プログラミング不要のゲームエンジン「GDevelop」が約1.6億円調達、ゲーム開発をより身近に

GDevelopは、特定の開発経験がなくてもビデオゲームを開発できるゲームエンジンだ。2021年は「ノーコード」がかなりのトレンドとなったが、GDevelopはだいぶ前から存在している。

Florian Rival(フロリアン・リヴァル)氏は、オープンソースのサイドプロジェクトとしてGDevelopの開発を始めた。GitHubでの最初の公開バージョンは2014年にリリースされた。

リヴァル氏はGDevelopで、ゲーム開発を可能な限り身近なものにしたいと考えていた。GDevelopは、ウェブブラウザから起動することも、PCにインストールすることもできる。テンプレートから始めて、それを修正し、好きな時に試すことができる。

GDevelopは2Dゲームに特化しており、プレイヤーにとっても開発者にとってもより親しみやすいものとなっている。レベルデザインにおいては、オブジェクトをシーンにドラッグ&ドロップするだけでOK。

ゲームデザインに関しては、イベントタブからすべてのゲームメカニズムを見ることができる。すべては条件とアクションで記述される。例えば、プレイヤーがジャンプしていたら「ジャンプ」アニメーションでキャラクターを動かす。

GDevelopにはデフォルトでたくさんのアクションが用意されている。また、少し特殊なことをしたい場合には、ゲームにロジックを追加することができる拡張システムがある。また、開発者は、より高度なことをしたければ、自分でエクステンションを作ることもできる。エクステンションとは、条件とアクションのセット、つまりJavaScriptコードだ。

GDevelopは、WebGL、JavaScript、WebAssemblyなどのウェブ技術を活用してゲームをレンダリングする。ゲームをエクスポートする準備ができたら、ウェブ用にエクスポートしたり、Android用のゲームにしたりすることができる。平均して、GDevelopユーザーの半数がゲームをAndroidにエクスポートしている。

画像クレジット:GDevelop

何年もの間、GDevelopはいくつかの立派なメトリクスを得てきた。GDevelop のウェブサイトのショーケースページには何百ものゲームがある。GDevelopで作成されたゲームの中には、かなり人気のあるものもある。例えば「Vai Juliette」は、ブラジルのPlay StoreとApp Storeのトップ無料ダウンロードチャートで1位と2位を獲得した。これは100万以上のダウンロードを表している。

開発者によっては、GDevelopを使って複雑なゲームの制作に多くの時間を費やし、SteamやItch.ioでリリースしているケースもある。また、プロモーション用のゲームを作成し、新製品の発売をサポートするためにこのエンジンを使用するブランドもある。

「私の夢は、次のAmong UsがGDevelopを使って開発されることです」とリヴァル氏はいう。

これらの理由から、リヴァル氏はGDevelopを中心とした会社を作り、現在はゲームエンジンの開発にフルタイムで取り組んでいる。同スタートアップは最近、Seedcampが主導して140万ドル(約1億6000万円)の資金調達を実施し、ラウンドにはSecretfund、Kima Ventures、Ascension、Jabre Capital Partners、The Fund、Foreword.vcも参加した。また、Michael Pennington(マイケル・ペニントン)氏 、Ross Sheil(ロス・シェイル)氏、Emmanuel Nataf(エマニュエル・ナタフ)氏、Will Neale(ウィル・ニール)氏、Ian Hogarth(イアン・ホガース)氏など、数名のビジネスエンジェルも出資している。

6人のチームは、同社のオープンソースゲームエンジンがより良いものになるよう、イタレーションを続けている。収益化に関しては、GDevelopは商用エンジンをリリースしたいとは考えていない。MITライセンスのおかげで、ゲーム開発者はGDevelopを使って開発したゲームを100%所有することができる。

その代わりに同社は、GDevelopのユーザーにとって便利なサービスを考えている。例えば、GDevelopは、ゲームをリリースしてマネタイズするためのワンクリックエクスポートソリューションを提供することができる。

多くのモバイルゲーム開発者は、収益を得るために広告に依存している。しかし、ゲームに広告を統合するのは複雑な作業になり得る。開発者は、GDevelop独自の広告機能を使って広告を統合することを選ぶことができ、その場合、同社は広告収入の分配を受けることができる。

基本的に、GDevelopが人気を維持する限り、将来の開発をサポートするための収入源を作るさまざまな方法があることだろう。

画像クレジット:Igor Karimov / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

リアルタイムで土壌検査を行うドイツのアグリテックStenonが22億円を調達

リアルタイムの土壌センシングソリューションを持つアグリテック企業のStenon(ステノン)は、シリーズAラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達した。ラウンドには、Founders Fund、David FriedbergのThe Production Boardの他、Cherry VenturesやAtlantic Labsなどの既存投資家も参加した。

2018年にドイツのポツダムで創業したStenonのデジタル土壌データは、ラボを必要とせずに生成されるため、より速く、より効率的だと同社は主張する。Stenonによると、農家はデータにより栽培に関して最適な判断を下し、収穫量、作物の品質、土壌の健全性を高められるという。また、土壌検査機関を利用する必要がないため、時間とコストを大幅に削減することができるとしている。

共同創業者でCEOのDominic Roth(ドミニク・ロス)氏は、次のように語った。「Stenonのミッションは、農業における土壌データ会社となり、物理的なラボの必要性をなくすことです。土壌データが大規模に利用できなければ、農家は今後、持続的かつ収益性の高い仕事をすることはできません。さらに、市場は再生農業や自律型農業の方向にダイナミックに動いています。これらの実践にはすべて、当社が提供するデータセットが必要になります」。

農業による温室効果ガス排出の半分は、現在の土壌管理方法に起因しているため、Stenonのような土壌管理システムが気候変動との戦いにおいて非常に重要となりつつある。

Stenonの技術は、20カ国で特許を取得するか認証を受けるかして、活用されている。ヨーロッパの主要な農業組合が、ドイツのユリウス・キューン研究所などの研究機関のパネルと共同で認証を行っている。

主な競合他社は、Agrocares、360 Soilscan、ChrysaLabs(140万カナダドル=約1億2300万円を調達)だ。

The Production BoardのDavid Friedberg(デービッド・フリードバーグ)氏は「Stenonのリアルタイム土壌測定は、農家に重要なデータを提供し、コストと時間のかかる現在の土壌分析プロセスに革命をもたらします」とコメントした。

画像クレジット:Stenon soil testing

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

ナイジェリアのMAXがアフリカ全域への展開とEVインフラ整備へ向けて約35億円を獲得

ナイジェリアのモビリティテクノロジースタートアップ企業、Metro Africa Xpress Inc.(メトロ・アフリカ・エクスプレス、MAX)は、シリーズBで3100万ドル(約35億円)の資金を獲得し、アフリカ大陸の交通セクターの一般化に向け、さらに多くの市場に参入する予定だ。

同スタートアップはTechCrunchに対し、2022年の第1四半期末までにガーナとエジプトに、同年末までにフランス語圏、東部および南部アフリカのその他の市場に進出するために、この資金を使う予定だと語った。また、この資金は、今後2年間で10万人以上のドライバーに車両融資クレジットを拡大するためにも使用される予定だという。

MAXは、2015年にオートバイを使って顧客の注文に応えるデリバリースタートアップとしてスタートし、その後ライドヘイリングに進出、さらに車両サブスクリプションや融資サービスなど、同社の当初のサービスのデータを基に考え出したソリューションを提供している。

同社は2018年に車両融資を導入し、わずか2年余りで、所属するドライバーによる解約率が「ゼロに近い」ほどに下がったとCFOのGuy-Bertrand Njoya(ギ=ベルトラン・ノジョヤ)氏はTechCrunchに語っている。

「我々はドライバーの業務を理解するのに時間をかけました。すると、彼らのほとんどが使用する車両を所有していないことが明らかになったのです」。とノジョヤ氏は述べた。

「そして、ドライバーが抱える根本的な問題は、車両への一貫したアクセスであることが明らかになりました。そこで、大陸全体のモビリティの課題を解決するためには、まず車両へのアクセスの問題を解決しなければならないと考えたのです」と語る。

MAXは現在、電動バイクの設計と組み立てを自社で行っている(画像クレジット:MAX)

MAXの商業銀行パートナーは現在、同社が提供するデータを信用リスク評価として利用し、ドライバーに車両購入ローンを提供している。

同社は、サービスの一部として、新市場で電気自動車のインフラを構築し、同社の顧客層に電気自動車を導入することを計画している。

「これは、高性能な技術とオペレーターを導入することで、モビリティを安全で手頃な価格で利用でき、多くの人に開けた持続可能なものにするという私たちの道のりにおける新たなマイルストーンです。この投資により、大陸の何十万人ものドライバーの生活を変え、国際展開を加速し、モビリティ分野における先駆的な取り組みを継続することができます」と、MAXの共同創業者兼CEOのAdetayo Bamiduro(アデタヨ・バミドゥーロ)氏は述べている。Chinedu Azodoh(チネドゥ・アゾド)氏は、このスタートアップのもう1人の共同創業者だ。

モビリティに関する課題へのソリューションを提供することは、常に同社の事業の中心であり、次に解決したいパズルは、運営コストを削減することでドライバーの収入を拡大することだった。

創業者たちは、電気自動車の導入が自然な次のステップであることをすぐに理解し、2019年にMAXは電気モビリティへの旅をスタートさせたのだ。同社は現在、さまざまなリースや融資オプションを通じて、2輪、3輪、4輪のEVをドライバーに提供している。

「ドライバーが最も気にかけているのは、収入を増やしてまともな生活を送ることなので、これは私たちが提供したかった追加オプションです。というのも、現在、EVはガソリン車よりも費用対効果が高いからです」とノジョヤ氏はいう。

MAXは現在、電動バイクの設計と組み立てを自社で行っている。ノジョヤ氏は、電動バイクを提供するために、大手二輪車メーカーのヤマハを含むエコシステム全体のパートナーと連携していると語った。

「ドライバーのためのクルマへのアクセスや、融資へのアクセスの分野でヤマハと協働しています。私たちの仕事とパートナーシップの成功の証として、ヤマハは今日、過去数年にわたり彼らと行ってきた仕事を背景に、アフリカ向けにドライバー向け車両融資の専門組織を立ち上げました」と同氏は述べている。

今回の資金調達は、グローバルなプライベートエクイティプラットフォームであるLightrock(ライトロック)が主導したもので、アフリカのモビリティ分野では初の投資となる。UAEに拠点を置く国際的なベンチャーキャピタル、Global Ventures(グローバル・ベンチャーズ)もこのラウンドに参加し、既存の投資家であるNovastar Ventures(ノバスター・ベンチャーズ)や、フランスの開発金融機関のProparco(プロパルコ)も、Digital Africa(デジタル・アフリカ)イニシアチブを通じてこのラウンドに参加している。

ノジョヤ氏は、このスタートアップがアフリカ大陸の何百万もの交通事業者のための、車両購入と金融サービスのプラットフォームとなることを目指している、と述べている。最近、エストニアのライドヘイリング会社Bolt(ボルト)と提携し、ナイジェリアのBoltのドライバー1万人がエネルギー効率の高い車両を購入できるよう、リース・トゥ・オウン方式を導入した。

画像クレジット:MAX

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(文:Annie Njanja、翻訳:Akihito Mizukoshi)

メルボルンのEdtechスタートアップViviが約22億円調達、100万教室達成に向け海外展開を加速

オーストラリアのEdtechスタートアップVivi(ヴィヴィ)は、教育インベスターのQuad Partners(クアッド・パートナーズ)から2000万ドル(約22億円)を調達した。この資金は、プラットフォームの改善、運営インフラのアップグレード、米国、ヨーロッパ、アジアでの営業・マーケティングチームの増員などに充てられる予定だ。

Viviは2020年、ニューヨークのRiverside Acceleration Capital(リバーサイド・アクセラレーション・キャピトル)とオーストラリアの投資家シンジケートから430万ドル(約4億8800万円)を調達しており、今回の資金調達により5年間で総額2430万ドル(約27億5700万円)を達成することになる。

今回の新たな投資により、同スタートアップは、1対1コンピューティングを利用する教育者の割合が最も高い米国を中心に、世界各地への海外展開を加速させることができる。

1対1コンピューティングとは、学校や大学などの教育機関において、在籍するすべての生徒が電子機器を使用してインターネットやデジタル教材、デジタル教科書にアクセスできるようにすることを指す。

Viviを利用することで、講師は動画や問題集などの教材を生徒に見せ、生徒は自分の端末でその内容に注釈をつけることができる。その他にも、デジタルサイネージ、緊急放送、形成的評価、学生の健康状態のチェックなど、さまざまな機能を備えている。

ワイヤレスプレゼンテーションとスクリーンミラーリング技術を世界中の4万以上の教室に提供しており、今後5年間で100万の学習スペースに到達することを計画しているViviにとって米国は豊かな市場だ。

「Viviは、非常にユニークな方法で海外に需要を生み出し、そのほとんどが口コミによるものです。Viviは、ポイントソリューションから包括的な学生参加型プラットフォームへと進化し、信じられないほど定着することが証明されています」と、Viviの創業者で執行会長のLior Rauchberger(ライオ・ラウフベルガー)博士は言った。

「私たちの次の大きな目標は、できるだけ早く100万教室に導入することであり、Quadとの提携はそれを確実に加速させるでしょう」。

特に米国は、14000近い学区、130000以上の幼稚園から高校まで、そして5000以上の大学からなる市場を提供しており、Viviにとって引き続き魅力的な市場だ。

さらに、新型コロナウイルスの大流行の結果として、米国では教育に投入される連邦政府の資金が空前のものとなり、ノートパソコンやタブレット、携帯電話を持つ生徒の数が増加している。これは、ハイブリッド学習が全米で存在感を高めていることに起因している。

「現在、私たちは特に米国において、大きな追い風を活用するために迅速に動いています。学校におけるテクノロジーイネーブルメントへの注目が急速に高まり、1対1の生徒用デバイスの比率が過去最高となり、スクリーンミラーリングの指導上および管理上の利点に対する認識が高まっている中、Viviをより多くの生徒、教育者、管理者の手にすばやく届けることができることに興奮しています」と、Viviの最高経営責任者であるNatalie Mactier(ナタリー・マクティエ)氏は同社の拡大計画について述べている。

Viviは、生徒が自分の画面をクラスや小グループで即座に共有し、すぐにフィードバックできるシンプルで直感的な授業参画として、2016年に発売された。しかし、スタートアップの登場は2013年にさかのぼり、オーストラリアの起業家であるラウフベルガー博士が、クライアントのためにワイヤレスプレゼンテーションソリューションを探したことがきっかけだった。

あらゆるデバイスに対応するコストパフォーマンスの高い製品が見つからず、イノベーションに着手し、3年後、ラウフベルガー博士とスタートアップの専門家Simon Holland(サイモン・ホランド)氏、Papercloud Ventures(ペーパークラウド・ヴェンチャーズ)の技術指導者Tomas Spacek(トーマス・スペースク)氏とのパートナーシップでViviは誕生した。

現在、Viviはオーストラリア、ヨーロッパ、中東、東南アジア、アメリカ大陸の12カ国で展開されている。

2020年から2025年にかけて世界のEdtech市場は1123億ドル(約12兆7500億円)増加し、そのうち46%は北米で生まれると予想されているため、ViviはAirtame(エアタイム)、Eupheus(エフェウス)、Coorpacademy(クーパカデミー)、Droplr(ドロップラー)といった競合と国際展開で競い合っている。

画像クレジット:Miles Wilson / Vivi

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(文:Annie Njanja、翻訳:Yuta Kaminishi)

NFTをふるさと納税の返礼品に活用する取り組みの推進に向け札幌拠点の「あるやうむ」が2100万円のシード調達

あるやうむは12月17日、シードラウンドにおいて、総額2100万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、Skyland Ventures、林隆弘氏(HEROZ代表取締役Co-CEO)、佐藤崇氏(スマートアプリ創業者、エフルート創業者)。調達した資金は、ふるさと納税の返礼品にNFTを採用するソリューションを自治体に営業するための費用、NFTが返礼品となるポータルサイトの開発費用にあてる。

あるやうむによると、11月24日に「総務省告示百七十九号第五条第五号に沿うイラストのデータをNFT化してふるさと納税の返礼品としてよいか」という質問を総務省市町村税課に行ったところ、「そのイラストが総務省告示百七十九号第五条第五号に適合している場合は可能である」という回答を得たそうだ。

2020年11月設立のあるやうむは、「地域間格差の解消」をビジョンに掲げ、地方に眠る資源とNFTをつなげる北海道・札幌のスタートアップ企業。社名は「あるやうむ」は、アラビア語で「今日」という意味だという。

同社は、暗号資産やNFTへの関心・購買が強い方にふるさと納税の返礼品としてNFTを提供することで、自治体の税収増が見込めること、デジタルアートNFTの場合その自治体の観光資源をアートに盛り込むことで聖地巡礼需要を喚起し、交流人口の増加につなげられることなどを挙げている。

電子トレカ事業ORICAL中心にスポーツ・エンタメ領域のファンビジネスを提供するventusが2.75億円調達

電子トレカを用いたファンシステム「ORICAL」(オリカル)などを展開するventusは12月20日、第三者割当増資による総額2億7500万円の資金調達を2021年9月に実施したと発表した。引受先は、既存株主のANOBAKA、サムライインキュベートと、新規投資家のユナイテッド、ソニー・ミュージックエンタテインメント、オー・エル・エム・ベンチャーズ、VOYAGE VENTURES、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、G-STARTUPファンド。

2017年11月設立のventusは、プロ野球チームなどの国内大型スポーツ・エンタメコンテンツと協業し電子トレカシステムORICALの運営を行っている。ORICALは、選手の魅力を最大限に引き出せるよう「動くデザイン」を実現したほか、ファンの熱量を逃がさない「リアルタイム発行」、来場限定トレカ、ファンクラブなどとの連動といった機能でファンエンゲージメントツールとして浸透しているという。今後は、トレカサービスにとどまることなく、スポーツ・エンタメ界に新しい「デジタルコンテンツ×ファンシステム」を構築していくため事業拡大を行う。

具体的には、2021年12月現在で3チーム・団体が導入しているORICALを、より多くの国内外のスポーツチームに提供していく。現在はスポーツチーム向けに最適化されているORICALシステムを、スポーツ以外のあらゆるコンテンツにも拡大する。加えて、電子トレカをきっかけに新たなデジタルコンテンツの作成、デジタルコンテンツを中心とした新たなファンシステムの仕組み作りを開発していく。

ファンに寄り添った企画・機能開発をベースに、デジタルコンテンツからファンシステムまで、ファンビジネスの上流から下流までをカバーする総合的なエンタメテック企業へ進化するとしている。

「家がない」15億人が抱える問題の解決を目指すJupe

「音楽フェスの参加者のためにグランピング用のテントを作っているわけではありません」。Jupe(ジュープ)の共同創業者でCEOであるJeff Wilson(ジェフ・ウィルソン)氏は、同社のビジョンをこのように力説する。「現時点では、食料は流通の問題で、衣類についてはほぼ解決されています。しかし、世界にはまだ適切な家を持てない人々が約15億人存在します。地球上の大きな問題を解決したいのであれば、これは取り組む価値のある問題です」。

Initialized(イニシャライズド)のGarry Tan(ギャリー・タン)氏とY Combinator(ワイコンビネーター)のメンバーはウィルソン氏に同意したらしい。彼らはシードラウンドでJupeに950万ドル(約10億8000万円)を投資した(Jupeに数カ月間のシェルターを提供したといったところか)。この資金は、Jupeのチームを強化し、住むところのない人に住居を提供するというミッションを継続するために使われる。現在までの予約注文は300件以上。多数の地域に同社のJupeシェルターを出荷し始めたところだ。

Initializedの創業者でマネージングパートナーであるギャリー・タン氏は次のようにコメントする。「Jupeの夢であるユニバーサルな自律型住宅があれば、最終的には地球上のどこにいても、衛星を介してインターネットに接続し、快適に暮らせるようになります。世界はこれを待ち望んでいました」「彼らは世界で初めてのハードテックとソフトウェアプラットフォームを構築しています」。

Jupeのミッションは確かに控えめなものではなく、創業者のウィルソン氏は風変わりで個性的だが、それをやり遂げるだけの情熱とマッドサイエンティスト的な雰囲気を持つ。

ウィルソン氏は最近のインタビューで「米国における平均的な家庭の100分の1の体積とエネルギーを使って生活しようと考え、1年間ゴミ箱に住んでいた」と語り、そこから話題を変えてJupeのアイデアを思いついた経緯を話してくれた。「私は環境科学の博士号を取得しています。気候変動で人類の活動は影響を受けています。Jupeのユニットは、基礎工事も電力網への接続も不要で、特定の土地に縛られることがありません。Jupeは年間15億人もの人々に影響を及ぼす住宅危機を解消するためのステップです。Jupeのユニットは、従来の仮設住宅や移動式住宅に比べて、十分の一のコストと期間で生産可能で、15倍効率良く出荷できます。ユニークなデザインですべての人にしっかりとした滞在場所を提供します。インターネット付きのね」。

現在、サンフランシスコのSoMa(サウスオブマーケット)の真ん中で、Jupeのユニットの1つに住んでいるというウィルソン氏は、次のように説明する。「今回の資金調達ラウンドを主導したギャリー・タン氏は「Universal Autonomous Housing(ユニバーサルな自律型住宅)」という言葉を作ってくれました。まさに私たちがやっていることを示す言葉です」「今のところ、自然の中でオフグリッドかつハイデザインの快適な体験を楽しみたい人がJupeを利用しています。長期的には、技術を発展させて、都市に住むことを望まず、広大な土地でコミュニティを作って暮らしたい人たちを対象にします。将来的には、数週間、数カ月、生まれてから死ぬまでJupeのユニットで暮らしてもらえるようにしたいと思っています」。

ウィルソン氏がMVPと称するJupeシェルターの現行バージョンは、シェルターの中核技術を使って製造されたシャーシの上に、アルミニウム製の外骨格を組み上げた頑丈な構造である。強風にも耐えるが、主に5~27℃の温暖な気候で使用されることを想定している。

「次のバージョンではハードトップが導入され、春夏秋冬などの温度変化がある環境で使用できるようになります」とウィルソン氏。「既存の構造では大雪に耐えられません。コロラドに設置したものは、冬は撤去する必要がありました。しかし、これは進化の過程であり、Jupeは創立間もない企業です。私たちは成長を目指しています。2020年4月に最初のJupeを作ってから、すでに700万ドル(約8億円)程度の収益を計上しています」。

価格決定モデルは教えてもらえなかったが、ウィルソン氏は「それは関係ない」と主張する。同社は、Jupeのネットワークを構築して敷地の区画にJupeを設置し、その区画を貸し出して収益を50対50で分配したいと考えている。

「多少のライセンス料を除けば、初期費用はかかりません。私たちの予約プラットフォームに(区画を)掲載して、ホットスワップ(アクティブ状態で機器を交換すること)で運用します。土地のJupeが古くなったら、私たちが交換をしに行きます。車の下取りのようにね。最新の技術を導入したJupeに交換して、古いものは別の用途に使用します」とウィルソン氏は説明する。「Just add land(必要なのは敷地だけ)。これが私たちのスローガンです」。

現状、最大の課題は、技術面を担当できる適切なCTOを招へいすることだ。同社は、技術プラットフォームを発展させていくために「(技術面で)創業者レベルといえるほどのCTO」を求めている。

「とにかくとんでもなく良い人材が必要です。世の中にはスマートではない人がたくさんいますが、私には本当に優秀な人材が必要なのです。15年以上の経験、スタートアップ企業と大きなチームを管理・成長させてきた人材を求めています。ソフトウェアの面で非常に優秀で、インテグレーションの面でも多くの経験を有する人材です。Jupeはガジェットであり、デバイスですから」とウィルソン氏。「見つけるのは大変だと思いますが、大金と自社株を用意して、競争力があり、私が持つビジョンの実現をサポートしてくれる人を獲得する予定です」。

ウィルソン氏の大胆なビジョン……Jupeは何億もの人に家を提供したいと考えている。

「みんなが火星に行きたがっているのは知っていますが、まだ地球を諦めるべきではありません」とウィルソン氏は締めくくる。「会社の評価なんてどうでもいい。私は残りの人生でこれをやりたいのです。優れた人間性を持つ最高の人材が必要です。一緒にミッションを達成しましょう」。

画像クレジット:Jupe

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

ハードウェア開発をアジャイルの時代へと導くDuro

ソフトウェア開発者にとって、ハードウェア製品の開発プロセスは、1980年代のものとまったく同じであるように見えるかもしれない。最もハイテクなワークフローであっても、表計算ソフトなどのミスが起こりやすくコストのかかる手作業、混乱、そしてハードウェア開発現場のかび臭いハンダ付けされた床板から漂う生きる気力のなさがある。そんな中、Duroは400万ドル(約4億6100万円)の資金を調達し、アジャイル手法を導入して、手間がかかりすぎている世界に正気を取り戻そうとしている。

Duroの資金調達ラウンドは、B2B SaaSの投資機関であるBonfire Ventures(ボンファイア・ベンチャーズ)がリードし、ハードテクノロジーの投資機関Riot Ventures(ライオット・ベンチャーズ)が追加資金を提供した。今回の資金調達は、営業・マーケティングチームの拡大と、Duroの製品ライフサイクル管理(PLM)ソリューションのさらなる展開のために使用される。

DuroのCEOであるMichael Corr(マイケル・コー)はこのように説明する。「私は元エレクトリカルエンジニアです。20年間、IoT、ドローン、通信機器、ウェアラブル、クリーンテックなど、あらゆる製品を設計・製造してきました。私はCADファイル、部品表、サプライチェーンデータなどのハードウェア開発の最も基本的な要素の管理にどれだけの時間が費やされているかに不満を感じていました。PLM(製品ライフサイクル管理)と呼ばれる製品カテゴリーがありますが、これは、これらの情報を一元管理するための受け皿となるものです。リビジョン管理も含まれており、自社のチームで使用するだけでなく、製造委託先と共有することもできます。しかし、私が使ったどのツールも、実際に時間を節約したり、最終的に価値を提供してくれるものではありませんでした。すべての作業が手作業で、プロセス志向であるため、スプレッドシートを使ったほうが楽な場合が多かったのです。今でもこの方法が主流です。なぜなら既存のツールは非常に複雑でエラーが発生しやすく、実際には価値がないからです」。

このような現状に個人的に疑問を感じた共同創業者のマイケル・コーとKellan O’Connor(ケラン・オコナー)は、すべての製品データを一元化し、異なるチームやツールを接続する際の摩擦をなくすためのクラウドプラットフォーム「Duro」を開発した。目標は透明性であり、製品チーム、エンジニアチーム、サプライヤーや製造チームの誰もが、常に最も正確で最新のデータにアクセスできるようにすることだ。

コーはDuroが進出している市場の状況を説明した。「少し単純化していうと、ハードウェア業界は二極化の文化に支配されています。80年代、90年代に入社して現在のツールセットを確立した上の世代がいます。その一方でギャップがあり、若いエンジニアは、ウェブやモバイル、アプリの開発が流行っていたため、それらの学習に興味を持っていました。若いエンジニアが続けてハードウェア分野に参入することはなかったのです。しかし、今は彼らが戻ってきています。ハードウェアは魅力的な製品であることが証明されたのです。IoTが実現して、ハードウェアの開発コストが劇的に下がりました。現在、若い世代のエンジニアが続々と社会に出てきています。Duroが狙っているのは、彼らです。彼らはソフトウェア開発の文化に慣れていますし、使用するソフトウェアに対する基準も違います」。

言い換えれば、SaaS、GitHub、DevOpsのプロセスがソフトウェアの継続的な提供方法を完全に変えたのと同じような仕組みで、Duroはハードウェアに関わる人々をミレニアムの時代に招待しようとしている。

「GitHubは、それが可能であることを証明するすばらしい仕事をしてくれました。GitHubはクラウド上の単一のソースでソースコード管理を行い、それを中心にツールや人々、タスクといったエコシステムを構築することができるのです。そして、誰もがGitHubに注目しています。従来のハードウェア業界はこれとは異なっていました。電気工学、機械工学、調達、製造など、複数のチームがそれぞれの役割を担っていました。一元化するという概念がなかったため、全員がそれぞれのデータを持っているのです。例えば、全員が別々の部品表を持っていると、問題が発生します。すべてのコミュニケーションチャネルを管理し、全員が確実に最新のデータのコピーを持っているようにするための諸経費が必要になります」とコーは説明した。

ボンファイア・ベンチャーズのJim Andelman(ジム・アンデルマン)は「古い企業が支配する大きな市場に新鮮なソリューションを提供するDuroと提携できたことを非常にうれしく思っています。Duroのようなスタートアップ企業がまったく新しいユーザーにとっての参入障壁を下げることで、新たな市場の大部分を獲得することができます。Duroのプラットフォームに対する顧客の親和性は非常に高く、エンジニアリング志向の企業にとってPLMソリューションとして選ばれていることは明らかです」と述べている。

Duroは製品だけでなく、SaaSを参考にしたビジネスモデルの革新にも取り組んでいる。

「これまでのハードウェアのためのソフトウェア販売には、多くの摩擦がありました。ユーザーライセンスのビジネスモデルによる非常に高価なアプリケーションで、試用版が用意されていることはほとんどなく、使いたければお金を払って、手に入れたものをただ受け入れるしかありません。そこでDuroは、そこにもちょっとした工夫を凝らしています。Duroには3つのサブスクリプションパッケージを用意しています。スターターパッケージは、スプレッドシートを使わずに、適切に管理されたデータ、集中管理された環境を求めている企業向けです。Pro版は、他の製品で必要とされる複雑な構成や設定をすることなく、入手後すぐに使えます。Pro版は、最初の生産を行う段階で、サプライヤーとの間で適切なリビジョン管理を行いたいと考えているチーム向けに設計されています。大企業向けパッケージは、これらの下位2つの層を超えて成長したチームや、より確立していて既存のワークフローを持っているチームのためのより拡張的なパッケージです」とコーは説明する。

スターターパッケージは月額450ドル(約5万1000円)、年額5,400ドル(約62万円)。Proパッケージは、月額750ドル(約8万6000円)、年間約9,000ドル(約103万円)となっている。大企業向けパッケージは、顧客のニーズに応じた柔軟な価格設定となっている。Duroのチームは、ソフトウェアの構成に応じて、2万5,000ドル(約288万円)から10万ドル(約1153万円)の契約を結んでいると話した。

Riot Venturesの共同設立者であり、ゼネラルパートナーであるWill Coffield(ウィル・コフィールド)は「フルスタックビジネスへの投資を行ってきた経験から、データの継続性に関する問題は、ハードウェアの製造においても同じであり、業界に大きな影響を与えることがわかっています。ハードウェアの設計・開発を現代化するために、手動のプロセスを自動化し、チームと情報を結びつけて知的で効率的なコラボレーションを実現するDuroのアプローチは大変好ましいと思います」と述べている。

画像クレジット:Duro

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

注文翌日に食料品配達サービスを提供する韓国Kurlyが約238億円のプレIPO達成

韓国のオンライン食料品スタートアップKurly(カーリー)は、前回のシリーズFラウンドの発表からわずか半年で、香港に拠点を置くプライベートエクイティ会社Anchor Equity Partners(アンカー・エクイティ・パートナーズ)の単独支援によるプレIPOラウンドで2億1000万ドル(約238億円)をクローズした。

今回の資金調達により、調達総額は7億6100万ドル(約862億円)、企業価値は33億ドル(約3740億円)となった。

ソウルに拠点を置き、全国で翌日の食料品配達サービスを提供するこのスタートアップは、この新たな資金をデータインフラと物流サービスの高度化、人材確保に充てる予定だ。

このニュースは、上場場所をニューヨーク証券取引所から移し、地元でのIPOを発表したことにともなうものだ。韓国取引所は、技術系スタートアップ企業を誘致するため、8億5400万ドル(1兆ウォン/約950億円)以上の価値をもつスタートアップ企業の上場要件を緩和している。

Kurlyは、上場後の推定企業評価額を最大約58億ドル(約6570億円)と見込んでいる。同社は来年初めにIPO申請を行う予定で、2022年上半期の上場を目指している。

Kurlyの広報担当者は「Kurlyのユーザー数は1000万人で、そのうち240万人以上が月間アクティブユーザーである」と述べている。

プレスリリースによると、Kurlyの売上は創業以来100%以上向上している。2020年の売上高は8億4500万ドル(約958億円)、営業損失は9700万ドル(約109億円)だったと報じられている。

Kurlyは2015年の創業当時、韓国で初めてプレミアムフードを翌日の早朝に配達する企業だった。地元の競合他社もその後、夜間配達サービスを採用することとなった。

これまでの支援者には、DST Global(DSTグローバル)、Sequoia Capital China(セコイア・キャピタル・チャイナ)、Hillhouse Capital(ヒルハウス・キャピタル)、Aspex Management(アスペックス・マネジメント)、MiraeAsset Venture Investment(ミラアセット・ベンチャー・インベストメント)、そして韓国に拠点を置く戦略的投資家のCJ Logistics(CJロジスティクス)とSK Networks(SNネットワークス)が含まれている。

画像クレジット:Kurly

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(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

観光分野向け多言語AI顧客対応プラットフォームtalkappiを開発するアクティバリューズが1.5億円調達

観光分野向け多言語AI顧客対応プラットフォームtalkappiを開発するアクティバリューズが1.5億円を調達

AIを活用した観光分野向け顧客対応プラットフォーム「talkappi」(トーカッピ)を開発するアクティバリューズは12月20日、第三者割当増資による1億5620万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、ジャフコ グループ運営の投資事業有限責任組合。累計調達額は2億2000万円となった。調達した資金は、talkappiの機能強化とエンジニアをはじめ人材採用にあてる。

talkappiは、旅マエ〜旅ナカ〜旅アトのあらゆるシーンで、24時間、質の高い顧客対応が可能な顧客対応SaaS。新規・リピーター客の獲得にも貢献するものとして、ホテル・旅館・観光自治体・商業施設など国内350施設以上に導入済みという。2022年春までに導入先は500施設に到達する見込みとしている。ホテルモントレグループ、ホテル京阪チェーン、東急ホテルズ、チョイスホテルズジャパン、クラブメッドなどの宿泊施設、また沖縄県、高知市、大阪観光局、奈良市観光協会、横浜観光コンベンション・ビューローなどの観光自治体が導入しているそうだ。観光分野向け多言語AI顧客対応プラットフォームtalkappiを開発するアクティバリューズが1.5億円を調達

インド最大のフィンテック「Razorpay」が約426億円調達、評価額約8511億円

インド最大のフィンテック巨人であるRazorpay(レーザーペイ)は、企業価値を4月の30億ドル(約3404億円)から75億ドル(約8511億円)へと2倍以上に増やし、急成長を見せつけるとともに積極的に提供サービスを拡大している。

現地時間12月19日夜、インドの決済サービスで市場をリードするベンガルール拠点のスタートアップは、シリーズFラウンドで3億7500万ドル(約426億円)調達したと発表した。今回のラウンドは、同社がこれまでに調達した総額を超える資金をもたらすもので、Lone Pine Capital、Alkeon Capital、およびTCVの3社がリードした。

最新ラウンドには既存投資社のTiger Global、Sequoia Capital India、GIC、およびY Combinatorも参加した。これまでの7年間で総額7億4000万ドル(約840億円)を調達したとRazorpayは述べている。

Razorpayは、中小企業や大企業の決済受付、処理、支払いを行うサービスを提供している。同社はネオバンキングプラットフォームも運営しており、そこでは企業向けにクレジットカードの発行や運転資金の貸付を行っている。他に90以上の通貨に対応した海外決済ゲートウェイも提供している。

その他同社が企業に提供しているサービスには、納税手続き支援、メールやインスタントメッセージで送付できる決済リンクの生成、さまざまな支払い方法に対応した自動更新サブスクリプションプラン、バーチャルアカウントとUPI IDを使った取引の自動照合などがある。

Razorpayが提供しているサービスは、インドではほぼ無名の国際決済の巨人Stripeと類似している。ここ数年同社は東南アジアのいくつかの国にも進出している。

Razorpayの取扱高は年間600億ドル(約6兆8084億円)に上り(2019年は50億ドル[約5674億円]だった)、800万社を超える顧客企業の中には、Facebook(フェイスブック)、Swiggy(スウィッギー)、Cred(クレド)、National Pension System(国家年金機構)、Indian Oil(インド石油)らがいる。2021年インドでユニコーンになったスタートアップ42社中、34社がRazorpayを利用している。

「当社の決済事業は伸び続けています。過去1年半に、ネオバンキングと融資に関する命題も達成しました」とRazorpayの共同ファウンダーでCEOのHarshil Mathur(ハーシル・マトゥール)氏はインタビューで語った。

「私たちの願いは、会社を始めた人がRazorpayに登録すれば、銀行口座開設から支払い、入金、給与支払いまで財務面のすべてを当社に任せられることです。他を探していろいろなツールを使う必要はありません」と同氏は付け加えた。顧客のビジネスが成長すれば、Razorpayも一緒に成長する、と彼は言った。

マトゥール氏とShashank Kumar(シャシャンク・クマール)氏(もう1人の共同ファウンダー)の2人(上の写真)はIIT Roorkee college(インド工科大学ルールキー校)で出会った。当時インドの中小企業はネット経由で送金を受けるために多くの困難に直面しており、既存の決済処理会社は彼らのニーズに対応することに目を向けていなかった。

企業価値を2020年の10億ドル(約1135億円)強から75億ドルへと引き上げたRazorpayは、今やインドで最も価値の高いフィンテックスタートアップだ。しかし、ここまでの道のりは容易ではなかった。

ファウンダーたちはスタートアップ設立後の数年間、銀行と一緒に仕事をするための説得に苦闘した。交渉は遅々として進まず、彼らは投資家たちに何度も同じ説明を繰り返しては絶望を感じたと以前のインタビューで回想していた。

「この7年間、Razorpayを顧客第一のテクノロジーサービス会社にするために休まず働いてきました。Razorpayチームが2014年以来捧げ続けているものがあるとすれば、それは再発明を止めないことです」とクマール氏は言った。

同社は提供サービスの拡充に焦点を絞るとともに、インドと東南アジアでの成長を加速するために600名以上を雇用する計画だ。

最近Razorpayは、パスワード、カード情報、住所など買い物客の個人情報を初めての購入時に保存し、次回その情報を同じ店だけでなく、Razorpayで決済している他の店で決済する時にも予備入力される機能を導入した。しかし消費者向けのネオバンキングサービスを提供するつもりはないとマトゥール氏は言った。

「消費者に焦点を当てた何かを提供する可能性はありますが、純粋な消費者向け機能からは2つの理由で距離を置いています。1つはその分野で他の会社が提供していないような大きな付加価値を与えらるものを持っていないこと、もう1つは、消費者向けビジネスに参入することで得られる大きなものが見えないからです」と同氏は語った。

RazorpayはIPOの準備も進めているが、少なくともあと2年半は上場するつもりはないと語った。

「急速に加速するインドのデジタル決済市場でオンライン決済をリードしているRazorpayは、常に新しい道を開拓しています」とAlkeon CapitalのゼネラルパートナーであるDeepak Ravichandran(ディーパク・ラビチャンドラン)氏が声明で言った。

「Razorpayが決済、バンキング、ソフトウェアのさまざまな製品通じてオンラインの売り手(既存の決済プロバイダーから長年虐げられきた)にシームレスなエンド・ツー・エンド体験を提供し、地理的な拡大も視野に入れている今、ビジョンの実現に向かって進み続けるマトゥール氏、クマール氏と彼らのチームと提携を結べることを大いに喜んでいます。これからの旅が楽しみでなりません」。

画像クレジット:Razorpay

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

モデルナの主要投資元Flagship Pioneeringの新たな投資先、tRNAを用いて「何千もの病気」の治療を目指すAlltrna

米国時間11月9日、モデルナの主要投資元であるFlagship PioneeringはRNAに関心を寄せる企業のポートフォリオに新たな企業を追加したことを発表した。この1年、mRNAが話題になったわけだが、Alltrnaと呼ばれる新しい企業は転移RNA(tRNA)ベースの薬剤の開発に乗り出そうとしている。

メッセンジャーRNA(ModernaやPfizerの新型コロナウイルスワクチンに使用されているmRNA)が、細胞にある特定のアミノ酸を組み立てそれらを結合してタンパク質を作るよう指令する遺伝子情報であることを知る人は多いだろう。では、tRNAとはなにかというと、これはL型をした分子で、mRNAにより集められたアミノ酸を実際に組み立てる働きをする分子である。tRNAは人の細胞が遺伝子コードを取得し、それを体内で機能的なタンパク質に変えるための最後のステップの1つを実行する。

Flagshipの設立期からのパートナーでAlltrnaの共同創設CEOである Lovisa Afzelius(ロヴィサ・アフゼリアス)氏がTechCrunchに語ったところによると、Alltrnaでは、1つのtRNAを「何千もの病気」を治療するのに活用できると考えている。同社は、過去3年間プロトモードにあったのだが、その間、30人からなるチームでtRNA治療開発のための「プラットフォーム」を開発してきた。

「これは本当に重要な分子です。しかし現在まで、創薬手法としては完全に過小評価されてきました。当社が開発したのは広範囲にわたるtRNAプラットフォームで、これを使用することで、tRNAの生物学的側面全体を探求することが可能になります」と、アフゼリアス氏は語った。

ModernaやPfizerの新型コロナワクチンは、mRNAテクノロージの可能性について非常に説得的に証明してきた。しかし、2021年は他のRNAプロジェクトの資金調達に大きな動きのある年となっている。

5月、Flagshipは次の10年間で100種類のエンドレスRNA(eRNA)製品および薬剤プログラムの開発を目指す企業、Larondeに関する発表を行った(eRNAはFlagshipにより開発されたRNAの一種で、体内で特定の薬の治療効果を引き伸ばしたり、治療用タンパク質の「持続的な」発現を生み出したりするように設計されている)。

Larondeは2021年シリーズBでの資金調達で、Flagshipからの投資に加え、T. RowePrice、CPPinvestments、Fidelity Management and Research Company、Federated Hermes Kaufmann Funds、BlackRockが管理する資金とアカウントより、約4億4000万ドル(約501億円)を調達した

tRNAを用いた薬剤のアイデアは比較的新しいものだが、次第に注目され始めている。2021年9月にC&EN が報じたところによると、ReCode Therapeutics、Shape Therapeutics、Tevard Biosciencesの三つのスタートアップは、tRNAを用いた治療法の開発に向け、合わせて2億4000万ドル(約273億円)を調達した。

Alltrnaは、さまざまな病気に介入しうるtRNAの可能性を大いに喧伝している。Flagshipのプリンシパルで、共同創設兼Alltrnaのイノベーションオフィスの責任者でもあるTheonie Anastassiadis(セオニー・アナスタシアディス)氏は、 tRNAには「翻訳の多くの側面」を制御する機能があるという。

例えば「増殖tRNA」の一部は細胞分裂に関与している(またいくつかの研究では、 tRNAを下方制御することにより細胞の増殖を抑えることができ、癌への対応策となりうることが示唆されている)。

また、tRNAにより、遺伝子コードのエラーに起因する問題を修正することができる。一部の遺伝子には、早すぎる時点でタンパク質生成の停止を促す「終止」サイン(終止コドンとも呼ばれる)として機能する変異が含まれている。これらの終止サインは、特定のタンパク質について、それが完全に生成されきっていない状態であるのに、生成を停止するよう指示する。この時期尚早な終止コドンは遺伝性疾患の大きな要因であり、すべての遺伝性疾患または癌の10%から30%程に関係しているとされている。

アフゼリアス氏によると、tRNAエンジニアリングの背後にある考え方は、tRNAがそれらの終止サインを読み込んだ場合でも、完全なタンパク質を組み立てられるということである。

「何千という病気にこれらの終止コドンがまったく同様のかたちで関与している可能性があります。これらのタンパク質に挿入すべきアミノ酸は同一のものです。実際に広範囲に渡る遺伝性疾患に同一のtRNA薬剤を使用することが可能です」。とアフゼリアス氏は語った。

AlltrnaのtRNA に対するアプローチはtRNAベースの薬剤開発を実際に行うのに必要なツールを拡張するところから始まる。tRNAを発現させ、そのレベルを計測し、修正し、そして合成する基本的な手法は現在「非常に技術的に難しい課題です」とアナスタシアディス氏は述べた。

「プラットフォームの一部としてまず私たちが行ったのは、実際にこれらのAlltrnaの独自のツールを構築したことでした」。

tRNA治療のためのプラットフォームの開発は、計画にそって進んでいる。現在のところ、同社はどこと提携しているかや、どういった病気を治療対象と考えて開発に取り組んでいるかについては明らかにしていない。

Flagshipは現在までに、Alltrnaに5000万ドル(約54億円)を提供している。これは2021年FlagshipがLarondeに最初に提供した額と同額である。アフゼリアス氏は今後「適切な時期が来たら」外部からの投資も求めたい考えだと語った。

画像クレジット:LAGUNA DESIGN / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

PubNubがメッセージ、プレゼンス、「仮想空間」の他リアルタイム機能のためのデータストリーム構築と実行に向け73億円調達

継続的なリアルタイムの情報更新をともなうデータストリームは、今日のアプリとサイトがどれくらい機能するかという点で重大な要素である。そのようなデータストリームを強化するプラットフォームを構築したPubNub(パブナブ)が、幅広いユースケースにつながる、その事業の強力な成長の裏で伸びる資金調達のラウンドについて発表している。サンフランシスコに拠点を置くこのスタートアップは、アプリや他のデジタル企業にメッセージとデータ更新を強化するAPIを提供している。今回、シリーズEで6500万ドル(約73億円)を調達し、そのプラットフォームにおける機能の継続的拡張と拠点拡大に使用する予定だ。その第1弾として、シンガポールにアジア太平洋オフィスが開設される。

PubNubは、その今日のメッセージ機能、プレゼンス機能、他のデータに基づくAPIが、70を超える国の6億台のデバイスで、月に21ペタバイトのデータを生成する90万件のデベロッパプロジェクトで使用されていると筆者に語った。その「何千もの」顧客にはAdobe(アドビ)、Atlassian(アトラシアン)、DocuSign(ドキュサイン)、RingCentral(リングセントラル)などが含まれる。広くいうと、ゲーミング、仮想イベント、エンタープライズコラボレーション、チャット、スライド共有/配信サービス、遠隔医療アプリケーション、コネクテッドフィットネス、スマートホーム製品などのバーティカルにおいて魅力を増している。この幅広い分野は、データストリームが定期的に更新される「仮想空間」の概念に依存している。配信の進み具合、いくつの手順が必要だったか、どれくらいエネルギーを使ったか、誰がオンライン会議に参加しチャットしているか。それらがユーザーエクスペリエンスの核となる部分である。

「顧客がPubNubを利用して行っていることが爆発的に増えています」。と、PubNubのCEOで共同設立者であるTodd Greene(トッド・グリーン)氏はインタビューで述べた。「PubNub創設時から、『仮想空間を強化するために必要なソフトウェアは何か』をビジョンとしていました。当初それはメッセージ機能でしたが、時間が経つと、コミュニケーションだけでは不十分であることが顧客を見ていて分かりました」。

資金調達はRaine Group(レイングループ)が主導し、Sapphire Ventures(サファイアベンチャーズ)、Scale Ventures(スケールベンチャーズ)、HPE、Bosch(ボッシュ)も参加している。PubNubはその企業価値評価を明らかにしていないが、ある文脈では調達額は1億3000万ドル(約147億円)以上におよび、PitchBook(ピッチブック)によると2019年の最終エクイティラウンドでは2億2000万ドル(約248億円)と推定された。

グリーン氏に、このサンフランシスコを拠点とするスタートアップの企業価値評価が現在それより「はるかに高い」ことを確認したが、PubNubの成長を数値化することは難しい。月間のデータ取扱量を公開しておらず、メッセージ数が2019年に1兆3000億通に上ったことのみを公開したからである。今回はこの数値を更新していない。顧客予約は2021年に前年比で200%増加した。

PubNubは陰でせっせと働いている。同社のAPIを使用中に「powered by PubNub」メッセージを画面で見ることはないだろう。しかしすべてのデジタルサービスが運用されるうえで中心的で重要になった部分でも機能している。

デジタル体験でより多くの日常生活の側面が行われ、あるいは場合によってはそれに依存しているが、だからこそデジタル体験自体が大きく発展してきた。アプリ、サイト、コネクテッドサービスにはこれまでより多くの機能、データ、ユーザーエクスペリエンスが組み込まれているため、私達は結果的にそれをさらに使用(依存)するのである。当然、そのすべてが機能するような基盤は事業成長を遂げ、それに対する投資家の関心が高まっている。

それに加えて「メタバース」は最近の概念として間違いなく誇大宣伝されている。それがPubNubと同様に仮想空間を強化する企業を後押しするかもしれない。しかしより大局的な見地はもう少し落ち着いたもので、これらのサービスがいかに進化し、すでに運用されているかということである。

その文脈で日の目を見たのはPubNubだけではない。Twilio(トゥイリオ)、 SendBird(センドバード)、MessageBird(メッセージバード)、Sinch(シンチ)もサードパーティアプリ、サイト、他のデジタル企業により使用されるAPIに基づくメッセージ機能と他のコミュニケーションサービスを提供している。PubNubともっと直接的に競争しているのは、どのリアルタイムサービスでも推進する、何らかのデータ更新、メッセージ機能その他を構築するAPI基盤のルートを提供する、ロンドンのAbly (エイブリー)、Techstarsが考え出したCometchat(コメットチャット)、Google(グーグル)のFirebase(ファイアーベース)などがある。

より広い意味で、PubNubのセールスポイントは世界中のPOPへのその地理的範囲であり、HIPAA、GDPR、SOC 2 Type 2などのさまざまな地域のデータ保護規則に準拠していること、そしてネイティブに、また他のサービスとの統合により機能を追加しているということであり、そのすべてによりデベロッパが一元化されたダッシュボードを通して制御および監視することができる。それは現在、アプリ内チャット、位置情報取得、仮想イベント、プッシュ通知、IoTサービスなどのサービスに対応している。

現在のデジタル文化において通知を減らすことへの移行は、すべてPubNubのような存在にとって困難な風潮の証明だと思うかもしれない。結局、情報オーバーロードはもはや議論の対象となる話題でも、あなたのデータを垂れ流したり使用中か否かを問わず常時あなたを見張っているアプリの概念でもない。どれほどこれらの問題にうまく対処しても、全体的な効果が悪くても良くても、やはりそうなのかもしれない。しかしグリーン氏は、それは当てはまらないという。

「ただメッセージを送り、プッシュ通知機能しかなかった時も、メッセージの99%がアプリ内で行われていました。クルマを注文し画面上で動くのを見ていると、効果的に多くのメッセージ(データプッシュ)がそれを知らせに来るのです。Apple(アップル)やGoogle(グーグル)などの企業はそれをブロックしていないため、通知をともなう移行は私達にまったく影響しませんでした」。彼は付け加えた。「良い方に影響を与えました。過去のアプリではプッシュ通知で何かが起きたことを知らせていました。現在は、(デフォルトで)それを観察していないため、アプリ内の体験に重点を置くことがより重要になっています」。

主要な投資企業のレイングループは、成長するこのスタートアップの興味深い支持者である。同社は単なる実り多い投資企業ではない。それが助言を行う膨大な顧客リストの中でも、アップル、Tencent(テンセント)、ByteDance(バイトダンス)、Warner Music(ワーナーミュージック)、SoftBank(ソフトバンク)、Uber(ウーバー)他多数のM&A取引に関与してきた。これによりPubNubは事業開発にそのネットワークを活用し、より多くの顧客を獲得するための道を開く。

「PubNubと連携し、デベロッパーの時間とエンジニアリングのリソースの誓約によりソフトウェアソリューションとAPIへの需要が増している世界で、リアルタイムのデジタルおよびソーシャル体験の未来を強化することが楽しみです」。レイングループのマネージングディレクター、Christopher Donini(クリストファー・ドニーニ)氏は声明で述べた。「PubNubの主要なソリューションは、簡単に実装できる信頼性、セキュリティ、低レイテンシーを提供します。私達はこれが、レイングループの技術、メディア、遠隔通信が交差する所に広く蔓延した問題を解決すると信じています」。ドニーニ氏とマネージングパートナーのKevin Linker(ケヴィン・リンカー)氏はこのラウンドでPubNubの取締役会に参加している。

画像クレジット:matejmo / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

AIを利用して神経疾患の治療薬開発を行うNeuraLight、神経学的評価とケアのデジタル化を目指す

NeuraLight(ニューラライト)は、AIを利用して神経疾患の治療薬の開発を進めるため、550万ドル(約6億3000万円)のシード資金を調達し、ステルスから脱してローンチを果たした。同社はCorus.ai(コーラス・ドット・エーアイ)の共同創業者で元社長のMicha Breakstone(ミカ・ブレイクストーン)氏によって共同設立された。Chorus.aiは2021年初め、5億7500万ドル(約656億円)でZoomInfo(ズームインフォ)に売却されている。ブレークストーン氏は現在、NeuraLightのCEOとして、共同創業者でCTOのEdmund Benami(エドモンド・ベナミ)氏とともに同社を率いている。

このシードラウンドには、MSAD、Kli、Tuesday(チューズデー)、Operator Partners(オペレーター・パートナー)、VSC Ventures(VSCベンチャーズ)が参加した。エンジェル投資家としては、Instacart(インスタカート)のCEOであるFidji Simo(フィジー・シモ)氏、Clover Health(クローバー・ヘルス)のCEOであるVivek Garipalli(ヴィヴェック・ガリパリ)氏、Immunai(イムナイ)のCEOであるNoam Solomon(ノーム・ソロモン)氏などが名を連ねている。

オースティンとテルアビブに本社を置くNeuraLightは、神経学的評価とケアをデジタル化することで、神経疾患に苦しむ人々を支援することを目指している。ブレイクストーン氏とベナミ氏は、Google(グーグル)、Chorus.ai、Viz.ai(ヴィズ・エーアイ)出身の同窓生の他、研究・医薬品業界から人材を採用してきた。

同社のチームは、顕微鏡での眼球運動の測定値を自動的に抽出するプラットフォームを構築した。この測定値は、神経疾患の信頼できるデジタルエンドポイントとして機能する。同社のプラットフォームでは、AIと機械学習を利用して動画から光と動きを取り除き、より正確な動画を得ることができる。

「この高度に拡張された高精度動画から眼の計測値を抽出することで、顕微鏡的な動きから神経疾患の進行を予測することを可能にしました。そして、神経学のためのより良い方法で薬を開発する手段として、製薬会社への販売が実現したのです」とインタビューでブレイクストーン氏は語っている。

このプラットフォームは、最終的には臨床試験を加速し、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、その他の神経変性疾患の将来的な治療の成功確率を高めることを目的としている。

同社のプラットフォームは専用のデバイスを必要としないため、製薬会社はNeuraLightを臨床試験やリモート環境に統合できる、とブレイクストーン氏は説明する。何千人もの患者から匿名化されたデータを収集することで、最大規模かつ独自の匿名化された眼球測定データベースを構築し、AIを適用してデータから洞察を得る。それがNeuraLightの見据える展望である。

画像クレジット:NeuraLight

ブレイクストーン氏の話では、この分野に競合する企業は多くなく、既存企業が提供するものにはカメラのアイトラッカーや瞳孔計などの専用デバイスが必要になるという。これらの企業とNeuraLightの違いについて同氏は言及し、NeuraLightのプラットフォームは、標準的なスマートフォンやウェブカメラの動画さえあれば機能する点を強調した。同社は開発中の技術を保護するための仮特許を申請中である。

NeuraLightは次のように指摘している。世界中で10億人を超える人々が神経疾患に苦しんでいるが、現在の神経学的評価は非常に主観的であり、症状の手動検査に依存するものとなっている。そのため、製薬会社は的確な治療法を開発するための有効なツールを持ち合わせていないのが現状だという。

「過去20年間製薬業界で働いてきましたが、デジタルエンドポイントは神経学の未来であると自信を持っていえます」と語るのは、NeuraLightでチーフイノベーションオフィサーを務めるRivka Kretman(リヴカ・クレティマン)氏だ。「この技術は、製薬会社が神経疾患の薬剤開発を効果的に、そして最終的にはより成功させるために必要としながらも、欠落していた要素でした。これらの会社の薬剤開発パイプラインのための新しい測定基準の確立に、この技術は大きな役割を果たすことになるでしょう」。

550万ドルのシード資金に関してNeuraLightは、製薬会社と提携して新薬開発の成功率を高め、開発コストを削減することを視野に入れている。同社はまた、製薬会社が医薬品を市場に投入するまでの時間を短縮できるよう支援することも目標に据えている。ブレイクストーン氏によると、NeuraLightはイスラエルでパーキンソン病の独自の測定を開始し、現在3つの製薬会社と協働しているという。製薬会社の名前は今のところ明らかにされていない。

「私たちは神経学の完全な変革を実現し、新世代の薬の開発につなげたいと考えています。世界の変革を担うことを実際に意識し、今日の神経学的ケア評価の方法を変える象徴的な会社の構築を支援したいと志す人々の雇用と招致を確実に進めました」とブレイクストーン氏は語っている。

NeuraLightの科学諮問理事会は、イスラエルのRabin Medical Center(ラビン・メディカル・センター)にある運動障害センターの責任者、Ruth Djaldetti(ルース・ジャルデッティ)氏が率いる。さらに、ノーベル賞受賞者のAlvin Roth(アルヴィン・ロス)氏、Flatiron Health(フラットアイアン・ヘルス)の元CTOのGil Shklarski(ジル・シュカルスキー)氏、Pomelo Care(ポメロ・ケア)のCEOであるMarta Bralic Kerns(マルタ・ブラリック・カーンズ)氏が理事会のメンバーとして、同社の科学的ビジョンに関する助言を行う。

画像クレジット:NeuraLight

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(文:Aisha Malik、翻訳:Dragonfly)

記憶定着のための学習プラットフォームMonoxerを手がけるモノグサが約18.1億円のシリーズB調達

記憶定着のための学習プラットフォームMonoxerを手がけるモノグサが約18.1億円のシリーズB調達

記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」(モノグサ。Android版iOS版)を提供するモノグサは12月20日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約18億1000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、新たなリード投資家のGlobal Brain、またZ Venture Capital、米国セールスフォース・ドットコムの投資部門Salesforce Venturesおよび既存株主WiL、UB Ventures。

2016年8月設立のモノグサは「記憶を日常に。」をミッションとして掲げ、人々の知的活動の根幹を担う記憶領域でイノベーションを起こすべく、事業を推進してきた。現在はMonoxerを提供しており、塾や学校を中心とした教育機関において3400以上の教室で活用されているという。

またMonoxerでは通算8億回以上学習されており、ユーザーによって作成されたBook(問題集)の数は26万以上に上る。学習内容も漢字や英語、社会や理科の知識事項を中心に、幅広い科目や分野となっているという。Book活用範囲の広がりとともに、中国語教室などの語学教室、美容・医療系専門学校、従業員のスキルアップに力を入れる一般法人、外国人労働者の就労を支援する人材企業など、国内外の様々な組織で活用されるようになった。記憶定着のための学習プラットフォームMonoxerを手がけるモノグサが約18.1億円のシリーズB調達記憶定着のための学習プラットフォームMonoxerを手がけるモノグサが約18.1億円のシリーズB調達

調達した資金は、プロダクト開発・人材採用への積極投資を行い、Monoxerの提供領域の拡張を推進する。今後は学校と塾といった横の連携に加えて、大学や専門学校、企業など縦の連携を深め、ユーザーを生涯に渡って支援するプラットフォームとなるべく、さらなる事業推進に務めるという。

調達資金の使途

  • 公教育への展開:公立高校で導入され、大阪府羽曳野市・岡山県津山市など複数自治体での実証でも成果が出ていることから、今後より多くの公教育における活用を推進する
  • 専門学校や大学など高等教育領域:看護師・理学療法士の国家資格取得に向けた利用など、専門学校や大学での活用が進んでいることから、より広い分野での専門的な知識習得における活用を推進
  • 社会人教育領域:Monoxerはリモートでの研修が可能であり、各個人のスキル・知識の定着度を可視化できるため、今の時代に合った社員育成プロセスの構築が可能という。また、近年注目が高まるリカレント教育やリスキリングにも応用できるものとしている
  • 日本国外:フィリピン、インドネシア、モンゴルなど日本国外でも活用事例が増えていることから、中長期的には日本国外への展開も推進する

作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円のプレシリーズA調達

人工土壌「高機能ソイル」活用の作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円調達循環型栽培のシステム開発を展開するTOWING(トーイング)は12月20日、プレシリーズAラウンドにおいて第三者割当増資による約1億4000万円を資金調達を実施したことを発表した。引受先は、Beyond Next Ventures、epiST Ventures、NOBUNAGAキャピタルビレッジ。累計調達額は約1億8000万円となった。

調達した資金により、持続可能な次世代の作物栽培システム「宙農」(そらのう)のサービス開発に向けて、愛知県刈谷市に自社農園を立ち上げて宙農の実証を開始する。研究者・農園長・エンジニアの採用による研究開発体制を強化するとともに、事業開発人材の採用により組織体制を拡大し宙農の量産化に向けたシステム開発を進めるという。また今後、月面や火星の土をベースとした高機能ソイルを開発し、宇宙でも作物栽培可能なシステムの実現を目指すとしている。人工土壌「高機能ソイル」活用の作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円調達

TOWINGは、人工土壌による宇宙農業の実現を目標としたプロジェクト宙農を手がける名古屋大学発のスタートアップ。人工土壌「高機能ソイル」を栽培システムとして実用化しており、地球上における循環型農業の発展と宇宙農業の実現を目指している。

この高機能ソイルとは、植物の炭など多孔体に微生物を付加し、有機質肥料を混ぜ合わせて適切な状態で管理して作られた人工土壌の名称。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した技術に基づき、TOWINGが栽培システムとして実用化した。「有機質肥料を高効率に無機養分へと変換」「畑で良い土壌を作るためには通常3~5年程度かかるが、高機能ソイルは約1カ月で良質な土壌となる」「本来廃棄・焼却される植物残渣の炭化物を高機能ソイルの材料とするため、炭素の固定や吸収効果も期待できる」の3点を大きな特徴とするという。人工土壌「高機能ソイル」活用の作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円調達

配管工、電気工事士、機械工向けビジネス管理ツールを提供するFuzey

ロンドンを拠点とし、中小企業や個人事業主向けに「デジタル・ワンストップ・ショップ」と呼ばれるサービスを提供しているFuzey(フュージー)が、450万ドル(約5億1000万円)のシード資金を調達した。

このラウンドは、byFounders(バイファウンダーズ)が主導し、Flash Ventures(フラッシュ・ベンチャーズ)、Global Founders Capital(グローパル・ファウンダーズ・キャピタル)、Ascension(アセンション)の他、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)のベンチャーパートナーであるStephane Kurgan(ステファン・クルガン)氏、Amplo VC(アンプロVC)の創業者兼CEOであるSheel Tyle(シール・タイル)氏などのエンジェル投資家グループが参加した。

今回のラウンドにより、同社はHenrik Lysgaard Jensen(ヘンリク・リスガード・ジェンセン)氏とAlex Boyce(アレックス・ボイス)氏が2020年に設立以来、総額520万ドル(約5億9000万円)の資金調達を行ったことになる。また、この投資の一環として、byFoundersの投資家であるSara Rywe(サラ・ライウェ)氏と、Flash VenturesのパートナーであるLorenzo Franzi(ロレンツォ・フランジ)氏が、同社の取締役に就任した。

CEOのリスガード・ジェンセン氏とCOOのボイス氏は約2年ほど前に出会い、中小企業のデジタル化を支援することで意気投合した。配管工、電気工事士、機械工などの小規模事業者をターゲットにしている理由について、リスガード・ジェンセン氏は「ローカルビジネスはすべてのコミュニティのバックボーンである」と信じているが、ビジネス管理用に開発されたツールの多くは、このような事業者には手が届かないし、またこのような事業者を念頭に置いて設計されてもいないからだ。

他にもこのような種類の事業に注目しているスタートアップ企業はある。11月に1500万ドル(約17億円)を調達したPuls Technologies(プラス・テクノロジーズ)のモバイルアプリは、職人とオンデマンドの住宅修理サービスをつなぐものだ。また、2021年初めに6000万ドル(約68億円)の資金調達を発表したJobber(ジョバー)のように、もっと規模の大きな企業もこの分野には存在する。

ボイス氏にとって、個人的にも特にこの分野には思い入れがあるという。同氏の母親は中小企業の経営者で、革製のノートを使ってビジネスを行っていたが、常にノートの紛失を恐れていたと説明する。

「これらは私たちが取り組んでいるテーマです」と、ボイス氏はTechCrunchに語った。「新型コロナウイルス感染症の流行期間中に、どうすれば私たちは変革の担い手になれるかを考えました。消費者の需要が変化し、人々がテクノロジーをより重視するようになり、地元の商店とさまざまな方法で関わりたいと思っている状況を見て目が覚めたのです」。

そうして同社が作り上げたツールは、請求書など従来は手作業で紙に書いて行っていたことを、中小企業向けにデジタル化するものだ。顧客とのコミュニケーション、支払い、マーケティング、カレンダーなどを1つのダッシュボードにまとめ、事業を管理し、オンラインのプロフィールを充実させることができる。

ユーザーの中小企業は、メッセージングからソーシャルメディアまで、さまざまな方法で顧客とコミュニケーションをとることができる。また、請求書を作成して即時に支払いを処理したり、リードジェネレーション(見込み顧客を獲得するための取り組み)を洞察する機能も用意されている。さらに、Fuzeyは文書のテンプレートやワンクリックカスタマーレビューも提供しており、簡単に顧客がレビューを残せるようにすることができる。

「レスポンスタイムは重要です。当社では、あらかじめ質問やコメントが定義されたレスポンステンプレートも用意しているので、顧客に迅速に対応することができます」と、リスガード・ジェンセン氏は述べている。「私たちは、この機能が20、30、40の時間的効果をもたらすと確信しています」。

6月に製品の販売を開始した同社は、今回の資金調達を製品開発と地域の拡大に活用する予定だ。Fuzeyはすでに、欧州、米国、カナダの一部の市場で事業を展開している。従業員数は現在10名で、顧客数、売上高ともに前月比で2桁の伸びを示している。

画像クレジット:Fuzey / Fuzey co-founders Alex Boyce and Henrik Lysgaard Jensen

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックやツイッターの元幹部が出資するTaggはZ世代向けの「ソーシャルブランディング」アプリ

Z世代は、自分たちが育ってきたソーシャルメディアに満足せず自分たちが使いたいアプリを作っている。クリエイティブな10代、20代の若者向け「ソーシャルブランディング」アプリである「Tagg(タッグ)」は、米国時間12月17日、シードラウンドで200万ドル(約2億3000万円)を調達したことを発表した。出資したのは、Twitter(ツイッター)共同創業者のBiz Stone(ビズ・ストーン)氏、Facebook(フェイスブック)の元インターナショナルグロース担当VPだったEd Baker(エド・ベーカー)氏、TripAdvisor(トリップアドバイザー)の創業者であるStephen Kaufer(スティーヴン・カウファー)氏、Pillar VC(ピラーVC)などだ。

Brown University(ブラウン大学)と近隣のRhode Island School of Design(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)の卒業生によって設立されたTaggは、まだプライベートベータ版だが、数千人のユーザーが利用しており、さらに数千人がウェイティングリストに申請している。Taggはいわゆるlink in bio(リンク・イン・バイオ)サービスのようなものだが、若いクリエイティブな人たちがつながり、協力し合い、友人関係を築くことを促進するソーシャルな要素が含まれている。

「デジタルの世界では、あなたのブランドが本物であればあるほど、あなたのつながりも本物になります。現在のソーシャルプラットフォームは、このブランドとつながりの進化する交点に対応できるように作られていません」と、同社は説明している。「Taggは、制限もスティグマ(偏見や差別)もない、自分自身の完全な創造的表現を可能にする環境を構築して、成長させています」。

Taggでは、自分のプロフィールを何に使いたいか(ソーシャルなプロフィールにしたいのか、自分のアートを宣伝してネットワークを広げたいのか)に応じて、アプリにログインしたときに5つのプロフィールスキンから選ぶことができる。そこから自分のページをカスタマイズし、他のSNSアプリでやるように、誰かをフォローしたり、コンテンツを投稿したりすることができる。しかし、Taggでは、投稿に「いいね!」の数が表示されない。これは意図的に選ばれた仕様だ。

「Taggに『いいね!』はありません。コメントやシェア、ビューだけです。なぜなら、クリエイティブな人たちには、自分の好きなものを、スティグマを気にすることなく、好きなように表現することに集中して欲しいからです」と、Taggの共同設立者であるVictor Loolo(ビクター・ルーロ)氏はTechCrunchに語っている。

特にTaggが対象としているZ世代では、ユーザーは「いいね!」の数を必ずしも求めていない。なぜなら「いいね!」の数は、表面的な形で仲間と自分を比較することを助長する可能性があるとわかっているからだ。米国の上院議員であるEd Markey(エド・マーキー)氏(民主党・コネティカット州選出)や、Richard Blumenthal(リチャード・ブルーメンタール)氏(民主党・マサチューセッツ州選出)も、10代の若者の精神衛生に悪影響を及ぼす可能性があるとして、16歳未満のソーシャルメディアユーザーには「いいね!」のカウントを禁止する法案を提出している。

画像クレジット:Tagg

Taggの「ソーシャルブランディング」というマーケティングは、一見すると直感に反したものに思えるかもしれない。また、このブランディングという概念は、自分自身を箱の中に入れてしまうことのように聞こえるかもしれない。しかし、Taggは、ユーザーが自分の居心地の良い場所から抜け出すことを促すようにデザインされている。ユーザーはあらかじめ用意されたスキンを使ってプロフィールを作成するが、これはあくまでも提案であり、もしユーザーが、白紙の状態からプロフィールを作成したり、独自のカテゴリーを作成してコンテンツを整理したいなら、それも可能だ。

「プロフィールはいかようにも見せることができる、それが魅力です。私たちは、すべてのソーシャルアプリに備わる伝統的で制限の多い、型にはまったプロフィールから脱却したいと考えました。なぜならZ世代の私たちは、表現の自由と独自性に大きな価値を置くからです」と、ルーロ氏は説明する。「私たちは、伝統的なプロフィールと真っ白なページの間で、心地よくユーザーフレンドリーな場所を見つけたかったのですが、それは多くの人にとって難しいことでした。そこで私たちは、プロフィールスキンを採用することにしたのです」。

Taggは、ブラウン大学でフットボール選手だったルーロ氏自身の経験からインスピレーションを得たものだ。同氏は当時、学生アスリートとしてのアイデンティティ以外で、自分を定義することは難しいと感じていた。そのことが、共同設立者のBlessing Ubani(ブレッシング・ウバニ)氏とSophie Chen(ソフィー・チェン)氏とともに、Taggを起ち上げる切っ掛けとなった。

「人は1つの枠にはめられてしまうものです。例えば、私がTikTok(ティックトック)で料理動画を配信しているとしましょう。そうすると、人は私のことを『料理動画を配信している男』という枠にはめて見ますが、しかし、私は同時に、ビデオゲームやその他のことを楽しんでいるかもしれないのです」と、ルーロ氏はTechCrunchに語った。「私たちは、そのような状況を打破し、クリエイティブな人たちが自分自身をより全体論的に表現できるようにしたかったのです」。

画像クレジット:Tagg

Taggのユーザーは現在、このプラットフォームに参加することでポイントを獲得するようになっている。このポイントは今のところ、特に価値のない機能に過ぎないが、ルーロ氏はこれをアプリの将来的な可能性として捉えている。

「Taggは現在、分散化やトークン化されていませんが、私たちのプラットフォームの原則は、Web3.0の価値観を反映しています」と、ルーロ氏は語る。「私たちの目標の1つは、コンテンツ共有やコミュニティへの参加から直接報酬を得られることが、クリエイター経済の問題を解決する手段であると、クリエイティブな人々に理解してもらうことです。それは、現状のクリエイターに対する支払い不足や、一貫性のないブランドとの提携とは相対するものです」。

将来的にTaggは、ユーザーが価値のあるコインやトークンを獲得できるようになる可能性もある。しかし今のところ、Taggはウェイティングリストからより多くのユーザーを参加させること、より多くのユーザーを獲得することに注力している。

2020年に大学を卒業した後、チームはベイエリアに移り、そこでアプリの開発を続けてきた。今回調達した資金を使って、Taggはチームを拡大するために採用活動を行っている。最近では、15年のエンジニアリング経験を持つSteven Fang(スティーブン・ファン)氏が、CTO兼共同設立者としてTaggに参加した。

画像クレジット:Tagg

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

cove.toolは炭素排出の少ない建築物の設計を支援するSaaS企業、ロバート・ダウニー・Jr.のFootPrint Coalitionも支援

建築物をより持続可能なものにするためのテクノロジーは数多く存在するが、その機能を設計に組み込むことは、いうほど簡単ではない。

cove.tool(コーブ・ツール)は、設計段階から確実に建築物を持続可能にすることを目指すスタートアップ企業だ。2021年には同社のソフトウェアによって、設計・建設の専門家がTesla(テスラ)の5倍の炭素を削減できるようになったと主張している。アトランタを拠点とする同社は、Coatue(コーチュー)が主導するシリーズBラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達した。

今回のラウンドには、Robert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・ジュニア)氏のFootPrint Coalition(フットプリント・コーリション)が、既存投資家のMucker Capital(マッカー・キャピタル)、Urban Us(アーバン・アス)、Knoll Ventures(ノル・ベンチャーズ)とともに参加した。

CEO兼共同創業者のSandeep Ahuja(サンディープ・アフジャ)氏によると、今回のラウンドはプリエンプティブラウンドで、同社の調達総額は3650万ドル(約41億5000万円)に達したという。評価額について同氏は明らかにしなかったものの、2020年11月に570万ドル(約6億5000万円)を調達した時から「10倍」になったと述べている。

B2B(企業間取引)のSaaS(サービスとしてのソフトウェア)企業であるcove.toolは、建築家や建設業者がプロジェクトの詳細や土地を入力すると、採光、空調システム、太陽光発電、材料などの最適化方法を提案してくれる機能を備えている。cove.toolは機械学習を活用し、建築家、エンジニア、建設業者が、建築コストを削減しながら建築物のパフォーマンスを幅広く測定する方法を提供する。

「当社が存在する理由は、建築環境における二酸化炭素の排出量を削減するためです。なぜなら、二酸化炭素排出量の約40%は建築によるものだからです」と、アフジャ氏はTechCrunchに語った。「cove.toolの全体的な目標は、材料の選択と建築のシミュレーションのプロセスをよりシンプルにして、低炭素であるだけでなく、コスト的にも最適な代替材料を選べるようにすることです」。

cove.toolは、2017年8月にソフトウェアのベータ版の提供を開始した。現在では、倉庫からデータセンター、オフィスビルに至るまで、2万5000件以上のプロジェクトがcove.toolのソフトウェアを使って建設されている。同社のソフトウェアには、建設業者、建築家、エンジニア、建築製品メーカーなど、30カ国で1万5000人以上のユーザーがいる。その中には、HDR、AECOM(エイコム)、Skanska(スカンスカ)、Stora Enso(ストラ・エンソ)といった企業が含まれる。

「cove.toolは、合理的な自動分析を行うことで、建設業者、建築家、エンジニア、建築製品メーカーがデータに基づいた設計を行えるように支援し、気候変動との戦いの中で建築物を持続可能かつ効率的なものにしています」と、アフジャ氏は述べている。

驚くべきことに、cove.toolは2021年、2850万トンの炭素をオフセットしたという。これは、4億5000万本の木を10年間にわたって植え、育てることに相当する。同社は新たな資本を活用し、製品群の拡大や、現在60名のチームの増員、建築・エンジニアリング・建設業界へ炭素削減分析の提供などを計画している。

アフジャ氏によると、同社の主な競合相手は、同様の作業を手作業で行っているコンサルタントだという。

「当社の差別化要因は、データへのアクセスを民主化し、かつては2〜4週間かかっていたことを30分でできるようにしたことです」と、同氏は付け加えた。

この会社はまだ利益を出していないものの、アフジャ氏によれば事業規模の拡大をやめれば利益を出せる可能性があるという。

「今後数カ月のうちに、当社の製品群をさらに拡大し、AECエコシステム全体の統合を提供することで、パフォーマンスデータをさらに利用しやすくしていきます。当社では、炭素問題はデータ問題であると考えています」と、アフジャ氏はTechCrunchに語った。「APIフレームワークを使用することによって、建築物のデータを分析する作業を大幅に簡素化し、そのデータを建築・設計プロセスの多くの専門家と共有することができ、最終的にはシームレスな協業を可能にして、プロジェクトの成果を向上させることができます」。

同社では、米国、カナダ、英国、オーストラリア、EUでの販売・マーケティング活動を強化していくことも計画している。

FootPrint Coalitionの創設者であるロバート・ダウニー・Jr氏は、建築物の建設と運営が世界の温室効果ガス排出量の40%を占めると指摘する。

「エネルギー効率、設計、材料選択の透明性を組み合わせることで、cove.toolはこの大きな問題に取り組んでいます」と、同氏はメールに書いている。「これは、機械学習と理念的なリーダーシップを用いて、文字通りより良い未来を築く、スケーラブルなビジネスの最高の例です」。

Coatue社のパートナーであるDavid Cahn(デイビッド・チャン)氏によれば、持続可能な建設は現代の最も重要な環境課題の1つであると、同氏の会社は考えているという。

「cove.toolのソフトウェアによるアプローチは、建築をより簡単かつクリーンにする可能性を持っています」と、チャン氏はメールで述べている。

画像クレジット:Cove.tool

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

規格外・余剰農産物の売却先をオンラインで農家とつなぎ食品ロスの削減を目指すFull Harvest

年間約40%の食料が廃棄されており、食料廃棄は世界で2兆6000億ドル(約294兆円)規模の問題になっている。Full Harvest(フルハーベスト)は、この問題は流通の問題であり、農産物のサプライチェーンをデジタル化することで解決できると考えている。

サンフランシスコに拠点を置く同社の農産物企業間取引市場は、農産物の買い手と売り手が、わずか数クリックで余剰または規格外の作物の取引を迅速に成立させる手段を提供する。農家にとっては新たな収入源となる。

創業者でCEOのChristine Moseley(クリスティン・モズレー)氏はTechCrunchに対し、生産者の大半はいまだにペンや紙、ファックスを使ってビジネスを行っていると語る。

「これは最も重要な産業の1つです。私たちはこの産業を自動化し、オンライン化することで、これまで解決されていなかったことを解決したかったのです」とモズレー氏は付け加えた。「例えば、売買には膨大な事務処理が必要ですが、オンボーディングプロセスを自動化することで、これまで数週間かかっていた作業が数分で済むようになります」。

そこでFull Harvestは、マッチングアルゴリズムや可視性を備えたスポットマーケットプレイスなど、バイヤーがサプライヤーの在庫を確認できる技術の開発に奔走した。また、第三者による監査・検証プロセスを構築し、一貫した仕様を提供することで、本来は救われるはずだが、廃棄されてしまう農産物の平均量を減らすことに成功した。拒否率は、業界平均10%に対し、同社は1〜2%だとモズレー氏はいう。

過去2年間で、Full Harvestの食品廃棄物削減効果は5倍になり、同社はこの勢いを維持するために追加資本を求めることになった。

同社は米国時間12月17日、シリーズBで2300万ドル(約26億円)の資金調達を発表した。Telus Venturesがこのラウンドをリードし、新規投資家からRethink Impact、Citi Impact、Doon Capital、Stardust Equity、Portfolia Food & AgTech Fund、および既存投資家からSpark Capital、Cultivian Sandbox、Astia Fund、Radicle Growthが参加した。今回の投資の一環として、Telusの投資ディレクターであるJay Crone(ジェイ・クローン)氏がFull Harvestの取締役に就任した。

Full Harvestを取材するのは久しぶりだ。TechCrunchは2016年、同社の旅が始まったときに紹介し、2017年に200万ドル(約2億2600万円)を調達した時に再び紹介した。2018年にはシリーズAで850万ドル(約9億6000万円)を追加で調達した。追加の資金調達をあわせると、現在の調達総額は3450万ドル(約39億円)だ。

同社は、Danone North America、SVZ、Tanimura & Antleなど、食品・飲料、加工業界や生産者業界のビッグネームと取引している。

「より持続可能なビジネスを構築することの重要性は、特に食品・飲料分野の企業にとって、かつてないほど明白になっています」とDanone North Americaのギリシャヨーグルト・機能性栄養食品担当副社長であるSurbhi Martin(スルビ・マーティン)氏は話した。「Full Harvestを通じてオンラインで農産物を調達し、通常であれば廃棄されてしまうような果物を当社の製品用に調達することで、より持続可能な食品を求める消費者の要望に応えています」。

Full Harvestのビジネスモデルは、同社のマーケットプレイスで行われるすべての取引の1%を取るというものだ。2020年から2021年にかけて、サプライチェーンに透明性を持たせた結果、売り上げは3倍になったとモズレー氏はいう。2018年当時、Full Harvestの従業員は約8人だったが、現在は35人にまで増えている。また、同社はカナダを含め地理的にも拡大した。

モズレー氏は、新しい資金で技術開発に投資する他、2022年には技術および製品チームの規模を3倍にし、北米での進出地域を引き続き拡大し、農産物の入手可能性、価格、仕様、持続可能性、品質、予測サポートなどのデータと市場インサイトの提供を進めるつもりだ。

食品廃棄物に取り組み、ベンチャーキャピタルから資金を調達しているのは、Full Harvestだけではない。2021年に限っても、企業から次のような発表があった。

このようにプロデュースの分野で技術革新を進めている企業もあるが、モズレー氏は、Full Harvestのユニークな点は、その専門性が持続可能な製品側にあることと、農産物サプライチェーンのデジタル化のリーダーとしての実績があることで、その両面で先行していると話す。

次は、物流技術に関する提携を確保し、さらなるスケールアップと提供可能なSKUの拡大を図る。

「これまで業界ではオフラインだったプロセスの自動化をある程度完了し、当社のテクノロジーとユーザーエクスペリエンスは大きく向上しました」とモズレー氏は付け加えた。

画像クレジット:Max / Unsplash

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi