Puma、1986年の最高にマニアックなシューズRS-Computerを再発売

今どき自分の歩数を測定するのに困ることはない。しかし、自分がそうしていることを他の人に確実にわからせるにはどうすればいいだろうか? これみよがしにスマホや時計を5分毎に見るのは面倒だ。では、今ここに歩数管理コンピュータが靴の外に飛び出していて誰が見てもわかるようになっている靴があると言ったらどうだろうか? それはPuma。1986年に生まれ、2018年に再び生まれる——ほんの少し。

RS Computerはパーソナルコンピューター時代初期に起きたつまづきのひとつだ。みんなAmigaやMacを買っているのだから、コンピューターシューズも買うに違いないと誰もが思った。そうはならなかった。言うまでもなく。

しかし、1986年にまったくクールでなかったものが、30数年たった今、不思議と人を引きつける。しかも、歩数をチェックしたくなるたびにコマンドラインインターフェースのパソコンと専用16ピンケーブルでつなぐ必要がなくなった。

そう。再発売されたRS Computer(RSは “running system”の意味で “robo-shoe” ではない)は明後日、限定小売店舗でごく限られた数だけ販売される。エレクトロニクスは小さくするのではなく(その気になれば実際完全に隠すこともできた)、現代のデバイスで使えるようにするためにのみ変更された。そのとおり——Apple IIeやCommodore 64を引っ張り出す必要はない。

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あのケーブルの代わりにBluetoothがあり、ユニットの中にある加速度センサーば歩数や距離をもっと正確に測ってくれるだろう。最大30日分のデータを保存可能で、micro USB経由で充電する。

私はこの巨大コンピューターに文字通りネジがついていているのが気に入っている、赤と黒のボタン(バッテリーの端子に似ている)はおそらく何の役目も果たしていないだろうがそこにある。これは間違いなく人々の注目を集める靴だ。調子に乗ってCasioの電卓時計をはめてZack Morrisの巨大携帯電話を持ったりしないこと。それはやりすぎと言うもの。限度を知ることが大切だ。

86足のRS Computerが明後日(米国時間12月13日)、ロンドン、ベルリン、東京のPumaストアおよびKithを始めとする少数の小売店で販売される。今すぐ地元の店に電話をして在庫を確認すべきだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Spikeは糖尿病患者をソーシャルに見守るアプリ

糖尿病患者にとって、自分の血糖値レベルを常に監視しておくことは容易ではない。 Spike Diabetesは、家族と医者が患者の状態をリアルタイムで本人に通知できるようにするサービスだ。さらに患者がレストランに入ると、AI機能を使って糖尿病に優しい食事をアプリが推奨する。

本日(米国時間11/19)TechCrunch Disrupt Berlinのスタートアップバトルフィールドに登壇したSpike Diabetesは、許可を受けた家族が患者の詳細データを見て、健康を維持するための助言を与えられるGuardian Portalを公開した。

「糖尿病は不治の慢性疾患で、患者は生涯糖質とインシュリンの管理と共に過ごさなくてはならない」とSpikeの共同ファウンダーZiad Alameは言う。「糖尿病患者は生涯にわたってその日常的な作業を強いられるため、その厳しさゆえに道を外れてしまうことがある。そして家族は愛する人について何も知らない状態に置かれてしまう」

医者は年に2~4回の定期検診でデータを知るだけで、患者は一人で戦わなければならないことが多い。生涯続く管理は非常にストレスがたまる——命がかかっていればなおさらだ。

このスタートアップは、患者の生命徴候をモニターすることを謳う文字通り数百ものアプリとの厳しい競争に直面している。MySugr、Diabetes Connect、Health2Syncらが主要なライバルだ。しかし、多くのアプリでユーザーは複雑なスプレッドシートで自分の数値を管理しなくてはならない、とAlameは言う。

Spikeはカスタマイズ可能なグラフに加えて、データの音声読み上げ機能も提供して、日々の生活を安全に過ごせるようにしている。Spikeは招待制でiOSのみだが、Apple Watchアプリも提供されていて、バッテリー消費を最小限にしていると自慢している。

「Spikeは私自身が糖尿病生活で危機を迎えたあと、正しい服薬を助けるための個人プロジェクトとしてスタートした」とAlameが私に話した。彼はその問題を、慈善プログラムGivilngLoop、TeensWhoCodeサマーキャンプ、アラブ世界のためのクラウドファンディングサイトZoomalなどのCTOとしての経験と結びつけた

Alameは糖尿病患者、エンジニア、研究者らを集め、20万ドルのシード資金をMEVP、Cedar Mundi、およびPhoenician Fundsから調達した。彼らは愛する家族と医者を輪の中に取り込むことで、Spikeのフリーミアムアプリの有料プレミアム版が口コミで広がって長く続いてきた競争に打ち勝つことに期待している。

このアプリでもっとも興味深い機能の一つが事前情報の配信だ。「たとえば、午後2時頃にマクドナルドに入ると、Spikeは昼時だと知って適切な糖質量メニューのトップ3を推奨する」とAlameは言った。

「一定時間(~25分)経過後、Spikeはインシュリンの通知を与え、糖分測定装置と同期してデータを記録する。時間とともにアプリは患者の嗜好を理解し、Spikeはちょっとした行動の改善を提案する。例えば歩行経路の変更や、患者の好みにあった食事をより少ないインシュリン消費で食べられる店を推奨する。

Alameは冗談まじりにこう言った。「Spikeにとって最大のリスクは、最良の結果でもある——糖尿病の治療法が見つかることだ」。しかし、たとえそれが起きたとしても、Spikeの監視と助言の機能は別の病気にも役立つだろう。しかし現時点では、このアプリを使えば糖尿病を簡単に管理できることをユーザーに確信させる必要がある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Samsung、労働環境問題で謝罪。補償金支払いへ

和解から数週間、Samsungは従業員に病気や死亡をもたらした工場労働環境について謝罪した。「病気を患った社員とその家族に対して心からお詫び申し上げる」と役員のKinam Kimが先週の記者会見で言った。

これは、同社の液晶およびチップ製造ラインに対する長年続いた健康上の訴えを受けたもので、数十人の従業員が病気を患い脳腫瘍や白血病患者もいた。The Associated Pressが伝えた。

2007年に従業員が白血病で死亡した後、労働者らに代わって支援者グループが戦ってきた。公開謝罪に加えてSamsungは、労働環境による発病に対して従業員1名あたり最大13万3000ドルの慰謝料を支払う。流産や労働者の子供が小児がんになったケースもあった。

謝罪の中でSamsungは、以前の対応が「不十分」であったことを認め、今後労働環境を改善していくと語った。エレクトロニクスの巨人は2028年までに保証金を支払うことを約束した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ドローンが初めて臓器移植用の腎臓を運び結果は良好

ドローンを使う配送に実用性があるのは、二つの分野だけではないだろうか: テイクアウトと臓器移植だ。どちらも、荷重が比較的軽いし、しかも時間要件がきわめて厳しい。そして確かに、冷蔵ボックスに収めた腎臓を運ぶボルチモアでの実験は、うまくいった。このぶんでは、良質な装具に収めたあなたの昼食のパッタイも、無事に早く届くだろう。

このテスト飛行を行ったのは、外科医のJoseph Scaleaが指揮するメリーランド大学の研究者たちだ。Scaleaは、空輸では十分な柔軟性が得られないことに不満を感じていた。そして、そのいわゆる‘最後の1マイル問題’の当然のようなソリューションが、ドローンだと思った。

Scaleaと彼の同僚たちはDJI M600ドローンを改造して冷蔵ボックスを運べるようにし、飛行中の臓器の状態をモニタするためのバイオセンサーを設計した。

数か月待って、彼らの研究に腎臓が与えられた。それは、テスト用には十分だが、移植用には使えない、という状態のものだ。チームは、ボルチモアに到着したそれをコンテナに収め、距離と条件がさまざまに異なる14の旅程ミッションを実行した。最長は、病院までの距離が3マイル(約5キロメートル)、最高速度は時速67.6キロメートル(42マイル)だった。

腎臓の生検は飛行の前後に行われ、また小型の航空機による参照飛行のあとにも行われた。小型航空機は、中距離の臓器輸送によく使われている。

画像クレジット: Joseph Scalea

結果は良好だった。風や、ドローンのモーターの熱などが心配されたが、モーターと回転翼が離れているドローンを選ぶなどで対応し、ボックスの温度は冷凍よりやや高い摂氏2.5度が維持された。ドローンの振動や機動によるダメージは、見受けられなかった。

ドローンにも、そして臓器の輸送方法にも規制があるので。このような配送方法が近日中に実用化されることはないだろう。しかしこのような研究が、規制の改定の契機になると思われる。リスクが定量化されれば、腎臓や肝臓、血液などの組織や、そのほかの重要な医療用品を、この方法で輸送できるようになる。多くの場合、一分一秒を争う状況で。

とくに有益なのが、災害現場だろう。航空機はもちろん、陸上車両もそこへ行けない状況がありうる。そんなとき、ドローンは必要な品物を届けられるだろう。しかしそうなる前には、飛行によって血液が凝固しないなど、実用化に向けての十分な研究が必要だ。

この研究の詳細は、IEEE Journal of Translational Engineering in Health and Medicineに載ったペーパーに書かれている。

画像クレジット: Joseph Scalea/メリーランド大学ボルチモア校

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

RFIDステッカーからの信号で食品の汚染が分かる

安全でない食べ物は、それを食べる前に見つけたい。でも最近のベビーフード事件のように、瓶詰めや缶詰の場合はいちいち開けて調べることもできない。そこでMITの研究者たちは、食品に触れることなく、ある程度の距離から、一瞬でチェックできる方法を見つけた。それは、多くの製品にすでについているRFIDタグを利用する方法だ。

RFID(radio frequency identification, 無線周波数認識)は、小さなアンテナをステッカーやラベルに忍ばせておいて、それに特定の周波数の電波が当たると作動する。トランシーバーが950Mhzの信号を送ると、RFIDタグが起動して、自分を同定するやや異なった信号を送出する。それで製品の種別が分かるから、在庫管理にはとても便利だ。

研究者たちが見つけたのは、その返信信号の情報のない部分が、製品の内容の影響を受けることだ。電波は、瓶などの中身を通ってやってくる。そこで、瓶にいっぱい詰まったパスタソースやオリーブは、それぞれ違った特徴の信号を作りだす。だれも触ってないベビーフードの瓶でも、メラミンで汚染されたフードとそうでないフードを比較できる。

[水の入ったボトルと空のボトル]

この新しいシステムを記述するペーパーを書いた研究者の一人Fadel Adibが、MITのニュースリリースで言っている: “安価なRFIDが小さな電波分光器に変身したみたいだ”。

問題は信号の違いがきわめて微妙で、どこにもドキュメントされていないことだ。彼らが初めてやることだから。そこで当然ながらチームは、機械学習に着目した。彼らはモデルを訓練して、それぞれの信号の特徴が何を表しているかを学習させた。信号は、やって来る方向やガラスの厚さなどによっても、微妙に異なるのだ。

現在その、RFIQと彼らが呼ぶシステムは、乳児用ミルクのメラミンによる汚染や、酒類などの中のエチルアルコールの濃度を識別できる。それではぼくのショッピングリストにとって役に立ちそうもないけど、でもチームはもっと多くの製品への応用を考えている。方法の有効性は証明されたから、あとは応用の拡大が課題だ。

棚などの環境条件や、電波に対するさまざまな障害物によっても信号は変わるから、難しい仕事だ。でも機械学習のアルゴリズムは、ノイズから信号を選りだすのが得意だから、この技術は、今後意外とうまくいくかもしれない。

このRFIQシステムに関するペーパーの全文(PDF)はここにある

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企業に健康食を配達するOh My Greenがシード資金として$20Mを調達、全米展開を目指す

Oh My Greenは、Initialized Capital, Powerplant Ventures, Backed VC, ZhenFund, Talis Capital, そしてStanford StartX Fundらによる最初の本格的な投資ラウンドで2000万ドルを調達し、アメリカ中のオフィスに健康的な食べ物を届けようとしている。

このコンシエルジュ的なサービスはアクセラレーターY Combinationを2016年に終了して、サンフランシスコやロサンゼルス、シアトル、シカゴ、オースチン、デンバー、ボストン、ニューヨーク、そしてナッシュビルの企業に、正しい栄養学に基づくおやつや食事を提供している。同社はオフィスのおやつ戸棚の在庫を満たし(テクノロジー企業にとっておやつは必須である)、イベントのケータリングをやり、(企業の)カフェを管理し、(企業の)健康事業(ダイエットなど)を手伝う。同社の目標は、企業の健康的な食生活のためのワンストップショップ(なんでもできる)になることだ。

同社は2014年にサンフランシスコでMichael Heinrichが創業した。今週初めに彼と交わした会話によると、彼は本誌TechCrunchのおやつ戸棚を認めないらしい。なにしろ、一年前のスキットルズ(フルーツキャンディー)やエムアンドエムズ(チョコ)やフルーツバイザフット(グミ)があるんだからね。

彼は語る: “自分の人生で、もっと意味のあることをしたかったんだ。難しい仕事をいろいろしてきたし、そこで出会った人びとや問題も楽しかったけど、でも日常手に入れられる食べ物を見ると、加工しすぎや砂糖の使い過ぎのものがとても多い”。

“シュガークラッシュ(sugar crash, 糖質の摂り過ぎ→禁断症状による低血糖症)で仕事の生産性がガタ落ちになったとき、文句を言わずに自分で違いを作りだすべき、と気づいたんだ”。

Oh My Greenは機械学習を利用して顧客たちに個人化された推奨おやつや推奨食事を提供している。企業顧客は今約200社で、その中にはLyft, Apple, Y Combinatorなどもいる。今回の投資は全米展開に注ぎこみ、いずれは海外進出を目指す。

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今、ブラジルのヘルステック分野が熱い

[著者:Manoel Lemos]
シリコンバレーのベンチャー企業Redpointのブラジル専門部門Redpoint eventuresの業務執行社員。

大勢の人が絡む大きな問題に取り組むことは、起業家と投資家の両方にとって絶好のチャンスとなる。たとえば近年のブラジルでは、フィンテックによる金融改革や、新しいオンデマンドのビジネスモデルに投資が集中しているが、ヘルステック関連のスタートアップも、ブラジルで爆発的な増加を見せている。全国民のうちの数千万人が、根深い不平等問題によって医療サービスが受けられず、深刻なまでに低水準な医療の質、重い負担、あらゆる面での非効率といった問題に苦しめられている。起業家の皿は、市場に届けたいヘルステックの改革案で山盛りの状態だ。

Liga Venturesの最近の調査では、現在ブラジルには健康に特化したスタートアップが250社位上あり、民間医療に年間420億ドル(約4707億円)以上を消費する世界で7番目に大きな健康市場になっているという。ただし、そのうち180億ドル(約2017億円)が効率の悪さのために浪費され、この5年間でブラジルの医療関連コストが倍に跳ね上がっているため(累積インフレ率38パーセント)、ブラジルの医療は崩壊寸前にある。ヘルステック系スタートアップは、サンパウロ南部のビラオリンピアに拠点を置く世界最大級の起業家ハブCUBOItaúでも、トップ5の業界に入っている。

昨年、中南米の民間投資を支援する非営利団体LAVCAが発表した「中南米の技術ブレークアウトの年」によると、中南米において、ヘルステックは2番目に急成長している技術分野になっている。2016年と比較して、ヘルステックの取り引きは250パーセントにまで拡大した。ブラジルに診療所を建設して安価に最高の医療を提供することを目的としたネットワークDr. Consultaへの5000万ドル(約56億円)の投資は、2017年のベンチャーキャピタルによる投資の中でも最大のものだった。

医療分野は、患者、仲介業者、診療所、代理店、サプライヤーの間で、人と仕事と製品を結びつけなければならない複雑な市場だ。そこで、技術革新を武器に、ブラジルでもっとも大きなインパクトを与え、この市場に新しいビジネスモデルをもたらす主要なカテゴリーと企業を紹介しよう。

オンデマンドの医療

公的医療機関が利用できるのは、ブラジルの人口(約1億5000万人)のうち、およそ75パーセントに限られている。しかし、そうした医療機関は運営管理が不十分で非効率だ。1回の診療や検査のために、患者が数週間から数カ月待たされることも少なくない。そこに技術力を背景にしたスタートアップが登場し、より広く、より高齢の人々にも、効率的に医療を受けやすくする機会を提供し始めた。

たとえば、低価格な診療所チェーンDr. Consaltaの施設は、この3年間で1軒から51軒にまで増えた。今では、100万人以上の患者から得た国内最大の医療データセットを持つと主張するまでになった。他の民間診療所では、診察料が少なくとも90ドル(約1万円)はするが、Dr.Consaltaは25ドルだ。同様のオンデマンド医療を提供する診療所として、ClínicaSimDr. Sem Filas、 DocwayGlobalMed.などがある。

テレヘルスとモバイル健康アプリ

医療上の助言、診断、モニタリングをより便利にするテレヘルス・サービスがブラジルで拡大している。たとえば、Brasil Telemedicinaは、医療検査、医師の診察、遠隔モニタリング、心理カウセリングなど、さまざまなサービスを24時間提供している。

患者のケアを改善するためのB2Bテレヘルス・サービスには、1日24時間年中無休で放射線画像解析を行うTelelaudo、心臓の健康状態のモニター、陰圧閉鎖療法、乳児の呼吸と健康状態のモニターのための特殊な機器を提供するVentrixなどがある。また、サンパウロに拠点を置くスタートアップNEO MEDは、心電図と脳波図の医学報告が簡単に素早く作成でき、それぞれの場所で柔軟に収入を増やしたいと考える診療所、研究所、病院、医師の協力を促すプラットフォームを開設した。

フィンテックのような急成長分野を
もうひとつ作れる重要な材料が
この国にはふんだんにある。

ブラジルでは、糖尿病と高血圧といった疾患の発生率の高さインターネットユーザーの多さから、モバイル健康アプリの人気が高まっている。たとえば、Dieta e Saude(栄養と健康)というアプリは、160万人以上のユーザーに、よりよい栄養食品を選ぶよう助言し、それを習慣づける動機を与えている。ブラジルで設立され、現在はサンフランシスコに拠点を移したYouperは、社会的不安の解消を手助けする情緒的健康のためのバーチャル・アシスタントだ。ユーザーの思考パターンを再構成して、心をより健康な状態にしてくれる。

AIとデータ解析

他の業界と同様、またブラジルに限らず、AIとデータ解析は、患者の診断のスピードアップから医療コストの管理に至るまで、医療を変革しつつある。

その中のイノベーターのひとつにGestoがある。データベースに蓄積した450万件以上の患者の情報を機械学習でふるいにかけ、有用な情報を引き出して、患者の治療を最適化すると同時にコストを管理し、企業にとって最適な保険プランの選択を助けてくれる。集中治療室の管理を専門とするブラジル最大手のIntensicareは、AIを利用して診断のための時間を短縮し、患者の滞在時間と死亡率の低減を目指している。レシフェに本拠地を置くスタートアップEpitrackは、クラウドソースのデータ、AI、予測分析を使って疫学をコンピューター化し、伝染病の大流行と戦っている。

電子カルテ

昨年、ブラジル政府は、国内4万2000箇所以上の公営診療所で扱う患者のカルテを近代化するプロジェクトを、2018年までに完了させると発表した。世界銀行によると、カルテの電子化によって、連邦政府の経費は68億ドル(約7630億円)削減できるという。昨年末の時点で、ブラジル人(2億800万人)のうち3000万人しか電子カルテを持っておらず、ブラジルの家族向け診療所の3分の2近くが、患者の電子カルテを作成する手段を持っていなかった。

SaaS電子カルテのプラットフォームであるiClinicは、医療の近代化に大きな影響を与えたブラジルでもトップクラスのスタートアップだ。医療の専門家によるカルテの分類を電子的に支援し、すべてのデータをクラウドに保管し、あらゆるデバイスで読み出せるようにする。iClinicは非常に使いやすいシステムであるため、医療の効率化、コストの削減、治療の質の向上が期待できる。現在、ブラジルの各地で利用されているが、ブラジル以外の20カ国以上にも利用者が広がっている。

処方箋のデジタル化

ブラジルでのデジタル化の遅れによるもうひとつの大きな問題として、70パーセント近くの処方箋に記述ミスの恐れがあるという点を世界保健機関(WHO)が指摘いている。そのためブラジルでは、投薬ミスの関連で年間数千人が死亡している。精査することで、かなりの人数が救えるはずだ。アメリカでは、すでに77パーセント以上の処方箋がデジタル化されている。

この生死の問題に対処するために、ブラジルの電子処方箋管理の中心的存在としてMemedが登場した。現在、ブラジルのすべての医療分野の5万5000人以上の医師がこれを利用し、アレルギーと薬物相互作用の照合を行っている。これにより、服薬コンプライアンスが容易になり、医療効果も高まる。同社は、ブラジルでもっとも充実した、信頼性の高い、最新の薬物データベースを開発している。

ブラジルのヘルステック関連のスタートアップは注視すべき分野として急成長しているのは確かだが、ヘルステック革新が解決に着手したこの国の問題は、まだまだ氷山の一角に過ぎない。フィンテックのような急成長分野をもうひとつ作れる重要な材料が、この国にはふんだんにある。ブラジルにおけるヘルステックは、今後長きにわたり、それを信じる起業家と投資家にとって、確実にホットな分野となる。

備考:Redpoint eventuresはMemedに投資しています。  

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(翻訳:金井哲夫)

Fitbit、新サービス “Care” は雇用者と健康保険会社がターゲット

今年3月にVersaを発表したとき、Fitbitは会社のピボット計画もあわせて発表した。同社は今後も消費者向けハードウェアを販売するが、重点をヘルスケアに移していく。その1ヶ月前、同社はTwineを買収した。Twineは、Fitbitの新しいヘルスコーチングサービスであるCareの基盤の一部となるプラットフォームだ。

本日発表されたシステムは、新製品のFitbit Plusと同社の市販ハードウェアを組み合わせることで、ヘルスインサイト、1対1のヘルスコーチング、および同社が呼ぶところの『パーソナライズド・デジタル治療介入」機能を提供する。

このプログラムは、フィットネストラッキングに少しばかりのパーソナライゼーションと人間味を加えるものだ。ソーシャルグループや人間のヘルスケアコーチとアプリや電話経由で話せるようにすることで、アルゴリズムによるデータの一歩先へ行くことを約束している。アドバイザーは減量や禁煙から糖尿病や高血圧のような重い疾患まであらゆる面でユーザーに助言を与えられるように訓練されている。

新しいFitbit Plusアプリが重要な役割を果たし、サードパーティー製デバイスと接続して追跡データを統合する。つまり、ユーザーは血圧や血糖値などのデータを追加することができる。
これは、Fitbitがエンタープライズとヘルスケアにシフトするための最初の重要な一歩だ。もしこれで企業や医療事業者から、医療機器メーカーとして認識されることができれば、消費者向けビジネスより割の良い市場に参入できる。もちろん、それを狙っているのはFitbitだけではない。Appleは新しいApple Watchに心電計などの機能を追加して、その方向にまた一歩進んでいる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Spireのヘルスタグ、Appleストアで店頭販売

Spireのヘルスタグの販売が各地のAppleストア店頭で始まった。このタグは黒っぽい小さなデバイスで、歩数や心拍、ストレスレベルなどのデータを収集する。

Spireはもともと、緊張を感知し、そしてユーザーを落ち着かせるのに役立つ呼吸追跡デバイスで始まった会社だ。それから4年たち、開発されたのが今回のウェアラブル“タグ”。下着やスポーツブラにつけて使う。

当然承知しているが、同様のデータを収集するガジェットはそこらじゅうにあるーAppleウォッチは今や転倒や心臓の異変なども感知するーしかしSpireによると、同社のタグはFitbitやAppleウォッチのようなものではない。それは、一つにはこのデバイスは充電する必要が全くないからだ。このタグの電池は1年半もつ。また、このデバイスは洗濯可だ。ユーザーはいくつかの衣服を選び、それらにタグを取り付けるだけでいい。

もちろん、そこらあたりのいくつかのスタートアップもスマートで洗濯ができ、データを集められる衣服を展開している。Enfluxは衣服を作り、そこにリフティングが正しくできているかを見極められるモーションセンサーを縫い込んでいる。Vitaliはストレスを感知するセンサーがビルトインされた“スマート”ブラだ。またOmSignalは“理想の健康を手に入れるための、医療機関並みの生体データ”を集める、体にぴったりくるトレーニングウェアを手がけている。しかしSpireの小さなタグは、モニターを取り付けたい衣服を選べるという点それらとは異なっている。

Spireによると800万ドル超の売上となったSpire最初のプロダクトStoneのように、このタグもストレスを検出し、アプリで呼吸や集中力を整えることで落ち着きを取り戻すのを手伝ってくれる。

“継続した健康データの計測は、世界的に健康管理に革新を起こすだろう。しかし初期のものは使い心地がいまひとつで動きを妨げるものだった。ハードウェアばかりにフォーカスされていた」とSpireの創業者、Jonathan Palleyは語る。「‘消える’デバイスにしたことで、ヘルスタグは革新の可能性を手にする最初の製品となる」。

Spireのヘルスタグは3個パック130ドル、6個パック230ドル、8個パック300ドルでAppleストアで販売され、それよりも大きなパックはSpireのウェブサイトで購入できる。

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(翻訳:Mizoguchi)

Apple Watchは最初の心電計ではないが、消費者に与える影響は膨大だ

Apple’s COOのJeff Williamsは、Apple Watchが一般販売用心電計としてのFDA認可を受けたと、Apple本社で行われたスペシャルイベントで高らかに宣言した。Appleはものごとの最初になるのが大好きだが、この陳述は虚偽である。

AliveCorはKardiaMobileという製品で昨年11月以来「初」の称号を保持している。KardiaMobileは100ドルのスティック型デバイスで、スマートフォンの背面に取り付けて使用する。しかも皮肉なことに、同じくFDA認可を受けているKardiabandは、Apple Watchと共に使うブレスレット型心電計でAppleストアで販売されており、今週FDAがAliveCorのテクノロジーを使って血液検査をすることなく血液疾患のスクリーニングを行うことにゴーサインを出したばかりだ。

しかし、Apple Watchは幅広い消費者に影響をあたえる最初の製品になる可能性をもっている。まず、Appleは世界ウェアラブル市場の17%という確固たるシェアを持っており、2018年だけで推定2800万台を売っている。AliveCorのKardiabandとKardiaMobileの販売台数はわからないが、これに近い数字であるとは考えられない。

もう一つ、多くの人は、たとえ自分の心臓の状態に不安をもっていたとしても、それを調べるためだけの装置を買うことには抵抗があるだろう。自動的な統合によって、関心のある人たちが別製品を買わずに測定を始めやすくなる。さらに、心臓疾患は米国で最大の死亡原因であり世界人口の大きな部分に影響を与えているにもかかわらず、おそらくほとんどの人は自分の心拍リズムを日々考えることがない。心電計を腕時計自身に組み込むことで、モニタリングすることへの障壁が減り、一部の人がもつであろう心臓の状態を知ることへの恐怖を取り除くことができるかもしれない。

そして、Appleブランド自体の存在がある。今や多くの病院がAppleと提携してiPadを使っていることから、Apple Watchでも協業体制をとると考えることは理にかなっている。

「医者や病院も健康保険会社も自家保険の雇用者も、Apple、XiaomiFitbit、Huawei、Garmin、Polar、Samsung、Fossilその他のウェアブルメーカーと個別の提携を結びたいとは思っていない。必要なのは、どの患者にも適用できるクロスプラットフォーム製品だ」、とCardiogramのファウンダーで、心電計研究者のBrandon BallingerがTechCrunchに語った。「だから、もしAppleが医療のAppleになるのなら、CardiogramかAliveCorはこの分野のMicrosoftになればいい」

Appleの発表は、AliveCorにどう影響するのか? CEOのVic Gundotraは一笑に付した。彼はTechCrunchに、AliveCorのビジネスは大部分がKardiaMobileによるものでApple Watchに統合する心電計ではない、と話した。「Appleは以前からこの手のしくみをWatchに組み込むことを匂わせてきた」とGundotraは言った、「だから予測はできていた」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Nima、ピーナツ成分検出ツールをリリース

実は、重度のナッツアレルギーに罹患している。そんなぼくにとって、 Nimaのピーナツセンサーは救いの神となるのかもしれない。これまでに、ナッツが含まれていると思いもしない食材を摂取して救急搬送されたことも何度かある。Nimaがあれば、食べる前に適切な判断を下し、そしてER直行の悲劇を回避することができるのかもしれない。

ご存知ない方のためにお伝えしておくと、NimaとはTechCrunchのBattlefield出身のスタートアップだ。彼らは「ピーナッツセンサー」のローンチに向けて邁進しているところだ。彼らのセンサーは、ppm単位を検知することができる。カプセルに食材を入れて、それをセンサーに装着すれば結果が表示される。5分以内に、アレルギーの原因となるピーナッツ成分の検知を完了してレポートしてくれる。

センサーは、Bluetooth経由でスマートフォンと連携するようになっている。これまでにNimeデバイスを利用してチェックした食べ物の検査結果を保存しておくこともできる。但し、現在のところでは、センサーはピーナッツにのみ反応するようになっている。他の種類のナッツを検知することはできない。しかしNimaのファウンダーであるShireen Yatesは、他の成分の検出も行えるようにしたいと語っている。

おわかりのことと思うが、このNimaデバイスは「エピペン」(Epi-Pen)の代替となることを目指すものではない。「エピペン」とは、アナフィラキシーに対する緊急補助資料に用いられるものだ。エピペンは症状を引き起こすものを食べてしまってから用いいるもので、Nimaのセンサーは食べること自体を防ごうとするものなのだ。内部的なテストを行なったところでは、97.5%の検知率を示したとのこと。

Nimaデバイスの価格は229ドルで、それに12個のテスト用カプセルを加えて289ドルとなっている。Nimaは、これまでにもグルテン成分を検出するためのテストツールの開発などを行なっている。詳細については、冒頭に掲載した紹介ビデオを参照してほしい。

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(翻訳:Maeda, H

HP、薬品を「プリント」して抗生物質試験をスピードアップ

米国では毎年少なくとも200万人が「スーパーバグ」と呼ばれる耐性菌に感染し、2万3000人以上がこの感染が直接原因で死亡していると疾病対策センター(CDC)は伝えている。そこでHPのバイオハッカー技術チームはCDCと協力して、抗生物質を「プリント」するバイロットプログラムに取り組み、抗菌薬耐性をもつ菌の蔓延を防ごうとしている。

HP D300eデジタルディスペンサーは、通常のインクジェットプリンターと同様の仕組みを利用するが、インクの代わりにさまざまな組み合わせた容積ピコリットルからマイクロリットルにわたる薬品を研究目的に調剤する。

こうした菌が急速に拡散する理由の一つは、抗生物質が誤って利用されたためである場合が多く、その結果バクテリアは既存の薬品に対する耐性を獲得する。CDCは全米の医療従事者がこの技術を利用して問題を解決できるようにすることを願っている。

「ひとたび薬品の使用が認可されると、耐性が生まれるまでのカウントダウンが始まる」とCDCの抗生物質耐性調整戦略部門の科学チーム責任者、Jean Patel医学博士が声明で言った。「人々の命を救い、守るためには全国の病院でこの技術を利用可能にすることが不可欠だ。このパイロットプログラムによって、われわれの最新の薬品が継続的に利用され、基準となる研究成果が医療従事者の手にわたることを期待している」。

3Dバイオプリンティング分野は、過去数年に急成長しており、今後10年はこのペースが続くだろう。その主な理由は研究開発のおかげであると市場調査関係者は言っている。

さらに、潜在的価値の高い抗生物質耐性の研究によって、現在治癒可能な疾病の治療手段がなくなり寿命が縮まるという恐ろしい未来の到来を阻止できる可能性がある。

現在HPのバイオプリンターは研究所や医薬品メーカーで使われており、たとえばGileadではエボラウィルスに用いられる薬品の試験に利用されている。プリンターはさまざまなCRISPR(クリスパー)応用研究にも利用されている。CDCは、これらのプリンターを抗生物質耐性(AR)検査所ネットワークを通じて全米に広がる4つの地域で使用し、新たな薬品の抗生物質耐性感受性テストの開発を行っていく計画だとHPは語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

23andMeの祖先判定ツールが黒人や黄色人種に対しても詳しくなった

遺伝子検査サービスの23andMeが、これまで大まかだったアフリカ、東アジア、およびアメリカ先住民の子孫たちの祖先判別機能を、より細かくした。とくにアフリカと東アジアに関しては、12の新しい地域を加えた。私が数年前に23andMeを試したときには、71%が西アフリカと言われだけで、具体的にどの国か分からない。それが、今度から変わる。もっとも私はすでに、Ancestryにも調べてもらったんだけどね。

[2017/10月Ancestryの結果]

23andMeのシニアプロダクトマネージャーRobin Smithによると: “今回のアップデートで重要なのは、とくにアフリカとアジアではもっと詳しいデータが得られるようになったことだ。それはAfrican Genetics ProjectGlobal Genetics Projectなどの先行プロジェクトのおかげだ”、という。

これまで23andMeは、サハラ以南のアフリカをわずか三つの地域に分けていた。これからは地域が8つ増え、また東アジアも地域が4つ増えた。

以下が、今回増えた12の地域ないし人種だ:

  1. Southern East African 南東アフリカ
  2. Congolese コンゴ
  3. Coastal West African 沿岸部西アフリカ
  4. Ethiopian & Eritrean エチオピアとエルトリア
  5. Senegambian & Guinean セネガンビアとギニア
  6. Nigerian ナイジェリア
  7. Somali ソマリア
  8. Sudanese スーダン
  9. Chinese Dai 中国傣族
  10. Vietnamese ベトナム
  11. Filipino フィリピン
  12. Indonesian, Thai, Khmer & Myanmar インドネシア, タイ, クメール, ミャンマー

23andMeは2007年にローンチしたが、完全な祖先系統情報の提供までには時間を要した。TechCrunch Disrupt SF 2017で23andMeのCEO Anne Wojcickiは、顧客のほぼ75%がヨーロッパの出自だ、と言った。だからSmithによると、もっとデータが必要なことは十分承知していたのだ。

Smithによると、23andMeでこれまでご先祖チェックをやった顧客には、再テストを勧めている。今回のアップデートは、対象者が、もっとも最新のジェノタイピングチップを装着することが必要だからだ。23andMeの今のチップは第五バージョンで、“世界の多様性をよりよく反映できる”そうだ。

つまり顧客は、新しいキットを買うか、今後予定されているアップデートプログラムに参加するか、どちらかを選ぶ。それ以降は、定期的にチップのアップデートを行い、新しい地域/人種を継続的に加えていくそうだ。

アップグレード: これまで23andMeで遺伝子検査をしてもらって、Ancestry Compositionレポートをもらっている人は、無料で第五バージョンのチップによる検査にアップグレードできる(来年以降)。それ以降のさらに新しいバージョンのチップに関しては、新しい健康情報なども含まれるので、アップグレードは有料になる。

昨年の9月に23andMeはおよそ17億5000万ドルの評価額で2億5000万ドルを調達した。そのときWojcickiは、今後もっと、データの多様性を図りたい、と述べた。

今23andMeは、祖先系統の判別のほかにも各種の健康情報を提供している。2017年の初めにはFDAの許認可により、23andMeは、パーキンソン病やアルツハイマー病など10種類の遺伝子リスク検査ができることになった。また23andMeは、DNAがユーザーの容貌や好みや肉体反応に及ぼしている影響、というお楽しみ情報も教えてくれる。

私も近く23andMeのテストを再受診してみて、結果を読者にお教えしよう。なお、下図は、23andMeの研究者がくれた、私の[アップデート前]と[アップデート後]の検査データだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

VR技術が老眼を救う

目の前1インチのところに仮想現実世界を描いて見せるVR技術が、現実世界のスマート眼鏡を生み出すことになるかもしれない。開発中のデバイスは「Autofocals」という名前で、これを使えば視力の低下によりもたらされる問題を解決することができるよ。深度センサーおよび視線追跡機能を利用して、自力で焦点調節をできない人が、正しく物を見ることをサポートする。スタンフォードの研究者たちが手がけるもので、現在のところはプロトタイプ段階だ。

研究チームのリーダーであるNitish Padmanabanに、バンクーバーで開催されているSIGGRAPHにて話を聞くことができた。彼自身を含む研究チームが、イベント会場にて最新版の紹介を行なっていたのだ。Padmanaban曰く、このシステムは近くのものが見にくくなる「老眼」による不便さを軽減することができるとのこと。老眼には多くの人が苦しんでおり、若い頃に素晴らしい視力を誇っていた人も悩まされている。

もちろん、現在でも乱れたピントを正すために、二重焦点レンズや累進レンズなどがある。これらは焦点を合わせるために光を屈折させるという方法をとる。純粋に光学的な解決策で、値段も安くて便利に使っている人も多い。しかしこの方法では度数も固定され、視野も限られることになる。度数を調整ができる眼鏡も存在するが、利用するには眼鏡横のダイアルを手動で調節してピントを合わせる必要がある。眼鏡を使っている人の目的(見る対象物)に応じて、自動的に対応できるレンズはできないだろうか、というのが本プロダクトのスタート地点であったそうだ。

そうした目的に向かって進み始めたのがPadmanabanおよびRobert Konrad、そしてGordon Wetzsteinだ。現時点のプロトタイプは武骨で、実用にはほど遠いものだ。しかし仕組み自体のもつ可能性については、注目している人も多いようだ。

PadmanabanはこれまでVR系技術の研究をしてきた。その頃から、眼の調節作用(convergence-accommodation problem)について研究してきている。これは(その当時の研究対象でいえば、VRの世界で)遠くを見てから近くを見るときに、焦点が正しく合わないことについて研究するものだ。焦点をうまくあわせられず、目眩や吐き気などを感じてしまう問題だ。VRの世界では10フィートの視点移動もスムーズに行なえないことがあり、そうした中で、見ているものに自動的に焦点を合わせる技術が研究されてきた。そしてこの技術を、現実の世界で焦点を合わせるのに困難を感じる人のために活用してみようというのが、Padmanabanらのアイデアだ。

写真は以前に開発したプロトタイプ

仕組みとしては、まず眼鏡に備えられた深度センサーが利用者の前面に広がる景色を把握する。たとえば14インチ向こうに新聞があり、テーブルは3フィートあちら側、などといった具合だ。そして視線追跡システムが、今現在どこを見ているのかを認識して、見ているものにピントを合わせるわけだ。

20インチより近いところに焦点を合わせにくい人に使ってもらってみたところ、うまくレンズを調節して、みたいものを見せることができたそうだ。

上の具体的ケースでいえば、利用者がテーブルの上や部屋の奥を見ているような場合には、近距離を見るための仕組みを作動させる必要はない。しかし新聞に眼をやった場合、直ちにレンズを調節(右目、左目を独自に調節するのだろう)し、きちんと焦点を合わせることができるようにするわけだ。

視線を検知して、見たいものまでの距離を判断して調節するのに150ミリ秒ほどかかるのだとのこと。これは「流れるように」というわけではなく、利用者にワンテンポの遅れを感じさせるものだ。しかし老眼の人が見る対象を変更して、そして焦点を合わせようとするには3、4倍の時間がかかるのが一般的だ。開発中のデバイスは確かに利用者の役に立つものとなりそうだ。

「Autofocalsは未だプロトタイプ段階ですが、すでに従来の老眼対策の仕組みに対抗し得るものになっており、ケースによっては優位にたつ能力を発揮しています」と、SIGGRAPHで配布されている短い資料には記されている。「自然な感覚で利用することができ、Autofocalsは広く受け入れられることになるでしょう」。

開発チームは現在、本システムの利用に伴うメリットを検証し、またあり得る悪影響や不具合などについてテストしているところだとのこと。まだ商用化には超えなければならない壁が多く残されているが、しかしPadmanabanによればいくつかの企業がこのシステムに興味をもち、そして製品化を有望視しているのだとのこと。実験段階に一段落ついた時点で、詳細な方向性が明らかになってくるのだろう。

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(翻訳:Maeda, H

スウェーデンの避妊アプリNatural CyclesをFDAが承認、ただし完璧な避妊方法は存在しない

妊娠したくないの? FDAが認可した、そのためのアプリがあるのよ。FDAが今日(米国時間8/13)、スウェーデンのアプリNatural Cyclesに、避妊方法の一つとしてアメリカで売ってもよい、という許可を与えた

Natural Cyclesは一部のヨーロッパの国では妊娠を防ぐ方法のひとつとしてすでに使われている。でも、いわゆる‘デジタル避妊法’がアメリカで認可になるのは、これが初めてだ。

このアプリは、ユーザーの女性が提供するデータ、たとえば、体温や毎月の生理の周期などをアルゴリズムが利用する。そして各月のいちばん受胎しやすい日(何日から何日まで)を計算する。女性はその日にはセックスをしないようにするか、または避妊具を使用する。

生理の周期を調べて受胎しやすい日にちを判断する避妊方法は、かなり前から使われている。でもNatural Cyclesはこの古くからある方法に科学のひと味を加えて、アルゴリズムを改良した。そして15000名あまりの女性テスターたちの評価により、“ふつうの使い方”では6%のエラーレート、“完璧な使い方”では1.8%のエラーレートを達成した。

“完璧な使い方”とは、アプリが示唆する受胎危険日には防具を使わないセックスを絶対にしない、という使い方だが、それでも100人中1年に2人近くは妊娠する。つまりアプリが示唆する‘受胎危険日以外の日’は、‘絶対に100%妊娠しない日’ではない。でも、そのほかの避妊方法にも、それぐらいのエラーレートはある。たとえばCenters for Disease Control(CDC)によれば、コンドームのエラーレートは18%だ。

このアプリのメーカーはアメリカのFDAに効用を説得することには成功したが、しかしスウェーデンでは少なくとも一つの病院が、国のMedical Products Agency(MPA)と共に調査を開始した。同病院の記録では、Natural Cyclesを使っていた女性のうち37名が、望まざる妊娠をしているからだ。

FDAのCenter for Devices and Radiological Health(健康機器・器具および放射線医学部局)で女性の健康を担当しているAD Terri Cornelisonはこう言う: “消費者はますますデジタルの健康テクノロジーを使って自分のための健康情報を得ている。この新しいアプリはよく注意して正しく使えば有効な避妊方法を提供できる”。

ただしそんな彼女も、アプリのアルゴリズムにもそのほかの避妊方法にもエラーレートがあることを認める。そして、“完璧な避妊方法は存在しないことを、女性は知るべきだ。だからこのデバイスを正しく使っても計画せざる妊娠が結果することが、依然としてありうる”、と語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Google、Android Pieにデジタルウェルネス機能を追加へ。Appleを追う

Googleは、見捨てられた最新OSアップデート、Pie(本日公開)にデジタルウェルネス機能を追加したいと思っている。しかし、Appleはすでに最新アップデートのiOS 12に合わせてウェルネス機能の準備を進めている。

デジタルウェルネスとは、ユーザーがデジタル機器に費やした時間を追跡し、必要に応じて遮断するしくみだ。Googleは5月のI/Oカンファレンスで、新しいウェルネス機能がAndroid に導入されることを発表した。デジタルウェルネスのためのダッシュボードに加え、デバイス利用時間の追跡やアプリの使用制限時間を設定するアプリタイマー、ポップアップ通知を停止するDo Not Disturb機能、就寝時には常夜灯を付けてDo Not DisturbモードにするWind Downなどがある。
Appleもデジタルウェルネスに力を入れている。この分野の新機能は、今年の夏にWWDCカンファレンスで発表され、iOS 12アップデートには改善された “Do Not Disturb” 機能が追加された。iOS 12のベータ6は本日公開

>いくつか研究が、スマートフォンの利用中断や、中毒の抑止の重要性を示唆している。Googleはこの新機能でそれを実現しようとしている。しかし、この新しいデジタルウェルネス機能は 今日公開の 最新Pie アップデートにはまだついてこない。

一方Appleも独自の方法でiPhoneユーザーの利用時間を制限するしくみを提供している。Android同様の機能のほか、端末利用の週間レポートも見ることができる。Downtimeと呼ばれる機能を使うと、ユーザーが画面を見ない時間を設定できる(単に端末を置いただけだと通知を見て手に取りたくなってしまう)ほか、アプリの利用時間の制限や、不適切なコンテンツの表示をブロックすることができる。

今のところこの部門ではAppleがリードしているが、最終的にはあらゆるGoogleフォンで利用できるようになるだろう。Androidの新しいデジタルウェルネス機能を詳しく知りたい人は、今すぐ利用できるが、Google Pixelを持っていて、かつベータバージョンに登録している場合だけだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Y Combinator出身のJetLensesはコンタクトレンズの低価格化に挑む

Y Combinator出身のスタートアップ、JetLensesは、コンタクトレンズのEコマースサイトの1-800-ContactsやLens.com、大手小売業Walmartなどのネット通販に戦いを挑んでいる。同社の目標は、処方箋の確認や注文の追跡、コンプライアンス、在庫管理などに関わるオーバーヘッドを自動化することでコストを削減し、消費者に還元することだ。

彼らは価格の透明性も約束しているので、チェックアウト時に驚かされることがなく、送料も無料だ。

JetLensesの創業者であるDhaivat Pandyaは眼科医の息子で、ハーバード大学で統計とコンピュータ科学を学んだ。その経歴はこのビジネスにおける市場の非効率性を見つけ出し、新たなソリューションを開発するために役立ったと彼は言う。

「この分野ではエンジニアリングやデータサイエンスがすぐに結果を出し、日々目でみることができる」とPandyaがコンタクトレンズ市場を選んだ理由を説明した。「コンタクトレンズが高価である理由の多くが間接経費による」。

20%近くのケースで、オンラインサイトは顧客の処方箋の確認で問題に遭遇する。たとえば眼科医が診療所を移転したり電話番号やFAX番号が変わった場合などだ。

その結果、スタッフはその医療機関が今も存在していることや新たな連絡先を確認する必要が生じて多くの人的作業が発生する。JetLensesは、既存の医療機関のデータセットに医師情報を保持しているので、新しい電話番号やFAX番号を自動的に検索する。

さらに、処方箋を確認するためのFAXを自動送信し、医者からの応答を処理する。

同社は注文に関わる関わる物流にもデータサイエンスを活用して、どの配送会社が注文を処理するかを決めている。

こうした技術は大型ショッピングサイトではすでに一般的かもしれないが、コンタクトレンズ処方の分野では利用されていなかった、とPandyaは言う。

彼によると、JetLensesの低価格はこうした努力に基づくものであり、単に顧客を引きつけるために値引きしているのではない。

「私たちの利幅は同業他社と基本的に変わらない。単に[レンズを]安く売るためにビジネスを変えないことが目標」

包括的なレビューとは言えないが、私は取材前にJetLensesのオンライン注文を試してみて、ふだん使っている1800Contacts.comと比較した。私のAcuvue Oasys乱視用レンズの6パックがJetLensesでは32.99ドルで、私が通常払っているのが51.99ドルなのでかなり驚いた(1800Contactsは4箱まとめて買えば40ドルのリベートクーポンをくれるが、一度に払うには大金だ)。

JetLensesはメーカーの割引も利用可能で、顧客の眼科保険も適用できる。

ウェブサイトにはやや不安定な部分もあるが、まだ昨秋オープンしたばかりだ。欲しいレンズのブランドを入力して検索する必要があり、リストを閲覧することはできいなどサイトはなにかと使いにくい。しかし、1箱20ドル節約するためなら我慢する価値はある。

コンタクトレンズのEコマーススタートアップはJetLensesだけではない。Hubbleは昨年 7370万ドルを調達して自社ブランドのワンデー使い捨てコンタクトレンズを処方販売している。これはJetLensesの目指していない方向だ。

代わりにJetLensesは、このデータサイエンス技術をほかの処方箋ビジネス、歯科製品や処方箋の必要なクリームなどの分野に適用することを目標にしている。

現在同社は、Y Combinatorのデモデーの後、シードラウンドの資金調達に注力してビジネスのスケーリングを急いでいる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

このスマート「足首」は悪路にも順応する

人工装具は日々改善され、パーソナル化されているが、便利であるとはいえ本物には遠く及ばない。しかしこの新しい人工足首は、他と比べて本物に近い。ユーザーの歩き方や地面の状態に合わせて自ら動く。

人が歩くとき、足首は数多くの仕事をしている。地面に引きずらないように足先を上げ、着地の衝撃を緩和したり荷重を調節するために足の傾きを調整しながら、地上の凸凹や障害物を避ける。こうした動きを模倣しようとした義肢はほとんどなく、バネの曲がりや詰め物の圧縮など原始的な方法を用いている。

しかし、ヴァンダービルト大学機械工学教授のMichael Goldfarbが作ったこの足首のプロトタイプは、受動的な衝撃吸収のはるか先を行く。関節の中にはモーターとアクチュエーターがあり、内蔵のチップが動きを感知、分類して歩き方を制御する。

パラグアイのPoは3Dプリントされたカスタマイズ義肢を南米の貧しい人びと向けに開発

「この装置は何よりもまず周囲の状況に適応する」と、義肢を説明するビデオでGoldfarbは説明した。

「斜面の上り下り、階段の上り下りも可能で、装置が常に利用者の動きを認識し、それに合わせて機能する」と大学のニュースリリースで彼が述べた

歩き出そうとして足が地面を離れたことを感知すると、装置はつま先を上げてぶつからないようにすると同時に、足が下りるときにかかとをつけて次の一歩に備える。また、上から(人が足をどのように使っているか)と下から(斜面や地面の凹凸)の圧力を感知することで、歩き方を自然にすることができる。

数多くの義肢を使ってきたベテランのMike Sasserがこの装置を試して良い感想を述べた。「水圧式のマイクロプロセッサーをもたないタイプの足首を試したことがあるが、不格好で重く行動的な人間には制約が多かった。これは違う。」

現在の装置は、かなり実験室に縛られていて電源は有線で供給されている——外出には便利とは言えない。しかし、もしこの関節が設計通り動くのであれば、電源問題は二の次だ。課題が解決すれば数年のうちに商品化する計画だという。GolfarbのCenter for Intelligent Mechatronicsでの研究については、こちらで見ることができる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

WHO、「ゲーム障害」を疾病と認定

正直なところ「ゲーム障害」という言葉は、いら立った親たちが作り出した造語のように聞こえる。しかし、堂々巡りの議論の末、この用語は世界保健機構(WHO)によって認定され、国際疾病分類の最新版に加えられた。

発表された分類によると、新たな障害には以下の3つの主要な兆候がある。

  1. ゲームをすることへの抑止力の欠如(開始、頻度、熱中度、継続時間、終了、環境、など)
  2. ゲームの優先度が、他の生活上の興味や日々の活動を上回る。
  3. 悪影響が見られるにもかかわらずゲームへの没頭が継続あるいは激化する。

上記の症状にはWHOが定義したギャンブル障害など類似の依存症と共通点がある。

「常習行動に起因する障害は個人的機能の苦痛あるいは干渉に関わる認識可能で臨床的に有意な症状であり、依存性物質の使用によらない反復的報酬性行動の結果発症する」とWHOは書いている。「常習行動に由来する障害には、ギャンブル障害やゲーム障害があり、オンラインおよびオフラインいずれの行動も含まれる」。

普遍的症状であるかのように思われるかもしれないが、WHOの定義によるゲーム障害の有病率は「極めて低い」と同機構は指摘する。WHO委員のVladimir Poznyak博士は CNNのインタビューに答えて、「世界数千万人のゲーマーは、たとえ激しくゲームに没頭している人であっても、ゲーム障害患者として認定されることはないだろう」と語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

製薬企業のサプライチェーンからにせ薬を撃退するTraceLinkがさらに$60Mを調達

このお天気の良い金曜日(米国時間6/8)の午後、SECが処理したばかりのTraceLinkは、薬を調べて偽薬(にせぐすり)をの処方を根絶やしにしようと努力しているSaaSだ。同社はこのほど、シリーズDで6000万ドルを調達した。

SECのファイルによると、参加した投資家は18社で、そこにはたぶんGoldman Sachsもいる…同社の成長資金部門は約18か月前にTraceLinkのシリーズC 5150万ドルをリードしている。この9歳になるスタートアップの初期の投資家には、ほかにFirstMark Capital, Volition Capital, F-Prime Capitalらがいた。

本誌TechCrunchのライターJordan Crookがそのときに書いているが、TraceLinkは製薬企業のサプライチェーンを、各国のコンプライアンス要件に応じて調べる。これはとくにアメリカでは、2013年のDrug Supply Chain Security Act(薬剤サプライチェーン安全法)によって重要性を増している。この消費者保護法は、消費者を偽薬や盗品薬、汚損薬などから守ることがそのねらいだ。

この法律が施行されたときには、業界は今後10年以内に最小単位レベルのトレーサビリティを確立することが、義務化された。その期限が5年後に迫っている。

さらにTraceLinkにとって追い風になっているのは、麻薬だ。その拡大は90年代の後半以降とくに激しく、薬剤のサプライチェーンにおいてそれに対する脆弱性を摘出すべし、という圧力がますます強くなっている。

同社が今、上場に備えて四半期ごとの売上や顧客数の伸びを報告するようになったのも、不思議ではない。まさに、2週間前の同社の“成長ハイライト”によれば、同社の2018Q1の売上は前年同期比で69%も伸びたのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa