ポルシェがカーボンニュートラルな家庭のためのワンストップショップを目指す独スタートアップに出資

Porsche(ポルシェ)のベンチャー部門は、エネルギー貯蔵、電気自動車の充電インフラ、太陽光発電など、カーボンニュートラルな家庭を実現するために家庭に必要なものをすべて提供することを目指しているドイツのスタートアップ1Komma5(ワンコンマファイブ)に少数株主として出資した。

投資額は公表されていないが、Porsche Venturesは過去2年間に、イスラエルのセンシング技術のスタートアップTriEye電動マイクロモビリティのオンラインディーラーRidePandaバーチャルセンシングのスタートアップTactile Mobilityなどに出資してきた。

関連記事
悪条件下でも使える短波長赤外線を利用するセンサーの商業化を目指すTriEye、インテル、サムスン、ポルシェが支援
ポルシェ、ヤマハが電動モビリティのオンライン販売を行うRidepandaに出資
グッドイヤーとポルシェ投資部門が自動車が道路を「感じる」ようにするバーチャルセンシングTactile Mobilityに戦略的投資

今回の投資は、Porsche Venturesの典型的なモビリティ技術に関するものとは少し異なる。

Porsche Ventures Europe and Israelの責任者であるPatrick Huke(パトリック・ヒューケ)氏は「今回の投資で、スマートシティとサステナビリティの分野における我々の野心を強調したいと思っています」とTechCrunchに語った。

ドイツ・ハンブルグ拠点のこのスタートアップは、CFOを務めるMicha Grueber(ミーヒャ・グルーベル)氏、そしてTeslaとエネルギー貯蔵システム会社Sonnenで働いた経験を持つPhilipp Schröder(フィリップ・シュローダー)氏によって設立された。

パリ協定の目標である「気温上昇を1.5度以内に抑える」ことにちなんで名付けられた1Komma5は、ワンストップショップという目標に向けて興味深い方法をとっている。

シュローダー氏は最近のインタビューで「今日、どの企業も太陽光発電やエネルギー貯蔵などのコンポーネントの販売に集中しています。その一方で、ヨーロッパでは、これらの分散型資産をまとめることに注力している企業はありません。これでは問題が発生するのは必至です」と話した。

「分散型エネルギーの世界では、各家庭にヒートポンプや充電ポイント、蓄電システムがあっても、それらがグリッドレベルで(あるいは相互に)通信しなければ問題が発生します」と同氏は話す。

1Komma5は、買収だけでなくソフトウェアを通じてすべてを統合することを目指している。具体的には、1Komma5はドイツ国内で、太陽光、ヒートポンプ、エネルギー貯蔵などの再生可能エネルギーに特化した大手電気設備会社の買収を目指しており、最終的にはオーストリアやスイスなどの他の国にも拡大する予だ。1Komma5は、これらの企業に対して、管理業務や顧客関係管理を行うための法人向けソフトウェアや、充電、太陽光、エネルギー貯蔵を結びつけるエネルギー管理ソフトウェアを提供する。

1Komma5のビジネスが興味深いのは、ソーラーやエネルギーストレージなどのコンポーネントを、家庭レベルとグリッドレベルで相互に接続する計画があるからだとシュローダー氏は話す。

1Komma5は、これまでに現金および株式による5件の買収を行っている。

この若いスタートアップは、今後2年間で1億ユーロ(約127億円)の現金と株式を使って、再生可能エネルギーに特化した設置会社をさらに買収するという壮大な野望を抱いている。ターゲットとしているのは、500万〜2000万ユーロ(約6億〜25億円)の売上と、熟練した労働力を持つ設置会社で、単に他の業者に委託しているような販売会社ではない。

Porscheからの資金は、1Komma5の事業拡大のために使用される。その計画には、プレミアムなAppleデザインのような雰囲気の小売店舗を開設し、潜在的な顧客がカーボンニュートラルな住宅に不可欠な構成要素について学べるようにすることが含まれる。このような店舗では、例えば、家庭用充電器、エネルギー貯蔵、太陽光発電などの隣にPorscheのTaycanが展示されるかもしれない。

最初のショールームは、ハンブルクのビネナルスターとリンゲン・アン・デア・エムスに計画されており、2022年第1四半期にオープンする予定だ。

Porscheは、1Komma5の製品を自社の顧客層に提供することをすぐには考えていない。しかし、ヒューケ氏が指摘したように、Porsche Venturesは戦略的な投資を行っており、中長期的にはさまざまな可能性を検討していくことになる。

画像クレジット:Porsche

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

日産が今後5年間でEV開発に2兆円を投資へ、2030年度までに23車種の新型電動車投入

日産自動車は「Nissan Ambition 2030(日産アンビション2030)」と名づけた長期ビジョンの一環として、今後5年間で2兆円を投資し、新型電動車やバッテリー技術を開発することを発表した。同社は2030年度までに合計15車種の新型BEVを発売し、その時点で電動車が車両ラインナップの半分を占めることを目指す。

同社は、今後8年間で合計23車種の電動車を開発し、そのうち20台は今後5年間で開発すると発表した。2030年には、欧州で75%、日本で55%、米国と中国で40%の電動車販売比率(EVとe-Power PHEV / ハイブリッド車)に達することを目標にしている。

それ以外の部分は、内燃機関(ICE)車だと思われる。注目すべきなのは、2021年初頭、日産は「2030年代初頭までに発売するすべての新型車を電動化する」と発表していた点だ。おそらく、ICE車がまだ販売されている場合は、レガシーモデルということになるだろう。

日産は他にも、2028年までに全固体電池(ASSB)を搭載したEVを発売し、早ければ2024年に横浜にパイロット工場を設置すると発表した。この技術は、充電時間の短縮などのメリットを約束するものだが、まだ期待通りに市場に登場していない。また、バッテリーパックのコストを2028年までに1kWhあたり75ドル(約8500円)に引き下げ、さらに先には65ドル(約7400円)に引き下げることを目指している。Bloombergによると、これは2020年のEVバッテリーの価格の約半分に相当する。日産は、2030年までにグローバルな電池生産能力を130GWhへと引き上げる予定だという。

日産は、運転支援技術「プロパイロット」を、2026年までに250万台以上の日産車およびインフィニティ車に拡大する計画であるとも述べている。また、次世代LiDARシステムを「2030年度までにほぼすべての新型車に搭載する」としている。

画像クレジット:Nissan

「Ambition 2030」の一環として、日産は4つの新しいコンセプトカー「Chill-Out」「Surf-Out」「Hang-Out」「Max-Out」を発表した。他のコンセプトカーと同様に、これらは自動運転やインテリアの機能、そして奇抜なデザインなど、日産の未来のテクノロジーを体験するためのものだ。しかし、日産が実車として公開しているのは「Chill-Out」の画像のみで、他の3車種はレンダリング画像だ。

Chill-Out(トップ画像・上)は小型のクロスオーバーで、日産が以前に確認したように、次世代リーフがハッチからクロスオーバースタイルのボディに移行することを示す初期のプレビューかもしれない。アリアのCMF-EVプラットフォームとe-4orce電動駆動4輪制御システムを採用しており、2025年までに登場する予定だ。

画像クレジット:Nissan

一方、Surf-Outは小型の電動シングルキャブピックアップトラックで、そこそこの大きさの荷台と取り外し可能なキャノピーを備えている。デュアルモーターAWDと多様な出力を備え、オフロード性能、ユーティリティー性、広いカーゴスペースを提供する。

画像クレジット:Nissan

そしてHang-Outは「移動中の新しい過ごし方を提供する」ことをコンセプトにした、小型のキャンピングカー・SUVのようなモデルだ。完全にフラットなフロアと可動式のシアターシートを備え、最近のEVコンセプトにも見られる「移動空間でありながらリビングルームのような快適さ」を提供する。また、e-4orceや先進のプロパイロット機能も搭載している。

画像クレジット:Nissan

そして最後に、Max-Outは「最高の安定性と快適さ」を提供するオープンスポーツカーだ。ボディロールを抑えることで「ダイナミックなコーナリングとステアリングレスポンス」を実現し、ハンドリングと乗員の快適性を最適化している。また、 軽量・低重心で、先進のe-4orceも搭載しているとのこと。

日産の新計画は、カルロス・ゴーン前CEOの逮捕とその後の逃亡など、社内問題に取り組んできた中で生まれたものだ。同社は短期的には、2020年に発表された「NISSAN NEXT」計画の一環として、3000億円規模の固定費削減と生産能力の20%削減を計画している。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Nissan

原文へ

(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

ますますリスクを背負うスタートアップ市場

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

米国東海岸からこんにちは。私はいま、新型コロナウイルスワクチンのブースターショットの副反応を払いのけようとドーナツを食べている。今のところ、Moderna(モデルナ)の3回目の接種の副反応は、2回目ほどひどくはないが、何が起こるかは誰にもわからない。ということで、途中で椅子からすべり落ちて、そのまま昼寝をしてしまうかもしれないので、今日は簡単にしたい。

まずはじめにみなさんに感謝を。このささやかな週刊ニュースレターには、今では3万人以上の購読者がいて、毎週の開封率は40%台半ばから後半に達している。これは、私がTechCrunchに戻ってきたときに始めた大きなプロジェクトの一部だが、平日のExchangeコラムにこのニュースレターを追加したときには、果たしてうまくいくものかどうかはわからなかった。

率直に言って、この週刊ニュースレターが受け入れられるかどうかは一種の賭けのようなものだと思っていたのだ。読者のみなさんのおかげで、賭けは成功し、通常のExchangeコラムは今では週6回発行されている。すばらしい。みなさんに感謝する。

さて、リスクについてだ!

少し前に、スタートアップ市場のリスクが公開市場に流れ込むケースが増えているという話をした。つまり、一般の投資家が、SPACやいくつかの興味深い株式公開のおかげで、以前よりも多く、新生スタートアップの高額な株式を手に入れることができるようになったということだ。

しかし、その中には、スタートアップのリスクが非公開市場の投資家にとっても高まっているという暗黙の了解があった。何が起こっているのかを話そう。

  • スタートアップ企業の評価額は、市場の潤沢な資金、利回りの高い限定的な投資、および関連する諸事情のおかげで上昇している。こうしたことはある程度聞いたことがあると思う。
  • スタートアップ企業の評価額も、より多くの投資家が投資プロセスの早期に投資するようになったことでも上昇している。このことも、これまでに聞いたことがあるだろう。しかし、それがどのように自己強化される問題であるかについては、意識していないかもしれない。大規模なファンドはその規模を後ろ盾にしてこれまでよりも「早い」段階的で投資することができる、実質的に、全体的なリターンプロファイルをリスクにさらすことなく、当該スタートアップの株式を大量に購入するオプション契約を結ぶことになるのだ。これにより後期ステージ資金が早期ステージに投入される一般的傾向が後押しされる。そして、その金額の差によって、後期ステージの投資家たちは早期ステージの評価額をあまり強く気にしないために、評価額が上昇するのだ。もっと簡単にいうと、もしあなたが10億ドル(約1133億円)の投資資金を持っていて、シリーズAに500万ドル(約5億7000万円)を投入する場合、プレマネー評価額が6500万ドル(約74億円)でも7500万ドル(約85億円)でも、それほど気にしないということだ。投資家が本当に気にしているのは、成功したスタートアップが次のラウンドで資金を調達するときに、5000万ドル(56億7000万円)を投資できるかどうかだ。
  • しかし、それだけではない。ベンチャー投資家たちがThe Exchangeに報告してくれたところによると、スタートアップの評価額が上昇しているのは、ハイテク企業の成長率が予想以上に高いだけでなく、成長率が予想以上に持続していることが証明されたからだという。つまり、これまでのスタートアップ企業が、多くの人が予想していたよりも速い成長を遂げて上場し、その拡大ペースを長く維持しているということだ。その結果、テクノロジー企業の将来価値は予想以上に高くなる可能性があるため、投資家はより多くの金額を今支払うことができ、期待していたほどの額の増加がなくても心配しないでいられるということだ。
  • メンローの投資家であるMatt Murphy(マット・マーフィー)氏が最近説明してくれた、評価額上昇に関するもう1つの要因は、昔のベンチャーが感じていたスタートアップの失敗率が今では正しくないということだ。失敗率は以前よりも低く、極めて重要なヒット率も高くなっているという。

上記を全体的に眺めて良く考えるならば、量産されるユニコーンや数十万ドル(数千万円)のラウンドも説明できるのではないだろうか。それは、どこか納得できる視点でもある。結局のところ、こうしたスマートマネーが賭けているのは、より速く、より持続的な成長と、より少ない失敗(本質的にSaaSは殺すのが難しい)が、より高いコストとバランスを取って、ベンチャー数学を満たすために必要なリターンを生み出すことだ。

しかし、しかーーしだ、新型コロナパンデミックによる初期のショックが収まった後に始まったソフトウェア企業買収ブーム以降、スタートアップ市場のファンダメンタルズはあまり改善されていないために、ますますリスクは高まっている。つまり。2021年、ベンチャー投資家が支援しているスタートアップたちは、2020年半ば以降、マクロ的な運勢はあまり良くなっていないのにもかかわらず、より多くの資金を、より早く調達することに躍起になっている。その分、投資リスクが高まっているのだ。

現在、市場には900社以上のユニコーンが存在しているが、これらのユニコーンはすべて、投資家が期待するリターンを得るために、IPOを必要としている。もし市場が最終的に少し修正されて、少しだけ歴史的な整合性が取られたとすれば、かなりの数の高額な非公開企業が、非公開市場での評価と公開市場での価格の間で行き詰まってしまう可能性がある。非常に厄介なことになる可能性があるだろう。皆はただ、そうでないことに賭けているだけだ。

つまり、スタートアップの価格の上昇に対する合理的な理由があるにもかかわらず、スタートアップがより多くの資本を、より早く調達するようになると、それは限界リスクゼロの賭けではなくなるということだ。

今日はここまで。残り物を食べて、オフラインになるとしよう。

画像クレジット:Nigel Sussman

原文へ

(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

Fractionalは友人(あるいは見知らぬ人)と一緒に不動産投資を行えるプラットフォーム

後払い決済のフィンテック企業であるAffirm(アファーム)で同僚だったStella Han(ステラ・ハン)氏とCarlos Treviño(カルロス・トレビーニョ)氏は、不動産業を営む家庭で育ったという共通のバックグラウンドで意気投合した。そこでAffirmの「自分のペースで支払う」というミッションと、不動産を所有することにともなう時間的な負担やコストの高さという実体験がぶつかり合い、その軋轢からFractional(フラクショナル)のアイデアが生まれた。

Fractionalは、サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業で、不動産の所有をより身近なものにしたいと考えている。Y Combinator(Yコンビネータ)2021年冬のバッチに参加した同社のプラットフォームは、友人や見知らぬ人と投資用不動産を共同所有することを可能にするというものだ。これは不動産を探す際のロジスティックな問題を解決するとともに、小額の小切手を集合体に預けて、その集合体が不動産に投資するという方法によって、経済的な障壁を取り除くことができる。

このビジョンを掲げたベータ版には400人以上のユーザーが参加し、95件の不動産に共同投資を行った。そして会社には数百万ドル(数億円)の初期資金をもたらすことになった。Fractionalは先日、3000万ドル(約34億円)の評価額で総額550万ドル(約6億2000万円)の資金調達を実施したと発表した。同社のシードラウンドはCRVが主導したが、Y Combinator、Will Smith(ウィル・スミス)氏、Kevin Durant(ケビン・デュラント)氏、Goodwater Capital(グッドウォーター・キャピタル)、Unusual Ventures(アンユージュアル・ベンチャーズ)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダース・キャピタル)、On Deck(オン・デック)、Contrary Capital(コントラリー・キャピタル)、Soma Capital(ソマ・キャピタル)が参加した。

Fractionalは、住宅所有のプロセスを3つの主要部分に分けている。まず最初に、共同所有者をマッチングするか、友人たちのグループに参加してもらって、引受プロセスを開始する。これには共同創業者のAffirmでの経験が生かされている。次に、法律や金融関連のソフトウェアサービスを通じて、不動産の購入を支援する。そして最後に、不動産管理会社やその他のサービスと提携して、共同所有する家屋が良好な状態を保てるようにする(新たに共同所有者となった人々には、時間的負担が掛からない)。

確かに、Fractionalは不動産を所有する際の経済的な負担を軽減してくれるが、友人同士でビジネスを始めることは、人間関係に大きなプレッシャーを与えることになるため、敬遠されるかもしれない。もし、その中の1人が生活的事情から先に売却したくなったらどうするか? あるいは、誰かがキッチンのアップグレードを拒否したらどうする?

Fractionalの共同創業者たちは、自分たちのバックグラウンドから、不動産業界でサービスとしてのアクセスの提供を拡大することは、他に類を見ないほど複雑であることを知っていた。そこで、ハン氏とトレビーニョ氏は、このプロセスをより深く理解するために、実際に資金を出し合ってメキシコに土地を購入することにした。トレビーニョ氏の家族がメキシコで建設業を営んでいたこともあり、2人は市場に出回らない好条件の土地を見つけ、最終的にはその土地に店舗を建てることができた。しかし、ハン氏は「手続きは非常にスムーズというわけにはいかなかった」と振り返り、手続きの仕組みを理解するために1時間750ドル(約8万5000円)ほどの弁護士費用を支払わなければならなかったと語る。

「私たちは弁護士を雇わなければなりませんでしたが、それは私たちが2人でどのように意思決定を行い、どのように対立を解決するかということの、良い実例をきちんと作っておきたかったからです」。

Fractionalの共同創業者ステラ・ハン氏とカルロス・トレビーニョ氏(画像クレジット:Fractional)

CRVのジェネラルパートナーであるSaar Gur(ザール・グール)氏は、Fractionalのソーシャルネットワーキング機能が「新しい投資家と経験豊富な投資家が共生する環境」であることが、同社の特徴的な要素の1つであると考えているという。「また、これによってFractionalは、実際の取引に留まらず、プラットフォーム上で一定のエンゲージメントを促進でき、積極的な有料マーケティングを使わず、有機的な口コミを通して成長を勢いづけることができます」と、グール氏は声明で述べている。

NFT(非代替性トークン)購入やプライベート・エクイティ・ファンドなどのオルタナティブ投資の台頭は、さらなる採用のきっかけとなるかもしれない。消費者は、伝統的な公開株式からポートフォリオを分散させるという考え方に慣れてきている。Fractionalは、世の中でよく知られている資産クラスの1つである不動産を活用したプラットフォームだ。

Fractionalのエンジェル投資家であるNot Boring Capital(ノット・ボーリング・キャピタル)のPacky McCormick(パッキー・マコーミック)氏は、Fractionalについて、拡張性が高くて利益率の高いビジネスを、一般的には拡張性が低くて利益率の低いビジネスにもたらすと考えている。投資家であり作家でもあるマコーミック氏は、TechCrunchに次のように語った。「私が最も感銘を受けたのは、家を買って改築してからそれを売ったり、あるいは資産を買って人々に投資してもらうといったことを必要とする、非常に資産偏重の業界において、Fractionalは純粋なソフトウェアによるアプローチを採り、プロセスの容易さを妥協せず、しかも人々に家を所有する実感を与えることです」。

画像クレジット:Fractional

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EV急速充電ネットワークのIONITYが、充電器の数を4倍以上に増やすために約905億円を投資

Daimler AG(ダイムラーAG)やVolkswagen Group(フォルクスワーゲングループ)などの大手自動車会社が共同で設立した、電気自動車用急速充電ネットワークプロバイダーのIONITY(アイオニティ)は、資産運用会社のBlackRock Global(ブラックロック・グローバル)と既存の株主から7億ユーロ(約905億円)の投資を獲得。欧州全域における事業拡大を目指している。

EV用の超急速充電ステーションを欧州各地に設置しているIONITYは、ダイムラーとフォルクスワーゲングループの他、BMW Group(BMWグループ)、Ford(フォード)の4社による合弁事業として2017年に設立され、後にHyundai Motor Group(現代自動車グループ)も加わった。同社は今回の投資により、現在設置されている約1500基の充電器を、2025年までに4倍以上の7000基に増やすことを計画している。

新たに建設される充電ステーションは、高速道路などの主要道路や主要都市の近くに設置され、それぞれの場所で6~12台分のEVを同時に充電できるようにする予定だ。また、需要の高い既存の施設にも、充電器の数を追加していくという。

IONITYは、車両の充電中にドライバーも「充電」できるフルサービスステーションの所有・運営も計画している。同社で「Oasis(オアシス)」と呼ぶこのステーションのコンセプトは、現在の道路沿いある休憩所と似たものだ。

BlackRockは、同社のGlobal Renewable Power(グローバル・リニューアブル・パワー)株式投資ビークルを通じて、IONITYに出資した。自動車関連企業以外からIONITYが資本を受け入れるのは、これが初めてのことだ。BlackRockは4月に48億ドル(約5500億円)の資金を集めており、これは機関投資家の脱炭素技術への関心が高まっていることを示している。

この投資は、有力な投資家たちが、来るべき交通機関の電動化に確信を深めていることも物語っている。BlackRockはこれまで、陸上・洋上風力発電や太陽光発電プロジェクトへの投資を中心に行ってきた。同社がEV充電に興味を示したことは注目に値する。

画像クレジット:Ionity

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

サムスンが約2兆円でテキサス州テイラーに先端半導体工場建設を発表

Samsung Electronics(サムスン電子)は米国時間11月23日、先端ロジックデバイスを生産する半導体ウェハー製造工場をテキサス州テイラーに新設することを決定した、と発表した。

推定170億ドル(約1兆9580億円)の今回の投資は同社にとって米国における最大の投資となり、新工場がフル稼働すれば約2000人の新規直接雇用と数千人の関連雇用が創出される見込みだ。今回の投資により、Samsungが1978年に米国で事業を開始して以来、米国での投資総額は470億ドル(約5兆4140億円)超となる。

テイラー工場は、オースティンに現在あるSamsungの製造拠点から約16マイル(約25キロ)のところにあり、韓国・平沢の最新の新生産ラインとともに、Samsungのグローバルな半導体製造能力の重要な拠点になると期待されている。

テイラー新工場では、モバイル、5G、高パフォーマンス・コンピューティング(HPC)、人工知能(AI)などの高度なプロセス技術に基づく製品を製造する。

今回のSamsungの決定は、世界的な半導体不足が自動車や電子機器といった産業を弱らせているの中でのものだ。

同社は、先端半導体製造をよりアクセスしやすいものにし、急増する半導体製品需要に応えることで、世界中の顧客をサポートすることに引き続き注力すると述べた。

同社は、500万平方メートルを超えるテイラー工場の建設を2022年の第1四半期に開始し、2024年下半期の生産開始を目指す。

Samsung Electronicsのデバイスソリューション部門の副会長兼CEOであるKinam Kim(キナム・キム)氏は「テイラーに新しい施設を設けることで、Samsungは自社の未来における新たな重要な章のための基礎を築いています」と述べた。「製造能力の向上により、顧客のニーズにより良く応えることができ、世界の半導体サプライチェーンの安定に貢献することができます。当社はまた、米国で半導体製造を開始してから25周年を迎えるにあたり、より多くの雇用をもたらし、地域社会のトレーニングや人材育成を支援できることを誇りに思っています」。

製造工場の候補地として米国内の複数の場所を検討した結果、地元の半導体エコシステム、インフラの安定性、地元政府の支援、地域開発の機会など、複数の要素を考慮してテイラーへの投資を決定した。

報道によれば、アリゾナ州、ニューヨーク州、韓国などを候補地として検討したSamsungは、税制面で有利であることを理由にテキサス州ウィリアムソン郡を選んだ。7月にテキサス州当局に提出された書類によると、Samsungはテキサス州テイラーに半導体工場を建設するために(テイラー独立学校区からの)減税措置を申請した。

「Samsungは財政およびその他のインセンティブ(例:インフラやユーティリティーの支援)を通じてプロジェクトをサポートする強力な公的パートナーを求めています。このプロジェクトに関連して、Samsungはテキサス州企業基金からチャプター380およびチャプター381の支援に基づくリベートを求めています。加えて、提案されているプロジェクトの建設と運営を支援するために、特定のインフラやユーティリティーの改善、料金の引き下げ、その他の非現金給付に関連するインセンティブも追求しています」と文書にはある。

Samsungはまた、テイラー独立学校区(ISD)に、学生が将来のキャリア・スキルを身につけるためのサムスン・スキルズ・センターを設立し、インターンシップや採用の機会を提供するための資金援助を行う。

テキサス州のWayne Abbott(ウェイン・アボット)知事は「Samsungのような企業がテキサスへの投資を続けるのは、テキサスの世界クラスのビジネス環境と卓越した労働力のためです。Samsungがテイラーに新設する半導体製造施設は、勤勉なテキサス州中央部の人々とその家族に無数の機会をもたらし、半導体産業におけるテキサス州の継続的な卓越性に大きな役割を果たすでしょう」と述べた。

「テキサス州のパートナーに加えて、最先端の半導体製造を米国で拡大しようとしているSamsungのような企業を支援する環境を整えてくれたバイデン政権に感謝しています」とキム氏は述べた。「我々はまた、米国内の半導体生産とイノベーションに対する連邦政府のインセンティブを迅速に制定するために超党派でサポートした政権と議会にも感謝しています」とも語った。

世界最大の半導体メーカーの1社であるSamsungは8月に、グローバルプレゼンスを強化すべく、今後3年間で半導体、バイオ、IT、次世代通信ネットワークなどの分野に2050億ドル(約23兆6000億円)超の投資を行う計画を明らかにした。

先週、北米を訪れたSamsung Groupの事実上のリーダーであるJay Y. Lee(ジェイ・Y・リー)氏はワシントンD.C.で米政府関係者と面会し、第2の半導体工場と半導体のサプライチェーンについて協議した。リー氏はまた、ビジネス上の結びつきを強化するため、Microsoft(マイクロソフト)CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏、Moderna(モデルナ)やVerizon Wireless(ベライゾン・ワイヤレス)の幹部などハイテク企業のリーダーたちとも会談した。

Intel(インテル)は最近、アリゾナ州で2つの新しい半導体製造工場の建設に着手した。同時に、TSMCは120億ドル(約1兆3810億円)を投じるチップ工場の建設をアリゾナ州で開始し、10月には日本初の半導体工場の建設計画を発表した。また、Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)は、テキサス州シャーマンに新たに4つの半導体製造工場を建設する投資計画を発表した。

画像クレジット:JUNG YEON-JE/AFP / Getty Images

原文へ

(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

ボルボが車内ARを見据え光学オーバーレイのスタートアップSpectralicsに約2.3億円を投資

長らく安全の代名詞とも言われてきた自動車メーカーVolvo Cars(ボルボ・カーズ)は、ベンチャーキャピタル投資部門のVolvo Cars Tech Fund(ボルボ・カーズ・テック・ファンド)を通じて、自動車のフロントガラスやウインドウに組み込んでドライバーや乗客に画像を提供する技術を開発している光学・イメージングのスタートアップに投資したことを発表した。

Volvo Cars Tech Fundは、光学機器・イメージングの開発企業であるSpectralicsに200万ドル(約2億3000万円)を投資した。この資金は、自動車の安全性とユーザーエクスペリエンスの向上に貢献する光学フィルムの開発を加速させるために使用されるという。この投資は大きなものではないかもしれないが、Volvoとの関係は、特にその技術が量産車に採用されれば、実りあるものになるだろう。

Spectralicsが開発しているシースルー光学オーバーレイは「多層薄膜コンバイナー」とも呼ばれ、自動車のフロントガラスやウインドウに組み込むことができる。Spectralicsによると、これによってより広い視野が確保され、極めて重要なのは、それとともに安全なAR(拡張現実)オーバーレイに必要な距離感が得られるという。

車外では、スマートグラス、光学システム、その他のヘッドアップディスプレイなどにも利用できる可能性がある。これは、ARやVR(仮想現実)が、ゲームや消費財の域を超えて、自動車の中に入りつつあることを示す最新の兆候だ。これは間違いなく、自動車メーカーが新車を馬力ではなく、ユーザー体験や提供する技術で差別化するという幅広いシフトの一環だ。

Spectralicsの創設者であるRanBar Yosef(ランバー・ヨーゼフ)氏、Eran Falk(エラン・フォーク)氏、Yuval Kashtar(ユバル・カシュタル)氏、Yuval Keinan(ユヴァル・ケイナン)氏(画像クレジット:Tal Givoni for Spectralis)

自動車内のAR / VRの導入には数々のボトルネックが存在したが、自動車メーカー各社は、車内アプリケーション用にこの技術を開発している企業への投資でリードしていると、Abigail Bassett(アビゲイル・バセット)氏がTechCrunch+で指摘していた

VolvoのSpectralicsに対する投資が十分なシグナルでなかったとすれば、広報担当者はTechCrunchに、スウェーデンの自動車大手である同社がこの技術を自社の車に採用することを検討していると認めた。Volvo Cars Tech Fundの責任者、Lee Ma(リー・マー)氏は声明でこう述べている。「Spectralicsは当社のポートフォリオにフィットしており、彼らの技術は次世代のディスプレイやカメラの標準となる可能性があると信じています」。

Spectralicsは、スウェーデンのイェーテボリにあるアクセラレーター、MobilityXlabの卒業生であり、テルアビブにあるスタートアップと自動車業界の投資家をつなぐモビリティハブ、Drive-TLVにも参加している。Volvoのスタートアップ投資部門は2017年から両イニシアチブに参加しており、最近では、事故検知センサーを開発するMDGoや、車両検査技術開発企業のUVEyeなど、他のイスラエルのスタートアップにも投資している。

画像クレジット:Volvo Cars

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

GMが船舶用電動モーターメーカーPure Watercraftの株式25%を取得

General Motors(ゼネラルモーターズ、GM)は、シアトル拠点の電動ボート会社Pure Watercraft(ピュア・ウォータークラフト)の株式25%を取得した。GMの今回の動きは、2025年までに電気自律走行テクノロジーに350億ドル(約4兆200億円)を投資するというコミットメントの一環として、ボートやその他の車両を含むあらゆる電動の乗り物へ関心を広げていることを反映している。

Pure Watercraftは、25~50馬力のガソリンエンジンを搭載したボートのドロップイン代替として使用できる、Pure Outboardと呼ばれる全電動船外モーターシステムを製造している。また、大手ボートメーカーと提携し、はしけ、釣り用ボート、硬式ゴムボート2種など、電動ボートの完成品を販売している。

Pure Watercraftによると、ガソリンエンジンと比較して電気システムはメンテナンスが不要で、化石燃料による汚染もない。また、Pure Outboardでは15%の充電量で、20マイル(約32km)を航行する4時間近い釣りクルーズができる、と同社のウェブサイトにある。

同社は2020年9月、生産を本格化させるべくL37がリードしたシリーズAで2300万ドル(約26億円)を調達した。この9年前に、CEOのAndy Rebele(アンディ・レベレ)氏が会社を設立した。今回のGMの出資により、両社はバッテリー技術の共同開発と商業化を進め「GMの技術をさまざまな用途に統合していく」とGMは声明で述べた。

今回の出資は、道路交通車両や航空機を超えて、従来のガソリン駆動に支配され続けてきた輸送やモビリティの形態に電気技術が向かい始めていることを示す最新例だ。創業10カ月の電動船舶スタートアップArcは10月、複数の新しい投資家を迎え入れるなどし、総額700万ドル(約8億円)を調達した。また、シアトルのスタートアップZin Boatsは電動スピードボートの開発を進めている。

GMは、鉄道や航空宇宙など他のモビリティ産業での自社技術の利用をすでに検討していて、今回の動きは注目に値する。2021年初め、GMはWabtecと提携して水素燃料とバッテリーを使用した電気貨物機関車を開発した。また、Liebherr-Aerospaceとの提携で航空機用の水素燃料電池実証システムを共同開発することも発表した。

画像クレジット:Pure Watercraft

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

インターネット分野への投資が停止した中国で新興技術分野を開拓するTemasek

インターネット産業に対する中国の徹底的な締め付けにより、ゲームやeコマースなど、かつて人気を博した分野への投資家や新興企業の情熱が冷え込んでいる。しかし、投資家たちは中国でペースを緩めてはいない。2010年代の消費者向けインターネットブームは、Tencent(テンセント)やAlibaba(アリババ)のような巨大企業を生み出した。デジタル化がより伝統的な分野にも広がるにつれ「テック」業界全体でも新たな巨人の誕生が見込まれる。

例えば、Temasek(テマセク)のRohit Sipahimalani (ロヒット・シパヒマラニ)氏は、中国の医療テック、バイオテック、ヘルスケア、サステナビリティなどの分野に「膨大な機会」があると考えていると、日経アジアのインタビューに答えている。これらは「政府の政策に引き続き沿っている」分野だ。

実際、Temasekは最近、これらの分野でいくつかの中国のスタートアップに出資した。眼科・検眼機器サプライヤーのVision X、mRNAベースのワクチン・医薬品を提供するAbogen Biosciences、手術用ロボットを開発するEdge Medical Robotics、自律走行技術を提供するMomentaなどだ。

3月31日時点で、中国はシンガポール政府系企業の最大の投資先であり、3810億シンガポールドル(約32兆円)のポートフォリオの27%を占めている。

一方、Temasekは規制の見直しの中でインターネット関連企業への資本投下を停止している。

シパヒマラニ氏はインタビューの中で「今後数カ月のうちに規制が明確になり、それによって勝者と敗者がはっきりすると思いますが、我々はおそらくこの分野の規制が明確になるまで、資本投入を控えるでしょう」と述べている。

中国のテック産業の発展を形作る統一的な法律はない。この1年間、中国はIT分野を対象とした数多くの新しい規制を導入してきた。例えば、個人情報保護法はユーザーのプライバシーを保護することを目的としており、インターネットサービスがデータを収集する方法、ひいては収益に影響を与える。独占禁止法は、インターネット企業の自由な成長を抑制し、この分野に新しい風を吹き込もうとするものだ。一方で、オンライン教育の取り締まりは、国の所得格差の拡大に対処するための試みであるとの見方が多い。

業界関係者や投資家にとっての課題は、これらの新しい法律を分析するだけでなく、次の法律がいつ導入されるかを予測することだ。

シパヒマラニ氏は「中国では、実行される方法が少し無骨かつ迅速で、そのため多くの衝撃を与えてきました」と話した。

画像クレジット:Andrew Brookes / Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソフトバンクは今年インドに約3420億円投資、2022年には最大1.1兆円の可能性

ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのCEOであるRajeev Misra(ラジーヴ・ミスラ)氏は、ソフトバンクグループが2021年にインド企業に30億ドル(約3420億円)を投資しており「適切な企業」を「適切な評価額」で見つければ、2022年には同国に50億〜100億ドル(約5700億〜1兆1400億円)を投資できると述べた。世界第2位のインターネット市場であるインドに対するトップの投資会社の強気な姿勢を示す最新例だ。

「適切な企業を見つければ、2022年に50億〜100億ドルを投資するかもしれません」とミスラ氏は11月11日のバーチャル会議で述べ、ソフトバンクが「適切な評価額で」そのような機会を模索する、とも付け加えた。

ミスラ氏は、同社が中国への投資のペースを落としているとしながらも、アジア経済が世界のAIの主要な中心地であることから、今後も中国にとどまり続けると述べた。

世界第2位の人口を抱えるインドでは、多くのグローバル投資家が初期の勝者を探して過去10年間に数百億ドル(数兆円)を投資してきた。Tiger Global、ソフトバンク、Falcon Edge Capital、Sequoia Capital Indiaが積極的に案件を発掘し、過去最高の評価額で企業を支援したことで、2021年のディールフローは大幅に増加した。

特にTiger Globalは、2021年インドでスタートアップ20数社を支援し、その多くはまだ事業の初期段階にある。2021年初めにTiger Globalは株主に対し、新しいファンドではインドを最重要視すると述べたと報じられている。

ここ数年、ソフトバンクはインドに注力してきた。ミスラ氏は、かつては投資を正当化することが困難だったインドにおいて「驚くべき好転」があったと述べた。

ソフトバンクは、インドの重要なレイルロードを建設するために、多くの若いインドのスタートアップの形成をサポートした。その投資先には、決済サービスのPaytmや格安ホテルチェーンのOyoなどがあり、いずれも新規株式公開を申請した

また、2018年にWalmartに過半数の株式を売却したFlipkartの支援者にもなった。ソフトバンクはその後、Flipkartにさらに資本を投入している。同じくソフトバンクが支援している配車サービス大手Olaも、2022年には公開市場を開拓する予定だ。「テック系のIPOには多くの需要が埋もれています」とミスラ氏は話した。

2021年、インドで過去最多の30億ドルを投入したソフトバンクは引き続き、多くのスタートアップへの投資を検討している。

ミスラ氏は、ソフトバンクがインドでフォーカスしている主要なテーマの1つとしてフィンテックを挙げた。同氏は、ブルームバーグが開催したバーチャル会議で、インドが5兆ドル(約570兆円)規模の経済大国になるという目標を達成するためには、金融分野でイノベーションを起こすことが重要だと述べた。

画像クレジット:Drew Angerer / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

Riot Gamesの元同僚二人が設立した新しい投資会社Patronが約103億円確保

Axie Infinityからのワンシーン(画像クレジット:Yield Guild Games)

テック関連のニュースを追っている人なら、ブロックチェーンベースの「遊んで稼ぐ」トレンドに関する記事が増えていることにおそらくお気づきだろう。これは個人が暗号資産によるゲームをし、そのゲームの中で資産やトークンを稼ぎ、それを「現実」のお金に替えて生計を立てることができるものだ。

「Axie Infinity」と呼ばれるベトナムの会社が、この動きを推進している。同社は非常に人気があるため、フィリピンには「Axie Infinity」でゲームを始めたい人向けにお金を貸すためだけに存在しているスタートアップがあるほどである(ゲームを始めるにはまずデジタルクリーチャーを購入する必要がある)。このお金の貸し手も、ゲームの背後にある会社も、どちらも現在Andreessen Horowitzから資金援助を受けている。

このトレンドは一過性のものではないと、Patronと呼ばれるアーリーステージ専門の新しい投資会社を創設したある共同創設者2人はいう。彼らは「Axie」のようなゲームが分散型「Web 3」と呼ばれる時代の最大の消費者になると信じている。

私たちは、先にPatronの創設者たちにもっと詳しく話を聞くためにメールをした。彼らのうちの1人、Brian Cho(ブライアン・チャオ)氏は、過去7年間Riot Gamesで過ごし、ビジネスおよび企業開発のグローバル責任者を務めた(また、彼は2012年からアンドリーセンホロウィッツに2年間勤務している)。共同創設者であるJason Yeh(ジェイソン・イェ)氏は、過去4年間、ドイツのベルリンで自ら投資会社を立ち上げ運営していた。またそれ以前はEU Esportsの責任者としての業務も含め、8年間Riot Gamesで働いていた。

2人には多くの共通の知り合いがおり、そうした人々がPatronの新しい投資家層を形成している。その中には、Andreessen Horowitzのパートナー数人や、Union Square VenturesのFred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏、 Initialized CapitalのGarry Tan(ギャリー・タン)氏、GGV CapitalのHans Tung(ハンス・タング)氏などが含まれる。2人は、Patronの今度の道筋についても語ってくれた。

TC:お2人はRiot Gamesで知り合ったのですよね。ご自身の会社を立ち上げるために、いつ頃独立する決心したのですか?

BC:私たちはRiot Gamesで同僚として知り合い、過去10年ほどにわたってさまざまな取引に共同で投資する中で、次第に関係を深めて行きました。Patronのコンセプト自体は長い間温めてきたのですが、ごく最近になるまで、私たちがもともと思い描いていた種類の会社を作ることができるようなマーケットニーズがありませんでした。

TC:Patronには著名な多くのVCが投資していますね。最初に投資してくれたのはどこですか?

BC:私たちは、ゲームに個人的に関与し、私たちの会社がシリーズAを順調に達成できるよう支援したいと考えてくれている投資家を引き入れることに意図的に力を入れました。また、これは予期していなかったのですが、私たちの初期のLPが、全体的な資金調達と市場で最も競争力のあるシード取引を勝ち取ることに非常に大きな影響を及ぼしたようです。結果的に 4カ月で9000万ドル(約103億円)を集めることができました。

LPの多くは、過去10年ほ多くの期間、同僚や共同投資家として親しい関係にあった人々です。したがって彼らに最初に関わってもらうという判断は理にかなったものでした。最初に資金提供してくれたのは、私たちのボスでメンターだったa16zのChris Dixon(クリス・ディクソン)氏やMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏、FirstMarkのRick  Heitzmann(リック・ヘイツマン)氏やAmish Jani(アミッシュ・ジャニ)氏といった人々、そしてRiot Gamesの創設者です。個人からの資金提供額平均は40万ドル(約4600万円)を超えており、多くの方々が個人的に多額の資金援助をしてくれました。

TC:機関投資家は関与していないのですか?Riot Gamesはどうでしょう?

JY:Horsley Bridge PartnersとInvesco が当社の最も重要な機関投資家です。Riot Gamesは当社には出資していません。というのも、私たちは資金を提供するための戦略よりも個人や機関を優先したいと考えていたからです。

TC:「遊んで稼ぐ」は「Axie」のおかげで今突如としてトレンドになっていますね。お2人はこのトレンドにどれくらいの期間注目してきたのですか?そして興味深いスタートアップは他にもありますか?そしてそれはなぜですか?

BC:私は約4年前にRiot Gamesを退社して、Cryptokittiesの発売に合わせてNFTゲーム関連の会社を立ち上げました。残念なことに、当時は消費者や投資家の関心が高くなかったので、タイミングがよくありませんでした。2018年に市場の景気は底を打った後は特にです。それでも、過去1年間で私たちにとって最も重要なシグナルだったのは「AxieInfinity」や「 NBATop Shot」など非暗号ユーザーをプラットフォームにオンボーディングできる製品に関するものでした。

さらに、BAYCやPunksといった暗号資産ベースの製品がメインストリームになってきました。Coinbase NFTマーケットプレイスでの230万件のウェイティングリストと、AAAおよびWeb 2ゲーム開発者がこの分野で会社を立ち上げるために現在の勤め先を退社するという流れは、すべてすばらしい兆候でした。

TC:現在までにいくつ投資を行いましたか?

JY:発表はまだされていませんが、いままでのところ4つの投資を行いました。

TC:トークンや株式を買うために資金を使う予定ですか?これらの異なる投資のモードについてどうお考えですか、そしてこれについて御社のLPはどのように考えているのでしょうか?

JY:はい、その予定です。私たちの最初の取引の1つは純粋なトークン取引です。私たちはこれらを1つ1つ評価しています。またこのトークン取引が、創設者が構築しようとしているスタートアップや製品のタイプに適した配慮の行き届いたものであるべきだ、と考えています。私たちはLPに対し、ゲームとWeb 3の強力な融合を考えると、Web 3やトークンに資金の相当な部分を使うことになると伝えてあります。それが、彼らがPatronでの投資活動に興奮している理由の1つです。

TC:投資の対象を考えたとき、ロサンゼルスに拠点があるということは、なにか特別な利点があると思われますか?

JY:はい。ロサンゼルスには現在アート、創作、ゲーム、エンターテインメント、暗号資産が色濃く交差しています。そうはいっても、私たちは仮想的な性質をもった会社であり、ロサンゼルスやシリコンバレーで存在感を発揮する一方、サービス提供は国際的なものになるでしょうし、取引の約半分はアメリカ国外のものになると予想しています。

私は過去10年間のほとんどをベルリンで過ごし、最近ロサンゼルスに戻ってきたところです。そしてブライアンも私もRiot Gamesでは、東アジアや東南アジアにおけるビジネスチャンスのために働いていました。私たちは、こうした地域のどこからでも世界的な消費者ビジネスを構築できると信じています

TC:出資の額面についてですが、あなたが投資する際の最低出資額、そして上限については、どのようにお考えですか?

JY:私たちは高い信念と集中型ポートフォリオモデルを持っています。つまり、私たちは量よりも質を重視し、シードステージでの機会を主導または、共同で主導することを目指しています。これは、私たちが活動するステージにおいて、主要投資家として早い時期に高い割合でオーナーシップを持つことを目標に100万ドルから400万ドル(約1億円から4億6000万円)の間で投資することを意味しています。

TC:興味深いプロジェクトをどこで見出すのですか?

JY:私たちのLPは私たちの取引の流れ、そして競争の厳しい取引を勝ち取るための最善のソースです。また、もちろん、TwitterやDiscordが私たちにとって創設者たちと繋がるのに自然な場所になるでしょう。また私たちはDAOsや緊密に結びついたエンジェルシンジケート(私たちもその一部ですが)といった新しい領域が私たちの取引の流れの重要なソースになることを期待しています。

原文へ

(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

Walden Catalystがディープテック系スタートアップに投資する約628億円のファンドを設立

Walden Catalystの創業者(左)リップ・ブー・タン氏と(右)ヨン・ソーン氏。

過去20年間、ディープテック(世界を変えるようなビジネスを構築するための科学技術関連のブレークスルー)からの資本の逃避が続いていると、Walden Catalyst(ウォールデン・カタリスト)は述べている。このベンチャーキャピタル(VC)は、データを「燃料」、AIを「エンジン」として、それらが人々の生活、仕事、遊び方を変革する能力を信じている。

Lip-Bu Tan(リップ・ブー・タン)氏とYoung Sohn(ヨン・ソーン)氏は、アーリーステージのディープテック企業、具体的にはビッグデータ、AI、半導体、クラウド、デジタルバイオロジーなどに投資するためにこのファンドを設立したと、Walden Catalystのマネージングパートナーであるソーン氏はTechCrunchに語っている。

サンフランシスコを拠点とするこのVCは、米国時間11月1日、申し込み過多となった5億5000万ドル(約628億円)のファンドのクロージングを発表した。同VCは、リミテッドパートナーの名前を公表していない。

半導体、クラウド、エレクトロニクス業界全体で実績のあるソーン氏とタン氏は、Zoom(ズーム)、Inphi(インフィ)、Berkeley Lights(バークレーライト)、Habana(ハバナ)、Nuvia(ヌビア)など、多くのテック企業に初期投資を行ってきた。

「Walden Catalystは、2021年初頭に設立された新しいファンドですが、Walden International(ウォールデン・インターナショナル)やSamsung Catalyst Fund(サムスン・カタリスト・ファンド)からの強力な遺伝子があります」。と語るのは、以前、Samsung Electronicsでコーポレート・プレジデント兼チーフ・ストラテジー・オフィサーの役職に就いていたソーン氏だ。タン氏は、Walden Internationalの創業者兼会長でもある。

Walden Catalystは、米国、欧州、イスラエルに焦点を当てている。これは、これらの3つの地域から、関心のあるディープテック分野で一貫したブレークスルーが見られるからだとヨン氏はいう。また、Walden Catalystのパートナーは、過去数十年にわたってディープテック産業に投資してきたことで、これらの国に深いネットワークを持っており、Waldenがトップの起業家を惹きつける画期的なアイデアを見つけるのに役立っているとヨン氏は付け加えた。

現在までに、Walden Catalystは、米国で3社、イスラエルで2社、EUで1社の計6社のディープテック関連のスタートアップ企業に投資している、とヨン氏は続けた。Walden Catalystのポートフォリオ企業には、Speedata(スピーダータ)、MindsDB(マインズDB)、AI21 Labs(AI21ラボ)の他、現在ステルスモードの他3社が含まれていると述べている。同社の最初のチケットサイズは、1ラウンドで数百万ドル(数億円)から2500万ドル(約28億5000万円)までとなっているとヨン氏は語った。

「データは絵を描きます。それは、情報を提供し、啓発するストーリーを語るものです。世界のデータ量は2年ごとに倍増し続けていますが、分析されているのは全データの約2%に過ぎず、意味のある洞察を集めるためにできることはたくさんあります。データの爆発的な増加を捉え、最終的に世界を変えるであろう、米国、欧州、イスラエルの次世代のディープテック起業家たちと協力できることに、私たちは興奮し、光栄に思います」。とソーン氏は述べている。

Shankar Chandran(シャンカール・チャンドラン)氏、Roni Hefetz(ロニ・ヘフェッツ)氏、Francis Ho(フランシス・ホー)氏、Andrew Kau(アンドリュー・カウ)氏の4人の追加パートナーによるチームは、ディープテック分野での投資やエグジットに関して数十年の経験を有している。

Walden Catalystは、事業運営と投資の経験を活かして、初期段階の起業家が次世代のビジネスを構築する際に、迅速なスケールアップとイノベーションを支援することを目指している。同社は、起業家こそが経済成長とイノベーションの中心であると考えている。

「私たちは、業界の次の波を担う夢想家たちと協力して、彼ら(起業家)がイノベーションを起こし、成長を加速するのを支援できることを楽しみにしています。起業家は我々の未来のエンジンであり、Walden Catalystはその旅を共有し、まだ到来していない多くの驚くべきブレイクスルーを支援するために設立されました」とタン氏は述べている。

Walden Catalyst は、国連の持続可能な開発目標に沿ったグローバルな課題に取り組む起業家を対象としたスタートアップコンテストであるエクストリーム・テック・チャレンジ(XTC)と密接な関係にある。Walden Catalystは、地球に意味のある影響を与えながら大規模なスケールに到達できる、次のすばらしい破壊的スタートアップ企業を見つけるというXTCのミッションを共有している。

原文へ

(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

グローバル化するスタートアップ市場にVCはどのように対応しているのか

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

親愛なるみなさんおはよう。良い週末をお過ごしだっただろうか。これからの数日間は、医者が眉をひそめるくらいの糖分を摂取するというのはどうだろう。結局、人間は最後には死ぬわけだし。そんな勢いをつけながら、さっそく仕事に取り掛かろう!

TechCrunchでは、ベンチャーキャピタルの動向を定期的に取り上げているが、スタートアップ市場があらゆる地域に拡大していることをうけて、VCもますますグローバルになる傾向がある。そのため、インドのスタートアップシーンの報告を強化するとともに、ご存知のようにアフリカ大陸で生まれるスタートアップにも注目しているのだ。

多くのスタートアップ企業が多額の資金調達を行っているため、すべてを把握するのは困難だ。しかし、グローバルな新しい現実への対応を続ける、新進のテクノロジー企業に注目しているのは、私たちだけではない。ベンチャーキャピタリストも同様だ。

近年のテクノロジーイノベーションのフラットな世界に合わせて、VCがオペレーションを変えていくのを目にするようになった。例えばより多くのパートナーを持つ大規模なファンドを設立して焦点を分散させたり、国や地域に特化したファンドを設立したりすることなどが挙げられる。

White Star(ホワイト・スター)は、そのような企業の1つで、ますます幅広い分野に焦点を当てている。最近このベンチャーグループは、3億6000万ドル(約410億4000万円)規模の3つめのファンドをクローズしたばかりだが、TechCrunchは数日前に創業者のEric Martineau-Fortin(エリック・マルティノー=フォルティン)氏にインタビューを行った。だがその話題の中心は、評価額や業界の話ではなく、ほとんどが地理的な話に終始した。

マルティノー=フォルティン氏が住むのはフランスとイギリスのほぼ中間に位置する小さな島、ガーンジー島だ。彼の最初のファンドが、アメリカとヨーロッパに焦点を当て、ほぼ半分ずつ投資を分けていたため、そうした中間的な場所に居を構えていることは都合が良かったのだ。

White Starの2つめのファンドは、地理的な範囲を広げて、アジアにも適度に焦点を当てたものだった。そしてグループの3つめのファンドは、アメリカ、ヨーロッパ、アジアがほぼ40/40/20の割合で構成されているとマルティノー=フォルティン氏は語る。

特筆すべきは、同グループがインド市場を積極的に開拓していないことだ。インドにどれだけの資本が流入しているのかを考えると、これは際立った特徴だ。しかし、White Starは、韓国と日本の市場に重点を置いているため、インドをリストの上位に入れなくともアジアに広く投資することが可能だ。

マルティノー=フォルティン氏と、他の市場についても意見を交わした。彼は、ブラジルのスタートアップシーン(Nubank[ヌーバンク]のIPOが迫っていることを考えると驚きではない)やメキシコについて、肯定的な意見を述べた。もっと簡単に言えば、中南米のベンチャーキャピタル市場は、その地に現在焦点を当てていない投資家からも関心を持たれているということだ。

世界のベンチャー市場は、若干のフラット化は見られるものの、依然として不均一な状態が続いている。CB Insights(CBインサイツ)のデータによると、2021年第3四半期には、米国では総額723億ドル(約8兆2400億円)のVC活動があった。一方アジア全体では502億ドル(約5兆7200億円)である。そしてヨーロッパは242億ドル(約2兆7600億円)、ラテンアメリカはわずか53億ドル(約6042億円)だった。つまり、新しいタイムゾーンを対象に加えようとする投資家は、先行者利益を得る可能性があるということだ。

今後は、米国、ヨーロッパ、アジアに3分の1ずつ分割して投資することも考えられる。そのうち、それが普通の分け方になるのだろうか。結局のところ、北朝鮮や中国などの一部の市場を除けば、インターネットはどこにでもあるのだから、場所を問わずいろいろな企業に資本を投入してみてはどうだろうか?

消費者投資の未来

ここからは、大きく舵を切って、英国の消費者投資について話をしよう。上手くまとめるつもりだ。

先週The ExchangeはFreetrade(フレートレード)を取材したが、Robinhoodの低調な業績報告を受けての電話だったので、それは幸先のよいタイミングだった。思い起こせば、Robinhoodの株価は、同社が前四半期比で大幅な減収を発表した後、アクティブユーザー数が減少し、投資アカウントの合計数が減少したことで下落した。

2021年第2四半期から2021年第3四半期にかけてRobinhoodに何が起こったのかを簡単に説明すると、同社のプラットフォームでの暗号取引がつまずいてしまい、精彩を欠いた収益となった。第4四半期は、第3四半期よりもさらに縮小することが予想されている。残念な話だ。

私は、Freetradeが自身のユーザーベースから期待できるものを、Robinhoodの結果が示してくれることを期待していた。しかし、FreetradeのAdam Dodds(アダム・ドッズ)CEOによれば、そのようなことは一切ないとの話だった。実際、同社は先日、ユーザー数が100万人に達したことを発表したが、それ以上に重要なのは、10月に入ってからこれまでに11万件の新規出資アカウントを確保したことだ。1カ月で同社の総ユーザー数が大きく増えることになった。

そうした決して不調とはいえない事実を前にして、ドッズ氏はFreetradeの中核市場であるイギリスでの開拓の余地がまだあると考えており、さらに数ヵ月後にはカナダ、オーストラリアなどへの事業拡大を計画している。併せて、そう、暗号資産の取引も。

取り上げるべきRobinhoodとFreetradeのもう1つの違いは、ユーザー数の伸びが異なることの他に、Freetradeはオーダーフローに対する支払いを行っていないことだ。その代わりに、同社はサブスクリプション、FX取引に対するわずかな手数料、そしてユーザーから預かっている現金が生み出す利子で収益を上げていると、ドッズ氏は説明する。

このサブスクリプションの要素は、会社の長期的な価値の鍵を握っていると私は考えている。それはなぜか?ソフトウェアからの定期収入は投資家にとって魅力的なものであり、ドッズ氏によれば、4分の1程度の顧客が有料版のサービスを選ぶという。

この比率がこのまま維持されるか、あるいは小幅な減少にとどまれば、Freetradeは巨大なソフトウェアビジネスを構築できるだろう。海外はもちろんのこと、国内でのさらなる普及を考えれば、この先も収益が生み出される筈だ。次にFreetradeが資金調達をするときにもっと詳しくお伝えする。

画像クレジット:Nigel Sussman

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

Boschが528億円を追加投資し半導体製造能力を増強、ドイツとマレーシアの3工場を拡張

ドイツのテクノロジー&パーツサプライヤーであるRobert Bosch GmbH(ロバート・ボッシュGmbH)は、自動車や家電製品、パソコン、電動工具などあらゆる製品の生産に大打撃を与えている半導体不足に対応するため、チップ製造設備の拡張にさらに4億ユーロ(528億円)を投資する。

2022年を目標に、ドイツのドレスデンとロイトリンゲンにあるウェハー製造工場と、マレーシアのペナンにある半導体部品製造工場の拡張を行う。ドレスデン工場は、同社史上最大の投資となる10億ユーロ(1320億円)を投じて6月に開設された。同工場では、より大きなサイズの300ミリウエハーを製造しており、1枚のウエハーに搭載されるチップの数も多い。

ロイトリンゲンでは1970年から半導体部品を製造しており、2022年と2023年に約5000万ユーロ(約66億円)の投資が予定されている。ロイトリンゲンでは「クリーンルーム」を4000平方メートル以上拡大し、合計1万4500平方メートルになる見込みだ。クリーンルームはシリコンウエハーが半導体チップになる特別設計のところだ。Boschによると、この拡張で150人の新規雇用を創出する。

ペナンでは、Boschは新しい半導体テストセンターを建設し、2023年に操業を開始する予定だ。このテストセンターの広さは当初約1万4000平方メートルとなる。しかし、同社はペナンに10万平方メートル以上の敷地を持っており、最終的にはそのすべてを開発する予定だ。

今回の巨額の投資は、半導体の供給不足が長期化し、自動車メーカーの経営陣や業界アナリストが2022年まで続くと予測している中でのものだ。Ford Motor Company(フォード・モーター)とGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)の幹部は、今週行われたそれぞれの第3四半期決算説明会で、半導体不足は2022年、場合によっては2023年まで続くとの見通しを示した。

自動車メーカーやその他の企業に製品を供給するだけでなく、電動工具などの製品に自社製のチップを使用しているBoschにとって、これは賢明な動きだ。また、2030年までにEUの半導体生産量を世界の供給量の5分の1に引き上げることで、域内のサプライチェーンの回復力を高めることを目指している欧州連合にとっても朗報となる。

画像クレジット:Bosch

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi)a

グッドイヤーとポルシェ投資部門が自動車が道路を「感じる」ようにするバーチャルセンシングTactile Mobilityに戦略的投資

イスラエルのスタートアップであるTactile Mobility(タクタイル・モビリティ)は、既存の車両センサーデータを利用して、自動車が道路を「感じる」ことを可能にし、クラウドプラットフォームを介して自動車と道路の両方に関する情報を提供している。同社は米国時間10月27日、2700万ドル(約30億円)のシリーズCを発表した。CEOのShahar Bin-Nun(シャハール・ビン-ナン)氏によると、同社はこの資金を、バーチャルセンサーのさらなる開発、製品ラインナップの拡大、クラウドプラットフォームの強化のために使う。目標を達成するために2021年、研究開発部門で最大20人の新規採用が必要になるという。


今回の資金調達により、Tactileの資金調達総額は4700万ドル(約53億円)になった。今回のラウンドはDelek Motorsが主導し、Goodyear Ventures(グッドイヤーベンチャーズ)とPorsche Venturesが戦略的投資を行い、Union Group、The Group Ventures、Zvi Neta(AEV)、Giora Ackerstein(ジョラ・アッカースタイン)氏、Doron Livnat(ドロン・リヴナト)氏も参加した。

ビン-ナン氏は「当社は基本的に、データの取得とデータの収益化の2つの部分に分かれています」とTechCrunchに語った。「データの取得は、シャシーのエンジンコントロールユニットに搭載されているTactile Processor(TP)と呼ばれる非常にユニークなソフトウェアで行います。TPを使用することで、安全性、パフォーマンス、運転の楽しさを向上させる、視覚に頼らない多数のバーチャルセンサーをOEMに提供することができます」と話す。

Tactileの2つめのビジネスモデルは、Tactile Cloud(TC)と呼ばれるクラウドプラットフォームを中心に展開されている。ここにバーチャルセンサーからのデータがアップロードされ、車両のDNAまたは路面のDNAを記述した触覚マップが作成される。これらのマップは、OEM、交通局、自治体、保険会社、タイヤ会社などに販売される。

ビン-ナン氏によると、Tactileが車両に搭載している23のバーチャルセンサーのうち、同社が取り組んだ主要なものはBMWとのタイヤグリップ推定で、これはクルマが走行している間に車両と道路の間のグリップを測定するというものだ。同氏によると、TactileのTPは年間250万台のBMW車に搭載されており、数百万台のクルマが受動的に路面をマッピングしていることになる。

タイヤのグリップ力を測定して道路をマッピングすることで、Tactileは道路の穴やひび割れ、滑りやすさ、降雪などをマッピングすることができる。これらの情報はリアルタイムに収集され、特定の地域を走行する他の車両にダウンロードされる。これにより、ドライバーは前もって劣悪な道路状況を知ることができ、安全性の向上につながる。また、分析結果は地図会社、道路管理者、車両管理者などの第三者が、道路のひどい場所を特定するためのレポートを介して共有することもできる。

Tactileは、クラウド上で収集したあらゆるデータで収益をあげるために、提携するOEM企業との売上高シェアモデルを採用している。ビン-ナン氏によると、Tactileはこれまでに自動車メーカー7社と30件以上の概念実証やパイロット試験を行ってきたが、量産レベルに達したのはBMWだけとのことだ。

「これまでは25人の会社でしたが、現在は40人になり、事業を拡大するには少し限界がありました」とビン-ナン氏は話す。「小さな会社がBMWのプロジェクトを進めていると、BMWへの実装や統合、要求を満たすためのテストなどで、すっかり忙しくなってしまうことが想像できるでしょう。これからは多くのOEMと並行して仕事ができるようにしたいのです」。

これは、より多くのサービスや知見を顧客に提供できるよう、他のセンサーも開発することを意味する。例えば、一部のOEMメーカーはタイヤの健康状態に関心を持っている。Tactileによれば、センサーは走行中のタイヤの溝の深さを極めて正確に測定することができ、タイヤの交換が必要かどうか、タイヤの種類や地形に応じてドライバーがどのような運転をすべきかをOEMに伝えることができるという。

「Goodyearがこの会社に投資した理由でもありますが、もう1つ重要なことはタイヤが硬すぎるかどうかを正確に測定できることです」とビン-ナン氏は話す。「彼らは今回のラウンドで投資した直後に、我々とテストを行いました。ですから、タイヤの健全度を測るバーチャルセンサーは、私たちが開発するバーチャル・センサーの中でも重要な種類のものであることは間違いありません。他のOEMは、重量推定や重心位置などを求めますが、これらは当社のバーチャルセンサーが感知し、機械学習や信号処理を使って多くのノイズを除去しています」。

その他のセンサーとしては、重量推定、アクアプレーニング、車両のヘルスセンサー、マイクロ衝突などがある。今回のシリーズCの資金調達により、Tactileはこれらのセンサーを構築し、OEMメーカーにアピールできるようにしたいと考えている。Tactileの目標は、すべての主要な自動車メーカーに入りこむことだ。そうすることで、大量のデータを収集、分析、収益化することができ、自律走行車など急成長中の技術との連携を図ることができる。

Goodyear VenturesのマネージングディレクターであるAbhijit Ganguly(アビジット・ガングリー)氏は声明文で「コネクテッドドライビングと自律走行は、ヒトとモノの移動の未来にとって重要な鍵となります。コネクテッドかつ自律走行の安全性と効率性を向上させるためには、タイヤデータが鍵となります」と述べた。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:Tactile Mobility

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

日本クラウドキャピタルがベンチャー株式のセカンダリーマーケット「FUNDINNO MARKET」提供に向け準備開始

日本クラウドキャピタルは10月26日、財務省関東財務局において第一種金融商品取引業への変更登録が10月22日に完了したと発表した。これに伴い、新たなサービスとして、ベンチャー株式のセカンダリーマーケット「FUNDINNO MARKET」(ファンディーノマーケット)の提供に向け、準備を進める。2021年12月1日に情報開示を目的としたサイトプレオープンを行い、12月8日のサービス開始を予定している。

FUNDINNO MARKETとは、個人投資家が、ベンチャー企業の株式をオンラインで注文可能となるサービス。日本証券業協会が提供している、地域に根差した非上場の企業などの株式売買・株式の発行により資金を集める仕組み「株主コミュニティ」制度を活用しているという。FUNDINNO MARKETにより、ベンチャー企業の株式を保有する個人投資家間の売買取引や、個人投資家からの資金を調達したい未上場企業の資金調達の場を創出するとしている。また、法人投資家の利用への拡大も順次進める。

ベンチャー企業への投資には、投資したい個人投資家と資金調達したいベンチャー企業との適切な出会いの場が限られており、同社は株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」(ファンディーノ)を通じてその機会を提供してきた。従来、ベンチャー企業の株式は流動性が乏しく、保持し続けることが一般的だったが、今回のマーケット創設に伴い、投資家はいつでもオンラインでの注文が可能となる。

FUNDINNO MARKETでは、ファン投資家の資金と応援により、IPOやM&Aなどのエグジットを目指すベンチャー企業だけでなく、地域経済を支える中小企業や社会課題解決を目指すソーシャルベンチャーなどが活用できるという。日本クラウドキャピタルは、同マーケットの創設により「フェアに挑戦できる、未来を創る」ことを実現するとしている。

FUNDINNOは、IPOやバイアウトを目指すベンチャー企業に1口10万円前後から投資できるサービス。審査を通過したベンチャー企業のみが投資家の募集を行えるという(投資家も投資適格性などの審査が必要)。FUNDINNOでは、普通株式や新株予約権への投資となり、投資先企業からのIR情報を定期的に確認できる。企業によっては投資に対してエンジェル税制を活用できる場合や、株主優待を設定している会社もあり、新しい投資体験が可能という。

ツイッターの元企業開発責任者で、現在はVCに身を置くセクソム・スリヤパ氏に話を聞く

Seksom Suriyapa(セクソム・スリヤパ)氏は、ベンチャーファームに身を置く運命にあったようだ。スタンフォード大学ロースクールを卒業後、2つの優良投資銀行で勤務し、その後サイバーセキュリティ企業McAfeeに上級企業開発部門の従業員として入社した。さらにヒューマンリソースソフトウェア企業SuccessFactorsで6年間勤務した後、2018年にTwitterに加わり、6月まで12人の企業開発チームを率いた。

意外なのは、スリヤパ氏はロサンゼルスに拠点を置くベンチャーファームUpfront Venturesに加わったばかりなのだが、もっと早い段階で飛躍を遂げなかったことだ。「きっかけは、私にぴったりの会社を見つけたことでした」とスリヤパ氏はいう。

サンフランシスコのベイエリアに住むスリヤパ氏に、Upfrontでの新たな役割と、創業者のYves Sisteron(イヴ・シスタロン)氏とともに成長ステージのプラクティスを拡大していくことについて話を伺った。

同氏はまた、最近少しばかり買収に拍車をかけているTwitterが買収についてどう考えているかについても明らかにした。我々の会話は長さのために軽く編集を加えている。

TC(TechCrunch):Upfrontに参加した経緯をお聞かせください。

SS(スリヤパ氏):(Upfrontで長年パートナーを務める)Mark Suster(マーク・サスター)氏と私は、ベンチャー業界におけるビジネス上の共通の知人の紹介で出会ったのですが、長い年月の間に同氏のことを知るにつれ、本当にすばらしい人物であることが分かりました。同氏はビジネスそのものに対して思慮深い、卓越したブランドビルダーです。(Upfrontは)ロサンゼルスをベンチャーマップに載せたと言えるかもしれません。

TC:同社は長い間アーリーステージ企業だった時期もありましたが、現在は「バーベル」戦略をとっています。あなたの新しい仕事は、ポートフォリオ企業が成長していく中で、その株式を維持できるようにすることですか?あなたはそのポートフォリオ以外で買い物をすることができますか?

SS:私にとってのミッションは、規模を拡大しようとしているUpfrontの100社を超える既存のポートフォリオ企業の中で最も優れた企業をサポートすることであると同時に、プラットフォーム上の通貨ではない企業に投資することでもあります。そして(後者では)今後ますます多くのことが起こると予想しています。

TC:Twitterは、あなたが在籍していた数年間、企業開発の分野でより活発に活動していました。理由を教えていただけますか?

SS:私が2018年に同社に参加したとき、約3年間CEOを務めていたJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は、パブリックな会話を促進するというコアミッションに真に注力していました。そのためにTwitterは多くの事業から身を引き、賢明な人たちからも距離を置くことになりました。

TC:2016年に従業員をレイオフしたと記憶しています。

SS:それから派生したことの1つは、新プロダクトの生産性がかなり下がったことです。そのため、私が加わる前の3年間、新規の買収はありませんでした。運動をしないと筋肉は萎縮します。(私の参加の前に)ジャック(・ドーシー氏)は経営陣を刷新しました。それまでは比較的重役の回転ドアのようなものでした。そして私は、数年間沈黙していた会社の開発を復活させるという使命に導かれました。(CFOの)Ned Segal(ネッド・シーガル)氏がGoldman Sachsの銀行員だった頃とSuccessFactorsに在籍していた頃のことを知っていたので、人づてにその役割について聞いたとき、私はコンタクトを取ったのです。

TC:Twitterは、ニュースリーダーサービスのScroll、ニュースレタープラットフォームのRevueを買収して、買い物を始めました。これらの決定はトップから下ってきたのでしょうか、あるいはその逆でしょうか?

SS:それを説明する最善の表現として、それはプロダクトニーズ主導型であった、と言い表せるでしょう。同社にはいくつかの異なる目標がありました。1つは、Twitterが広告主導型のビジネスであることに依存するのを多様化することでした。収益の80%は広告から来ているといった点です。

第2に、企業として機械学習(ML)と人工知能(AI)を強化すべきであるという、驚くほどの必要性が存在していました。会話の中の有害性を探す場合、そのために何万人もの人を雇うことはスケーラブルではありません。それを見つけるには機械学習が必要です。またTwitterは、ユーザーにとって最も興味深い会話を表示できるようにすることも上手く成し遂げていますが、そのためには、ユーザーがフォローしたり、読むことに時間を費やしたりしているものや、ユーザーがやり取りしているものからのシグナルを取得する必要があります。その中核はML AIです。(関連して)ジャック(・ドーシー氏)には、ネイティブ言語でツイートする人は誰でも、グローバルな会話の一部としてネイティブ言語で他の人と話すことができるようにする必要があり、そのために(自然言語処理)技術を大幅に拡充しなければならない、というビジョンがあります。

TC:コンシューマーアプリケーションへのフォーカスというものもありますね。

SS:それが3つ目の目標です。フォロワーとクリエイターがお互いとの会話に使えるツールは何でしょうか?そこで(Twitterは)ClubhouseのライバルであるSpacesを通じて音声を追加しました。SubstackのライバルであるRevueを買収しました。このようにして、Twitter上で見たり作成したりすることが期待されるコンテンツの種類に関係する多くのイノベーションが起こっています。

TC:これらの買収について、プロアクティブ(先見的)とリアクティブ(反応的)のどちらであると説明しますか?

SS:外から見ると、リアクティブに見えるかもしれませんが、実際には私たちは、Clubhouseが離陸する前からSpacesのようなものについて考えていました。注目すべきなのは、Twitterのような企業が、その領域に特化した企業と真っ向から対決するケイパビリティと新プロダクト領域を構築し、それがDay 1から競争力を持つようになったのを(Spacesの事例で)初めて見たことだと思います。TwitterがClubhouseを打ち負かしたのは、Android版にリソースが注ぎ込まれていたからであり、Twitterの仕組みやクリエイターがTwitterを利用しているという事実の多くが、このセグメントを勝ち抜くための絶好のスポットにTwitterを位置づけていると私は考えています。

Twitterはまた、ソーシャルメディアを利用しているときに警戒すべき有害性や事柄を発見するための膨大な専門知識を持ち合わせています。Clubhouseほどの規模の企業は、少なくとも創業当初は、そこまで到達するのにかなり苦労することになるでしょう。

TC:Twitterは、暗号資産や分散化など、非常に多くの関心事を抱えていますね。

SS:Twitterの優先事項に関しては、今後5年から10年の間に登場すると予想される技術の点では多くが秘匿状態にあります。ですが、暗号資産とそれを取り巻く基盤プロトコルのインパクトについて、そして人々のプライバシーを保護し、コンテンツがどこに保存されているかを人々が心配しなくて済むような分散型インターネットが置かれている、信頼性の低い無許可状態(の世界)にTwitterがどのように参加するかについて(に多くの考慮が払われている)でしょう。人々はTwitterを単なるコンシューマーアプリと捉えているかもしれませんが、内部には驚くべき多様性が秘められています。

TC:現在の規制環境の影響で、FacebookやGoogleに吸収されたかもしれない企業やプロジェクトと協業する上で同社は優位に立っていると思われますか?

規制環境という点では、FacebookとGoogleを等式から外しても、競争力のある買収者が存在し、それがステップアップして買い物をすることになりますので、この2社だけを考えるのは少し近視眼的だというのが現実的です。しかし、彼らが活動的だったときでさえ、私たちは(取引を)勝ち取っていました。私たちが買収した企業の多くはTwitterに入ることを自ら選んでいます。Twitterが象徴しているもの、そして組織を率いるジャック・ドーシー氏のやり方を気に入っていて、同氏が取っている方針と、同氏とその指導者たちが主唱している見解を信じているからです。

TC:あなたは今、まったく異なるブランドを体現しようとしています。Twitterで行ってきたことは、Upfrontを代表して取引を勝ち取る上でどのように役立つと思われますか?

SS:私は世界中にすばらしい起業家のネットワークを擁しています。自分のキャリアを通じて買収を支援したり、買収を試みたりした企業や、ビジネスを運営している人々のネットワークです。私はさまざまなステージにいるVCとも関係を持っていて、世界中のビジネスを積極的に見つけて(そして企業の開発チームに紹介して)います。Twitterにはダイバーシティとインクルージョンのプログラムがあり、今後数年間で25%のリーダーシップを多様化させようとしていることを知っている人もいるかもしれません。私のチームはしばしば、多様性のあるターゲットを見つけて獲得するための最善の方法を見出すことに関わってきました。私はまた、新興ファンドへの一連のLP投資を指揮しました。ラテンアメリカ系のファンドもあれば、女性が設立したファンド、黒人が設立したファンドもあり、地理的な観点からも多様で、遠く離れた場所にある企業をスカウトしているファンドもありました【略】。

TC:Twitterは直接投資も行っていますか?

SS:私たちは直接投資を行いましたが、(ファンドマネージャーを支援することは)よりレバレッジドなアプローチです。そのほとんどはシードファンドで、30社から60社への投資につながります。しかし、そうです、私は(インドの)ShareChatを含む遠く離れた場所の企業をスカウトしました。ShareChatでは、私は2年間取締役を務めています。(編集部注:TechCrunchは2021年初め、TwitterがShareChatの買収を検討していると報じた。同社はその後何度も資金調達を行っており、直近では投資家から30億ドル[約3300億円]近くの評価を受けている。)

TC:あなたは豊富なリレーションシップを築いていますが、他にも多くの組織が投資している中で、成長ステージの取引で競争するのは非常に厳しそうに思われます。どのように競うことを想定していますか?

SS:こうしたネットワークを利用して取引を見つけていくことは間違いないでしょう。Upfrontがすでに投資しているセクターに投資するつもりですが、最初のうちは、私が強い関心を持っている、クリエイターエコノミーのエコシステムを含む領域でダブルクリックしようと考えています。その多くにTwitterで携わっていましたし「Web 3.0」、この無許可の(Twitterもフォーカスしている進化の)地帯でもあるからです。しかし、私は自分を甘やかすことはしません。バリュープロポジションが何であるかを学ぶことにより、競合していくことができるのだと思います。Twitterでは、私の戦略は、スピードで勝利すること、人々をより早く知ること、そして(取引をまとめるために)Twitterのバリュープロポジションを強調することにありました。まだ実装していませんので私の(VC)戦略についてお話しできることはありませんが、メガファンドが提供しないような、起業家にとって最も興味深い何かを見つけ出す必要があるでしょう。

画像クレジット:Seksom Suriyapa

原文へ

(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

アルファベットCEOピチャイ氏がテック業界の規制とサイバーセキュリティへの投資を米国に要求

WSJ Tech Liveカンファレンスで行われたリモートワークの未来からAIの革新、従業員の政治活動、さらにはYouTubeにおける誤情報にいたるまで幅広い話題に及んだインタビューで、Alphabet(アルファベット)CEOのSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は、米国における技術革新の現状と新たな規制の必要性について自身の考えを述べた。特にピチャイ氏が強調したのは、米国の連邦レベルのプライバシー基準の創設で、ヨーロッパのGDPR(一般データ保護規則)に類似するものだ。さらに同氏は、中国の技術エコシステムが欧米市場からさらに切り離されていく中、米国がAI、量子コンピューティング、サイバーセキュリティなどの分野で有意を保つことがより一層重要であると提起した。

ここ数カ月、中国はテック企業の締め付けを行っており、テック企業による独占の阻止、顧客データ収集の制限、およびデータセキュリティを巡る新たなルール制定など、新たな規制がいくつも施行されている。Google(グーグル)を含め多くの米国テック企業は中国で中核サービスを提供していないが、提供中のいくつかの企業は撤退を始めている。たとえばMicrosoft(マイクロソフト)は2021年10月、LinkedIn(リンクトイン)を中国市場から引き上げた

関連記事:マイクロソフトがLinkedInを中国市場から撤退

ピチャイ氏は、こうした欧米テック企業の中国との分離は今後増えていく可能性があると語った。

またピチャイ氏は、米国と中国が競合する分野で先行することが重要だと語り、AI、量子コンピューティング、サイバーセキュリティなどを挙げて、Googleによるこれらの分野への投資が、政府による「基礎研究開発財政支援」がやや後退したタイミングで行われたことを指摘した。

「政府のリソースは限られているので焦点を絞る必要があります」とピチャイ氏は話した。「しかし私たちが恩恵を受けているのは20~30年前の基礎的投資からです。現代テクノロジーの多くがこれに基づいており、少々慣れきっているところもあります」と彼は語った。「だから私は、半導体サプライチェーンと量子コンピューティングでリードするために、政府は重要な役割を果たすことができると考えています。それは政策面だけでなく、私たちが世界中から優れた人材を集めたり、大学と協力して長期的な研究分野を作り出すことを可能にすることです」とピチャイ氏は付け加えた。それらの分野は民間企業が最初から焦点を当てられるものではないかもしれないが、10年20年かけて実行できると彼は言った。

国境を超えるサイバー攻撃が増加する中、ピチャイ氏は、サイバーワールドのための「ジュネーブ協定」のようなものが必要な時が来たと語り、政府はセキュリティと規制の優先順位を上げるべきだと付け加えた。

同氏は米国における新たな連邦プライバシー規制に賛成する意見を明確に表明した。これはGoogleは過去何度にもわたって強く要求してきたもので、ヨーロッパのGDPRのようなものを想定している。

「GDPRはすばらしい基盤となっていると私は思います」とピチャイ氏は言った。「私は米国に連邦レベルのプライバシー基準ができることを強く望んでおり、州ごとにバラバラな現在の規制を懸念しています。そのために複雑さが増しています」と彼は続けた。「大企業はさまざまな規制に対応して自らを守ることができますが、小さな会社を始めるためには大きな障壁です」。

これは、Facebook(フェイスブック)CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が規制を求めた際にも再三指摘された問題だ。米国テック業界の規制が強化されることは、FacebookやGoogleのように規制のハードルを超えるためのリソースをもつ大企業に有利に働く。しかし、国が単一の基準を定めることによって、巨大テック企業はただ1つの規則と戦い、米国各州に点在する多くの規則に対応する必要がなくなる。

ピチャイ氏は消費者のプライバシーをセキュリティに結びつけ「プライバシーの最大のリスクはデータが不正アクセスされること」であるとも指摘した。Google最大のライバル、Amazon(アマゾン)のゲーム・ストリーミングサイトであるTwitch(トゥイッチ)がわずか数日前にハックされた後だけに興味深い発言だ。

テック業界の規制でどこに線を引くのかについてピチャイ氏は、法律はオープンインターネットを侵害すべきではないと語った。

「インターネットがうまくいっているのは、相互運用可能で、オープンで、国境を越えた利用が可能で、国境を越えた取引を推進しているからだと私は思っています。だから私たちがインターネットを進化、規制していく上で、こうした特性を維持していくことは重要だと考えています」と同氏は話した。

CEOは他にも、パンデミックが企業カルチャーに与える影響、従業員の政治活動、YouTube上の誤情報などAlphabetとGoogleが直面しているさまざまな問題に関する質問に答えた。

YouTubeの問題についてピチャイ氏は、体験の自由に対する誓約を表明しつつも、最終的には、会社がコンテンツクリエイターとユーザーと広告主のバランスを取ろうとしていることに言及した。同氏は、多くのブランド広告主が自分たちの広告がある種のコンテンツと並んで表示されることを望んでいないと語った。本質的に、YouTubeの広告を基盤とする経済には、誤情報問題の解決に役立つ可能性があることを同氏は示唆した。

「自由市場ベースで考えれば、自分の広告がブランドを損なうと思うコンテンツと並ぶことを広告主は望まない、ということができます。ある意味で、エコシステムのインセンティブが時間とともに正しい判断を後押しすることが実際にあるのです」。

しかしピチャイ氏は、YouTubeは自らがコンテンツの判断を下すことで、パブリッシャーのように振る舞っているのではないか、というインタビュアーの質問はかわした。

ピチャイ氏はパンデミック下におけるAlphabetの企業カルチャーとオフィスへの復帰についても語り、3-2モデル(3日対面と2日リモート)がよいバランスをもたらすと言った。対面勤務日によって共同作業とコミュニティが可能になり、リモート勤務日によって社員は長時間通勤など対面勤務につきものの問題をうまくやりくりできる。しかし、インタビューの別の部分では、ピチャイ氏は少なくなった自身の通勤時間を懐かしんだ。そこは「深く考える」ための空間だったと彼は言った。

従業員の積極活動について。近年多数かつ多様化した従業員が幹部の下した決定と対立する意見を共有することが頻繁に起こり、多くの積極的活動が見られている。ピチャイ氏はこれをビジネスにおける「新常態」だという。しかし、これはGoogleにとってまったく新しいことではないとも指摘した(たとえば数年前、Google従業員は会社が中国市場向けに検閲機能付き検索エンジンを開発していることに抗議した)。

「最近慣れてきたともいえます」とピチャイ氏は語り、会社としてできる最善のことは、決定したことを説明しようとすることだと語った。

「私はこれを会社の強みと考えています、高いレベルで。会社のやっていることをそこまで深く気にかけるほど熱心な従業員がいるのですから」と彼は言った。

画像クレジット:Kenzo Tribouillard / Getty Images

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【コラム】ESG目標達成の鍵を握るのは取締役会やCEOではなく技術チームのリーダー

スタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)や技術チームのリーダーは、会社創立のその瞬間からESG(Environmental[環境]・Social[社会]・Governance[企業統治])を重要事項として扱う必要がある。なぜなら、投資家が、ESGを重視するスタートアップ企業を優先的に評価して、持続可能性を重視した投資を行う傾向が高まっているからだ。

あらゆる業界にこの傾向があるのはなぜだろうか?答えは簡単だ。消費者が、持続可能性を重視しない企業を支持しなくなっているからである。IBMの調査によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、消費者の持続可能性(サステナビリティ)への関心と、持続可能な未来のために自身が支出することを許容する意識が高まったという。また、米国がパリ協定に復帰し、最近では気候関連への取り組みに関する大統領令が出されるなど、気候変動に対する米国政府の動きも活発化している。

ここ数年、長期的なサステナビリティ目標を設定する企業が増えているが、CEOやCSO(最高サステナビリティ責任者)が設定する目標は、往々にして長期的かつ野心的なものだ。ESGプログラムの短期的、中期的な実施は運営チームや技術チームに委ねられている。

CTOは、計画プロセスにおいて重要な役割を担っており、組織がESG目標を飛躍的に向上させるための秘密兵器となり得る。ここからは、CTOと技術チームのリーダーがサステナビリティを実現し、倫理的にポジティブなインパクトをもたらすためにすぐにできることをいくつか紹介する。

環境負荷を軽減する

企業のデジタル化が進み、より多くの消費者がデバイスやクラウドサービスを利用するようになった現在、データセンターが消費するエネルギーは増加し続けている。実際、データセンターの電力使用量は全世界の電力使用量の推定1%を占めているといわれているが、International Data Corporation(インターナショナル・データ・コーポレーション)の予測によると、クラウドコンピューティングを継続的に導入することで、2021年から2024年にかけて10億トン以上の二酸化炭素の排出を防ぐことができるという。

コンピューティングワークロードの効率化を図る。まず、コンピューティング、電力消費、化石燃料による温室効果ガス排出の関連性を理解することが重要だ。アプリやコンピューティングワークロードの効率化を図ることで、コストとエネルギー消費を軽減し、ワークロードの二酸化炭素排出量が削減することができる。クラウドでは、コンピューティングインスタンスの自動スケーリングや適正サイズの推奨などのツールを利用して、需要に対してクラウドVM(バーチャルマシン)を過剰に実行したり、オーバープロビジョニングしたりしないようにすることに加え、このようなスケーリング作業の多くを自動的に行うサーバーレスコンピューティングに移行することも検討の余地がある。

コンピューティングワークロードを二酸化炭素排出原単位(Carbon Intensity、一定量の生産物をつくる過程で排出する二酸化炭素排出量)の低いリージョンに配置する。これまでクラウドのリージョンを選択する際には、コストやエンドユーザーに対する遅延などの要素が重視されていた。しかし現在は、二酸化炭素排出量も考慮すべき要素の1つである。リージョンのコンピューティング能力が同程度でも、二酸化炭素排出量は異なることが多い(他の地域よりも二酸化炭素排出量の少ないネルギー生産が可能な地域は、二酸化炭素排出原単位が低くなる)。

そのため、一般的に、二酸化炭素排出原単位の低いクラウドリージョンを選択することは、最も簡単で効果のあるステップである。クラウドインフラのスタートアップ企業、Infracost(インフラコスト)の共同創業者かつCTOのAlistair Scott(アリスター・スコット)氏は、次のように強調する。「クラウドプロバイダーは正しいことを行い、無駄を省きたいと考えるエンジニアを支援できると思います。重要なのは、ワークフローの情報を提供することです。そうすれば、インフラプロビジョニングの担当者は、デプロイする前に、二酸化炭素排出量への影響と、コストやデータレイテンシーなどの要素を比較検討することができます」。

もう1つのステップは、Cloud Carbon Footprintのようなオープンソースソフトウェアを使って、特定のワークロードのカーボンフットプリントを推定することである(このプロジェクトにはThoughtWorksが協賛している)。Etsy(エッツィー)も、クラウドの使用情報に基づいてエネルギー消費量を推定できるCloud Jewelsという同様のツールをオープンソースで提供していて、Etsy自体もこれを利用して「2025年までにエネルギー強度を25%削減する」という目標に向けた自社の進捗状況を把握している。

社会的インパクトを作り出す

CTOや技術チームのリーダーは、環境への影響を軽減するだけでなく、社会的にも直接的で意義のある、大きなインパクトをもたらすことができる。

製品の設計に社会的な利益を盛り込む:CTOや技術系の創業者であれば、製品ロードマップで社会的利益を優先させることができる。例えばフィンテック分野のCTOは、十分な金融サービスを受けられない人々が借り入れをする機会を拡大するための製品機能を盛り込むことができるが、LoanWell(ローンウェル)のようなスタートアップ企業は、主に金融システムから排除されている人々が資本を利用できるようにして、ローン組成プロセスをより効率的かつ公平にしようとしている。

製品デザインの検討にあたっては、有益で効果的なデザインにすると同時に、サステナビリティも検討する必要がある。サステナビリティと社会的インパクトを製品イノベーションの中核として捉えれば、社会的な利益に沿うかたちで差別化を図ることができる。例えばパッケージレスソリューションの先駆者であるLush(ラッシュ)は、スマートフォンのカメラとAIを利用して商品情報を見ることができるバーチャルパッケージアプリ「Lush Lens」で、美容業界で過剰に使用されている(プラスチック)パッケージに取り組んでいる。同社のプレスリリースによると、Lush Lensは200万回の利用を達成したという。

社会的な弊害を避けるためには、企業は責任あるAIプラクティスという文化を持つ必要がある:機械学習と人工知能は、製品やおすすめコンテンツの表示、さらにはスパムフィルタリング、トレンド予測、その他「スマート」な行動に至るまで、高度でパーソナライズされたデジタルエクスペリエンスの中心となり、誰もが慣れ親しむものとなった。

そのため、責任あるAIプラクティスに取り組み、機械学習や人工知能がもたらす利益をユーザー全体で実現すると同時に、不慮の事故を回避することが重要である。まずは、責任を持ってAIを利用するための明確な原則を定め、その原則をプロセスや手順に反映させることから始めよう。コードレビュー、自動テスト、UXデザインを考えるのと同じように、責任あるAIプラクティスのレビューを考えてみよう。技術系の創業者や技術チームのリーダーは、こういったプロセスを確立することができる。

企業統治へのインパクト

企業統治の推進には、取締役会やCEOだけではなく、CTOも重要な役割を担っている。

多様性、包括性を備えた技術チームを構築する:多様性のあるチームが、1人の意思決定者よりも優れた意思決定を行う確率は87%である。また、Gartner(ガートナー)の調査では、多様性のある職場では、パフォーマンスが12%向上し、離職率が20%軽減するという結果が出ている。

技術チームの中で、多様性、包括性、平等性の重要性をしっかりと示すことが重要であるが、この取り組みにデータを活用する、というのも1つの方法である。性別、人種、民族などの属性情報を収集する自主的な社内プログラムを確立できれば、このデータは、多様性のギャップを特定し、改善点を測定するためのベースラインとなる。さらに、これらの改善点を、目標と主要な成果(objectives and key results、OKR)など、従業員の評価プロセスに組み込むことも検討し、HR部門だけでなく、全社で全員が責任を担うようにする。

これらは、CTOや技術チームのリーダーが企業のESG推進に貢献する方法を示すほんの一例である。まずは、会社設立と同時に、技術チームのリーダーとして何らかのインパクトをもたらすことができるたくさんの方法を認識することが重要だ。

編集部注:本稿の執筆者Jeff Sternberg(ジェフ・スターンバーグ)氏は、Google CloudのOffice of the CTO(OCTO)のテクニカルディレクター。

画像クレジット:Maki Nakamura / Getty Images

原文へ

(文:Jeff Sternberg、翻訳:Dragonfly)

米国で大麻関連企業への投資が急増、2021年の平均投資額は昨年比165%増に

大麻関連企業のエクイティ資金調達額が、急速に過去最高を更新している。Crunchbaseのデータを分析すると、大麻企業はエクイティ資金調達でより大きな額の小切手を手にしていることが明らかになった。ラウンド数はシードラウンドから後期段階のラウンドへと移行しているようだ。

米国時間10月14日、大麻関連のテクノロジー企業として業界をリードするDutchie(ダッチー)が、新たに大規模な資金調達を行ったというニュースが報じられた。今回の3億5000万ドル(約400億円)を調達したシリーズDラウンドは、2021年3月に実施された2億ドル(約230億円)のラウンドに続くもので、同社の評価額は37億5000万ドル(約4290億円)に達した。Dutchieはこれまでに総額6億300万ドル(約690億円)を調達している。

関連記事:大麻の販売関連サービスのDutchieが新たな資金調達で評価額は前回の8倍に

Dutchieの他にも、2021年には大規模な資金調達ラウンドを実施する大麻関連企業が続出している。例えば、Jane Technologies(ジェーン・テクノロジーズ)は8月にシリーズCラウンドで1億ドル(約114億円)を調達し、Kadenwood(カデンウッド)は5000万ドル(約57億円)を調達したシリーズBをクローズした。また、私募投資で1億ドルを調達したMedMen(メッドメン)のように、IPO後の株式に目を向けている企業もある。Weedmaps(ウィードマップス)の親会社は、SPACと同時に3億2500万ドル(約372億円)の投資を受けている。

2021年の最初の5カ月間に大麻関連企業が実施した資金調達は132件で、その1件あたりの平均調達額は1500万ドル(約17億円)にのぼる。しかし、資金調達の激しさはその後も加速し、直近の5カ月間に大麻関連企業は73件の資金調達を実施しているが、平均調達額は2800万ドル(約32億円)と86%も増加した。これらの中には、シリーズDまでのプレシード投資の他、IPO後のエクイティ資金調達、エクイティクラウドファンディングなどが含まれる。

2020年の水準と比較すると、大麻関連の平均投資額は、2020年の750万ドル(約8億5800万円)から、2021年には1990万ドル(約22億7600万円)へと165%増加している。資金調達イベントの数も飛躍的に増加しており、2021年は現在までの10カ月足らずの間に、205件の資金調達ラウンドが報告されている。2020年は通年で176回だった。

投資額は、ほぼすべてのステージで増大している。Crunchbaseのデータによると、2021年のシードステージの平均投資額は186万ドル(約2億1300万円)で、2020年の平均約100万ドル(約1億1400万円)から85%増加。シリーズBとシリーズCの投資額は、それぞれ128%と154%増加し、平均投資額は1896万ドル(約21億7000万円)と1億167万ドル(約116億3000万円)となっている。ただし、この傾向には1つだけ例外がある。シリーズAの投資額は、前年同期比で25%減少しているのだ。全体的な傾向は増加しているにも関わらず、特定のステージのみが減少している明確な理由は見当たらない。

大麻は依然として連邦政府には違法薬物とされているが、企業は増え続ける規制に直面しながらも成長するための新しい方法を見出している。新型コロナウイルスの流行はそれを後押しした。感染流行初期の頃は、全国の薬局が必要不可欠なビジネスとみなされ、消費者受容が急激に高まった。2021年後半には、以前にも増して多くの米国人が大麻に慣れ親しんでおり、これには明らかに投資家も含まれている。

画像クレジット:Kimberly Delaney / Getty Images

原文へ

(文:Matt Burns、翻訳:Hirokazu Kusakabe)