだ。中でも中国は、2017年比で107%の成長を遂げ、624億ドルとなる。アメリカについていえば、97%の成長で150億ドルから297億ドルとなる見込みだ。

1台あたりの消費額は2022年までに23%の伸びを示し、25.65ドルとなる。

1台あたりの購入額でのトップは日本で、2022年に140ドルとなる見込みだ。世界平均の6倍で、圧倒的な首位となる。

アメリカも2022年には倍増する見込みだが、額は60ドルを超えるあたりとなるようだ。

支出がもっとも多くなるのは、やはりゲームだ。しかし他ジャンルのアプリケーションも市場を広げることとなりそうだ。2022年までに、ゲーム以外の支出も750億ドル程度増加しそうだとのこと。出会い系(デート)アプリケーションや音楽、ビデオストリーミングなどのサブスクリプションによる増加が大きい見込みなのだとのこと。

レポートの全文はこちらから読むことができる。

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(翻訳:Maeda, H

コンテナを安全に隔離するサンドボックス化コンテナランタイムgVisorをGoogleがオープンソースで提供

コペンハーゲンで行われているKubeConのおかげで、今週はコンテナの週、とくにKubernetesの週だ。Kubernetesは、Googleにおけるコンテナの使用から生まれたので、このショウもやはりGoogleからの発表が多い。その中でいちばんおもしろいのが、gVisorのローンチだろう。それはサンドボックス化されたコンテナランタイムで、コンテナ間の安全な隔離を確保する。

‘..Visor’という名前を見て、ぴんと来た方もおられると思うが、gVisorは仮想マシンを隔離して制御するハイパーバイザー(hypervisor)にちょっと似ていて、仮想マシンではなくコンテナを隔離する。コンテナを使うワークロードのセキュリティを確保したい企業には、とくに関心があるだろう。それは、Kubernetesの世界でも未だに問題なのだ。

今日の発表は、こう言っている: “互いにヘテロで信頼性の乏しい複数のワークロードを同時に動かしたいという欲求が、ますます強くなっている。そのために、サンドボックス化され隔離されたコンテナへの関心が生まれている。それは、ホストOSとコンテナの中で動くアプリケーションとの間に安全な隔離境界のあるコンテナだ。gVisorは、アプリケーションのシステムコールを横取りしてゲストカーネルとして動作し、しかも終始、ユーザー空間で動く”。

gVisorに加えてGoogleは、Stackdriver MonitoringにおけるKubernetesのサポートをローンチした。この、まだベータの新サービスは、複数のクラウドやオンプレミス環境にまたがるKubernetesアプリケーションのステートを、すべて一箇所にまとめたビューを与える。ただしGoogle Cloudの外では、すべてがスムーズに動くためにちょっとした統合作業が必要だ。

〔参考: サンドボックス解説

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Googleの高価格なスマートカメラClipsが母の日をねらって50ドル値下げ

5月は祝日が多いから、どこがどんな特売をやっても不思議ではないが、しかし母の日の13日までClipsカメラを50ドル値下げするというGoogleの決定は、このまだ第一世代の製品の売れ行きに関して疑念を抱(いだ)かせる。

昨年10月に、同じく新製品のPixelスマートフォンと共に発表されたClipsは、今年の2月の終わりに、やっと発売された。しかしGoogleは売上を公表しないが、どうやらこの製品はヒットしなかったようだ。このデバイスをめぐるメッセージングは消費者にとって少々わかりにくく、そして249ドルという価格は本誌のレビューなどでも酷評された。

Googleは、こんなにすごくてマジックのようなAIやMLや本体上のデータ処理能力を搭載して250ドルは超お買い得、と言い張ったが、まったく新しいカテゴリーの初めての製品だから、消費者が手を出しにくいお値段はだめだ。しかも今どき、誰もが持ってるスマートフォンのアプリで、いろんなことができるから。

レビューにも書いたように、“Clipsでは短い動画だけでなくGIFも撮れるが、今は24時間全員の手元にカメラがある時代だから、こんな珍製品が249ドルとはちょっと厳しい”。

50ドル下げて199ドルになっても、母の日のギフトとしてはお安くない。しかしGoogleはどうしても特売をやる気であり、この製品への関心も、アメリカ以外では育ちつつある。“スマートカメラ”のClipsは、ソーシャルメディアに直行できる画像とビデオが売りだ。でも人気拡大の鍵は、やはり口コミだな。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

GoogleがApache AirflowによるワークフローオートメーションツールCloud Composerをローンチ

Google Cloudgが今日(米国時間5/1)、Cloud Composerの最初の公開ベータを立ち上げる。それは、Apache Airflowプロジェクトをベースとするデベロッパーのためのワークフローオートメーションツールだ。

通常、ITチームは必要に応じて独自に自動化ワークフローを作るが、それは、さまざまなツールと、いつも動くとは限らないBashスクリプトを寄せ集めた混乱になりがちだ。AirflowとCloud Composerは、ワークフローを作ってオーケストレーションするための標準化された単一の方法をチームに提供する。

Googleによると、この新しいツールはPythonをデフォルトの言語として使用し、これによりチームは、オンプレミスのさまざまなツールや複数のクラウドにまたがるワークフローを構築できる。またオープンソースのプロジェクトなので、ワークフローを複数のプラットホームに亙っても使用できる。Google Cloud Platformに深く統合されているサービスだが、ロックインはない、とGoogleのチームは言っている。

“Cloud Composerでは、Google Cloud Platformの長所とAirflowを結びつけたかった”、とCloud Composerのチームが今日の発表で書いている。“Airflowの最良の機能をそのインストールや管理に要するオーバヘッドなしで提供できるサービスを作ろうと思った。余計な作業に時間を取られなくなれば、もっと重要なもの、すなわちワークフローに多くの時間を割けるようになる”。

Airflow、そしてその拡張であるCloud Composerでは、さまざまなタスクとそれらに期待する結果を、Directed Acyclic Graph(DAG, 有向非循環グラフ)というもので定義する。これらは、標準的なPythonのファイルで、ワークフローをその細部まで定義している。完全なドキュメンテーションは、ここにある。

Googleによると、同社はAirflowのコミュニティにも積極的に参加している。そしてすでに、相当数のプルリクエストを貢献している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ドンキーコングの伝説の世界最高得点は不正操作によるものだった

ドキュメンタリー映画「ザ・キング・オブ・コング」(2007年にアメリカで公開されたアーケードゲーム「ドンキーコング」で高得点を競う人たちの話)で有名になったドンキーコングの最高得点の世界記録が、世界のアーケードゲームの得点の事実上の審査機関となっているTwin Galaxiesによって無効と判断された。しかも、その記録の他に、いくつものゲームの高得点記録を打ちたてながら、折に触れて疑惑のプレイヤーと目されていたBikky Mitchellは、今後永久に、新しい記録の公認が許可されないこととなってしまった。

これは数十年間にわたる歴史に疑問を投げかける大問題だ。これ以外にも、怪しい記録は無効にされてしまうのか? 懐かしのアーケードのレジェンドたちは無事でいられるのか?

と、その前に、ひとつ言っておこう。これは小さな世界のどうでもいい問題のように聞こえるかもしれないが、クラシックゲームの世界は非常に大きく、何百万という人間がこうした問題を凝視し、真剣に考えている。30年前のゲームでハイスコアを出したとか、接戦の末に記録を4分の1秒縮めたとか、そういうことが、あたかもオリンピックでメダルを取ったかのごとくに尊敬されるのだ。ネット上のコミュニティーの大きさも、その真剣さも、決して侮ってはいけない。インチキは、もちろん、決して許される世界ではない。

Billy Mitchellの場合は希なケースだと言われいる。彼のプレイ・テクニックには疑う余地がなく、80年代から記録を出し続けてきた。しかし、「ザ・キング・オブ・コング」を見た人なら、彼にはどこか疑わしいところがあり、ドンキーコングに関する知識もいい加減であると、誰もが感じたはずだ。

問題は単純なことだ。彼は、ドンキーコングで初めて100万点を叩き出したときの有名な映像を記録したテープを提出しているのだが、彼自身が、そんなふうに巧みにゲームをプレイしているところを誰も見ていないのだ。

それはアウトだろうと思われるかも知れない。しかし、常に記録が更新されてゆく世界では、新記録は誰も見ていないところで達成されるのが普通だ。がら空きのゲームセンターや、信頼できる目撃者もいないところだ(Twitchの登場でその状況は変わったが)。仕事から帰る途中で世界記録を出したとしても、生身の目撃者がいるか、その映像を第三者が審査しないかぎり、公式には認められない。その仕事を行っている最大の組織がTwin Galaxiesなのだが、彼らは記録に対して非常に厳格な態度を示している。

「ザ・キング・オブ・コング」で紹介されたMitchellの疑惑のテープに映された最終得点。100万点に達すると得点は元に戻るので90万点台で表示されている。

「ザ・キング・オブ・コング」の最後のシーンを覚えているだろうか。Mitchellは、「画面を直接撮影したテープ」でもって104万7200点というスコアを示し、地方の勇敢な若者Steve Wiebeを下した。このゲームを目撃した人間はいない。そのすぐ後、彼は105万200点という得点を記録したが、このときも目撃者はいなかった。そのわずか1週間前、アイオワ州にあるInternational Video Game Hall of Fame(ビデオゲームの博物館)に招かれた際には、ドンキーコング(106万2800点)とドンキーコングJR.の両方で記録を打ちだした。

さて、ここから話が怪しくなる(そしてオタクっぽくなる)。

怪しいと感じた人間は、Twin Galaxiesに正式に異議を唱えることができる。それを受けて、彼らは必要に応じて調査を行う。Xelniaという名で知られるJeremy Youngは、この2月に2つの疑惑をTwin Galaxiesのフォーラムに投稿した。そのひとつは、BoomersというゲームセンターでMitchellが出したという最新で最高の得点を示すとされる証拠に関する疑惑だ。

他の人たちも指摘しているが、ビデオには途中の得点も、最終的な得点も表示されていない。審査員は信用のない人間であり、時系列も不明確だと、いろいろある。なかでもいちばんまずいのは、Mitchellの共犯者が、これ見よがしにドンキーコングの基板を(他所で検証するために)、ドンキーコングJR.の基板と差し替えていることだ(Mitchellはそのマシンで記録を出したとされている)。しかし実際はどちらも、ドンキーコングJR.の基板だった。

Twin GalaxiesのユーザーRobert.Fは、インターネットのフォーラム用語を使って、その2つの違いを教えてくれた。

慣れていない人の目には、DKもDKjrも同じに見えます。実際に、よく似ています。しかし、ハッキリとした違いがいくつかあります。……DKの基板には白い文字が印字されていて、DKjrの基板にはバナナイエローの文字が印字されています。DKのサウンドは、半分がデジタル、半分がアナログで、DKの基板にはアナログ・サウンド用の調整ツマミがあります。DKjrのサウンドは完全にデジタルなので、DKの基板の同じ位置に調整ツマミはありません。3つめの目に見える違いは、ビデオをよく見るとわかりますが、DKとDKjrの基板には、同じレイアウトで同じ数のROMソケットが配置されています。しかし、DKjrのほうは、ひとつのソケットが空になっています……

なぜこんな細工をするのか? 単なる間違いだったのか? YouTubeでこの問題を指摘した人たちのコメントが、なぜ削除されたのか? また怪しいのは、こうした状況的な問題に対する説明が、当時、右往左往したり、記録を達成したときの興奮状態のなかで、言葉を言い違えているなどという問題だ。幸いなことに、それらは証拠の範囲には含まれなかった。

エミュレーターというアプリケーションがあるのをご存知だろうか。アーケードゲームなど、昔のソフトウエアを、オリジナルのハードウエアで走らせたときとほとんど同じ形に、パソコン上で使えるようにするソフトウエアだ。現在、もっとも高度で、おそらくもっとも有名なエミュレーターに「MAME」がある。ドンキーコングから最近の複雑な3Dグラフィックスまで、みごとにエミュレートしてしまう驚きのアプリだが、当然のことながら、MAMEでの得点は世界記録としては公認されない。ソフトウエアは簡単に操作できるし、ゲームのデータを書き換えることもできてしまうからだ。記録公認には、本物のアーケードマシンを使わないといけない。

だが、MAMEも完璧ではない。グラフィックに多少の違いがある。もっとも、その違いを探そうとフレームごとに目を凝らさなければわからない程度ではあるが。

人々は、それを使ってMitchellの、誰も見ていない、彼だけが知るゲームの得点を再現しようとし始めた。

それによってわかったのは、ドンキーコングの本物の基板を使った場合、グラフィックが書き換わるときに、「スライディング・ドア効果」と呼ばれる特徴的な描画方法がとられていることだ。それは、ピクセルが更新されるときのパターンによって現れる。Mitchellのテープをよく調べると、スライディング・ドア効果が見られない。その代わりに、MAMEで特徴的なパターンが現れているのだ。メモリーからデータを読み出す方法によって、フレームがブロック状に描きかわる。

Youngが証拠として提供した下のGIF画像でも、同じ効果が見られる。

最初の画像は、本物のアーケードマシンを60FPSで撮影したものだ。左上から下にかけて、斜めに「スライディング・ドア効果」が見てとれる。

次はMitchellが105万200点を出したときの映像だ。

最後は、MAMEでの同じ場面。

ハシゴが一度に表示されるのがわかるだろう。スライディング・ドアは見られない。これはもう動かぬ証拠だと思うだろう。実際、Twin Galaxiesの調査員たちもそう考えた。本日、フォーラムで発表された彼らの結論は、以下のとおりだ(太字部分はオリジナルのまま)。

104万7200点を出したドンキーコングのテープ(「ザ・キング・オブ・コング」の“テープ”)、105万200点(Mortgage Brokersの得点)は、Twin Galaxiesが以前からこれらの得点を実証するために使用し、データベースに保管してきましが、これらは改造されていないオリジナルのドンキーコング基板から直接出力されたものではありません。

Twin Galaxiesは今のところ、MAMEでの得点であるかどうかには言及していないが、心が痛む。そうに違いないと、みんなは感じてる。ともかく、Mitchellが本物だと偽って提出した不正な映像による記録は抹消され、さらに、今後Twin Galaxiesへの記録の登録も禁止すると発表された。

嬉しいのは、「ザ・キング・オブ・コング」で破れたチャレンジャーSteve Wiebeが、ドンキーコングで最初に「本物の」100万点を突破した人物に昇格したことだ。すっかり遅くなって済まないが、Wiebeに祝福の気持ちを贈ろう(ウィキペディアではすでに更新されている)。

更新情報:WiebeはVarietyのインタビューにこう答えている。「私はもうチャンピオンではないが、最初に100万点を出した人間として認められて本当に安心しました。11年前、必死にそれを求めていたのですから」

一方、Mitchellは、調査が始まってからの数カ月間、姿を消している。アーケードゲームの世界には、もう彼の居場所はない。たとえ彼が新しい世界記録を打ちだしたとしても(現在のチャンピオンは彼にはそのスキルはないと言っているが)、インチキでないかを何年間もかけて調査さされることになるだろう。コミュニティーは決して彼を許さない。

今回のことで心配する声があがっている。長年、崇拝されながら、現在のように厳格に審議されてこなかった他のゲームの記録も、調査されるのだろうか? たとえば、信頼できる目撃者や確かな記録のない得点は、リストから消されてしまうのか?

Twin Galaxiesでは、こう判断している。

Twin Galaxiesは、それがわかったときに、いつでも過去のデータベースから不正な得点を探し出します。
今回の得点に関連するもののみならず、ビデオゲームの歴史のなかで論議されてこなかったものも含め、私たちの系統的アプローチが、さまざまなものを表面化させます。
私たちは手を緩めません。真実こそが最優先事項です。どんな犠牲も厭いません。

今回の論争は幕引きとなり、疑惑に満ちた伝説のゲーマーは汚名を背負うこととなった(もしあれが本当ならそうなるべきだ)。次は誰だ? だが、次に誰が落ちようとコミュニティーは間違いなく繁栄を続ける。昔のゲームへの情熱は決して消えない。ジェネレーションXの古い愛好家が過ぎ去った栄光の日々を延長しようとしているだけではなく(たしかに彼らは大きな比率を占めているが)、新しい世代も生まれて来ている。

私と同様、昔のビデオゲームにちょっとでも興味を感じた人は、どんどん飛び込んできてほしい。あなたの新しホビーになるかも知れない。だが、インチキはダメだ。ところで、ドンキーコングの現在の最高得点は124万7700点だ。ほんの2カ月前に、Robbie Lakemanが叩き出した。がんばれ。

[原文へ]

(翻訳:TechCrunch Japan)

週4時間働けばよいという考え方に反論する

[著者:Daniel Tawfik]

VonjourおよびZen Patientの創設者

カンファレンスやネットワーク・イベントなどに参加すると、この技術業界の周囲で働いている人の多さに驚かされることがある。ソーシャル・メディアの教祖的な人たち、サーチエンジン最適化の忍者、ブロガーなどなど。まさに、技術業界の「クラブ・プロモーター」の同人会だ。業界の煽り屋だ。

「成功するには自分の人生をハックせよ(近道せよ)」「適切な人に会え」「ビジネスのスーパースターになれ」。彼らは自分の特効薬を持っている。世界を旅しながら、ウェブ・ビジネスからの受動的所得で稼いでいることを自慢して歩いている。その間、私たち庶民は、9時から5時の仕事でこき使われている。

私たちが特効薬を探しまわっている世界では、こうした人たちが武器を蓄えているように思える。さらに、彼らにはその特効薬を売りつける大勢の客がいる。

もっともわかりやすい例として挙げられるのが、Tim Ferrissの「4-Hour Workweek」(1週間に4時間だけ働く)という教えの信者たちだ。この本自体は、それほど問題ではない。仕事で最高の投資利益率を得るための、資産管理の面白いコツを説明する内容だからだ。しかし気になるのは、成功への道をハックせよという考え方だ。これが起業家仲間に広まっている。

この考え方は、起業家精神について私が知っていたあらゆることに反している。素晴らしいアイデアを思いついたら、そのコーディングができる若者を大学から釣り上げたり、安価な開発業者に開発をアウトソーシングするという考え方だ。起業家精神とは、ネットワーク・イベントの連続であり、資金集めの会合であり、彼らの特効薬を使ってコネクションを持つことだと思っている。実際の流通戦略とは反対だ。大変に難しい仕事には消極的なアプローチだ。

ここに欠落しているのは、職人精神だ。専門的な技能であり、自分が作るものに気持ちを集中させることだ。実際にそれが、成功への第一の力となる。近道をつなげてバクチを重ねるのとは訳が違う。

この業界の周辺ではどうだろう。技術業界のセレブたちがTwitterでタオルを振り回したり、TechCrunchにゴシップを流したり、そんなことはビジネスや職業の基礎を築くにあたって、なんの意味もない。どんなにたくさん会議の予定を詰め込んでも、ネットワーク会議に参加しても同じことだ。重要度はせいぜい三番目。下手をすれば、単なる気晴らしだ。

スタートアップの墓場は
その夢を実現させる専門知識も
適切なスキルも持たない
夢想家で埋め尽くされている

仕事で成功するためには、専門知識の獲得と集積が欠かせない。どんな仕事であれ、専門知識を活用するか、傍観者でいるかのどちらかしかない。物事を動かすのは専門知識を持つ者だ。好奇心から得られた専門知識と、自分が作りたいものに真剣に立ち向かう姿勢だ。

スタートアップは、その性質上、開発のための専門知識の短期集中コースだ。リソースが完全に乏しいことが、スタートアップをユニークな存在にしている。リソースがないからこそ、創設者は早くスキルを身につけ、プロジェクトに要求される技能の獲得を強いられる。

「◯◯のやり方がわからない。だから勉強しなければ」というのは、成功した創設者からよく聞く言葉だ。「◯◯のやり方がわからなかった。だから諦めるかどうかを考えなければ」というのは、失敗した創設者からよく言う言葉だ。

ひとつ上のものにチャレンジすれば、スタートアップは教師そのものであると気がつくはずだ。スタートアップが生き残るために急いで知識を積み上げなければならないという要求に勝る有り難い教師は、他にない。

技術系の創設者は、大きな会社だったなら、その経験によって専門家の役割を押しつけられるだろうが、隣接する技術分野に順応し、より多くの専門知識を身につけることは大切だ。そうした仕事を他の専門家に委任できるだけの人財はないからだ。

セールスであれ、経理であれ、マーケティングであれ、管理であれデザインであれ、別の分野の仕事を行うことも同じだ。若い企業では、その役割を担える人財がないのだから、自分が興味を持ってそれに取り組むしかないのだ。

そうした未知の分野で苦労し、逆風に立ち向かうことで、スタートアップとは、職業と人格形成のための触媒なのだということがハッキリと見えてくる。外的な力の気まぐれで成功したベンチャー・プロジェクトも実際にはあるが、こうした成長は、金には換えられない報酬であり、値段の付けられない経験をもたらしてくれる。

だから、受動的な「4時間の考え方」は自滅的なのだ。ビーチでくつろいだり、世界を旅することばかりで、自分の専門知識という武器を積極的に磨こうとしないのは、職業過誤と言える。

それは現実的ですらない。真面目にやっている企業は、受動的に成長しているわけではない。受動的な考え方は、「すごいアイデアを思いついたから、人を雇って作らせよう」とか「売り上げを伸ばしてくれる素晴らしいコネがある」という言動に人を走らせてしまう。アームチェアに座った夢想家は、私が動いている間も働かない。スタートアップの墓場は、その夢を実現させる専門知識も適切なスキルも持たない夢想家で埋め尽くされている。理由はひとつ。アイデアは自動的に物になることはないのだ。高いスキルを駆使した真剣な努力によってのみ実現される。

とくに大切なのは、ビジネスを、近道と取り引き関係の連続だと思っている限り、自分自身とビジネスの未来を成功に導く経験を積み重ねることはできないということだ。もちろん、創設者に専門知識があっても失敗するスタートアップはある。それは単に、専門知識が不足していたためだ。しかし専門知識は、経験を重ねてゆく間に、ビジネスを生み出す苦労を乗り越えることもある。目の前のアイデアに取り組んでいる間に、次のプロジェクトのための知識も蓄えられているのだ。

これは、イーロン・マスクのような人間が、最高レベルの問題を解決するための知識を持って、プロジェクトからプロジェクトへ、セクターからセクターへと飛び回る、そんな職人的な専門性と考え方だ。面白いアイデアを思いつくのは、単にその人に能力があるからだけではない。それは、ビジネスの分野で、自分のやり方で仕事ができる技量があるからだ。彼は自分のビジネスの学際的な学生の典型だ。

あらゆるものに最適化すれば、長期的に最適化が可能になる。今からビジネスのチャレンジを利用して、作りたいものに必要な技術を積み上げるのだ。あらゆるベンチャーが成功するという保証はないが、専門知識と技術を高めれば、長く仕事を続けてゆくうちに、幸運は自分の望む方向へ近づいてきてくれる。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

ミュージシャンは盗むよりもSpliceを使ったほうが簡単で早い

「上位40パーセントの曲が私たちのプラットフォームで作られていたと知ってびっくりしました」と語るのは、Spliceの共同創設者Steve Martocci。彼は何人かのベッドルーム・ミュージック(パソコン上で製作された音楽)の作曲者の話をしてくれた。彼らは「ファミリーレストランのOlive Gardenで働いていたが、Spliceに音源を投稿し始めた」。そのあと、彼らはすぐにファミレスを辞めた。アーティストたちが、彼らの音源をダウンロードして使うようになったので、それで十分に稼げるようになったからだ。やがて人気DJ、Zeddとのコラボを行い、ビルボード12位に輝くヒット曲「Starving」が生まれた。

Spliceは、4700万ドルの資金を調達し、このまったく新しい音楽経済にパワーを与えている。デジタル楽器ソフトやサンプル音源パックは、一般的に高価で、無料お試し期間が設定されていないものも多いため、その95パーセントが海賊版として出回っているとMartocciは見ている。これは衝撃的な話だ。カニエ・ウエストですら、人気のSerumデジタル・シンセサイザーを不正ダウンロードして捕まっている。

一方、Spriceでは、月7ドル99セントの利用料で、最大100サンプルまでの著作権フリーの音源がダウンロードでき、それを自分の作品に使うことができる。Spotifyで音楽を聴くよりも安い。Spliceは、音源がダウンロードされた回数に応じて、その提供者に代金を支払っている。その総額はすでに700万ドルを超えている。

Splice Soundsは、サンプル音源のiTune Storeのようだ。

「音楽ビジネスのテーブルに、もっと席を増やしたいんです」とMartocciは話す。彼は以前、メッセージ・アプリ「GroupMe」の会社を立ち上げ、2011年に5000万ドルから8000万ドルの価格でSkypeに売却している。「GroupMeは、友だちとコンサートに行くために作りました。音楽は常に私の動機となってきましたが、私のキャンバスはコーディングです。アーティストたちが私のところへやって来てハグをしてくれます。私が創造的プロセスに変革を起こしているからです」

Spliceの共同創設者Steve Martocci。

現在彼は、しっかりとしたミュージシャンのコミュニティーで成功し、12月からは3500万ドルのシリーズB投資を受けるという実績によって、大物の支援が受けられるようになった。Spliceは、Facebookの元プロダクト・マネージャMatt Pakesを製品担当副社長として迎え入れ、ニューヨークの中核チームの責任者に就けた。また、Secretの共同創設者Chrys Baderを雇い入れ、ロサンゼルスの新チーム設立を任せている(告白するが、このことを私は、彼らがサンフランシスコから出て行く前から知っていた)。

Spliceには現在100名のスタッフがいるが、ほとんどが趣味のミュージシャンだ。「サンフランシスコの人間は一人もいないと思います」とMartocciは言う。彼は、オフィスをアーティストのライブ会場のようにしたいと考えているのだ。「みんなが音楽に強い情熱を抱いている。ぜんぜん技術系の会社には感じられません」とBaderは話している。Martocciは社員の意見をとても大切にしている。「過去にめちゃくちゃ面倒な人たちと仕事してたから……」ずいぶん雰囲気が違うとBaderは言っていた。Secretの共同創設者との意見の食い違いのことのようだ。「自分の人生のこの時点では、下らないことに付き合っている暇はありません。このチームでは、つまらないいざこざは皆無です」

「Sounds」マーケットプレイスが開始されてから、Spliceの利用者数は1.5倍に増えた。Spliceは、ソフトウエアが楽器を喰うという壮大なビジョンを描いている。つまり、プログラマーのコーディングを支援するアプリと同じように、ミュージシャンの作曲を支援するツールを彼らは作っているのだ。Splice Studioには、GarageBandやLogicやAbletonのような作曲ソフトウエアと、クラウドで同期できるバージョン管理機能が統合されている。

ちょっと難しそうに聞こえるかも知れないが、これが命綱となるのだ。Splice Studioは作曲をしている間、編集を加えるごとに自動的にバックアップをとるため、いつでも元に戻すことができ、手動でいちいちバックアップをとったり、コピーの整理に頭を悩ませることなく、コラボレーションが行えるのだ。

Splice Studioでは編集を加えるごとに自動保存されるため、いろいろ試した後で元に戻すことができる。

Spliceのスタッフは、まったく別の畑から来た人々ではなく、自らも作曲を行うミュージシャンであるため、解決すべき問題の本当の意味を熟知している。収入は予測不能だが、Spliceはミュージシャンたちに、プラグイン、ソフトウエア、楽器を購入選択権付きレンタルの形で利用させている。支払いを中止して、後で再開することが可能だ。シンプルなストリーミング・サービスで不正MP3を駆逐するというSpotifyの取締役Sean Parkerの計画に習ったこうした利便性が、Spliceを「海賊行為よりも簡単にしている」とBaderは言う。「Redditですら文句が出ないものを作りたいんです」とMartocciは笑う。
しかし、次にSpliceが向かう先には、創造性における、最大にして、もっとも陰湿な障壁がある。ライターズ・ブロック、つまり作家のスランプだ。現在活躍しているミュージシャンたちに聞けば、未完成の歌が詰め込まれた巨大なフォルダーを見せてくれるだろう。頭の中に浮かんだメロディーを作曲ソフトで数トラック分打ち込むのは簡単なことだが、それに磨きをかけ、不要なものを取り去り、ぴったりのサウンドを見つけて、聴くに堪える作品に仕上げるには、苦痛に近い努力が必要だ。

それに対するSpliceの答は、Creative Companion(クリエイティブ・コンパニオン)だ。現在、Baderのロサンゼルスチームがこの作業に取りかかっている。次の展開を提言したり、すでに作られている曲の雰囲気に合う音源を教えてくれたりする、曲作りのアシスタントだ。「そこ、ベースラインを入れたほうがいいね。マスターリングを加えよう」といった助言ができるよう、Spliceが「クールな機械学習要素」を使っているとMartocciは説明してくれた。

SpliceはSecretの共同創設者Chrys Baderを雇い入れた。

Spliceにとっての問題は、どれほどの作曲家が料金を払おうと思ってくれるかだ。「一般消費者向けの製品ではなので、上限があります」とBaderは認めている。内部の調査では、世界には3000万人の作曲家がいるという。その多くはSpliceの存在すら知らない。「しかし、月に8ドルだから、破産することはない。プラグインに200ドルとか、Abletonに700ドルを払うなんて、正気じゃない。ミュージシャンには手が出せません。ミュージシャンの友人がいつも言ってる。金がない、金がない、……でも、Spliceに賭けてみるよって」

Union Square Ventures、True Ventures、DFJから大規模な投資を受けていることでも、Spliceは競争相手の注目も集めている。クリエイティブ・ソフトウエアの大手Adobeもこの分野に興味を持ち始めた。また、Native Instrumentsといった音楽用ツールの老舗は、Sound.comを立ち上げ、真正面から対決を挑んできた。しかし、Spliceは長期戦を想定している。Splice Studioを無料公開することでユーザーを呼び寄せ、優れたクリエイターに独自の音源パックの製作を委託する。その意味では、Spliceはレコードレーベルに似ている。

「私は、もっと卓越した音楽に溢れた世界を見てみたいのです」そこでは「あらゆる場面に合う音楽がたくさんある」とMartocciは語る。「ミュージシャンの生活を良くするものが作れたら、私たちの生活も良くなる。私たちの多くはミュージシャンだからです。人生において、他に何があります?」とBaderは説明していた。

コンピューターによって音楽作りが民主化され、大量のアマチュア作曲家が世界に作品を流すようになった。しかし、良い民主化には、公開されるすべての製作物の善し悪しを見分けるレイヤーが必要になる。ソーシャル・ネットワークでもそうだった。そして、才能あるアーティストが、みんなの心を惹きつける作品が作れるよう、ツールも必要になる。

Martocciはこう結論付けている。「ソフトウエアは偉大な道具です。世界の3分の1の人が、いつか音楽を作りたいと考えています。彼らにはもう、ギターや録音機は必要ありません」。どのアプリを選ぼうとも、その創造作業のどこかにかならず存在していたいと、Spliceは願っている。

[原文へ]

(翻訳:TechCrunch Japan)

 

FacebookのF8カンファレンスのビッグな発表、上位10まとめ

FacebookのF8カンファレンスの初日は、たくさんの発表とアップデートでギュウギュウ詰め。ここではMark Zuckerbergのキーノートから、トップテンをご紹介しよう。カンファレンス関連の記事は、ここにそのリストがある。

1. デート機能!

あなたの次の出会いは、Facebookで始まるかもしれない。同社が発表した一連のデート機能は、今年後半にテストが始まる。ユーザーのデート用プロフィールは、同じくデートを求めている、友だちでない人にだけ可視にできる。データが通常より多くなるから、本当にあなたにふさわしい人を見つけられるかもしれない。

2. 履歴削除によるプライバシー保護

目下開発中のClear Historyという機能は、Facebookが広告やアナリティクスツールで集めたユーザーデータをユーザーが削除できる。たとえばそれは、Facebook上での閲覧履歴などだ。 Mark Zuckerbergはこの機能を、ブラウザー上でクッキーを削除することになぞらえた。

3. Instagramにビデオチャットといじめ撃退機能が

Instagramでビデオチャットができる。まだ見てないけど、これまでのメッセージングツールを拡張したような、シンプルな機能だろう。またInstagramは新しいフィルター機能により、ユーザーをいじめコメントから保護する。そしてExploreタブが改良された。

4. アプリのレビューを再開

Cambridge Analyticaの一件以来休止していたアプリのレビューを再開する。デベロッパーには嬉しいニュースだ。

5. Oculus Goが199ドルで発売

廉価版のVRヘッドセットOculus Goが今日(米国時間5/1)発売された。32GB搭載機で199ドル、64GBなら249ドルだ。

6. Messengerがデザイン一新+チャットの翻訳機能

FacebookのM Suggestionsアシスタントにより、Messengerでチャットが翻訳される。Messengerは、すっきりしたルックスになり、基本的な機能であるチャットを強調している。

7. 3D写真

News Feedに3D写真が登場。数か月後には、友だちのステータスアップデートにも現れるだろう。

8. WhatsAppのSnapchat Storiesクローンがユーザー数新記録

WhatsAppがSnapchatの国際的成長の機会を横取りした。WhatsApp Statusの一日のアクティブユーザー数が4億5000万に達したのだ。

9. InstagramにAR効果が

Facebook上の拡張現実プラットホームは、Facebookオンリーだから伸び悩んでいた。そこで今度からは、ARカメラのような効果がInstagramにやってくる。ここは、お客さん最優先の写真共有サービスだからね。

10. WhatsAppがグループビデオチャットとステッカーをサポート

グループビデオとステッカーがWhatsAppにやってくる。数か月後には、一つの画面を分割して4人(もしくはそれ以上)でチャットできるようになる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

認知症の人が自分で着替えができるようにするニューヨーク大のスマートドレッサー

毎日の生活の中で、服を着ることは重要な作業のひとつだが、長年の経験で第二の天性になっている。しかし認知症の人などはその天性を失い、うまく着ることができないことがある。ここでご紹介するニューヨーク大学で作られたスマートドレッサーは、そんな人たちの服を着る作業を助けるとともに、介護者の苦労と負担を減らしてくれる。

臨機応変な人間に換えてロボットのドレッサーを使うことは、無神経なやり方に見えるかもしれない。しかし介護施設などでは介護者がタイムリーに特定の人の世話をできないこともあるし、また居住者自身もプライバシーと独立性を重視して、このようなソリューションの方を好む場合もある。

“目標は認知症の人びとを介助して、彼らが今いる場所でもっとおだやかに老いていけるようにすることだ。また理想としては、要介護者が着替えをしているときには、介護人が休めるようにしたい。そのためにこのシステムは、着替えが終わったら介護人に通報し、手伝いが必要なら合図できる”、とプロジェクトのリーダーWinslow Burlesonがニューヨーク大学のニュースリリースで述べている。

このデバイスはDRESSと呼ばれ、引き出しが5つある化粧だんすで、上には鏡ではなくタブレットがある。タブレットは、表示とカメラの役を演ずる。そして、服を着替える人の様子を観察しながら、正しいやり方を教える。

正しくない着方はたくさんあるが、正しい着方はひとつだ。シャツは上に頭と首を通し、前を胸と腹側にする。ズボンは前開きを前にして着る。靴下は両足に着ける。などなど。服にはタグが付いているので、DRESSはそれを見て正しい着方をしたことが分かる。ズボンを着る前に靴を履いた、という間違いもチェックできる。引き出しの前面についているライトが、次に着るべきものを知らせる。

しかし、要介護者が迷ったり、使い方が分からなくなると、介護者に通報が行くので助けに駆けつけられる。しかし完全に正しい着替えが終了したら、それは、完全に自力でやった着替えだ。それは、以前は不可能なことだった。

DRESSは現状ではまだプロトタイプで、概念実証のような段階だ。今後はシステムの視覚系をもっと改良したり、衣類のたたみ方/広げ方の標準化、衣類につけるタグの改良などが課題だ。

画像クレジット: ニューヨーク大学(NYU)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebook、「ハッピーバースデー」スパム問題をストーリーで解決へ

誕生日にFacebookの通知をオフにしたり、アプリそのものを削除したことのある人はいないだろうか? みんなの「誕生日おめでとう」がタイムラインにあふれるのを止めるためだ。実は、対応策が検討されている。Facebookが誕生日通知をどう扱うつもりかについて、今日のFacebook F8カンファレンスの基調講演でヒントが語られた。

新機能はFacebookのデモにはなかったし、公開時期も明らかにされていない。

しかし、基本的な考え方はこうだ。Facebookはストーリー機能を活用して「バースデー・パッケージ」を作り、その日の終わりにまとめて1回本人に送ることで、ユーザーは友達のタイムラインにメッセージを投稿しなくてもよくなる。

この話は、コラボレーション・ストーリー、ビデオクリッピングが可能になるストーリーのオプションなど、ストーリー拡張計画の一環として簡単に触れられた。

「そして誕生日には、友達全員があなたのタイムラインにおめでとうを書き込む代りに、「ハッピーバースデー」と書かれたパッケージに写真やビデオをまとめたものを受け取るというのはどうだろう」と製品開発責任者のChris Coxが基調講演で話した。

この機能が実際いつ公開されるのかは不明だが、Facebookが正式発表しないのはこの新しい「ハッピーバースデー」機能の詳細がまだ固まっていないからだろう。

友達のタイムラインに書き込むことが禁止されるとは考えにくい。むしろこれは、Facebookが友達や家族の誕生日を思い出させるためのプロンプト方法を変えるという意味かもしれない(現在Facebookは、誕生日メッセージをタイムラインに投稿するよう誘導しているが、それがストーリーを使うことを推奨するように変更されるのかもしれない)。

長年続くハッピーバースデー・スパム問題をFacebookが解決しようとする試みはこれが初めてではない。これまでにも誕生日投稿をグループ化するしくみを作ったり、2016年のバースデー・カメラや昨年の自動的にパーソナライズされたビデオメッセージなどでビデオを使わせるなど、さまざまな努力をしてきた。

さらには、誕生日メッセージを思い出ビデオにまとめる実験をしたこともあり、これは今回Facebookが紹介したハッピーバースデー・ストーリー機能にいちばん近い体験かもしれない。まとめビデオが復活する場合、ニュースフィードに現れるのではなく、あなた専用にパーソナライズされたストーリーになるものと思われる。

もちろん、バースデースパムが《どうしても》嫌な人は、当日近くなったらプロフィールから誕生日情報を削除すればいい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebookのデート分野参入でMatchの株価が暴落

Facebookのデート機能導入の発表を受け、デートサービス企業のMatch株が暴落している。Matchは、Tinder、Match、OK Cupid、Plenty of Fishといった出会い系サービスを運営する会社だ。

本稿執筆時点で、Matchの株は約22%値下がりしている。

この分野へのFacebookの参入は、Matchの屋台骨と直接競合することを意味している。

しかし、Match Group CEO Mandy Ginsbergは、Facebookの同分野への参入を喜んでいると言う。

「われわれはFacebookがこの世界に来たことを喜こぶとともに、世界へ羽ばたくチャンスと捉えている。Tinder も急成長を続けている。」とTechCrunch宛ての声明で語った。「この分野に関わる個人的、秘密性のあるデータの多さを考えると、参入のタイミングについては驚いている。しかし、われわれは今後も製品の改革を続けて人々の関係の成功に注力していく。このカテゴリーのことはわれわれが誰よりも知っている。Facebookの参入はこの分野全体を活性化させるものだ」

一方Matchの親会社はFacebookへの批判を口にした。IAC のCEO Joey LevinはTechCrunchに向けた声明でこう言った。

ようこそこの世界へ。居心地はいいですよ。彼らのサービスは米ロ関係に貢献することでしょう。

BumbleもまたFacebookの新サービスに影響される可能性のあるライバルだが、今日のニュースに「ワクワクしている」と言っている。

「当社経営陣はすでにFacebookと接触し、連携の方法を探っている」とBumble広報がTechCrunchに伝えた。「BumbleとFacebookが手を組むことによって出会いのスペースをより安全で強固なものにできるだろう」

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Facebook、F8カンファレンスでデート機能導入を発表

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

甲板員が素晴らしいウェイターになることを知る ―― なぜそれが重要なのか

【編集部注】著者のTX Zhuoは、フィンテック、エンタープライズソフトウェア、マーケットプレイスに焦点を当てるFika Venturesのマネージングパートナーである。

HR技術におけるブレークスルーは、雇用主に対して、プロセスを強化し、最高の人材を引き付けるための改革ツールを与えるだけでなく、ジェンダー間の均等報酬や、ブラインド採用(blind hiring:人間の属性を見ずスキルだけで採用を行うこと)などの長年に渡る労働問題をも解決しつつある。また同時に、従業員に対しては、現在の職務をはるかに越えた職務シナリオのために必要な事前スキルセットを獲得し、自動タグ付けを行う新しい手段が提供される。現在および将来の従業員のニーズを、雇用主が提供できるものと照合するチャンスが与えられる。

1月には、Gartnerが、2018年における世界のIT支出の成長を、HR技術が促進すると予測している 。さて、この数ヶ月間というもの、状況をよりよく理解しようと努力していたため、私はこの先の展開に関してよく見通せる位置に立っていると考えている。私はHR分野の10人のリーダーに対してインタビューを行った、例えばそれはJan Fiegel(SideWalk Labs)、Parker Barille(元LinkedIn Product VP)、そしてCindy Cordon(Policy Genius)といった人びとだ。私が聞いた話を以下にお話しよう。

まずは基本的な点から

HR技術は巨大なスペースである

もちろん、そうなるだろう。とはいえ現在はそれほど大きなものではない。世界のHR技術産業は4000億ドルと見積もられているが、投資は経済の変化に敏感である。HR技術分野での投資案件数は2012年以来着実に増加している。以下のチャートに示すように2012年から2016年にかけては175%の成長である。しかし投資額のピークは2015年の26億ドルである。2016年には402件の案件が、約22億ドルの資金提供を受け、2017年におけるHR技術会社への投資金額は11億ドルに留まった

出典:CB Insights

より詳細に見ていくならば、現在HRに費やされている費用は、会社内の他のほとんどの機能に比べると小さいものである。例えば、世界のHRソフトウェア市場は、年平均成長率(CAGR)2.4%で成長し、2022年には92億ドルに達すると予測されているが、GartnerはCRMソフトウェアは2017年までに全世界で365億ドルに達すると予測している。

しかし、社会的圧力、データと効率に対する業界ニーズ、そして最高の人材を獲得するための競争の中で、HR技術に対するベンチャーのチャンスは徐々に増加するだろう。

福利厚生プラットフォームが次に必要とされる大物である

新しい従業員の世代が、福利厚生プラットフォームのエキサイティングなユースケースを推進している。企業は従業員たちに向けて創造的な特典を生み出している。例えば先進的なヘルスケアプランに「加えて」Robin CareLUCYのようなプラットフォームを提供するというものだ。こうしたプラットフォームは従業員とその家族向けのサービスで、その掲げるモットーは「共に育つ家族を愛することを助け、愛するキャリアを成長させることを助ける」というものである。

しかし、このようなプラットフォームは、景気後退による打撃を受けると、即座に切り捨てられる可能性がある。雇用者側には、これを単にミレニアム世代のためのエキゾチックな特典としてではなく、「必要不可欠な」従業員のニーズとしてこれを受け入れるために、マインドセットと判断基準の変革が求められている。とはいえ、私はこうしたプラットフォームに対しては楽観的であり、その成功を目にしたいと思っている。

HR福利厚生プラットフォームが景気後退の後には厄介になってしまうと結論付ける前に、やるべきことは残されている。BloombergのBNAのレポートによれば、人事部門の予算は、大不況以前には毎年4〜7%増えていたものの、2009年にはわずか2%で、やっと年4%程度の成長率に回復したところだ。付加価値の高いプラットフォームが新しい基準になることを後押しするためには、持続的な市場の成長が大切である。

変らず求められているもの

企業は依然として、より良い候補者評価ツールを求めている

LinkedInは、中堅から熟練者レベルの採用にのみ有効である。これに対して新卒者や若年ホワイトカラー労働者の場合、経験を売りにすることは難しいため、従来のようなレジュメを書かずに済ませることは難しい。こうしたことから、PortfoliumStrive Talentのような企業は、スキルを披露するための創造的な方法を提案し、伝統的な体験ベースのレジュメを否定しようとしている。HireVueは、文字通り候補者の顔を読み取って、誠実さとその受け応えの質を評価できる、ビデオベースのシステムを提供している。

VR(およびAR)によるHRは、没入感のある経験と効率性を兼ね備えており、今年この領域には既に大きな投資が行われている。採用応募者を評価するためのVR技術を開発したイスラエルのスタートアップActiViewは、Teddy Sagi Groupの主導するシリーズAラウンドで、650万ドルを調達した。AI採用技術を提供するAllyOは、1400万ドルの資金調達を行った

企業は使うべきソフトウェアを知りたい

HR技術の会社の数が増えるにつれて(このSilicon & SalsaによるHR技術の一覧表を見て欲しい)、企業たちは選択肢の過多に苦しんでいる。Salesforce AppExchangeのような、企業が最先端のソリューションを見つけるためのプラットフォームが、HR技術市場には欠けている。TechnologyAdviceはとりあえず良い試みだが、そのUIはフレンドリーでも直感的でもない。

クラス最高のアプリをただ選択するだけでなく、候補者の属性や将来の離職に関する予測精度を上げるために、複数のプラットフォーム間でのデータの同期が必要とされている。HR技術の分野をターゲットとしている企業は、プラットフォーム間でビッグデータ分析を可能にさせる、包括的なデータ記録システムが必要である。

HRスタッフは新しい従業員を募集するために時間を使い過ぎている

平均すると、米国ではインタビュープロセスにかかる日数は24日間に及ぶ。既存の従業員が候補者と調整しインタビューするのに費やす時間を短縮するためには自動化が鍵となる。そしてこの時間の掛かるタスクに対処することを狙うプラットフォームが存在している。

人材募集の分野は込み合っているが、特徴や利点を比較する実験は十分行われている。LearnUpのような企業は、企業が個々のインタビューをスケジュールし、準備をするのを手助けするだけでなく、プラットフォーム上にスキル向上のためのレッスンやジョブコーチングのためのリソースも加えている。これをさらに進めると、madeBOSのような企業登場する、この会社は小売業ならびにその関連業界における初級レベルの労働者たちに対して、自発的能力開発を提供することで、労働市場での流動性を高め、貴重なHRスタッフの時間を節約している。

ブルーカラー労働者の仕事にスキルマッチングをすることで、高いパフォーマンスが得られる

レストランがウェイター/ウェイトレス人材を募集するときには、多くの場合他のレストランで働いた経験のある人材を探す。小売業でも同様である。ファイナンスの世界では、過去の成績や経験が、将来の成績につながるものではないということに注意を払っている。そして時間給の従業員を雇う際に、過去の経歴に頼ることほど間違いを犯しやすいものはないのである。なぜなら肝心なスキルというものは、手早さ、良い対人スキル、(注文に対する)記憶力などだからである。

スキルセットのマッチングだけに目を向ければ、甲板員(船の掃除などの雑用をする係)も素晴らしいウェイターになるのだ。ロサンゼルスに拠点を置くTalyticaは、時間給人材管理の世界で、この重要な区別を理論的に行うことによって、認知能力、人格、強いキャリアへの関心、そして特定の仕事に対するスキルなどを評価する能力を誇っている。

ワークライフバランスへの見果てぬ夢を達成するために必要な、全てのサポートを従業員が手にしているような、素晴らしい世界を想像して欲しい。あるいは、候補者たちが、背景、性別または民族に対する偏見ではなく、スキルによって選別される世界を想像して欲しい。これらは、HR技術が全体的に提供することのできる利点のうちの2つに過ぎないが、なぜ甲板員が素晴らしいウェイターになる可能性があるのかを明らかにしてくれる。この業界を探究してみると、HR技術プラットフォームが、求人側と求職側から疑うこと無く必要とされているものを生み出す、確かな手段であることは明らかである。どの企業が魅力的な解を提示し、今シーズンのビジョナリー投資の対象を、業界の「新常識」にすることができるかは、まだ予断を許さない。

あなたはHR技術を新しく取り入れた起業家だろうか?もしそうなら是非私に連絡して色々教えて欲しい。

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(翻訳:sako)

Facebook、F8カンファレンスでデート機能導入を発表

F8デベロッパー・カンファレンスでFacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグはデート機能を追加すること発表した。FacebookはTinderの縄張りに侵入することになる。

ユーザーがデート機能にオプトインすると新しく「デート用プロフィール」を作成することができる。このプロフィールはFacebookの通常のプロフィールとは異なり、友達には表示されない。見ることができるのは同じくデート機能にオプトインしてプロフィールを作成した友達以外のメンバーだけだ。

Facebookはプロフィールをベースに多数のシグナルを比較してデート相手のマッチングを行う。Facebookは他のデートアプリに比べてはるかに詳しいユーザー情報を持っているのでマッチングの精度も高くなる。この機能は今年中にテストが開始される。

Facebookでは「新機能は〔デート用プロフィールの〕諸要素、共通の関心や友達などを勘案してデート相手の推薦を行う。Facebookのメンバーはグループやイベント機能を通じても共通の関心を持つ相手を発見できる」と説明している。私自身、この2月にTechCrunchでFacebookはデート機能を導入すべきだと主張したことがある。

Facebookのデート機能の仕組みはこうだ。

  1. デート機能にオプトインして専用プロフィールを作成する。このプロフィールはファーストネームだけで表示される。デート用プロフィールは友達には表示されない。読むことができるのはデート機能を利用している他のメンバーだけで、ニュースフィードにも影響しない。
  2. 利用者は近くのイベントやグループをブラウズして、関心が一致する利用者を発見しデート相手として「アンロック」することができる。他のユーザーも「アンロック」している場合、そのデート用プロフィールを見ることができる。
  3. デート用プロフィールには自分についての基本的な情報の他に何枚かの写真をアップロードすることができる。共通の関心その他Facebookが保有する情報をベースにデート相手の推薦が行われる。
  4. 双方がFacebookの推薦に興味を抱いた場合、MessengerとWhatsAppの専用窓を利用して直接会話を始めることができる。セキュリティー上の理由からここではテキストのみ利用できる。

Facebookがきっかけで交際を始め、結婚にまで至った例はすでに無数にある。Facebookには長期的なパートナーを得ることを目的とするマッチング機能を確立するのに十分な能力とチャンスがある。Tinderのようなデートアプリが手っ取り早く交際が始められることをセールスポイントとしているのとは対照的だ。投資家はFacebookのデート市場参入がTinderのビジネスに危険をもたらすと判断したようだ。Facebookがデート市場に参入すると発表した後、Tinderの運営会社、Match Groupの株価は17%ダウンした。

しかし最大の課題はFacebookが従来のソーシャルネットワークから新しいデート用ネットワークを十分に隔離できるかどうかにある。ユーザーとしてはソーシャルのすべてを一つのサービスに委せてしまうことに及び腰になるかもしれない。また推薦された相手とのチャットや現実のデートで痛い目にあったユーザーは責任はFacebookと責めるだろう。そうではあっても、Facebookの最高プロダクト責任者、Chris Coxが説明するように、「詳細なユーザーデータ、遍在性、ユーザーの身元の確実性などからもFacebookというプラットームはデート機能の実装に本質的に向いている」といえるだろう。

少なくともFaceDateは他のアプリに比べて「なりすまし」にいっぱい食わされる可能性ははるかに少ないはずだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

RedHatのCoreOSがKubernetesアプリケーションを管理するツールキットを発表

Red Hatが今年初めに2億5000万ドルで買収したLinuxディストリビューションとコンテナ管理のスタートアップCoreOSが今日(米国時間4/30)、Kubernetesのクラスターを管理するオープンソースのツールキットOperator Frameworkを発表した

CoreOSがソフトウェア概念としてのOperatorについて最初に言及したのは、2016年だった。その考え方は、コンテナベースのアプリケーションをデプロイし管理するためのベストプラクティスをコードとして実装することだった。“まあOperatorとは、最良のオペレーター社員を絵に描いたようなものだ”、とRedHatのOpenShiftのプロダクトマネージャーRob Szumskiは語る。理想としては、Operator Frameworkはオペレーションのチームをあらゆる雑用や単純労働から解放して、高いレベルのタスクに集中させる。そして同時に、Operatorがつねに会社のルールブックに従うことによって、その過程からエラーしがちな人間を取り除く。

CoreOSのCTO Brandon Philipsは、今日の発表声明でこう説明している: “Kubernetesを最大限に有効利用するためには、Kubernetesの上で動くアプリケーションをサービスし管理するための一連の統一的なAPIを広げる必要がある。われわれはOperatorを、Kubernetes上のそういうアプリケーションを管理するランタイムだ、と見なしている”。

Szumskiによれば、CoreOSのチームは、同社独自のTechtonicコンテナプラットホームを作って管理するときに(そのユーザーコミュニティからのものも含めて)、これらのベストプラクティスを開発した。それらがコードとしてのOperatorとして動くようになると、Kubernetesのクラスターを監視し、アップデートを処理し、たとえば何かがおかしくなったら、数ミリ秒以内にその不具合に反応する。

全体としてのOperator Frameworkは、三つの部分から成る。1)実際のOperatorを作ってテストしてパッケージするためのSDK、2)OperatorをKubernetesのクラスターにデプロイしてそれらを管理するためのOperator Lifecycle Manager、そして、3)チャージバックや顧客への課金を必要とする企業のためにKubernetesのユーザーを(リソース使用量などを)計量することだ。

軽量ツールは全体の絵の中ではつけたり的だが、Szumskiによると多くの企業がそれを求めるのであり、CoreOSもKubernetesでそれをやるのはうちが初めて、と主張している。

今日のCoreOS/Red Hatによる発表は、今後各方面から、さまざまなKubernetes関連の発表が行われそうな週の、始まりにすぎない。数日後にはCloud Native Computing FoundationのデベロッパーカンファレンスKubeConが始まるし、そこではコンテナのエコシステムに帰属する企業のほとんどが、何かを発表すると思われるからだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

欧州宇宙機関が17億個の恒星を含む今まででもっとも詳細な宇宙マップを公開

eng-logo-2015
[Engadget US版より(原文へ)]

欧州宇宙機関(ESA)は、宇宙望遠鏡「ガイア」による3D宇宙マップを更新しました。画像はさらに鮮明になり、私たちを、信じられないほど広大な宇宙に漂う小さな星屑になったような気分にさせてくれます。

今回の更新により、8000光年先の天体まで見えるようになりました。最初のマップで見えていたのは、500光年の範囲でした。このマップでは、私たちの銀河系やその外にある17億個もの恒星の位置と明るさが示されており、2016年にESAが公開した最初のデータに比べて、5億個も多くなっています。さらに驚くべきことに、13億個もの恒星の距離と動きが記録されています。前回のバージョンでは、200万個分でした。

ガイアとその100億ピクセルのカメラは、2013年から天の川(とその他の星)のマッピングを続けており、これまでに見たことのない恒星など、新しい情報を含むデータを蓄積してきました。数十億個の恒星の位置、明るさ、距離、動きに加えて、ガイアのもうひとつのデータセットには、ほぼすべての恒星の色の測定データ、約1億個の天体の表面温度、約8700万個の天体における星間物質の影響、1万4000個を超える既知の諸惑星の位置も含まれています。

ガイアから送られてくるデータのお陰で、天文学者は年中忙しい思いをしています。これらは、私たちの銀河系の変化の様子、宇宙空間での重力の変化、ダークマターの分布の研究などにすでに役立っています。「ガイアは、宇宙に関する理解度を、全宇宙的規模で大幅に高めてくれました」と、プロジェクトの研究者の一人Timo Prustiは話しています。「私たちがよく知っていると思っていた、太陽からいちばん近い恒星に関しても、ガイアは驚くべき特徴を暴いてくれています」

下の動画では、170億個のうちの9億6000万個の星を見ることができますが、数年のうちには、さらに密度の高い映像が見られるようになります。ガイアの科学オペレーション・マネージャーUwe LammersがGizmodoに語ったところによれば、2020年に3つめのデータセットを公開できればと考えているそうです。

編集部が日本向けに翻訳・編集したものです。
原文著者:Mariella Moon

Engadget 日本版からの転載。

国防総省のDARPA研究所が改悪改竄ビデオを検出する技術で研究助成事業を展開

メンローパークの非営利研究団体SRI Internationalが、国防総省の研究機関DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency)から、フェイクニュースと戦うための三つのプロジェクトを受託した。すなわちDARPAのMedia Forensics(メディア犯罪捜査)事業は、ビデオや写真がそのコンテンツを意図的に変えられていることを判定するツールを開発している。

そのようなコンテンツでもっとも悪名高いのが、“ディープフェイク(deepfakes)”と呼ばれているやつだ。通常それは、わいせつな画像やビデオに有名人や人気スターの顔だけ貼り付けるというポルノが多い。ディープフェイクを作るソフトは簡単に作れるし誰にでも使えるが、今あるビデオ分析ツールでは、加工された映像と本物の映像を区別できない。

この難問を解決するために組織されたのが、Media Forensicsグループだ:

“DARPAのMediFor事業は、優秀な研究者を集めてデジタル画像技術のある分野を打ち倒したいと考えている。それは現状では改竄(かいざん)者が優位に立っている分野であり、それを、画像やビデオの真正性を自動的に判定する技術を開発し、エンドツーエンドのメディア犯罪捜査事業に利用することによって崩壊させたい。

その技術の開発に成功したら、MediFor事業は改竄を自動的に検出し、その改竄方法に関する詳細情報を提供し、ヴィジュアルメディアの全体的な真正性に関する判断により、問題ある画像やビデオの使用に関する意思決定を支援できる”。〔これは使えない、という判定を助ける。〕

ビデオがとくに危険なアプリケーションだが、改竄は静止画像においても検出が困難であり、DARPAはそれも研究課題としている。

DARPAのMedia Forensicsグループ、略称MediForは、アプリケーションの募集を2015年に開始し、正式には2016年にローンチ、2020年までの予算がついている。このプロジェクトでSRI Internationalは、アムステルダム大学とスイスのIdiap Research InstituteのBiometrics Security & Privacyグループと密接に協働する。アムステルダム大学については、詳しくは彼らのペーパー“Spotting Audio-Visual Inconsistencies (SAVI) in Manipulated Video”を見よ。Idiapの研究グループは、改悪されたビデオに存在するオーディオビジュアルの齟齬を見つける4つのテクニックにフォーカスしている。それらは、1)唇の同期の分析、2)話者の不整合や矛盾の検出、3)シーンの不整合の検出、4)コマ落ちや挿入の判定、である。

この事業で受託した研究には、有望性が認められる。昨年6月に行われた最初のテストでは、数百のビデオの中から、改悪されたビデオの二つの特徴、“話者の不整合とシーンの不整合”を、75%の精度で見つけることができた。2018年5月には、同様のテストをもっと大規模に行い、そのテクニックを磨き、大量のテストビデオを調べられるようにする。

このプロジェクト自体は軍事目的だが、研究チームは今後この事業の目的が、規制当局やメディアや公共団体などがもっと悪質な種類のフェイクニュースと戦っていくためのメインの武器になる、と信じている。

“近い将来、ビデオの改悪や合成のテクニックが大きく進歩する、と予想している”、SRI Internationalの代表者がこう語った。

“そういうテクニックがあれば、ホビイストやハッカーでも非常にリアルなビデオを作って、その人がしなかった/言わなかったことを、している/言っているように見せかけることができるだろう”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

iOSのカメラアプリHalideは写真の位置データを削除できる、セルフタイマーもサポート

iOS用の高度なカメラアプリHalideは、AppleのデザイナーだったSebastiaan de WithとTwitterのエンジニアBen Sandofskyが昨年ローンチし、そして今日(米国時間4/30)はこれまでで最大のアップグレードを発表した。このアップグレードには、セルフタイマーや、写真レビュアーの新設計、障害者等向けアクセシビリティの改善、などが含まれる。でも、おそらく、今回の最良の機能は、写真のプライバシーの保護だろう。写真を他と共有する前に、その写真のメタデータから位置情報をなくせるのだ。

Halideがとくに優れているのは、プロフェッショナルなカメラ機能を簡単なジェスチャーで使えることだ。だからアマチュアにもプロにもどちらにとっても、魅力的なアプリだ。

今ある主な機能は、手動の焦点調節ダイヤルや、その逆の自動焦点モード、RAWとJPGをサポート、グリッド/レベルツール、ライブのヒストグラムなどだ。

そして今回のアップデートで、Apple Watchコンパニオンなど、さらに便利な機能が加わった。

Apple Watchのアプリをインストールすると、リモートでフレームを決めたり、Halideのシャッターを切ったり、タイマーをセットしたりできる。つまり、自分の手首から撮影をコントロールできる。

Apple Watchがなくても、セルフタイマー機能がある。設定は3秒、10秒、30秒の三種類だ。起動するとシャッターボタンが押された状態になり、ボタンの近くのアイコンにカウントダウンが表示される。

フォトレビュアーも新しくなった。撮影済みのグリッドをスクロールして、そこからすぐに撮影状態に戻れる。

アクセシビリティの改善ではDynamicとBold Typeが加わり、VoiceOverがサポートされた。Halideの作者たちによると、30秒のタイマーもアクセシビリティを意識した結果だ。素早く動けない人でも、利用できるように。

しかし、今回の最大の変化は、写真のプライバシーだ。

今の写真には、大量のプライベートデータが含まれていることを知らない人や、忘れている人は多い。写真ファイルのメタデータには、カメラやレンズやフラッシュに関する情報や、日付時刻、写真の位置情報などが隠されている。そんな情報は、共有したくないと思うこともあるだろう。Webやソーシャルメディアにポストするときには、とくに。

今度のHalideでは、トグルスイッチのon/offで位置データを削除できる。それにより、FacebookやInstagramやWhatsAppなどに写真を投稿するとき、個々の写真ごとに、位置の共有を制限できる。

アプリのダウンロード数は公表されていないが、Appleのオプトイン方式のアナリティクスによると、月間ユーザー数は10万あまりだ。サードパーティによるユーザー追跡は、行われていない。プロシューマー層というニッチを対象とする有料アプリにしては、いい数字だね。

Sandofskyはこう言っている: “うちはメールやプッシュ通知みたいな成長戦術をやっていないから、この数字を誇りに思うね。このアプリは、多くの人たちの本当のニーズを満たしているのだ、と思う”。

Halideは、App Storeから5ドル99セントでダウンロードできる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebookはいかにしてフェイクニュースと戦うべきか:フェイクニュースの発信者から利益を得る方法

(日本語版注:本稿は、Amber Caseによって執筆された。Amber CaseはGeoloqiの元CEOであり、SXSWiとTEDでは基調演説を行った。著書には「Calm Technology: Designing for Billions of Devices and the Internet of Things」(O’Reilly Media)がある。現在はハーバード大学のBerkman Center for Internet and Societyのフェローを務める)

 

Facebookを始めとするプラットフォームでは、今でもSNSに投稿される虚偽的な内容の怪しい「ニュース」の蔓延と戦っている。

先日、Cambridge AnalyticaとFacebookの企業対応の遅れが発覚したことで、現在進行形の、同程度に深刻な問題から人々の目がそらされてしまった。それは、Facebookをしばらく使っていると、かならず怪しスポンサー記事広告が画面に現れるというものだ。とりわけ、重大な事件が発生し、影響力を持つアメリカ国内外のネットワークがリーチを拡大しようと競い合いを始めたときに、とくに多く見られる。簡単なユーザーアンケートによってこの危機に対処するという、先に発表されたFacebookの計画は、どうも信用できない。

その根底にあるのは、経済というよりは思想の問題だとよく言われる。Facebookのようなサイトは広告収益に依存しており、メディア企業はFacebookの広告を利用して自分たちのウェブサイトに人々を導き、そこで利益を得ている。こうした活動的なメディアでは、評判が良いメディアでさえ、そこから配信されるものには、クリックを促すための、本題よりも優先される暗黙の誘因が仕込まれている。

道義心の低い業者は、さらに一歩進んでいる。そう信じたいと願っている人々の感情に的を絞って、嘘とまでは行かないがいい加減な、あるいはまったくのでたらめな記事をでっち上げるのだ。事実、2016年の大統領選挙期間中に流された政治関連の嘘ニュースのほとんどは、ロシアの諜報機関が流したものではなく、政治勢力をゆがめようと偽情報をまき散らす怪しい連中の仕業だった。こうした問題の拡大は、一企業であるFacebookには大きな負担だ。ファクトチェックを行う人財を大量に雇い入れて、自らのプラットフォームで広告として掲載されている怪しい記事をすべて審査するなど、現実的ではない。

Facebookには、もっとよい、確かで、費用対効果が高い方法が使えると私は信じている。Facebookユーザーの集合的な観察力をテコにして、嘘ニュースを炙り出し、それを出した広告主の責任を追及して、そのような手口で利益を得ようという考えを改めさせるのだ。

まずは、ユーザー主体のコンテンツ審査がある。数多くのインターネット・サービスですでに採用され成功している手法だ。たとえば、ドットコム時代のデートサイト「Hot or Not」では、デートサービスを開始した時点で節度が乱れる問題にぶち当たってしまった。そこでHot or Notでは、ユーザーの節度を管理するモデレーターを多く雇用する代わりに、一部のユーザーを選び出して、アップロードした写真が不適切なもの(ポルノやスパムなど)でないかどうかを判断させることにした。

ユーザーはペアになり、写真の可否について、同意に至るまで投票を続ける。大多数のユーザーから不適切と指摘された写真は削除され、その正しい判断を下したユーザーには報償ポイントが贈られる。意見が分かれる写真のみがHot or Notの審査担当者に送られ、最終判断が下される。通常、そこへ送られる写真は、全体のほんのわずかな割合だ。

Facebookは、もっと有効に、こうしたシステムを採り入れられる立場にある。ユーザー数が格段に多く、その人たちの粒度の細かい情報を把握しているからだ。Facebookは、ユーザー層や思想の違いに基づくユーザーの小さなサブセット(数十万人規模)を簡単に選ぶことができ、コンテンツの審査を依頼できる。報酬が得られるならば、ユーザーはモデレーターとして適切に対応してくれるはずだ。

  • 真偽の怪しい記事を含むFacebook広告の問題に対して、この審査方式は次のように進められる。
  • ニュースサイトが記事や動画の広告料金をFacebookに支払う
  • Facebookは料金を第三者預託とする
  • Facebookは、その記事に信頼性があるか否かの判断をボランティアとして行う選ばれたユーザーに広告を表示する
  • その人たちの大半(60パーセント以上)が信頼できると判断すれば、その広告は自動的に配信され、Facebookは広告料を受け取る
  • 60パーセント以上の人が信頼できないと判断したものに関しては、Facebookの内部審査委員会に送られる
  • 審査委員会が信頼できると判断すれば、その広告はFacebookに掲載される審査委員会が信頼できないと判断すれば、その広告は掲載されず、Facebookは広告料金のほとんどを広告主に払い戻し、10〜20パーセントを審査手数料として受け取る

(Photo by Alberto Pezzali/NurPhoto via Getty Images)

私は、嘘ニュースの一貫性のある特定が幅広いユーザー層によって行われ、Facebookの労働時間と人件費は大幅に削減されるものと信じている。さらに、私のこのシステムを導入すれば、企業は政治的な偏見による非難から身を守ることもできる。マーク・ザッカーバーグは正直にこう言えばいい。「アレックス・ジョーンズさん、申し訳ないが、あなたの嘘ニュース広告の掲載を拒否したのは私たちではない。ユーザーたちなんですよ」と。おそらく、さらに重要なこととして、Facebookは人件費を抑えることができるだけでなく、嘘ニュースを排除することで利益を上げられるはずだ。

この戦略は、他のSNSにも採り入れることができる。とくに、TwitterとYouTubeだ。この流行病に本当の意味で打ち勝つには、Googleを代表とする主要なインターネット広告主も、同様の審査方法を採り入れるべきだろう。ユーザーの同意によるフィルター・システムのレイヤーは、個人やグループが自発的に発信し、またはボット・ネットワークによって拡散される怪しいコンテンツにも応用できる。

民主主義的制度における私たちの信頼を損なわせようと必死になる軍勢との激しい戦いの中で、この方法が唯一、私たちに勝ち目を与えてくれるものだと私は確信する。毎週のように、新しい記事の見出しが私たちの想像を超える規模で増えている。私がこの記事を書いた目的は、シリコンバレーが行動を起こさない言い訳としてよく使う言葉に反論するためだ。彼らはこう言う。「スケーラブルじゃない」と。しかしこの場合、スケールこそソーシャル・ネットワークが持つパワーなのだ。それが最大の防御力となる。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

CVはダイバーシティーとインクルージョンを諦めるのか

今週、Backstage CapitalのArlan Hamiltonに話を聞くために会いに行った。彼女の目覚ましい出世物語は、今ではすっかり有名になった。Backstageのサイトに書かれている人物紹介のページから引用すると、彼女は「ホームレスだったころに、ベンチャーキャピタルを一から立ち上げた」とある。いろいろと面白いことを話してくれたが、まずはここから始めよう。2019年、彼女はダイバーシティー(多様性)やインクルージョン(包含性)については語らなくなるだろうというものだ。

こう聞いて、おやっと思った人は多いはずだ。彼女は過小評価されてきたマイノリティーに的を絞って資金を提供してきたからだ。その理由を、私が要点を理解して言い換えるならばこうなる。ダイバーシティーとインクルージョンは、技術系企業において人的資源となってきたが、大企業にとっては現状を守るための隠れ蓑になっており、改善を目指してはいるわけではない。

これには同意せざるを得ない。企業は、ダイバーシティーとインクルージョン(D&I)イベントや講演を開催したり、D&I副社長を雇ったり、「ダイバーシティー訓練」(これには効果がないばかりか、裏目に出ることも少なくないと多くの証拠が示している)を行ったりしている。彼らはダイバーシティーについて語る。彼らはダイバーシティーをパワポのスライドの中に加える。しかし、実際に彼らは何をしているのか? 私はNassim Talebの有名な宣言を思い出した。「何を考えているかは言わなくていい。ただポートフォリオを見せなさい

ではポートフォリオを見てみよう。Fortuneが報じたPitchBookの調査結果によれば、2017年に女性ばかりのチームがVCを受けた割合は2.2パーセント。これは2013年と変わらず、2014年に比べると明らかに低い。男性ばかりのチームは79パーセントがVC投資を獲得している。企業が「ダイバーシティーとインクルージョン」について、前例のないほどの大量のリップサービスをしていた間のことだ。

投資金額ではなく、投資件数という面で見れば、女性が率いるチームへのVC投資は、わずかながら上昇傾向にある。2007には2.42パーセントだったものが、2017年には4.44パーセントになっている。しかし、このペースで行けば、10パーセントの大台に乗るのは……2045年だ。さあ祝おう! その他の少数派の仲間たちに関するデータを探し出すのは、大変に難しい。それは、彼らへの投資状況が、ある程度の速度をもって改善されている証拠がゼロであることを示しているように見える。

しかし、大企業のダイバーシティーに関する統計データはある。再び、2014年と2017年とを比べてみよう。前回と同じ、前代未聞のリップサービスの時代だ。Googleは「黒人2パーセント、ヒスパニック4パーセント、2つ以上の種族4パーセント」から、「黒人2パーセント、ヒスパニック4パーセント、2つ以上の人種4パーセント」に改善された。これは進歩と言える。Facebookはどうだろう。2014年の技術者の割合は、ヒスパニック3パーセント、2つ以上の人種2パーセント、黒人1パーセント」だったが、2017年には、この数字は、どうも言いにくいのだが、変わっていない。

いろいろな不平がある。それはパイプラインの問題であって、文化的な問題ではないということ(MeTooムーブメントは、パイプラインがその入口から大企業のCEOまでの間がすべて汚染されていると、もっと悲痛に訴えるべきだった)。技術業界では、性別や人種で人を選ぶことは、いわゆる理想郷的能力主義に違反するということ(能力主義は、ほとんど意識することなく、システムとして始まり、そういう人たちを選んできた)。他より秀でたいと考える企業には、敷居を下げる余裕がないこと(中でももっとも下劣な不平として「ダイバーシティーがクソなハードルを上げてる!」というCindy Gallopの言葉がある。技術業界は、他の業界と同じく。平凡な白人で満員なのだ)。

なんとも異常な世界だ。彼らのポートフォリオを見ても、ベンチャーキャピタルは、意識するしないに関わらず、悪意のあるなしに関わらず、冷酷で人を馬鹿にした賭に出ることがある。ときとして、いや頻繁に、(比較的)普通の白人に賭けるのだ。同じ投資を受けられたはずの、より才能があり能力も優れた少数派よりも、白人のほうがシステムとして優位だと思うからだ。

これは、民主主義よりも君主制を選ぶようなものだ。たしかにかつては、それが機能していた。個人としての支配者は、平凡で、理論に依存するが、生まれたときから人を支配することを教えられ、権力の使い方を心得ている。だから彼らは頭角を現しやすく、才能はあるかも知れないが、無知な大衆の意志によってその地位に就く。

おそらくVCも同じだろう。ある程度、たぶん無意識に、白人のほうが彼らが最重要視する文化システムからの恩恵を多く得ていて、社会的な自信(傲慢性)があり、ネットワークが広く、生まれたときから積み重ねてきたさまざまな優位性を持っていると、彼らは考えている。外から来た少数派は、たとえ根性があって、ヤル気があって、頭が切れたとしても、同じ優位性を持っていないため、白人に賭けることになる。

君主制ではそれがうまく作用しなかったとお気づきの人もるだろう。私も、たとえばスタンフォードを卒業した白人男性やハーバードを中退した白人男性などの「パターン認識」で同様の宿命を予測した(アメリカの一流大学の不平等について話を広げるつもりはない。社会的な階層構造を保つための「縁故入学」制度はじつにあからさまだが)。

しばらくの間、そうしたやり方はVCにとって都合がよかった。なぜなら、
a)技術業界全体は、インターネット革命とスマートフォン革命という2つの潮流によって盛り上がっているため、業界の支配者からの強力な支援を受けて、たとえば独占的なシェアを誇る写真共有アプリなどで大成功を収める人間が登場することが見えていたからであり、
b)新しい技術系企業を立ち上げた白人男性たちは、今でもアウトサイダーとして活動しているからだ。

何か新しいことをやろうとすれば、アウトサイダーでいるのがよい。オリジナリティーが発揮できる。立ち直りも早い。ほとんどの人間は群れたがるが、特別な才能のある人間は、なんらかの方法で主流の社会から離れている。信じるか信じないかは別として、かつて、技術系ナードはアウトサイダーだった。少なくとも、アウトサイダーでいることの恩恵を受けていた。

それは、控えめに言っても、もう通じない。今や、主流のビジネススクールを卒業し、体制に順応した人たちが群を作り、自らをギークと称し、技術系スタートアップを立ち上げようとしている。彼らもわかっているが、どこでも同じようなことをしている。ほとんどの人間が同じ形式に載っかっている。リーンスタートアップ、MVP、シードファンディング、アクセラレーターなどなど。皮肉なことに、彼らはみな、リーンスタートアップの時代が終わりかけているときに、これを行っている。私が以前問題提起したことだが、この2年間ばかりVCに資金を提供してきた世界的なハードウエア革命による豊かな鉱脈が、もうほとんど枯渇しているのだ。

すべての人が、同じ方式でもって、同じ消えゆく資金を追い求めているとすれば、本当の報酬は、明らかに別の場所にある。どこか他に、まだ掘られていない補助的な鉱脈がある。しかしそれは、別の方法を使わなければ掘ることができない。別の人生体験からの情報に基づく別の市場、別の価値、別のネットワーク、別の考え方だ。私の友人がこんな賢言を書いていた。「違うことが常により良いとは限らないが、より良いものは常に違うものだ」。これは、今すぐにでも、あの手この手を使ってVCが採り入れるべき教訓だ。

 

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(翻訳:Tetsuo Kanai)