SkyDriveとスズキが「空飛ぶクルマ」事業・技術連携に関する協定締結、機体開発・製造・量産体制・インド市場開拓検討

SkyDriveとスズキが「空飛ぶクルマ」事業・技術連携に関する協定締結、機体開発・製造・量産体制・インド市場開拓など検討

SkyDriveスズキは3月22日、「空飛ぶクルマ」(eVTOL)の事業化を目指し、連携協定を締結したと発表した。「機体開発および要素技術の研究開発」「製造・量産体制および計画」「スズキの四輪・二輪・マリンに『空飛ぶクルマ』を加えた新しいモビリティの具体化」「インドを中心とした本件対象の海外市場開拓」について、検討を開始する。

SkyDriveは、空飛ぶクルマの機体メーカーとして、日常の移動に空を活用すべく現在2人乗りの機体を開発中。2025年の大阪・関西万博開催時の大阪ベイエリアでのエアタクシーサービスの実現、また各地域での事業展開を目指している。

SkyDriveは、自動車同様の世界最小のコンパクトで電動の「空飛ぶクルマ」の製造を目指して開発を推進。スズキはコンパクトカーの製造・販売を得意としている。

SkyDriveとスズキは、相互の連携を図ることで、四輪・二輪・マリンに続く、新しいモビリティ「空飛ぶクルマ」への事業参入を検討し、多様な選択肢を顧客に提供したいという思いから連携協定を締結することとなった。

今後、事業・技術連携を行うことで、技術の研究開発、製造・量産体制の計画、インドを中心とした海外市場開拓を推進し、カーボンニュートラルへの取り組みも推進する。

ECチェックアウト時にCO2排出量を計算するAPIで環境配慮アピールを支援するLune

Luneは、CO2排出量計算を公開し、ブランドから顧客がオンラインで何かを購入する際に、より良い情報を提供することを目指す新しいスタートアップだ。LuneのAPIを使い始めると、企業は顧客に料金を支払ってもらい、カーボンニュートラル化プロジェクトの資金を調達することもできるようになる。

Erik Stadigh(エリック・スタディ)氏は、Roberto Bruggemann(ロベルト・ブルッゲマン)氏とLuneを設立する以前は、Luneの400万ドル(約4億7800万円)のシードラウンドをリードしたVCファンドのCraneに勤務していた。さらに、N26共同創業者のMaximilian Tayenthal(マクシミリアン・タイエンタール)氏、Voi共同創業者のFredrik Hjelm(フレドリック・ヒェルム)氏、OysterHRとNexmo共同創業者のTony Jamous(トニー・ジャマス)氏など15人のビジネスエンジェルが同ラウンドに参加した。

「今日のやり方では、企業がサステナビリティレポートを作成しても、ウェブサイト上のどこかに隠れてしまい、読む人はほとんどいません」と、共同創業者のスタディ氏は筆者に語った。

Luneはまず、あなたの企業のカーボンインパクトの測定を支援する。通常そうであるように、それはあくまで推定値だ。「ベストプラクティスのガイドラインに従い、自動化された炭素排出量計算を提供しています」とスタディ氏はいう。

そして、APIを製品に組み込むと、顧客は少し多めにお金を払ってカーボンオフセットプロジェクトに貢献することを選択できるようになる。「当社は、世界中のカーボンオフセット開発者と提携しています」と同氏。

また、LuneはTrueLayerのような決済会社とも直接連携している。チェックアウトの際、顧客はカーボンオフセットプロジェクトに貢献できる「グリーンな支払い方法」を選ぶことができるのだ。

マーチャント側から見ると、Luneの顧客はそれらのプロジェクトのためにお金を払うか、顧客に余分な手数料を払わせるかを選ぶことができる。Luneはすでに他の決済パートナーと話を進めており、今後より多くの決済システムを提供する予定だ。

Luneは計算回数に応じて課金され、またカーボンオフセット取引の際にもわずかながら手数料をとっている。LuneのAPIを使えば、どんな企業でも気候変動に配慮した企業に変身させることができると、このスタートアップは考えている。

何かを購入することを検討しているとき、CO2排出量を削減するためには、その製品を購入しないことが最善の方法であると多くの人がいうだろう。しかし、どうしても購入を避けられない場合、顧客が他と比べて特定の会社を選ぶ判断材料になるかもしれない。

画像クレジット:Lune

画像クレジット:Lune

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(文:Romain Dillet、翻訳:Den Nakano)

フォードが欧州での新たなEV生産・販売計画を発表

2035年までに欧州でカーボンニュートラルの達成を目指すFord(フォード)は、欧州における電気自動車の販売計画を加速させている。

同自動車メーカーはドイツ時間3月14日、今後2年間で3台の新型電気乗用車と4台の新型電気商用車を欧州で発売すると発表した。また、2035年のカーボンニュートラル達成に向け、2026年までに欧州における電気自動車の年間販売台数を60万台以上に引き上げる計画も明らかにした。

これらのマイルストーンは、米国ディアボーンに本拠を置く自動車メーカーが最近発表した一連のEV戦略で最も新しいものだ。フォードは3月初め、2026年までに年間200万台のEVを生産するという世界的な目標に向け、従来の2025年までに300億ドル(約3兆5000億円)を電動化に投資するという計画を、2026年までに500億ドル(約5兆9000億円)へと引き上げると発表した。

その際、同社は現在「Ford Model e(フォード・モデルe)」と呼ばれているEV部門を「Ford Blue(フォード・ブルー)」と名付けられた内燃機関事業から分離すると発表している。

欧州向けの新世代電動モデルは、ドイツのケルンとルーマニアのクラヨーヴァにあるフォードの工場で生産される予定だ。

フォードは3月14日、韓国のバッテリーメーカーであるSK On Co.,Ltd(SKオン)およびトルコのコングロマリットであるKoc Holding(コチ・ホールディング)と、トルコに欧州最大級の商用車用バッテリー生産拠点を建設する非拘束的合意に達したことも発表した。

2023年、フォードはケルンで中型のオール電動クロスオーバーの生産を始める予定だ。2024年には、同工場の生産ラインに2車種目のEVモデルを追加する他、欧州で最も売れているフォードの乗用車「Ford Puma(フォード・プーマ)」の電動バージョンをクラヨーヴァで生産開始する。

欧州のベストセラー商用車ブランドである「Transit(トランジット)」ファミリーには、新たに4種類の電気自動車が加わる。新型「Transit Custom(トランジット・カスタム)」1トンバンと「Tourneo Custom(トゥルネオ・カスタム)」MPVは2023年に、よりコンパクトな次世代の「Transit Courier(トランジット・クーリエ)」バンと「Tourneo Courier(トゥルネオ・クーリエ)」MPVは2024年に導入される予定だ。

画像クレジット:Ford

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(文:Jaclyn Trop、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

CO2排出量可視化・脱炭素化クラウドENERGY X GREENなど手がけるbooost technologiesが12億円調達

CO2排出量可視化・脱炭素化クラウドENERGY X GREENなど手がけるbooost technologiesが12億円調達

クラウド型エネルギーマネジメントシステム「ENERGY X」と、CO2排出量可視化・脱炭素化クラウド「ENERGY X GREEN」を展開するbooost technologiesは2月2日、シリーズAラウンドにおいて、総額12億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、リードインベスターのグロービス・キャピタル・パートナーズ、また東京大学エッジキャピタル(UTEC)、 NTTドコモ・ベンチャーズ。調達した資金は、事業と組織拡大のための採用強化・プロダクト強化に充当される。CO2排出量可視化・脱炭素化クラウドENERGY X GREENなど手がけるbooost technologiesが12億円調達

booost technologiesは、「次世代に誇れる未来を創造し、社会のために役立つテクノロジー集団」であることをビジョンに掲げ、カーボンフリーな未来の実現を目指すクライメートテック(気候テック。Climate Tech)カンパニー。

CO2フリー電力などの調達・供給を可能にするENERGY Xの提供をはじめ、2021年にはエネルギー分野での専門性と知見を活かし、組織の脱炭素化に必要なCO2排出量の「可視化」「計画策定」「予実管理・オフセット」「報告レポート」を行えるENERGY X GREENをリリース。ENERGY X GREENは、リリース当初から上場企業を中心に導入され、脱炭素化を推進する各業界のリーディングカンパニーに利用されているという。

2022年4月よりプライム市場における非財務情報の開示義務化が開始されるにあたって、ENERGY X GREENを導入する企業は順調に増加しているという。その状況を受け、さらなる脱炭素化を加速させるため「ENERGY X GREENのプロダクト強化」「アライアンス・パートナーシップ構築のためのパートナーサクセス体制の強化」「導入先のお客様に対する支援体制の強化」を目指し、今回の資金調達に至った。

プロダクトの強化については、業界ごとに最適化した機能や、排出量可視化後の排出量削減のための機能を特に拡充させ、2030年のSDGsの達成、および2050年の実質的なカーボンニュートラル実現を加速化させることを目標にしたいという。

【コラム】ヒートアイランド現象による影響を軽減するため、今、世界はAIを活用すべきだ

人類がこのまま何もしなければ、地球の温暖化はあとわずか数十年の間に少なくとも過去3400万年間前例のないレベルにまで達し、氷河が溶け、洪水がかつてないほど発生し、都市の熱波が我々に悲惨な影響を与えることになる。

米海洋大気庁によると、2021年には米国だけでもすでに18件の気候関連の異常災害が発生しており、それぞれに10億ドル(約1149億円)を超える損害が発生しているという。

世界中で起きた自然災害を結果や頻度の観点から見ると、洪水や地震は人や経済により大きな影響を与えるのものの、熱波よりも発生頻度は低い。熱波は一般的に都市ヒートアイランド現象(UHI)の形で発生し、ヒートポケットとも呼ばれているが、これは都市中心部の気温が周辺部より高くなる現象である。

都市部が急速に温暖化する中、世界各地のさらに多くの人々がヒートアイランド現象による致命的な被害を受けており、都市公衆衛生における格差が浮き彫りになっている。世界保健機関によると、2000年から2016年の間に熱波に影響を受けた人の数は1億2500万人急増し、1998年から2017年の間に16万6000人以上の命が奪われているという。

米国の市当局は現在、住民の中でも特に弱い立場にいる人々の生活レベルや状況が猛暑によって低下することを懸念しているが、影響を軽減するために活用できるようなデータは用意されていない。

デザイン主導のデータサイエンス企業で働く私は、組織のための持続可能なソリューションの構築や、ビジネス、社会、社会経済の複雑な問題は、高度な分析、人工知能(AI)技術、インタラクティブなデータ可視化を用いて解決できることを知っている。

とはいうものの、こういった新テクノロジーは、公衆衛生の専門家、企業、地方自治体、コミュニティ、非営利団体、技術パートナーの協力なくしては展開することができない。この分野横断的な介入こそが、テクノロジーを民主化し、都市ヒートアイランド現象の惨状を改善する唯一の方法なのである。それでは前述のプレイヤーは、都市ヒートアイランド現象を軽減するためにどのようにして協力しているのだろうか。

どの国が大きく貢献しているかを把握する

世界中のあらゆる企業、政府、NGOが熱波による問題の解決に取り組んでいる。

しかし、カナダでは1948年から2012年の間に平均1.6℃の上昇と、世界平均の約2倍の温暖化が進んでいるため、AIを使った熱波予測にはどこよりも力を入れている。もともとカナダの都市はテクノロジー主導で技術に精通しているため、世界中の都市はカナダの綿密な分析と革新的なアイデアから学べることが多くあるだろう。例えば、MyHeatは各建物における太陽光発電の潜在性を追跡し、熱波を持続可能なエネルギーの創出に利用している。

ヘルシンキやアムステルダムなどの欧州の都市もこの課題に積極的に取り組んでいる。EUの資金提供を受けているAI4Citiesは、カーボンニュートラルを加速させるAIソリューションを追い求めている欧州の主要都市を集結させるためのプロジェクトである。資金総額は460万ユーロ(約6億円)で、選ばれたサプライヤーに分配される予定だ。

こういったプロジェクトがAIを活用して気候変動問題を解決しようとしているが、二酸化炭素排出量の削減などのニッチな分野に集中して注目されているのが現状だ。気候変動の影響ではなく、原因の軽減に焦点が当てられているのである。

そのため、熱波の影響は依然として未解決のまま手つかずの状態だ。これは、すぐに甚大な被害をもたらす洪水など他の自然災害の方が注目されやすいからでもあるだろう。熱による不快感、エネルギー使用量の増加、停電などの問題を忍ばせたサイレントキラーとも言える熱波。最大の課題は、熱波に立ち向かうためのテクノロジーが自治体やNPOにオープンにされていないということだろう。

AIを用いたソリューションを活用

回復力のある都市を構築し、気候リスクを軽減することを目的とした非営利団体Evergreenとの協働を通じて、私たちはカナダの都市ネットワークを紹介された。調査と研究を重ねた結果、洪水や地震に対しては多くのデジタルインフラやデータ駆動の政策が存在しているが、熱波に対してはまったくと言っていいほどソリューションがないことが判明した。

依然として未解決の問題が多い熱波だが、拡張性の高いツールであるAIが都市に情報を提供し、それにより根拠に基づいた意思決定を行うことができたらどれだけ効果的だろうか。

Evergreenは地理空間解析、AI、ビッグデータを、MicrosoftのAI for Earthによる助成金で作成したデータ可視化ツールとともに使用して、あらゆる都市における都市ヒートアイランド現象を調査したさまざまなデータセットを統合・解析している。これにより自治体は、不浸透性の表面を持つエリアや植生の少ない問題地域をピンポイントで特定し、日よけの屋根や水飲み場、緑の屋根を設置することでヒートアイランドの影響を緩和することができるのである。

Microsoft Azure Stack上に構築された、AIを活用した解析・可視化ツールはさまざまな機能を備えている。マップ(地形図)を活用すれば地上30メートルブロックごとの地表温度を取得することができ、建物の数や高さ、アルベド値など、都市スプロールのパラメータを変更して将来の都市スプロールのシナリオを生成できるシナリオモデリングビューもある。

温室効果ガスをトラッキングできるこの多目的ツールは、すでにカナダ国内の気候変動に対する自治体の取り組みに良い影響を及ぼしている。今後は世界中の温室効果ガスや二酸化炭素の排出をめぐる政策転換にもプラスの影響を与えていくことだろう。

Sustainable Environment and Ecological Development Society(SEEDS)はMicrosoft Indiaと共同で、インドにおける熱波リスクを予測して費用対効果の高い介入策を提供するAIモデルの第2弾を発表した。熱波が発生した場合に、政府が市内のどの地域に対して特に支援や注意が必要かを知ることができるというものだ。SEEDSはグラウンドトゥルースデータを使用し、AIモデルは熱センサーなどのデバイスを使用して地上で検証した結果を生成する。

AIはスケーラブルな上、世界各地のどんな地域にでもすばやく採用できるため、各自治体は熱波対策への経済的な方法として積極的に活用すべきある。また、AIはデータソースを抽出するツールにパッケージ化できるため、部門や主要なステークホルダー間で知識を簡単に共有することができ、意思決定者にとっても状況が把握しやすい。

現実的なソリューションを提供し、ストーリーテリングモードで生き生きと伝えることができる一般向けアプリを作ることにより、AIがもたらすインパクトを地域社会に伝えたいというのがEvergreenのアイデアである。例えば、緑の屋根によって気温が下がるということをアプリで紹介すれば、ユーザーはデータ情報を分かりやすいストーリーとして見ることができ、彼らが取り組んでいる問題を取り巻く複雑な仕組みを理解することができるようになる。

信頼のスピードでAIの民主化とスケールアップを図る

AIや機械学習(ML)プロジェクトで複数のデータソースを扱うには、分野横断的なソリューションが欠かせない。テクノロジー関係者、企業、他の非営利団体、政府、コミュニティ、都市計画者、不動産開発業者、市長室などをつなぐパイプ役として、非営利団体やコミュニティビルダーが関与することが極めて重要である。

テクノロジーパートナーが突然AIソリューションを持って都市にやってきて、市の職員がそれにすんなり賛同してくれるというシナリオはまずない。さまざまな分野が関わり合い、ビジネスケースを作成し、すべての関係者が会話に参加しなければならないのである。

同様に、革新的なテクノロジー使うことになるステークホルダーも「ここにはヒートポケットがあるので緑の屋根を設置してください」と言われただけでは、自動的にそのツールを採用することはないだろう。

MicrosoftのAI for Earthの取り組みと連携して開発された、地理空間的ソリューションの良い例がある。ある都市の全人口をマッピングし、40メートルグリッドで100平方メートルのブロック内にリリースポイントを設け、病気を媒介する危険な蚊を退治するために遺伝子を組み換えた蚊を放つというソリューションが発案された。

これは、デング熱や黄熱病に苦しむ地域社会に解決策をもたらすことができるという、AIを活用したスケーラブルなソリューションなのだが、もし誰かが突然自分の家に来て、遺伝子組み換えの蚊を氾濫させると言ったら、ほとんどの人はノーと答えるのではないだろうか。地域が蚊で溢れかえるという発想に対しても抵抗がある上、進化するAIに対する世界的な抵抗感も反対理由の1つである。AIが進化することで個人情報の利用が拡大し、プライバシーの侵害が懸念されるからである。

成功するプロジェクトのほとんどが、コミュニティを教育した上で実行されるというのはこれが理由である。エネルギーを節約して環境にやさしいAI技術を採用することで気温を下げるというポジティブなメッセージを広めるには、地域社会とのパートナーシップが重要な鍵を握っている。

例えばカナダでは各都市が独自の気候チームと気象モデルを備えており、都市部の要所要所にセンサーを設置している。大規模なデータ会社やテクノロジー会社がこういった気象データを入手するのは難しく、都市が進んで共有する必要がある。高解像度・高品質の衛星画像で雲量を調べるのも同様だ。人口データや社会経済的な考慮事項については、データプロバイダーから情報を得る必要がある。

そのためプロジェクトには「信頼のスピード」感が不可欠だ。信頼性が確立されていれば、都市は現実的でスケーラブルなソリューションを提供できるテクノロジー企業にデータポイントを共有する傾向が強くなる。信頼関係がなければ、企業はNASAやCopernicusから入手可能な、一般的なオープンソースデータに頼らざるを得なくなる。

では、企業のプレイヤーやCEOにとってこのことは何を意味するのだろうか。都市向けのAIソリューションは自治体の気候チームやコミュニティを対象としているが、石油やガス会社はどうだろう。この業界の企業は都市の排出量の多くに貢献しているため、二酸化炭素排出量を報告するという大きな圧力がかかっている。

この分野へのAIソリューションでは、製油所や貨物が排出する二酸化炭素量をリアルタイムで追跡できるコマンドセンターが必要だ。製品ごと、従業員ごとの二酸化炭素排出量を減らすようCEOらは義務づけられているが、AIソリューションを導入することで環境への影響に対する説明責任を果たすと同時に、熱波の問題の一端を担っていると認識していることを示すことができるだろう。

熱波に注目が集まるようになったのは、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によりオフィスで働くことよりも自宅で生活することの方が多くなったためというのもある。一般設備や快適なオフィスから離れた場所で、より顕著に不快感を感じるようになったからだ。

社会変革コミュニティのリーダーたちは企業、NGO、政府、テクノロジーパートナー、コミュニティリーダー間のコラボレーションを促進することにより、気候変動や熱波によるこうした悲惨な影響を逆転させることができるのである。もしかすると、事態が手遅れになる前に、AIとMLから生まれる潜在的なソリューションを実際に展開させることができるかもしれないのだ。

画像クレジット:instamatics / Getty Images

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(文:Shravan Kumar Alavilli、翻訳:Dragonfly)

FedExが初の完全電気自動車GM Brightdrop配送バンを受領、カーボンニュートラル実現に向けまた一歩

FedEx(フェデックス)は、500台の注文のうち、最初の5台のGM(ゼネラル・モーターズ)製電気配送バンを受け取ったと発表した。この動きは、2040年までに世界中で配送車両をすべて電気自動車にし、カーボンニュートラルを実現するというFedExの目標にとって重要なランドマークとなるものだ。

「初めてのBrightdrop(ブライトドロップ)EV600の納入は、米国を代表する2つの企業のコラボレーション精神から生まれた歴史的瞬間です」と、FedExのMitch Jackson(ミッチ・ジャクソン)サステナビリティ最高責任者は述べた。「当社の集配車両を電気自動車に切り替えることは、2021年初めに発表した当社の野心的なサステナビリティ目標の達成に不可欠です」。

画像クレジット:FedEx

FedExは、BrightDrop EV600バンの主要顧客として発表され、ここしばらくはBrightdropの電動パレットEP1をテストしてきた。Chevrolet(シボレー)とCadillac(キャデラック)を所有するGMは、2021年初めまでBrightdropのビジネスユニットを引き伸ばしていた。「EV600は、従来のバンとステップインバンの長所を1台にまとめ、ドライバーの安全性、快適性、利便性を第一に考えています」と、BrightdropのCEO、Travis Katz(トラビス・カッツ)氏は述べた。「また、GMの歴史の中で、コンセプトから市場に出るまで最も早く作られた車でもあります」。

全輪駆動のEV600は、600立方フィート(約17立方メートル)の荷室空間を持ち、一回の充電で最大250マイル(約400km)走行することができる。車内では、カーゴエリアのセキュリティシステム、オートロックドア、モーションセンサー付き室内照明が装備されている。また、自動緊急ブレーキや駐車支援機能も備えている。EP1は、店舗や倉庫でよく見られるトロリーの一種で、23立方フィート(約0.65立方メートル)のスペースと電気モーターを備えており、重いものを簡単に移動させることができる。

最初の5台のEV600は、カリフォルニア州イングルウッドにあるFedExのエクスプレス施設に導入される。FedExはこの車両をサポートするため、カリフォルニア州内にすでに設置されている500基の充電ステーションを含め、同社の施設ネットワーク全体に充電ステーションを建設中だ。また、電力会社と協力し、充電インフラに必要な電力網の容量を評価している。

FedExが、GMと共同で電動配送車を導入する一方で、ライバルのUPSは英国のArrival Ltd.(アライバル)に1万台の電動配送車発注している。一方、Amazon(アマゾン)はRivian(リビアン)の電動配送車10万台を発注し、さらに同社の株式を20%保有している。AmazonはFedExとUPSの両社に先駆けて、すでにロサンゼルスサンフランシスコの両都市でRivianの電動配送を開始している。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者Steve Dentは、Engadgetの副編集長。

画像クレジット:FedEx

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(文:Steve Dent、翻訳:Yuta Kaminishi)

フォルクスワーゲンがEV生産強化のために3社と新たな提携を締結

Volkswagen(フォルクスワーゲン)が、電気自動車のバッテリーに関わる3つの新しいパートナーシップを締結した。このドイツの自動車メーカーは、2040年までに乗用車、トラック、SUVの全車種をゼロエミッション(排ガスを一切出さない)車に移行させることを目指している。

現地時間12月8日に発表されたこの3つのパートナーシップの提携企業は、素材技術グループのUmicore(ユミコア)、バッテリースペシャリストの24M Technologies (24Mテクノロジーズ)、そしてドイツでリチウム採掘プロジェクトの開設を計画しているVulcan Energy Resources(バルカン・エナジー・リソーシズ)だ。

フォルクスワーゲンとユミコアは合弁会社を起ち上げ、フォルクスワーゲンがドイツのザルツギッターに設立するバッテリーセル工場に、リチウムイオン電池の重要な構成要素である正極材を供給する。この合弁会社の初期生産能力は20ギガワット時だが、2030年までに160ギガワット時にまで拡大することを目指している。

さらにフォルクスワーゲンは、半固体の電極を持つバッテリーを開発している24Mテクノロジーズに出資すると発表した。マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンアウトしたこのバッテリー技術スタートアップ企業によれば、同社の半固体電池は、従来のリチウムイオン電池よりも製造工程を簡素化でき、コストも削減できるという。フォルクスワーゲンは出資額を明らかにしていない。

そしてバルカン・エナジー・リソーシズとのパートナーシップには、両社が「カーボンニュートラル」と表現するドイツ産リチウムの供給に関する拘束力のある契約が含まれている。

両社によると、このカーボンニュートラルなリチウムが得られるのは、バルカン社の塩水(塩湖かん水)からリチウムを採取する技術が、従来の塩湖かん水を蒸発させてリチウムを抽出する方法よりも環境に優しく、再生可能エネルギーを利用した工場で処理されるからだという。

バルカンは、2026年から5年間、フォルクスワーゲンに水酸化リチウムを供給する。

これら3つの提携は、フォルクスワーゲンが電気自動車に300億ユーロ(約3兆9000億円)を投資する計画の一環だ。欧州だけでも、同社は2030年までに6つの巨大バッテリー工場の建設を予定しており、それらすべてを合計した生産能力は、240ギガワット時になる見込みだという。

バッテリーのサプライチェーンを確保するために迅速に動いている大手自動車メーカーは、フォルクスワーゲンだけではない。General Motors(ゼネラルモーターズ)は2021年12月初め、韓国のPOSCO Chemical(ポスコケミカル)と同じように合弁会社を設立し、2024年までにバッテリーの正極材を製造する新工場を北米に建設すると発表した。一方、Stellantis(ステランティス)は11月、バルカンと独自のリチウム供給契約を締結している。

これらの提携は、自動車メーカーの電動化計画が加速していることを示すだけでなく、世界的なバッテリーサプライチェーンを中国から離れたところで再構築することに貢献するという点でも注目される。

Benchmark Mineral Intelligence(ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス)の調べによると、現在はバッテリーの正極材と負極材の大部分が中国で製造されているという。また、現在計画されている200の大規模バッテリー工場のうち、約75%にあたる148の工場が中国に建設される予定であることもわかっている。

画像クレジット:Jens Schlueter / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ポルシェがカーボンニュートラルな家庭のためのワンストップショップを目指す独スタートアップに出資

Porsche(ポルシェ)のベンチャー部門は、エネルギー貯蔵、電気自動車の充電インフラ、太陽光発電など、カーボンニュートラルな家庭を実現するために家庭に必要なものをすべて提供することを目指しているドイツのスタートアップ1Komma5(ワンコンマファイブ)に少数株主として出資した。

投資額は公表されていないが、Porsche Venturesは過去2年間に、イスラエルのセンシング技術のスタートアップTriEye電動マイクロモビリティのオンラインディーラーRidePandaバーチャルセンシングのスタートアップTactile Mobilityなどに出資してきた。

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今回の投資は、Porsche Venturesの典型的なモビリティ技術に関するものとは少し異なる。

Porsche Ventures Europe and Israelの責任者であるPatrick Huke(パトリック・ヒューケ)氏は「今回の投資で、スマートシティとサステナビリティの分野における我々の野心を強調したいと思っています」とTechCrunchに語った。

ドイツ・ハンブルグ拠点のこのスタートアップは、CFOを務めるMicha Grueber(ミーヒャ・グルーベル)氏、そしてTeslaとエネルギー貯蔵システム会社Sonnenで働いた経験を持つPhilipp Schröder(フィリップ・シュローダー)氏によって設立された。

パリ協定の目標である「気温上昇を1.5度以内に抑える」ことにちなんで名付けられた1Komma5は、ワンストップショップという目標に向けて興味深い方法をとっている。

シュローダー氏は最近のインタビューで「今日、どの企業も太陽光発電やエネルギー貯蔵などのコンポーネントの販売に集中しています。その一方で、ヨーロッパでは、これらの分散型資産をまとめることに注力している企業はありません。これでは問題が発生するのは必至です」と話した。

「分散型エネルギーの世界では、各家庭にヒートポンプや充電ポイント、蓄電システムがあっても、それらがグリッドレベルで(あるいは相互に)通信しなければ問題が発生します」と同氏は話す。

1Komma5は、買収だけでなくソフトウェアを通じてすべてを統合することを目指している。具体的には、1Komma5はドイツ国内で、太陽光、ヒートポンプ、エネルギー貯蔵などの再生可能エネルギーに特化した大手電気設備会社の買収を目指しており、最終的にはオーストリアやスイスなどの他の国にも拡大する予だ。1Komma5は、これらの企業に対して、管理業務や顧客関係管理を行うための法人向けソフトウェアや、充電、太陽光、エネルギー貯蔵を結びつけるエネルギー管理ソフトウェアを提供する。

1Komma5のビジネスが興味深いのは、ソーラーやエネルギーストレージなどのコンポーネントを、家庭レベルとグリッドレベルで相互に接続する計画があるからだとシュローダー氏は話す。

1Komma5は、これまでに現金および株式による5件の買収を行っている。

この若いスタートアップは、今後2年間で1億ユーロ(約127億円)の現金と株式を使って、再生可能エネルギーに特化した設置会社をさらに買収するという壮大な野望を抱いている。ターゲットとしているのは、500万〜2000万ユーロ(約6億〜25億円)の売上と、熟練した労働力を持つ設置会社で、単に他の業者に委託しているような販売会社ではない。

Porscheからの資金は、1Komma5の事業拡大のために使用される。その計画には、プレミアムなAppleデザインのような雰囲気の小売店舗を開設し、潜在的な顧客がカーボンニュートラルな住宅に不可欠な構成要素について学べるようにすることが含まれる。このような店舗では、例えば、家庭用充電器、エネルギー貯蔵、太陽光発電などの隣にPorscheのTaycanが展示されるかもしれない。

最初のショールームは、ハンブルクのビネナルスターとリンゲン・アン・デア・エムスに計画されており、2022年第1四半期にオープンする予定だ。

Porscheは、1Komma5の製品を自社の顧客層に提供することをすぐには考えていない。しかし、ヒューケ氏が指摘したように、Porsche Venturesは戦略的な投資を行っており、中長期的にはさまざまな可能性を検討していくことになる。

画像クレジット:Porsche

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Polestarが新型電動SUVをチラ見せ、今後3年間で販売台数10倍増を目指す

かつてのモータースポーツにおける活躍から、電気自動車メーカーとなった現在まで、スウェーデンのPolestar(ポールスター)は長い道のりを歩んできた。だが、Thomas Ingenlath(トーマス・インゲラート)CEOによると、Volvo(ボルボ)からスピンオフした同社はまだ、始まったばかりだという。

インゲンラート氏は、同社の経営陣とともに、米国時間12月2日にニューヨークで行われたプレゼンテーションで、ポールスターの3年計画を発表した。その中では、野心的な販売目標とともに、次の電気自動車が少しだけ披露された。

「クルマとは非常に感情的なものです」という言葉で、インゲンラート氏はメディアに向けて語り始めた。

2021年12月のイベントでティーザーが公開された新型電気自動車「Polestar 3」(画像クレジット:Polestar)

その核となる計画は、2024年までに3つの新型車を発売するとともに、欧州とアジア太平洋地域の新しい市場に進出することで、販売台数を約29万台に拡大するというものだ。そしてこの拡大の基盤となるのが、デザイン、サステイナビリティ、イノベーション、カスタマーエンゲージメントというポールスター独自のコアバリューである。

今回のプレゼンテーションでは、特にサステナビリティ(持続可能性)が強調され、2030年までにカーボンニュートラルな自動車を生産するというポールスターのミッションが再確認された。そのためには、リサイクル素材の使用から、サプライチェーンレベルにおけるビジネスの変更まで、大小さまざまな持続可能への取り組みが必要になる。

今後発表される新型車「Polestar 3(ポールスター3)」と「Polestar 4(ポールスター4)」については、我々はまだほとんど何も知らされていない。それでもインゲンラート氏は、生産に向けて動き出していると主張し、EV愛好家を魅惑するPolestar 3のティーザー画像も公開した。このオールエレクトリックSUVは米国のサウスカロライナ州チャールストンで製造される予定だ。

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Polestar 3は、気候変動に配慮したやり方で生産が行われるとともに、LiDAR開発企業であるLuminar(ルミナー)製のハードウェアとNVIDIA(エヌビディア)製のプロセッサを搭載し、高速道路での自動運転を可能にする先進運転支援システムを搭載することになっているが、発売当初はこの機能を使用することはできないようだ。

2022年に発売されるPolestar 3について、我々はほとんど知らされていないが、2023年に登場予定というPolestar 4についてはさらに不明だ。今回のプレゼンテーションで公開されたティーザー画像によると、Polestar 4は3よりコンパクトなプレミアムスポーツSUV「クーペ」として作られるモデルであり、後方がより傾斜したファストバック型のプロフィールを持つとされているが、それ以上の情報はない。

ポールスターは、3と4の価格帯のベンチマークとして、それぞれPorsche(ポルシェ)の「Cayenne(カイエン)」と「Macan(マカン)」の名前を挙げている。このことから、両車が目指すラグジュアリーとパフォーマンスのレベルにおいても、これらの競合車が基準となっていることが推察される。

興味深いことに、現時点で最もよくわかっているクルマは、最も遠い存在であるはずの「Polestar 5(ポールスター5)」だ。

ポールスターは先日、コンセプトカーの「Precept(プリセプト)」が、5番目のポールスター車となる4ドアのラグジュアリースポーツGTとして市販化されることを正式に発表した。現状でプリセプトはある意味、ポールスターの未来を物理的に宣言するものであり、今後発表になる2台のSUVにも影響を与えることになるだろう。

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3年間で販売台数を2万9000台から29万台に飛躍させることは、ポールスターの存在感が増すというだけでなく、大変厳しい話にも聞こえるが、インゲンラート氏は心配していない。「これから先のポールスターは、すべてが成長するためにあります」と、同氏は語った。

すでに生産が開始されているというPolestar 3については、近いうちにより詳しい発表があるだろう。

画像クレジット:Alex Kalogiannis

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(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

CO2排出量算出・可視化クラウドのゼロボードが三菱UFJ銀行と協業、金融機関向けCO2データインフラ機能拡充など目指す

CO2排出量算出・可視化クラウドサービス「zeroboard」を開発・提供するゼロボードは11月5日、カーボンニュートラルの実現に向け、三菱UFJ銀行との協業について基本合意したことを発表した。三菱UFJ銀行の持つネットワークや総合金融グループとしての知見と、ゼロボードのクラウドサービスや辰炭素経営に関するノウハウをかけ合わせ、企業の脱炭素経営を後押しするソリューションを提供する。

具体的には、以下のような取り組みを進める。

  • 三菱UFJ銀行の顧客企業へzeroboardの提供
  • zeroboardのCO2排出量データ・サプライチェーンデータに基づく三菱UFJ銀行による金融ソリューションの開発・検討
  • 金融機関含めその他事業者までも含めたオープンかつインクルーシブ(包括的)なパートナシップの発展およびソリューションプラットフォームの共同開発・提供
  • アジアを中心としたグローバル製造業サプライチェーンのCO2排出量可視化・削減支援
  • CO2排出量以外の社会インパクト評価手法・可視化手段、ソリューション提供分野での初期検討

zeroboardは、企業活動により排出されたCO2量を算出したうえで、温室効果ガス(GreenHouse Gas)の排出量の算定と報告に関する国際基準「GHGプロトコル」における対象範囲区分(Scope1~3)を可視化できるクラウドサービス。Scope1は「自社の事業活動における直接的なCO2排出」、Scope2が「他社から供給された電気、熱・蒸気の使用により発生する間接的なCO2排出」。またScope3は「上記以外の事業活動に関わるサプライチェーンのCO2排出」を示す。

zeroboardでは、「サプライチェーンでの排出量や商品ごとのCO2排出量の算出」「CO2排出量の削減管理やコスト対効果のシミュレーション機能」「TCFDなどの国際的な開示形式に加え、国内既存環境法令にも対応するアウトプット」「専門的な知識を必要としないユーザーフレンドリーな操作性」などの機能を備えているという。

法人向けカーボンオフセットAPIで企業の脱炭素化を支援するSustineriが5000万円のシード調達

企業の脱炭素化を支援するSustineriは10月20日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による5000万円の資金調達を発表した。引受先はインキュベイトファンド。調達した資金はサービス開発および事業推進メンバーの採用など組織の強化にあてる。また、今秋にはカーボンオフセットAPI「Caboneu」(カボニュー)および温室効果ガス(GHG。GreenHouse Gas)算出APIのβ版をローンチする予定。

カーボンオフセットAPIは、企業による商品やサービスの販売と利用に伴って排出されるGHGについて、相殺・埋め合わせ(カーボンオフセット)が可能なクラウド型サービス。eコマース、自動車保険、旅行・航空などを販売するウェブサイトに数行のコードを記述するだけで、商品やサービスの提供に伴うGHGを算出。さらに同量のGHG削減クレジットまたは再生可能エネルギー証書を購入することで、GHG排出を相殺し気候変動への影響をニュートラルにできる。

こうしたGHG排出量を算定するには専門知識が必要になるが、カーボンオフセットAPIを利用すれば企業のサプライチェーン全体をカーボンニュートラル化可能としている。

法人向けカーボンオフセットAPIで企業の脱炭素化を支援するSustineriが5000万円のシード調達

Sustineriは、「人と地球が共存する新たなあり方を創造する」をミッションに掲げ2017年7月に設立された。企業がサステナブルシフトと脱炭素化を実現するための効果的なソリューションを提供している。事業はカーボンオフセットAPIの開発と運営のほか、GHG算出APIの開発・運営、カーボンオフセットとカーボンニュートラルの実施支援、気候変動対策および脱炭素化に関するコンサルティング。今後は日本企業の脱炭素化およびカーボンニュートラル化に貢献するサービスを継続的に開発するとのこと。

千葉大学が2050年の脱炭素を目指す全国自治体に向けて「カーボンニュートラルシミュレーター」を無料公開

千葉大学が2050年の脱炭素を目指す全国自治体に向けて市町村ごとの「カーボンニュートラルシミュレーター」を無料公開

千葉大学は、日本の基礎自治体が2050年までの脱炭素計画を立てやすくするサポートツールとして、「カーボンニュートラルシミュレーター」を公開した。現在の人口、世帯数、就業者数の推移から2050年の状況を予測し、脱炭素実現には電気自動車やネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH。net Zero Energy House)などの比率、再生可能エネルギーの導入をどう調整すればよいかを教えてくれる。千葉大学大学院社会科学研究院 倉阪秀史教授を中心とする研究チームの開発によるもの。誰にでも使えるようExcelファイルで作られていて、無料でダウンロードが可能

全国1741の市区町村の自治体コードを入力すると、その自治体の現状から推測した、何もしなかった場合の2050年の二酸化炭素排出量が示される。また、現在の人口の推移から推測した2050年の人口も示される。そこに、2050年の自動車の削減率、ZEH、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB。エネルギーを消費するより生み出すほうが多い建物)、電気自動車や再生可能エネルギーの導入率などを加味すると、2050年時点での全体の削減量がわかる。人口を含めたこれらの要素を調整することで、達成までの計画が立てられるというものだ。

また、2050年までの「総投資額」、「総省エネ額」(節約分)、「再生可能エネルギー販売額」、「差し引き金額」が表示されるので、脱炭素に必要な予算もわかる。

開発者の倉阪教授は、2050年の脱酸素宣言を行った214の自治体について、同じ条件を入力してその達成状況を調べたところ、35.5%にあたる76自治体が脱炭素を達成できたという。ただし、達成率には地域によって差があり、北海道や東北など広大な土地のある地域では再生可能エネルギーが豊富なため達成率が高い傾向にあった。また、人口が多い都会のある自治体は、どこも達成できなかった。そのため脱炭素達成には、豊かな再生可能エネルギー源を持つ地方と都会との連携が必要になると倉阪教授は話している。

ハイブリッド、EV、代替燃料の未来に対するランボルギーニのビジョン

自動車愛好家には、電気自動車を敬遠してきた歴史がある。電化やハイブリッド化を全面的に支持する人もいる一方で、依然としてガソリンにこだわりを持つ人もいる。Lamborghini(ランボルギーニ)のような、高尚で価格設定の高い領域では特にその傾向がある。

電動化とハイブリッドパワートレインの推進は、世界最大級のパワフルなガソリンエンジンを備えた印象的な特注車両を作ることで知られる自動車メーカーに、大きな課題を突きつけている。ランボルギーニの上層部からは、それに対する若干の抵抗感が感じ取れる。

ランボルギーニは2024年までにすべてのモデルをハイブリッドパワートレインに移行するとしている。すでにハイブリッドの限定モデルとしてSián FKP 37(シアンFKP 37)とCountach LPI 800-4(カウンタックLPI 800-4)を発表しているが、ハイブリッド化されたパワートレインを搭載した初の量産(つまり限定ではない)車両が来年までにリリースされるという。Ferrari(フェラーリ)、McLaren(マクラーレン)、Porsche(ポルシェ)などはハイブリッドパワートレイン搭載の量産車と限定車の両方を作り続けており、ランボルギーニはこの分野に参入する最後のスーパーカーメーカーの1社となる。

ランボルギーニは、同社の忠実な顧客の力を借りて、彼らの象徴的なスーパースポーツカーの未来を革新したいと考えている。

ランボルギーニの燃料の未来

「一方で、当社は極めてニッチな存在であり、CO2の方程式に占める割合はごくわずかです。しかし私たちは自分たちの役割を果たしたいと考えています」と、ランボルギーニの北米の新CEOであるAndrea Baldi(アンドレア・バルディ)氏は、今後もリリースを予定しているガソリン駆動車として同社最後のモデルとなるHuracán(ウラカン)の1つ、Huracán STO(ウラカンSTO)のローンチイベントで語っていた。「ハイブリッド、電気、そして代替のパワートレインへのシフトは、私たちにパフォーマンスの再考を迫るものであり、電動化が長期的な方向性であるかは確信が持てません」。

「ハイブリッドや電動パワートレインを搭載した4番目のモデルをリリースするにしても、異なる種類の燃料を使用する内燃機関のソリューションを見つけるにしても、私たちは今後もさらに学びを進めていきます。エモーション(感情)と真のランボルギーニ体験という、共通の目標を実現する必要があるのです」とバルディ氏は語っている。

同氏は自社が採用する可能性のある燃料や技術の詳細については語らなかったが、ランボルギーニのCTOであるMaurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)氏からは、ランボルギーニの将来的な完全電動化を示唆する興味深い研究についての言及があった。

「ハイブリッドパワートレインは、私たちがイノベーションを起こせると確信している次のフロンティアです」とレッジャーニ氏は分けて語っている。「当社の存在意義は、独自のDNAを有していることにあります。私たちはエモーションをエンジニアリングしているのです。例えば、振動のような物理的な事象が感情の流れにどのようなインパクトを与えるかについて、ミラノ工科大学と共同で研究を行っています」。ICEエンジンの物理的効果がジャイロスコープとオーディオトラックによってシミュレートされる世界を見ることができる。

技術的には、サンタアガタ・ボロネーゼにあるランボルギーニの工場は2015年以来カーボンニュートラルであるとバルディ氏はいう。しかし、従業員1800人のこの企業は、はるかに規模が大きく、炭素排出量の多いVW(フォルクスワーゲン)グループの一員である。自動車生産台数は少なく、イタリア政府が今後の内燃機関の規制からランボルギーニやフェラーリのような自動車メーカーを除外する動きを見せているにもかかわらず、ランボルギーニは代替燃料への移行を余儀なくされている。

バルディ氏によると、ランボルギーニは世界の自動車の1万1000台に1台を占めているが、トヨタやホンダのような巨大自動車メーカーと比べれば小さな数だ。「ハイブリッド化と電動化は、エモーションの未来を広げる機会をランボルギーニのオーナーに提供します。夢を手に入れるのです。大多数の顧客は、自分の成功を表現する車を求めています」とバルディ氏。それでもやはり、将来にわたって内燃エンジンを使い続けたいとランボルギーニの顧客がいくら望んだとしても、そうしたエンジンの時代は終わりに近づいている。

顧客との直接的なつながりの構築

ランボルギーニは一貫して、顧客のニーズに応えることをブランドの核に据えてきた。2025年のCO2排出量50%削減に向けた今後のモデルの方向性を見極めるために、忠実なオーナーたちからの協力を得ている。すでに完売したCountach LPI 800-4のペブルビーチでの最近のローンチは、ランボルギーニが顧客ベースを活用してハイブリッドパワートレイン搭載の高需要の新製品を生み出したことを物語る好例だ。

「関りを持つことなくただクルマを作るだけということはありません。顧客体験の全体を通して、顧客との絆を深めてきました」とバルディ氏は語る。「Countachで実施した特別プロジェクトは、会社と顧客の間の直接的な信頼を高めるものでした。1対1のミーティングを友人同士のように行い、Countachでの当社の取り組みを伝えることができました。エモーショナルな決断が生み出したこの車の構築は、優れたビジネスケースとなったのです」。

新型コロナウイルス感染症の発生とその結果としての旅行制限により、工場訪問は2020年の間にほぼ中止された。しかしランボルギーニは、2018年にUnicaというデジタルプラットフォームをローンチしており、オーナーが期待する特別な顧客コンタクトやサービスを提供することを可能にしている。アプリはスマートフォンにダウンロードでき、オーナーは専用のイベント、ローンチ、ソーシャルメディアへのアクセスを得る。サインアップするには、ランボルギーニのVINと所有権証明書の提出が必要だ。

このアプリは、結果的に会社と消費者間の直接販売の可能性を開いた。「直接販売は、私たちが探究する必要のある分野です。私たちは加速する時代の中にあり、顧客と直接的な関係を持ちたいと思っています。問題は、顧客との直接接触をどの程度拡大できるかです」とバルディ氏はいう。「車の価値が維持されるという感覚を確実にするためには、顧客との人間的な触れ合いが必要です。現在、車の待ち時間は平均で1年を超えています。待機時間はこれらの車を販売する時間であり、顧客との直接的なコンタクトがありますので、価値は維持されます」。

ランボルギーニの最新モデル、Huracán STOはストリートホモロゲーションレーシングカーだ。現在2022年まで売り切れの状態で、Unicaアプリと車両を介したコネクティビティが付属している。このシステムでは、ラップタイム、スロットルとブレーキのインプット、ハンドルアングルなどのドライビングセッション中のデータや、内蔵カメラが撮影したトラック上のラップの動画を記録し、アプリにアップロードすることが可能だ。ランボルギーニのオーナーにとっては一種のエリートソーシャルネットワークであり、より直接的につながる方法が会社にもたらされる。

「顧客はランボルギーニを体験するための適切なコンテキストを求めています」とバルディ氏。「スーパースポーツカー市場は拡大の一途を辿っています。このようなカーライフスタイルやモータースポーツにおける体験を提供し、人間的な触れ合いの幅を広げていくことができれば、顧客はブランドの範囲内に留まり続けるでしょう」。

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画像クレジット:Lamborghini

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

40%軽量化で航続距離アップ、トレッドが再生可能なContinentalのエコなコンセプトタイヤ

自動車の環境負荷を低減するためにさまざまな取り組みが行われているが、そのクルマが履いているタイヤはどうだろうか?Continental(コンチネンタル)は、それが助けになるかもしれないと考えている。自動車情報サイトRoadshowによると、Continentalは、材料の半分以上が「トレーサブル、再生可能、再生素材」の「Conti GreenConcept」(そう、コンセプトタイヤだ)を発表した。天然ゴム製のトレッドを少しの手間でリニューアルすることも可能だ。それは全く新しいアイデアではないが、再生可能なトレッドは一般的に大型商用トラックに限られていた。3回再生すれば、総走行距離に対してケーシングに使用される材料が通常の半分になる。

原料の約35%は再生可能素材で、タンポポゴム、もみ殻を原料としたケイ酸塩、植物油や樹脂などが使われている。また、17%はペットボトルをリサイクルしたポリエステル繊維、再利用スチール、回収カーボンブラックを使用している。

このデザインによりクルマ自体の効率も向上するはずだ、とContinentalは付け加えた。新しいケーシング、サイドウォール、トレッドパターンにより、GreenConceptは従来のタイヤに比べて約40%軽量化され、約16.5ポンド(約7.5kg)になった。その結果、EUの最高ランクのタイヤに比べて、転がり抵抗が25%減少したという。Continentalの試算によると、EVの航続距離がそれで6%伸びるとのこと。

我々の自家用車にこのタイヤが装着される日はまだそんなに近くないもしれないが、これは単なる思考エクササイズではない。Continentalは2022年からリサイクル技術を段階的に展開する予定で、再生ボトルを使ったタイヤの生産も計画している。

Conti GreenConceptのような取り組みは、Continentalのイメージアップにもつながる。同社は2030年までに最も環境に優しいタイヤメーカーとなり、「遅くとも」2050年までには完全なカーボンニュートラルを実現したいと考えている。しかし、パワートレインだけでなく、多くのコンポーネントが地球に優しくなるような、より全体的なエコカーへのアプローチを示唆している。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Jon Fingas(ジョン・フィンガス)氏は、Engadgetのウィークエンドエディター。

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画像クレジット:Continental

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(文:Jon Fingas、翻訳:Aya Nakazato)

EVバッテリーの充放電をクラウド管理し再エネ電力需給バランス調整向け蓄電システムに変える「Yanekara」が5500万円調達

EVバッテリーの充放電をクラウド管理し再エネ電力需給バランス調整向け蓄電システムに変える「Yanekara」が5500万円調達

EVをエネルギーストレージとして活用する充放電システムを開発する東大発スタートアップ「Yanekara」(ヤネカラ)は9月8日、シードラウンドにおいて、J-KISS型新株予約権による5500万円の資金調達が完了したことを発表した。引受先は、オープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(AOI1号ファンド。東京大学協創プラットフォーム開発)、ディープコア、エンジェル投資家など。

Yanekaraは、「屋根から自然エネルギー100%の未来を創る」ことを目指すエネルギーテック領域のスタートアップ。現在、1基で複数台のEVに太陽光で充電できる充放電機器(V2X)と、EVを含め多様な分散エネルギー源を群管理するクラウドシステムを開発している。

それは、日本のカーボンニュートラルを実現させる再生可能エネルギーを大量導入する際に、常に変動する再生エネルギー電源からの発電量と電力需要量を一致させるための蓄電システムだ。駐車場で眠っているEVのバッテリーを有効活用すると同時に、EVによるモビリティーの脱炭素化も進める。太陽光でEVを走らせ、その蓄電能力を電力の需給調整に利用することで、「再エネが主力電源化した日本を1日でも早く実現します」とYanekaraは話す。

今回調達した資金は、充放電器の実証実験、量産準備に使われる。また、充放電器とクラウドシステムの開発を行う人材も採用するとのことだ。

スタートアップが日本のエネルギーセクターに入れないワケ

日本政府は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指している。そのためには、大小あらゆる企業のCO2排出削減や、クリーンエネルギーの活用、イノベーション創出などの協力が不可欠だ。ではスタートアップはこの問題にどう取り組んでいるだろうか。

Energy Tech Meetup共同設立者であるAmanda Ahl(アマンダ・アール)氏をモデレーターに、経済産業省 環境政策課総括係長の太田優人氏、Plug and Play エネルギープログラムリードのKathy Liu(キャシー・リュー)氏、MPower Partnersマネージング・ディレクターである鈴木絵里子氏、U3 Innovations ダイレクター川島壮史氏、Energy and Environment Investment Inc マネージング・ディレクター山口浩一氏が語り合った。

本記事は8月25日、オンラインで開催されたイベント「How can startups help Japan’s energy sector reach net zero?」をまとめたものとなる。

スタートアップを巻き込んだオープンイノベーションの重要性

菅義偉内閣総理大臣は2020年10月、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指すと宣言。2021年4月には、2030年度までに温室効果ガスの排出を2013年度比で46%に削減すると話した。

しかしカーボンニュートラル実現までの道のりは長い。2019年時点での二酸化炭素排出量は消費者、産業、交通、電力セクターを合わせて10億3000万トン。これを2050年までにゼロにするのだ。

太田氏は「実現のために何をするのか。まず電力供給源を脱炭素化します。同時に、水素やバイオマスの活用を進めます」という

電力のカーボンニュートラル化に関し、太田氏は4つの主要なアプローチを挙げた。

1つ目は再生可能エネルギー。洋上風力発電、バッテリー活用、地熱産業が注目される。2つ目は水素発電。需要と供給両方を増やすことと、インフラの整備が必要だ。3つ目は二酸化炭素回収と合わせた火力発電。火力発電の活用は最小限に抑えらえるべきだが、太田氏は炭素リサイクル産業も視野に入れるべきだという。そして4つ目が原子力の活用だ。安全性が最優先事項であるという。

太田氏は「こうした状況で日本のスタートアップはどんな立ち位置にいるのでしょうか。国内のオープンイノベーションの状況を見ると、大学や研究機関、既存の企業の取組は活発なのですが、スタートアップを巻き込んだオープンイノベーションは下火です。米国と比べると非常に顕著です」と現状を分析する。

二酸化炭素の排出はさまざまなプロセスで発生する。製造業であれば、製品を製造する過程や製品を運ぶ過程で発生する。運輸業であれば、ビジネスを走らせることそのもので二酸化炭素が発生する。物理的な製品やプロセスが発生しない産業であっても、ビジネスプロセスの中での移動や電力利用まで考慮すれば、CO2排出と無縁ではいられない。

太田氏は「カーボンニュートラルには、産業を超えたコラボレーションやイノベーションが必要です。日本では特にスタートアップを巻き込んだオープンイノベーションが遅れています」と警鐘を鳴らした。

閉鎖的なエネルギーセクターにどう入り込む?

アール氏は「スタートアップはどうエネルギーセクターに貢献できるのでしょうか?」と質問を投げかけた。

環境・エネルギーに特化したベンチャーキャピタルであるEnergy and Environment Investmentの山口氏は「エネルギー産業はこれまで大手や大企業が中心でしたが、今ではスタートアップも参入しています。大企業はマーケティングが上手くないところが多いので、スタートアップはメッセージングの強さで存在意義をアピールできるのではないでしょうか」という。

スタートアップとリーディングカンパニーのマッチングなどを行うベンチャーキャピタル、Plug and Playのリュー氏は「海外のスタートアップがエネルギーセクターに参入する際、3つの壁があります」と話す。

1つ目はエネルギーセクターの閉鎖性だ。特に海外のスタートアップにとって、現地のステークホルダーとリレーションのある日本企業とのコラボレーションは難しい。2つ目は日本のコミュニケーション方法と意思決定の複雑さだ。日本企業の意思決定は複雑で時間がかかるため、海外のスタートアップには理解が難しいという。3つ目は日本企業の高い期待だ。日本企業のスタートアップへに課せられるのはハイスタンダードであることが多く、それを満たせない海外スタートアップも多いという。

太田氏も日本企業にありがちな時間のかかる意思決定と硬直したプロセスに危機感を抱いている。同氏は「多くの日本企業がアジャイルな意思決定に慣れていません。市場トレンドにも迅速に対応できないので、変えていく必要があります」と話す。

アール氏は「スタートアップがエネルギーセクターでビジネスを行う際の国からの支援体制はどうなっていますか?」と太田氏に質問した。

太田氏は「国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がグリーンイノベーション基金事業という支援を行っています。ですが、これには10年分の事業プランが必要です。スタートアップ向きとは言えないかもしれません。NEDOには研究開発型スタートアップ支援事業というものもあります。これはシード期のスタートアップに向けたものなのでこちらを検討してもらったほうが良いかもしれません」と答えた。

カーボンニュートラルはエネルギーセクターだけの問題ではない

ESG重視型グローバル・ベンチャーキャピタルファンドであるMPower Partnersの鈴木氏は日本の消費者のリテラシーの低さに言及した。

「カーボンニュートラルはエネルギーセクターだけの話ではありません。どのセクター、企業にも関わることです。しかし、日本国内では、自動車業界のように明らかにCO2排出に関わっている業界に対してはカーボンニュートラルに責任があるとみなされますが、CO2排出のイメージが薄いセクターや企業は責任がないかのように認識されています。エネルギーセクターだけでなく、その周辺のセクターや企業からのソリューションも重要性なのです」と鈴木氏は話す。

U3 Innovationsの川島氏も「エネルギーセクターではない企業もカーボンニュートラルに貢献できる」として、建設業界を例に出した。

日本国内には多くの建設業事業者がいる。小規模の事業者も多い。川島氏によると、こうした小さな事業者はソーラーパネルの設置など、環境に優しい設備の設置のノウハウがないことが多いという。

「大手の建設業者がこうしたノウハウのない企業にソーラーパネルの設置ノウハウなどを提供すれば、カーボンニュートラルに向けた動きと見なすことができます」と川島氏。

最後にアール氏が「カーボンニュートラルに関わりたいスタートアップにアドバイスはありますか?」と質問すると、リュー氏が回答した。

リュー氏は「海外のスタートアップ向けのアドバイスになりますが、日本のエネルギーセクターに入るのが難しければ、スタートアップの支援をしている組織の力を借りても良いでしょう。また、文化の違いや言語の違いを克服するため、日本にカントリーマネージャーを置いても良いでしょう。日本市場には大きなポテンシャルがあり、日本の企業も変わってきています」と話し、ディスカッションを終了した。

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持続可能性にフォーカスするアップルのImpact Acceleratorが支援する有色人種企業15社を決定

Apple(アップル)による最近の社会奉仕事業の中に、Impact Acceleratorがある。ほぼ1年前に立ち上げた取り組みで、持続可能性や気候変動の問題に取り組んでいるマイノリティが経営する小規模企業を見つけて支援する。現在、その事業には最初の15社の参加企業があり、米国中から集まって3カ月のプログラムをこなし、Appleとの契約を得る。

Impact Acceleratorは同社の、1億ドル(約110億円)を投じた人種的平等と正義のための計画の一環だ。この計画はいくつかの努力目標からなり、既存の事業に資金を直接投じるものもあれば、有色人種が経営するベンチャー企業へお金が行くものもある。とにかく、Initiativeのチームが良いと考えた投資が対象だ。

これらの企業は、3カ月のバーチャルプログラムに参加する。Appleの発表にその詳細はないが、その後、Appleのカーボンニュートラルなサプライチェーンという目標のための、サプライヤーになる機会が得られる。

Appleが作成した15社のプロフィールはこのリストに載っているが、特に私の目についたのは次の5社だ。

  • Volt Energy Utility (共同創業者:Gilbert Campbell III): 恵まれてないコミュニティのための電力会社並の規模のソーラープロジェクト。
  • Bench-Tek (創業者:Maria Castellon): 環境フレンドリーな素材を使ったラボベンチ(実験台)。
  • Vericool(創業者:Darrell Jobe): 発泡スチロールの持続可能バージョンなど各種包装資材を作り、元服役者たちの職場とする。
  • Oceti Sakowin Power Authority (会長:Lyle Jack): 6人のスー族によるNGOで、中西部の保留地に再生可能エネルギーを供給する。
  • Mosaic Global Transportation(創業者:Maurice H. Brewster):企業の従業員用や各種イベント用にEVだけによるシャトル隊を提供する。

Appleの環境・政策・社会イニシアティブ担当バイスプレジデントであるLisa Jackson(リサ・ジャクソン)氏は発表声明で次のように述べている。「私たちが現在、提携している企業は、明日の多様で革新的な業界のリーダーになるところです。この方たちが作り出す変化がさざなみのように広がり、伝わり、気候変動がもたらした緊急的な危機に、世界中のコミュニティが対応できるようになるでしょう」。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:Apple持続可能性気候変動カーボンニュートラル

画像クレジット:Apple

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定

中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定

Thorium pellets. Pallava Bagla/Corbis via Getty Images

中国政府の科学者は、世界初をうたう、冷却のための水を必要としない実験用原子炉の計画を発表しました。来月にも原子炉は完成し、9月から最初の実験が開始される予定です。中国はこの実験炉での実験がうまくいくならば、早ければ2030年に最初の商業用原子炉を建設する予定。そしてその後は水が必要ない利点を活かして砂漠や平原地域にこの原子炉を置き、さらには「一帯一路」構想に参加する国にも最大30基を建設する予定だとしました。

中国人民政治協商会議(CPPCC)の常任委員、王守軍氏は、CPPCCのウェブサイトに掲載された報告書で「原子力での『進出』はすでに国家戦略であり、原子力の輸出は輸出貿易の最適化と、国内のハイエンドな製造能力を解放するのに役立つ」と述べています。

この構想の原子炉が大量の水を必要としないのは、燃料にウランではなく液体トリウムを使う溶融塩原子炉だからです。この原子炉ではトリウムを液体のフッ化物塩に溶かし込み、600℃以上の温度で原子炉に送り込みます。原子炉の中で高エネルギーの中性子が衝突することでトリウムがウラン233に変化し、核分裂の連鎖反応を開始します。こうしてトリウムと溶融塩の混合物が加熱され、それを2つめの炉室に贈ることで大きなエネルギーを抽出、発電に利用します。

溶融塩は空気に触れれば冷えて固まります。そのため、万が一漏洩があったとしても、核反応は自然におさまり、トリウムが外界に漏れ出ることもほとんどないとのこと。またトリウムはウランに比べて核兵器への転用が難しく、また安価で入手しやすいという点もメリットとされます。

この溶融塩原子炉の試作機を開発した上海応用物理研究所によれば、計画は中国が2060年までにカーボンニュートラルを実現するという目標の一環とのこと。2019年の米調査会社の報告によると、世界の炭素排出量の27%が中国が占めています。これは他の先進国全体を合計しても届かない数値であり、世界からの厳しい目が中国に向けられています。

溶融塩原子炉のアイデアは新しいものではなく、1946年に米空軍の前進組織が超音速ジェット機を開発するときに考えられました。しかし、その後の開発においては溶融塩のあまりの温度に配管が耐えられなかったり、トリウムの反応がウランに比べて弱いことから、結局ウランを添加しないと核分裂反応が持続させられないといった技術的なハードルを解決できず、研究は中止されました。

ちなみに、米国では6月に資産家のビル・ゲイツ氏とウォーレン・バフェット氏が出資する企業が「ナトリウム高速原子炉(SFR)」という新しい原子力発電方式の実証炉をワイオミング州の石炭火力発電所に建設することを発表しています。こちらは仕組み的には日本がかつて研究開発していた高速増殖炉「もんじゅ」の方式を発展させた方式のものとされます。

原子力発電というと、われわれ日本人はどうしても福島の原発事故や、広島・長崎の原爆投下を思い出し、放射能流出が心配になりがちです。化石燃料を使った発電から再エネへの積極的な転換を目指す大きな流れもあるなか、米中という大国が従来より安全とはいえ新たな原子力を開発し、これを推進するなら、その先の世界がどうなっていくのかは気になるところです。

(Source:LIve ScienceEngadget日本版より転載)

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3兆6420億円の新エネルギー政策を含む2020年末の米国景気刺激法案
倫理感のある技術者の消滅と再生
ビル・ゲイツ、エネルギーを語る―「福島以後もやはり原子力はキロワット時あたり死傷率で石炭より安全」

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ソフトバンクが2030年代の「Beyond 5G」「6G」のコンセプトと12の挑戦を公開

ソフトバンクが次世代移動体通信規格「Beyond 5G」「6G」に向けた12の挑戦を公開ソフトバンクは、2030年代の商用化が期待されている、次世代移動体通信規格「Beyond 5G」および「6G」に向けた12の挑戦を公開しました。

内容としては、5Gの「ミリ波」よりもさらに高い周波数帯「テラヘルツ波」の利用や、無人の電気飛行機を使って成層圏に携帯基地局を浮かべる「HAPS」、LEO(低軌道通信衛星)を活用した、100%のエリアカバレッジなどが紹介されています。全文は下記の通りです。

(1)ベストエフォートからの脱却

これまでのモバイルネットワークでは、スマートフォンをインターネットに接続するベストエフォートなサービスを提供してきました。例えば、ネットショッピングや動画のストリーミング視聴といった、多少の遅延やパケットロスが発生しても生活に支障が生じにくいアプリケーションを提供してきました。6Gのモバイルネットワークでは、さまざまな産業を支える社会インフラの実装が期待されており、各産業が要求するサービスレベルに見合った、品質の高いモバイルネットワークを提供する必要があります。ソフトバンクは、日本全国を網羅するモバイルネットワークに、MEC(Mobile Edge Computing)やネットワークスライシングなどの機能を実装して、産業を支える社会インフラを実現していきます。

(2)モバイルのウェブ化

インターネットは、これまで多くのIT企業によってシステムやプロトコルの改善がなされ、進化を続けてきました。一方、モバイルネットワークは、クローズドなネットワークであるため、世界的に標準化される以上に進化を遂げることはありません。今後、モバイルネットワークのサービスの幅を広げるために、より柔軟なアーキテクチャーに生まれ変わることが期待されます。6Gでは、ウェブサービスのアーキテクチャーを取り込むことで、さらにお客さまに便利なサービスを提供できると考えて、研究開発を進めていきます。

(3)AIのネットワーク

AI技術は、画像認識による物体の検知や、音声認識・翻訳だけではなく、ネットワークの最適化や運用の自動化など、幅広く適用されるようなりました。同時に、無線基地局を含むモバイル通信を支えるネットワーク装置では、汎用コンピューターによる仮想化も進んできました。AI技術と、ネットワーク装置の仮想化は、いずれもGPU(Graphic Processing Unit)によって効率的に処理できるソフトウエアです。モバイルネットワーク上にGPUを搭載したコンピューターを分散配置することで、低コストで高品質なネットワークとサービスの提供が可能になります。ソフトバンクは、2019年からGPUを活用した仮想基地局の技術検証に取り組んでおり、AI技術とネットワークが融合したMEC環境を実現していきます。

(4)エリア 100%

6Gでは、居住エリアで圏外をなくすことや、地球すべてをエリア化することが求められます。ソフトバンクは、HAPSやLEO(低軌道)衛星、GEO(静止軌道)衛星を活用した非地上系ネットワークソリューションを提供することで、この問題を解決します。これにより、世界中で30億を超えるインターネットに接続できない人々に、インターネットを提供することが可能になります。また、これまで基地局を設置できなかった海上や山間部、さらには上空を含むエリアにモバイルネットワークを提供することが可能になり、自動運転や空飛ぶタクシー、ドローンなど新しい産業を支えるインフラとなります。

(5)エリアの拡張

ソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルは、2017年から成層圏プラットフォームと通信システムの開発に取り組んでいます。2020年にはソーラーパネルを搭載した成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「Sunglider」(サングライダー)が、ニューメキシコで成層圏フライトおよび成層圏からのLTE通信に成功し、HAPSが実現可能であることを証明しました。このフライトテストで得た膨大なデータを基に、商用化に向けて機体や無線機の開発、レギュレーションの整備などを進めていきます。

(6)周波数の拡張

5Gでは、これまで移動体通信で利用されることがなかったミリ波が利用できるようにしました。6Gでは、5Gの10倍の通信速度を実現するため、ミリ波よりも高い周波数のテラヘルツ波の活用が期待されています。一般的に、100GHzから10THzまでがテラヘルツ帯とされ、2019年に開催された世界無線通信会議(WRC-19)では、これまで割り当てられたことがなかった275GHz以上の周波数の中で、合計137GHzが通信用途として特定されました。この広大な周波数を移動通信で活用することで、さらなる超高速・大容量の通信の実現を目指します。

(7)電波によるセンシング

ソフトバンクは、これまで電波を主に通信用途で活用してきましたが、6G時代では通信以外の用途でも活用することが可能になります。例えば、Wi-Fiの電波を使用して、屋内で人の位置を特定する技術はすでに実用化されている他、Bluetoothを位置情報のトラッキングに利用するケースもあります。6G時代では、電波を活用して、通信と同時にセンシングやトラッキングなどを行うサービスの提供を目指します。

(8)電波による充電・給電

スマートフォンなどのデバイスは、Qi規格による無接点充電技術が多く使用されていますが、距離が離れてしまうと充電・給電ができないという欠点があります。6G時代には、電池交換や日々の充電から解放される未来がやってくると期待しており、距離が離れても電波を活用した充電・給電を行える技術の研究開発を進めていきます。

(9)周波数

周波数は、これまで各事業者が占有して利用することを前提に割り当てられてきましたが、IP技術を無線区間に応用することで、時間的・空間的に空いている帯域を複数事業者で共有することも可能になると考えます。Massive MIMOやDSS(Dynamic Spectrum Sharing)などの多重化技術がすでに確立されていますが、これらを含めた技術をさらに発展させて周波数の有効活用を進めていきます。

(10)超安全

2030年には、量子コンピューターの実用化まで開発が進むと言われています。量子コンピューターが実用化されると、現在インターネットの暗号化に使われているRSA暗号の解読ができるようになり、通信の中身を盗まれる可能性があります。将来、通信インフラの上に成り立つ産業全体を守るために、耐量子計算機暗号(PQC)や量子暗号通信(QKD)などの技術検証に取り組み、発展させることで、超安全なネットワークの実現を目指します。

(11)耐障害性

モバイルネットワークは、5G以降により一層社会インフラとしての役割が強くなってくると考えており、通信障害が発生した場合でも社会インフラとして維持し続ける必要があります。そこで、従来のネットワークアーキテクチャーを見直すことで、障害が起こりにくいネットワークを構築するとともに、万が一、障害が発生した場合でもサービスを維持できるようなネットワークの技術の研究開発を進めていきます。

(12)ネットゼロ

大量のセンサーやデバイスからのデータ、あらゆる計算機によるデータ処理によって、CO2排出量を常時監視・観察ができるようになると、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするネットゼロの達成に大きく寄与できると考えられます。しかし、常にセンサーなどで監視されることになるため、プライバシー情報の取り扱いや情報セキュリティーといった課題を解決することも必要になります。また、基地局自体もカーボンニュートラルな運用を目指しています。現在、災害時でもネットワークを稼働させるため、基地局の予備電源の設置が義務付けられていますが、電源を普段から活用することや、日中に充電した電気を夜間に使うことで、温室効果ガスの排出量を抑えることができます。さらに、通信量に応じてリアルタイムな基地局の稼働制御を行うことで、消費電力を最小化することも可能になります。カーボンフリーな基地局の実現に向けて研究開発を進めていきます。

(Source:ソフトバンクEngadget日本版より転載)

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レアメタル溶媒抽出技術エマルションフローで都市鉱山リサイクルを目指すエマルションフローテクノロジーズが資金調達

「都市鉱山」レアメタルのリサイクル技術「エマルションフロー」活用した事業化を目指すエマルションフローテクノロジーズが8000万円調達

日本原子力開発機構(原子力機構)発のレアメタルリサイクルベンチャー「エマルションフローテクノロジーズ」(EFT)は7月14日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による8000万円の資金調達を発表した。引受先は、リアルテックホールディングスが運営するリアルテックファンド。エマルションフローとは、原子力機構で開発されたレアメタルのリサイクル関連技術のこと。EFTは、この技術を事業化するため、6社目となる原子力機構発ベンチャー企業に認定された。

「都市鉱山」レアメタルのリサイクル技術「エマルションフロー」活用した事業化を目指すエマルションフローテクノロジーズが8000万円調達

いわゆる「都市鉱山」に眠るレアメタルの回収は大きな社会的課題となっているが、レアメタルのリサイクルには溶媒抽出という水と油を混合させて行う技術が用いられている。現在使われているミキサーセトラーという方式は、混ぜて、静かに置いて、分離するという3工程を必要とするもので、大型装置で時間をかけて行わなければならず、排水に油が混入するなど環境負荷の問題もある。

それに対して新しいエマルションフローは「送液のみ」のみの1工程で済む。この方式により、生産性は10倍(1/10にダウンサイジング)、ランニングコストは1/5、精製純度は99.99%以上となり、分離困難だった元素(レアアースなど)の精製、作業環境の改善、油と水の分離能力の向上による排水のクリーン化が実現した。原子力機構の研究室で偶然発見された「水と油が細かくよく混ざりながらもきれいに分離する」という現象にヒントを得て、この革新的な溶媒抽出法であるエマルションフローが開発されたとのことだ。

「都市鉱山」レアメタルのリサイクル技術「エマルションフロー」活用した事業化を目指すエマルションフローテクノロジーズが8000万円調達

EFTのレアメタルリサイクル事業では、エマルションフロー技術を用いることで、リチウムイオン電池などに含まれるレアメタルを低コストで高純度に回収する技術を確立し、「都市鉱山」から回収したレアメタルをハイテク産業に直接再利用できる「水平リサイクル」の実現を目指すという。

今回の資金調達でEFTは、第5世代のエマルションフロー装置のスケールアップ、レアメタルリサイクル事業とトータルサポート事業の推進を行う。

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