海賊、麻薬、汚染、違法漁業など海上監視に最適化された産業ドローン用AI特化のTekeverが約26億円調達

産業用ドローンは、消費者が余暇に楽しむ無人航空機を事業用に補完するものである。その市場は、バッテリー寿命やリーチ、パフォーマンスを向上させるソフトウェアおよびハードウェアテクノロジーの新しい波と、データオペレーション活動の強化を目的にこれらのサービスに投資する企業の増加を追い風に、急速に拡大している。米国時間1月25日、海上展開向けドローンのAI開発に特化した企業が、そのデバイスとサービスに対する強い需要を見据えて、資金調達ラウンドを発表した。

水上の活動を監視および検知するAIを組み込んだドローンを手がけるTekever(テクエバー)が、2000万ユーロ(現在のレートで2300万ドル[約26億円]弱)を調達した。このラウンドをリードしたのはVentura Capital(ベンチュラ・キャピタル)で、Iberis Capital(イベリス・キャピタル)と海洋産業からの複数の匿名の戦略的投資家が参加した。同社は今回調達した資金を、人材の雇用拡大とテクノロジー開発の継続に活用する予定である。

歴史的な海洋大国ポルトガルのリスボンに本拠を置くTekeverは、2001年に設立され、2018年から商用サービスを開始した。だが同社はすでにかなりの期間にわたって収益性を確保しており、今後3年間でCAGR(年平均成長率)60%の成長を見込んでいる。そして実際、これは同社にとって初めての外部資金調達であり、ビジネス機会の増大にともない、テクノロジーの拡張、そしてより広範な組織への販売を視野に入れたものである。

Tekeverの顧客には、違法行為に備えて水域を監視する目的で同社のサービスを利用している各国政府および政府機関が含まれる。また、民間の船舶会社やその他の海洋関連会社も、気象パターンや水上交通など、事業にインパクトを与える可能性のある物理的活動をドローンで追跡している。

Tekeverを創業したのはインテリジェンスとAIの専門家チームで、共同創業者兼CEOのRicardo Mendes(リカルド・メンデス)氏は、自社を垂直統合ビジネスとして位置づけている。同社はドローンと塔載テクノロジー両方の設計と構築を手がけており、そのテクノロジーは、機体の下に広がる水上で起きていることの監視と「読み取り」、さらには次に何が起こるかの予測を行う。

垂直統合されたドローン会社はそれほど珍しいものではないが、より独自性のある側面として、Tekeverがそのスタックを構築した順序を挙げることができる。

「私たちは、ドローン業界の他のどの企業とも正反対の方向からスタートしました」とメンデス氏は冗談交じりに語った。同社はまず地形(同社の場合は水域)を読み取るテクノロジーの構築に着手し、その後、自社のソフトウェアを動作させる目的に適したドローンを構築した。それには機体自体に組み込まれる特別仕様のアンテナ、センサー、電力機能などが含まれている(このことは、現時点では、同ソフトウェアが他の航空機で動作することを本質的に不可能にしている)。一方でこのソフトウェアは、エッジAI、衛星通信、クラウドコンピューティングを組み合わせて使用するように設計されている。

ドローン専用のハードウェアを自前で構築するのは難しい(そして費用がかかる)。しかし、それは同社にとって意図されたものであった。Tekeverは両方のコンポーネントを販売しているが、最も広く展開されているのは、自社フリートのオペレーション、そして「Atlas(アトラス)」というブランド名の、メンデス氏が筆者に「サービスとしてのインテリジェンス」と形容した、ドローンを使った監視サービスの販売である。同氏によれば、このアプローチは同社のプロダクトを可能な限り広範にアクセス可能にするために特別に取り入れられたもので、翼幅2メートルから最大8メートル、飛行時間が20時間にも及ぶドローンは、最大規模の顧客以外にはコストが高すぎることが背景にあるという。

「私たちが答えを出そうとした問いは『富裕国に限らず、世界中で手軽にこれを利用できるようにするには、何をする必要があるだろうか』というものでした」と同氏は語っている。「ドローンはバリューチェーンの一部にすぎません」。

Tekeverがどのように利用されているかの例として、欧州海上保安庁(EMSA)と英国内務省の両方が顧客である一方、アフリカの小さな共和国も顧客に含まれている。こうした機関では、海賊行為、麻薬、人身売買、移民の密入国、汚染、違法漁業、インフラの安全上の脅威に関与する船舶を監視する目的で、同社のテクノロジーが幅広く使用されている。

The Guardian(ガーディアン)紙が最近報じたところによると、欧州の政府機関は難民グループの監視体制強化に向けて、ドローンやその他の軍事技術に数百万ユーロ(約数億円)を投資しているという。これらの投資は不法移民を抑止するものではなく、脆弱な人々に対してさらに危険なルートを取るよう促すだけであるという明確なメッセージがそこには記されている。この分野の他の企業の中には、Anduril(アンドゥリ)のように、彼ら自身の論争を踏み台にして莫大な金銭的報酬を得ていると思われる企業もある。しかし、TekeverのCEO兼創業者は、自身の会社が市場の特定の技術的ギャップを埋めるということだけではなく、その利用は害をもたらすよりも利益をもたらすものであることを確信している。

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「海のような広大な領域では、何が起きているのかわからないことが多く存在します」と同氏はいう。一般的に、組織は水上で起きていることの状況把握を衛星画像に頼ってきたが、ほとんどの衛星画像はユーザーが見るときには数日経過しているため、その方法は理想的ではない。「漁業、密輸、人身売買、移民、これらはすべて、リアルタイムのインテリジェンスが必要な分野です。当社のソリューションは単なる映像にとどまらず、問題解決の糸口になるものです。その目的は、悪い事象が発生する前に行動できることに置かれています」。Tekeverは予測的アナリティクスも使用しているため、何が起こるかを予見することができる。

「私たちが行っているのは、問題発生時にその問題を解決する膨大な量のデータを収集することです」と同氏は述べ、対応に5分余分に時間がかかっただけでも、水の状態が変化する速度のために違いが生じる可能性があると指摘した。例えば、英国内務省の場合、イギリス海峡で移民船を特定し、彼らを岸まで送る手助けをし、潜在的な悲劇的事故を回避することが優先事項の1つであると同氏は指摘した。「メディアは移民問題そのものに焦点を当てていますが、これは大きな人道的問題でもあると思います」と同氏は語る。

Tekeverが今後、そのテクノロジーを発展させる可能性のある方法は山ほどある(方法の海であふれている、ともいえようか)。水域を観察してその意味を理解するには膨大なデータを処理する必要があるが、同時にそれによって同社は大量のデータセットを利用できるようになる、とメンデス氏は説明する。遠洋航海用船舶に搭載されているライダーやレーダーで識別するような、海底での活動を読み取ることはまだできていない。だが同社はこの分野を開拓し始めている。他にも、原油流出の特定と分類が考えられる、と同氏は述べている。

Tekeverは現在、メンデス氏が筆者に「ブルーエコノミー」と表現したものに注力しているが、同社はまた地上においても地歩を固めつつある。その焦点は、極めて複雑な地形を観察する新しい方法の創造を追求し続けることに置かれているようである。同氏はさらに取り組みたい分野として、森林、特に熱帯雨林に言及している。同社は数年前にブラジルのドローン会社Santos Lab(サントス・ラボ)に投資しており、その分野に足場を築いている。

「Tekeverはとても型破りなUAS(無人航空機システム)企業であり、卓越したテクノロジー、何千時間ものオペレーション経験、経験豊富なリーダーシップチーム、そして急成長する市場において驚異的かつ収益力が強いビジネスビジョンを有するマーケットリーダーです」とVentura CapitalのマネージングパートナーであるMo El Husseiny(モ・エル・ハッシニー)氏は声明で述べている。「これらの特性は、VenturaがTekeverをフラッグシップ投資として位置づけた背景をなす要素であり、テクノロジー分野のディスラプターで構成される私たちのポートフォリオと整合するものです」。

「Tekeverは欧州で最も注目されているディープテックスケールアップの1社であり、このチームと協働し、彼らがグローバル市場のディスラプションを創出するのを支援していくことを大変誇りに思います」とIberis CapitalのパートナーであるDiogo Chalbert Santos(ディオゴ・チャルバート・サントス)氏は続けた。「Tekeverがすでに自力で成し遂げていることは驚くべきものであり、今回のラウンドで空は果てしなく広がる(可能性は無限に広がる)といえるでしょう」。(サントス氏は言葉遊びを使わずにはいられないようで、私の心にかなった投資家の1人である)。

画像クレジット:Tekever AR5

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

映画製作者が直接、作品をAmazonプライムビデオやApple TVなどのチャンネルで配信可能にするFilmhub

ストリーミング市場の成長にともない、コンテンツに対する需要も高まっている。だが映画製作者にとっては、従来よりコンテンツ作成が容易になったとはいえ、配給は依然として伝統的なシステムに支配されていることが多い。つまり、多くの映画製作者は、適切なコネがなければハリウッドから締め出されているのが現状だ。Filmhub(フィルムハブ)という企業は、この問題を解決するために、テクノロジーを利用して流通の簡素化と効率化に取り組んでいる。このプラットフォームにより、映画製作者は、Amazonプライムビデオ、Apple TV、IMDb TV、TCL、Tubi、Plexなどの大手を含む100を超えるストリーミングチャンネルに直接配信することが可能になる。

Filmhubは米国時間1月20日、Andreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・ホロウィッツ)がリードしたシードラウンドで680万ドル(約7億7000万円)を調達したことを発表した。

このラウンドには、他に8VC、FundersClub(ファウンダーズクラブ)、Eleven Prime(イレブン・プライム)、Tara Viswanathan(タラ・ビスワナタン)氏(Rupa Health[ルパ・ヘルス]のCEO)、Nick Greenfield(ニック・グリーンフィールド)氏(Candid[キャンディッド]のCEO)、David Fraga(デビッド・フラガ)氏(InVision[インビジョン]の元COO)、Jerrod Engelberg(ジェロッド・エンゲルバーグ)氏(Codecov[コードコヴ]のCEO)が参加した。

Filmhubは、ロサンゼルスを拠点に活動する映画作曲家Klaus Badelt(クラウス・バデルト)氏のサイドプロジェクトとして2016年にスタートした。バデルト氏は「Thin Red Lin(シン・レッド・ライン)」「Gladiator(グラディエーター)」「Pirates of the Caribbean:The Curse of the Black Pearl(パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち)」の他、これまでに100本を超える作品を手がけている。製作費が下がり、より多くの映画が作られるようになる中で、同氏はこの作品ストリーミングの分野に機会を見出したが、強力な配給を得ることはできなかった。バデルト氏はその後、テック業界のベテランで、Square(スクエア)、Mint.com(ミント・ドットコム)、Google(グーグル)などで働いた経験のあるAlan d’Escragnolle(アラン・デスクラニョール)氏とチームを組み、2020年からフルタイムでプロジェクトに取り組むようになった。

Filmhubはそれ以来、ビジネスを成長させ、パートナーとしてストリーミングチャンネルを追加し、権利を放棄せずに作品を視聴者に見つけてもらう簡単な方法を望む映画製作者を増やしていくことにフォーカスしてきた。

画像クレジット:Filmhub

Filmhubはまず、映画製作者にインタビューを行い、彼らのコンテンツが同社と協働するストリーマーの技術仕様を満たしていることを確認する。同社はその後、自動化された技術と自社のセールスチームを活用して、可能な限り多くのストリーミングサービスにコンテンツを提供する。社名は「Filmhub」であるが、デスクラニョール氏は、そのコンテンツは必ずしも長編映画である必要はないと明言している。テレビ番組や短編映画など、プロが作成したコンテンツをシリーズ化することも可能である。ただ、同社の焦点は映画製作者と直接仕事をすることにある、と同氏は語る。

「伝統的なスタジオシステムが映画製作者にとって最良の環境になるとは考えていません。例えば、映画製作者としてスタジオ映画を製作する場合、通常は前払いです」とデスクラニョール氏は説明する。しかし、その映画が公開されれば、映画製作者たちは自分の作品が生み出す収入を共有できなくなるかもしれない、と同氏は指摘する。「クリエイター、そしてオリジナルの映画製作者に力を取り戻し、彼ら自身のライブラリを構築する機会があると信じています」とデスクラニョール氏は付け加えた。

ある意味で、Filmhubが行なっていることは、DistroKid(ディストロキッド)のような他の配信プラットフォームが音楽業界に対して成し遂げてきたことに類似している。これらのプラットフォームは、アーティストたちがレーベルと契約を結ぶことなく、自分たちの作品をトップストリーミングサービスに直接アップロードできる場となっている。

最近のパートナーシップの1つとして、小規模な動画サービスのコンテンツを独自のサブスクリプションで集約するClassPass(クラスパス)風のストリーミングサービス、Struum(ストゥルーム)との協業がある。FilmhubはStruumと協力して、Slamdance Film Festival(スラムダンス映画祭)に参加している映画製作者が作品を配信できるよう支援している。Struumは、スラムダンス映画祭の各タイトルを3カ月間独占的に提供する。そして契約の一環として、映画製作者は最初の1年間、FilmHubとStruum上の利益の100%を受け取ることになる。

Filmhubは通常、配信する映画のロイヤリティ収入の20%を得ている。ただし、各ストリーミングサービスがFilmhubに支払う料金はさまざまである。

画像クレジット:Filmhub

同社は収益の数字を公表していないが、デスクラニョール氏によると、収益は対前年比で3倍に成長し、配信数は数千タイトルから1万タイトルに増加したという。コンテンツは100を超えるストリーミングチャンネルに配信されている。同社はまた、手元にあるデータを活用して、ストリーミングパートナーがFilmhubのサービスでどのようなコンテンツが最適かを判断するのを支援することもできる。これはひいては取引の成立に貢献するであろう。

Filmhubが配信するコンテンツのすべてが新しいわけではない。例えば、Torsten Hoffmann(トーステン・ホフマン)氏が2020年に製作したドキュメンタリー映画「Cryptopia — Bitcoin, Blockchains, and The Future of the Internet」のように、現代的な映画もあるかもしれない。一方で、2014年に公開された、マジシャンのJames Randi(ジェームズ・ランディ)氏を描いた「An Honest Liar」などの古いコンテンツも、ストリーミングプラットフォームでの配信が実現すれば、堅調な第2の人生を迎える可能性がある。デスクラニョール氏によると、Filmhubは50年代、60年代、70年代のクラッシックな作品も配信しており、それらを「エバーグリーン」なものだと考えている。この種の映画やテレビ番組は、今のところテレビではあまり注目されていないかもしれないが、さまざまな視聴者とつながることができるストリーミングサービスに進出する可能性を秘めている。

将来的には、Filmhubは独自の消費者向けストリーミングサービスを立ち上げ、映画製作者のコンテンツをフィーチャーすることを目指していく。同社はこのサービスをデバイスを越えて利用できるようにしたいと考えており、他社の既存のストリーミングプラットフォーム内におけるアドオンとしての利用も視野に入れている。同社は今回の資金調達を受けて、このプロジェクトのためにエンジニアリング、技術オペレーション、セールスなどの人材採用を進めており、現在35名のチームを成長させていく計画である。

「今日の市場では、定評のある映画製作者でない限り、作品が世に出てくるのは非常に困難です。これはストリーミングサービスにとっても消費者にとっても、機会を逸しています。特に、より多様で国際的なコンテンツのポテンシャルがあることを考えると、なおさらです」とa16zのゼネラルパートナーであるAndrew Chen(アンドリュー・チェン)氏は自身の投資について語っている。「業界の流通モデルを前進させることを通して、Filmhubは世界中のクリエイター、プラットフォーム、視聴者にWin-Win-Winの関係を構築しています」と同氏は付け加えた。

画像クレジット:Niklas Storm / EyeEm / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

採血がいらない非侵襲血糖値センサーのライトタッチテクノロジーが1億円の追加調達、量産化に向けた開発・薬事戦略を加速

採血がいらない非侵襲血糖値センサーのライトタッチテクノロジーがシリーズAファイナルとして1億円調達、薬事承認に向け展開加速赤外線レーザーを用い、採血をしなくても血糖値を測定可能な非侵襲血糖値センサーを開発するライトタッチテクノロジー(LTT)は2月4日、シリーズAファイナルラウンドとして、1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、MPI-2号投資事業有限責任組合(MedVenture Partners)。2017年の創業以来の資金調達総額は、補助金などを含め累積調達額約5億円となった。

調達した資金により、量産化に向けた試作器の開発を用いて、臨床試験、薬事承認に向けた展開を加速させる。

世界で4億人ともいわれる糖尿病患者は、毎日指などに針を刺して採血し、血糖値の測定を行っている。そうした患者の痛みや精神的ストレスの他に、体に針を刺すことから感染症のリスクもあり、さらに測定に利用した針やチップは医療廃棄物となるという問題もある。そこでLTTは、従来光源(黒体放射)に比べて10億倍の明るさがある高輝度赤外線レーザーを開発し、高精度の非侵襲血糖測定技術を世界で初めて確立した。これにより、採血なしに約5秒で血中グルコース濃度の測定を可能にした。採血がいらない非侵襲血糖値センサーのライトタッチテクノロジーがシリーズAファイナルとして1億円調達、薬事承認に向け展開加速

人気クリエイターがファンに素に近いリアルな姿の写真を有料で公開するアプリ「Roll」

米国時間1月18日、新アプリRoll(ロール)が発売された。このアプリはクリエイターがファンに対して、より素に近いありのままの姿を公開し、それにより簡単にお金を稼げるようにするというものだ。すでに、Instagram (インスタグラム)の親しい友達向けストーリーやSnapchat(スナップチャット)のプライベートアカウント、Discord (ディスコード)の秘密サーバーへのアクセスを通し、メインのページに載せるほど作り込まれてはいないものの、やはりそれなりに外向けでブランド力のあるものを公開することで一部のクリエイターは課金を行っている。こういったものではクリエイターのPatreon(パトレオン)が介されているが、Rollはこの戦術を合理化し、すべてをRollアプリで完結できるようにしている。同アプリはiOSとAndroidで利用可能だ。

「お気に入りのクリエイターのカメラロールにアクセスできる、というのが弊社の謳い文句です」と創業者兼CEOのErik Zamudio(エリック・ザムディオ)氏はいう。「購読したファンは他では決して見ることのできないクリエイターのコンテンツを見ることができるのです。クリエイターはこれにより、最もリアルな自分自身を表現できるのではないでしょうか」。

もちろん、実際にクリエイターのカメラロールにアクセスできるようになるわけではない。そんなことが起きたらそれこそ大問題である。Rollはクリエイターがよりカジュアルな方法でファンとつながりながら、お金を稼ぐ機会を提供しようとしているのである。ソーシャルメディアへの投稿が仕事だとしても、カメラロールにあるものすべてをアップロードしているわけではない。上手くできたオムレツの写真、失敗した自撮り、気に入ったミームのスクリーンショット、散歩中に見かけた変なものなどさまざまな写真が存在し、こういった写真は慎重に計画されたInstagramのグリッドにはフィットしなくとも、Rollのようなプラットフォームではその魅力を発揮するかもしれない。本物のカメラロールと同様、Rollの投稿に「いいね!」を付けたりコメントを付けたりすることはできない。

クリエイターはRollで月額5ドル(約570円)から50ドル(約5700円)の間で課金することができ、収益の80%を受けとれる仕組みだ。ザムディオ氏によるとほとんどのクリエイターが5ドル程度の課金を選んでいるが、より専門性の高いコンテンツを作っているクリエイターなら高めの価格設定でもいけるだろう。例えばTikTok(ティックトック)のシェフが特別なレシピを動画で紹介すれば、月に数枚の舞台裏写真を投稿する人よりもより高い料金を請求することができるはずだ。OnlyFans(オンリーファンズ)のような競合他社とは異なり、Rollはアダルトコンテンツを許可していない。

携帯電話でRollのアカウントを開いている人気クリエイターのタナ・モジョ氏(画像クレジット:Roll)

ローンチ時には約20名のクリエイターが登録されているが、クリエイター向けポータルを一般公開するまでの間、毎週10〜15名のスターを追加していく予定だという。現在、ミュージシャンのDillon Francis(ディロン・フランシス)氏「Stranger Things(ストレンジャー・シングス)」の俳優Noah Schnapp(ノア・シュナップ)氏の他、Tana Mongeau(タナ・モジョ)氏、Sommer Ray(ソマー・レイ)氏、Stassie Karanikolaou(スタッシー・カラニコラウ)氏などのソーシャルメディアパーソナリティ、そしてユーチューバーのDavid Dobrik(デビッド・ドブリック)氏などが登録されている。

ドブリック氏が写真ベースのソーシャルスタートアップに関わるのは今回が初めてではない。ドブリック氏は後にDispo(ディスポ)となったアプリDavid’s Disposable(デビッズ・ディスポーザブル)を共同設立したことがある。ザムディオ氏をはじめとするRollのスタッフ3人もDavid’s Disposableの構築に貢献したのだが、ザムディオ氏はアプリがDispoにリブランドされる直前の2020年半ばに退社しており、また同氏や同僚が去った理由については回答を避けている。

2021年3月に発売され、大きな話題となったアプリDispoだが、そのわずか1週間後、Insider(インサイダー)がドブリック氏のYouTubeいたずらグループ「Vlog Squad」のメンバーに関する性的暴行疑惑を報じた。ドブリック氏のチャンネル用にグループセックスに関するビデオを撮影しているときに起きたこの暴行疑惑。Vlog Squadの元メンバーで黒人のSeth Francois(セス・フランソワ)氏はドブリック氏のビデオで経験した人種差別についてまとめたYouTubeビデオを投稿し、ドブリック氏のセットで性的暴行を受けたとも話している。Insiderの記事が掲載された直後、ドブリック氏はDispoの役員を退任している。

このような論争の中、Dispoの初期の投資家であるSpark Capital(スパーク・キャピタル)、Seven Seven Six(セブンセブンシックス)、Unshackled(アンシャックルド)などは、アプリへの投資から得られるであろう利益を全額、性的暴行の被害者のために取り組む団体に寄付することを約束した。ドブリック氏はさまざまなブランドとの契約を失ったものの、YouTubeの登録者数は1880万人から1830万人に減少しただけで、今でも週に3本の動画を投稿し、それぞれ約600万から1000万回の再生回数を記録し続けている。そして今回再びドブリック氏が消費者向けテクノロジーに舞い戻るわけだが、この物議を醸したユーチューバーは、Dispoの共同創業者には違いないものの、RollにとってはRollアプリを利用するクリエイターの1人に過ぎないとザムディオ氏は伝えている(同社の宣伝コンテンツにも登場する)。

「Rollをサポートしてくれた大物クリエイターは、デビッドが初めてではありません」とザムディオ氏はTechCrunchに話している。「これは絶対に誤解されたくないことですが、デビッドがDispoを辞めて今ここで別のことをやっている、というようなことではないのです。彼は創業メンバーの1人ではありません」。

後に、ザムディオ氏はさらにメールで詳しく説明してくれた。「デビッドはクリエイティブで賢い人物です。他のすばらしいクリエイターとともに、彼を起用できることをうれしく思います。私たちは全メンバーを対等な立場で見ており、彼らの意見を大切にしています。デビッドはDispoに関わっていたので、Dispoと関連付けられるのは当然かと思いますが、前にも伝えたように彼は(創設者やチームメンバーではなく)単にRollのクリエイターです」。

DispoとRollはありのままの投稿を促すという点で似たDNAを持っている。Dispoでは使い捨てカメラの性質を真似て、翌朝まで撮った写真を見ることができない。ただしDispoがソーシャルネットワークであるのに対し、Rollはクリエイターのマネタイズプラットフォームである。

「David’s Disposableが大成功した後、私たちはクリエイターエコノミーの世界を掘り下げるようになりました」とザムディオ氏はTechCrunchに話している。「そして多くのクリエイターと親しくなり、彼らが経験していることをより深く知るようになるにつれ、みんながコンテンツを有料化したいと考えていることがわかったのです」。

これまでRollは、Airwing Ventures(エアウィング・ベンチャーズ)のDan Beldy(ダン・ベルディ)氏が率いるエンジェル投資家ラウンドで50万ドル(約5700万円)を調達している。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

海洋研究開発機構と鹿児島大、デジカメ撮影による海岸の写真からAIで漂着ごみの被覆面積を高精度に推定する新手法を開発

セマンティック・セグメンテーションを用いた、海岸の写真からの海ごみ検出のイメージ図。写真に対して、ピクセル単位でのクラス分類が行われる。訓練用に2800枚、評価用に700枚の画像データを用いた(写真は山形県提供)

セマンティック・セグメンテーションを用いた、海岸の写真からの海ごみ検出のイメージ図。写真に対して、ピクセル単位でのクラス分類が行われる。訓練用に2800枚、評価用に700枚の画像データを用いた(写真は山形県提供)

海洋研究開発機構鹿児島大学は2月4日、ディープラーニングを用いた画像解析で、デジカメなどで普通に撮影された海岸の写真から、海岸の漂着ゴミを検出する手法を開発したと発表した。

海岸漂着ゴミの実態調査は世界中で行われているが、ゴミの現存量の定量化が行える、汎用性と実用性の面で優れた技術がなかった。人による調査では、経済的負担、時間的制約、さらに範囲も限定されてしまい、精度にも課題があった。ドローンや人工衛星を使う技術も開発されているが、それではコストがかかりすぎる。そこで、海洋研究開発機構の日高弥子臨時研究補助員、松岡大祐副主任研究員と、鹿児島大学の加古真一郎准教授からなる研究グループは、地上においてデジカメなどで簡易的に撮影された画像から、高精度で海洋漂着ゴミの定量化ができる技術の研究に着手した。

ここで採用されたAI技術は、セマンティック・セグメンテーションと呼ばれるもの。ディープラーニングを用いた画像解析技術で、画像内のすべてのピクセルにラベル付けを行い、ピクセルごとに、人工ゴミ、自然ゴミ、砂浜、海、空といったクラスを出力する。そのクラス特有のパターンの学習には、山形県庄内総合支庁から提供された海岸清潔度モニタリング写真3500枚が利用された。そこから正解となるラベルを作成し、AIの訓練や判断の評価を行った。

入力画像、正解ラベルおよびAIによる推定画像の例

入力画像、正解ラベルおよびAIによる推定画像の例

今回の研究では、海岸漂着ゴミを検出した後の画像を、真上から見た構図に変換(射影変換)して、ゴミの被覆面積を推定することも可能であることがわかった。ドローンによる空撮画像から推定した被覆面積と比較したところ、誤差は10%程度だった。

セマンティック・セグメンテーションと射影変換による人工ごみの被覆面積推定結果。海岸漂着ごみ検出後の画像を真上から撮影した構図に射影変換することにより、海岸全体のごみの被覆面積が推定可能であることを示したもの。同手法の精度は、ドローンによる空撮から得られた正解値との比較により検証している

セマンティック・セグメンテーションと射影変換による人工ごみの被覆面積推定結果。海岸漂着ごみ検出後の画像を真上から撮影した構図に射影変換することにより、海岸全体のごみの被覆面積が推定可能であることを示したもの。同手法の精度は、ドローンによる空撮から得られた正解値との比較により検証している

今後は、海岸漂着ゴミの堆積の推定や、プラスチックゴミの個数のカウントもできるように発展させるという。今回の研究から生まれた学習用データセット(The BeachLitter Dataset v2022)は、非商用の研究目的に限って公開される。汎用性の高いシステムなので、多くの人がデータを集め学習させることで、それぞれの地域特有の、目的に合ったAIの開発が可能になり、全世界で活用できるようになるとのことだ。そこで、研究グループは、アマチュア科学者をはじめ多くの人々が参加する市民科学に期待を寄せている。

手持ちのモノを売り支払いに充てられる決済プラットフォームTwigが約40.3億円調達、「グリーン」を謳うがそのサステナビリティにはほころびが見える

Z世代と若いミレニアル世代の消費者をターゲットとし、電子マネーアカウントで衣類や電子機器を売って即座に換金できるロンドン本拠のフィンテックTwig(トゥイグ)が3500万ドル(約40億3000万円)のシリーズAラウンドをクローズした。

今回のラウンドを率いたのは、フィンテック投資専門のFasanara Capital(ファサナラキャピタル)で、Twigによると、LVMH、Valentino(バレンチーノ)、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の現幹部や旧幹部など、他にも数多くの匿名の戦略投資家たちが参加したという。

Twigは2020年創業の新興スタートアップで2021年7月に英国でサービスを開始したばかりだが、英国内で急速に成長しており(Twigのアプリのダウンロード回数は月間10万回を超えており、iOSのApp Storeでファイナンス関連アプリの第6位にランキングされた)、すでに海外進出に向けて準備を開始している。

Twigは、シリーズAで獲得した資金で、米国(2022年第1四半期)およびEU(第2四半期。まずはイタリア、フランス、ドイツを予定)に進出すると目されている。また、Web3とデジタル収集品の流行に注目して製品の機能拡張も予定している。

現時点では、Twigのアカウントは英国内でのみ使用できる。創業者兼CEOのGeri Cupi(ゲリー・クピ)氏によると、現段階で約25万人のユーザーを確保しているという。

同氏によると、典型的なユーザーは大学を卒業したばかりの22歳の働く女性だ。こうした女性は、おそらくワードローブに着れなくなった衣類が山のようにあり、いつでも売りたいと考えているからだ。

Twigでは、他の金融機関のアカウントに送金すると1ユーロの手数料を請求されるが、Twigアカウント同士の送金では手数料はかからないため、口コミで広がり成長したことが初期段階での急成長を加速させたようだ。

また「your bank of things(モノの銀行)」というマーケティングスローガンを掲げているものの、Twigは実際には銀行ではないことも指摘しておく必要がある。Twigのアカウントは「電子マネーアカウント」だ。このため適用される規制に関して銀行とは大きな違いがある(例えばTwigのアカウントは英国の預金保証制度の対象にはならない)。

正式な銀行ではないため、Twigは新市場でいち早く成長することができる。銀行業務ライセンスを取得する必要がある場合に比べて、提供サービスに適用される規制が軽減されるからだ。クピ氏によると、現時点では性急に正式な銀行になるつもりはないという。

数十年前、インターネットおよびオープンバンキングを背景とするフィンテックブームなど存在しない時代の昔ながらの銀行は、バッグ、文房具、音楽などの無料のおまけをつけることで学校を出たばかりの新社会人に営業して口座を作ってもらっていた。最近のフィンテックスタートアップは、最も魅力的な機能セットを競って提供することで若い年齢層の顧客を捕まえようとしている。

ただし、お金を口座に入れてもらうことが依然として主たる目的であることは間違いない。

とは言え、TwigはB Corp認証を取得申請中だ。B Corp認証は社会的目的と環境への配慮、透明性、説明責任を重視していると認められる企業に与えられる。クピ氏によると、同社は、申請の最終段階にあり、現時点では保留状態だが、第一四半期には完全な認証を受けられる見込みであるといい、ユーザーにブランド品を捨てる代わりに売るよう勧めることでサステナビリティと経済循環性を実現していることを強くPRしている。

Twigのウェブサイトでも、環境への影響を抑えるためにカーボンオフセットの取り組みを行っており、その他のイニシアチブにも参加していることが掲載されている。

要するに、人類が気候災害を回避するには、世界レベルでのCO2排出量、つまりは全体的な消費の削減が必要となる。そこで疑問視されるのが「サステナビリティ」を再販売というコンセプトに無理矢理結びつける主張の信憑性だ。再販売には、すぐに査定してもらって現金が手に入るため、逆に消費量が増すリスクがあるからだ。

現在所有しているモノを売って現金が手に入るなら、一度購入したアイテムを手放さずに長く使う場合に比べて、消費者はお金をどんどん使って新しいモノを買うよう仕向けられる可能性がある。別の言い方をすれば、消費を削減してCO2排出量を削減するつもりなら、循環経済とモノの寿命をセットで考える必要があるということだ。再販売に必要な面倒な手続きが削減されることで消費者がモノを買わなくなるかどうかはわからない。逆にもっとモノを買うようになる可能性もある。

これがTwigの謳うサステナビリティにほころびが見える点の1つだ。

この難題をクピ氏にぶつけたところ、同氏は次のような議論(いくらか循環論法的ではあるが)を展開して巧妙に解決して見せた。「中古品の流動性を高めるというTwigの目的はサステナビリティの向上と消費量削減の推進を実現します。というのは、より多くの中古品が買えるようになるからです。その結果新しいモノに対する需要が減り、より多くのアイテムがこの(より活発な)中古品経済を介して循環するようになる。

「基本的に、当社のビジネスは、消費者が自分が持っている古いアイテムをお金に変えられるようにすることで、その古いアイテムに新しい命を与えるというものです。これによって、少なくとも中古市場の供給が増大します」と同氏はいう。「中古市場の需要はずっと増え続けています。当社が中古市場の供給側だけでやっていけるのは、現在、中古市場には供給の追加を求める大きなニーズがあるからです。消費者が手持ちの中古品を売ってお金を得たとしても、そのお金で別のモノを購入するとは限りません」。

「これは当社のユーザーの行動からわかることですが、Twigに送られてくる資金のうち約42%は新しい経験、つまり旅行や経験主導の活動に使われています。ですから、流動性が向上したからといって、必ずしもモノの消費が増大して環境に悪影響を与えるとは限りません。それがこれまでのユーザーの行動から分かっていることです」。

クピ氏はTwigのビジネスを非常にシンプルな次の宣伝文句に集約させている。「当社は資産をトークン化します」。

「Twigでは、例えばGucci Marmont(グッチ・マーモント)のハンドバッグをプラットフォーム上にアップロードします。そして、アップロードされた資産をトークン化して、その価格を提示します」と同氏は説明する。

「当社の目標はこの仕組を外部でも使えるようにすることです。そこで役に立つのが、ブロックチェーンです。当社は資産の流動性を向上させて、消費者が物理的なモノを売って仮想的なモノを入手し、その仮想的なモノを使って物理的なモノや体験を購入するという行為を簡単に行えるようにします」。

「基本的に、ユーザーが簡単に取引できるようにすることが目的です」。

クピ氏にはブロックチェーンと循環経済に関するバックグラウンドがある。例えば、2018年には、デニムのアップサイクルビジネスをLevi’s Albania(リーバイス・アルバニア)に売却している

Twigのホワイトペーパーによると、よく売れる物理的なモノとしては、Nike(ナイキ)、Gucci(グッチ)Chanel(シャネル)、Hermes(エルメス)、その他の高級品メーカーのブランド品などがあるという。このペーパーには「所有の未来の再定義」と「 循環型ライフスタイルで生活を送るためのパワーをZ世代に付与」という内容が記載されている。

クピ氏によると、Appleの電子機器も中古市場で高値がついているという。同氏は、購入対象中古品に、不要になった衣類だけでなく電子機器も追加したところ、それまで女性が9割以上だったTwigの利用者構成が、女性7割男性3割くらいに変化したと指摘する。

Twigは中古品の再販売に関する手続きを代行する。具体的には、中古品を即座に査定して、Twigがその中古品の購入を承諾するとすぐに現金が手に入るので何でも好きなものを買える(Twigでは極めて詳細な購入対象品リストを用意している)。

Twigまでの配送料は無料なので、Twigのサービスを利用することで、Vinted(ヴィンテッド)Depop(ディポップ)といった中古品マーケットプレイスにアイテムを自分で直接販売する場合に発生する面倒な手続きやリスクは基本的に排除される(ただし、自分で直接販売した場合よりも売値は低くなる)。

Twigの倉庫に到着したアイテムが品質チェックに引っかかると、ユーザーは返送料を請求される(そして、おそらく即金で支払われた代金も全額Twigに返金される)。アイテムが売れなかった場合は、アップサイクルとリサイクルが適切に行われているかどうかが確認され、どちらの方法でも対処できない場合は、慈善団体に寄付される。環境に悪いため、ごみ廃棄場送りにはしない。

クピ氏によると、Twigは現在成長重視フェーズであるため、再販ビジネスで大きな利益を出すことは考えていないという。

提示する買取価格は、動的に変化するさまざまな要因によって変わる。前述のホワイトペーパーによると、Twigは「市場ベースの価格設定アルゴリズム」を使用して、中古市場の100万点を超える商品を分析し「ブランド、アイテムのカテゴリー、市場セグメントに応じた適切な再販価格を提示している」という。

その前提の中核をなすのは、消費者にとっての総所有コストという概念を再販価値の変化に織り込むという考え方だ。これは購入パターンをシフトさせるパワーを秘めている可能性がある(例えば消費者は、環境的なダメージを与える低再販価値のファストファッションではなく、高級ファッションを選択してその価値を長期間に渡って楽しむ選択をするようになるかもしれない)。

Twigは銀行のような機能(Twigの口座を作るとTwigVisaデビットカードが発行され、国内および国際送金を行うことができる)と本業の中古品再販サービスを組み合わせたものというが、ターゲットであるZ世代と若いミレニアル世代向けの宣伝文句だ。こうした世代の若者たちは中古品市場の倹約性とサステナビリティの両方にますます強い関心を寄せている。

Twigがターゲットとする年齢層を見れば、同社のマーケティングが循環経済による環境への配慮に重きを置いている理由がわかる(「Twigは循環経済を簡単に実現し、サステナビリティの高いライフスタイルを選択できるようにします」とグラフィックを多用したレトロ風のウェブサイトは謳っている)。

特にZ世代はサステナビリティ世代と呼ばれ、この世代の若い消費者は「モノを所有することよりも使うことを優先する」とTwigのホワイトペーパーに書かれている。

こうしてみると、銀行の機能を、文字どおり経済的価値を保存する場所ではなく、再販価値の交換所および仲介者として捉え直すことが非常におもしろく見えてくる。消費者は、あらゆるモノを擬似通貨に変えて、所有したいモノややりたいことの支払いに充てることができる(ハイテクによるバーター取引の再発明と言ってもよいだろう)。

しかし、Twigのビジネスにブロックチェーンが深く組み込まれていることを考えると、同社の主張するサステナビリティには別のほころびが見えてくる。

Twigのテクノロジーは最初からブロックチェーンを基盤として構築されているが、同社のウェブサイトのユーザー対面型の説明からそのことに気づくのは難しい。TwigのシリーズAで公開されたプランでは、Z世代向けの環境配慮型マーケティングがまったくうまくいかない危険がある。というのは、PRでは、Twigを「世界初のWeb3対応グリーン・ペイメント・インフラストラクチャー」と称し、その立ち上げに、最近のWeb3ハイプをうまく利用しようとしているからだ。

この来たるべき機能により、ユーザーは、実世界の資産を「トークン化」して「数秒で取引可能にできる」と、リリースノートには書かれており、さらに次のように続く。「Twigを使用すると、デジタルアイテムと物理アイテムをマネタイズして新しい方法で取引できます。このアプローチにより、ユーザーはチェックアウトページで手持ちのアイテムを売って、暗号資産を購入したり、衣類や電子機器を売ってNFTを購入したりできます」。

暗号資産とNFTの取引が「グリーン」に行われることが本当に希望のあることなのかどうかはよく考えてみる必要がある。

結局、暗号資産に使われるエネルギーコストそれ自体、地球に壊滅的な悪影響を与える要因のように見えなくもない。

例えばケンブリッジ大学が2021年行った研究は、1つの暗号資産(ビットコインなど)だけで、アルゼンチン全体の年間エネルギー消費量を超えていることを示している。

2021年3月に実施された別の研究によると、ビットコインはノルウェーと同じ量のエネルギーを消費したとし、ビットコインのCO2排出量はまもなくロンドンの大都市圏全体で生成される排出量に匹敵するようになると予測している。

要するに、ブロックチェーンベースの暗号資産(もちろんトランザクションを承認するためにプルーフ・オブ・ワークを必要とするもの)の悪名高い非効率性は、サステナブルとは程遠いものに思えるということだ。

しかもブロックチェーンはもっとひどいエネルギーの浪費に関わっている。すなわち、NFT(代替不可能なトークン)の台頭である。NFTでは、ブロックチェーンの上にデジタル収集品を取引するレイヤーを追加することで、エネルギー集約的なトランザクションが必要となり、そうしたトランザクションが促進される。

(ファッションやステータスシンボルとしての)NFTをめぐる現在の騒動と そうしたデジタル資産の小売取引、およびエネルギーを燃やして収集品ピクセルをシフトさせることで非常に手っ取り早くお金を作り出すことができるという提案によって、このエネルギーの焚き火にさらなる燃料が注入されている。

2021年、あるデジタルアーティストの分析によって、1つの平均的なNFTは、EUに住んでいる1人の人間の1カ月分の電力消費量に相当するCO2を排出することが示された。以前と同様、ユーザーにトークン化とモノ(または、デジタル収集品)の取引で忙しくするように促す機能を、どのような形であれ「グリーン」に稼働させる方法を思いつくのは難しい。

しかし、クピ氏はこの反論にもひるまない。

第一に、Twigが基盤としているブロックチェーンインフラストラクチャーは他のブロックチェーンよりもエネルギー効率が高いと同氏はいう。

「ブロックチェーン自体はテクノロジーとして環境に悪いわけではありません。ブロックチェーンにはさまざまな応用事例があります」と同氏はいう。「当社の基盤となっているHyperledger Sawtooth(ハイパーレッヂャーソートゥース)というブロックチェーンは、他のソリューションに比べてエネルギー消費量が極めて小さいという特長があります」。

「つまり、当社はエネルギーを大量に消費するソリューションの使用を最小限に抑えたいと考えています」。

また、Twigは内部のエネルギー消費量を計算して、環境への影響を数量化しており、対抗策としてカーボンオフセットの取り組みも行っているという。

さらには、大気圏からCO2を排除するプロジェクトも支援している。

ただし、個々のプロジェクトがどの程度実行可能で信頼できるものかは、まったく別の問題だ。

Twigは自社のエネルギー消費を最小化し、CO2排出量をオフセットしようとしているかもしれないが、それより大きな環境への影響が、二次使用つまり、TwigのユーザーとサプライヤーがTwigを利用した結果として発生する消費、エネルギー使用、CO2排出量によって起こる可能性がある。

こうした関連のある間接的な影響(サステナビリティレポートの用語でScope 3排出量と呼ばれる)を計算することは、企業の直接的なエネルギー使用を内部的に監査するよりもはるかに難しい。とはいえ、Scope 3排出量は企業のCO2排出量の大きな部分を占める傾向があることも確かだ。このため、そうした間接的な取引、排出量、影響をなきものとして片付けてしまうことはできない。

Twigは、カーボンオフセットによって商品の配送にともなうCO2排出量を相殺するなど、明確な姿勢でScope 3排出量対策に取り組んでいる。また、B Corp認証を取得しようという野心も称賛に値する。

しかし、Twigによって拡大も縮小もするかもしれない消費者需要やトレンドに基づいて、最終的に発生するエネルギーコストを予測するのは非常に難しい。

ユーザーに暗号資産を購入し、NFT取引を始めるよう促すことによってエネルギーコストが発生することは間違いない。そして、たとえTwigが中古品の流動性を高めることで、消費者が新品を購入する需要が低下し、新製品の実質生産量を削減することができるとしても、このような大量のエネルギー消費にともなうコストによって環境へのプラスの影響が相殺されてしまう危険がある。

とはいえ、支払いに使用できるものがこのように根本的に見直されると(あらゆるモノで支払いができる。トークン化された価値の世界では、理論上、消費者は実際のお金を使う必要がない)、消費活動の大きなシフトにつながり、循環経済に実際に目立った変化をもたらすことができる。その結果、数十年に渡る資本主義を特徴づける使い捨て消費の悪循環から抜け出すことができる。

別の言い方をすれば、(認証をサポートすることで偽物に対抗できる)ブロックチェーンベースのトークン化と(分散台帳インフラストラクチャによって完全な所有履歴を把握することで実現される)安定度の高い査定のおかげで、モノの再販時の価値をもっと確実に予測できるなら、消費者は、持っているモノを丁寧に扱う気持ちになるかもしれない。モノの寿命が維持されれば高い売値がつくからだ。そうなれば、世界の産業はそもそも現在の半分だけモノを作れば足りるようになり、資源の枯渇によって地球が機能不全に陥る重圧から解放される。

これには確かに一理ある。

あらゆるモノを売って極めて簡単に支払いができるようにすることでお金の価値が重要視されなくなることは、価値、所有、富に対する考え方を修正するために必要な最初の一歩になるかもしれない。

クピ氏は次のように説明する。「現金を使う代わりに、自宅にある不要になったモノを使ってNFTを買うことができます。例えば使わなくなった古いiPhone(アイフォーン)を売ってNFTや暗号資産を買ったり、体験を買うことができます。ニューヨークまでの旅行費用に充てたり、次回の職業教育コースの支払いに充てたりできます。つまり、Twigの目的は、市場の流動性を高めることです。人々が使わなくなった資産を売ることでその資産に新たな第二の命を与えることなのです」。

「当社の信念は、財布にも地球にもやさしい結果をもたらすことです」。

Twigのビジョンは自身を支払いプラットフォームに変えることです。ユーザーや顧客の代わりに物理的なモノを支払い代金に変えるプラットフォームです。

「現時点では、Twigは単なるB2Cプラットフォームに過ぎませんが、ゆくゆくはB2B2Cプラットフォームにしたいと考えています。将来的には、さまざまなプロバイダーの決済ゲートウェイとして接続する予定です」とクピ氏はいい「いくつかの大手小売業者」とTwigのインフラストラクチャへの接続を許可する契約を結んでいると話した(小売業者の名前は明かしていない)。

「当社がやろうとしているのは、要するに、富の定義の再発明です」とクピ氏は付け加え、お金の概念が大きく様変わりしていると説明する。「自分が所有しているものがすべてお金として扱えるとなると、富の見方も変わってきます」。

「富とは、従来の定義では、家や車など、大きな資産の価値です。しかし、たとえばワードローブの価値は通常資産の一部とはみなされません。我々はこれを変えたいのです。すべてのモノに即時の流動性があれば、モノを現金とみなすことができます。現金だろうとGGマーモントのハンドバッグだろうと違いはないのです。ポンドで何かを買いたい場合、現金でもハンドバッグでも使えるのです」。

Twigが普及すれば、決済の未来は今よりずっとビジュアルで物質的なものになる可能性があります。例えばeコマース決済ウインドウに鋳造しておいたNFTをドラッグアンドドロップして中古のiPhoneを購入する。

あるいは、限定版のナイキのシューズを売って、ずっと楽しみにしていた都市滞在型の春休みを取る。

ダイヤモンドで覆われたすばらしい宝石を売って高級不動産を買うといった具合だ。

若い消費者たちはコモディティ化された価値交換可能なモノの世界をすでに違和感なく受け入れているようだが、年配の消費者たちはどうだろう。クピ氏は、ブーマー世代やX世代が大枚をはたいて買ったモノを手放して支払いに充てるという新しいやり方に納得できると考えているのだろうか。

サイン入りの初版本や貴重なビニールのレコードが将来の決済方法の一部に取り込まれることになるだろうか。

「正直、その答えは私にもわかりません」とクピ氏はいう。「現時点では、Twigに対するZ世代の反応は極めて良好です。また、英国のミレニアル世代、我々がターゲットとしている20代の若者たちの反応も上々です。英国外の市場に進出した際には状況は変わるかもしれません」。

画像クレジット:Twig

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

韓国でJoby Aviationがエアタクシーサービス開始へ

米国カリフォルニア州を拠点とする電動垂直離着陸機のスタートアップ企業であるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)が、韓国最大の通信会社であるSK Telecom(SKT、SKテレコム)と提携し、韓国でエアタクシーサービスを提供することを計画している。両者は米国時間2月6日に、カリフォルニア州マリーナにあるJobyの製造工場で、戦略的提携契約を締結した。

地上と空の旅のより良い統合を提供するために、このエアタクシーサービスは、T Map Mobility platform (レンタカー、駐車場、配車サービス、その他の交通関連サービスからなるサブスクリプションベースのモビリティ・アズ・ア・サービスを提供するSKテレコムのスピンオフ企業) と、TマップとUber(ウーバー)が2021年共同で創業したジョイントベンチャーの配車サービスUTを活用する。シリコンバレー発のUberにとっては創業後8年目にして韓国市場への初めての進出だ

JobyとUberの歴史は、両社が2019年に、Uberの都市部での航空タクシーサービス立ち上げの計画を後押しするために始まった。2020年、UberはJobyのシリーズCに5000万ドル(約57億7000万円)を投資し、さらに7500万ドル(約86億5000万円)を投じて、JobyによるUberの空中ライドシェア部門であるUber Elevate(ウーバー・エレベート)の買収を支え、両社のパートナーシップを拡大した。これらの提携により、米国市場でのサービス開始時には、Jobyのライドシェアサービスは、JobyまたはUberのいずれかのアプリを通じて乗客に提供されることになる。よって、韓国のユーザーにもUTとの同様のアプリ統合が行われる可能性がある。

SKテレコムもJobyも、いつ、どこでエアタクシーサービスを開始するかについては明らかにしていないが、両社が発表した声明の中では、主要都市の交通渋滞を解消するために、韓国国土交通省が提唱する、2025年までに限定的なUAM(都市空中移動)サービスを商業化することを目標とするK-UAM(Korean Urban Air Mobility)ロードマップへの支持が表明されている。この計画では、まずソウル首都圏に1〜2路線を設置し、10年後までに10カ所のエアタクシーターミナルを設置して、すべてのターミナルが路線バスや地下鉄、その他の移動手段に接続されるようにする予定だ。

SKテレコムは、韓国国内UAMの早期安定化を推進する政府主導のコンソーシアムの「UAM Team Korea」(UAMチームコリア)のメンバーである。同コンソーシアムのメンバーは民間業者で構成されており、他に現代自動車、大韓航空、仁川国際空港公団などが参加している。

JobyのJoeBen Bevirt(ジョーベン・ベバート)CEOは「4200万人以上の人々が都市部で生活している韓国は、Jobyにとって、空中移動を日常生活の一部にし、人々が時間を節約しながら二酸化炭素排出量を削減するためのすばらしい機会を提供するでしょう」と述べている。

韓国での活動の一方で、Jobyは米国内での活動にも力を入れている。先週もTechCrunchが、Jobyが最大航続距離150マイル(約241km)、最高速度時速200マイル(約320km)の第2世代の試作機「S4」をテストするために、サンフランシスコ湾上でのエアタクシーの連続飛行の許可を求めていると報じたばかりだ。また、低騒音であることから、市街地へのアクセスが可能だとも主張している。

関連記事:サンフランシスコ湾上での「空飛ぶタクシー」飛行テストをJoby Aviationが計画

画像クレジット:Joby Aviation

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

マイクロソフトがMac版OneDriveの苦情に対応、全ファイルをローカル保持する方法を説明

マイクロソフトがMac版OneDriveの苦情に対応、全ファイルをローカル保持する方法を説明

マイクロソフトがmacOS 12.1以降のOneDriveアプリにつき「ファイルのローカル保存」オプションをなくし、実質的にファイルオンデマンドを強制したことで、ユーザーから様々な苦情が寄せられていました

この件につきMSが「Files On-Demand Experience(ファイルオンデマンド経験」を紹介するブログ記事を更新し、全てのOneDriveファイルをMacローカルに保持しておく方法などを説明しています。

現在テスト中のmacOS 12.3ベータでは、OneDriveが同期機能に使っていたKernel拡張が利用できなくなり、代わりにアップルのFile Providerフレームワーク使用が必須となりました。これを受けてMSはOneDriveアプリを更新したところ、ファイルオンデマンド機能を強制することになったわけです。

ファイルオンデマンド機能とは、全てのファイルをローカルに保存してストレージを圧迫することなく、必要になったときにクラウドからダウンロードして使えるようにする仕組みのこと。

最新版のOneDriveアプリでは本機能を無効にするオプションが削除されており、基本的にファイルはローカル保存されません。アプリ更新後には、同期済みのファイルがMacローカルから消されたとの声もありました。

なぜ、ファイルオンデマンドを事実上の強制としたのか。MSはブログで同機能をWindowsでは2017年に、Macでは2018年から提供しており、初めはオプトイン(ユーザーの同意を得てから有効にする)のみだったのが、デフォルトでオンに切り替える上で、どのぐらいのユーザーがオフにするかを慎重に監視してきたいきさつを説明。そしてWindowsとMacともに本機能を無効にしてるユーザーは非常に少数だったことを語っています。

そして「お客様のセットアップで何か問題が発生した場合は、サポート担当者にご連絡いただき、問題を診断させていただきます」とのことです。つまりMacでのトラブルは以前より劇的に減っており、それでも苦情があれば個別に対応すると示唆しているようです。

その一方でMSは、全ファイルをMacローカルに保持しておくことが「一部のユーザーにとって重要なシナリオ」だと認めており、そのための最良の方法は、「常にこのデバイス上に保持する」を選んでファイルをピン留めすることだと述べています。

さらにフォルダをピン留めしておくと「現在その中にある全コンテンツと、新たに追加されたコンテンツが端末に保持されます」として、ファイルをフォルダごとローカル保存する(1つずつピン留めしなくてもいい)方法を教えています。

このやり方を使えば、OneDriveの全ファイルをローカルに保持できます。まずFinder上でOneDriveフォルダを参照し、アイコン表示に切り替え、アイコン間の空白を右クリックして「このデバイスで常に保持」を選ぶという手順です。

マイクロソフトがMac版OneDriveの苦情に対応、全ファイルをローカル保持する方法を説明

Microsoft

これで当面は凌げる見込みですが、MSは「macOSとWindowsの両方で、この機能をより簡単に設定できる方法を積極的に検討しています」と付け加えています。

さらにMSは、一部ユーザーがOneDriveフォルダを閲覧する際に表示が遅いと経験した理由や、その回避策についても説明しています。詳しくはブログ記事をご確認ください。

最後にApp Store版アプリでのオートセーブに関する問題にも言及されていますが、こちらは最新版の「(バージョン)22.002.0201.0005で修正されています」と追記されています。

ともあれ、当面は「Finder上でOneDriveフォルダごとピン留め」により全ファイルをMacローカルに保持できるわけです。今後、よりMacユーザーに寄り添ったアップデートがやって来ると期待したいところです。

(Source:Microsoft。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

健康管理システムCarelyを運営するiCAREが19億円のシリーズE調達、健康ビッグデータを活用するプロダクト開発加速

健康管理システムCarelyを開発・運営するiCAREが19億円のシリーズE調達、健康ビッグデータを活用するプロダクト開発を加速

健康管理システム「Carely」(ケアリィ)を開発・運営するiCAREは2月7日、シリーズEラウンドとして、第三者割当増資および複数の金融機関からの融資による総額19億円の資金調達を実施すると発表した。引受先は、リード投資家のインキュベイトファンドなど。累計資金調達額は43.8億円となった。

調達した資金により、Carelyの認知拡大に加え、従業員への健康投資が事業成長につながる有用性を証明するために、健康ビッグデータをより一層活用するプロダクト開発を加速する。またそれらに伴う、人材採用と組織体制の強化に注力する。

iCAREは、「働くひとの健康を世界中に創る」をパーパスとし、2016年にCarelyの開発・運営を開始。コロナ禍以前は、人事・総務が抱える健康管理(健康診断・ストレスチェック・長時間労働対策など)を自動化し、業務工数を削減するSaaSとして評価を得ている。

2020年9月からは、Carelyに蓄積される健康ビッグデータを活用した健康経営コンサルティングを開始。2022年1月時点における累計契約企業数は500社を超え、アカウント数はサービス開始から年平均成長率121%で伸び続けているという。直近では「持続的な事業成長を支えるための健康管理の基幹システム」として評価が高まり、従業員数1万名を超える企業への導入が進みアカウント数が伸びているそうだ。

サムスン、廃棄漁網由来のスマホで持続可能性への取り組みを強化

韓国のエレクトロニクスの巨人、Samsung(サムスン)は、ここ数年サステナビリティ(持続可能性)を派手に宣伝し、同社のエコシステムに影響をあたえている。「コーポレートシチズンシップ」などのスローガンや、環境に優しいサプライチェーンや材料、製造の強い推進など、今まで以上にグリーンな世界を強調している。Galaxy for the Planet(地球のためのGalaxy)プロジェクトの一環として、アップサイクルプログラムプラスチック包装の廃止など数多くの取り組みに続いて同社が繰り出す最新の妙技は、捨てられた漁網の再利用による環境保護だ。

関連記事
古いデバイスに新しい役割を与えるサムスンのアップサイクルプログラム
サムスン、プラスチック包装を廃止へ

米国時間2月9日のGalaxy新機種発表を前に、同社は新しい材料が製品ラインナップのどこに居場所を見つけるかを垣間見せた。強調したのは、プラスチックの使い捨てをやめることによる効率向上と、再利用材料(特に、消費財再利用材料)や再生紙などの環境に優しい材料の使用をさらに強化することだった。

実際に意味のある影響を与えることを確かめるべく、同社は毎年64万トン廃棄されている漁網に注目した。少なくともこの一部を収集し、再利用することで少しでも海洋をきれいにする取り組みを、会社は誓約した。その結果、捨てられた漁網に絡みつかれていた海洋生物にとって、水辺の環境は少しでも改善されるだろう。

廃棄された網を海に残さないことがどの程度の環境的効果を生むのかは不明だが、マスコミに取り上げられる効果は多少なりともあるだろう(画像クレジット:Samsung)

Samsungは2021年の報告書でこれまでに数多くの善行をなし、一部のパッケージをデザイン変更したことでプラスチック使用を20%削減し、製品に省エネ機構を加え、500万トン近くの「電子廃棄物」を収集し、製造工程廃棄物の95%の再利用を確保していることを主張している。同社は、米国、ヨーロッパ、および中国で100%再生可能エネルギーも実現している。さらに、Carbon Trust Standard(カーボントラスト標準)による、二酸化炭素、水、および非リサイクル材への依存削減などの認証取得も進めている。

海洋プラスチック汚染に対し、環境および「全Galaxyユーザーの生活」に良い影響を与える方法で取り組むことを誓約する、と同社はいう。ということは、Galaxy以外の携帯電話を持っている人の生活は過去とまったく変わらないということか、それは、どうもありがとう。

冗談はさておき、そして岩礁から漁網などのごみを片付けるために数日間潜水服で過ごしたことのある1人として、これはエレクトロニクス巨人による前向きな行動だと私は思う。果たしてこれが、目に見える影響を環境にあたえるかどうかはまだわからない。Samsungは、年間64万トンの漁網のうちどれだけを海洋から取り除こうとしているのかを明らかにしていないが、コミュニケーションと測定が続いていることには希望がもてる。Samsungや他の大手メーカーが互いにグリーン化を競い合い、気候変動に対する理想的な解決策ができるまでに地球を焼け焦げにしないための役割を果たして続けてくれること願うばかりだ。

Samsungの努力に拍手を送る。そして、もしみんなが携帯電話を1年半ではなく3年毎に買い換えるようにすれば、もっと目に見える影響があるはずだ。

画像クレジット:Samsung

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Meta、ハラスメント対策としてVR空間Horizon Worldsなどに「境界線」機能を追加

Metaは、バーチャルリアリティ空間「Horizon Worlds」と「Horizon Venues」でのハラスメント対策として「パーソナルバウンダリー(境界線)」という機能を展開する。各アバターには半径2フィート(約61cm)のバブルがあり、互いに4フィート(約122cm)前後まで近づくことができなくなる。

画像クレジット:Meta

もし誰かがあなたのパーソナルスペースに入ろうとしたら、近づきすぎた時点でその人の前進は止まる。しかし、MetaはThe Vergeに対して、アバターが互いの間を行き来することは可能であり、ユーザーが隅や出入り口に閉じ込められることはないだろうと語っっている。

このパーソナルバウンダリー機能は、ユーザーが無効にすることはできないもので、Metaがハラスメント対策として以前追加した、他の人のパーソナルペースに入るとアバターの手が消えるという機能をベースにしている。Metaが12月にHorizon Worldsを米国とカナダの18歳以上の全員に公開する直前、ベータテスターが自分のアバターが見知らぬ人に体を触られたと述べていた

いずれは、パーソナルバウンダリーの半径を変更できるようになるかもしれない。ユーザーは他のアバターとハイタッチや拳を突き合わせることはできますが、そのためには腕を伸ばす必要がある。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のKris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Meta

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(文:Kris Holt、翻訳:Katsuyuki Yasui)

NTTドコモが月550円の「homeでんわ」で固定電話に参入、既存固定電話機と固定電話番号をそのまま利用可能

NTTドコモが月550円の「homeでんわ」で固定電話に参入、既存固定電話機と市外局番から始まる固定電話番号をそのまま利用可能

NTTドコモが固定電話サービスに参入します。モバイルネットワークを経由しながら既存の固定電話機と固定電話番号をそのまま使える「homeでんわ」を3月下旬から提供します。

「homeでんわ」では、固定電話機に、専用端末「homeでんわ HP01」を電話線でつなぐことで、工事不要で利用可能。現在固定電話を利用しているユーザーも簡単に「homeでんわ」に移行できます。

NTTドコモが月550円の「homeでんわ」で固定電話に参入、既存固定電話機と市外局番から始まる固定電話番号をそのまま利用可能

Wachirawut Priamphimai / EyeEm

料金は「homeでんわ ライト(月1078円)」と「homeでんわ ベーシック (2178円)」の2プランを用意します。また、ドコモのスマートフォン、またはホームルーター「home 5G」を契約中のユーザーが「homeでんわ」を利用する場合、「homeでんわ セット割」が適用され、月額基本料金が528円割引となり、「homeでんわ ライト」は毎月550円から利用できます。

NTTドコモが月550円の「homeでんわ」で固定電話に参入、既存固定電話機と市外局番から始まる固定電話番号をそのまま利用可能
契約期間の設定はなく、解約金などの費用も発生しません。なお、初期費用として、契約事務手数料2200円、番号継続登録料2200円がかかります。また、緊急通報の場合は市外局番ではなく、070/080/090番号での発信となります。

(Source:NTTドコモEngadget日本版より転載)

デジタルデザインプラットフォームCanvaがより良いデータストーリーテリングを目指し英Flourishを買収

Canva(キャンバ)はオーストラリア時間2月2日、ロンドンに拠点を置くデータビジュアライゼーションのスタートアップFlourishの買収を完了したと発表した。買収の金銭的条件は公表されていない。

今回の買収は、ビジュアルコミュニケーション企業であるCanvaの月間アクティブユーザー数(MAU)が7500万人を超え、過去12カ月間で3000万人以上増加した中でのことだ。

Duncan Clark(ダンカン・クラーク)氏とRobin Houston(ロビン・ヒューストン)氏が2016年に設立したFlourishは、BBC、Sky(スカイ)、Deloitte(デロイト)、Moody’s(ムーディーズ)などの企業が、データポイントを消化しやすいチャート、グラフ、ビジュアルに変えることができるよう、データビジュアライゼーションツールを提供している。Crunchbaseによると、80万人以上の顧客をCanvaの傘下に引き入れることになる同社は、これまでベンチャーキャピタルで約100万ドル(約1億1500万円)を調達している。

Canvaの共同創業者兼COOであるCliff Obrecht(クリフ・オブレヒト)氏はTechCrunchに対し、Flourishの44名の従業員全員がCanvaに加わることになると述べている。

シドニーを拠点とするCanvaは2013年に設立され、これまでに5億7000万ドル(約656億8000万円)以上のベンチャーキャピタル資金を調達してきた。最近では、2021年9月に2億ドル(約230億5000万円)のベンチャーラウンドを実施し、その際の同社の評価額は400億ドル(約4兆6105億円)とされた。今回の買収は、ベンチャーラウンドでの資金調達の一部ではない。オブレヒト氏によると、Flourishとの交渉は資金調達の前から始まっていたとのこと。

同社の共同創業者兼CEOであるMelanie Perkins(メラニー・パーキンス)氏は2021年9月のTechCrunch Disrupt 2021で、同社の買収戦略についてこう語った。「世の中には、いくつかの異なるタイプの企業があるような気がします。喜びをもたらすことに本当に集中している人たちと、ヒエラルキーや構造、そういったものを重視する人たちです。純粋に価値を提供することに集中している人は、実に重要です」。

来月中には製品が統合され、あらゆるデータソースを接続して、リッチで魅力的なビジュアルに変換する新機能が追加される。これには、スプレッドシートからテンプレートを選んでダイナミックチャートを作成できるようにしてほしいというような、顧客からの要望も含まれているとオブレヒト氏は述べている。

Flourishの買収は、KaleidoやSmartmockupsなど、2021年に行われた他の2社の買収に続くものだ。Canvaのキャッシュフローはプラスだが、オブレヒト氏は直近の増資について「人材、製品、M&Aを通じて成長するための『軍資金』を持つことは重要です」と語った。

「我々は、Canvaの中核となるデータストーリーテリングというビジネスコミュニケーションの重要な部分を担う企業を買収しています」と彼は続けた。「Canvaはこの点を最重要視し、データストーリーテリングを民主化するFlourishの買収を加速させ、当社のビジュアルストーリーテリングと組み合わせることで、真の相乗効果を得ることができました」。

関連記事:デジタルデザインのCanvaが静止画・動画から背景を消すKaleidoを買収

画像クレジット:Canva

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

瞑想アプリCalmが高齢者介護の負担軽減を目指すヘルスケアテック企業Ripple Health Groupを買収

瞑想アプリ「Calm(カーム)」は、サンフランシスコに拠点を置くヘルスケアテクノロジー企業「Ripple Health Group」を買収することを発表した。買収の条件は公表されていない。Calmはこの買収により、メンタルヘルスケアでの野望を加速させるとしている。買収後、Ripple Health GroupのCEOであるDavid Ko(デビッド・コー)氏は、Michael Acton Smith(マイケル・アクトン・スミス)氏とともにCalmの共同CEOを務める。Calmの共同創業者であるAlex Tew(アレックス・テュー)氏は、共同CEOを退任しエグゼクティブチェアマンとなる。

2019年に設立されたRippleは、ユーザーと適切なヘルスケアの選択肢を結びつけ、差し迫った健康上の問題を解決するソリューションを構築している。1月に登場されたRippleの最初の製品2つは、社会の高齢化に焦点を当て、プロおよび家族内の介護者による介護の負担を軽減することを目指している。

Rippleのチームは今後Calmに加わり、Calmの既存の雇用者向け製品であるCalm for Businessに代わるCalm Healthの構築に注力する。Calm Healthは、ケアの範囲を超えてメンタルヘルスをサポートすることを目的としており、近日中にリリースされる予定だ。Rippleのチームは、現在のヘルスケア技術と統合し、安全かつ簡単に使用できるCalm Healthのソリューションを構築することを目指す。Calmは、介護の負担軽減を目的とした製品の開発も進めていくという。

Calmの新共同CEOとなるデビッド・コー氏は声明でこう述べている。「2019年からCalmのアドバイザーとして、カテゴリーと流通チャネルの両方を再定義し、メンタルヘルスの未来を開拓するチームの能力を目の当たりにしてきました。Calmは、世界をより幸せに、より健康にすることをミッションとしています。Rippleのチームとテクノロジーにこれ以上ぴったりな会社はありません。同社に参加できることを信じられないほど光栄に思います。マイケル(・アクトン・スミス)と一緒にCalmをヘルスケアに導入することを楽しみにしています」。

Rippleに入社する前、コー氏はデジタルヘルス企業であるRally Healthの社長、COO、取締役を務め、消費者のケアへのアクセスを容易にすることを目的としたモバイルソリューションを開発した。

Calmの共同創業者で共同CEOであるマイケル・アクトン・スミス氏は、声明でこう述べた。「デイビッド(・コー)のビジネス感覚、卓越した運営能力、ヘルスケア企業のスケールアップの実績は、Calmが新たな事業に参入し、カテゴリーの未来を形成していく上で、非常に貴重なものとなるでしょう」。

Calmによる買収は、同社が新機能「Daily Move」を発表し、身体活動とビデオコンテンツに初めて進出してから数週間後に行われた。この機能は、ユーザーが体を動かすための簡単なエクササイズをガイドするものだ。Calmはこの新機能が、従来の瞑想を始めるのが難しいと感じている人々にとって、マインドフルコンテンツへのエントリポイントになると考えている。また、Calmは最近、最大6つのアカウントを含む「プレミアムファミリー」サブスクリプションプランを新たに導入した。この新しいサービスは全世界で年間99.99ドル(約1万1500)円で提供されており、個人向けのプレミアムプランは年間69.99ドル(国内価格6500円)だ。

Calmは、他の瞑想アプリとともに進行中のパンデミックの中で健闘し、ユーザー数が急増している。同社はこれまでに1億件以上のダウンロードを誇り、毎日平均10万人の新規ユーザーを獲得しているという。2020年12月、CalmはシリーズCラウンドで7500万ドル(約86億4000万円)を調達し、同社の評価額を20億ドル(約2304億円)に押し上げた。既存投資家のLightspeed Venture Partnersが同ラウンドをリードした。

画像クレジット:Calm

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(文:Aisha Malik、翻訳:Aya Nakazato)

リファラル採用SaaSのMyRefer、タレント・アクイジションSaaS「MyTalent」のベータ版をリリース

リファラル採用プラットフォームを提供するMyReferは、欠員補充などの短期的な採用ニーズを充足させる短期的な「リクルーティング」ではなく、中長期を見据えて会社を成長させるために転職潜在層から優秀なタレントを持続可能に獲得する「タレント・アクイジション」を実現するHRX(Human Resource Transformation)構想を発表した。

第1弾として、採用候補者との「つながり」を管理することで、掛け捨て型の採用から積立型の採用活動に変えるタレント・アクイジションSaaS「MyTalent(マイタレント)」のβ版を本日、2022年2月7日より提供開始する。

MyTalentでは、採用候補者のタレントプール構築、アプローチ、持続可能な仕組み化までを一元管理。過去の採用候補者で当時見送りとなった人材、社員の紹介での候補者、退職社員、ホームページの問い合わせなどから登録があった人材など、あらゆる応募チャネルから形成されるタレントデータを蓄積する。また、採用サイトへの来訪やメール反応から興味スコアを自動計測したり、過去の辞退・不合格理由からメールテンプレートを設計、ファン度をもとに最適なスカウトメールを送信、採用率向上を目指すという。

人材情報を蓄積していくタレント・アクイジションの時代へ

海外のHR市場では、欠員補充などの短期的な採用ニーズを充足させるために人材紹介や求人広告から母集団を形成して選考する短期的なリクルーティングではなく、中長期を見据えて会社を成長させるために転職潜在層へ採用マーケティングを行い、優秀なタレントを持続可能に獲得するタレント・アクイジションの概念が一般化してきているという。

代表の鈴木貴史氏は「日本企業がより競争力を高めるには、人をベースに事業を作り、優秀なタレント人材を獲得することが最重要課題です。その上で企業成長を促進させるために、候補者を資産化して戦略的にタレントを獲得、育成する『タレント・アクイジション』へと変革していく必要性を感じ、本件のリリースに至りました」と語った。同社は、リファラル採用SaaS「MyRefer」、タレント・アクイジションSaaS「MyTalent」を皮切りに、戦略的採用マーケティングを支援するプラットフォーム構想を進めていくという。

ブロックチェーン分析ツール「Dune Analytics」がCoatue主導で約80億円調達、従業員16名でユニコーンに

暗号批判者の多くは、Web3分野はミームマネーに支えられていると主張する。それらの人々にとって、Coatue(コーチュー)がブロックチェーンスタートアップの6942万ドル(約80億円)のシリーズBをリードしたニュースは、あまり驚くことではないだろう。

今回投資を受けたのは、ノルウェーの暗号分析プラットフォームであるDune Analytics(ドゥーンアナリティクス)。同スタートアップの評価額は10億ドル(約1152億円)に達した。このクラウドソースデータプラットフォームは、暗号の世界の動きを分析するダッシュボードとして、より好まれるものに成長した。Multicoin CapitalとDragonfly Capitalも、従業員16名のこのスタートアップの資金調達ラウンドに参加した。

ブロックチェーンには膨大な量のトランザクションデータが蓄積されており、Duneのようなプラットフォームは、投資家がそのデータからより多くの洞察を得られるように、Ethereum(イーサリアム)、Polygon(ポリゴン)、Optimism(オプティミズム)、Binance Smart Chain(BSC、バイナンススマートチェーン)、xDAIの各ブロックチェーンの動きを分析しようとしている。

Duneの創業者たちは、ラウンドを発表するブログ記事で「暗号データには膨大な情報が含まれていますが、インセンティブのある有能なアナリストと優れたツールがなければ、この情報は表面に出てこないままです」と述べている。「今回の資金調達により、我々は暗号データをよりアクセスしやすいものにするという当社のミッションをさらに強化し、100万人のDuneウィザード(Web3データアナリスト)をWeb3にもたらすことを約束します」。

Coatueの今回の投資は、2021年8月に実施されたDune Analyticsの800万ドル(約9億2000万円)のシリーズAに続くものだ。

関連記事:分散型「マーベル」のようなNFTメディア帝国を目指すPixel Vault、約115億円の資金を調達

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

データワーカーのためのスーパーアプリを構築するAcho、シード資金調達を実施

Vincent Jiang(ヴィンセント・ジャン)氏がソフトウェア開発者として働いていた頃、同氏の毎日の仕事は、金融アナリストが取引戦略における財務報告諸表を作成するためのテーブルを構築することだった。

同氏はしかし、この作業をエンジニアに頼るのではなく、アナリスト自身が行うことも可能ではないかと考えた。それには、きちんと機能する適切なツールが必要だ。

それが、データワーカーのためのスーパーアプリ「Acho(アチョ)」のアイデアの始まりだった。

ジャン氏は、共同創業者のSamuel Liu(サミュエル・リュウ)氏と協力して、2020年5月に会社を設立。Y Combinator(Yコンビネーター)の2020年夏のバッチを通過し、今回220万ドル(約2億5000万円)のシード資金を調達した。このラウンドはGoat Capital(ゴート・キャピタル)が主導し、Liquid2 Ventures(リキッド2ベンチャーズ)とCapital X(キャピタルX)が参加した。

Achoは、既存のデータインフラやITリソースの助けを借りずに、企業のデータ資産をパフォーマンスダッシュボード、プロジェクト管理、ウェブアプリなどのビジネスアプリケーションに変える。

「データチームが現在直面している最大の問題は、リテラシーです」と、ジャン氏はTechCrunchに語った。「何年もSQLを書いていない人は、SQLを使いこなせないでしょう。だからこそ、Achoを使えば、チームのために共同データベースを構築でき、深い技術的知識がなくてもデータを利用できるようにしようと、我々は考えたのです。リアルタイムデータベースのためのGoogle Sheet(グーグル・スプレッドシート)のようなものです」。

Achoのダッシュボードの一例(画像クレジット:Acho)

現在、Achoの顧客として50以上のチームが、データ、チームメイト、アプリケーションを1つにまとめるために、このアプリを使用している。ジャン氏によれば、3人だった同社のチームは、この3カ月で11人に増えたという。

2020年にYCを卒業した後も、製品ができてからまだ1カ月しか経っていなかったため、ジャン氏とリュウ氏は資金調達を少し延期し、顧客からより多くの支持が得られるのを待つことにした。結果的には、かなり早い段階で資金調達を完了させることができ、これには彼らも驚いたという。

「私たちの手がけている分野が、これほど強い関心を呼ぶとは思いませんでした」と、ジャン氏はいう。「私たちと同期のバッチだった企業の中には、1~2年のうちにデータ領域でユニコーンになった会社もあり、投資家からの需要が非常に大きいことを理解しました。しかし、希薄化を避けるために最初は少だけ資金を調達して、顧客にもっと集中したいと考えています」。

そのため、ジャン氏は今回調達した資金を、顧客が求めている機能やサービス、インフラを構築するために使用するつもりだ。また、毎月50%ずつ増加する顧客に対応するため、チームの規模を拡大したいとも考えている。

Goat Capitalの創業者であるRobin Chan(ロビン・チャン)氏は、Justin Kan(ジャスティン・カン)氏とともに、ジャン氏とリュウ氏が「本物のビジネスを構築する」ことに集中していると思い、彼らの迅速な牽引力に感銘を受けたと述べている。

「ヴィンセントは、強力なコアチームを構築した、非常に気骨のある起業家です」と、チャン氏は付け加えた。「それこそが、エンタープライズビジネスのこのカテゴリーで我々が惹かれる点です。世の中では、SaaS製品に資金が殺到していますが、そのために企業やベンダーの領域で多くの断片化が生じています。私たちが求めている人材は、データの組織や循環システムを構築し、会社の運営を、特にリモートというパラダイムの中で、よりスムーズにできる人たちです。このような断片的な製品を使って共同作業をするのは、人々にとってますます困難になっています。データに関する共通の基盤が必要です。それこそがヴィンセントが構築しているものであり、それは非常に強力です」。

画像クレジット:Acho / Acho co-founder Vincent Jiang

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「デスクを持たない労働力」管理HRプラットフォームのSnapshift、市場拡大に向け約51.9億円調達

このいわゆる「大量自主退職時代」には、多くの現場作業員(看護師、トラック運転手など)が新型コロナウイルス感染流行をきっかけに自分の生活を見直しており、その一方で旧来の企業はこの新しい世界秩序に苦心している。従業員はまた、より良いコミュニケーションも求めているため、このようなコミュニケーションをアプリ化することは理に適っている。

フランスを拠点とするSnapshift(スナップシフト)は、レストラン向けのスタッフ管理ウェブソリューションとしてスタートし、Bpifrance(ビーピーアイフランス、フランスの政府系投資銀行)とFemmes Business Angels(フェム・ビジネス・エンジェルズ)から390万ユーロ(約5億1000万円)の資金を調達した。しかし、この会社は明らかに賢いアイデアを思い付いていた。そしてそれは、私たちが今、生きている時代に合わせて作られたようなものだ。

今やこのHR(人的資源)プラットフォームは、いわゆる「デスクレスワークフォース(デスクを持たない労働力)」を管理するためのプラットフォームとして生まれ変わった。これは、かつてブルーカラーやフロントラインワーカーと呼ばれていた人々のことを指す今風の言葉である。

Snapshiftは今回、4500万ドル(約51億9000万円)のシリーズAグロースエクイティ資金を調達した。このラウンドはHighland Europe(ハイランド・ヨーロッパ)が主導し、既存投資家であるBpifranceとUL Invest(ULインベスト)も参加した。

Snapshiftは、2021年に同社のサービスに対する「大きな需要」があったことを受け、現在はSubway(サブウェイ)、Pizza Hut(ピザハット)、Spar(スパー)、Amorino(アモリーノ)、Biocoop(ビオコープ)、Fitness Park(フィットネスパーク)、Columbus Cafe(コロンブス・カフェ)、Carrefour(カルフール)など、6000社以上の顧客を抱えているという。

今回の資金調達は、欧州のレストラン、ホテル、小売業など、すべての中小企業にサービスを拡大するために使用される予定で、スペインが最初の国際ターゲット市場となる。

Snapshiftのオリジナル製品は、スタートアップ企業やレストランの起業家であるOlivier Severyns(オリヴィエ・セヴェリンス)氏が、自身のスタッフ当番表を管理するために作ったものだった。その後、同氏は他の企業向けにSnapshiftを起ち上げることを決めた。現在では70名以上の従業員を抱えているが、2022年には150名に増員することを目指している。

セヴェリンス氏は、次のように述べている。「私たちの使命は、中小企業が人事関連のあらゆる事柄を理解し、最適化するための支援をすることです。給与管理やスタッフのスケジュール管理を簡素化し、刻々と変化する社会法や雇用法などの複雑な問題についてガイダンスを提供します。Snapshiftの顧客の多くは、新型コロナウイルスが招いた持続的な人材確保の問題から影響を受けています。Snapshiftの製品によって、顧客は管理システムを近代化し、信頼と透明性を促進することで、従業員にとって『働きがいのある会社』にすることができるのです」。

Highland EuropeのパートナーであるJean Tardy-Joubert(ジャン・タルディ・ジュベール)氏は、次のように述べている。「私たちは、広範なホスピタリティおよびサービス業界で、Snapshiftが解決しているまさにそのようなペインポイントに悩む無数の企業と話をしました。多くの業界が、ますます深刻さを増している人材不足の問題に直面している今、Snapshiftのミッションクリティカルなプラットフォームを他の業界に導入する大きなチャンスがあると、私たちは確信しています。オリヴィエと彼のチームが、このような短期間で成し遂げたことに非常に感銘を受けています」。

セヴェリンス氏は「当社の最大のライバルはExcel(エクセル)です。当社の顧客の80~90%は、Excelから初めてのデジタルスケジューリングソリューションに移行しています」と付け加えた。

しかし、SnapshiftにはSkello(スケロ)とPlanday(プランデイ)というSaaSの競合企業が存在する。

同じくフランスを拠点とするSkelloは、これまでに5440万ドル(約62億7000万円)を調達しており、デンマークのPlandayは、7310万ドル(約84億2000万円)を調達している。このように、HR機能をシンプルなアプリにするための競争が繰り広げられているのだ……。

画像クレジット:Snapshift founder Olivier Severyns

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

セレブとビデオチャットできるCameo、限定アートワークなどが手に入るNFTプロジェクト「Cameo Pass」発表

Lamborghini(ランボルギーニ)からTwitter(ツイッター)まで、誰もがWeb3の魅力的で冷たい水に足を踏み入れ、さまざまなレベルの成功を収めている。そして今回、Cameo(カメオ)もこのクラブに加わることになった。

有名人に動画を注文できるアプリとして知られるCameoは米国時間2月3日、NFT(非代替性トークン)をベースにした「Cameoのタレントとファン、そしてWeb3の熱烈な支持者」のためのコミュニティ「Cameo Pass(カメオ・パス)」を発表した。

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2月17日より、ファンは0.2ETH(記事翻訳時点では約7万円)でCameo Passをミント(作成)することができる。このパスの所有者は、限定リリースのアートワークの入手、特別な対面イベントやバーチャルイベントへの参加、そしてCameoの新機能への早期アクセスが可能になる。

このNFTのコレクションはOpenSea(オープンシー)上で展開され、Doodles(ドゥードゥルズ)コレクションのBurnt Toast(バーント・トースト)氏や、Letters(レターズ)コレクションのVinnie Hager(ヴィニー・ヘイガー)氏、そしてCameoを通じてパーソナライズされたアート作品を販売しているアーティストのLuke McGarry(ルーク・マクギャリー)氏によるアート作品が出展される。

Cameo Passの所有者は「有名人とのQ&A、挨拶、ビバリーヒルズのCameo House(カメオ・ハウス)でのローンチパーティーなどに特別にアクセスできる」と、Cameoはメールで述べている。しかし、Cameoに所属するどの有名人がこのプロジェクトに関わっているのかと、TechCrunchが質問したところ、同社は名前を明かさなかった。

「Web3の興隆は、セレブリティ、アスリート、クリエイターとの交流および収益化において、最も重要かつ有望なトレンドの1つとして注目されています。Cameoは、ファンとタレントのためのミッションを推進するために、Web3がどのように利用できるかを検討しています」と、同社はメールでコメントした。「私たちは、Cameoでファンとタレントの双方に価値を提供するための新しい方法を、これからも引き続きテストしていくつもりです。NFTの立ち上げで得た収益は、コミュニティの成長とエンゲージメント、そしてファンとタレントの交流に焦点を当てたさらなるWeb3プロジェクトの探求に再投資されます」。

会員制のNFTコレクションの中には、実際にはそれほど独占的ではないと批判を受けているものもある。また、企業評価額133億ドル(約1兆5000億円)と言われるマーケットプレイスのOpenSeaでさえ、盗難脆弱性攻撃の被害に遭う可能性がある。OpenSeaは最近、プラットフォーム上で無料で作成されたNFTの80%以上が詐欺やスパムであることも明らかにした。その結果を受け、OpenSeaはユーザーが無償でツールを使ってNFTを作成できる回数に制限を設けた。

「私たちはプラットフォームのセキュリティを真剣に考えており、OpenSeaのような信頼できるパートナーと協力して、私どものコミュニティを保護し、より広範なエコシステムでの盗難を防止できるようなポリシーを導入しています。当社のスマートコントラクトについては、社内および第三者監査人による徹底的なセキュリティ監査を実施しています。また、ユーザーの資産を保護し、安全に利用していただくための教育リソースを提供することも計画しています」と、CameoはTechCrunchに語っている。

YouTube(ユーチューブ)やPatreon(パトレオン)など、いくつかのクリエイター向けプラットフォームがNFTの導入を検討しているが、Cameoは着実にその計画を進めている。しかし、同社やその潜在的な消費者にとって、この有料のコミュニティは、ファンが本当に参加したいと思うものにならなければならない。とはいえ、Tom Felton(トム・フェルトン)からのメッセージビデオに699ドル(約8万円)も喜んで払う人がいるのなら、まだ存在していないコミュニティに550ドル(約6万3000円)くらい喜んで払うかもしれないが。

画像クレジット:Cameo Pass NFT

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

禁酒スタートアップの序盤戦

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさんこんにちは!今日は、シンプルな料理にこだわった。私たちの持ち場の、肉とポテト、豆のプロテインとグルテンフリーのデンプン。すなわちスタートアップの活動だ。ということで今回は、私たちがとてもすばらしいと思うスタートアップのニュースをご紹介する。

個人的な話で恐縮だが、私はお酒とは複雑な事情を抱えていた。最終的には飲酒を完全に止めた。なので、先々週Reframe(リフレーム)が私の視界に入ってきたとき、私は興味を持った。

このスタートアップは、まだアルコール依存症ではないがアルコール摂取量を減らしたい、あるいは完全にやめたいと考えている人に焦点を当て、アルコール摂取量を減らすためのアプリを提供している。飲酒に限らず、あらゆる薬物中毒や依存症、その問題を解決するための市場は巨大だ。私がこのことを知っているのは、酒の量を減らしたり、完全にやめたりしようとしている多くの人たちと、話をできる機会があるからだ。パンデミックの中で状況が悪化していることも付け加えておこう。

なので、Reframeが最近急速に成長していることを知っても驚きはなかった。同社はAtlanta Venturesから140万ドル(約1億6000万円)を調達した後、Y Combinatorに参加している(2021年夏のクラスで、私はお気に入りの企業の1つとして挙げている)。アクセラレータープログラム終了後に340万ドル(約3億9000万円)を調達し、つい最近1250万ドル(約14億4000万円)のラウンドをクローズした。最後の資金調達ラウンドは、2021年末に行われ、資金調達後の評価額は1億ドル(約115億2000万円)となった。

このスタートアップは明らかに何かをつかんでいる。そして、ありがたいことに、同社はその結果を詳細に話してくれた。

同社のCEOであるVedant Pradeep(べダント・プリディープ)氏に話を聞いたところ、Reframeはこの6カ月間でARRが約79%の複利で拡大したという。また、プリディープ氏は、同社では過去12カ月間に毎週10.3%の成長が見られたという。その結果、1月28日までに計950万ドル(約10億9000万円)のARRが発生したが、先週初めにプリディープ氏がメッセージを使ってその数字を1000万ドル(約11億5000万円)に修正してきた。

さらに良いことに、認知行動療法や日記などのツールを組み合わせることで、人々の飲酒量を実際に変化させることができている。プリディープ氏によると、約88.63%のユーザーが2カ月で「飲酒目標を達成した」と報告しているという。さらにCEOは、自社のデータに基づいて、このデータは「彼らの飲酒量が50%(以上)減少したことを意味します」と付け加えた。

大したものだ。

さて、私は薬物関連の営利目的のケアには少々うるさい。そこで私は、プリディープ氏に会社の価格モデルや、Reframeに支払うだけのお金がない人たちに対する方針について話を聞いた。少なくとも私の基準では、この会社は公正なバランスをとっている。

テクノロジー界のリーダー、著名人、悪党が皆、大金を得ようと暗号資産の世界に頭から突っ込んでいるように見える今、Reframeは現実の問題を解決することもお金を稼ぐ方法の1つだということを思い出させてくれる。最近のスタートアップの価格傾向を考えると、なぜこの会社の最新の評価額にもう1つゼロが加わっていないのかが不思議だ。

そして、お酒といえば

今日のテーマであるお酒を続けよう。次はワインだ。それはすべてだ。

ワインについて学ぶ時間は決して無駄なものではない。Reframeの顧客でないのなら、ワイン通でいるのは楽しい過ごし方だ。友人と椅子を並べて、ゆっくりと頭の中に酔いを回すことが好きな人をを酔わせるのが好きな人は、カリフォルニアのしっかりしたカベルネとともにシャブリを楽しむ方法を知ることで食卓が華やぐだろう。

しかし、すべてのワインが飲むためのものではない。その中には、実際に投資に適したものがある。それこそがVinovest(ビノベスト)が、ワインの価格上昇に賭けることができるプラットフォームを開発している理由だ。最近同社は、顧客が個々のワインに投資できるサービスをリリースした。以前のVinovestは、ワイン投資のカテゴリーで、ロボアドバイザーによるサービスに力を入れていた。簡単に言えば同社は、これまで手の届かなかった高級ワインのような、代替投資の選択肢を求める人々が増えていることに賭けているのだ。

このVinovestのニュースを取り上げたのは、2021年に運用資産残高(AUM)が500%成長したことをはじめとして、何かが起きようとしているからだ。同社の勇猛果敢な広報担当者であるWilliam Ruben(ウィリアム・ルーベン)氏によれば、Vinovestは25万本以上のボトルをユーザーの名のもとに管理しており、それらは「世界各地にある特注の倉庫」に保管されているという。

暗号資産の急増や、デジタルコレクション購入の動きなどの中で、おそらくワイン投資は、ありふれた401(k)により多く組み込まれるようになるだろう。もしそれがうまく行けば、Vinovestの市場への賭けは、楽しみの多い果実を実らせることができるだろう。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)