京セラの新しい頑丈スマホは、アクションカメラにもなる

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携帯電話の世界で頑丈、といえばKyoceraの得意とするところだが、新機種のDuraForce Proは、IP68認証を取得したミリタリー規格810Gグレードの頑強なボディーで、同社の伝統を最大限に引き継いでいる。防塵仕様に加え、水深2メートルで最大30分耐えることができる。

ここまでは従来機種と大差ないが、Proはカメラ機能に新たな視点を加えることによって、AndroidスマートフォンとGoProスタイルのアクションカムの融合をはかる。つまり、背面の13メガピクセルカメラ(前面には5 MPの自撮りカメラ)、135度の視野、および内蔵画像処理によってスポーツ、スローモーション、水中撮影の各モードを可能にしている。

ビューファインダーを兼ねる頑強な1920 x 1080ディスプレイは、近日発売予定のアクションカメラマウントにぴったり収まる。携帯通信を内蔵しているのでビデオを直接投稿することもできる。

バッテリーは3240mAhで、前面スピーカーが付く。そして、どうしても屋外で書類を提出したいスポーツ愛好家のために、企業向け機能もいくつか用意されているのは興味深い。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

トヨタのシリコンバレーの研究所Toyota Research InstituteがAI研究でミシガン大学に$22Mを提供

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トヨタ自動車がシリコンバレーに置いた研究開発部門Toyota Research Institute(TRI)がミシガン大学に、当初は向こう4年間で計2200万ドルの研究助成金を提供する。これより前の今年の4月には、TRIの三つめの研究施設が同大学内にオープンしている。

資金の用途は人工知能の研究とされ、すでに同様の投資がTRIのパロアルト本部に近いスタンフォード大学と、ケンブリッジのマサチューセッツ工科大学(MIT)に対しても行われており、それぞれ研究に関する合意が形成されている。

ミシガン大学に関しては、すでに同大の近くにToyota Technical Centerが二つもあり、彼らは同大の学部と共同で、自動車のインターネット利用や先進的な安全対策について研究を進めている。トヨタは同大のMobility Transformation Centerの創立メンバーでもあり、ここでは複数の学部の協力により、自動運転車の共有ネットワークをベースとする未来の交通システムの構築について研究している。

今回の投資によりトヨタが、ロボット工学、機械学習、および人工知能の分野における研究開発を、これらの分野でもっとも進んでいる大学との、密接な関係のもとに進めようとしていることが、あらためて明らかになった。ミシガン大学はAIの研究ではアメリカのトップクラスの大学院のひとつであり、また自動車工学に関しては北米地区のもっとも重要な研究センターだ。

ただし、お金は全額が自動車の研究へ直行するわけではない。同大によると資金は、“パートナーロボット”や“屋内移動”、“学生の学習支援とダイバーシティ”、などにも向けられる。

自動車メーカーが大学と協働してイノベーションを加速しようとする動きは、最近数多く見られる。ミシガン大学のご近所さんであるFordも、その一つだ。研究開発のペースは、GoogleやAppleなど新顔の参入にも刺激されて、このところ急ピッチだ。これからの数年間は、このような新しい研究パートナーシップや、既存の協働関係の拡張が、さらに多く見られるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Seagate、60TBのSSDを発表

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残念ながらこれは業務用なので、あなたのパソコンに実装する夢を見るのはまだ早い。カリフォルニア州サンタクララで行われたFlash Memory Summitで、Seagateは新製品をいくつか披露したが、何よりも人々を驚かせたのは、同社が言うところの「デモ史上最大のSSD」だった。

容量60TBのSSDは、明確にデモモードで動いていた。つまり「ほら、こんなにスゴイのを作ったから見てくれよ」的な展示だったのだが、同社は来年中の発売を予告している。これが市場に出るときには、データセンターに巨大なストレージの設置を考えている大規模な企業ユーザーが対象となる。

それでも興味のある人のために、60TBとはいったい何を意味するのかメディア消費量に換算してみよう。それはDVD画質の動画1万2000枚、ソーシャルメディア品質の写真なら4億枚に相当する。月々のInstagramユーザーのアウトプットは大体このくらいだ。

Seagateによると、このドライブは「現在入手可能なフラッシュメモリーでギガバイト当たり最低のコスト」を実現する。実際の価格には言及しなかったが、あり得ない金額になある可能性は高い ― ただ以前より安いというだけで。もう一つ注目すべきは、この新しいアーキテクチャーが、いっそう途轍もない100 TBドライブへの下地であるという事実だろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

CarvanaがシリーズCで1億6000万ドルを調達、オンライン中古車販売と車自販機の拡大を目指す

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中古車業界はとても面白い業界だ。市場規模は大きく、アメリカの年間中古車販売台数は4500万台を記録している。しかし、同市場最大のプレイヤーであるCarMaxのマーケットシェアはたった2%しかない。にも関わらず同社の評価額は120億ドルにのぼる。

つまり、中古車ビジネスはディスラプションを必要としているだけでなく、とてつもなく儲かるのだ。

中古車ディーラーのCarvanaは、ECのアプローチを中古車業界に応用することでマーケットシェアを獲得できると考えている。そのため、先日の記事でも紹介した同社は、販売プロセス全体のオンライン化を行った。そして本日(米国時間8月10日)、Carvanaは、同社のビジネスモデルをアメリカ中でさらに展開させるため、シリーズCで1億6000万ドルを調達したと発表した。

中古車の購入を検討しているユーザーは、まずCarvanaのウェブサイトを訪れ、自分の要望にピッタリの車を選ぶことになる。Carvanaは、ほぼ全ての車種と価格帯をカバーしており、昨夜の時点で5000台程の中古車が販売されていた。価格交渉には応じていないものの、Carvanaの価格はKelly Blue Book(Kelly社の発行する中古車相場についてまとめられた本)に掲載されている販売価格から数1000ドル低く設定されており、ユーザーは実際にふたつの価格を比べることもできる。

ローンなどのファイナンス面や書類のやりとりも全てオンライン上で完結でき、さらにユーザーは、購入した車の準備が出来次第、Carvanaに納車をお願いするか、自ら「車自販機」でピックアップすることができる。

車自販機とは一体どんなものなのだろうか?車自販機とは、その名の通り、顧客がピックアップを行う数日前にCarvanaが補充した車を自動的に販売する、大きなガラス張りの建物のことを指している。昨年、Carvanaは最初の自販機をナッシュビルに設置し、今回調達した資金を利用して今後国内の自販機の数を増やしていく予定だ。

車自販機のことを、ただのマーケティング上の仕掛けであると思う人ももちろんいるだろう。しかし、Carvanaは素晴らしい広告塔としての機能以外にも、自販機には実用的な目的があると説明する。現状として、Carvanaは販売した車を購入者のもとに配送しているが、それには当然購入者が受け取りに来るよりもコストがかかる。そのため、各都市に車自販機を設置することで、従業員が車を配達するのにかかるコストを抑えることができるのだ。

今回の1億6000万ドルにのぼる資金調達以前にも、Carvanaは1億4000ドルをエクイティで、4億ドルを借入で調達していた。個別の投資家については明らかにされていないが、同社によれば今回のラウンドには、新規・既存どちらの期間投資家も参加していた。

これまでのラウンドのように、Carvanaは成長と拡大に調達資金を充てる予定だ。しかし、今回の資金は、今年中に計画されている20以上にのぼる市場への参入と在庫の確保に利用される予定で、大量の中古車のために多額の資金が投入されることになる。

さらに、同社は新たな都市で車を保管(そして願わくば販売)するための物理的な拠点を必要としている。Carvanaはもっと少ない資本でゆっくりと成長することもできたが、投資家共々、確固たるビジネスモデルを作り上げたと信じている彼らは、さらなる成長を続け、中古車業界の鉄が熱いうちに打とうとしていると設立者兼CEOのErnie Garciaは説明した。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

農業の無駄を省くべくFarmers Business Networkが2000万ドルを調達

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Farmers Business Network(FBN)というスタートアップが新たに2000万ドルを調達し、農業に従事するプロ用のソーシャルネットワーク兼データ共有プラットフォームの拡大を目指している。

FBNの共同設立者兼製品担当ヴァイスプレジデントであるCharles Baronによれば、同社のプラットフォームを利用することで、農家の人たちは、地域集会や昔ながらのバーンレイジング(小屋の建設をサポートする近所の集まり)、その他の同業者の集まりにおいてオフラインで行われてきた、農業に関するノウハウの共有をオンライン上で行うことができる。

恐らくこのプラットフォームで最も重要なのが、業界用語で「インプット」と呼ばれる商品の価格情報共有・評価機能だ。インプットには、お金のかかる種子や肥料の他、元気な作物を育てるために土壌にまかれる化学品などが含まれている。

また、FBNのプラットフォームでは、天気や作物の発育、土壌の質や農地の水位を測定することができ、段々と使用例が増えているアグテック(農業テクノロジー)システムから生成されたデータをアップロード、保管、分析することができる。アグテックシステムには、ドローンや、衛生システム、モバイルアプリの他、地上にあるセンサーやカメラが含まれる。

農家や個人の農業コンサルタントは、インプットに対して実際に支払われた価格を知ることで、必要なものに余計なお金をかけることなく、さらには必要以上の量の購入・使用を防ぐことができる。

また、自分の作物に関するデータを分析し、他の人のデータと比較できるため、農家の人たちは市場で広まっている新たな手法や代替製品のうち、何が本当に機能するのかというのを判断することができる。

Baronによれば、農業界は製薬業界と同様に、ブランド名を冠した高価な製品が広く流通している一方、小さな「ノーブランド」の企業が製造する種子やその他のインプットも、高価な製品と同じくらいの効果を持っている。

しかし、種子や肥料を日頃から買っている農家には、近所の薬局のように、高い効能をもったジェネリック医薬品を使えば出費を抑えられるといったアドバイスしてくれる人がこれまでいなかったのだ。BaronはFBNのコミュニティがこの役割を担うことが出来ると言う。

食品や農業に特化したファンドのAcre Venture Partnersが、FBNのシリーズBラウンドを主導し、GV(元Google Ventures)Kleiner PerkinsDBL Partnersがここに加わった。この新たなラウンドで、これまでのFBNの資金調達総額は4400万ドルに達した。

近年、ベンチャー投資家は農業テクノロジーの分野にとても興味を持っており、食物の生産性向上を目指し、ここ2年で食品や農業にフォーカスしたファンドがいくつも新設された。さらには、もっと大きなテック企業全般への投資を行うファンドのポートフォリオを見ても、アグテック企業の存在感が増してきている。

FBN cofounder Charles Baron at the startup's Farmer 2 Farmer 2015 conference in Davenport, Iowa.

FBNの共同設立者Charles Baron。アイダホ州ダベンポートで行われたFarmer 2 Farmer 2015でのFBNのカンファレンスにて。

Campbell Soup Co.を唯一のリミテッド・パートナーに持つAcre VCでパートナーを務めるGareth Astenは、同VCがFBNに投資した理由についてこう語っている。

「農業界では、インプットの供給市場がある種の寡占状態にあります。そのため、農家の人たちが仕入の判断をするときや、サプライヤーとの交渉時に使えるような実際の価格データを提供することで、彼らの出費を抑え、利益を増やし、もっと効率的に作物を育てるためのサポートを行うことができます」

彼は、FBN Procurementと呼ばれる同社のサービスを高く評価している。このサービスでは、ユーザーが欲しい商品といくらなら購入したいかという情報を登録することができる。

その後、FBNが登録されたインプットの生産者のもとへ向かい、大量購入による割引やその他の大幅割引を利用して価格を固定し、商品を購入したユーザーは近くの倉庫にピックアップへ向かうか、自分の農場まで商品を発送してもらうことができる。

投資家は、FBNが調達した資金をスタッフの雇用や農家の間でのFBNの知名度向上、さらには同社のプラットフォームを違う品種の作物やインプットに展開させていくのに使うことを期待しているとAstenは語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Facebook譲り、それなりに使える機能の実装で競合を追い詰めるInstagramの戦略

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それなりに使える機能であれば、ネットワーク効果と組み合わせることで長期的に大きな影響がある。競合に勝つのに、相手より優れた機能を用意する必要はない。競合相手の魅力を奪えば良い。品質が良くなくても便利であれば、ユーザーが離れる心配はないだろう。

それがInstagram Storiesの背後にある戦略だ。

Snapchatは、日々の生活の1コマを共有する素晴らしいフォーマットを発明した。写真と動画のスライドーショーにコメントがつき、それらは24時間で消えるので、コンテンツの質は荒削りでもよく、ユーザーには自分の見ている世界を共有できる窓となった。Snapchatが提供する10秒のプライベートメッセージは爆発的に人気を博し、アプリのデイリーユーザーは1億5000万人となった。

Snapchat StoriesはInstagramのフィードに投稿するには完成度の低い投稿の全ての行き場所になった。この刹那的な仕組みは、恒久的なFacebookやInstagramとSnapchatを差別化する要因となった。人々がシェアする量は増え、Storiesは、Instagramからコンテンツと人々の関心を奪い、次の大規模なソーシャル媒体となるように見えた。

そこでInstagamはFacebookが2011年に使った戦略を取ることにした。

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当時、有名人によるリアルタイムのアップデートが大規模なソーシャル媒体の波になることが予想されていた。そういったコンテンツはTwitterに居場所があった。フィルターのかかっていない他人の投稿は、友人の投稿をアルゴリズムでフィルタリングするFacebookからTwitterを差別化するものだった。

そこでFacebookは、有名人をフォローするための Subscribeをローンチした。

「Twitter殺し」の機能ではなかった。そうである必要はなかったのだ。

それはTwitterより良いものではなかった。更新はリアルタイムで表示されるものではなかった。最高のコンテンツ・クリエーターがこの機能を活用し、フォロワーを受け付けるような状態でもなかった。ハッシュタグも急上昇中の話題を示す機能もなかった。Twitterにあるような何の準備なく、多くの人と議論ができる雰囲気もそこにはなかった。

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しかし、Subscribe機能はTwitterのユーザーを奪い返そうとするものではなかったのだ。「Twitter殺し」のための機能ではなかった。Twitterのユーザー1億人に対し、Facebookは8億人のユーザーがいた。まだ早い段階だったので、そうする必要がなかったのだ。

それなりに使える機能を実装する戦略の目標は、競合他社の将来的な成長を遅らせることで、すでに競合が得たものを奪うことではない。

Facebook SubscribeはTwitterに参加しなくても事足りる、それなりに使える機能と思うユーザーもいただろう。Subscribeは、ユーザーが見ているニュースフィード内にあった。別の新しいアカウントにサインアップしたり、新しい用語やインターフェースを覚える必要もなかった。さらに、新しいオーディエンスやフィードを埋めるための作業をゼロから行う必要もなかった。

Twitterに致命傷は与えることにはならなかったが、すでにFacebookを使っている人にとってTwitterを使う理由を少し減らすことができた。5年後、Twitterのユーザー数は3億1300万人にまでしか成長していないが、Facebookには17億1000万人のユーザーがいる。Facebookは今でもリアルタイム、有名人のコンテンツに関して改良を加える一方、Twitterの課題は誰もが彼らのサービスを使用すべき魅力的なユースケースにたどり着けていないことだ。

今、Instagramは同じ方法でSnapchatと対抗しようとしている。

Instagram StoriesはSnapchat Storiesの品質には及ばない。ジオフィルター、アニメーション付きセルフィーレンズ、3Dスタンプ、スピードを変える演出、スクリーンショットのアラートもない。アプリを立ち上げてすぐに撮影を開始できるよう、カメラがホーム画面に設定されてもいない。アップロードもスムーズさに欠ける。

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しかし、Instagram StoreisはSnapchatの成長を遅らせるのに十分かもしれない。特に既存のInstagramユーザーにとってそれはあてはまるだろう。Instagram Storiesはフィードの最上部に登場し、見逃したりはしない。中核となる、お絵描きとテキストの上乗せツールもそこにある。そして最も大事なことに、別のアプリで新しいオーディエンスを獲得する必要がないのだ。

過去にFacebookがSnapchatを真似ようとして失敗したのは、彼らは「さらに良い」バージョンのSnapchatを作ろうとしたからだ。

繰り返しになるが、多くのSnapchat愛好ユーザーは、Snapchatを離れたりしないだろう。けれど私の友達の間でも、もう数十人がInstgram Storiesで遊び始めていて、何人かはSnapchatを使うのをやめてしまった。ただ、Instagram Storiesの本当のターゲットは、Snapchatの楽しげなツールや形式に関心があるけれど、過去に使ってみたが定着しなかった、あるいは10代向けのツールだと割り切った、はたまた使い方を覚えるのに時間がかかりすぎると思った人たちだ。

これがうまくいかなくても、InstagramはStories機能を廃止すればいい。開発した時間とSnapcahatを真似たと批判されるコストがかかるくらいだ。InstagramのCEO、Kevin Systromは「 彼らが賞賛を受けるべき」と私とのインタビューで完全に認めている。FacebookがSubscribeがなくても重大なライフイベントや意見を共有する場であったのと同じように、Storiesがあろうとなかろうと、Instagramの洗練されたソーシャルメディアとしての立ち位置は変わらない。

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もしInstagram Storiesが成功すれば、最も危険な競合相手の牙を抜くことができるかもしれない。Facebookが過去にPoke、Slingshot、BoltといったSnapchatの機能のクローンを作ることに失敗している。それは、スタンドアローンのアプリとしてSnapchatと真っ向から対立するような「さらに良い」機能を作ろうとしたからと言えるだろう。ここでFacebookは学び、すでに人気のあるアプリに、それなりに使える機能を埋め込むことにした。

Storiesのフォーマットでユーザーを争うのではなく、Snapchatは他の付随機能、信頼性、初期の強力なコミュニティーの力で競争すべきだろう。Instagramのそれなりに使える機能ではSnapchatに致命傷を与えることはできないが、Snapchatが今後拡大する力を奪うことにはなるかもしれない。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

この秋、MacBook Proが一新される―Touch ID装備 、ファンクションキーはミニOLEDスクリーンに

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近くMacBook Proが大幅にアップデートされる。Appleが準備しているノート・パソコンはretinaディスプレイを装備したMacBook Proの13インチ、15インチモデルだ。BloombergのMark Gurmanによれば、Macbook ProはTouch IDセンサー、ファンクションキーを代替する OLEDミニ・スクリーンを始めとしてすべての面で新しくなるという。

MacBook Proに関する噂に関心がある読者には必ずしも驚くような内容ではないかもしれないが、KGI Securitiesの情報通のアナリストのMing-Chi Kuoと9to5macが報じていた内容をBloombergのGurmanが確認した。一言でいえば、MacBook Proのアップデートは非常に大幅なものになる。

まず外観から検討してみよう。新MacBook Proは現行モデルより薄く、軽くなる。しかしMacBook Airや12インチのretinaモニターのMacBookと違ってくさび形ではない。モニター周辺のベゼルは細くなり、デバイスの筐体も小型化される。

MacBook Proの筐体デザインがMacBook Airのようなくさび形ではないというのはグッド・ニュースだ。現行MacBook Proに装備されているポートに多様な機器を接続しているユーザーは多い。新モデルにも1つ以上のポートが装備されるはずだ。現行のUSB、MagSafeはType-C USBに置き換えられる。USB-CはThunderboltプロトコルをサポートするのでThunderboltポートも廃止されるかもしれない。Appleは内部のスペースを稼ぐためにHDMIポートとSDカード・スロットを廃止するかもしれないが、今のところはっきりしたことは言えない。

チップに関しては AppleがIntel Skylakeプロセッサーを採用しているのはほぼ確実だ。これによりパフォーマンスと省エネが一段と進む。Wi-FiとBluetoothのチップも新型に置き換えられるだろう。

しかし新MacBook Proで最大の改良点は本体のキーボードの上部に設けられた細長いOLED画面だ。これは現行のファンクション・キーや物理的なボタンを置き換えるタッチスクリーンだ。この新機能は誰も予想しておらず、Appleがこのタッチスクリーンにどんなタスクを割り振っているのか正確なところはまだ不明だ。いずれにせAppleはこのタッチスクリーンにアプリ別のショートカットや各種情報を表示させることができる。

またAppleはTouch IDセンサーを組み込み、MacBook Proを起動するためにキーボードからパスワード打ち込む必要をなくす。さらに重要な点だが、Touch IDセンセーには指紋データをデバイス内に安全に保管するsecure enclaveという仕組みが組み込まれている。セキュリティーが非常に高いため、デベロッパーはTouch IDによる認証を他の目的、たとえばパスワード管理ソフトの起動などに使うことができる。またmacOS SierraでApple Payを安全に利用することできるようになった。

最近各方面からMacBook Proはどうしようもなく時代遅れだという批判が聞かれるようにあった。実際、前回のメジャー・アップデートは2012年の7月で、retinaと新しいデザインの筐体が導入されている。

もう忘れているユーザーも多いが、MacBook Proに1枚のアルミ板から成形されたユニボディー筐体が採用されたのは、retinaアップデートからさらに4年をさかのぼる2008年だった。つまりAppleはノートパソコンのメジャー・アップデートを頻繁には行わないということだ。もちろんその間にも内部の各種コンポネントのアップグレードは何度も行われている。

もっとも、そうであるならSkylakeプロセッサーの採用はもっと早くてもよかったはずだ。Gurmanの観測によれば、9月7日になる可能性が高いiPhoneのアップデート・イベンドで新しいMacBook Proが同時に発表されることはないだろうという。AppleがMacBook Proの新モデルを発表するのは10月になるらしい。このスケジュールは納得できる。

〔日本版〕 iOS 9以降を導入したデバイスでTouch IDをサードパーティー製に交換するとデバイスは無効化され、復活させる方法はない。これはユーザーの指紋データがApple純正センサー内にのみ保管されるため。secure enclaveの記事内リンク先に詳しい情報あり。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

NetflixのiOS/Androidアプリでモバイル上のインターネット接続のスピードが分かる

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Netflixは、ユーザーが自分のインターネット接続のストリーミングの速度を、自分で調べられるサイトFast.comを、5月に立ち上げた。そして今度は、モバイルでもそれができるために、iOSAndroidのアプリをリリースした。それを最初に見つけたのは、9to5Macだ

その“Fast Speed Test”アプリは、デスクトップ用のWebサイトFast.comと同じく、ユーザーが今の自分の接続でNetflixを見たときのスピードを教える。スピードを記録している間、グレーのカウンターが変化し、最後にはSpeedtestであなたの接続のスピードを見よ、と言われる。リンクをクリックするとそのページへ連れて行かれるので、そこでSpeedtestのモバイルアプリをダウンロードする。

スピードを調べることだけが目的のアプリだから、広告も何もない、さっぱりとしたUIのアプリだ。

Fast.comのときに説明したように、調べるのはNetflixのサーバーから直接ダウンロードするときのスピードで、Speedtest.comなどそのほかのサイトからのスピードではない。だから、実際にNetflixを見るときのスピードが分かる。

もちろんこのサービスは、Netflixが自分のストリーミングサービスのクォリティを訴求するための、格好の宣伝素材でもある。

同社はデータを集めることにとても熱心だ。そしてそれらのデータを使って、ユーザーにおすすめするコンテンツを決めたり、これまで見たコンテンツの関連コンテンツを勧めたり、そして、インターネット接続のスピードを調べたりしている。

またNetflixが独自に作った ‘ISP Speed Index’ は、大量のデータを駆使して各ISPの平均スピードを調べ、ユーザーに推奨するISPを決めている。そして、ストリーミングをモバイルで見るユーザーの増加とともに、重要な変数がまた一つ増えた。それは、モバイルのキャリアのサービスの質だ。今度のアプリでは、それもほぼ分かるから、とくに会費を払ってNetflixを見ているユーザーには、有意義なアドバイスができるはずだ。どこが、映画をストリーミングで見るのに最適のキャリアか…。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

自動車メーカーには安定したスタートアップパートナーが必要だ

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ネット接続された自動運転車の未来を分析しているTU-Automotiveが最近、自動車メーカーとスタートアップの関係に焦点をあてたWebセミナーを開催した。Hyundai Venturesのベンチャーキャピタリスト兼マネージャーのSK Kim、ならびにAutotech CouncilのエグゼクティブディレクターであるLiz Kertonが、身軽な新しい企業と100年を超える歴史を持つ企業との協業の課題についての講演を行った。

Kimは言う「私たちのビジネスモデルは100歳になります、そして売るものは1つだけ:車です」。スタートアップは市場とその内部のニーズに対応するために、次々に進化するビジネスモデルを採用している。そして彼らが売ることができるものの数を制限するのは、彼らの想像力とミッションだけである。

そこに最初の課題が存在している:動きの速い21世紀の中でスタートアップが機能することを許している敏捷性が、自動車の巨大企業の目には不安定なものとして映るのだ。「(自動車メーカーは)十分に安定し、誰もが短いものではないと知っている自動車会社のプロダクト開発サイクルに付き合えるだけの、十分な資金を持つ会社を見つける必要があります」とKertonは言う。

単に1、2年のファンディングだけでは不十分だと、彼女は付け加えた。なぜなら1台の車をスケッチからショウルームへと持ち込むだけでも、それ以上の期間を必要とするからだ。1台の車を開発するのに5から7年が必要であることにKimは注意を促した。一方電話の開発には1年、アプリの開発には数週間から数ヶ月しかかからない。そして1度車がショウルームを出たら、路上に20年は留まり続けるという事実がある。「あなたの技術パートナーには脱落して欲しくないでしょう」とKerton。

スタートアップは早期の収入の確保のために素早い投資決定と契約を望む、とKimは述べた。「それが彼らが生き残るための唯一の方法だから」と続ける。しかし、自動車側の慎重でゆっくりとしたペースの投資や開発と、スタートアップが期待するタイムラインを連動させようとすることは「どちらにとってもフラストレーションなのです」とKimは語った。

だとすると一体なぜ老舗の自動車会社が、成り上がり(upstart)、もとい、スタートアップ(startup)と協業したがるのだろうか?Kimが主だった3つの理由を教えてくれた:自動車会社はイノベーションを起こすためのテクノロジーパートナー、柔軟性を取り込むためのビジネスパートナー、そして輸送の不確かで予測できない未来を探求することを恐れないパートナーを必要としている。大胆な動きをとることは、大手自動車メーカーが得意とする分野ではないからだ。

Kimは言う「自動車製造は、高度に規制された製品を扱う、高度に規制されたビジネスなのです」。こうした理由から、スタートアップがそのプロダクトのマーケットもしくは潜在的パートナーの対象として自動車産業だけに集中するのは危険である。Kimは、スタートアップは、まず何かを他の分野向けに開発してから、自動車分野に進出する方が良いだろうと助言した。その戦略はパートナーシップにおける双方のリスクを、実際に結ばれる際に低めることだろう。

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(翻訳:Sako)

iOS 10 beta 5リーリース。「コードを学ぶ」アプリSwift Playgroundsを同梱

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Appleの開発者たちに良いお知らせだ。Appleは本日iOS 10ベータの第5版をリリースした。watchOS 3、macOS、そしてtvOSも同時である。このリリースで私たちはより一層iOSの最終ビルドに近付くことになる。予想されている9月のリリースまでにはあとせいぜい1つか2つのベータが発表されるだけだろう。

予想通り、最初のいくつかのベータ版には多くのバグがあったが、以降の各ベータ版の中でAppleはコードを洗練し不具合を修正してきた。iOSベータ5で同社は、iOSとApple TVのインタラクション、App Storeでのアプリ内購入、Bluetooth、iMessage、電話とWalletアプリの数多くの課題に、アクセサリーに対する問題と同時に対処を行った。特に、iPhone 6sをスマートバッテリケースで使用した場合にパニックを起こさなくなったことなどが、その例だ。

このiOSビルドでの変更点は少なかったが、初期のテスターたちは既にその違いを見つけている。写真アプリの中のAIと顔認識データはリセットされ、これによって新しいスキャニング処理が実行されるとiPhoneHacksが報告している 。それに加え、Music Control Centerが調整され、「今日」ビューには日付と各種データが表示され、ウィジェットの背景はより暗くなり、そして新しいロック時のサウンドが追加されたと報告には書かれている。

iOSのベータ5にはまたSwift Playgroundsが伴っている。これはAppleがWWDC 2016で紹介した、子供向けの「コードを学ぶ」アプリだ。アプリには教材のLearn to Code part 1と2が同梱されており、その他にも利用者が試すことのできる様々な問題が含まれている。また、テンプレートを使って独自のプレイグラウンドを作ったり、まっさらなプレイグラウンドを作ったり、Xcodeの中でプライグラウンドを開いたりすることもできる。

またこのアプリには、Answers、Shapes、そしてBlankテンプレートに加えて、新たにGraphingテンプレートが含まれている。

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また、Appleのリリースノートによれば、iPhone 6s、iPhone 6s PlusおよびiPhone SEで(英語に設定したSiriを使って)Voicemailの文字起こしが、使用できるようになった。しかし、まだ問題も残っている。FaceTimeによるこのiOSベータとmacOSベータの間の通話がうまく機能しないこと、Apple Musicの「For You」の中の「最近再生した項目」がなかなか更新されないこと、ノートが不意に終了してしまうこと、などが他の些細なバグとともに残されているのだ。

他のプラットフォームに興味のある人のために紹介すると、mac OS SierraはSiriをMacに取り込み、写真アプリは更新され、Safariはピクチャー・イン・ピクチャービデオをサポートしている。その他にも 多くの機能が取り込まれている 。WatchOS 3もまた新たなUIを提供しているという意味で、メジャーアップデートと言えるだろう。もう「友達」画面は存在せず、アプリの起動速度は速くなった。Apple TVのtvOSのアップデートは大きなものではないが、より暗いモードをサポートし、TV Everywhereアプリからのサインオンに対応した。このデバイスはまたHomeKitのためのハブとしても機能する。

また新しいmacOSのベータ版は、Apple Payに対応した電話や時計を発見してApple Payをサポートするようになった。その他細かな課題に対応している。一方watchOS 3ベータ版ではSiriを使う際の問題の修正が加えられた。これは削除されてしまっているアプリに対する要求を受け付けた時、Siriが思うような反応を返さないという問題である。

内容は更に追加される予定…

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(翻訳:Sako)

Slackの単純な線形のメッセージ集合に文脈性と構造性を与えるSlackボットPingpad

Business people talking in office

昨年、消費者向けのモバイルアプリをローンチしたPingpadが、本日(米国時間8/9)方向転換をして、人気の高いエンタープライズコミュニケーションプラットホームであるSlackの機能を高めるコラボレーションツールを発表した。同社は、こちらに専念するために、消費者アプリを最近閉鎖した。

PingPadのファウンダーの一人であるRoss Mayfieldは、いわゆるEnterprise 2.0ブームの初期のころから活躍していて、2000年代の初めに登場してきたWebベースのツール、ブログやwikiを真似て、それらの機能を企業のコラボレーションツールにしよう、という趣旨のサービスSocialtextを立ち上げた。

Mayfieldは今回、そのときの経験をベースにして、Slackに欠けているものを提供しようとしている。それは総合的なコラボレーションツールで、彼が初期のころ参考にしたwikiのように、チームのメンバーにコンテキストと構造性を与える。言い換えると、Slackのあくまでも線形の会話から、話の脈絡を取り出す。

このSlackボットは、Slack上の会話を組織化して、検索やそのほかの利用が可能なドキュメントを作り出す。

このボットは、その後の会話からも情報を取り出して、リアルタイムでそれらのドキュメントに加える。またユーザー自身が、/noteなどのコマンドでコンテンツを加えることもできる。

Pingpad Slackbot organizing tasks by person and color coding them.

画像提供: Pingpad

Slackは、これまで多くの人が失敗したエンタープライズコラボレーションで成功し、その成功の鍵は、オープンなコミュニケーションプラットホームであり、またデベロッパーにとってもフレンドリーだったことにある。その成長に刺激されたPingpadは、方向転換を実験的なサイドプロジェクトとして開始したが、すぐに、Slackという馬に乗らない手はない、と悟った。

ビジネスモデルは、1チーム100ノートまでは無料、それ以降は、1ユーザー1か月あたり4ドルで、サポートは無制限だ。

Mayfieldは、彼が昔作ったマイクロブログツールSocialtext Signalsと、今のSlackがとてもよく似ている、と感じている。“SlackのメッセージボタンみたいなものはSocialtext Signalsにもあった。サードパーティアプリとの統合性も良かった。通知機能や、他のアプリとの対話機能、メッセージを送って記録されているデータを変えることもできた”、と彼は昔を振り返る。

2002年にローンチしたSocialtextは、その後2012年にPeoplefluentに買収されたが、今日のSlackほど大々的に、エンタープライズ市場を捉えることはできなかった。

Mayfieldは、今回のように、他のプラットホーム(Slack)に乗っかる形にはリスクがあることを認める。でも、Slackよりも前にコミュニケーション/コラボレーションツールを作ってきた彼は、Slackにある種の因縁を感じている。彼は、Slackに賭けてみたいのだ。この分野ですでに14年の経験がある彼は、今度はうまくいく、と感じている。

この、‘Slackのためのwiki’は、最初のステップにすぎない、と彼は言う。これが離陸したら、ほかのツールも作りたいし、スタンドアロンのモバイルアプリもいずれやりたい、という。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ライブ動画配信の「LINE LIVE」、ユーザー向けに配信機能を解放——ライバルは「Snapchat」?

「LINE LIVE」のデモ

LINEが提供するライブ動画配信プラットフォーム「LINE LIVE」。LINEでは近日中にも一般ユーザー向けにライブ配信機能を開放する予定だとしていたが、アプリのアップデートにともなって、8月10日よりいよいよ一般ユーザーへのプラットフォーム開放が始まった(現状はiOS版のみ。Android版も間もなくアップデート予定)。

LINE LIVEはLINEが提供するライブ動画配信プラットフォーム。2015年12月にサービスを開始。この約半年間、LINEと組む制作会社やテレビ・ラジオ局などの企業、音楽アーティストやアイドルなどの著名人が配信する生中継番組を中心にしてコンテンツを拡大してきた。2016年6月末時点での延べ視聴者数は3億5000万人を突破。これまでに300人以上のアーティストやタレントがライブなどを配信している。

今回アップデートにより、そのライブ配信機能をユーザーに開放。LINE IDを持つユーザーであれば、誰でも動画の配信が可能になった。あらかじめアプリ上でLINE IDを連携しておけば、ボタン1つでライブ配信が可能になる。配信中はLINEが提供する自撮り動画アプリ「egg」でも実装されている「LIVE スタンプ」(顔認識を使って、配信者の顔をウサギにしたり、天使にしたりするスタンプ。最大3人まで認識可能)や色味を変えるフィルターでのデコレーションが可能だ。顔認識を使ったデコレーションと言えば「Snapchat」や「Snow」でもおなじみの機能ではあるが、ブラウンのようなキャラクターのスタンプも用意されているのはLINEらしいところ。ローンチ時点で45種類のスタンプを用意するが、今後は企業とのコラボなども含めて数を拡大する予定だ。

視聴者は配信者に対してコメントをしたり、面白ければ「ハート」を送ることができる。その他、仮想通貨を使ってさまざまなギフトアイテム(有料コンテンツ)を配信者にプレゼント可能。なおLINE LIVEではこのハートやギフトの数(厳密にはギフトごとに仮想通貨の額が決まっており、その額分のハートが配信者に贈られる)、視聴者数、配信時間などをもとに、配信者に対してLINEポイントをインセンティブとして付与する。ポイントの算出方法は「今後も非公開。体感して分かって欲しい」(LINE執行役員でエンターテイメント事業部の佐々木大輔氏)とのこと。なお現状はこの仮想通貨の購入がLINEの収益化手段となる。今後はLIVEスタンプの有料販売をはじめとして幅広いマネタイズ手段を検討しているという。

ライブの配信時間は最大30分。配信した動画は1カ月間アーカイブが残り、その後自動で消去される。設定によりアーカイブを非公開にすることも可能だ。ちなみに生放送とアーカイブでは、生放送の方が試聴されるという。例えば配信者が視聴者の名前を呼ぶ、質問に答えるなどインタラクティブなやり取りができるため盛り上がるのだという。僕はサービスのローンチに先駆けてサービスを体験する機会を得たのだが、やっぱりLIVEスタンプがあることでこれまでのサービスよりも配信ハードルは低い気がする。

ライバルは生配信よりSnapchat?

モイの「ツイキャス」にドワンゴの「ニコニコ動画」、ディー・エヌ・エーグループの「SHOWROOM」、海外を見ればTwitterの「Periscope」、最近ではFacebookアプリでも……ライブストリーミングのサービスはすでに多くある。佐々木氏はこれらのサービスに対して、「『競合は考えていない』というのではないが、(LINE LIVEは)コミュニケーションが中心のサービス」だと説明する。

それに加えて興味深かったのは、佐々木氏と2人で話した際に、ライブ配信サービスよりもSnapchatについて意識していた点だ。配信時に立ち上がるのはインカメラ——つまり外の世界ではなく自撮りを楽しむ前提のサービスであること、顔認識によって自撮りのハードルを下げていること、コミュニケーションだけでなく「ストーリー」というメディア機能を備えていること(前述のとおりLINE LIVEではローンチ時より企業や著名人のコンテンツが配信されている)——たしかにこれはSnapchatとLINE LIVEに共通する内容ではないだろうか。LINEの国内ユーザーは現在6800万人以上。このプラットフォームを生かして、LINE LIVEはどのように成長するのだろうか。

Google、オリンピックに関する検索トレンドまとめページを公開(完全日本語対応)

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オリンピックが盛り上がりをみせている。そんな中、GoogleがGoogle Trendを活用したオリンピック特集ページをオープンした。オリンピック関連で盛り上がりを見せているキーワードをいろいろと表示してくれる(訳注:完全に日本語対応しており、日本語ページのタイトルは「2016年リオオリンピックで今話題の検索キーワード」となっている)。

それぞれの競技ごとのトレンドや、あるいは「競泳選手はなぜキャップを2枚かぶるの?」などといった関連情報などが表示されている。

このトレンドハブを構築する前から、Googleはオリンピック関連の検索に対しては、スケジュールや結果などを詳細に提示するようにはなっていた。

しかし、人々が興味を持っている言葉をわかりやすく提示することにより、たとえばメディアなどでも報道内容の選択に役立つようになるかもしれない。

それはともかく、2016年オリンピックはオンラインサービスが積極的にコンテンツを提示し始めたものとして記録されるかもしれない。NBCは85時間分のVRコンテンツが制作し、ウェブでのライブストリーミングも行なっている。Twitterは、オリンピックをカバーするためにTwitter Momentの仕様を変更したりもしている。もちろんFacebookもパーソナライズしたオリンピック情報をフィードに表示するような仕掛けを導入した。

Google Trendsを使ったまとめページはこちらからご覧いただくことができる。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

GoogleのクラウドプラットホームはプリエンプティブルVMの料金を最大33%値下げ

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これまでGoogle, AmazonそしてMicrosoftの三社は、クラウドコンピューティングの値下げ競争に邁進してきたが、このところようやく、沈静化したようだ。しかし今日(米国時間8/9)は、Googleがまた新たな爆弾を投げ込み、同社のプリエンプティブル仮想マシン(preemptible virtual machines)の料金を最大で33%値下げした。

プリエンプティブルVMは、AWSのスポットインスタンスのGoogle版で(Microsoft Azureにはまだ相当タイプがない)、Googleに先買権のあるリソース、言い換えるとGoogleにとってそれが遊休リソースである間はユーザーに安く使わせてあげるよ、というVMだ。GoogleやAmazonは、このやり方でリソースの利用率を常時高めたいのだが、彼らのシステムサイドの需要が混み合ってくるとユーザーは、通常のプールのユーザーへと自動的に‘格上げ’され、料金も上がる。

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Amazonはこれらの遊休VMをオークション方式でユーザーに提供するが、Googleの方式では定価制だ。それでも、同社の通常のVM提供物に比べると最大で80%ぐらい安くなる。

Googleのプラットホーム上では、これらのVMは最大で24時間しか使えないから、どんなワークロードにも使えるわけではない(AWSではスポットの入札価格が上がるまで使える)。でも柔軟性のあるワークロードなら、このタイプのVMを使ってかなりの節約ができる。

GoogleのプロダクトマネージャーMichael Basilyanが、今日の発表声明で書いている: “顧客はプリエンプティブルVMを使って、データの分析やムービーのレンダリング、衛星画像の処理、遺伝子データの分析、金融市場の理解、メディアのコード変換、さまざまなビジネスやエンジニアリングタスクの完遂、などを行っている。プリエンプティブルVMの値下げによって、コンピューティングの機会がさらに広がり、科学やビジネスの分野における興味深い問題への挑戦が可能になる、と信じている”。

運が良ければ、Googleの今日の値下げに刺激されて、Amazonも値下げを行うかもしれない。

ところで、プリエンプティブルマシンに向かないワークロードを抱えている方は、Googleが新しく設けた“VM Rightsizing Recommendations”(VM適正サイズ推奨)を検討してみてはいかがだろうか。このツールはユーザーのVM利用状況を分析して、ニーズに合った最適のスケールアップやダウンを推奨する。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MirantisとSUSEがパートナーしてOpenStackユーザーの広範なサポートを開始

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OpenStackを使っている企業に、ソフトウェアやサポートや教育訓練を提供しているMirantisが今日(米国時間8/9)、LinuxディストリビューションSUSEで知られるドイツのSUSE社とパートナーし、SUSEのエンタープライズLinux製品のカスタマサポートを提供していく、と発表した。また今後両社は、SUSE Linux Enterprise Serverを、Mirantis Openstackで用いる開発プラットホームにしていく。しかもさらに両社は、共同で、Red Hat Enterprise LinuxとCentOSもサポートする。

OpenStackに関してはSUSEとRed Hatの両社にそれぞれ独自のソリューションがあるので、Mirantisがこの競合する二社をサポートするのは一見奇妙に思えるが、しかし実は、末端のユーザー企業が、たった一種類のLinuxディストリビューションだけを使っていることはめったにないのだ。

Mirantisの協同ファウンダーでCMOのBoris Renskiは今日の声明文で、次のように述べている: “弊社の大企業顧客の多くが、2〜3種類のLinuxフレーバーを使っている。これからは、OpenStackのユーザーであれば、それらすべてのLinuxディストリビューションに関して、Mirantis一社からサポートを受けられるようになる。世界中の主要な業界で、何千社もがSUSEをメインに使っている。なぜならSUSEは、エンタープライズ級の信頼性の高い、企業が社運を賭けるに足る、高いレベルのサービス約定を提供しているからだ。SUSEとのパートナーシップはMirantisの顧客に、彼らが自社のプライベートクラウドを構築しようとするとき、そのような高いレベルのサポートを提供する”。

一方、SUSEで戦略と企業連合とマーケティングを担当するMichael Millerプレジデントによると、SUSEには元々、ユーザーを単一のディストリビューションに封じ込める趣味はない。そして彼は、“とくにOpenStackと関わるときには、〔企業間の〕政治のことは忘れるべきだ”、と述べる。彼によると、OpenStackはまだアーリーアダプターの時期にあり、そのデプロイも管理もきわめて難しい。しかしまた、それと同時に、OpenStackは、コンテナやネットワーク仮想化など、自分よりも後から登場した最新技術とのすり合わせに努力している段階だ。〔互いに争っている場合ではない。〕

MirantisのOpenStackディストリビューションは現在、CentOS向けに最適化されている(OpenStackのデプロイと管理サービスFuelのデフォルトOSとして)。またOpenStackのノードを動かす環境としては、Ubuntuが使われている。しかしMirantisの最新バージョンでは、OpenStackのコンピューティングノードとしてRed Hat Enterprise Linuxを使えるし、オープンソースのFuelツールもRHELを使っている。ただし、これらの公式サポートはまだだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

クラウドソーシングを使った翻訳事業を展開するエニドア、ロゼッタが約14億円で買収へ

クラウドソーシングを使った人力翻訳サービス「Conyac」を運営するエニドア。同社がM&Aによるイグジットを果たしたようだ。翻訳事業を手がけるロゼッタは8月10日、株式取得および簡易株式交換により、エニドアを完全子会社化すると発表した。

ロゼッタはエニドアの発行済み株式1263株のうち633株(議決権ベースで50.12%)を8月15日付けで7億3200円にて取得。残りの630株を株式交換で取得する(エニドア1株に対してロゼッタ311株を割り当てる。合計19万5930株。1株3414円で算定し、6億6891万円)。合計すると約14億円でのM&Aとなる。

ロゼッタはこれまでプロ翻訳者による「翻訳通訳事業」と機械翻訳による「MT事業」、プロ翻訳者と機械翻訳を活動する「GLOZE事業」を展開してきた。エニドアの提供するConyacがこのGLOZE事業とMT事業の間の領域を補完するとしている。なお、エニドア代表取締役の山田尚貴氏らは引き続きConyac事業を担当する。

エニドアは2009年2月の設立。スカイライトコンサルティング主催のビジネスプランコンテスト「起業チャレンジ2009」で最優秀賞を受賞し、その賞金をもとに起業した。これまでにサムライインキュベートのほか、スカイライトコンサルティング、ベンチャーユナイテッド(当時はngi groupで、ファンドもngiベンチャーコミュニティ・ファンド2号からの出資)、ANRI、East Ventures、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルなどから出資を受けている。同社の2016年3月期業績は売上高5億6900万円、営業利益が2億7000万円、経常利益が2億6900万円、純利益が2億2300万円となっている。

RandstadがMonsterを4億2900万ドルで買収、採用分野での統合が相次ぐ

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オンライン採用業界で大型M&Aが相次いでいる。本日、アムステルダムを拠点とする人材と採用に特化したRandstad Holdingsは、仕事探しポータルのMonster Worldwideを4億2900万ドルをキャッシュで買収すると発表した。

この取引は、1株あたり3.40ドルでの買収となる。月曜日の市場での取引後の株価に上乗せした金額で、Monsterの時価総額は2億6200万ドルだ。しかし、それは1999年に創業したMonsterが、翌年には早くも上場した勢いのある時期の価格には遠く及ばない。Monsterは人材スタートアップ2社が統合して設立した会社だが、当時の株価は91ドルで、時価総額は80億ドルだった。2007年でも、株価は51ドル周辺で、Monsterの時価総額は最大55億ドルだった。(似たようなを他でも聞いたことがあるかもしれない。どこも同じ話があるのだ)。

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それでもMonsterにとっては興味深いエグジットだ。彼らは、最初のドットコムブームからのベテラン企業(そして生存者)だ。業界で多数のM&Aが活発に起きている中での買収だ。6月には、Monsterは「仕事のTinder」であるJobrを買収し、7月にはIndeed.comがSimple Hiredを買収した。Indeed自体は日本の採用と人材大手Recruit Holdingsが所有している。

Monsterはブランドを維持し、別会社として運営を継続する。しかしより大きな計画は、採用と雇用業界における異なる要素を統合し、Randstadが言うところの「人材サービスのポートフォリオ」における規模の経済の活かすことという。

「大規模な技術革新が起きる時代、雇用主は人材と関わり、獲得する最適な方法を見つけるという課題があります」とRandstadのCEOである Jacques van den Broekは声明で伝える。「Monsterは業界を牽引するテクノロジープラットフォームで、簡単に伝えるデジタルかつソーシャルなモバイルソリューションです。Randstadとは自然と補完しあえる会社です。この買収は、私たちのTech and Touchの成長戦略に合致し、労働力の供給と需要を近づけ、人材と最適な仕事とをつないでいく取り組みを促進するものです。私たちはMonsterチームを歓迎し、共にグローバルな採用業界を形作れることを楽しみにしています」。

Monsterにとってこれが重要な動きなのは、戦略的に他の近いビジネスと組む必要があるからだ。Recruitといった企業が採用分野に特化してサービスを展開している。Monsterは、40カ国以上でサービスを展開し、 Q1の発表では自社データベースに5万人の雇用者が登録しているという。しかし、Indeedが所有するSimple Hiredだけでも5万人が登録しているのだ。

「Randstadに参加することは、より多くの人を仕事とつなぐ事業を進めるためのまたとない機会です」とMonsterのCEOであるTim Yatesは声明で伝える。「Randstadと共にMonsterは、私たちの中核となるミッションを達成する立ち位置につけ、私たちの従業員は大きく、多様性のある企業の一員になることで得られることが多くあります。同様に重要なのは、この買収で私たちの株主に対してもすぐに価値を提供できることです。私たちは、継続的に最高の採用メディア、テクノロジー、プラットフォームを構築するにあたりRandstadに参加することで、彼らの支援が得られることを嬉しく思います。スムーズに事業を以降できるようRandstadチームと協力していきます」。

Monderの収益源と主力事業はウェブサイトで、一方のRandstadは採用センターに注力している。およそ4500の支店を持ち、200万人を仕事とつなげたという。Monsterの買収で、それを拡張するオンラインの要素を獲得した。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

Intel、ディープラーニングのNervana Sytemsを3.5億ドルで買収

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米国時間8/9、Intelはディープラーニングのスタートアップ、Nervana Systems を買収すると発表した。これは同社内でのAIソリューションの役割を強化しようとする動きの一環だ。Recodeの報道によると、買収価格は3.5億ドル以上で、ここ数週間(控えめに言って)かなり活発だったIT業界M&Aのリストに名を連ねた。

「ディープラーニングのアルゴリズムを加速するNervanaの知的財産と専門知識は、IntelのAI分野での能力を拡大する」とIntelのEVP兼データセンターグループGM、Diane Bryantがブログ記事で語った。「Nervanaの持つソフトウェアの専門知識を活用することで、IntelのMath Kernel Libraryをさらに最適化し、業界標準フレームワークに統合していく」。

さらにBryantは、同スタートアップの専門知識は「IntelのAI戦略を強化し、ディープラーニングの性能や、Intel XeonおよびIntel Xeon PhiプロセッサーのTCO(総保有コスト)を改善するものである」と具体的に語った。

創立2年のスタートアップは、これまでにDFJ、Data Collective、Fuel Capital、Lux CapitalおよびAllen&Co. らの投資家から2500万ドル近くを調達している。以前同社は、AIソリューションに対するハードウェア中心のアプローチで注目を集め、以来ニューラルネットワークの学習に向けた技術開発に注力している。

カリフォルニア州サンディエゴを拠点とする48人のチームは、買収完了後IntelのData Centerグループに加わる。

NervanaのCEO・共同ファウンダー、Naveen Raoはブログ記事で、今後もディープラーニングのフレームワーク、プラットフォーム、およびハードウェア関連の開発を続けていくことを明言した。

Nervanaの技術と専門知識をIntelの戦略と組み合わせることによって、ディープラーニング/AIソリューションは次のステップへ進む。われわれは今後もサンディエゴ本社で活動を続け、会社の人材、ブランド及びスタートアップ精神を持ち続ける。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Funding Societiesが750万ドルを調達、東南アジアで個人出資ローンサービスを展開

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また新たに東南アジアのフィンテック系スタートアップが、注目の投資ラウンドを終えた!シンガポールを拠点とするFunding Societiesが、同社のマーケットプレイスを介したローンサービスのため、シリーズAラウンドで750万ドルを調達したのだ。

本ラウンドでは、Sequoia Capitalが設立した、東南アジアを拠点とするスタートアップが対象のファンドであるSequoia Indiaがリードインベスターとなり、エンジェル投資家もそれに加わった。

2015年6月にローンチされたFunding Societiesは、Lending Clubを例としたアメリカに既に存在する企業のように、誰でも利子狙いで貸出資金を出資できるプラットフォームを運営している。Funding Societiesは、自分たちのプラットフォームを「Peer to Business(個人から企業へ)」プラットフォームと呼ぶことで、競合他社との差別化を図っている。つまり、現状彼らは消費者向けではなく、中小企業向けにローンを提供しているのだ。しかしターゲットについては、取引のボリュームが増加してくれば変わってくる可能性もある。

Funding Societiesは、シンガポールと(Modalkuと同じ)インドネシアで営業を行っている。シンガポールは、東南アジアの国々の中でも経済発展ではトップの地位にあり、インドネシアも経済規模では同エリアのトップだ。なお、両国にはCapital MatchMoolahSenseといった競合が既に存在する。

同社は、これまでに96件で合計870万ドルのローンを実行している。返済率は94%と発表されており、Funding Societies CEOのKelvin Teoは、返済率こそボリュームではなく信頼度を測れる意味で、重要なデータだと語っている。

「Funding Societiesは、シンガポールにある他社と比べ、サイズでは劣っていますが実行したタームローンの数では1番です。これには、度を越した貸付を行うといつか不渡りの形で返ってくるという私たちの考え方が反映されています」と彼は説明する。

詳細を説明すると、Funding Societiesは主に運転資金の貸出を行っており、シンガポールの平均ローン額は9万シンガポールドル(6万7000ドル)で、インドネシアは2万5000シンガポールドル(1万8500ドル)だ。

借り主にはローン組成費用(シンガポールで3〜4%、インドネシアで5〜6%)が発生し、貸し主は月々1%の利用料を支払わなければならない。同社によれば、ローン申請の審査通過率は15〜25%とのこと。

拡大と規制対応

Teoは、TechCrunchの取材に対し、Funding Societiesがマレーシアへの参入準備を進めていると語った。マレーシアには既に数人の従業員がいて、現地での営業許可に関する当局のフィードバックを待っている状況だ。

マレーシアへの展開と全般的な規制対応のふたつが、今回調達した資金の主な使い道だ。さらに彼は、東南アジアではP2Pローン市場がまだ成長過程にあり、Funding Societiesは新たな規制導入の需要を考慮して資金力を増強したと説明した。

また、コンプライアンスの重要性を強調し、投資家から資金を調達するのにも「信じられない程の」数の法律事務所に相談しなければならなかったと話した。

「私たちのいる業界に対する規制がシンガポールで発表されましたが、これに対応するには別途資金が必要になってくるでしょう」とTeoは語る。

Funding Societiesは、インドネシアでも同様に、当局と協力しながら個人出資ローンに関する規制のフレームワーク導入に取り組んでいる。

競争の激化

Teoは市場の競争激化を見越している。そのせいもあって、彼と共同設立者であるReynold Wijayaは、去年アメリカのハーバード大学を卒業する前に、100日間でFunding Societiesを立ち上げた。

「今年の卒業まで待っていたら、市場に遅れをとることになっていたでしょう」とTeoは話す。

素早く動く以外にも、商機を掴む上でタイミングがとても重要だったと彼は主張する。というのも、規制対応にかかる費用のせいで、資金力の無い会社は事業を続けられない可能性があるとTeoは考えているのだ。

「このタイミングで資金調達を行っていない企業は、東南アジアにあるプラットフォームで規制にのっとった営業を続けられなくなる恐れがあります。私たちは、今後6ヶ月のうちに競争が激化し、その後業界再編が起きると予想しています」と彼は付け加えた。

規制対応と拡大(ここにはインドネシアの首都ジャカルタ外の都市への拡大も含まれる)の他にも、Funding Societiesは製品への投資を考えている。現在、同社はiOSのアプリを貸し主向けに、そしてAndroidアプリを借入希望の企業に対して提供している。この決断は、アジア社会においてApple製品は富裕層に人気があるという無視しがたい状況に基づいている。しかし、今後借り主と貸し主向けのサービスを整備し、「個々の投資家のニーズに合った投資オプションをつくりだすような」サービスを増やしていく予定だとTeoは話した。

まだまだやるべきことは多いようで、Funding Societiesは既に約70人規模の企業に成長したが、Teoは同社のスタートアップらしい成長と、金融商品を扱うことの責任をすりあわせようとしていると強調した。

「私たちと投資家の方々は、爆発的な成長を推し進めて不渡りを発生させる代わりに、ゆっくりと確実に積み上げていくという姿勢をとっています。利益を生み出すためには、時間をかけてスケールしなければいけません」とTeoは、Funding Societiesが「2、3年」のうちの損益分岐点到達を目指すと説明しながら語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

日本のFinTechはいよいよ応用期に——その全体像を読み解く

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この原稿はFinTechスタートアップであるマネーフォワードの創業メンバーで取締役兼Fintech研究所長の瀧俊雄氏による寄稿である。マネーフォワードは自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」やビジネス向けのクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」などを提供。4月には代表取締役の辻庸介氏と瀧氏の共著「FinTech入門」も上梓している。本稿では、いよいよ応用期を迎える日本のFinTech事情について論じてもらった。

本誌に2年前に寄稿した頃、FinTechはまだ、知る人ぞ知るテーマであった。その後、FinTechはスタートアップ界隈のみならず、金融業界をも含めた一大テーマとなり、今や誰しもが知るところとなった。本稿では、現在の問題意識とそのあり方について述べてみることとしたい。

産業政策となったFinTech

現在行われている様々な議論のルーツを紐解くと、FinTechの盛り上がりの火付け役となったのは、2015年2月5日に開催された金融審議会における決済高度化スタディグループである。同スタディグループでは楽天やヤフー、AmazonといったIT産業のプレーヤーが、ECなどの自社のプラットフォームで生まれる取引から決済事業や融資事業を展開する中で、同様のチャンスが既存の銀行業においても模索されるべきではないか、とする問題意識が取り上げられた。

この議論は2015年を通じて、銀行法をはじめとする様々な制度改定として結実しつつある。その内容は、銀行によるFinTech事業会社の保有規制の緩和や、ATMの現金引き出し機能をコンビニやスーパーのレジに持たせること、ビットコインの取引所における利用者保護の仕組みなど、多岐にわたる。このような制度改定の第一弾ともいえる銀行法等を改正する法案は2016年5月に国会を通過した。

制度変化の中で、メガバンクのみならず地域金融機関や、証券会社、保険会社などにおいてもFinTechに関する専門部署が立ち上がり、協業や新規事業開発に向けて異例ともいえるスピード感を発揮している。

このような既存の金融システムの高度化・利便性向上という観点に加えて、成長産業としてのFinTechにも関心が集まっている。2015年の後半に開始した経済産業省のFinTech研究会では、多種多様なプレーヤーを内外から招いた、総合的なFinTechに関する情報収集とあるべき政府の規制とサポートが議論された。そして、産業競争力会議における会合や、自民党政務調査会における戦略的対応としての取り上げなどを含めて、1つのベンチャー用語としてのFinTechから、産業政策としてのFinTechという位置づけへの昇華が見られた。

FinTechのインパクトは多様であるが、誰もが意識するべき2点として、(1)インターネットが持つ力学が金融の世界にも浸透し、ユーザー中心の社会が実現されていくこと、(2)新たな金融インフラのあり方に対して、先取りし、自ら考える経営姿勢が各ステークホルダーに求められていること、である。この2点を元に、未来像を描いていくことこそが重要である。

(1)ユーザー中心主義のサービス設計について

FinTechでは、Techを活かすことができるベンチャー企業が主語となっている。その理由は明確で、ベンチャー企業は顧客獲得競争において、失敗を通じた学習がより許容される環境に置かれているからである。その結果、「分かりやすいサービスであるか」「真の問題解決に近づくソリューションを提供できるか」「不安をなくすことができるか」「ペイン・ポイントに近い場所でサービス訴求ができるか」といった軸での競争がサービスレイヤーでは行われている。

FinTech産業の全体像と海外における主要なプレーヤー

FinTech産業の全体像と海外における主要なプレーヤー

 

個別の業態の詳細については拙著での記述に譲ることとしたいが、オープンソースの進展や、スマートフォンの浸透を通じて、海外ではゲームチェンジャーといえる規模まで普及するサービスが生まれてきている。そこでは、従来の金融機関が総合的なサービスを提供してきた中で、ある特定のニッチと思われる領域において段違いに効率的・効果的なサービスを提供し、横展開を通じて規模拡大を図っていく姿が見られている。

金融サービスへのニーズや背景は国ごとに異なるが、肝心なのは様々な試行錯誤と競争からプレーヤーが生まれてくるプロセスそのものである。そして、従来の金融機関が提供しえなかったUXを新規のプレーヤーが提供することが常態化するのであれば、ユーザビリティを自社サービスに取り込むオープンイノベーションのあり方が金融機関においても重要となっていく。

金融は「金融サービス産業」とも呼ばれるように本来、サービスへの満足度を求めた競争が行われる場所である中で、このレイヤーにおける戦略に向けて先手を打っていくことは、次に述べるインフラ面での変化を踏まえると、とりわけ重要である。

(2)インフラ面での変化について

日本における金融インフラにおけるキーワードは、(1)キャッシュレス化、(2)API化、(3)中期的な分散型の技術の活用である。

今後、キャッシュレス化は消費者の基礎的な行動の変化をもたらす一大テーマとなる。2020年の東京五輪を見据えて、インバウンド消費向けの決済インフラ(クレジットカード、デビットカード)の整備が進むと同時に、電子マネーの存在感もオートチャージ型の普及に伴って拡大し、現金利用はいよいよ減少していくこととなる。また、LINE Payやau WALLETカードのような、未成年も使うことができ、すでに大きなユーザーベースを抱える決済方法も誕生してきていることも、その一層の促進材料となる。

また、今般の制度改定でキャッシュアウト(小売店舗におけるレジにATMとしての機能を持たせ、現金引き出しが可能となること)が可能となる中、個人と金融機関の接点は一変していくこととなる。現金引き出しは今後、わざわざATMに行くのではなく、スーパーやコンビニ等のレジで、「買い物のついでに行われる」ものとなる。

キャッシュレス化とキャッシュアウトの二つで、ATMが使われる需要は激減する。筆者も米国に居住していた頃の明細では、1年間で銀行のATM自体を利用したのは2回であり、その金額は合計300ドルであった。ほとんどの現金需要はスーパーでの引き出しによって賄われている中で、同じような世の中が、もうすぐ日本でも実現しようとしている。

金融広報中央委員会による調査(2015年)によれば、日本の世帯の78.5%は取引金融機関を決める際に、店舗やATMの近さをその理由として挙げている(次点は経営の健全性で29.8%)。しかしながら、今後ATMの近さがキャッシュレス化の中で金融機関選択の軸としてのポジションを失っていく中では、純粋なユーザビリティに向けたサービス品質の追及が急務となっていく。

そのような中、銀行によるAPI提供は目下の重要テーマとなりつつある。APIの提供は、元々は欧州で預金者のためのデータアクセスを確保するべく生まれた背景があるが、結果的に、金融機関がオープンイノベーションを提供するにあたって必須のものとして台頭しつつある。従来、自社アプリとして提供が行われていた機能は、今後は、PFM(Personal Financial Management:個人資産管理)やECなど幅広い外部サービスに取って代わられていく。そうなると、データの閲覧や取引の実行も含めてこれまでの銀行機能自体がAPIとして提供されることとなる。そして、外部のサービスプロバイダにとって、メリットの高いプラットフォームとなることこそが、金融機関に求められるようになっていく。

銀行と預金者の接点のイメージ図

銀行と預金者の接点のイメージ図

 

最後に、ブロックチェーンをはじめとする分散型台帳の技術の台頭がある。本テーマはすでに多くの言及がある中で詳細は割愛するが、金融システムがもつ根幹的な価値である「真実性」について、政府や規制が保証を提供するあり方から、参加者と技術的な仕組みが正しさを担保するあり方への転換を促すことのインパクトは計り知れない。

IoTなどの文脈で大量のデータが利用可能となっていく中、特定条件をトリガーとした金融サービスのあり方を、契約と検証コストではなく、技術によって担保することで、10年後の世界では、想像されている以上のインパクトや、インフラの変化をもたらしている可能性がある。

従来と比べて、圧倒的に時代の変化が早くなってきている中で、ベンチャーも含めて新しい状況に適応し、可能な限り先取りを行っていくことが求められている。結局のところ重要なのは、顧客を見つめ、必要とされるサービスを作り続けることである。これは「FinTech的アプローチなのか」という見方ではなく、実際にユーザーが求めているソリューションにおいて、新たな技術が使えるのではないか、という観点こそが求められている。

実証期に入ったFinTech

FinTechに向けた投資資金も、最近は数百億円を超える規模の専門ファンドを、SBIグループ楽天が立ち上げる動きも見られる。

資金面でのサポートに加えて、規制緩和もある中で、金融機関はいよいよ「どのようなFinTechビジネスが実際に役に立つのか」というシビアな検証へと入っていくフェーズといえるだろう。これまでが、「FinTech入門」というフェーズだったのであれば、今後はいち早く「FinTech応用」を行い、正しいユーザーに向けた訴求パスを見つけられるかが課題といえるだろう。

その際には、絶え間なく最新の技術動向を押さえつつも、ユーザーにサンドボックス的にサービスを提供し、それがユーザーに刺さるか否かを細かく検証していく地道なプロセスがある。その過程で元々の高い期待値に応えることができない、ハイプ・サイクルにおける幻滅期としての特徴も現れてくるだろう。FinTechとはなんだったのか? と思われるタイミングも訪れるのかもしれない。

しかし、生産性が発揮される頃には、その頃の苦労も忘れられ、新たな満足点にユーザーもたどり着いていくこととなる。このためのリスクテイクができる環境が、ベンチャー側にも金融機関側にも、まさに求められている。

FinTechではよく「アンバンドリング」という言葉が取りざたされる。この言葉は、「従来、金融機関が一手に担ってきた諸機能が分解される」というニュアンスを含んでいるが、これと同時に用いられる対義語が「リバンドリング」である。米国の例として、例えばJPモルガンがオンラインレンダーであるOnDeckと提携したように、適材適所での資源活用が行われ、各プレーヤーも自らの立ち位置を再構築する発想こそが重要といえるだろう。

おわりに

2年前の拙稿の言葉を引用してみたい。

日本の若年層は数十年前の日本人と比べて、所得の安定や、将来に向けた備えなど、様々な形での自己責任を求められるようになった。この社会的背景の中で、資産運用や将来設計などの米国型のソリューションに加えて、より分かりやすい貯蓄・節約方法や加入する保険の見直し、ローンの管理など、より問題解決につながるビジネスモデルが今後は求められているのかもしれない。

2年前と比べると、FinTechが捉える諸課題は金融インフラを含む広大なものとなった。とはいえ、このユーザー起点での発想の重要性は幾分も変わっていない。様々な社会のニーズを捉え、解決していくことは、ベンチャーに限らずすべてのビジネスが本来的に持つ課題である。

今や産業政策となった日本のFinTech。オープンに良いアイデアを取り込む枠組みをいかに維持し、ユーザーを見ながら育てていけるかが、今後の試金石となるだろう。

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