毎週ランダムに花束が届く定期購買サービス「Bloomee LIFE」運営が1億円調達、ニッセンとの提携も

リビングテーブルや玄関の脇に、花がいつも飾られていたらホッとするものだ。ただし「欠かさずに生け替える」となると、やはりちょっと面倒だなと筆者などは思う。そんな「無精だけど手軽に部屋を明るくしたい」人にうってつけなのが、花のサブスクリプション(定期購買)サービス「Bloomee LIFE(ブルーミーライフ)」だ。

Bloomee LIFEを運営するCrunch Style(クランチスタイル)は3月19日、シリーズAで総額1億円の資金調達を実施したことを発表した。第三者割当増資の引受先は、KLab Venture Partners朝日メディアラボベンチャーズPE&HRの各社が運営するファンド。Crunch Styleではこれまでにも、トレンダーズ創業者で現在はキッズライン代表の経沢香保子氏とPE&HRから資金を調達している。

2016年6月にローンチしたBloomee LIFEは、週1回か2週に1回、週末に季節の花が定額で届くサービス。毎週違う花屋さんから違う種類の花束がランダムに届けられる。プランは500円、800円、1200円の3パターン(送料は別)。小さなサイズの花束はポストに投函してくれる。

ローンチから1年半で、Bloomee LIFEの有料会員は6500人を突破。同社のInstagramからの口コミを中心に、利用が広がっているという。また、ユーザーからInstagramにハッシュタグ「#bloomeelife」付きで投稿される写真は8000枚を超えている。

今回の調達資金により、Crunch Styleでは、ユーザーが好きな花屋を選べる機能の追加、ユーザーの好きな色や花材などのデータ化により、サービスを強化する予定。将来的にはD2C(Direct to Customer)展開も目指すとしている。また同時に、病院やカフェなどの法人向けサービス展開も行っていくという。

Crunch Styleは同日、今年2月に実施された、日本政策投資銀行主催のアクセラレーションプログラム「京都オープンアクセラレーター」を通じて、ニッセンとの協業を4月から開始することも明らかにしている。

まずはニッセンからBloomee LIFEへの送客を検証実験として実施。その後、両社協力して、サービス開発やプレゼント需要の創出など、新規事業化に向けての取り組みを行っていく予定だ。

トランプ選挙陣営のデータ分析会社、Facebookユーザー5000万人のデータを不正アクセスか

先週Facebookは、トランプ選挙陣営と密接に関係するデータ分析会社のアカウントを停止したことを発表したが、実際にアクセスされたデータの規模をFacebookが大幅に低く見積もっていた可能性があることがNew York Timesの最新記事でわかった。

New York Timesによると、Campbridge Analyticaはケンブリッジ大学の心理学教授、Dr. Aleksandr Koganと協力して “thisisyourdigitallife” というアプリを開発し、最大5000万ユーザーの個人情報を収拾した。Facebookは27万人のユーザーがそのアプリをダウンロードしたことを認めている。このアプリはFacebookのログイン情報を使ってユーザーの地理的情報をアクセス可能にする —— New York Timesによると5000万人のプロフィール情報を取得したという。しか一人のユーザー(友達が数百人)がこのアプリを通じて個人情報へのアクセスを許可することのの影響は、2014年当時の方がいまよりずっと大きかった可能性がある。

サービス開始当初はどの会社もポリシーが厳格ではなくAPIの保護も十分でなかったためにこの種の情報が流出しやすい。Facebook幹部らは、これを不正行為ではないとTwitterに書いており、実際従来の基準では違反と言えないかもしれない。Facebookのセキュリティー最高責任者、Alex Stamosは次のように書いている。

[Koganが不正侵入やソフトウェアの不備を利用したことはない。彼は収拾したデータの使い方を誤ったが、だからといってデータの取得がさかのぼって「違法」になるものではない。]

アップデート: Stamosはツイートを削除した。上に貼ったのはツイートのスクリーンショットだ。

Stamosは一連のツイートを削除する前、長いスレッドで状況の詳細を説明した。それによると、当時のFacebook APIは今よりずっと広範囲のデータを取得することが可能だった。APIは2015年に改訂され友達データの取得が制限され、当時はアプリ開発者の間で議論を呼んだ。20億人のアクティブユーザーがいるFacebookでは、ポリシーは常に改訂が続きいたちごっこ状態にある。トランプの勝利は僅差だったため、的の絞られた5000万人の情報は大きな違いを生んだ可能性がある。

Facebookは公開企業であり、2014年当時の株主に対して、大失敗をせずこの種の情報を責任をもって厳重に管理する信認義務があった。不正アクセスを防ぐガードレールの欠落はUberやLyftなど他社でも数多く見られる。企業が成長モードにあるとき、この種のガードレールの設置は優先順位が下がることが多い。データが膨大になりそれを管理すること自体に膨大な労力が必要になればなおさらだ。Facebookは2014年Q4末に13.9億人のアクティブユーザーを抱えていた。

米国時間3月16日、FacebookはStrategic Communication Laboratoriesおよび傘下の政治データ分析会社であるCambridge Analyticaのアカウントを停止したと声明で発表した。しかしFacebookは今も問題を軽視している。

本誌はFacebookに追加情報を要求しており、情報が入り次第続報する予定だが、現時点ではFacebook幹部らは、流行にあわせてTwitterで弁明している。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

インバウンドメディア「MATCHA」がTHE GUILDらから資金調達、“送客メディア”の枠を超えた挑戦も

訪日外国人向けメディア「MATCHA」を運営するMATCHAは3月19日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資と日本政策金融公庫からの融資により資金調達を実施したことを明らかにした。

具体的な金額は非公開だが、関係者の話では約1億円になるという。今回MATCHAに出資したのは、日本経済新聞の電子版の監修をはじめ様々なサービスの開発・デザインを手がけてきたクリエイターチームのTHE GUILD、コンサルティング業など複数事業を展開するバリュークリエイトの2社。そして片山晃氏を含む3名の個人投資家だ。

MATCHAにとっては今回が4回目の資金調達となる。前回は2017年7月に星野リゾート(資本業務提携)、個人投資家の千葉功太郎氏から。同年9月にはスノーピークとの資本提携に加えて、個人投資家の藤野英人氏、中竹竜二氏、志立正嗣氏を引受先とした第三者割当増資を実施し、トータルで約1億円を集めた。

月間で420万PV、自治体や企業とのネットワークも拡大

日本国内の観光情報を全10言語で発信しているMATCHA。現在の月間PVは420万ほどで、毎月200万人近くのユーザーが集まるサイトになっている。核となる広告に加え、宿泊施設やアクティビティ予約のアフィリエイトの強化などマネタイズの多角化も進めるほか、2017年11月にはiOSアプリもリリースした。

MATCHA代表取締役社長の青木優氏によると、スノーピークや星野リゾートとの提携効果もあって問い合わせ数も増加傾向にあるとのこと。特にここ半年ほどで「企業や省庁とのダイレクトなネットワークが広がってきた」(青木氏)という。

この繋がりも活用して同社では「MATCHAに訪れたユーザーを観光地のサイトへ送客する」ところからもう一歩踏み込んだ、新しい取り組みも模索している。

「たとえばある町はメキシコと縁があって国内での認知度も高いが、実際にメキシコから訪れる人は多くない。そこでMATCHAの特集と連動して『メキシコ人観光客限定で街の職員が無料ガイドを提供する』といったプランを提案している。(この仕組みがうまく回れば)来訪率の改善も期待できる上、実際に訪れた際の満足度向上にもつながる」(青木氏)

Webからの送客だけでなく、実際にコンバージョンする(来訪する)までの流れを自治体と一緒に設計することは、MATCHAにとっても新たな収益源となりうるだろう。

ただ直近では、組織体制を強化しシステムの開発とコンテンツの拡充に力を入れる方針だ。国内の主要なエリアについてはある程度カバーできてきたとのことで、これからは地方の記事も充実させて「面をもっと増やしていく」(青木氏)という。

星野リゾート、スノーピークに続き今回はTHE GUILDが出資

MATCHA代表取締役社長の青木優氏(写真右)、THE GUILD代表取締役の深津貴之氏(左)

冒頭でも触れたとおり、当ラウンドには新たな株主としてTHE GUILDが参加している。TechCrunchでは今回THE GUILD代表取締役の深津貴之氏にも話を聞くことができたので、出資の背景や今後の取り組みについても紹介したい。

深津氏はTHE GUILDのメンバーとして複数アプリのUI/UXデザインに携わっているほか、「cakes」や「note」を展開するピースオブケイクのCXO(Chief eXperience Officer)も担っている人物だ。もともとインバウンド業界に興味や課題意識があり、MATCHAへの出資に至ったという。

「少子高齢化が進み国内産業が衰退していくことが考えられる中で、どうやって外貨を獲得していくか。そのためにはある程度、観光立国化する必要があり、観光領域におけるユーザー体験の設計に関心があった」(深津氏)

インバウンドメディアはMATCHA以外にもあるが、大きな決め手になったのはMATCHAのチーム体制なのだそう。同メディアには約60名のライターが所属していて、約半数を外国籍のライターが占める。

「もの作りやデザインにおいて、『自分ごと』として作れるかが1番大事だと考えている。インバウンドメディアに関しては、日本人だけでやると日本人だけの自分ごとになり、外国人観光客を置いてけぼりにしてしまう恐れもある。THE GUILDとしてプロダクトを磨くサポートはできるが、そもそも内部にいい土壌がなければ意味がない。(MATCHAは)プロダクトもそうだが、現時点のチームのあり方に魅力を感じた」(深津氏)

深津氏に聞くまで知らなかったのだけれど、実はTHE GUILDとして、そして深津氏個人としても少しずつスタートアップへの出資を始めているそう。もともと同社では単発の「打ち上げ花火」的な関わり方ではなく、中長期に渡り「パートナー」として顧客と付き合ってスタイルを大切にしてきた。そして深津氏いわく「パートナーとして1番究極系のコミットの形が株主」なのだという。

「そもそも間違ったミッションが降りてきたり、本来なら他に優先すべきことがあったりした場合、受託の関係性ではそれを伝えるのが難しいこともある。(良いプロダクトを作るための本質的な議論を)対等にするためのチケットが、株主だと考えている」(深津氏)

“送客メディア”の枠を超え、観光体験を改善する

今回THE GUILDが出資したことで、MATCHAは今後どのようになっていくのだろうか。深津氏によると直近ではTHE GUILDでプロダクトの細かい改善をするなどはなく、「経営チームのアドバイザリーとして『視点を提供する』というコミットの仕方になる」(深津氏)という。

具体的には大局的な観点からMATCHAのポジションを一緒に設計したり、提供する観光体験のあり方についてアイデア出しや立案のサポートする。長期的な構想も含めると、2つの側面から「観光体験の改善」を一緒に目指していくことを見据えているようだ。

「1つは(Webメディアとしての)MATCHAの体験。ユーザーがMATCHAにきて、観光コンテンツを見つけて読む、この一連の体験を良くすることをサポートする。もう1つはMATCHAが提案する日本の観光体験そのもの。自治体や企業に提案する際に、MATCHAが考える良い観光体験とはどんなものか、そしてMATCHAと組むことでどんな価値を提供できるのか。『アプリの外側』の体験設計についても支えていければと思っている」(深津氏)

後者の「観光体験そのもの」については、これから方向性が定まっていく部分であり、現時点で何か具体的な構想がいくつもあるわけではないという。ただ記事中で紹介した、自治体と組んだメキシコ人観光客向けのプランなどはその一例と言えるだろう。

「送客するだけで終わるのはもったいない」という考え方は、青木氏と深津氏に共通するもの。日本の観光地にはポテンシャルを十分に発揮できておらず、もっとよくなる余地を残している場所もある。

「そのような自治体と組んで具体的な観光体験を提案できればMATCHAのバリューもあがる」と2人が話すように、これからのMATCHAはアプリの内側からだけではなく、外側の部分も含めて日本の観光体験そのものを変えていく——そんなフェーズに入っていくようだ。

月額750円でオーディオブック聴き放題——リリースから10年のオトバンクが“サブスクリプション”に舵を切った

「たくさんのエンタメコンテンツがある中で、オーディオブックが選択肢としてもっと前に出てこない限り、ユーザーにも使ってもらえないし権利者側も利益を得られない。もっと間口を広げて、オーディオブックを知らない人でも気軽に触れられる環境を作っていく必要があると考えた」—— オトバンク代表取締役社長の久保田裕也氏は新たなチャレンジに至った背景について、このように話す。

2007年よりオーディオブック配信サービス「FeBe」を提供してきたオトバンク。同社は3月19日より、月額750円でコンテンツが聴き放題の新サービス「audiobook.jp」を始める(新サイトは本日中にオープンする予定)。

audiobook.jpはこれまで提供していたFeBeを全面的にリニューアルする形で提供。最も注目すべき点は、これまでと同様にコンテンツを1冊ずつ購入できる仕組みを残しつつも、新たに月額定額制のサブスクリプションモデルを取り入れたことだ。

FeBeを活用するユーザー層が広がっていくことに合わせて、ユーザーがよりライトにオーディオブックを楽しめるようにするべく、今回のリニューアルに至ったという。

1万点のオーディオブックが月額750円で聴き放題

audiobook.jpはベストセラー書籍を中心に2万3千点のオーディオブックコンテンツをそろえたプラットフォームだ。0.5〜4倍まで、0.1倍速刻みで再生スピードを調整でき、音声のダウンロードも可能。これらの特徴は前身となるFeBeも共通で、移動中や家事の時間などを中心に幅広いシーンで活用されてきた。

従来は気になるコンテンツを1冊ごとに購入する仕組みだったが、サービスリニューアルに伴って聴き放題プランを新たに導入。対象となる1万点については、月額750円でいくらでも聴けるようになる。

この中にはビジネス書や小説、落語などを幅広いコンテンツが含まれるほか、今後は日経新聞の主要なニュースを聴ける「聴く日経」も追加する予定。入会から30日間は無料で利用できる。

コンテンツや開発体制も充実、ようやく準備が整った

冒頭でも紹介したとおり、実はFeBeはリリースから10年が立つ。これまで地道に規模を拡大してきたが、2017年は同サービス史上最大の伸びを記録。年間登録者数は前年比で3倍となり、登録者数は 30万人を突破した。

「2017年に入ってユーザーの単月の伸び方が変わり、購入頻度やコンテンツのトレンドなどユーザーの属性も広がってきた。たとえば以前多かったのは30~40代の男性。それが今は男女比もほぼ同率になってきている」(久保田氏)

ビジネス書をしっかり聴きこむヘビーユーザーも増えている一方で、小説や語学学習コンテンツだけをさらっと聴くライトなユーザーが増えてきた。コンテンツ数も拡大する中で、幅広い人にさまざまなコンテンツをより気軽に楽しんでもらう手段として、聴き放題プランの検討が始まったという。

リニューアルに向けて議論が本格化したのは2017年の夏頃から。ビジネス書や自己啓発書に加えて文芸や小説も増え、どのジャンルもある程度のボリュームに。合わせて開発リソースも拡充し「今だったらできるかも」と話が進んだそうだ。

「アラカルト(個別購入)の場合はユーザーが何かしら明確な目的を持っているが、サブスクリプションの場合は動機が固まっていないことも多い。そうなると、パッとサービスを開いた時に自分が気になるコンテンツがあるかどうか。『あ、この本あるじゃん!』と感じてもらえるかが重要だと考えていたので、コンテンツが充実してきたことは大きかった」(久保田氏)

合わせて権利者側の温度感もこの1、2年で変わってきたという。久保田氏の話では「2016年くらいから『オーディオブックもきちんと頑張れば収益がでる』という感覚が定着し、積極的にやっていこうと足並みが揃ってきた」という。

たとえば『サピエンス全史』など人気書籍を音声で楽しめるのはFeBeからの特徴。このようなコンテンツはオトバンクのみで作ることはできないので、権利者サイドがより前向きになったという意味でも、絶好のタイミングだったというわけだ。

オーディオブックをもっと一般的に、当たり前に

「会員数は30万人を超えたものの、まだまだ少ない。オーディオブックをもっと多くの人に、当たり前のように使ってもらえるような環境を作っていきたい」(久保田氏)

左から、聴き放題画面(アプリ)、再生画面(アプリ)、ブックリスト(WEB)

価格については社内で複数案が出たそうだが、ライトに使ってもらえるようにと月額750円に設定した。今後は「ランニング中」「カフェで」「雨の日に」などシチュエーション別や、「パラキャリ」「◯歳のお子さまと聴きたい」「資格取得」などユーザー層別に作品をまとめたブックリストを順次公開するほか、聴き放題プラン限定のコンテンツなども増やしていく方針だ。

「『しっかりと聞く』というところから、もう少しライトに『聞き流してもいいや』というコンテンツを作っていく。わかりやすいものだと“短尺”のもの。イメージとしては『ニュースサイトのPUSH通知ででてくる情報以上、従来のオーディオブック以下』のコンテンツなどを考えている」(久保田氏)

昨今コミックや動画、テキストメディアなど「目」を取り合うコンテンツの競争は激化している。一方「耳」については音楽やラジオなどあるものの、まだポジションが空いているというのが久保田氏の見立てだ。

今後スマートスピーカーが普及すれば、そのポテンシャルはさらに広がるかもしれない。「何かしながら、並行して聞き流せるコンテンツ」には一定のニーズもあるだろう。

一方で「他のコンテンツもどんどん進化している中で、オーディオブックとしてどんなチャレンジができるか、どんな価値を提供できるかを考えていきたい」と久保田氏はある種の危機感も感じているようだ。

NetflixやHuluのようなプレイヤーがドラマやアニメ、映画といったコンテンツの楽しみ方を変えた。スマホの普及に合わせて「縦スクロールのコミックアプリ」「スマホ版の携帯小説とも言えるチャットフィクションアプリ」など新たなフォーマットも続々と生まれてきている。

「オーディオブックについては、他のメディアと違って今のユーザーのニーズに応えきれていない部分がまだある。ユーザーが欲しい形に合わせて(コンテンツを)提供するのが理想。今後は聴き放題プランで完全にオリジナルなコンテンツなど、コンテンツホルダーとも協力して新しいものを作り『本を聴く文化』を広げていきたい」(久保田氏)

アプリ利用者をリアルタイムに解析して最適なメッセージが送れる「KARTE for App」提供開始

ウェブサイトの顧客行動を可視化する接客プラットフォーム「KARTE」を提供するプレイドは3月19日より、iOS、Androidのアプリ向けに「KARTE for App」の提供を開始する。

KARTEはサイトへの来訪者の行動をリアルタイムに解析し、「どういう人がどのようにサイトを利用しているのか」を可視化するサービス。可視化した個々のユーザーに対して、適切なタイミングでポップアップやチャットなどを使った適切なメッセージを発信することができる。2015年3月に正式ローンチして以来、約3年で累計22億人のユニークユーザーを解析してきた。

今回提供するKARTE for Appは、これまでウェブサイト向けに提供されてきたKARTEの機能を、iOS/Androidのネイティブアプリ向けにSDKとして提供するもの。アプリを利用するユーザー行動をリアルタイムに解析し、さまざまなタイミングでメッセージを配信することができる。

KARTE for Appの事業責任者で、プレイド プロジェクトリードの棚橋寛文氏によれば、「KARTEを利用する顧客からは、かなり前から『アプリでも同じことができないか』という相談があった」とのこと。

「ヒアリングしたところ、モバイル経由の利用が増える中で、アプリについてはマーケティングや運用がウェブに比べてまだうまくできておらず、課題とする企業が多いことが分かった。そうした顧客に、アプリについてもマーケティング支援を進めたい、ということで今回のリリースに至った」(棚橋氏)

KARTE for Appの機能は大きく分けて3つ。1つ目はアプリ内のユーザーをトラッキングして、行動をイベントベースでリアルタイムに解析できる機能。ダッシュボードやスコアなどで、ユーザーの行動やモチベーションの変化をつかむことができる。

2つ目は行動イベントやユーザー情報を自由に組み合わせてセグメントし、プッシュ通知やアプリ内メッセージを配信する機能。ユーザーの属性やタイミングに合わせて、いろいろな形でコミュニケーションを取ることができる。

3つ目は、ウェブサイトと相互にユーザー行動を解析し、コミュニケーションする機能。ウェブでKARTEを導入済みであれば、共通の管理画面でウェブとアプリ双方を横断的に解析できる。例えば夜、PCでウェブサイトを閲覧していたユーザーが、朝、通勤中にスマホアプリからアクセスしてきた場合に、プッシュ通知を送るなど、ワンストップでコミュニケーションを取ることも可能だ。

KARTE for Appは、KARTEの既存顧客を中心にクローズドベータ版が3月から提供されており、ZOZOTOWNクックパッドなどでの導入が既に決まっているという。棚橋氏は「業種・カテゴリーを問わず、アプリでのユーザー体験を良くしたい、という企業すべてを対象に導入を進めたい」と話している。

「“人”にひもづいたデータを“人”が分析しやすい形で提供」

プレイド代表取締役の倉橋健太氏は、楽天に2005年に入社し、約7年間在籍していた。その中で「ネットショップでも銀行などのサービスでもメディアであっても、ユーザーが行動したデータはたまる。それをより良いユーザー体験のために活用したい」と考えていた。しかし蓄積したデータを分析し、活用するためには相当の工数やリソースが必要で、「データ=資産」ではないのが実情だった。

そこで「担当者が誰でも簡単に、あるべき姿でデータを把握できるようにして、データを価値として還元したい。より世の中に流通させたい」との思いから、2011年に創業したのがプレイドだ。

倉橋氏は「人間は実は、数字でのデータ分析、計算は得意ではない。データを扱うには一定以上のリテラシーが要る。それを誰でも活用できるようにして、データの民主化に寄与したい」と話す。

昨年プレイドで開発された「K∀RT3 GARDEN(カルテガーデン)」は、「人間が不得意な方法ではなく、得意なやり方、普通の人のベーススペックでできる方法でデータを見えるようにする」取り組みだ。TechCrunchでも以前取り上げたが、このサービスでは通販サイトの訪問客の動きをVR空間上でリアルタイムに可視化し、実店舗で人が買い物をしているかのように見ることができる。

「“データ”ではなく“人”として見れば、人間にとっては分析の精度もスピードも上がる。そう考えて、R&Dの一環として、カルテガーデンをリリースした」と倉橋氏は述べている。

「市場で“ウェブ接客”という文脈で語られるときには、ポップアップやチャット、アンケートといったユーザーが目にするフロントのツールに焦点が当たりがち。だが、それ以外にも、マーケティングやカスタマーサポートなど多様な場面で支援することがあるはず。我々のサービスは人にひもづいた形で、人のオペレーションチェーンに組み込む方向にシフトしていく」(倉橋氏)

実は“ウェブ接客”という言葉はプレイドが発祥で、商標も登録してあるそうだ。だが、倉橋氏は「これからはKARTEを“ウェブ接客”ツールではなく、“CX(Customer eXperience:顧客体験)”プラットフォームとして打ち出していく」と言う。

「3年前のKARTEリリース時には、スタートアップとして現実解も出さなければいけない、ということで、ツールとして分かりやすい言葉で出した。でも当時から、長期的な目標として掲げてきた『データによって人の価値を最大化する』という考えではあったし、それは今でも変わっていない」(倉橋氏)

「データ活用は、行動する人やそれを読み解く人、すべての人々の活動の結晶。それがCXとなって反映される」と語る倉橋氏は、最近参加したオフラインのイベントなどで、CXが取り上げられ、浸透していることを再認識した、という。

「インターネットでビジネスを展開するときに、これまではグロースハック、物量のハックということが言われてきたが、そこからの揺り戻しが来ていると感じる。勝ち残るためには“個客”の視点が必要。“ウェブ接客”については市場を作ってきたという自負もあるし、ツールとしての改善はもちろん行っていくが、より、本当にやりたかったこととしてCXを改めて打ち出した。CXの視点でネットビジネス全般を良くしていきたい」(倉橋氏)

倉橋氏はまた「KARTE for Appは、KARTEの今年の攻めの1つ目のトリガー」と話している。「今まではオフラインイベントへの出展を除けば広告なども行わず、顧客企業から他社への紹介など、オーガニックな集客だけで来た。顧客も増え、オペレーションも整い、ニーズも顕在化したことから、今年は攻めに転ずる。ここから年内にかけて、いくつか大きめのサービスリリースも準備している。2018年を飛躍の年として、全力でアグレッシブに行くつもりだ」(倉橋氏)

シリコンバレーの企業たちが人工知能応用の可能性を損なっている

【編集部注】著者のRyan Kottenstetteは、 Cape AnalyticsのCEO兼共同創業者である。

現在、大規模なデータセットから情報を収集するために、機械学習と人工知能を活用することは、最大の技術的チャンスである。スタートアップや研究大学から人材を獲得してきたこの10年で、Facebook、Google、そしてUberなどのテクノロジー企業は、世界で最高のAIチームを集めた。

しかし、そうしたテクノロジー企業セクター以外でも得られるべきその影響を、私たちは見ることができていない。残念なことに、他の産業における進歩は、テクノロジー産業セクターのAI人材獲得競争の巻き添えでダメージを受けている状態なのだ。そしてこの問題はほとんど注目されていない。

過去5年間に、シリコンバレーのAIスタートアップの90%は、トップのテクノロジー企業たちに買収されてきた。これらの買収は、成功した製品とはほとんど関係がない:スタートしたばかりの企業たちは、そのプロダクトごと買収されたあと、その開発が棚上げされたり、所有する技術が他のコアサービスの機能として埋め込まれたりしている。目的が絞り込まれていた少ないケースを除けば、まずは人材を抱え込むことが目的で、その後彼らを使ってどうするかを考えるというやり方なのだ。

出典:CB Insights

ミクロレベルでは、これは技術革新のエコシステム全体としては非常に合理的な戦略だ。業界をリードするテクノロジー企業たちは、こうした人材と技術的な専門技術を収益性の高い製品に活用するための、能力、現金、そして規模を持っている。ベンチャーキャピタリストたちにとって、早期ステージのAI企業に高額の投資をすることは、より安全なものに感じてられている。なぜなら売れるテクノロジーもしくはチームの買収が、彼らが大きなビジネスに成長しなかった場合の最低限の保障になるからだ。またスタートアップ企業のマネジメントチームも、早期買収の提案に魅了される可能性が高い。なぜなら同レベルの製品成熟度や知名度を持つ非AI企業に比べて、遥かに高い価格が提示されるからだ。

しかし、AI武器競走においては、重要なことは単に先行することだけではない、競争相手の競争力の源泉である人材を引き抜くことも大事なことだ。だがテクノロジー企業たちが、AIがもたらす未来に向けて競争をしている中で、彼らが奪っているのは競争相手の人材だけではない、世の経済全体の利益も奪っているのだ。

マクロレベルで見れば、この抱え込み戦略が、AIが世界経済と社会全体に及ぼせる筈だった影響の95%を阻害しているのだ。米国のトップハイテク企業5社(Apple、Alphabet、Microsoft、Amazon、Facebook)の総収入は、米国の総GDPの5%未満である。にもかかわらず、このテクノロジーの巨人たちは企業を買収すると、すぐにでも効果が出る、特定目的の非テクノロジー産業の抱える問題向けにアプリケーションを構築する代わりに、ただR&Dに専念するように指示しているのだ。

そうしたテクノロジー企業たちが、個別の産業特有のソリューションを生み出すのに、最適な立場にいると主張する者もいる。クラウドコンピューティングを見て、どれだけ多くの産業がそれを使って生産性を向上させているのかを考えて欲しい。おそらく同じことをAIとデータサービスでも行うことができるだろう。しかし私はこうしたことがすぐに起きるとは思わない。理由は2つある。(1)テクノロジー企業たちは、それぞれ独自の目的を抱えていること、そして(2)最高のAIソリューションは特定の問題とワークフローに対してデザインされるものだからだ。

既にある程度の成果を見ることはできる:

今ではFacebookの写真には自動的にタグが付けられる。これは、顧客の関与を高めるためにデザインされた重要な機能拡張だ。またGoogleからNetflix、そしてAmazonに至る企業が、機械学習を活用したプロフィール情報の広範なスキャンによって提供する「なんでも推奨機能」は、徐々に顧客の購入の増加に繋がっている。どちらも、主要なハイテク企業の中核的なニーズを表しているが、他の業界の関連する製品にはなかなか展開されることがない。個人的には、非常に多くの素晴らしいAI人材たちが、比較的地味な機能強化に取り組んでいることを残念に思う。

ハイテク分野以外の業界のアプリケーションをターゲットとする、AIベースの製品や企業には巨大なチャンスが待っている。

またハイテク企業たちは、AIチームを彼らの壮大で実験的な研究の一部として組織している。そこでは既存の産業を技術的に再構成することを可能とする、核となる知的資産と研究に力が注がれている。歴史が示すことは、テクノロジー企業がカテゴリー全体を一度に再構成しようとすると、多くの場合はまず失敗に終わることが一般的だということだ(WebvanやMarc AndreesenのLoudCloudを思い出して欲しい)。これに対して既存の企業たちは十分な速さで反応することはない(SafewayのWebvanへの対応、IBMまたはHPのLoudCloudへの対応を考えてみよう)。

最終的には、新たな破壊的な勢力が10から20年後に成功する(この例として挙げられるのは、日用雑貨品に対してのAmazon、そしてクラウドコンピューティングに対するAWSやOpswareだ)。この分野では、最終的には消費者とハイテク企業が勝利することになる、有利な立場にいたはずの主要な既存企業たちは、最初の段階で集めることのできた人材と技術の質の差によって、ハイテク企業たちに追い越されてしまうのだ。

特定のプロジェクトが失敗しても、巨大テクノロジー企業の研究ラボは、求人力という意味での力は保ったままだ。彼らは全てのAI人材を招き入れ、彼らに研究の続きを行い、発表させることで、テクノロジー企業は研究をするのには一番良い場所だという物語を紡ぎ出す(その上無料のランチやディナーも用意されている!)

こうしたことの結果として、今日では、AI人材とテクノロジーはテクノロジー関連以外の企業から敬遠されるようになっている。保険のような既存産業では、コンピューターが囲碁で勝ったからといって、彼らの最終損益に影響が出るわけではない。これは不幸なことだ、なぜなら産業アプリケーションは「破壊的」ではないように見えるかも知れないが、それらは短期的には遥かに大きな影響力を持つ可能性があるからだ。

だとしたら、他の業界のリーダーたちができることは何だろう?既存産業は積極的に対応する必要がある、そうでなければ、AIとデータ分析によって推し進められる次の10年のイノベーションから締め出されるリスクに晒されることになるだろう。すなわち(1)差し迫った事態の本質を掴み、(2)必要な人材を引き付け、引き留め、厚遇できる環境を作り、(3)そうした人材を積極的に探さなければならない、ということを意味する。

いくつかの分野では動きが始まっている。

高まる自動運転車への期待から、自動車業界は実際のリスクに直面している。GMのCTOであるJon Laucknerは、こうした中で、10億ドルでのCruiseの買収や、Lyftに対する5億ドルの投資などの、大胆な動きの中心にいた。FordとDelphiも買収に積極的で、Argo AIやNuTomonyがその対象となった。

出典:CB Insights

農業もまた、何が差し迫った事態なのかを認識し、行動を始めた良い例である。過去5年の間に2件の主要なAI関連の買収が行われた。Monsantoはデータ駆動の未来に向けた取り組みを推進するために、Climate Corporationを買収し、農家に対して作物に関するカスタマイズされた知見と助言を行えるようにして行こうとしている。昨年、John DeereはBlue River Technologyを買収したが、このことによりコンピュータビジョンを活用して、トラクターが現場を移動する際に、リアルタイムで個々の作物にカスタマイズされた、知見と行動を提供するようになる。

確かに、人材獲得は既存産業にとって唯一の手段ではない。しかし将来の成功に向けての中心となる人材、技術、そしてビジネスモデルを確保することは、動きの鈍い既存産業にとっては難しい課題である。Netflixは数少ない成功の例の1つである。彼らはDVDベースのビジネスからストリーミングビジネスへの道を切り拓いた。とはいえ、その移行は苦難を極めた。大きなビジョンを描きながらも、その道が上向きに転じる迄には、自分の売上を共食いで失い、株価も75%下落したのだ。

現時点では、ハイテク分野以外の業界のアプリケーションをターゲットとする、AIベースの製品や企業には巨大なチャンスが待っている。そして短中期的には比較的競争も激しくはならない。主要なテクノロジー企業たちの成果にはムラがあり、遥か遠い未来を狙っているからだ。その一方で、既存産業は歴史的に、主要なテクノロジートランスフォーメーションを活用できていない。いくつかの例外を除けば、企業が積極的な対策を講じなければ、歴史は繰り返されるように思える。

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(翻訳:sako)

画像: agsandrew / Shutterstock

「フェイクニュース」拡散の原因はボットではなく人間だった――MITが発表

嘘の伝わる速さは何世紀にも渡って語り継がれており、1710年の時点で既にジョナサン・スウィフト(『ガリヴァー旅行記』の著者)が「まず嘘が広まり、真実はその後をノロノロとついていくものだ」という言葉を残しているほどだ。そうはいっても、このような事実を示す証拠というのはこれまでほとんど存在しなかった。しかし、ここ数年のソーシャルメディアの様子を見ると、嘘が真実に大きな差をつけながら信じられないほどの速さで広がっており、もはやそれが当然のようにも感じられる。

そしてこの度、MITが10年分ものツイートを分析した結果、嘘が真実よりも速く広まるだけでなく、ボットやネットワーク効果がその原因とは言い切れない――つまり、私たち人間が嘘を広めている――ということがわかったのだ。

3月9日、Scienceで発表された同研究では、ツイッター上で拡散された(もしくは拡散されなかった)10万件以上のニュース(第三者機関によって虚偽のニュースかどうかが判別されているもの)がどのように伝播していったかに焦点があてられている。結果はレポートの要旨(Abstract)に記されている通り、「どのカテゴリーにおいても、嘘は真実よりも遠く、早く、深く、広範囲に広がっていった」。

Image: Bryce Durbin/TechCrunch

この結果を見て、ロシアや時系列に並んでいないニュースフィード、選挙などを槍玉に挙げるのは早計だ。というのも、虚偽のニュース(政治的な意図をはらんだ、いわゆる「フェイクニュース」と区別するためにあえてこの言葉を使用する)がこんなにも速く拡散する背景には、私たち人間が存在するからだ。

「嘘が真実よりも広まりやすいのは、人間が正しい情報よりも虚偽のニュースをリツイートしやすいからだということを調査結果は強く示している」と同レポートの共同著者Sinan Aralは語る。

その一方で、彼は次のように注意を促す。

「もちろん、人の頭の中に入り込んで、何らかの情報を消費したり、リツイートしたりする過程を調査したわけではないので、本研究ではまだ問題の深層部にはたどり着けていない。そもそも、どのように虚偽のニュースがネット上で拡散するかについての大規模な調査はほとんど行われていないため、まだまだ継続的な努力が必要だ」

とは言うものの、「人間は虚偽のニュースを拡散しがちだ」というMITの研究結果からは、極めてストレートかつ強烈な印象を受ける。

残念ながら、人間はアルゴリズムや価格モデルのようにアップデートできるものでなければ、報道機関のように無視できるものでもないため、この結果にはある種の歯がゆさも感じる。というのも、レポート内でも指摘されているように、明確な解決策など存在しないのだ。だからといって、問題から目を背けるべきではない。

10年分のツイートを解析

MITの研究プロセスは次の通り。なお、共同著者の1人であるSoroush Vosoughiによれば、「フェイクニュース」に関する騒ぎが起きるずっと前から同研究は進められていたようだ。

まず研究チームは、2006〜2017年の間に公開された何百万件ものツイートを集め、6つのファクトチェッカー(Snopes、PolitiFact、FactCheck.org、Truth or Fiction、Hoax Slayer、About.com)の少なくともいずれかひとつで真偽判定が行われた12万6000件のニュースと関連があるかどうかを調査。その結果に応じてツイートを分類していった。

その後、ツイート・リツイート数、一定のエンゲージメント数に達するまでの時間、情報元となるアカウントから見たリーチ範囲といった指標をもとに、各ニュースがどのように広がっていったかを観察。

最終的に、各指標をもとに「滝」のようなグラフが生成された。例えば、急激に拡散された後、すぐに話題から消え去ってしまった情報は、横の広がり(=拡散度合い)はあるものの、深さ(おおもとのツイートから何層にわたってリツイートされたか)はほとんどなく、バイラル性も低い。

そして虚偽のニュースと真実の「滝」を比較したところ、少数の例外を除いて、虚偽のニュースの方がより多くの人に、より速く広まり、何層にも渡ってリツイートされていることがわかった。

しかもこれは数%といったレベルの差ではない。具体的な数値については以下を参照してほしい。

  • 真実は1000人以上にリーチすることさえめったにない一方で、虚偽のニュースのうち拡散度合いで上位1%にあたるものは、ほぼ常に1000〜10万人もの人びとにリーチしていた。
  • 真実が1500人にリーチするには、嘘よりも6倍近い時間がかかる。
  • 虚偽のニュースは広範に拡散し、グラフのどの箇所においてもリツイート数で真実を上回っていた。
  • 政治に関する虚偽のニュースはすぐに何層にもわたってリツイートされ、結果的に他のカテゴリーの虚偽のニュースが1万人にリーチするよりも3倍近い速度で2万人以上ものユーザーにリーチした。

以上の通り、どの角度から見ても虚偽のニュースの方が真実よりも何倍、もしくは何乗も速く、多くの人にリーチするということがわかった。

反対意見

上記の研究結果の考察や、研究者が考える解決策、将来の研究アイディアについて触れる前に、想定される反対意見について考えてみよう。

ボットが原因なのでは? 結論から言うとボットの影響はほぼない。研究者はボットを検出するアルゴリズムを使って、明らかにボットによると思われるツイートは事前に取り除いていた。また、ボットの行動パターンを別途精査し、収集したデータをボット有のパターンとボット無のパターンでテストしたが、先述の傾向に変化は見られなかったのだ。この点についてVosoughiは「ボットもわずかに真実より虚偽のニュースを広めやすいということがわかったが、我々の結論に影響を及ぼすほどではなかった。つまり拡散度合いの差はボットでは説明がつかない」と話す。

「虚偽のニュースの拡散にはボットが深く関係している、という最近よく耳にする説とは真逆の結果が研究から明らかになった。これはボットの影響を否定するものではないが、少なくともボットを嘘拡散の原動力と呼ぶことはできない」とAralもVosoughiに賛同する。

ファクトチェックサイトにバイアスがかかっているのでは? 確かにまったくバイアスがかかっていないファクトチェッカーというのは存在し得ないが、研究者が参照した6つのサイトに関し、ある情報が真実かどうかの判定は95%以上の割合で共通している。客観性や証拠を重視するこれらのサイトすべてに共通のバイアスがかかっていると考えるのは、もはや陰謀論の域とさえ言えるだろう。それでも納得できない人は次のAralのコメントを参照してほしい。

「ファクトチェッカーを含め、研究対象に選択バイアスが生じないよう私たちは細心の注意を払っていた。その証拠に、メインの研究とは別に1万3000件のニュースから構成されるもうひとつの対照群について独自に真偽を確認し、そのデータを分析したところ、ほぼ同じような結果が得られた」

このファクトチェックはMITの学部生3名が行ったもので、判定結果は90%以上の割合で共通していた。

虚偽のニュースの拡散には大規模なネットワークが関係しているのでは? レポートによれば、現実はその逆のようだ。

ネットワークの構造や各ユーザーの特徴から虚偽の情報が拡散しやすい背景を説明できるのでは、と考える人もいるかもしれない。つまり、虚偽の情報を広める人ほどフォロー数やフォロワー数、ツイート数が多く、認証バッジを取得している人や昔からTwitterを利用している人の割合も多いのではないかという説だ。しかし嘘と真実の拡散具合を比べると、実はその逆が正しいということがわかった。

虚偽のニュースを広めやすいユーザーの特徴は以下の通り。

  • フォロワー数が少ない
  • フォロー数が少ない
  • ツイートの頻度が低い
  • 認証ユーザーの割合は少ない
  • アカウントの保有期間が短い

「このような特徴が見られたにもかかわらず、虚偽のニュースがより速く、広く拡散した」と研究者は記している。

なぜ虚偽のニュースの方が速く拡散するのか?

この問いに対する答えは憶測でしかないが、少なくとも同研究に携わったMITの研究者の「憶測」は、データに支えられたものであるという事実は無碍にできない。さらに、嘘の大規模な拡散は最近見られるようになった現象で、十分に研究されていないとはいえ、幸運なことに社会学や心理学からはいくばくかの示唆が得られる。

「コミュニケーション学の分野では、特定のニュースが拡散する理由について、既に包括的な研究が行われている」と3人目の共同著者Deb Royは言う。「人はポジティブなニュースよりもネガティブなニュース、平和なニュースよりもショッキングなニュースを広めやすい傾向にあるというのは既によく知られているのだ」。

もしも本当に人が目新しくて(Royいわく「目新しさこそが最重要要素」)ネガティブ(「血が流れればトップニュースになる」現象)なニュースを広めやすいとすれば、残された疑問は虚偽のニュースが真実よりも目新しく、ネガティブかどうかという点だけだ。

Photo: SuperStock/Getty Images

そこでMITの研究者は、一部のユーザーのアクティビティを分析し、虚偽の情報が含まれるツイートと真実しか含まれていないツイートの目新しさを比較した。すると確かに、「目新しさに関するどんな指標と照らし合わせても、虚偽のニュースが真実を上回る」ということがわかったのだ。

また、ツイート内で使われた言葉や関連する感情に注目したところ、虚偽のニュースには驚きや不快感を示すリプライがついていた一方、正しい情報へのリプライには悲しみや期待感、喜びや信頼といった感情が込められていることが多いとわかった。

まだまだ多くの検証が必要とはいえ、本研究からは虚偽のニュースは真実よりも速く拡散し、前者は後者よりも目新しく、ネガティブだという結論が導き出された。あとは「目新しくてネガティブだからこそ虚偽の情報は速く拡散する」という両者の因果関係を証明するような研究の発表が待たれる。

私たちには何ができるのか?

本研究で示された通り、虚偽のニュースを人間が広めているとすれば、それを防ぐためにどうすればよいのだろうか? 冒頭のジョナサン・スウィフトの言葉通り、これは決して最近生まれたものではなく、人びとはこれまで何世紀にも渡ってこの問題に対して何らかの策を講じようとしてきた。しいて言えば、問題のスケールには違いがあるかもしれない。

「何百万人――複数のプラットフォームをまとめると何十億人――もの人びとが、リアルタイムでニュースの拡散度合いに影響を及ぼすというのは、これまでなかったことだ」とRoyは言う。「ネットワークで繋がった人びとの行動についてのみならず、それがニュースや情報の伝播にどのような影響を与えるのかという点についてはさらなる研究が必要だ」。

さらにRoyはこの問題を人間の健康状態のように捉えている。実はJack Dorsey(Twitterの共同創業者でCEO)も、Royが設立した非営利組織Corticoのブログポストを引用元として、同様の比喩を用いた以下のツイートを投稿していた。

我々はコミュニティー全体の健康状態やオープンさ、さらにはプラットフォーム上で交わされる会話のマナーの向上に努めるとともに、その進捗に責任を負うと約束する。

またRoyをはじめとする研究者たちは、TwitterはもちろんFacebookやInstagram、オンライン掲示板といったプラットフォーム向けの「健康診断機」の開発にあたっている。しかしRoyは、これらのプラットフォームは氷山の一角に過ぎず、インターネット全体の「体調」を向上するにはさらなる努力が必要だと指摘する。

この点に関し、Aralは経済的な活動を例に挙げ、「ソーシャルメディア上での広告活動が虚偽のニュースを拡散するインセンティブとなっている。というのも、広告主にとってはビュー数がもっとも大事な指標だからだ」と語る。つまり虚偽のニュースを減らせば広告料も減ってしまうため、プラットフォームの健全化に向けたインセンティブが生まれにくいということだ。

「短期的には虚偽のニュースの拡散を止めることで金銭的なデメリットが発生するが、だからといって野放しにしておくと長期的な問題が発生してしまう。例えば、あるプラットフォームが虚偽のニュースや不適切な会話で埋め尽くされてしまうと、ユーザーはそのプラットフォームを一切使わなくなってしまうかもしれない。そういう意味では、FacebookやTwitterには、長期的な利益を確保するためにこの問題に取り組むインセンティブがあると考えている」(Aral)

しかし問題の根幹に人間だけでなく、アルゴリズムや広告料も関係しているとするならば、どうすればよいのだろうか?

「大事なのは、ユーザーの手を一旦止め、自分たちの行動がどんな影響を持ちうるか考えさせることなのだが、行動経済学の世界でもよく知られている通り、これはとんでもなく難しいことだ」とRoyは言う。だが、もしもそのプロセスが簡単かつどこにでも導入できるとすればどうだろうか?

「スーパーへ買い物に行くときのことを考えてみてほしい。すべての食べ物には、製造工程や製造・販売元、ナッツが含まれているかといった情報を記したラベルが貼り付けられている。しかし情報にはそんなラベルは存在しない。『この会社は虚偽の情報を発信することが多いのか?』『このメディアは3つの独立した情報源と照らし合わせて真偽を判定しているのか(それとも1つだけか)?』『何人がこの報道に関わっているのか?』といった問いに対する答えはニュースには含まれておらず、私たち消費者はただメディアが提示する情報を消費するしかないのだ」(Aral)

さらにAralは、ある情報がTwitter上で拡散する前にその信頼性を測定できるようなアルゴリズムをVosoughiが考案したと語った(Vosoughi本人は謙遜からか、ただ忘れていたのか、取材時にはこの点について触れなかった)。ではなぜFacebookやGoogleのように、膨大なデータや機械学習・言語に関する知見を持ち、プラットフォーム上の情報や活動、エンゲージメント、さらにはサイト全体に関してさまざまな変革を経てきた企業が、Vosoughiのような取り組みを行わないのかという点については疑問が残る。

この問題について、議論は活発に行われているが、なかなかそれが具体的なアクションには繋がっていないようだ。さらにRoyは、TwitterやFacebookといったサイトからは、特効薬のような解決策は生まれないだろうと釘を刺す。

「ソーシャルメディアを運営するためには、さまざまな点に注意しなければいけない。プラットフォーム自体はもちろん極めて重要だが、それ以外にもコンテンツを作る人や広告主、インフルエンサー、そしてユーザーが存在する。彼らの役割はそれぞれ異なるため、ポリシーの変更や新たなルール・ツールの導入による影響は、ステークホルダーによって変化する」

「それ自体は悪いことではない。というのも、そうであるからこそ私たちのような研究者がとやかく言えるのだから」

データセットについても同じことが言えるだろう。なお、本研究で使われたデータは(Twitterの同意のもと)公開される予定なので、誰でもMITの研究結果を確認したり、さらに考察を深めたりできる。

今後、本問題についてさらなる研究が行われることを期待したい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

次にロボットがやることは何か?ジャズマリンバの演奏だ

あなたが、ギャラのいい、デブで、態度のでかいジャズマリンバの演奏者なら、Shimonにご用心。この、マリンバを弾くロボットが、あなたの仕事をねらっている。Shimonはジョージア工科大学のRobotic Musicianship Groupの生まれで、私はここ数年、彼のキャリアを追っている。このビデオはAtlanta Science FestivalのときにFerst Center Presentsで撮られたもので、Shimonと、Zachary Robert Kondakのバンドが、Kondakのロックオペラの最新作からジャムしている。サックスは、Richard Saveryだ。

ぜひ見るべき。ほんとに、すばらしいから。

この演奏のいちばんすごいところは、ドラムのJason Barnesのロボットアーム的な右腕が、Shimonのタッピングに合わせてビートを叩き出すところだ。その、人間とマシンの融合は、見る者に畏怖の念すら抱(いだ)かせる。

ジャズビブラフォンなら、今のところ大丈夫ってか。でも、次のダンスパーティーで来てくれるバンドでは、すでにロボットがヴァイブを弾いてるかもよ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Google Lens、iOS版も公開

先週のAndroid版公開に続いて、GoogleのAIを利用した新テクノロジー、Google LensがiOSにもやってきた。この機能はGoogle PhotosのiOSアプリに内蔵されている。写っている物体、建物、ランドマークなどを認識してその場所の電話番号、住所、開店時間など様々な情報を表示する。本や美術館の絵画、植物、動物なども認識する。対象物の種類によってはアクションを起こすこともできる。

たとえば、チラシや看板の写真を基にカレンダーにイベントを追加することもできる。あるいは、名刺を撮影して電話番号や住所を連絡先に登録することもできる(写真を連絡先データに変えるといえば、Microsoftがつい最近Pixアプリに追加した機能で、LinkedInでその人を探すこともできる)。

Google Lensは昨年のGoogle I/Oデベロッパーカンファレンスで初めて発表された。最近の機械学習と画像認識技術の進歩によって可能になった機能だ。最終目標は、スマートフォンのカメラを使ってどんな種類の写真に写っているものも認識し、必要なら電話をかけたり連絡先情報を保存するなどのアクションを起こしたり、カメラの向こう側にある世界について学ぶことができる。

I/Oカンファレンスのデモで、GoogleはほかにもGoogle Lensの機能をいくつか披露した。たとえばWi-Fiルーターに貼られたシールを写真に撮って、書かれている情報をWi-Fi設定に貼り付けることができる。外国語の看板を英語に翻訳する機能のデモも行われた。

まだ約束した機能のすべてを十分果たしているとはいえないが、Google Lensの成長とともに可能になっていくのだろう。

Google PhotosのTwitterアカウントが発信したツイートによると、iOS版Google PhotosのGoogle Lensは、最新バージョン(3.15)をインストールしているユーザーに米国時間3/15から順次展開される。

来週のうちには展開が終了する見込みだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ASMRビデオの専門サイトTingles、無宣伝で急成長、YouTubeの限界に挑む

Tinglesは宣伝やパブリシティをほとんどやっていないが、すでに多数のファンとそのコミュニティができている。ターゲットを絞った特殊なプロダクトが、これだけ急速に広まるなんて、めったにないすごいことだ。

スロベニアのGasper KolencとMiha Mlakarがこのサービスを立ち上げてからほぼ1年になるが、その間同社はもっぱらASMRだけを取り上げてきた。ASMR(autonomous sensory meridian response)とは、音や映像だけで幸福感やリラックス感を与える、という意味だが、そんなビデオを提供する同社は、最近Y Combinatorの傘下になったので、今後さらに大きく伸びるかもしれない。

同社のCPOであるMlakarはこう語る: “アーチストやコミュニティのためのサービスを構築する最良の方法を探している。すでにたくさんのアーチストやコミュニティと、仲良くなっている。いろんな機能はすべて、コミュニティからのアイデアがベースだ。それらを全部実装していくためには、もっと時間が欲しい”。

宣伝をまったくしなかった同社は、現在の月間アクティブユーザー数が6万、その1/3は毎日使っている。サイトのコンテンツは、200名あまりの“アーチスト”たちの作品だ。ASMRのコミュニティでは、アーチストよりも“ASMRティスト”と呼ばれている。その多くは、脱YouTubeの人たちだ。

ネット上にASMRが増えてきたその震源地は、もちろんGoogleのビデオサービスYouTubeだ。MlakarがASMRを知ったのもYouTubeからだが、YouTubeのような何でもありのビデオサイトには限界がある、と彼は言う。

“YouTubeは、発見のためには良い”、とMlakarは言う。“ぼくがASMRを発見したのもYouTubeだ。でもレギュラーユーザーになると、YouTubeは問題になる。主な問題は、広告だ。ASMRを聴いてて眠くなり、実際に眠りかけたとき、大音量の広告に起こされる。それは、とても不愉快だ”。

高度に専門化したサービスは、収益化に関しても有利だ。このサービスは広告なしで、しかも無料だが、クリエイターが同社の承諾のもとに有料コンテンツを作り、チップなどを収入源にすることができる。クリエイターに対しては、そのための審査過程があり、承認プロセスがある。それにビデオは同社が監視し、悪質なものは排除する。しかし、同社や多くのASMRファンが指摘するのは、性的なコンテンツが問題になることはない、ということだ。“エロのチャネルはほかにいくらでもあるからね”、とMlakarは述べる。

しかしTinglesにとっては、ASMRは手始めにすぎない。Mlakarによると、AndroidやiOSのアプリは、“リラックスして安眠できるビデオコンテンツを見つけるための最良の場所”だが、同社の将来プランとしては、瞑想やマインドフルネス(“気づき”)など、そのほかのリラクセーション法も取り上げていきたい。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Airtableが非技術者のためのツールで複雑なソフトウェアを開発できるようにするために5200万ドルを調達

大企業ならば、おそらく相互に関連した情報の複雑なバックボーン(そこには膨大なデータが含まれ、そこへの操作が簡単にできるようになっている)を構築するための、多数のエンジニアとリソースを抱えていることだろう。しかし小さな企業だったり、それほど技術指向ではない企業の場合、そうしたリソースを持つことは難しい。

それこそが、Howtie LiuにAirtableの作成を決意させたものだ。このスタートアップは一見ただのスプレッドシートにしか見えないものを、堅牢なデータベースツールとして使えるようにすることを目指している企業だ。背後で行われている複雑性を隠しながら、プログラミング経験のない人たちに、自分たちの仕事を処理するための複雑なシステムが作れるようにしてくれる。本日(米国時間3月14日)、彼らはBlocksという名の新しいツールで、さらなる1歩を踏み出した。これを使うことで利用者たちは、SMSや統合マップなどの様々な操作部品を、システムにただドロップすれば良いようになる。例えば、技術バックグラウンドを持たない小規模ビジネスのオーナーが、注意深く全てのアクティビティ、例えば食品トラックのネットワークを追跡することが、金額を入力してツールの1つをドロップするだけで、可能になるものだと考えてみて欲しい。

「私たちは、皆が持っているこの力をソフトウェア開発の中に引き出して、それを誰でも使える『一般消費者向け製品』の形にしたいと願っているのです」とLiuは言う。「同時に、ビジネスの観点からは、一般にローコードアプリケーション(プログラミングをあまり行わなくてもよいアプリケーション)のプラットフォームが持つ、大きなチャンスに期待しています。これらのプラットフォームは、普通なら予算を使い時間もかかる、重量級の高価なユースケースのニーズを解決します。私はAirtableをGUI寄りのものとして位置付けています。これに対して多くのツールはデータ管理的側面が中心です」。

Liuによれば、同社はCRVとCaffeinated Capitalによって主導されたラウンドで5200万ドルを追加調達したと語った。他にラウンドに参加したのはFreestyle VenturesとSlow Venturesである。調達資金は全て、プログラミングプロセスそのものを抽象化しようとするシステムの構築に利用される。しかし結局は、論理操作のレゴブロックに過ぎないものを使って、どれだけ実際にシステムをカスタマイズできるかということには、ある程度の限界がつきものだ。要するに、ここでの目標は、平均的なプログラマーが作るような、一般的な操作をなるべく数多く抽出することだ(そして大企業にはしばしば、これらを高度にカスタマイズするニーズが存在している)。

こうしたことは、まだ流行ってはいないが大きな市場の可能性のある、小規模から中規模のロングテールビジネスを、企業たちが徐々に狙おうとするときに必要となるものだ。そうした企業にはエンジニアを雇うためのリソースもおそらくないだろう。GoogleやFacebookが大学にやって来て、技術系のバックグラウンドを持った学生たちをさらっていくのとは対照的だ。これが、ビジネスを運用するために必要な、沢山の複雑な操作を抽象する用途に、Excelが大人気を博している理由の1つである。しかし同時に、Liuはそうした哲学はさらに前に進めることができるべきだと語った。

「クラウドの世界には、AmazonのクラウドインフラのEC2があります。これはハードウェアを抽象化して、既存のマシン上の情報を乗せることが可能です」とLiuは言う。「そして、OSやそれ以上のものを載せることも可能です。コンテナ、Heroku、およびその他のツールが、運用レベルの複雑さを取り除いています。しかし、それでもアプリケーションとロジックは書かなければなりません。私たちの目標は、その部分をさらに飛び越えて、アプリケーションコードのレイヤーを抽象化することなのです。利用者は私たちのインターフェイスやブロックを直接使うことができます。これらは全てプラグアンドプレイで利用できるレゴブロックのようなもので、利用者に、よりダイナミックな機能を提供します。マップビューやTwilioとの統合などがその例です」。

そして実際には、Twilioを始めとする多くのプラットフォームも、それ自身でコーディングの初心者に対して、とても親切なものになろうとしている。例えばTwilioは開発の初心者が、そのプラットフォームを利用するためのとても素晴らしいドキュメントを沢山持っている。その中でAirtableが狙うのは、これら全てを複雑なウェブの上で相互接続し、リレーショナル・データベースを背後で構築し、利用者が正確性、速度、そして信頼性を犠牲にすること無く、シンプルに運用できるようにすることだ。

「明らかにMySQLは、コードやカスタムSQLクエリを使用してデータとやりとりしたい場合には素晴らしいものです」とLiuは言う。「しかし、究極的には、ビジネスエンドユーザーが、文字通りターミナルベースのSQLプロンプトを、データとのやりとりをするプライマリインターフェイスとして採用することを期待することはできません。もちろんそのようなデザインを採用することはないでしょう。明らかに、SQLレベルのデータベースの上に、何らかのインターフェイスが必要です。私たちは基本的に、Postgresのようなリレーショナルデータベースと同等の価値をエンドユーザーに対して開放していますが、私たちはさらに重要なものを提供しています:データを即座に可視化するインターフェイスです」。

これまでにも、平均的なユーザーが慣れ親しんでいる基本的なフォーマットを再考しようとする活動は数多く見られてきたが、柔軟性に対しての成熟度は進んでいる。例えばワード文書の背後にある概念を再考しようとするスタートアップCoda6000万ドルを調達した。こうした努力はいずれも、非テクニカルユーザーのためのより堅牢なツールキットの作成に向けられている。このことは、この分野が徐々にホットな場所になることを意味している。特にAmazonやMicrosoftのように、こうしたサービスをオンラインで提供しようとしていたり、そうしたビジネスに目をつけた企業たちにとってはチャンスのようにみえる。

Liuも、同社の目標は、WYSIWYGで汎用なプラットフォームを作ることで、潜在的な全てのビジネスケースを追い求めることだと話した。こうしたやり方は通常ホリゾンタルアプローチ(水平アプローチ)と呼ばれている。ただ、こうしたやりかたは大変危険なもので、おそらく同社に対して投げかけられる最も大きな疑問の1つである。例えば他のスタートアップや企業がやって来て、特定分野のニッチを全て奪ってしまうかも知れない(例えば、ヘルスケアに特化したカスタムGUIプログラミングインターフェイスとか)。しかしLiuはAirtableにとってのチャンスは、最初から水平アプローチをとっているところにあると語る。

「ソフトウェアには、文字通りコードを書かなければならないという前提があります」とLiuは言う。「コードを書くことであまりにも多くのことを構築しているために、自分たちを解放することが難しくなっているのです。しかし有用なアプリケーションの中身を考えてみるとき、特にB2Bの企業内ツールのユースケースを支える、コードで書かれた大量のソフトウェアを見ると、結局その大部分は主にリレーショナルデータベースモデルなのです。そしてそのリレーショナルデータベースの側面から見ればバラバラの形式ではないのです」。

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(翻訳:sako)

Alexaの新しい‘ブリーフモード’では、コマンドへの応答を「オーケー」でなくチャイム音ですます

Amazonが、AlexaデバイスEchoの新しい動作モード、“ブリーフモード”(Brief Mode)の存在を確認した。brief(簡潔)の名のとおり、Alexaが自分の声でなくチャイムなどの音でユーザーの指示を確認するようになる。たとえばAlexaに、明かりをつけるよう頼むと、通常は“okay”と返事するが、ブリーフモードなら小さなチャイム音を鳴らす。

このモードは、スマートホームを音声でコントロールするのはいいけど、いちいち声による確認は要らない、という人に便利だ。家の中に音声でコントロールするスマートホームアクセサリーがたくさんあって、毎回Alexaの声を聞くのにも疲れたよ、という人だっているだろう。

このブリーフモードの導入時期は、Alexa対応のスマートホームデバイスが急に増えてきた時期と一致している。ドアベル、カメラ、電灯、サーモスタットなどなど、家中Alexaだらけになりつつある。今年のCESでも、Alexa対応デバイスがたくさんあった。水道の蛇口、照明のスイッチ、車のダッシュボードカメラ、プロジェクター、食器洗い機、洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、などなど々々々々。

ブリーフモードに最初に気がついたのは、Redditのユーザーだった(それをAFTVNewsが報じた)。その後、コメントなどで、ぼくも、私も、という人たちが続出した。そのモードが消えた、という人もいるから、現状はまだテストかバグかもしれない。ブリーフモードのon/offを切り替えるトグル(下図)を見つけた人もいる。

Amazonの説明によると、ブリーフモードは、家の中のコマンドだけでなく、Alexaがユーザーに何かを確認するときはつねにこのモードで応答する。Alexaのふつうのおしゃべりの中でも音が使われるらしいが、それはまだ私は未確認だ。

昨日、私の家でもブリーフモードが有効になったときは、最初のコマンド(寝室の灯りを消せ)のときにAlexaは、ブリーフモードについて説明する。このオプションを有効にするか?と尋ねるので、私は“イエス”と応じた。

それ以降は、各種のスマートホームデバイスにコマンドするたびに、Alexaはokayでなくチャイム音で確認するようになった。

昨日Amazonに、ブリーフモードは全ユーザーに行き渡ったか、と尋ねたら、今日(米国時間3/16)、行き渡ったと答えてくれた。

“私たちはつねに、Alexaをお客様にとってもっと便利にする方法を探している。ブリーフモードも、その最新の例のひとつである”、と同社のスポークスパーソンはおっしゃった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

MITが複数の人工臓器をペーパーバックサイズで相互作用させる装置を開発

開発中の薬が人間の生理にどのように影響するのかを見たい場合、選択肢は限られている。多くの場合はマウスを使うことになるが、様々な意味で人間との類似度は高いものではない。薬理学者はどうすれば良いのだろうか?MITの研究者たちが新しい解を見つけた:数百万個の生きた細胞を使って、相互に接続された最大10個の人間の臓器をシミュレートする、「身体チップ」(body on a chip)を開発したのだ。

マウスは人間ではないという、そもそもの問題を理解するのは難しくない。そしてそれを使った試験にも必然的に限界があることも容易に想像できる。「臓器チップ」(organ on a chip)プラットフォーム(より正確には「微小生理システム」(microphysiological systems)だが)は既に、相当数のものが存在している。それらは有益なものだが、臓器は単体で存在しているわけではない。個人ごとに異なる複雑なシステムの一部なのだ。

例えば、肝臓の細胞に対して薬のテストを行っていて、実は腎臓で産生されている物質への影響を考慮に入れていなかったらどうなるだろう?あるいは、薬の副産物が複数の臓器間の重要な相互作用を妨害してしまうとしたら?答に窮すると思う。私も医者ではないが、今回のアイデアはここから生まれたのだ:こうした複雑さを考慮しなければ、テストは不完全である。マウスについて良い点は、少くとも彼らは完全な生物であることだ。

身体をより良くシミュレートするために、MITの研究者たちは、10の臓器組織を別々の区画に入れ、それらの間の物質および薬物の流れをリアルタイムで制御できる、より複雑なプラットフォームを作成した。

MITのニュースリリースでは、これを「身体チップ」(body on a chip)と呼んでいるが、本日Science Advancesに掲載された論文によれば、研究者たちはその呼び方を気に入ってはいないようだ。彼らが好むのは「微小生理システム」(microphysiological system)という名前だが、その理由は「こう呼ぶことで、あたかも全ての臓器がチップ上に再構成されているという誤った印象を避けることができる」からだ。まあ読者はお望みの名前で呼べば良い。どうぞご自由に(「フィジオームチップ」(Physiome on a Chip)というのも人気のあるオプションだ)。

論文にも示されているように、少数の臓器組織を用いてこうしたことを行うことは珍しいことではない、しかし10もの臓器組織を用いて何週間も維持させることは前例がなかった。そしてこの種のシステムの能力に関する大きな飛躍を示しているのだ。それだけでなく、これまでの微小生理システムでは、実験途中で組織を採取したり操作したりすることが困難だった。

論文で研究者たちは、肝臓、肺、腸、子宮内膜、脳、心臓、膵臓、腎臓、皮膚、そして骨格筋といった、最も一般的に試験される臓器を多数テストしている。そうすることで、薬剤を腸に投与して、他の臓器に渡す前に正常に処理を行わせ、その後各臓器で処理を行ったあと、さらに物質を渡していくという操作が可能になる。

複数の実験やシステムを必要としていたものがより迅速に、そしてより体内での作用に近い方法で実施できるようになる ―― マウスを使うことなしに。

「私たちのプラットフォームの利点は、それをスケールアップしたり、スケールダウンしたりすることで、さまざまな構成に対応できることです」と説明するのは、論文の主要著者の1人であるLinda Griffithである。「私は、3臓器や4臓器のシステムからより多くの情報をとり始めるようにこの分野が移行するだろうと考えています。取得する情報の価値が非常に高いため、コスト競争力を持つようになるでしょう」。

これは良い知らせだ。結局のところ、すべてを動かすのはコストだからだ。もしこの仕掛が上手く動いたとしても、大勢のインターンを使って行う簡単な実験よりもコストが20倍掛かるなら、大手製薬会社はインターンを使い続けることだろう。

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(翻訳:sako)

Appleが3月27日に教育イベントを開催、中身はまだ謎に包まれている

Appleには、学校や教師にサービスを提供してきた長い歴史があるが、しかし最近では業界の模様も変わり、Chromebookが学校の教室の様相を完全に変えてしまった。しかし、かつてのマインドシェアを取り戻したいAppleは今朝(米国時間3/16)、各方面へイベントの招待状を送り、来場者たちに何かの“実地見学”を勧めている。

シカゴで3月27日に行われるそのイベントは、“クリエイティブな新しいアイデア”を提供する、という。新しいハードウェアの立ち上げか? MicrosoftがWindows 10 SとSurface Laptopのローンチで昨年やったようなイベントか?

Appleの教育に関する戦略では、このところiPadが主役だったから、その路線の延長のような気もする。そもそもiPadは、発売の時点で、そのメインのピッチ(売り込み言葉)の中に‘教育’があった。

近年、タブレットの市場は比較的沈静化しているが、しかしその中にあってもApple製品の優位は揺るいでいない。しかもiPadは新たな脱皮をねらっているようでもあり、最近はありとあらゆるおかしな方角から、新製品の噂が飛び込んでくる

しかし、だからといって今回のイベントがハードウェアの紹介で終わることはないだろう。Appleは学校や先生たち向けのソフトウェアでもおもしろいソリューションを提供してきたし、また学校のIT向けには、個々のiPadをコントロールするソフトウェアも提供している。さらに最近では、一連の新しい教育アプリもある。

あるいはAppleは児童生徒向けの新しいハイエンド製品を紹介して、ここ数年教育市場を席巻してきたChromebookからの移行を迫るのかもしれない。その際同時にもちろん、289ドルのWindows 10Sラップトップも斬るつもりだろう。

Appleがイベントの発表に、とくにこの日を選んだのはなぜだろう? Samsungの旗艦製品の発売とほぼ同時期なのは、単なる偶然と思えるが。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

B Dash Campピッチアリーナ、優勝は薬局薬剤師向けSaaSのカケハシ

3月15日から16日にかけて開催中の「B Dash Camp 2018 Spring in Fukuoka」。2日目となる本日、最後のセッションとなったのは、スタートアップのプレゼンバトル「ピッチアリーナ」だ。バトルには合計で18社のスタートアップが参加し、初日に行なわれたファーストラウンドを勝ち抜いた6社が本戦へと進んだ。

その本戦で優勝を飾ったのは、薬局薬剤師向けSaaSサービスのカケハシだった。同社が提供する「Musubi」では、患者の疾患や年齢、アレルギーの有無などの情報をもとに、それぞれの患者に最適な指導内容を提案する。薬の処方だけでなく、生活習慣のアドバイスなども行う。

通常は2時間ほどかかる薬歴(調剤や服薬指導の内容を記録したもの)の記入時間を、15分に短縮できるという。初期費用は100万円で、現在のユーザー数は40店舗。現在の月次売上高は4000万円ほどに達しているという。代表取締役の中尾豊氏は武田薬品出身だ。

優勝したカケハシのほか、ピッチアリーナ本戦に出場したスタートアップを以下に紹介しよう。

HERP

複数の求人媒体に送られた応募を一元管理できる採用プラットフォーム。メッセージ交換や日程調整、求人票の作成などの業務を1つのアプリケーションで完結できる。ベータ版における現在のユーザー企業数は20社。代表取締役の庄田一郎氏はエウレカの出身者だ。2017年12月には数千万円規模の資金調達を実施している

Inner Resource

Inner Resourceが提供する「ラボナビ」は研究機関向けの購買システム。研究機関では、研究費の不正利用を防ぐために購買に関するルールが数多く存在するという。そのため、実際の購買管理にかかる手間は非常に煩雑になってしまう。ラボナビを利用することで、複数の業者へ一括で見積もりや問い合わせを行うことができる。従来ならエクセルで行なわれていた予算管理もクラウド上で完結する。月額9800円。

ニューレボ

ニューレボが提供する「ロジクラ」は、商品の入荷から在庫管理、出荷までを一気通貫で管理できるシステム。バーコードやラベルの発行、在庫管理、通販サイトの受注取り込み、納品書の作成といった一連の物流業務をクラウド上で完結する。30万円ほどで販売されている従来の専用デバイスを、スマホに置き換える。将来的には取得した在庫データ、販売データをもとに需要予測ができるところまでを目指している。STORES.JPやShopifyなどと提携済みだという。ロジクラは、月額の基本料金と従量課金でマネタイズする。現在の有料課金ユーザーは4社。2017年12月には5000万円の資金調達も実施している

Subdream Studios

Subdream Studiosはカルフォルニアに本社を置くスタートアップで、ソーシャルVRゲームなどの開発を行う。「Yumerium」はブロックチェーンベースのゲームプラットフォームだ。同社はプラットフォーム上で使える仮想通貨「YUM」を発行。ゲームを長くプレイしたり、レビューやシェアするインフルエンサーがトークンが受け取れる仕組みを作る。また、開発者がマーケティング費用としてYUMをパブリッシャーに支払ったり、プレイヤーがゲーム内マネーとYUMと交換したりといった、YUMを中心とした経済圏を構築する。2018年2Qをめどにテスト運営を開始する予定。

justInCase

justInCaseは、スマホの故障に備える「スマホ保険」を提供する少額保険スタートアップ。ユーザーの活動量を機械学習によってスコアリングし、ユーザーごとに最適化した保険料を提案する。知り合いや友人同士でグループを作り、そのメンバーが保険金を拠出し合うP2P型保険の提供を目指す。2018年2月には3000万円の資金調達を実施した。TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルにも登場した。ピッチアリーナ本戦では、SPECIAL AWARDを受賞している。

Amazonの新規Prime会員のうち500万はビデオのオリジナルプログラムを見たい人だった

Amazonのオリジナルコンテンツへの取り組みは、少なくともPrimeの新会員を大きく増やしたことで、十分報われている。Primeは今や誰が見ても、このコマース巨人のメインの価値だ。Reutersが入手した文書によると、Primeビデオの、19の番組から成るトップのオリジナルプログラムは、2014年の終わりから昨年の初めまでの間のPrimeサービスの新規会員のなんと1/4を集めている。

その文書によると、Primeビデオのアメリカのオーディエンスは、オリジナルとライセンスコンテンツの両方を含めて、およそ2600万に達する。そして、そのプログラムを見たいがために入会したPrime会員はおよそ500万、そのうち115万はAmazonのThe Man in the High Castleシリーズが目当てだった。その製作費7200万ドルを新規会員獲得コストと考えると、Amazonの内部文書によると、年会費99ドルの新規会員の獲得に一人あたり63ドルのコストを要している。Amazonがオリジナルプログラムの編成に力を入れるのも、当然である。

でも、Primeの新規会員の登録動機がPrimeビデオの番組だった、とどうして言えるのか? 同社は、彼らの会員になってから最初のストリーミングが何であるかを調べ、また以下はぼくの想像だが、最初のとは言ってもその番組を見るためにあまり日にちや時間が経ったやつは、除外しているだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

映像制作のイマジカがCVC開始、15億円のファンドでエンタメ領域中心に投資へ

子供向けアニメや実写映画、テレビ番組を制作するオー・エル・エム、「ALWAYS 三丁目の夕日」をはじめとする実写映画やTVCMを制作するロボットなど、映像コンテンツビジネスを手掛けてきたイマジカ・ロボット ホールディングス。そんな同社がCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を通じてスタートアップ投資を始める。

同社の子会社でベンチャーキャピタル事業を展開するオー・エル・エム・ベンチャーズは3月16日、1号ファンドを組成。1次募集として約12億円の出資約束金額で運用を開始したことを明かした(最終的な出資金総額は15億円を予定する)。

昨今コンテンツ業界を取り巻く環境は大きく変化している。激変するエンタメ領域にて、メディアやコンテンツを中心にVR 、AR 、MRや、新たな動画関連ビジネスを手掛けるベンチャー企業との出資・連携を進めていく方針だ。

「視聴スタイルの変化を筆頭に映像コンテンツ業界の環境変化が進む中、グループを挙げて様々なチャレンジをしてきており、今回もその一環だ。我々が手掛ける作品に、ベンチャー企業の持つARやVR技術を活用して、VRアニメのような今までに無い視聴体験、映像表現が提供できればと考えている」(オー・エル・エム・ベンチャーズの代表取締役を務める横田秀和氏)

横田氏は富士銀行(現 : みずほ銀行)に入行後、ソフトバンクへ出向し「ソフトバンク・コンテンツファンド」の担当としてVC業務をスタート。2001年より富士銀キャピタル(現:みずほキャピタル)に入社し、インターネットやコンテンツ分野を中心に投資活動を続けてきたベテランのキャピタリストだ。

「20年に渡るキャピタリスト人生を踏まえ、今まで以上に起業家に寄り添う立ち位置で支援をしたいと考えゼロからファンドを立ち上げた」(横田氏)

スタートアップ支援の観点から、グループ会社以外の事業会社にLPとして入ってもらうことにも拘った。今回LPにはイマジカ・ロボット ホールディングスとオー・エル・エムに加えて、アドウェイズや小学館、ミクシィ、SMBCベンチャーキャピタルらが名を連ねる。今後も引き続き事業会社を中心にLPに入ってもらう予定だという。

投資するスタートアップは、アーリーステージ(シリーズA)を中心にする予定。ただしミドル・レイターステージの企業でも、グループのリソースを活用することで、さらなる成長支援ができる場合には出資を検討する。

コンテンツ分野は日本が強みを有していることもあり、出資先は国内企業がメイン。グループ会社やLPとの連携も重要視しつつも「(グループ以外の企業がファンドに出資しているため)シナジーありきではなくしっかりとパフォーマンスを意識して運営していく方針」(横田氏)だという。

Fordは自動車の生産方法を変えようとしている…プラットホームからアーキテクチャへ

115歳になるFordはこれまで、数多くの変化を経験してきた。同社は今年もまた、変わろうとしているようだ。

今日Fordは、ミネソタ州ディアボーンの開発センターの奥深くにある劇場に、数百名のジャーナリストを集めた。その建物は、技術研究所や試験施設に囲まれている。通りの向こうには、テストコースがある。その向こうに本部の建物があり、駐車場からはThe Henry Ford Museum(ヘンリー・フォード博物館)が見える。ここは、Fordの発祥の地だ。

説明会の内容は半分がオフレコで、残る半分は説明資料に載っている。同社はその製品戦略を開陳し、その中には(オフレコの)、まだ誰も見たことのないコンセプトカーもあった。CEOのJim Hackettがジャーナリストたちの前に座り、彼がMark Fieldsの仕事を引き継いで以来の、同社の計画の進化を詳しく述べた。その中には、開発サイクルを短くすることや、外国の自動車メーカーとのパートナーシップなどがあった。

Fordは従来の自動車企業のプレスカンファレンス(記者招待催事)にほとんど必ずあった、プラットホームの話を避けた。これまでの自動車メーカーは、自動車のプラットホームというものを作った。それは、複数の車種が共有する共通基本設計のことだ。ひとつのプラットホームをベースに、小型セダンからSUVまで、いろんな車種を作る。プラットホームについて話すことによって自動車メーカーは、共通のパーツから複数の車種を作れる自社の柔軟性を示すことができた。Fordはそれをさらに前進させて、自動車の複数のアーキテクチャ(基本設計構造)を作ろうとしている。

これは、言葉と方法論における、小さいけど重要な変化だ。Fordによると、これによってスケッチからショウルームまでの開発時間が20%短くなる。

ひとつひとつのアーキテクチャに実装の柔軟性があり、基本となるアーキテクチャは5種類ある:

  • ボディー・オン・フレーム
  • 前輪駆動ユニボディー
  • 後輪駆動ユニボディー
  • 商用バン・ユニボディー
  • 電池式電気自動車

これら(上4)にさらに電動タイプと内燃機関タイプがあり、それが、構成のすべてだ。

Fordによると、同社はエンジニアリングの効率性に40億ドルを投ずるつもりであり、このアプローチが目標の達成に大きく貢献する、という。自動車メーカーはこれまで、パーツやエンジンや構造材を複数の車種で共有してきたが、しかしこのアプローチはFordの柔軟性をさらに増し、例えば上図のFord Explorer STのような、もっとユニークな車種を可能にするだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

地域コミュニティアプリの「メルカリ アッテ」が5月末でサービス終了

以前、「Craigslistライクなサービス」としてお伝えした地域コミュニティアプリ「メルカリ アッテ」。メルカリグループのソウゾウが提供してきたこのプロダクトが、5月31日をもって終了する。メルカリが3月16日に発表した。

メルカリ アッテは2016年3月のリリース(厳密には2月時点でApp Storeにひっそりと公開されていた)で、ソウゾウの最初のプロダクトだった。地域の情報を共有したり、不要品の譲渡や売買、占いやハウスクリーニングといったサービスを個人が提供できるプラットフォームだ。だが地域を限定し、実際に会うことを前提にしているという特長から、サービス開始後には、コミュニティ機能などがいわゆる「出会い系」サービス的な利用がされるといった時期もあった(記事執筆のためにアプリを確認したが、現状は明確なわいせつ行為等を目的とした投稿は見受けられない)。

メルカリの説明によると、「地域での暮らしが豊かになる場所、同じまちに暮らす人と人とのつながりのグラデーションになる場所を目指し、2016年3月よりサービス提供をしておりましたが、メルカリグループ全体で経営資源を集中すべく、サービスを終了させていただくことになりました」とのこと。

今後のスケジュールとしては3月29日を目処に新規投稿機能の提供を終了。4月26日に応募やコメント機能も使えなくなり、5月31日の15時ごろにメッセージやタイムライン閲覧を含む全機能の提供を終了する予定だ。

ソウゾウでは現在、アッテ以外にも本やCD、DVDに特化したフリマアプリの「メルカリ カウル」、ブランド品に特化したフリマアプリの「メルカリ メゾンズ」、メルカリ内の即買取機能「メルカリ NOW」、サービスCtoCの「teacha」(現在はベータ版、4月より提供予定)など多くのサービスを展開している。

ウェアラブルオペレーティングシステムAndroid Wearが‘Wear OS by Google’に改名

Android Wearは、Googleが4年前の今週ローンチしたときに期待したような大成功には至らなかった。

この遅いスタートをきったウェアラブルオペレーティングシステムは、2017年の初めに2.0がリリースされた。しかしそれはかなり小さなアップデートで、目立つ変化を何も生まなかった。そのニューバージョンの発表から数か月後には、グローバルなマーケットシェアでTizenがWearを上回り、オープンなオペレーティングシステムを採用したSamsungの影響力を見せつけた。

たぶん、Wearに必要なのは新しいドレスだ、いや、少なくとも、新しい名前だ。そこで今日(米国時間3/15)後者を選んだGoogleはそのブログ記事で、Android Wearは今やWear OSだ、と発表した。もっと正確に言うと、Wear OS by Googleだ。

Wear OSのDirector of Product, Dennis Troperは、そのブログ記事でこう言っている: “ここで発表する新しい名前は、私たちの技術とビジョンと、そして何よりも重要な、私たちのウォッチを身につける人びとを正しく反映するものである。これからの私たちはWear OS by Googleであり、それは万人のためのウェアラブルオペレーティングシステムだ”。

時計メーカーの複合企業Fossil Groupが、ブランド名を変えることを示唆したようだ。

Fossil GroupのCSDO(Chief Strategy and Digital Officer) Greg McKelveyが、本誌TechCrunchにくれた声明文でこう述べている: “2017年にFossil Groupのウェアラブル事業はほぼ倍増の3億ドルあまりに達し、Q4の売上の20%はウォッチだった。そしてわれわれは、このカテゴリーの成長が今後も続くと予想した。われわれのスマートウォッチの顧客は多くがiOSのユーザーだが、2018年にはAndroidとiOS両方のスマートフォンの全世界のユーザーが、Wear OS by Googleの展開により、新しい魅力を体験することを、確信し熱望するものである”。

このニュースは、来週スイスで行われるウォッチとジュエリーのビッグショーBaselWorldの直前に発表された。今のところ、変わったのは名前だけだが、中身の詳細はショーの会場で発表されるのだろう。Android Wearは近年、Googleの注力の対象外だった。しかし2015年にはiOSとの互換性が加わり、客層は広くなったと思われた。Android Wearのウォッチは全部で50機種以上発売されたが、どれも、ウェアラブルの世界を席巻するほどの成功を経験しなかった。

しかしブランド名を変えたことによって、再びGoogleの注力の対象となり、ウェアラブルの全体的な不振の中で、スマートウォッチだけは少なくとも、明るい光に包まれるのかもしれない。しかし、あくまでも、改名で変わったものは名前だけである。同社によると、今後の数週間にわたり、Wear OSの名前がアプリやウォッチ製品に付随する形で展開されていく予定だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa