役員が自社を批判する?マーク・ザッカーバーグはピーター・ティールを恐れるべきか?書評「The Contrarian」

億万長者の投資家、Peter Thiel(ピーター・ティール)氏について書かれた「The Contrarian(逆張り投資家)」。Bloomberg Businessweekの特集編集者で、技術系の記者でもあるMax Chafkin(マックス・チャフキン)氏が著し、9月に発売されたばかりのこの新書に関するレビューや議論を目にした人も多いだろう。

それも当然のことだ。ピーター・ティール氏は米国でますます存在感を増し、チャフキン氏は魅力的なストーリーテラーである。謝辞には、15年間の取材を元にこの書籍をまとめ「何百もの情報源」から情報を集めた、と書かれている。

詳細を知るために、TechCrunchは先に、チャフキン氏に取材を申し込んだ。取材では、ティール氏(チャフキン氏はティール氏とオフレコで話をしている)が私生活をどの程度明かしているか、チャフキン氏が「トランプという人物が過小評価されていた、つまりイデオロギー的な部分もあるが、商売上手でもあった」とする理由、チャフキン氏のレポートがティール氏の信念を「極めて矛盾している」とするのはなぜか、など、活発な議論が行われた。また、ティール氏とMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏との関係(Facebookの最初の投資家はティール氏であり、それ以来、良くも悪くもティール氏との関係を維持している)についても議論があった。

興味があれば、約30分のインタビュー(抜粋)を観て欲しい。TechCrunchは、Facebookがアメリカ社会や人類に与えた影響を鑑みるに、ザッカーバーグ氏とティール氏の関係は非常に興味深く、重要であると考えている。ここでは、ザッカーバーグ氏について語られたパートを抜粋、編集の上紹介したい。

TC(TechCrunch):ティール氏の最大かつ最も重要な賭けはFacebookだったということですが、本の中で、ティール氏は2005年から取締役としての立場を利用して、ザッカーバーグ氏に誤報も含めて何でもありの姿勢をとるように説得したと示唆していますね。また、ティール氏とザッカーバーグ氏の間には以前から摩擦があり、特にティール氏がトランプ主義を取るようになってからは、そのような状況が続いているとも指摘しています。ティール氏は今後もFacebookの役員を続けていくと思いますか?それとも彼は一歩下がった立場にあるのでしょうか?

MC(マックス・チャフキン):この本には、Facebookにまつわる話が出てきます。Facebookが上場したとき、株価が暴落し、ティールはすぐに株を売却しましたが取締役にとどまりました。本の中で、Facebookの社内で行われた、社員を活気づけるためのミーティングのことを書いています。自分が働いている会社の株価が下がるということは、(その人にとって)世界で最も憂鬱なことなのですから。当時は誰もが毎日損をしていました。マスコミにも叩かれる。消防士や教師からも訴えられる。とにかく悪いニュースのオンパレードでした。そこで、皆を励まそうと講演者を呼び、ピーター・ティールが講演を行いました。講演の中で、ティールは「空飛ぶ車が実現するはずだったのに、Facebookしか実現しなかった」と話しました。彼はいつも「空飛ぶ車が実現するはずだったのに、140文字しか手に入らなかった」と言ってTwitter(ツイッター)を攻撃しています。聴衆も、ザッカーバーグも「最も長く役員を務め、メンターであり、私のビジネス哲学を導いてくれた人にお前は最低だと言われた」ようなものです。

ザッカーバーグは実はティールのそういうところを尊敬しているのではないかと思っています。ザッカーバーグの立場にあれば、正直なフィードバックを得ることは非常に難しい。ティール以外に「あんたは最低だよ」という人はいないでしょう。あなたがいうように、ティールはここ数年、何度も、慎重に、このようなことをしています。

ティールは技術の独占や技術力について、Google(グーグル)を攻撃することがよくあります。Facebookはそれで安心するかもしれませんが、たいして役には立たないでしょう。なぜなら、FacebookとGoogleは非常によく似た企業であり、一方を規制するならば、もう一方も規制されることになるからです。ザッカーバーグがそのことを喜んでいるとは思えません。

ティールは、シリコンバレーの右翼活動家たちのプロジェクトをさまざまな場面で支援してきました。保守活動家のJames O’Keefe(ジェームズ・オキーフ)などは、FacebookやGoogle、Apple(アップル)などの超大手ハイテク企業の偽善を暴こうとしていますが、ティールはそうした活動を陰でサポートしてきました。

しかし、ティールは公の場で右翼活動家たちを支援することも多くなっています。今、彼は米国上院議員選挙で2人の候補者を支援しています。アリゾナ州のBlake Masters(ブレイク・マスターズ)とオハイオ州のJD Vance(JD・ヴァンス)はどちらも共和党の予備選に出馬していますが、ティールはそれぞれの候補者を支援する特別政治行動委員会(super PAC)に1000万ドル(約11億1000万円)の寄付を行っています。彼らは常にFacebookを攻撃しています。知性的な攻撃や疑問の提起だけではありません。ザッカーバーグを個人的に攻撃しているのです。(ティールが資金提供した)JD ヴァンスの広告には、暗い色調で「この国には手に負えないエリート層がいる」とあり、そこにはマーク・ザッカーバーグの顔が載っています。もし私がザッカーバーグだったら、これは間違いなく頭痛の種ですね。

一例を挙げると、(2017年に)ザッカーバーグはティールの辞任について話し合っています。ティールは辞任せず、ザッカーバーグも彼を解雇しませんでしたが、少なくとも多少の緊張感はあったのでしょう。ティールの価値が下がったか?というのは実に鋭い質問です。Biden(バイデン)が大統領となり、民主党が大統領と両院を支配している状況では、ティールがもつ右派とのつながりの価値は下がっています。とはいえ、2022年に共和党が上院を奪還する可能性は非常に高く、その上院議員の中にティールと非常に近い人物が存在することになる可能性があります。そうなればティールの価値は飛躍的に高まるでしょう。

TC:本の中で、ティール氏と親しく、彼を尊敬している人たちの多くが、彼を恐れていると書いていますね。マーク・ザッカーバーグ氏はおそらく世界で最もパワフルな人物であるにもかかわらず、あなたの感覚では「ティール氏を恐れている」ということでしょうか?

MC:ザッカーバーグは(そうしたければ)ティールを解雇することができると思います。ザッカーバーグは手強く、大金を持っています。ザッカーバーグはティールと争う資金もありますし、反発する余裕もあるでしょう。しかし、彼がそうしたいかどうかは疑問です。というのも、現在もティールが役員であり、公然と批判を行うことができる理由は、ザッカーバーグが彼を解雇した場合、巨額の代償を払うことになるという事実に関係しているからです。おかしな話ですが。

ティールは、トランプ大統領時代、ザッカーバーグの重要なサポーターでした。保守層では、次のようなミーム(ネタ)が流行っていました。「Facebookはドナルド・トランプを憎むリベラルな従業員によって運営されているリベラルな企業で、組織的に右翼的な視点を差別している、社内では左翼の利益を促進している……」というものです。しかし、ザッカーバーグにはそれに対するすばらしい回答がありました。「うちの役員にはティールがいる。ただの共和党員じゃない、George Bush(ジョージ・ブッシュ)みたいな中道の保守派でもない。うちにいるのはピーター・ティールだ。根っからのトランプ主義者、Steve Bannon(スティーブ・バノン、トランプ政権時の元首席戦略官)も真っ青なクレイジーなやつだ」。Facebookが使える、まさしく強力な主張です。

ピーター・ティールが資金援助しているJosh Hawley(ジョシュ・ホーリー、共和党上院議員)や、Ted Cruz(テッド・クルーズ、同じく共和党上院議員)のような人物が現れて、Facebookを攻撃するとしたら?もし(ティールが)辞めてしまったら、もし彼が解雇されてしまったら、そしてそれが記事になってしまったら?Facebookは厳しい批判にさらされるでしょう。

ザッカーバーグにとって存亡に関わるような問題ではないとは思います。しかし、Facebookの価値について埋められない意見の相違があったとしても、友人であり、役員でもあるピーター・ティールを残しておいたほうが、ザッカーバーグにとっては快適なのだと思います。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

著名投資家のケビン・ライアン氏、「ビッグマネーはヘルスケアに」

Kevin Ryan(ケビン・ライアン)氏は、適切なタイミングで適切な場所に居合わせ、大いに裕福になった。オンライン広告ネットワークのDoubleClick(ダブルクリック)に12番目の社員として入社し、最終的にはCEOとして経営した(その後、2度にわたって買収された)。また、ソフトウェア会社のMongoDBをはじめとする数多くの企業を共同で創業した。同社は現在、上場企業として約300億ドル(約3兆3600億円)の価値がついている(ライアン氏は、いまだに「自分の株式の半分以上」を同社の株式として保有しているそうだ)。

先日、TechCrunchは、同氏の最大かつ最新の賭けであるヘルスケアテックについて話を聞いた。先日お伝えしたように、同氏の投資会社であるAlleyCorpは、同氏の資金を中心に1億ドル(約112億円)を、この分野の企業の立ち上げや資金調達に投じている。加えて、すでに約20件の関連投資を行った。TechCrunchは、同氏がなぜこれほどまでにこの分野に関わるようになったのか疑問に思った。以前に携わっていたプロジェクトはほとんど関連性がなかったからだ。ここでその対談を聞くことができるが、以下にその一部を紹介するので一読してほしい。

TC:注意を払ってこなかった人にとって、あなたがヘルスケアテックに極めて力を入れていることは驚きだと思います。最初に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

KR: 私がAlleyCorpの立場でいつも行っていることの一つは、5〜10年後のトレンドに賭けるということです。ある領域は過密状態で、そこにはもうチャンスがなく、あらゆることが既に着手されていると思うことがあります。一方で、大きなチャンスがあると思うこともあります。2、3年前から、ニューヨークのヘルスケア全般で、大きなチャンスがあると感じていました。というのも、医療システムにはうまく機能していない部分がたくさんあるからです。コストは非常に高く、電子記録は優れているとは言えず、極めて非効率的です。私たちの多くが、医療制度全体に不満を持っていますが、これはチャンスでもあります。

TC:あなたがここで管理しているのは、ほとんどご自身の資金です。なぜ何十億ドル(何千億円)といった規模で外部資本を投資のために受け入れないのでしょうか。現在の市場なら、実績のある起業家や投資家として、それが可能なのではないでしょうか。

KR:エコシステムの中で、私が好きで、だいたいにおいてストレスがなく、最もよく知っている分野がアーリーステージだということもあります。私が30億ドル(約3360億円)の企業に投資して、それが100億ドル(約1兆1200億円)になることを期待していると思われますか。そういう風には動きません。最もリスクの高いアーリーステージにいたいと思っています。今年初めに6300万ドル(約70億5300万円)の資金を調達したNomad Healthや、9月に1800万ドル(約20億1600万円)の資金を調達したPearl Healthなど、AlleyCorp社内で多くの企業をインキュベートしています。

新しい会社を立ち上げるときには、150万〜200万ドル(1億6800万円〜2億2400万円)の資金を投入します。その後、外部から資金を調達し、多額の資金が必要な場合は多額の資金を調達し、投資を続けます。1社あたりの投資額の上限は1000万ドル(約11億2000万円)程度としています。とはいえ、チャンスはいくらでもあります。だからこそ、私はこの分野で勝負したいのです。

TC:そのモデルは、1億ドル(約112億円)のシードラウンドが行われるようになった世界でも通用するのでしょうか。

KR:その変化した環境が私たちを助けてくれます。例えば、Pearl Health。同社には150万ドル(1億6800万円)ほどの資金を投入して、大きな株式ポジションからスタートしました。会社にもよりますが、だいたい30〜60%を出資します。経営陣の持ち分が大きければ私たちが小さな割合を持つことになりますし、共同創業者を私たちが派遣するなら大きなポジションになります。

そして、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のような会社が、大きなバリュエーション、大きなステップアップで入ってくれば、私たちはそのラウンドにさらに300万ドル(約3億3600万円)か400万ドル(約4億4800万円)を投入しますが、誰が入ってくるかを選ぶのは私たちです。ところで、もし4億ドル(約448億円)規模のラウンドがあったとしたら、その時点で私たちは投資をやめるでしょう。シードファンドではそうなります。他の大規模なファンドが入ってくれば、私たちの持ち分は希薄化してしまいますが、それは問題ではありません。私たちの資金は、投資した金額の10倍になると思ったときに最も良く働きます。

TC:では、後のステージで参加することには興味がないのですね。

KR:そんなことはありません。追加投資をすることもあります。Nomadに大量の資金を投入したばかりです。バリュエーションはおよそ2億5000万ドル(約280億円)でした。私は20億ドル(約2240億円)規模の会社になると思っていますので、多額の投資をしたことに今でも満足していますが、おそらくこれが最後のラウンドになるでしょう。資金を投入して2倍、3倍のリターンを得ようと考えている人たちもいます。彼らのファンドにとっては素晴らしいことです。彼らはもっと後のステージから入り、投資するのは5年だけです。私たちは、資金を投入して9年間はとどまり、100倍にしたいと思っています。

TC:あなたの同世代の人たちの多くは、ベンチャー業界から、あるいは少なくとも自分の会社から、退出し始めています。このことについて、あなたはどのように考えているのでしょうか。AlleyCorpには右腕のような人がいるのでしょうか。また、いずれ身を引くことになった場合はどうしますか。

KR:まず、すぐにそうなるとは思っていません。でも、ヘルスケア分野を担当しているのはBrenton Fargnoli(ブレントン・ファーニョーリ)で、非ヘルスケア分野を担当しているのはWendy Tsu(ウェンディ・ツウ)ですよね。そして、1年後には他に2、3人のパートナーがいて、私は実質的に会社のマネージング・パートナーになっていると思います。でも、私はあと10年はいますよ。

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画像クレジット:Photo by Joe Corrigan/Getty Images for AOL

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

ツイッターが中核事業への投資を加速、モバイル広告MoPubを売却へ

Twitter(ツイッター)は米国時間10月6日、2013年に買収したモバイル広告プラットフォームMoPub(モパブ)を、モバイルゲームおよびマーケティングソフトウェアメーカーのAppLovin(アップロビン)に売却すると発表した。

Twitterは、2013年に約3億5000万ドル(約390億円)でMoPubを買収したが、今回は現金10億5000万ドル(約1170億円)で同社を売却する。MoPubによると、同社は2020年に、約1億8800万ドル(約210億円)の売上高でTwitterに貢献した。Twitterは以前、2023年までに年間収益を2倍にするという目標を掲げていた。

TwitterのCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏はプレスリリースの中で「今回の売却により、当社の収益プロダクトロードマップへのフォーカスと自信がさらに高まり、Twitterの長期的な成長を支える中核製品への投資を加速させることができます」と述べた。

TwitterのCFOであるNed Segal(ネッド・シーガル)氏は、今回の買収はTwitterが新製品の開発を急いでいる中で「巨大な」広告機会に再び焦点を合わせるための手段だと特徴づけた。シーガル氏によると、Twitterは今後、自社で運営する製品の開発を重視していくが、ここ数カ月、そのビジョンに合致した企業の買収に幅広く投資しているようだ。

Twitterはこれまで、ほとんど問題なく事業を進めてきたにもかかわらず、2021年に入ってビジネスを大きく変える動きをいくつも見せてきた。立て続けにプロダクトをリリースする中で、TwitterはSuper FollowsTicketed Spacesなどの機能により、クリエイター経済の爆発的な成長を利用した新たな収益源を模索しているが、これらのプロダクトの浸透は今のところ限定的だ

Twitterは2021年、広告なしの読書ツールScroll(優れていたが今はないニュースアグリゲーターNuzzelを含む)や、人気のニュースレタープラットフォームRevueなど、新しい方向性を示す多くの買収を行った。

Twitterはまた、Clubhouseのようなオーディオルームや、新しい関心事ベースのコミュニティを立ち上げ、プラットフォームを害のない快適に過ごせる場所にするための実験的な機能を数多く提供している。これらの機能は、有料の月額制サービスTwitter Blueの広範な立ち上げに向けて準備を進めていく上で、重要な役割を果たすはずだ。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

ツイッターがアバター関連スタートアップFacemojiに出資

アバター関連のスタートアップ企業はここ数年の間に次々と生まれては消えていったが、その背後にいる起業家の多くが当初想像していた未来は、多かれ少なかれ正確であることが証明されている。Apple(アップル)はMemoji(ミー文字)によるアバター表現に関心を高めており、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏はFacebook(フェイスブック)をメタバース企業にしたいと考えている。また、ユーザーが仮想世界に入り込み、自分のキャラクターのためのアクセサリーを購入するRoblox(ロブロックス)のようなプラットフォームは、かつてないほどの人気を博している。

Facemoji(フェースモジ)は、ゲームやアプリの開発者が同社のSDK(ソフトウェア開発キット)を使ってアバターシステムをアプリに導入するためのプラグアンドプレイ技術プラットフォームを構築している。Facemojiは、Play Ventures(プレイベンチャーズ)を中心に、Twitter(ツイッター)、Roosh Ventures(ルーシュベンチャーズ)、エンジェル投資家が参加した300万ドル(約3億3400万円)のシードラウンドを実施した。

チームによると、この分野の他の多くの企業は、開発者が扱いたくないUnityのプラグインに依存しているが、Facemojiの軽量ソリューションは、独自のレンダリングパイプラインに依存している。また、開発者が望むのであれば、すぐに利用できる多様なアバターアートのシステムをすでに持っている。

画像クレジット:Facemoji

Facemojiは、より多くのゲームメーカーが独自のアバターシステムを簡単に構築したいと考えているが、必ずしも他のネットワークに接続したいとは思っていないと考えている。初期のアバタープラットフォームの弱点は、独自のメタバースとして機能する一貫したクロスプラットフォームのアバターシステムを構築しようとする野心にあることが多い。それは、製品を開発するスタートアップやユーザーにとっては意味のあることだが、ゲームメーカーにとっては、独自のプラットフォームを作る機会をただテーブルの上に置いておくのは無駄なことだった。

Facemojiは、AppleがMemojiを開発者コミュニティに開放することは予想しておらず、Snap(スナップ)の方がより顕著な競争相手であると述べている。Facemojiのスタートアップの競合企業は、ますます速いペースで買収されている。2020年には、RobloxがLoom.aiを買収し、Epic Games(エピックゲームズ)がHyperSense(ハイパーセンス)を買収した。

関連記事:ゲーミングプラットフォームのRobloxがデジタルアバター作成のLoom.aiを買収

Facemojiの創業者たちは、メタバースの流行や最新のNFTブームに強く惹かれており、開発者が統合してユーザーにアバター用のアクセサリーを購入させることができるプラグアンドプレイのNFTストアフロントを開発している。Facemojiは、初期の暗号化されたTwitterのプロフィール写真の使い方は、一般消費者が自分のアバターをカスタマイズすることに興味を持つようになった証拠だと考えている。

「最終的には、エゴに帰結します」とFacemojiのCEOであるRobin Raszka(ロビン・ラズカ)氏は、TechCrunchに次のように述べた。「バーキンのバッグを持っていることをどうやってアピールするか、Twitterのアバターはそのための主要な領域であり、人々はただ見せびらかしたいだけなのです」。

企業への投資をあまり行わないTwitterにとって、これは特に興味深い投資だ。Facemojiのチームは、画面共有ソーシャルアプリSquad(スクワッド)がTwitterに買収される前に、Squadのチームとアバターの統合についていくつか会話をしたと述べている。また、Twitterは、現在進行中のNFTプロジェクトについて詳しく説明しており、CEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は、この分野のスタートアップ企業を積極的に支援している。

Facemojiチームは、ゲームに加えて、人々がアバターとして次のZoom(ズーム)にダイヤルしたり、クラスに参加したりすることが簡単にできるようになり、実写のアバターがこれまでの汚名を返上し、カメラのオンとオフの間の自然なメディアとして扱われるようになることを期待している。

関連記事:Twitterがスクリーン共有ソーシャルアプリのSquadを買収

画像クレジット:Facemoji

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(文:Lucas Matney、翻訳:Yuta Kaminishi)

ファンタジー「スタートアップ」ゲームVisionrareは実際の企業のフェイクNFT株を購入し最高のパフォーマンスを誇るポートフォリオ構築を競う

所有権のミーム化と、未公開スタートアップのバリエーション高騰を背景に、ベンチャーキャピタルの元アソシエイトが「ファンタジースタートアップ投資」のための暗号資産(仮想通貨)マーケットプレイスを創設した。ユーザーは、リアルの資金で、リアルのスタートアップの、フェイクの株式を購入する。株式はもちろんNFT(非代替性トークン)の形態だ。

【更新】「Visionrare」はオープンベータ1日で有料マーケットプレイスを閉鎖してしまった

米国時間10月6日からクローズドベータで始まったこのゲームは「Visionrare」と呼ばれる。創設者のJacob Claerhout(ジェイコブ・クラーホート)氏とBoris Gordts(ボリス・ゴーツ)氏は、投資のゲーム化を極限まで進め、ファンタジースポーツリーグの魅力を真似て、ユーザーが成功すると思うスタートアップに賭けて友人と競争する手段を提供することを考えている。ユーザーは、数百種類のスタートアップ企業のNFT株を落札し、最高のパフォーマンスを出すフェイクのポートフォリオ構築を競う。

当初、Visionrareのデータベースに登録される企業は、Y Combinatorの最近のクラスを出たスタートアップが中心だ。Visionrareは、同社が販売するフェイクの株式の母体であるスタートアップの名前やロゴを使用する許可を得るどころか、ほとんどの場合、打診してさえいない。だが創業者らは、このプラットフォームのゲーム性により、対象となった企業が停止要求書の提出を思いとどまることを期待している。スタートアップは、自社のプロフィールが正しいことを確認した上でNFT株のうち大きな割合を受け取り、好きなように分配することもできるし、Visionrareに連絡してプロフィールを削除してもらうこともできる。もちろん、無視することもできる。

このゲームは、ベンチャーキャピタルの複雑さを入札形式により単純化することを目的としており、スタートアップの実際の資金調達サイクルや現実世界での業績と連動している。Visionrareは、資金調達ラウンドごとに連番になった100単位の「VisionShares」を入札にかけ、各スタートアップにつき一度に1単位ずつ、5ドル(約550円)から入札できる。ユーザーの保有株式が一定の数(最低5株)に達すると、リーグに参加できる。そこで他のユーザーとファンタジーのような体験を通じて競い合い、順位表を上下しながら、自分のポートフォリオのパフォーマンスに基づくVisionSharesの価値の合計を競う。

Visionrareのマーケットプレイス(画像クレジット:Visionrare)

オープンベータに移行したVisionrareには、セカンダリーマーケットの構築や、OpenSeaなどの外部プラットフォームにおけるVisionSharesの販売サポートなど、いくつかの重要な課題が残っている。ユーザーは現在、クレジットカードでVisionSharesを購入しているが、チームは暗号資産による支払いを導入することも検討している。

このゲームの主な問題は、マンデーナイトフットボールのようなものとの相関関係が少ないことだ。そのため、ファンタジーリーグの規模拡大は難しいかもしれない。つまり、業績に関する公開情報がないのだ。対象が上場企業であれば、ゲームは株価や、四半期決算に載るような一貫した指標のように具体的な何かを中心に構成することができるが、スタートアップ企業は情報公開に非常に慎重だ。

VisionrareはTracxnからスタートアップの業績データを入手し、それをもとに毎週、独自のバリエーションのような「Visionrareスコア」をはじき出す。このスコアは、リーグの進捗や勝者を追跡するための基礎となるものだが、無形資産がバリュエーションを押し上げることが多い市場で、プレスリリースへの言及、ソーシャルメディアのフォロワー数、アプリのダウンロード数といった業界横断的で一貫性のあるデータに過度に重きを置けば、未公開市場でのバリエーションとスコアの間に著しい乖離が生じることは明らかだ。パリに拠点を置く投資会社Partechで、アーリーステージの投資に携わっていたクラーホート氏は「これは正確な科学ではありません」としながらも、時間をかけてより多くのデータストリームにアクセスし、スコアリングアルゴリズムのパフォーマンスを向上させていきたいと考えている。

さらに大きな課題は、最もお金を持っているユーザーがリーグ戦で常勝しないようにすることかもしれない。現実の世界と同じだ。リーグ戦の勝者は、ある期間中にVisionrareのスコアポイントを最も多く獲得したポートフォリオによって決まる。だが、ベンチャー企業のサクセスストーリーは長い時間をかけて作られるため、初期のチームに長期的に賭けることと、流行のSaaSスタートアップに馬車を繋ぐことには、不均衡があるかもしれない。創業者らは、リーグの仕組みはまだ試行錯誤中であり、Visionrareの規模が大きくなるにつれ、楽しく公平なものになるよう調整していくと述べた。

結局のところ、このプロジェクトは、2人の若い起業家が資金ゼロから立ち上げた初期段階のプロジェクトであり、暗号資産空間と今日のスタートアップの投資エコシステムの両方の馬鹿げた部分を捉えている。だが、Visionrareの創業者らは、このNFTフェイク株式市場が、スタートアップに興味を持つ人々が確信する勝者はどの企業なのかを示す機会を提供し、いつの日か、次の採用候補者を探しているVCにとってシグナルとなることを望んでいる。

「この業界は信用を築くのが本当に難しく、アクセスも資本もない人がたくさんいます」とクラーホート氏はTechCrunchに語った。「もしあなたが会社というものを信じるなら、VisionShareを買ってください」。

画像クレジット:Visionrare

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

GMがEVへの信頼を高めるため、充電インフラへの投資を強化

General Motors(ゼネラルモーターズ)が、電気自動車(EV)の充電インフラへの投資を7億5000万ドル(約835億円)規模に拡大する。EVの充電に対して不安を抱くドライバーたちの懸念を和らげることが目的だ。

GMは、2025年までに約7億5000万ドル(約835億円)を投じて、公共の場、家庭、職場に充電器を設置し、使いやすくしたいという。この投資は、GMのUltium Charge 360(アルティウム・チャージ360)プロジェクトにも大きな影響を与える。

GMが充電に投資するのは今回が初めてではない。2020年GMは、有名な充電ネットワーク企業であるEVgo(イービーゴー)と提携し、5年間で2700基以上のDC急速充電器を設置することを発表した。

充電設備の充実度は、電気自動車への移行をためらう主な理由の1つとして常に挙げ続けられている。Consumer Reports(コンシューマー・レポート)が最近行った調査によれば、回答者の約半数が「公共の充電ステーションが十分でないこと」がEVの購入を妨げていると答えている。

この資金が、世界の約3000カ所のステーションに2万5000台以上の充電器を設置しているTesla(テスラ)のスーパーチャージャーネットワークのような独自の充電ネットワーク構築に使われるのか、それとも別のパートナーシップに使われるのかは不明だ。GMは投資家説明会で、サブスクリプションやサービスから収益を得る「垂直統合型」のOEMになるという話を繰り返した。また今回の投資が、同社が「Ultium Charge 360」と呼ぶ新しい(サブスクリプション的な)取り組みを支援するものであることも強調した。だが詳細については待つしかなさそうだ。

画像クレジット:GM/EVgo

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

グーグルがアフリカへの約1114億円の投資を再確認、容量20倍の高速海底ケーブル含め

大規模なインターネット企業にとって、発展途上諸国は最も成長のチャンスがある地域を意味する。今日、その中でも最も大きな企業の1つが、この問題に取り組むための戦略を発表した。

Google(グーグル)は、アフリカの「デジタルトランスフォーメーション」を支援するために10億ドル(約1114億円)を投資すると発表した。これには、インターネットの高速化を実現するための海底ケーブルの敷設、中小企業向けの低金利融資、アフリカのスタートアップへの出資、スキルトレーニングなどが含まれる。

この計画は米国時間10月6日、GoogleおよびAlphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏が中心となって開催されたイベントで発表された。会社の最高責任者をイベントのトップに据えることは、同社がこの賭けにプライオリティーを置いていることの証といえるだろう。

ピチャイ氏は次のように述べた。「私たちはこの10年で大きな進歩を遂げましたしかし、すべてのアフリカ人がインターネットにアクセスでき、手頃な価格で便利に使えるようにするためには、まだまだ努力が必要です。本日、アフリカのデジタルトランスフォーメーションを支援するために、5年間で10億ドル(約1114億円)の投資を行い、接続性の向上からスタートアップ企業への投資まで、さまざまな取り組みを行うことで、アフリカへのコミットメントを再確認できることをうれしく思います」。

Googleはこの投資を、ナイジェリア、ケニア、ウガンダ、ガーナなど、アフリカ大陸の国々で実施されるプロジェクトに投入すると述べている。

海底ケーブルは、南アフリカ、ナミビア、ナイジェリア、セントヘレナを横断し、アフリカと欧州を結ぶ。Googleのアフリカ担当マネージングディレクターであるNitin Gajria(ニティン・ガジュリア)氏は「アフリカ向けに建設された前回のケーブルに比べ、約20倍のネットワーク容量を提供することになる」と述べた。

「これにより、ナイジェリアではインターネット料金が21%下がり、インターネットの速度が向上し、南アフリカでは速度が約3倍になります」とガジュリア氏はいう。

デジタル経済の発展にともない、2025年までにナイジェリアと南アフリカで約170万人の雇用創出が予測されている。

また、Googleは、Africa Investment Fund(アフリカ投資基金)の設立を発表した。同社はアフリカ大陸のスタートアップ企業に5000万ドル(約55億7000万円)を投資し「Googleの従業員、ネットワーク、テクノロジーへのアクセスを提供し、彼らがコミュニティのために意義のある製品を構築することを支援する」としている。

さらに、パンデミックの影響で苦境に立たされているナイジェリア、ガーナ、ケニア、南アフリカの中小企業に対し、1000万ドル(約11億1000万円)の低金利ローンを提供する。これは、サンフランシスコに本拠地を置く非営利の融資組織であるKiva(キヴァ)とのパートナーシップにより行われる。Kivaは、アフリカで人々の生活を改善している非営利団体に4000万ドル(約44億6000万円)を提供することを約束した。

ガジュリア氏はこう述べた。「アフリカの革新的なテックスタートアップシーンにとても刺激を受けています。2020年は、技術系スタートアップへの投資ラウンドがこれまでになく多く行われました。私は、アフリカで最も大きい問題を解決するのに、アフリカの若い開発者やスタートアップ創業者ほど適した人材はいないと確信しています。当社は、アフリカのイノベーターや起業家とのパートナーシップを深め、支援していきたいと考えています」。

画像クレジット:lex Tai/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Aya Nakazato)

Masterworksが物理的なアートを細分化した証券として販売(ただしNFTではない)

トップクラスの伝統的な資産市場の中で、投資家が所有を多様化しようとするにつれて、より多くのテクノロジー対応プラットフォームが出現し、各自が有力なオルタナティブ投資プラットフォームであることを主張している。著名な芸術家の絵画やその他の作品を細分化した証券として販売するスタートアップ企業のMasterworks(マスターワークス)がユニコーンの評価を得た。同社は人びとのポートフォリオにファインアートを加えさせる市場を掌握しようとしている。

米国時間10月5日、Masterworksは、10億ドル(約1116億円)を超えた評価額の下でシリーズAラウンドを行い、1億1000万ドル(約122億7000万円)の資金調達を行ったことを発表した。今回のラウンドは、ニューヨークを拠点とするベンチャーファンドLeft Lane Capitalが主導し、Galaxy InteractiveやTru Arrow Partnersなどが参加した。

ここ数年、オルタナティブ資産は大きなビジネスになっている。これは、公開市場が沸き立ち、投資家があまり伝統的ではない市場でより大きなリターンを求めようとしているためだ。オルタナティブ資産クラスは多岐にわたるが、未使用のNINTENDO64のカートリッジ、ポケモンカード、エアジョーダン、NFTといったものが並ぶ市場の中では、ファインアートは比較的伝統的なセグメントを占めていて、その利点や欠点をより予測しやすい。

「資産クラスとしてのアートは、(年頭にファンドの空売りで有名になった)GameStopやNFTのようなものではなく、最終的なリターンがかなり予測可能なのです」とCEOのScott Lynn(スコット・リン)しはTechCrunchに語っている。「たとえばこれらの絵画に投資しても、投資額の10倍のリターンを得ることは決してできませんが、投資額の90%を失うこともないでしょう」。

つまり、Masterworksは新進気鋭の画家を支援するプラットフォームではなく、作品の価値がマーケットで認められたアーティストに全面的に投資しているのだとリン氏はいう。彼は「私たちは、美術品市場の中で投資可能なセグメントは、一般的にいって、100万ドル(約1億1000万円)以上の絵画だけだと考えています。この場合投資可能という言葉の意味は、予測可能なリターンを生み出すものという意味ですけれど」と説明した。

Masterworksは、アンディ・ウォーホル、キース・ヘリング、ジャン・ミッシェル・バスキア、草間彌生などの著名な現代アーティストの絵画を多数購入・保管し、SECに登録された適格公募による証券として販売している。公募の終了後は投資家がその証券を二次市場で売買することができるようになる。証券保持者は、Masterworksが最終的に絵画を販売したときに支払いを受け取る。スタートアップは、それらの絵画を販売することで利益を得ているが、絵画が売れるたびに利益の20%を得るとともに、各作品に対して年1.5%の管理料を受け取っている。

スタートアップは、多額の投資資金を持った投資家を追いかけ続けている。リン氏によれば、平均的な投資家は、対象の絵画それぞれに5000ドル(約55万8000円)以上を投資し、生涯では約3万ドル(約334万8000円)を投資するという。

画像クレジット:Mike Steele / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Lucas Matney、翻訳:sako)

アル・ゴアが英国のグリーンエネルギー技術スタートアップOctopus Energy Groupに約660億円を出資

Al Gore(アル・ゴア)元副大統領は、自身のGeneration Investment Management(ジェネレーション・インベストメント・マネジメント)を通じ、英国のエネルギー関連企業であるOctopus Energy Group(オクトパス・エナジー・グループ)に6億ドル(約660億円)の出資を行い、約13%の株式を取得した。この投資により、Octopusの評価額は約46億ドル(約5100億円)に達した。

Octopusは、再生可能エネルギー源からのエネルギーを競合他社よりもはるかに効率的にネットワーク上で迂回させることができると主張する「Kraken(クラーケン)」技術プラットフォームによって、エネルギー業界で有名になった。Octopusは現在、12カ国で1700万のエネルギー口座をこの方法で管理している。

Generationは、持続可能なビジネスを支援することを目的とした360億ドル(約3兆9970億円)規模のファンドマネジメント企業だ。Octopusは、Generationからの戦略的投資により、テキサス州を足掛かりに展開している米国市場へのさらなる参入を目指している。

今回のGenerationからの出資は、東京ガス、Origin Energy(オリジン・エネルギー)からの株式投資、スマートグリッド技術を専門とするUpside Energy(アップサイド・エネルギー)の買収に続くものだ。Octopusの小売事業は現在、英国、米国、ドイツ、スペイン、ニュージーランドで展開しており、Good Energy(グッド・エナジー)、Hanwha Corporation(ハンファ・コーポレーション)、Origin Energy(オリジン・エナジー)、Power(パワー)そしてE.ONとライセンス契約を結んでいる。

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また、Octopusは、ユーザーが電気自動車を充電する際にOctopus Energyの個人アカウントに充電できるよう、欧州に10万カ所の充電ポイントを持つ電気自動車のローミングネットワーク「Electric Juice(エレクトリック・ジュース)」を立ち上げている。また、Teslaと提携し、英国とドイツで「Tesla Power(テスラ・パワー)」を展開している。

Octopus Energyの創業者兼CEOであるGreg Jackson(グレッグ・ジャクソン)氏は、次のように述べた。「現在、英国のエネルギー市場は厳しい状況にありますが、化石燃料への依存をなくすためには、再生可能エネルギーや技術への投資が必要であることが浮き彫りになりました。そのため、世界をより良く変える持続可能な企業を支援するために設立されたGeneration Investment Managementとの契約を発表できることを嬉しく思います」。

「私たちは週に2回、300回のストレステストを行っています。テック企業である当社にとって、それは単なるアルゴリズムです。ライバル企業は、スプレッドシートを使ってやっています」。

Generation Investment Managementを代表して、長期株式戦略のパートナーであるTom Hodges(トム・ホッジス)氏は「Octopus Energyは、システムや気候変動に前向きな企業を支援するために長期的な投資を行うというGenerationのミッションに非常に適しています。世界は、パリ協定の目標を達成するために不可欠な、前例のないエネルギー転換の初期段階にあります。これは、環境と消費者にとってより良い方法で行うことができます」という。

Zoom経由のインタビューでジャクソン氏は、現在の世界的なエネルギー危機には2つの部分があると話してくれた。「1つは、エネルギーの卸売価格の危機です。世界のガス価格は去年だけで3倍、4倍になっています。そして、ガスの価格が高いだけでなく、電力の多くがガスからきているため、電力価格も上昇しています。これは、企業がどれだけ思惑売りと空買いをしてきたかを如実に表していると思います。つまり、現在、破綻している企業は、1年契約を販売していたのだが、6カ月分のエネルギーしか購入しておらず、残りはうまくいくよう祈っていただけの大企業なのです」。

Octopusは、「常に100%の防止策を行ってきました。私たちにとって、エネルギー小売は事業の1つに過ぎません。そして、グループ内には13の事業があります。私たちが常に目指してきたのは、優れたサービスを提供することと、リスク管理の行き届いたバックエンドを提供することでした。私たちは週に2回、ヘッジポジションに対して300回のストレステストを行っています。テック企業である当社にとって、それは単なるアルゴリズムです。ライバル企業は、それをしていないか、スプレッドシートでやっていて、うまくいっていません」。

「現実には、この危機は完全に化石燃料の危機です。もし、再生可能エネルギーを主要な供給源とし、ガスをバックアップとして使用していたら、このような状況にはなっていなかったでしょう」とジャクソン氏は付け加えた。

Octopusは、風力、太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーのオーナーオペレーターで、35億ポンド(約5200億円)の発電資産を持ち、今後10年間でそれを10倍にする計画だという。

このGeneration案件は、3億ドル(約330億円)の即時投資と、2022年6月までに3億ドル(約330億円)の追加投資で構成されており、さらに一定の資金調達条件を満たす必要がある。

Octopusは、気候変動との戦いを政府レベルで行うため、ロンドンに独立した研究施設Centre for Net Zeroを設立し、さらに熱の脱炭素化に関する研究開発・トレーニングセンターに1000万ポンド(約15億円)を投資した。

画像クレジット:Octopus Energy Founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)

「Guardian」のオーナー企業がサブスクやメンバーシップ用に設計されたNFTプロトコルUnlockに投資

クリエイター経済における収益化は大きな課題であると同時にチャンスでもある。だがクリエイターがその価値を実体化するためには、Patreon(パトレオン)のようなプラットフォームに閉じこもるしかないのが現状だ。だがもっと良い方法は、複数のプラットフォームにまたがるクリエイターのための会員制システムを作ることだ。

このたび、GMG Ventures(「The Guardian」の親会社)が、コミュニティのメンバーシップを収益化・管理するために設計された、イーサリアムベースのオープンソースプロトコルの開発者であるUnlock(アンロック)に投資を行った。

今回の400万ドル(約4億4500万円)の資金調達ラウンドは、Betaworks、Cygni Labs、GMG Ventures、Metacartel Ventures ChinaなどのVC企業が主導し、初期投資家たちも参加している。

Unlockによれば、そのメンバーシップ / マネタイズソリューションは、アーティスト、ミュージシャン、ゲーム開発者(Decentralandも含まれている)、ライター、Discordコミュニティなどに利用されているという。また、同社のプロトコルを採用している大手メディアブランドとの提携も予定している。

UnlockのCEOであるJulien Genestoux(ジュリアン・ジェネストゥ)氏は「これまでに調達した資金で、Unlockは目標を達成するために、最も完全なオープンソースのプラットフォームになるための成長を続けます」と語る。

ジェネストゥ氏は、Medium(メディウム)が買収したRSSフィードAPIであるSuperfeedr(スーパーフィーダー)を開発した経験を持つ。

2018年に設立されたUnlockは、イーサリアムのブロックチェーンにすべての取引を記録するNFTベースのプロトコルだ。考えられる利用例としては、たとえばWordPressのプラグインを使うことで開発者が会員制 / 購読制のオプションを追加することができたり、コミュニティが作成したShopifyのプラグインを使えば小売業者は自分のウェブサイトにUnlockを利用した購入オプションを追加することができたりする。

Cherry VenturesのThomas Lueke(トーマス・ルーケ)氏は「Unlockが開発するクリエイターコミュニティメンバーシップためのオープンソースプロトコルは、今後数年間でクリエイターがファンと交流し、成長していく方法を再定義するものとなるでしょう」という。「私たちは、この分野での活躍を続けるUnlockの成長を祝えることを楽しみにしていますし、同社に投資できたことをうれしく思っています」。

画像クレジット:Julien Genestoux, Unlock Protocol

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(文:Mike Butcher、翻訳:sako)

GMも中国初の自動運転ユニコーンMomentaに約330億円投資

General Motors(GM、ゼネラル・モーターズ)は、トヨタや中国国有企業SAIC Motor(SAICモーター)、Mercedes-Benz AG(メルセデスベンツAG)などを含む、中国の自動運転スタートアップMomenta(モメンタ)を支援する多くの大手自動車メーカーの輪に加わった。

車両販売という点で米国最大の自動車メーカーであるGMは米国時間9月21日、今後中国でのGM車両の自動運転テックの開発を加速させるためにMomentaに3億ドル(約330億円)を投資すると明らかにした。GMの上級副社長でGM China社長であるJulian Blissett(ジュリアン・ブリセット)氏は、今回の投資が「中国における(GMの)消費者のために作られたソリューション」をもたらすのに役立つ、と声明で述べた。

このニュースは、Momentaが約5億ドル(約554億円)の資金調達ラウンドをクローズしてから6カ月も経たない中でのものだ。そのラウンドにはSAIC、トヨタ、 Mercedes-Benz AG、Bosch(ボッシュ)が参加した。TechCrunchのRita Liaoが指摘しているように「巨大な投資ラウンドは資本集約的な自動運転車両の業界では当たり前になった」。しかしMomentaは、ソフトウェアを搭載した車両を2021年末までに大量生産することを目指していて、商業化に近づきつつあるようだ。

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GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

この出資はGMが次世代のテクノロジーに積極的に投資する最新例だ。同社は6月、2025年までに電動とAVのベンチャーに350億ドル(約3兆8760億円)をあてる、と述べた。米国では、自動運転テクノロジーへのGMの関心は自動運転の子会社Cruise(クルーズ)を介してよく知られている。CruiseはこのほどGMの金融会社から50億ドル(約5540億円)の与信限度額を獲得した。

しかしGMはまた、世界最大のEVマーケットでの足がかりを模索する中で、中国でかなりの提携も行ってきた。中国で最も売れている電気小型車であるWuling Mini EVはSAIC-GM-Wulingが生産していて、社名からわかるように、GM、SAIC、Wuling Motors(ウーリンモーターズ)の合弁会社だ。SAIC-GM-Wulingは人気のブランドBaojunも手がけている。

中国の自動運転スタートアップの幹部が6月にあったTC Mobilityで指摘したように、同国の地方自治体もまた、自動運転に対して積極的だ。

「中国では、各地方自治体の政府が我々起業家のように行動するよう動機づけられています」とMomenta欧州のゼネラルマネジャーであるHuan Sun(フアン・サン)氏はイベントで述べた。「地方自治体は地域経済の発展でかなり進歩しています。我々が感じているのは、自動運転テクノロジーが(地方自治体の)経済ストラクチャーを改善し、アップグレードできるということです」。

GMは、Momentaの技術がいつGM車両に搭載されるのかについては明らかにしなかったが、広報担当は2社の提携が米国でのGM車両生産と販売にはつながらないことを認めた。

画像クレジット:Momenta

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

コロッサルがマンモス復活プロジェクトを投資家たちに売り込むことに成功

医療を一変させるCRISPR(ゲノム編集技術)の可能性に関心を持つ企業がますます増えている。しかし、この遺伝子編集システムを用いて現代にマンモス(あるいは、それに極めて近いもの)を蘇らせようとしている企業はおそらく1社しかいないだろう。

それを第一のミッションとして掲げている会社が新興企業Colossal(コロッサル)だ。異端の遺伝学者George Church(ジョージ・チャーチ)氏と、企業家でHypergiant(ハイパージャイアント)の前CEO Ben Lamm(ベン・ラム)氏によって創業された同社は、CRISPRを使って既存のアジア象のゲノムを編集することでこの古代生物を現代に蘇らせることを目的としている。そういう意味では、蘇る生物はマンモスに極めて近いものの、どちらかというと象とマンモスの雑種ということになる。

チャーチ氏のラボではこのプロジェクトに数年間資金を投入してきた。チャーチ氏とラム氏は、マンモスを現代に蘇らせるというアイデアには単なるSF的なプロジェクト以上の意味があることを投資家たちに売り込むことに成功した。

コロッサルは、創業しLegendary Entertainment(Dune、Jurassic World、The Dark Knightなどをてがけた会社)の前CEO Thomas Tull(トーマス・タル)氏率いる1500万ドル(約16億5000万円)のシードラウンドを実施することを発表した。このラウンドには、Breyer Capital(ブレイヤーキャピタル)、Draper Associates(ドレイパーアソシエイツ)、Animal Capital(アニマルキャピタル)、At One Ventures(アットワンベンチャーズ)、Jazz Ventures(ジャズベンチャーズ)、Jeff Wilke(ジェフ・ウィルケ)氏、Bold Capital(ボールド・キャピタル)、Global Space Ventures(グローバルスペースベンチャーズ)、Climate Capital(クライメートキャピタル)、Winklevoss Capital(ウィンクルボスキャピタル)、Liquid2 Ventures(リキッド2ベンチャーズ)、Capital Factory(キャピタルファクトリー)、Tony Robbins(トニー・ロビンズ)氏、First Light Capital(ファーストライトキャピタル)などが参加している。

「チャーチ氏とラム氏の2人は、現代の遺伝学の考え方を一変させると同時に、絶滅種の復活だけでなく業界全体を前進させる革新的テクノロジーを開発する能力を持ち合わせた強力なチームです」とロビン氏はいう。「この2人が率いるプロジェクトに投資できることを誇りに思います」。

ラム氏はテキサス州本拠のAI企業ハイパージャイアントの創業者としてコロッサルに入社した。同氏は他にも、Conversable(LivePersonに売却)、Chaotic Moon Studios(Accentureに売却)、Team Chaos(Zyngaに売却)の3社を起業し売却している。

チャーチ氏は、これまでにも大規模で挑発的なプロジェクトを立ち上げてきたことでよく知られている。

チャーチ氏は1980年代に最初のゲノム直接配列決定法を生み出し、続いて人ゲノムプロジェクトの立ち上げにも携わった。同氏は現在、Wyss Instituteで、遺伝子とゲノム全体を統合することに重点を置いた人工生体の取り組みを率いている。

CRISPR遺伝子編集技術は対人臨床試験の段階に入ったばかりで、特定の病気の原因となっている遺伝子を編集することを目的としているが、チャーチ氏のプロジェクトでは、それよりはるかに大きな考えで取り組みを進めており、テクノロジーの進化を加速する目的に沿ったものが多い。2015年、同氏のチームは、人に移植する臓器を作る過程で豚の胚の62の遺伝子(当時の新記録)を編集することに成功した。

この取り組みから派生した企業eGenesisはチャーチ氏の当初の予定より遅れているが(同氏は、2019年までには豚の臓器を人体への移植に利用できると予測していた)、現在、猿を使った前臨床実験を行っている。

チャーチ氏は長年、マンモスの復活に照準を合わせてきた。2017年、ハーバード大学の同氏のラボは、マンモスを復活させる過程で、45の遺伝子をアジア象のゲノムに追加することに成功したと報告した。投資家たちからの研究支援を受け、コロッサルはチャーチ氏のラボでのマンモス復活の取り組みを全面的にサポートすることになる。

プレスリリースによると、コロッサルがマンモスを復活させることを追求しているのは、エコシステムを復元することで気候変動による影響と戦うためだという。

「当社の目的はマンモスを復活させることだけではありません」と同氏はいう。「もちろん、それだけでも大変なことですが、最終的にはマンモスを自然環境に適応させることが目的です。マンモスを復活させることができれば、絶滅を防いだり、絶滅危惧種を復活させるすべての道具立てが揃うことになります」。

現在、約100万種の動植物が絶滅の危機に瀕している。コロッサルのマンモスプロジェクトが成功すれば、最近絶滅した生物を復活させるだけでなく、ラム氏のいう「遺伝子レスキュー」によってそもそも絶滅を防ぐことさえできる能力が実現されることになる。

遺伝子レスキューとは、絶滅危惧種の遺伝子多様性を向上させるプロセスのことだ。これは、遺伝子編集によって、あるいはクローニングによって新しい個体を作り遺伝子プールを大きくすることによって実現できる(クローンと既存の動物の遺伝子が十分に異なることが条件)。これが実現可能である証拠はすでにいくつかある。2021年2月、北米で最初の絶滅危惧種のクローニングによってクロアシイタチが誕生し、Elizabeth Ann(エリザベス・アン)と名付けられた。このイタチは1988年に収集され冷凍された組織サンプルに含まれていたDNAからクローニングされたものだ。

山の中のマンモス。3Dのイラスト(画像クレジット:Orla / Getty Images)

絶滅種を復活させることで気候変動による影響と戦うことはできるかもしれないが、それで根本的な問題が解決するわけではない。人間が生み出した気候変動の原因が手つかずのままであるかぎり、そもそも気候変動によって絶滅した生物を復活させることができたとしてもあまり期待はできない。そもそも、気候変動は巨型動物類が絶滅した原因の1つなのだから。

また、絶滅してかなりの時間が経つ種を現代の環境に適応させることにより、新しい病気が蔓延したり、既存の種が置き換えられて実際に地形が変わってしまうなど、エコシステムにさまざまな重大な悪影響が生じる可能性もある(象は結局のところ生態系の技師なのだ)。

生物多様性を維持することがコロッサルの主たる目的なら、今すぐ救える種があるのになぜわざわざマンモスの復活にこだわるのだろうか。ラム氏によると、アジア象のゲノムを編集して回復力を高める試みをしてもよいが、マンモスプロジェクトがコロッサルを導く光輝く目標でもあることに変わりはないという。

ラム氏の見方では、マンモスプロジェクトはムーンショット(困難だが成功すれば大きな効果をもたらす試み)なのだ。このような困難な目標にあえて挑むとしても、絶滅種復活のための独自技術を開発し、それを見込みのありそうな買い手にライセンス供与または売り込む必要がある。

「この計画はアポロ計画によく似ています。アポロ計画は文字通りムーンショットでした。その過程で多くのテクノロジーが生まれました。GPS、およびインターネットや半導体の基本原理などです。これらはすべて大きな収益を生むテクノロジーでした」と同氏はいう。

要するに、マンモスプロジェクトは、多くの知的財産を生み出すインキュベーターのようなものなのだ。具体的には、人工子宮やCRISPRのその他の応用技術の研究プロジェクトなどがあるとラム氏はいう。こうした技術を実現するにはまだまだ多くの科学的なハードルをクリアする必要があるが(現行の人工子宮プロジェクトは臨床試験段階にも程遠い状態だ)、生きた本物の生物体を作り上げることに比べれば少しは実現可能性が高いのかもしれない。

けれども、コロッサルがこの研究を進めるにあたってたくさんの中間的な計画を持っていたというわけではない。コロッサルは、研究過程で記憶に残るブランドを作ろうと躍起になっている。ラム氏に言わせると、それは「ハーバードとMTVの融合」としてのブランドだという。

コロッサルに匹敵するような企業は存在しないとラム氏はいうが、インタビューでは、Blue Origin、SpaceXなどの大手の宇宙開発企業ブランド、そして何よりNASAの名前が登場した。「NASAは米国が作り上げた最高のブランドだと思います」と同氏はいう。

「SpaceXやBlue OriginやVirginの名前を挙げれば、私の91歳の祖母でも宇宙開発企業だと知っています。ULAなどの企業も数十年に渡ってロケットで衛星を打ち上げていますが、誰も知りません。SpaceXやBlue Originは宇宙開発事業を一般大衆に知らしめるのに大きな役割を果たしたのです」。

人を火星に送るというElon Musk(イーロン・マスク)氏の計画を少し連想させるが、同氏の火星探査宇宙船Starshipは、プロトタイプ試験段階から先に進んでいない。

夢のある大きなアイデアは人を惹き付けるとラム氏はいう。そして、その実現に向けた道のりで生まれる知的財産によって、投資家たちの気持ちをなだめることもできる。全体像はどうしてもSF的に見えてしまうが、それも織り込み済みなのかもしれない。

とはいえ、コロッサルはマンモスを復活させることなど本気で考えてはいないなどというつもりはない。今回のシードラウンドで調達した資金は、生存可能なマンモスの胚を作り出すのに十分な額だ。同社は、あと4年~6年で最初の分娩にまでこぎつけることを目指している。

画像クレジット:Colossal

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

Salesforceがインドの決済ユニコーンRazorpayに投資、世界2位のネット市場インドへの戦略的投資続く

2021年4月の資金調達ラウンドでの評価額が30億ドル(約3285億円)だったベンガルールを拠点とする創業6年のフィンテックRazorpay(レーザーペイ)は、またも著名投資家を獲得した。Salesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)だ。

Razorpayは米国時間9月20日、米大企業Salesforceのベンチャー部門から「戦略的出資」を受けたと明らかにした。資金は「ビジネス取引向けの銀行業務分野でプレゼンスをさらに高める」のに役立つ、とRazorpayは述べた。

Razorpay、Salesforce Venturesいずれも出資の規模は明らかにしなかったが、Sequoia Capital Indiaの支援を受けているRazorpayは、今回の取引が「業界に効果的に貢献し、今後12カ月で十分なサービスが提供されていない零細事業者にサービスの浸透と経済成長をもたらす」と話した。

Razorpayは零細事業者や企業やのためにオンラインでお金を受け取ったり処理したり、支払ったりしている。つまり、Stripe(ストライプ)が米国やその他いくつかの先進国マーケットで行っているすべてのことを引き受けている。しかしRazorpayはそれ以上のものを提供している。同社は近年、法人クレジットカードを発行するためにネオバンキングプラットフォームを立ち上げた。また、事業運転資金も提供している。

世界の大企業Stripeがまだインドに進出していない中で、Razorpayは業界リーダーになるまでに成長し、東南アジアマーケットへ事業を拡大し始めた。

「Razorpayは、インドのデジタルの未来に投資し、新世界のために賢い決済・バンキングインフラを構築するというアイデアをさらに前進させたいと考えています。Salesforce Ventures、Salesforceとインドでさらに広範に提携することをうれしく思います」とRazorpaymp共同創業者でCEOのHarshil Mathur(ハーシル・メイサー)氏は述べた。

「この資金は、既存投資家からのサポートとともに、手間要らずで統合が簡単な決済・バンキングエクスペリエンスのためのエコシステムを構築するのに役立ちます。当社はまた、事業を拡大して新プロダクトを構築し、このエクスペリエンスを東南アジアの事業者にも届けることを願っています」。

今回の取引はSalesforce Venturesにとってインドのスタートアップへの2回目の投資となる。同社は2021年初め、ハイデラバードを拠点とするDarwinboxの1500万ドル(約16億円)の資金調達ラウンドをリードした

関連記事:Salesforce主導でインドのHRプラットフォームDarwinboxが15.6億円調達、アフリカ進出も検討

「『現金決済の機会がより少ない』経済に向けた動きはパンデミックで加速しました。デジタル決済における2020年の急速な成長はテクノロジーイノベーションの扉を開け、Razorpayは多くのeコマース事業者に選ばれる企業として頭角を現しました」とSalesforce Indiaの会長兼CEOのArundhati Bhattacharya(アルンダティ・バッタチャリヤ)氏は述べた。

「インドだけでなくグローバルでデジタル金融を変革させようとしているRazorpayをサポートすることを楽しみにしています」と2020年Salesforce Indiaに加わったばかりのバッタチャリヤ氏は付け加えた。

1年前にユニコーンになったRazorpayはこのところ毎月40〜45%成長しているという。情報筋によると、同社は現在、新たな資金調達ラウンドを計画しており、現在を大幅に上回る評価額を交渉している。

Google(グーグル)やFacebook(フェイスブック)、Microsoft(マイクロソフト)などを含む多くの大企業が、世界第2位のインターネット市場であるインドへの戦略的投資を追求し始めた。Microsoftはインドの格安ホテルチェーンOyo(オヨ)と戦略的取引を結んだと2021年9月、明らかにしている。

関連記事:マイクロソフトがインドのOyoへの出資を正式発表、旅行・ホスピタリティ製品の共同開発へ

Tiger Global、Falcon Edge Capital、Temasek、SoftBank Vision Fund 2、Coatue Managementといった数多くの著名なグローバル投資家がインドでの投資のペースを加速させているのにともない、インドは2021年これまでに過去最多となるユニコーン27社を生み出し、2020年の11社を上回っている。そしてユニコーンのリストは増え続けている。また、先にTechCrunchが報じているように、a16zのインド暗号資産スタートアップCoinSwitch Kuberへの投資の交渉はかなり進んでいるという

画像クレジット:Razorpay

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードが15万件超の予約が入ったF-150 Lightning生産能力拡大のため約270億円追加投資

Ford(フォード)は米国時間9月16日、発売を予定している全電動トラックF-150 Lightningの生産能力を年8万台に増やすために追加で2億5000万ドル(約274億円)を投資し、450人を新規採用する。この発表は、15万件超のF-150 Lightning予約が入っていることを受けてのものだ。

追加の投資と雇用はミシガン州ディアボーンにある新設のRouge Electric Vehicle Center(ルージュEVセンター)、Van Dyke Electric Powertrain Center(ヴァン・ダイク電動パワートレインセンター)、Rawsonville Components Plant(ロウソンヴィル部品プラント)に振り分けられる、と同社は説明している。

このニュースはルージュEVセンターでのイベントで発表された。このセンターはRouge Complexへの7億ドル(約768億円)の投資の一環で50万平方フィートに拡張された。ガソリンで走るFシリーズのトラックもまたRouge Complexで組み立てられている。

そしてFordはLightningトラックの生産準備を開始したことも明らかにした。これらのプロトタイプは実世界でのテストに使われる。顧客への納車は2022年春の予定だ。

全電動ピックアップトラックは同社の電動化に向けた300億ドル(約3兆2920億円)の投資の重要な一部で、Mustang Mach-Eとともに18カ月以内に発売されるFord EVデビュー車種の1つだ。Lightningは収益という点で最も重要かもしれない。Ford F-150 Lightningの生産は全電動Mustang Mach-E、そして商業顧客にフォーカスした設定変更可能な全電動貨物バンE-Transitの導入に続く。

F-150 Lightningはベース、XLT、Lariat、そしてPlatinumシリーズの4つのトリム、2つのバッテリーオプションで提供される。ボディがアルミニウム合金製のこのトラックは搭載する2つの電動モーターで動き、四輪駆動が標準で独立した後輪サスペンションを備える。ベースバージョンは連邦あるいは州の税控除前で3万9974ドル(約438万円)、一方のXLTモデルは5万2974ドル(約580万円)からだ。この価格にはデスティネーションフィーと税金は含まれていない。

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画像クレジット:Ford

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

自動運転用にレーダーの性能をソフトウェアで向上させるOculiiにGMが数億円規模の出資

レーダーセンサーの空間分解能を最大100倍に向上させることを目標としているソフトウェア開発スタートアップ企業のOculii(オキュライ)は、General Motors(ゼネラル・モーターズ)から新たに投資を獲得した。両社によるとその額は数百万ドル(数億円)に上るという。数カ月前にOculiiは、5500万ドル(約60億5000万円)のシリーズB資金調達を完了させたばかりだ。

関連記事:長い歴史を持つ自律走行車用レーダーの機能向上を目指すOculiiが60億円調達

OculiiとGMは「しばらく前から」協力関係にあったと、CEOのSteven Hong(スティーヴン・ホン)氏はTechCrunchによる最近のインタビューで語っている。GMがOculiiのソフトウェアをどのように使用するつもりなのかということについて、同氏は具体的に明かそうとしなかったものの、GMのハンズフリー先進運転支援システム「Super Cruise(スーパークルーズ)」の機能を強化するために使用される可能性が高い。Oculiiは他にもいくつかの自動車メーカーと協力しており、その中の一社からも出資を受けていると、同氏は付け加えた。

「GMのような企業が、これはすばらしい技術だ、これは将来的に使いたいと言ってくれれば、サプライチェーン全体が注目し、そのソリューションや技術を採用するために、より密接に協力してくれるようになります。それが自動車メーカーに販売されるというわけです」と、ホン氏は語る。

Oculiiは顧客の自動車メーカーのためにハードウェアを製造するつもりはない(ただし、協業しているロボット企業のためにはセンサーを製造していると、同社の広報担当者は述べている)。その代わり、Oculiiはレーダーを製造している企業に、ソフトウェアのライセンスを提供したいと考えている。ホン氏によれば、低価格で市販されているレーダーセンサー(自動運転用に設計されたものではなく、緊急ブレーキや駐車支援などの限定されたシナリオ用に設計されたセンサー)に、同社のAIソフトウェアを使えば、より自動運転的な機能を実現させることができるというのが、Oculiiの主張だという。

「拡張性の高いものを提供する方法はソフトウェアによるものだと、私たちは強く確信しています。なぜなら、ソフトウェアはデータによって根本的に改善できるからです」と、ホン氏はいう。「ハードウェアの世代が新しくなれば、性能がより向上したハードウェアに合わせてソフトウェアは根本的に改善されます。また、ソフトウェアは基本的に、時間が経てばハードウェアよりもずっと早く、安価になっていきます」。

今回のニュースは、レーダーにとって間違いなく好材料になるだろう。レーダーは画像処理に限界があるため、一般的に補助的に使用されるセンサーだ。しかし、LiDARよりもはるかに安価に売られているレーダーの性能を、Oculiiが実際に向上させることができれば、自動車メーカーにとっては大幅なコスト削減につながる可能性がある。

世界で最も多くの電気自動車を販売しているTesla(テスラ)は最近、その先進運転支援システムからレーダーセンサーを外し、カメラと強力な車載コンピュータによるニューラルネットワークを使った「ピュアビジョン」と呼ばれるアプローチを採用することにした。しかしホン氏は、テスラが廃止したレーダーは非常に解像度が低く「既存のパイプラインに何も追加するものではない」と述べている。

しかし、技術が進歩すれば、テスラも必ずしもレーダーを排除しようとはしないだろうと、ホン氏は考えている。「基本的に、これらのセンサーはそれぞれがセーフティケースを改善し、それによって99.99999%の信頼性に近づくことができます。結局のところ、それが最も重要なことなのです。信頼性を、できるだけ多くの9が並ぶ確率まで近づけることです」。

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画像クレジット:Oculii

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Mintの元社長がギグワーカーに金融商品を提供するLeanに約5億円を出資

ギグワーカーや個人事業主は、金融商品に対するニーズがサラリーマンの人たちとは異なる。

Lean(リーン)」の創業者であるTilak Joshi(ティラック・ジョシ)氏は、Mint(ミント)の代表を務めた後、American Express(アメリカン・エクスプレス)やPayPal(ペイパル)でプロダクトの責任者を務めた経験から、この課題を痛感していた。

近年、米国では個人の労働者が増えてきているが、従来の金融機関はそれに「対応できていない」とジョシ氏はいう。

「個人労働者の70%はその日暮らしのような生活をしており、30%は十分な保険に加入していません。個人労働者は、まもなく米国の労働力の大半を占めるようになり、既存のやりとり、プラットフォーム、機関は、彼らをサポートするために急速に進化する必要があります」と彼はいう。

2020年にMintを退社したジョシ氏は、Eden Kfir(エデン・クフィール)氏、Ramki Venkatachalam(ラムキ・ヴェンカタチャラム)氏と共同でLeanを立ち上げ、ギグワーカーのニーズに合わせて「カスタムビルド」された金融商品へのアクセスを提供するプラットフォームで彼らをサポートしようとしている。そして米国時間9月8日、Inspired Capital(インスパイアード・キャピタル)が主導し、Atelier Ventures(アトリエ・ベンチャーズ)、Oceans Ventures(オーシャンズ・ベンチャーズ)、Acequia Capital(アセキア・キャピタル)が参加したシードラウンドで450万ドル(約4億9400万円)を調達したことを発表した。

このラウンドには、DoorDash(ドアダッシュ)の幹部であるGokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏、Instacart(インスタカート)の共同創業者であるMax Mullen(マックス・ミューレン)氏、Uber(ウーバー)の元CPOであるManik Gupta(マニック・グプタ)氏、Postmates(ポストメイツ)の元COOであるVivek Patel(ヴィヴェク・パテル)氏、Bird(バード)のCPOであるRyan Fujiu(ライアン・フジウ)氏など、マーケットプレイス業界の多くの企業が資金を提供している。今回の資金調達により、Leanのこれまでの調達額は約600万ドル(約6億5900万円)となった。他にも、Charlie Songhurst(チャーリー・ソンガースト)氏、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)(Stripeの元幹部)のパートナーであるJustin Overdorff(ジャスティン・オーバードルフ)氏、Coinbase(コインベース)のMarc Bhargava(マーク・バルガヴァ)氏、ANGI Homeservices(ANGIホームサービス)、Coinbase、Plaid(プレイド)の幹部など、注目を集めているエンジェル投資家が同社を支援している。

「個人労働者は、米国のどこよりも厳しい経済状況に置かれています。彼らが経済的な問題を解決するためにすることは、さまざまなギグマーケットプレイスで働くことです。そして、マーケットプレイスが労働者を引き留めてインセンティブを支払おうとすると、労働者はこれをうまく利用する方法を見つけ出します。すると、マーケットプレイスは頼りになる強力な労働力を持つという安定性がなくなり、労働者側も窮地に立たされるという、双方にとって非効率な結果となってしまいます」とジョシ氏はTechCrunchに語った。

画像クレジット:Lean

Leanは、マーケットプレイスと直接提携して金融商品や福利厚生を提供することで、個人労働者を支援することに狙いをつけている。その目的は、ギグワーカーに「コストのかからない資金」「即時支払い」、そして住宅ローンや「低コストから無コストの借り入れ」、HSA(米国の医療用貯蓄口座)や保険などの金融商品の選択肢を提供することで、各マーケットプレイスが労働者の獲得と維持ができるよう貢献することにある。

Leanは、ライドハイリング(ライドシェア)、宅配、医療、建設などの業界で働く1099(個人事業主)またはW2の労働者(会社で働く従業員)を雇用するあらゆる規模のマーケットプレイスと連携している。ジョシ氏は、Leanが労働者の獲得と定着を促進するだけでなく、マーケットプレイスが労働者の手数料からではなく、金融商品やインフラを通じて収益を得る扉を「開く」ポテンシャルをもっていると述べている。

Leanのプラットフォームは、どのマーケットプレイスにも2週間以内で統合できるように設計されているとジョシ氏はいう。同氏によると、Leanはマーケットプレイスとのパートナーシップを通じて、今後数カ月の間に国内の「数十万人」のギグ・ワーカーにサービスを提供する予定だそうだ。

マーケットプレイスにはコストはかからず、労働者側にもコストはかからない。Leanは、プラットフォームを介した金銭の移動にともなう手数料によって収益を得ることができると、ジョシ氏は述べている。現在、同社は6つのマーケットプレイスと取引をしており、さらにもう6つのマーケットプレイスとも取引の話が進行中だ。

同社は、今回の資金調達により、提供サービスを拡大し、マーケットプレイス間の取引拡大を進めていく予定だ。

Inspired CapitalのパートナーであるMark Batsiyan(マーク・バトシヤン)氏は、Leanに惹かれた理由として、Leanのチーム、市場のタイミング、アプローチを挙げている。

「ギグワーカーへのサービス向上には市場で大きな追い風が吹いており、マーケットプレイスは労働者を惹きつけ、維持するための方法を模索しています。また、ティラック(ジョシ)氏はもInspiredの私たちと同じような結論にいたりました。それは、マーケットプレイスがこれらのソリューションを自分たちで構築することはないだろうということです。利益をすぐに使えるソリューションにするためには、Leanのような仲介者が必要です」。と彼はメールで語っている。

バトシヤン氏は、LeanのB2B2Cアプローチがユニークであると考えている。

「プラットフォームとしてのLeanは、そのパートナーシップを活用して、末端労働者へのより効率的な流通を実現することができます」と述べている。

2021年初め、Mintの初代プロダクトマネージャーは、消費者の金融生活の「計画と管理」を支援することを目的としたサブスクリプション型プラットフォーム「Monarch(モナーク)」のために、480万ドル(約5億2700万円)のシード資金を調達した。

関連記事:消費者が家計の「管理と計画」を行うためのサブスク式の財務プラットフォーム「Monarch」が5.3億円調達

画像クレジット:Nattanitphoto / Shutterstock

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

持続可能な低炭素ジェット燃料開発のAlder Fuelsに航空大手UnitedとHoneywellが出資

航空産業は脱炭素化が難しいことで悪名を馳せている。これは部分的には航空機が石油ベースの燃料を使って飛んでいるからだ。

Alder Fuels(アルダーフューエルズ)はそうした状況を変えたいと思っている。Bryan Sherbacow(ブライアン・シャーバコウ)氏率いる新興のクリーンテック企業である同社は、既存の航空機やエンジンに手を加えることなく石油燃料と100%互換性のある燃料として使うことができる低炭素のジェット燃料を開発中だ。現在市場で入手可能な持続可能航空燃料(SAF)はまだ従来の燃料との50対50の割合でブレンドする必要があるため、同社の取り組みは注目に値するものだ。

同社のテクノロジーは航空産業の興味をかき立ててきた。Alder Fuelsは現地時間9月9日、航空大手United(ユナイテッド)とHoneywell(ハネウェル)から数百万ドル(数億円)もの出資を受けることで契約を交わした、と明らかにした。またUnitedとは燃料15億ガロンの購入契約も締結した。航空産業におけるSAF契約としては過去最大となる。

Unitedは年40億ガロンの燃料を消費している、と同社の広報担当は語る。つまり、今回の購入契約は同社が1年間に消費する燃料の40%近くに相当することになる。

ただし、Alder Fuelsの燃料がUnitedの航空機を飛ばすようになる前に、さまざまな種類の材料や製品の基準を定める国際組織、ASTM Internationalが定めた規格を満たさなければならない。その後、AlderとHoneywellは2025年までにテクノロジーを商業化する見込みだ。

Alder Fuelsは2021年初めに正式に事業を開始したが、シャーバコウ氏はここ5年ほど同社のテクノロジーを査定してきた、とTechCrunchとの最近のインタビューで述べた。低炭素燃料を支えるテクノロジー、そして特に原材料はスケーラブルで広範に利用できるべき、ということが同氏のこれまでの取り組みで明白になった。

「我々が模索しているのは、こうした炭素を排出する前の油にどのようにアクセスして、既存の精製インフラの中で使えるものに効率的に変換するのか、ということです」とシャーバコウ氏は話した。

その問題を解決するために、同氏は農業廃棄物のような炭素が豊富な木質バイオマスに目を向けた。農業廃棄物は航空燃料を作るのに使うことができる原油に変わる。Alder Fuelsは、バイオマスを液体に変え、既存の製油所に流し込むような方法で扱える、熱分解ベースのテクノロジーを使っている。同社はまずHoneywellが持つ「Ecofining」水素化処理技術を活用する。最終的な目的はすべての精製設備に合う新燃料を作ることだ。

「すでに産業的に集約されているものの、今日まだ経済的価値がなかったりかなり少なかったりする、かなりの量の木質バイオマスがあります」とシャーバコウ氏は説明する。「しかし我々が利用できるカーボンの貯蔵であるため、我々にとっては大きなチャンスです」。林業、農業、そして製紙産業の企業にとっても新たなマーケットを開拓することになる可能性がある。そうした分野の企業はすでに有り余るバイオ廃棄物を生み出している。

Alder Fuelsの研究は米国防兵站局とエネルギー省から支援を受けており、シャーバコウ氏は航空産業の脱炭素化を進める上での官民提携の重要性を強調した。ジョー・バイデン政権にとって気候変動は大きな関心事であり、持続可能な航空燃料に対するインセンティブは議会が現在議論している3兆5000億ドル(約385兆円)支出案に含まれる可能性大だ。

「移行をサポートするのは政府の役目の1つです。企業の行動を変えるためにインセンティブを与える必要があります。そうでもしなければ、企業は破壊的な変化に抵抗するでしょう」と同氏は述べた。

画像クレジット:United

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトがインドのOyoへの出資を正式発表、旅行・ホスピタリティ製品の共同開発へ

Microsoft(マイクロソフト)は、インドのOyo(オヨ)と「複数年にわたる戦略的提携」を締結し、協力して「次世代」の旅行・ホスピタリティ製品および技術を共同開発することとなった。

米国時間9月9日の発表は、7月下旬のTechCrunchの報道を裏づけるものだ。TechCrunchは、MicrosoftがOyoへの投資を交渉中であり、南アジア市場で最も価値のあるインドのこのスタートアップ企業に自社の技術を提供する方法を検討していると報じていた。

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Microsoftは報道発表の中で、Oyoに対しても戦略的な株式投資を行ったことを確認したが、金額については明らかにしていない。2021年8月の規制当局への提出書類によると、MicrosoftはOyoに500万ドル(約5億4900万円)を投資していた。この投資により、Oyoの評価額は96億ドル(約1兆550億円)となる。

Oyoは、クラウドベースのニーズに対応するためにMicrosoft Azureに切り替え「中小規模のホテルや家庭用の店舗を運営する愛用者に利益をもたらす」ソリューションを共同開発するとしている。「この提携の一環として、Oyoは、Oyoプラットフォームを利用する旅行者向けに、プレミアムでカスタマイズされた室内体験などのスマートルーム体験を開発していきます。MicrosoftのAzure IoTを利用したこの体験には、IoTで管理されたスマートロックやバーチャルアシスタンスに加えて、到着・出発のデジタル登録やセルフのKYC(Know Your Customerの略、本人確認)でサポートされたセルフチェックインが含まれています」。と同社は語る。

Microsoftインドの社長であるAnant Maheshwari(アナント・マヘシュワリ)氏は「Azureのパワーと、Oyoが開発した技術と製品スタックを組み合わせることで、旅行とホスピタリティにおけるイノベーションを加速できることを楽しみにしています。どのようにMicrosoftのクラウドが、Oyoのようなデジタルネイティブに力を与え、業界の変革とイノベーションを加速させ、パンデミック後の時代の課題を未来のチャンスに変えていくのかを見るのは刺激的です」と述べている。

Oyoは、インド、東南アジア、ヨーロッパ、米国に展開する世界最大級のホテルチェーンとして台頭してきたが、積極的な拡大を追求する中で「有害なカルチャー」、ガバナンスの欠如、多くのホテルオーナーとの関係など、いくつかの失策がその成長に傷をつけてしまった。

ホテルオーナーとの関係を改善することを誓った矢先、パンデミックが到来。これを受けてOyoは成長を鈍化させ、2021年初めには世界各国でロックダウンが実施される中、世界中で数千人の従業員をレイオフした。

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パンデミックは、創業7年目のスタートアップに「サイクロン」のように襲いかかったと、CEOのRitesh Agarwal(リテシュ・アガーワル)氏は7月にBloomberg TVに語っている。「何年もかけて作ったものが、たった30日で60%以上も崩れてしまったのです」と述べ、株式公開を検討するかどうかは決めていないと付け加えた。

Airbnb(エアビーアンドビー)に支えられたOyoは、7億8000万〜8億ドル(約857億〜878億9000万円)の資金を持っており、すべての事業の「月次損失」を400万〜500万ドル(約4億3900万〜5億4900万円)に抑えていると、アガーワル氏は最近のオンラインカンファレンスで述べた(同社は、2020年12月には約10億ドル[約1098億円2200万円]の銀行残高があった)。

7月、つまり前述のカンファレンスでアガーワル氏が発言した後、Oyoは6億6000万ドル(約724億8200万円)の負債を受けたと発表した。この件に詳しい人物によると、その負債は以前の負債の返済に充てられたという。

Microsoftとしては、Oyoは同社が国内で行ってきたいくつかの戦略的投資の中で最も新しいものだ。同社は南アジア市場において、ニュースアグリゲーターであり短編動画プラットフォームのDailyHunt(デイリーハント)、電子商取引大手のFlipkart(フリップカート)、物流SaaS企業のFarEye(ファーアイ)など、数多くのスタートアップ企業を支援してきた。

関連記事:GoogleがインドのスタートアップGlanceとDailyHuntに投資、世界第2位市場へさらに注力

画像クレジット:Akio Kon / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

石油・ガス大手BPの投資部門BP Venturesが車内決済プロバイダーRydに13億円出資

石油・ガス大手BPの投資部門であるBP Venturesは、ドイツの車内デジタル決済プロバイダーであるRyd(ライド)に1000万ユーロ(約13億円)を出資すると発表した。声明によると、この新たな資金は、Rydが国外の市場に参入し、提供するサービスを充実するために使用する。

Rydのサービスでは、同社のアプリやスマートカーシステムと統合すると、ユーザーは燃料の購入、EV充電、洗車などのサービスの対価をオンラインで一括して支払うことができる。BPはすでに英国とオランダで、BPmeアプリを通じてデジタル決済の選択肢を提供している。BPは、Rydへの出資と同社との提携により、Rydの安全で柔軟なデジタル決済サービスに学びつつ、自社のデジタルサービスを拡大していきたいと考えている。Rydは、同社の技術を欧州全体のBPの顧客に提供することで、利益を得ることができる。

「車内デジタル決済は、顧客が当社の小売店に期待するシームレスで便利な体験に不可欠な要素です」とBPの欧州・南アフリカ地域のモビリティ&コンビニエンス担当上級副社長であるAlex Jensen(アレックス・ジェンセン)氏は話す。「Rydの技術は、まさにそれを実現するのに役立ち、しかも増えつつあるサービスの幅にも対応しています」。

これは、BPがスマートビークル分野で行う最初の投資ではない。そして、おそらく最後の投資になる可能性も低い。6月には、IoTechaに700万ドル(約7億7000万円)を投資した。IoTechaは、IoTを利用して充電器を電力網に接続し、充電料金の支払いを自動化するスマートEV充電会社だ。こうした戦略的な投資は、最終的にBP Venturesのエコシステムを強化することになる。このエコシステムは、BPが総合エネルギー企業として生まれ変わる力になるとともに、二酸化炭素排出量の削減にも貢献する狙いがある。

Rydは現在、7カ国3000カ所の提携サービスステーションで利用可能だ。また、140万人の直接の顧客に加え、Mastercard(マスターカード)や複数の自動車メーカーとの提携により、最大1億人の顧客にアクセスできる。コネクテッドカーのデータ市場は、2030年までに世界全体で190億ドル(約2兆900億円)に達し、また、燃料以外の小売市場は同年までに世界全体で2850億ドル(約31兆3500億円)に達すると予想されていることから、同社は現在、より多くの車に同社の技術を組み込む戦略に力を入れている。

「Rydは、手間がかからず安全な自動車とのインタラクションを実現したいと考えています」とRydの創業者で会長のOliver Goetz(オリバー・ゴエス)氏は声明で述べた。「BPは、私たちにとってパズルの最後のピースであり、金融、自動車、エネルギーのすべての事業分野における強力な戦略的パートナーとともに、私たちのエコシステムを完成させてくれます。BPは、数千万人のドライバーが、自動車のデータとガソリンスタンドなどの決済システムの両方に接続されたダイレクトデジタル決済システムに移行すると予想しています。この新しい決済方法は、より速く、より簡単で、より快適です。Rydは、欧州におけるこの動きをリードしていきます」。

RydのCEOであるSandra Dax(サンドラ・ダックス)氏によると、同社は2021年第4四半期にBPのガソリンスタンドで初の稼働を見込んでいる。

画像クレジット:REUTERS/Arnd Wiegmann

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

10億件以上の配送実績を持つインド物流システムのデジタル化を進めるDelhiveryが約84億円調達

インドの物流サービス企業であるDelhivery(デリバリー)は、今後2四半期以内に予定されているIPOを前に、さらに1人の著名な投資家から支援を取り付けた。Lee Fixel(リー・フィクセル)氏のAddition(アディション)だ。

グルガオンに本社を置くDelhiveryは、Additionが同社に7640万ドル(約84億円)の出資を行ったことを規制当局に届け出た。市場情報会社のTofler(トフラー)が明らかにしたこの申請書によると、今回の新たな投資はシリーズIラウンドの一部であるという。Delhiveryはこれまでに、Additionの投資額のみを公開している。

10年前に設立されたこのスタートアップ企業は当初、フードデリバリー会社としてスタートしたが、後にインドの2300以上の都市と1万7500以上の郵便番号を対象としたフルスイートの物流サービスにシフトした。同社は、貨物取引プラットフォームを通じて、物流市場における需要と供給のシステムをデジタル化しようとしている数少ないスタートアップ企業の1つだ。

今回の新たな投資は、Delhiveryが2億7700万ドル(約304億6000万円)の資金調達を完了させ、またそれとは別にFedEx(フェデックス)の子会社が1億ドル(約110億ドル)を同社に投資したことが発表されてから、数カ月後に行われたものだ。Delhiveryは2021年前半に、今後6~9カ月以内にIPO申請を行うことを検討していると述べていた。

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Delhiveryのネットワーク 画像クレジット:Bernstein

Delhiveryはインド最大の物流企業の1つである。同社のプラットフォームは荷主、エージェント、そして陸路輸送ソリューションを提供するトラック事業者を結びつける。Delhiveryによれば、そのプラットフォームはブローカーの役割を軽減し、(Delhiveryにとって最も人気のある輸送手段である)トラック輸送などの資産をより効率的に運用して、24時間体制のオペレーションを可能にするという。

このようなデジタル化は、インドの国家経済を長年にわたって停滞させてきた物流業界の非効率性に対処するために非常に重要である。インドでは、需要と供給の計画と予測が不十分であることから、輸送コスト、盗難、損害、遅延が増加していると、Bernstein(バーンスタイン)のアナリストがインドの物流市場について2021年8月発表したレポートの中で指摘している。

Delhiveryの公式ウェブサイトによると、同社には10億件以上の注文を配送した実績があり「インド最大のeコマース企業や大手企業のすべて」と提携しているとのこと。配送の最後の一歩を受け持つ配達員には、2平方キロメートルを超えることのないエリアが割り当てられており、時間を節約しながら1日に何度も配達を行うことができる。

インドの物流市場のTAM(獲得できる可能性のある最大の市場規模)は2000億ドル(約22兆円)を超えると、Bernsteinのアナリストは2021年前半に述べていた。このスタートアップは2020年後半、新型コロナウイルス感染が流行する中、オンラインで買い物をする人が増えたことから、増大する注文需要に対応するため、2年以内に4000万ドル(約44億円)以上の投資を行い、配達隊の規模を拡大することを計画していると語っていた。

インドのスタートアップエコシステムで有名なリー・フィクセル氏は、インドに可能性を見出した最初の国際的投資パートナーの1人だ。同氏が過去10年の間にTiger Global(タイガー・グローバル)を通じて行ったFlipkart(フリップカート)への投資は、この世界第2位のインターネット市場におけるスタートアップエコシステムの成長スピードを加速させた。

それに加えて、フィクセル氏が2020年設立したベンチャー投資会社のAdditionは、すでにインドに注目し始めており、ソーシャル・ネットワークのPublic(パブリック)やネオバンクのJupiter(ジュピター)にも出資している。

フィクセル氏はまた、個人的にもインドのスタートアップ企業に出資を続けている。同氏は現在、ベンガルールを拠点とするコーヒーチェーンのThird Wave(サード・ウェーブ)を支援するための交渉を行っていると、関係者2人が語っている。

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画像クレジット:Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)