ウクライナの副首相が語る企業制裁と戦時中の政府運営について

ロシア軍がウクライナに侵攻を開始したのは3週間前だ。紛争は初日から多面的な様相を見せている。地上戦に加え、ウクライナ政府はデジタル戦線にもすばやく対応した。国家の代表者が暗号資産の寄付を求め、ハイテク企業にロシアでの販売やサービスを停止するように呼びかけ、デジタルレジスタンスを組織した。

ロシアの侵略に対する政府の反応を体現している公人の1人が、Mykhailo Fedorov(ミハイロ・フェドロフ)氏である。2019年、28歳でウクライナ初のデジタル変革担当大臣に就任した。またウクライナの副首相でもある。Oleksandr (Alex) Bornyakov(オレクサンドル[アレックス]ボルニャコフ)情報変革(Information Transformation)担当副大臣も、ウクライナ政府で重要な役割を果たしている。先週TechCrunchのIngrid Lunden記者は、ボルニャコフ氏にインタビューを行っている

ミハイロ・フェドロフ氏は、米国時間3月15日未明のTechCrunchによるインタビューで「戦争前のことですが、Zelensky(ゼレンスキー)大統領と一緒に考えていたのは、デジタル利用できる公共サービスという点で、世界で最も便利な国作りでした」と述べている。

現在、これらのプロジェクトの多くは保留されているが、ウクライナ政府はデジタル変革の取り組みによる効果をすでに実感しているところだ。フェドロフ氏は、デジタル外交の面でも積極的に活動している。彼は、ビッグテック企業が国際関係においてかなりの力を持つようになったことをよく理解している。だからこそ、彼らにウクライナの味方になってもらうために、あらゆる手を尽くしているのだ。

Zoomを使った幅広いインタビューの中で、フェドロフ氏は通訳の助けを借りながら、戦時中に政府に参加することがどのようなものかについての洞察を語った。なおインタビューの内容は、わかりやすく簡潔にするため、若干の編集が加えてある。

TechCrunch:いまどちらにいらっしゃいますか?現在のご自身の状況について教えてください。

ミハイロ・フェドロフ氏:私は活動のまさに中心にいます。セキュリティの関係上、所在地をお伝えすることはできませんが、すべてのプロジェクトについて、24時間休みなく、大統領のチームと連絡を取り合っていることは断言します。

数カ月前と今とでは、日常生活が大きく変わっていると思います。対ロシア戦争時の、日々の仕事と役割について教えていただけますか?

我々は非常に若い省庁です。ゼレンスキー大統領が当選したときに、彼のプログラムの重要な部分を実行するために設立されました。選挙前、私は大統領のデジタルキャンペーンの責任者でした。彼が当選した後、私たちはデジタル国家という共通のビジョンを実現するために力を合わせたのです。

ゼレンスキー大統領との戦争前のビジョンは、デジタルで利用可能な公共サービスという点で、世界で最も便利な国を作ることでした。私たちが目指したのは、ダブルタップでサービスが受けられるような行政です。お役所の干渉をできるだけ受けないように、半自動化するのです。つまり、みなさんが期待するような政府というよりも、Uberに近い存在になろうとしていたのです。

この危機的状況の中でウクライナの人々を支援するために、そうしたデジタル公共サービスを活用する方法はないのでしょうか?

公共サービスを立ち上げるための工場のようなものを作りました。それを可能にしているのが、1500万人のユーザーを持つ私たちのアプリです。また、この期間を通じて実装することができた、政府が運営するすべてのデータベースの相互運用と、新しいサービスを立ち上げて提供するために微調整された管理組織も、それを可能にしています。

例えば、この戦時中に、戦闘で大きな被害を受けた地域からの移住を余儀なくされた人たちに、現金を支給するなどのサービスを開始することができました。また、無料の公共テレビと無料のラジオを埋め込むこともできました。また、公式なルートで軍への募金を行えるようにしました。

敵の動きも追跡して報告できるサービスもあります。基本的にはクラウドソーシングによる情報提供ですが、戦争が勃発してからわずか数日でそれを開始することができました。

なぜなら、私たちの内部諜報機関は非常に特殊であり、誰もが持っているようなものではないからです。また戦時中に、誰であろうと、どこにいようと、どんな身分であろうと、内部移動と公共サービスを受けるための重要な情報をすべて網羅した追加書類を公開することができました。また、将来の手続きのために、基本的に戦争で損害を受けたり破壊されたりした場合に備える資産目録サービスにも取り組んでいます。

これらのサービスは、今いる場所からインターネットサービスにしっかり接続できることを意味しています。携帯電話、固定電話ともに接続の現状はどうでしょう?

通信産業のおかげで、今のところ非常に安定しているし、自信も持てるのだと言えるでしょう。24時間体制で働く彼らは、真のヒーローです。停電が発生すると、すぐに修理に駆けつけてくれます。

そのため、国土の大部分において安定したインターネット接続を維持することができているのです。また、EU圏内で最も多くのStarlink(スターリング)端末を保有しています。

軍と政府の両方から預かっている機密データについては、どうなさるつもりですか?現在データの拠点はウクライナ国内にあるのでしょうか?また、最悪の事態に備え、データを海外に移動する計画はあるのでしょうか?

デジタル国家を構築すると、露出度や攻撃界面が増えます。つまり、私たちは常にサイバーセキュリティに細心の注意を払い、真剣に取り組んできたのです。また、デジタル国家を構築していく中で、ロシア連邦から常にサイバー攻撃の標的にされてきました。

詳しくいうまでもなく、私たちのデータは安全だと言いたいと思います。バックアップもあります。データの整合性と安全性を確保する手段を備えています。つまり、何が起きようとも、ウクライナ国民のために信頼性の高いサービスを提供し続けることができるのです。

話題を変えて、対ロシアの企業制裁の話をしたいのですが、大臣はTwitter(ツイッター)やメディアで「欧米の企業は今すぐロシアでの販売を停止すべきだ」と企業に呼びかけていますね。このアイデアはどこから来たのでしょう、そして効果的だと思いますか?

私たちはこのプロジェクトをデジタル封鎖と呼んでいます。そして、この戦争に勝つためには、これが非常に重要な要素であると考えています。そして、将来的には、政府は古典的な政府ではなく、ハイテク企業に似てくるだろうと思っています。

デジタルプラットフォームは、複数の重要なサービスを提供しています。社会の仕組みにしっかり組み込まれてしまっているのです。このようなサービスを攻撃者から1つずつ取り除いていけば、彼らの社会構造に実際のダメージを与え、日常生活を送る上で非常に不愉快な思いをすることになるのです。

私たちはこれを、まったく新しい未踏の戦場と考えたいと思っています。そしてこれは、ロシアの発展を何十年も後戻りさせることになると予想される制裁を、補完する措置でもあるのです。

また、ハイテクビジネスは非常に大きな付加価値を生むと思っています。だからこそ、Tesla(テスラ)はGazprom(ガスプロム、世界最大の天然ガス企業)よりも価値があるのです。こうした付加価値を生み出す技術系の人材は、実はとても身軽でノマド的なのです。このような不利な条件をロシア内に生み出してしまえば、技術系の人材は他に移ってしまうことになるでしょう。

これが今回のデジタル封鎖を可能な限り徹底的かつ包括的に行う理由です。ロシアの戦車と兵士がわが国から撤退し、わが国民の殺戮を止める瞬間まで続けます。

副大臣のご意見として、ロシアでの販売停止やビジネス停止などが十分でなく、もっとやるべきことがある企業はあるでしょうか?

特に名前を挙げたいのはSAPですね。銀行や大企業にERPを提供しているドイツの会社です。基本的に、彼らはロシア企業にITインフラを提供し、またロシアで税金を納めることで侵略戦争に貢献しているのです。こうして彼らは、ウクライナ国民や民間人を殺害している軍隊を支持しているのです。

現在のウクライナのハイテク産業、ハイテクコミュニティについて教えてください。私たちは技術コミュニティで起きていることを多く取り上げていますので、ウクライナの技術者たちが今どのように反応しているのかを知りたいのです。

ウクライナには約30万人の技術系人材がいます。国際企業のほとんどは、ウクライナでの事業を安定させ、事業継続を確保することができました。難しいことではありますが、ほとんどの人が何とかやっています。

ブロードバンドインターネット、安全な場所、税制優遇、移動手段などを提供し、技術系企業のニーズに応えようと考えています。つまり基本的に、彼らに何か問題があったときに、ワンストップで対応できるような存在になることを目指しています。

昨日(米国時間3月14日)には、ウクライナ軍がClearview AI(クリアビューAI)の顔認識技術を利用しているという報道がありました。このClearview AIとの提携について、詳しくお話ししていただけますか?

現在、このプロジェクトは非常に初期の段階にあると言えます。進捗状況についてコメントする立場にはありませんが、結果が出れば、喜んで結果をシェアしたいと思っています。

Clearview AIを活用する場合、どのようなユースケースを想定なさっているのでしょうか。

まず最初に、これらのユースケースのほとんどは非公開のもので、公にお知らせできるものではないということをお断りしておきます。

でも、ちょっとだけお話しするなら、総務省との仕事があります。ウクライナ国内で殺害されたり、捕虜になったりしたロシア軍を特定しようとするものです。ご存知のように、ロシア政府は彼らの存在を否定し始め、書類なしで送り込んだりしています。

もう1つは、検問所を通過する人をチェックするユースケースです。もう1つは、行方不明者の捜索です。

関連記事:ウクライナ情報変革副大臣インタビュー「IT軍団と29億円相当の暗号資産による寄付」について語る

暗号資産による寄付についてもお聞きしたいのですが。暗号資産に関する戦略について、最新情報を教えていただけますか?

現時点で、5500万ドル(約65億2000万円)を調達することができました。そして、そのすべてがウクライナ軍へ振り向けられました。

我々は暗号資産にやさしい国家も目指しています。具体的な内容もお伝えできます。国会で仮想資産に関する法律が採択されました。数日のうちに大統領が署名して法制化されると思います。ですから、私たちはできるだけ仮想資産にやさしくするように努めています。そして、戦時中もこの取り組みを続けています。

ウクライナで暗号資産に関する新しい法律が程なく成立するというお話が出ましたね。政府のメンバーとして、現在どれくらい緊密に働いていますか?新しい法律をどのように成立させ、政府の他の部分とどのようにチームとして働いているのでしょう。

それはすばらしい質問です。戦時中は、政府は基本的にオーバードライブモードで動いています。私たちは24時間、土日も関係なく働いています。戦争前は会議は毎週開催でしたが、現在は毎日開催しています。

ちょうど、軍隊の勇敢な軍人たちが、土日祝日もなく昼夜を問わず国を守っているようなものです。私たちも同じようにやっています。

私たちは、軍事面でも、技術面でも取り組みを行っています。また、経済面でも取り組んでいます。わが国の政府は、経済の自由化を進め、経済におけるあらゆるハードル、障害、ボトルネックを取り除くことに特に力を注いできたのです。税制の簡素化も進めています。私たちは税関を開放していて、ああ、戦争にもかかわらず経済的に国を発展させようとさえしています。

現状で知りたかったことは、すべてお尋ねしたつもりです。もしよろしければ、毎週、あるいは2週間おきに定期的にお話しして、近況を共有しましょう。ひとます今回は、ご回答ありがとうございました。

もちろん、フォローアップ会議を企画したいと思います。あと、結論として、以下のことを記事に書いていただければと思います。

技術コミュニティ全体に感謝したいと思います。技術コミュニティが私たちの側、明らかに善い側を選んでくれたと信じているからです。私たちはそれを心で感じ、技術者コミュニティの行動で感じることができています、とても感謝しています。

画像クレジット:Future Publishing / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

ウクライナ情報変革副大臣インタビュー「IT軍団と29億円相当の暗号資産による寄付」について語る

事態が憂慮すべき展開を続ける中、ウクライナは地上戦の枠を超えてロシアへの抵抗を強めている。インターネットを活用してロシアの攻撃に対抗し、ロシアの権力の中枢を積極的に攻撃し、何か支援をしたいと考える人たちからの(資金援助を含む)支援を集め、デジタル戦線で戦っているのだ。ロシアが常時警戒態勢から全面攻撃態勢に移行したことに驚いた人もいるかもしれないが、早期警戒の兆候をすでに認識していた人たちにとってはそのようなことはない。

ウクライナ時間3月1日のインタビューで、Oleksandr (Alex) Bornyakov(オレクサンドル[アレックス]ボルニャコフ)情報変革(Information Transformation)担当副大臣は「戦争は4日前に始まったわけではありません」と語った。「8年間続いているのです。ロシアはずっと攻撃していました」。

ウクライナの積極的なデジタルキャンペーンは、すでに大きな成果をあげ始めている。ボルニャコフ氏によると、2月28日の時点で、世界中からさまざまなオンライン寄付によって1億ドル(約115億6000万円)が集まったという。このうち2500万ドル(約28億9000万円)は、ウクライナ当局が共同管理しているアカウントや、官民パートナーシップでネットワークを運用しているアカウントへの暗号資産寄付によるものだ。その半分以上は、ウクライナのレジスタンスを支援するための物資にすでに費やされているという。

ウクライナ情報変革担当ボルニャコフ副大臣

ボルニャコフ氏は、以前から国のデジタル戦略の最前線に携わってきた。

先週まではそれが意味していたものは、同国のDiia City(ウクライナのITセクター向け仮想組織)イニシアチブの運営だった。それは、より多くの外国のテック企業がウクライナに進出して事業を展開することを奨励する大規模な計画、大きな優遇税制やその他の優遇措置で取引を有利なものとすることで、ウクライナのエコシステムでより多くのスタートアップが成長することを奨励することなどだった。

だが今週の時点でのボルコニャフ氏の仕事は、レジスタンス活動を支援するために暗号資産で資金を調達するという同国の大きな動きを管理すること、他のデジタル活動家の草の根活動を管理して連携させること、そして戦闘が激化する中で、コミュニケーションのための不測事態対応計画を考えることだ。

それぞれの領域で開発がどんどん進んでいる。彼にインタビューしたときには、ロシアがテレビ塔を爆破したというニュースが流れていた。ハイテク企業は、コンテンツやサービスの遮断を発表し続け、より多くの人々が逃げ惑い、戦い、銃撃戦に巻き込まれていたのだ。

ボルニャコフ氏本人は、いまでもウクライナに安全にとどまっていることは認めたが、正確な居場所は明かさず、取材に協力したアシスタントもまた別の場所にある防空壕からその作業を行った。またうまくいくコミュニケーションチャンネルを見つけるまでには、複数の経路を試す必要があった。これらがいつまで続くのかはわからない。私たちはみんな、この事態に終止符が打たれ、ウクライナが自立して強くなることを望んでいる。

物事が急速に進展している中で、私たちはボルニャコフ氏に話を聞き、いわゆるIT軍団の台頭、ウクライナのサイバーセキュリティ、ウクライナが取っている暗号資産への賭けなど、より大きなデジタル化の動きの中で、現在どのような状況にあるかを聞き出すことができた。その内容は、大局的に見れば、これから起こることに備えるだけでなく、冷静さを保ち、前進し、プレッシャーの中で繁栄さえできるかもしれないものだ。以下、そのインタビューと対談の内容を、長過ぎる部分を割愛し簡単に編集したものを掲載する。

TechCrunch:お時間をいただき、ありがとうございました。いま現地は極めて混沌とした状況だと思います。まず、どちらから通話をなさっているのでしょうか?まだキエフですか、それともどこか別の場所でしょうか?

オレクサンドル・ボルニャコフ氏:ウクライナにいますが、キエフではありません。大変なできごとですが、今のところ無事です。しかし多くのウクライナ人は無事ではありません。

了解しました。質問に入ります。魅力的なのはレジスタンス活動のデジタル化ですね。まず、IT軍団について質問させてください。IT軍団は、草の根のクラウドソース型ハッカー集団で、ロシアの多くのサイトをダウンさせ、大混乱を引き起こしている団体ですね。副首相でデジタルトランスフォーメーション担当大臣のFederov(フョードロフ)氏がそれを支持してTwitterで宣伝しました。Telegram(テレグラム)内のグループには、現在約27万人以上のメンバーがいます。これは政府とどんな関係があるのでしょうか?

彼らは副首相の呼びかけに応じただけのボランティアです。彼らのことはよく知りません。そして、個人レベルで調整を行うリーダーみたいな人もいません。とにかく大きなグループなのです。そして、そこには個人だけでない関係者が含まれていると思っています。組織も参加しているのです。ロシアですら「(IT軍団)が持っている力は、この世界でアメリカ、中国、ロシアの3カ国しか持っていないものに匹敵する」と言ったそうです。つまり、彼らの力を合わせれば、最大の国家的サイバー防衛グループに匹敵するのです。

相手を倒した数ではという意味ですよね?

ええ、どれだけの被害を及ぼせるかという意味ですね。

彼らがどこにエネルギーを注ぎ込むのかに対して、何らかの調整は行っているのでしょうか?

特定の人やグループと1対1のレベルでコミュニケーションをとっているわけではなく、グループ内にタスクを投入すれば、彼らがそれを実行するという流れです。その数分後には、いくつかのインフラがダウンします。私たちが依頼したら、どんなインフラでも破壊してしまうのです。

ロシアが、ウクライナと利害関係のあるものを地上とサイバースペース両方で最大限激烈な方法で攻撃しようとしていことを考えると、IT軍団は対象を攻撃する活動以外にも何か関与しているのでしょうか。

戦争は4日前に始まったわけではありません。8年間続いているのです。ロシアはその間、ずっと攻撃を続けていました。つまり、インターネット上のサイバーセキュリティレベルでということですが。そのような中で、私たちは非常に高度なサイバー防衛システムを開発してきました。だから、もしかしたら……そうですね、ロシアは私たちを攻撃しようとしていたのかもしれません。しかし、成功はできませんでした。サイバーディフェンスは、まったく別の人たちが担当しています。防衛のためには、制限されたシステムにアクセスできるようにする必要がありますが、誰にでもアクセスさせるわけにはいきませんし、IT軍団は公開グループですので誰が参加しているのかはわかりません。なので、守備側は完全に別の人たちの肩にかかっているのです。

IT軍団に関するより大きな戦略をお持ちですか?

まあ、このインタビューは公開されるものですから、戦略についてはあまり話せません。でも、ヒントのようなものはお答えできます。私たちは何年もの間、ずっとネットで攻撃を受けていました。それでも決して反撃はしませんでした。私たちは自分たちを守るだけだったのです。なので、インフラが攻撃され、カードや行政サービスが使えなくなったときに、私たちがどのような気持ちになったのかを、今回初めて伝えることができたわけです。ということで、これが答です。

IT軍団とその連携について、もう1つお聞きします。私にとって興味深いのは、彼らの規模と影響を示すことで、公に知られることが彼らにとって有利に働くという点です。しかし、Telegramはそれほど安全ではないという主張や、検閲される可能性があるという主張、そしてロシアがそれをコントロールしているという主張など、他の側面も考慮する必要があります。これらはどの程度、気になさっていますか?

まあ、実際にはメッセンジャーを使い分けています。でも、Telegramは……(笑)、Telegramとしての利用は多いですね。でも同時に、実のところほとんど全部のメッセージングアプリを使っています。個人的な好みはありません。私たちのチームの他のメンバーも、さまざまなメッセージングアプリを使ってコミュニケーションをとっています。この観点で私たちを打ち負かすのは本当に難しいでしょう。

他のコミュニケーションチャネルはどうでしょう。持ちこたえられていますか?

接続は維持できています。影響を受けた電子機器はまだありません。基地の1つが攻撃されましたが、大都市の中の1つに過ぎません。まだ他にたくさんありますので。おそらく、彼らはこの先接続を撹乱しようとすると思います。彼らが最初にそれをしなかったのは、事態を簡単なものだと思っていたからでしょう。単に街に侵入して、中央広場に集って、祝杯をあげるだけだと思っていたのです。だから、そもそもインフラには一切手をつけていなかったのです。しかし、やっとロシア人は自分たちがここでは歓迎されていないことに気づいたのです。彼らは領土を占領しつつあります。そしてほぼ1週間経って、彼らは我々のインフラを破壊し始め、民間の施設を攻撃し、民間人を殺し始めました。

イーロン・マスク氏のStarlink(スターリンク)の拡張は、通信計画にどのように関わってくるのでしょうか?

いいですか、そうした計画についてはお話できません。でもまあ、バックアップには何段階もあって……もちろんまだ計画だけですが。とはいえ、もし不測の事態に備えていなければ、私たちはとっくの昔にやられていたはずです。彼らがサイバー空間でどれだけ攻撃を仕掛けてきたか、ご存知ないでしょう。ということで、私たちのインフラは動いているし大丈夫です。サーバーを叩けば落ちるというものではありません。

発信なさっている国際的なメッセージの中には、他の人たちに自分たちでできることをして欲しいと訴えるという点で、とても効果的で直接的なものがあります。最近の例では、ICANNにロシアのトップレベル国別ドメイン名を「永久的または一時的に取り消す」こと、DNSを停止させること、そしてTLS証明書を失効させることなど、あらゆることを要請しています。これらの妥当性についてはどのようにお考えでしょうか。そして彼らから返事はあったでしょうか?

ICANNからの返事はありません。彼らがどのようなアクションを起こすのか、起こすべきなのかはよくわかりません。しかし、組織、あるいは人々が共通の人道的価値観を共有しているならば、ここで立ち上がらなければ、影響を受けるのは世界であることは間違いないでしょう。事態はこのまま終息しません。プーチンは完全にいかれていますし、さらなる追い打ちをかけてくるでしょう。彼のこの10年間の活動を見れば、限界に挑戦していることがわかります。そして、彼は「力による会話」を理解していると思います。ですから私の立場は、とにかく全力で反撃することです。そうでなければ、考えたくはありませんが、もしかしたら最終的には核兵器まで行ってしまうかもしれません。しかし、彼の国は、問題を解決するには戦争以外の方法があることを感じなければなりません。

そこで一部の団体や草の根レベルで国際協力を呼びかけているわけですね。サイバー防衛に関しても、米国や他の国々と連携しているのでしょうか?

たくさんの連携が取れていると思います。

(彼は他国の支援を高く評価し、特に米国と英国に感謝を述べたが、具体的な内容には触れようとしなかった)

暗号資産について少しお話させてください。ウクライナはこの週末、ウォレットのアドレスをツイートし、さまざまな暗号資産が莫大に流れ込んでいるようです。そのウォレットをウクライナ政府のために、あるいはウクライナ政府に代わって実際に運用しているのは誰なのでしょうか。

そうですね、私たちが運用しているファンドは、ウクライナの暗号資産取引所が運営しているものです。つまり、これは官民合同のパートナーシップのようなものです。より迅速な対応を行えるように、このたび、ある取引所と提携したところです。誰も手を出せないように、資産がしっかり確保できるようにする必要があります。もちろん、高速交換、高速送金も必要です。政府だけが関わっているわけではないのですが、私たちがアカウントを管理してます。そのほとんどがマルチ署名のアカウントです。つまり、それを使おうと思ったら、少なくとも3人くらいの署名をもらわなければなりません。

(ボルニャコフ氏はそのうちの1人だが、すべての口座の署名者ではない)

Kuna(クナ)はあなたが取引をしている取引所です。これが、暗号資産取引所との間の提携で、暗号資産を実際の通貨に交換するのを支援しているということですか。

はい。ほぼ、その通りです。

了解です。また、みなさんはどの暗号資産を扱い、どの通貨に交換しているのでしょうか?

主にBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Tether(テザー)を扱っていますが、Polkadot(ポルカドット)で500万ドル(約5億8000万円)という巨額の寄付をいただきました。他の暗号資産での寄付を希望される方も多いので、暗号ウォレットを追加中です。交換先の通貨としては、米ドルとユーロが多いと思います。

Airdrop(エアドロップ)が承認されました。寄付権利確定は明日3月3日、キエフ時間(UTC/GMT+2)の午後6時に行われる予定です。(日本時間では3月4日午前1時)
報酬は追って配布!

ウクライナの暗号資産寄付キャンペーンに関する続報は、@FedorovMykhailoをフォローして下さい。

(訳注:Airdropとは暗号資産の無償配布のこと。暗号資産による寄付に対してウクライナが WORLD という暗号資産を無償配布することを事前に表明していた)

【編集部注】日本時間3月3日の夜、上記のAirDropが中止されたことをフョードロフ氏自身が発表した。

検討の結果、airdropを中止することにしました。ウクライナの反撃に協力を申し出る人は日々増えています。その代わり、ウクライナ軍を支援するためのNFTをまもなく発表する予定です。私たちは、FT(代替可能なトークン。ex.普通の暗号資産トークンなど)を発行する予定はありません。

もう寄付金は使われているのでしょうか?それとも、まだ使わずに待っているのでしょうか?

半分はすでに何かの機材に使われています。具体的に何をとは言えませんが、今日も大きな買い物が行われました。活用しています。防衛省とも連携しているので、Kunaと私たちだけでなく、防衛省も巻き込んでの活動です。ですから、基本的には私たちがニーズを理解して、彼らがロジスティクスを助けてくれるのです。これが終わったら、みなさんに完全な透明性のある報告をするつもりです(別途Kunaから聞いたところでは、機材の購入にはドローンやその他の補助的な機材も含まれているとのことである)。

関連記事:ウクライナへの暗号資産による寄付金、政府基金の使われ方

これまでにどれだけの資金が使われたのでしょうか。また、これまでにどれくらいの寄付金が集まったのでしょうか。

これまでに約2500万ドル(約29億円)の資金が集まり、1400万ドル(約16億2000万円)ほど使ったと思います。

なぜ、暗号資産を使わないルートではなく、暗号資産による寄付を選んだのでしょうか?資金調達のルートはたくさんあります。

さて、みなさんはご存じないかもしれませんが、ウクライナ国立銀行は、これに先立って、最初に大規模な国家的キャンペーンを行っています、こちらは、ほとんど通常の通貨とカードで資金調達をしています。ということで作業は並行しています。暗号資産だけではありません。ファンドは沢山あるのです。人道支援に重点を置いているものもあれば、軍事だけに重点を置いているものもあります。政府業務をサポートするために存在するものもあります。つまり、正確には知りませんが、さまざまな機関の力を合わせると、1億ドル(約115億7000万円)ほど調達できたと思います。

余談になりますが、副大臣が担当されたテックシティプロジェクト「Diia City」についてお聞きしたいのですが。今は少し後回しになっているようですね。

この時点では、そう、後回しになっています。このプロジェクトに関しては比較的すばらしいスタートを切ることができました。巨大企業や国際的な企業など、何百もの企業が参入していましたが、残念ながらロシアの侵攻によって、これがご破算になってしまいました。延期ということにしておきたいと思います。しかし現在は、企業はほとんどの人員を避難させているところです。

ウクライナに残って仕事を続けている人もいますが、多くの人が去ってしまいました。とても残念なことです。

私もそう思います。本当に、信じられないようなことが起きてしまったんです。私たちの領土でこのような悲劇が起こるとは、想像もしていませんでした。でも、いずれは再建します。そしてもちろん、現状を打開できると思っています。しかしその道のりはとても険しいものでしょう。

画像クレジット:Pierre Crom/Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

「人材と資金」がEUのスタートアップ政策に対するフランスの戦略のカギ

現在、欧州連合理事会議長国となっているフランス。同政府はこの機会を利用して、テクノロジースタートアップ政策において進展を図ろうと目論んでいる。フランスのデジタル大臣であるCédric O(セドリック・オ)氏はTechCrunchとのインタビューの中で、欧州のテクノロジーエコシステムに関するニュースをいくつか紹介してくれた。

その前に少しだけ振り返ってみよう。ここ数年、EUでは税制や人材確保、投資などに関する法律を見直し、調和させようという取り組みが盛んに行われている。

2021年、欧州委員会と加盟国は「Startup Nations Standard」を発表した。その名が示すように、この新制度は欧州各地のスタートアップ政策の基準を確立することを目的としており、言い換えると、加盟国間で共有できるベストプラクティスのようなものである。

ポルトガルが欧州連合理事会議長国になった際、ポルトガルはさらに一歩進んで「European Startup Nations Alliance(ESNA)」を創設すると発表した。ESNAは「Startup Nations Standard」を担う新たな組織であり、ベストプラクティスをまとめるだけでなく、技術的なサポートや進捗状況のモニタリングも行うというものである。

同じ頃、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が「Scale-Up Europe」という別のグループを立ち上げている。テック企業や投資家、団体がマニフェストに署名し、2030年までに1000億ユーロ(約13兆2100億円)以上の価値を持つテック企業を10社にすることを目標に掲げている。

大規模なVCファンドを10~20作るための新たな金融インセンティブ

フランス政府は2日間の会議の中で、人材の魅力を高めるためにESNAに新たな責務を課すこと、運用額10億ユーロ(約1321億円)以上のレイターステージの投資ファンドを10~20個設立すること、ディープテック分野への投資を強化することなどを発表している。

レイターステージの資金提供から見てみよう。EUの加盟国のいくつかは、European Investment Fund(欧州投資基金、EIF)に出資して新たなファンド・オブ・ファンズを設立すると発表している。

「ヨーロッパの強力なエコシステムを構築するためには、資金調達が重要です。世界中から投資を集めたいとは思っていますが、欧州の資金、欧州の知識、欧州のチームによる欧州のベンチャーキャピタルを実現したいと考えています」とオ氏は話している。

「我々の目標は10億ユーロ以上のファンドを10~20作ることです。現在米国では10億ユーロ以上のファンドが40あるのに対し、欧州では2つとなっています。Eurazeo(ユーラゼオ)とEQTの2つで、フランスのファンドとスウェーデンのファンドです」。

この新たなファンド・オブ・ファンズは、欧州の大規模なレイターステージのファンドにリミテッドパートナーとして投資する計画である。この新しい仕組みにより、ファンドマネージャーはより簡単に新しいファンドを調達できるようになり、例えばEIFがあるファンドに1億ユーロや2億ユーロの投資をすると言えば、この新しいファンドにはより多くの機関投資家が集まるだろうという考えである。

また、Bpifrance(公的投資銀行)のような一部の国立投資銀行は自国のファンドに対しても支援を行っている。フランスでは、民間の保険会社や公的な投資家もTibi(ティビ)氏の取り組みに倣ってレイターステージのファンドに参加しているのである。

今回の発表はヨーロッパ全土に関するもので、加盟国の予算の一部を欧州におけるレイターステージのテック分野への投資に充てることを主な内容としている。

オーストリア、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スペイン、スウェーデンの18カ国がこのEIFのファンド・オブ・ファンズに貢献するという拘束力のない誓約書にすでに署名しており、近日中にさらに多くの国が加わる予定だという。

具体的には、フランスは「フランス2030」の投資計画のうち10億ユーロを振り向けると言い、ドイツは10億ユーロを投資、さらにEuropean Investment Bank(欧州投資銀行)はこのファンド・オブ・ファンズに5億ユーロ(約660億円)を特別に割り当てる他、別途でレイターステージのファンドに直接投資を行うと伝えている。

その他いくつかの国立投資銀行も、大規模なレイターステージファンドに直接資金を投資すると発表している。フランスとデンマークの投資銀行は欧州のレイターステージファンドにそれぞれ5億ユーロを割り当てる計画で、またギリシャも近々計画を発表する予定だという。

10年前に米国の経済を大きく変えたように、デジタルト・ランスフォーメーションがヨーロッパの経済に大きな影響を与えるだろうとオ氏は考えている。

「今、欧州は転換期にあると考えています。そして問題は、その変化を誰が利用していくのかということです。米国の企業なのか、ヨーロッパの企業なのか。それがヨーロッパの企業になるように、できる限りのことをしたいと思っています」。

そして、ヨーロッパ内で大規模な成長資金を調達できるようになることが、この先大規模なテック企業を生み出すことにつながると同氏は強く信じている。「プライベート投資による欧州の大規模なファンドが増えれば、クロスオーバー投資でも、公共投資でも、近いうちにヨーロッパのNASDAQの上昇につながるでしょう」。

画像クレジット:Ministère de l’Économie, des Finances et de la Relance

技術者向けビザの改善

ヨーロッパの多くの国では、すでに技術系人材のための特別なビザプログラムを設けている。例えばフランスには「French tech visa」があり、またスペインではスタートアップビザを含む法的パッケージの立ち上げに取り組んでいる。

しかしそれぞれのプログラムの違いは、近い将来ほぼなくなることになるかもしれない。ESNAは、加盟国がそれぞれの規制が欧州の基準と比べてどうなのかを確認できるよう、ベストプラクティスを共有する計画だからだ。

フランスはさらに一歩進み、専門のチームを持つ「European Tech Talent」サービスデスクを作りたいと考えている。ESNAは各加盟国の移民局に取って代わるものではないものの、将来の移住者がビザを比較できる単一の情報源ができることになるため、外国人の人材を雇用しようとしている技術系のCEOにとっても、特に有用なものとなるだろう。

「こういったプログラムによって何れすべてがつながっていくことを期待しています」とオ氏はいう。

また、ESNAのサービスデスクは、問い合わせを適切な行政機関の適切な担当者に転送してくれるという。オーストリア、ベルギー、キプロス、チェコ、エストニア、フィンランド、ポーランド、フランス、ギリシャ、アイルランド、イタリア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、ポルトガル、スペインの少なくとも16カ国がこの誓約に署名することに合意している。

技術者に対するこの新たな取り組みは、言わばプロモーションのためのものである。真新しいサイトとどんな質問にも答えてくれるチームがあれば、優秀なエンジニアにとってヨーロッパへの移住はこれまでになく魅力的なものになるかもしれない(一部の国では極右の候補者がかなりの人気を博しているという事実が、この取り組みにダメージを与えているかもしれないが)。

「米国のテクノロジーが成功しているのは、優秀なフランス人、ナイジェリア人、インド人を集める能力に関係しています。ヨーロッパはこのテーマでは遅れをとっています。我々はEUブランドを作っていない。しかし、コロナ後の世界には歴史的なチャンスが広がっています。欧州の福祉モデルと欧州の生活の質は極めて重要な資産となっています」と同氏は話している。

ディープテックへの投資上限解除へ

European Innovation Council(欧州イノベーション会議、EIC)には100億ユーロ(約1兆3251億円)の予算があり、これはかなりの額の資金管理である。EICはヘルスケア、エネルギー、グリーン・イノベーションなど、さまざまな戦略的産業における画期的な技術を支援することになっている。

これまでEICファンドは、ディープテック企業への直接的な株式投資に1500万ユーロ(約20億円)までしか投資できなかった。EUの革新・研究・文化・教育・青年担当委員のMariya Gabriel(マリヤ・ガブリエル)氏は、EICが従来の1500万ユーロの上限を超えてより大きな投資を行えるようになると発表している。

また「EIC Scale Up 100」と呼ばれる欧州のランキングが発表される予定だ。このランキングを活用してEUがあらゆるサービスや経営上の支援を行い、最も有望なディープテックベンチャー企業を支援しようという計画だ。

今回の発表で、フランスとEUはスタートアップ政策における競争促進のビジョンを打ち出している。オ氏は欧州のスタートアップと米国のスタートアップをよく比較するが、ビッグテックに対抗する最善の方法は、ヨーロッパ独自のビッグテック企業を作ることだと同氏は考えている。

「私たちは米国人よりも上手くできると信じています。Back Market(バックマーケット)Ynsect(インセクト)のように、米国企業よりも優れた企業が出てきていますし、それを目指すべきだと感じています。本能的な個人的意見としては、閉ざされた市場ではなく、もっと野心的で競争的なものを支持したいと思います」と同氏は話している。

画像クレジット:Ministère de l’Économie, des Finances et de la Relance

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(文:Romain Dillet、翻訳:Dragonfly)

ウェルネスとデジタルサイケデリックのXRプラットフォームTrippが世界最大のVR瞑想コミュニティEvolVRを買収

カリフォルニアに拠点を置く「ウェルネスとデジタルサイケデリックのXRプラットフォーム」、Tripp(トリップ)は買収による成長路線を継続し、世界最大のVR瞑想コミュニティであるEvolVR(エボルVR)を買収した。これは2021年のPsyAssist(サイアシスト)の獲得に続くものだ。PsyAssistは、サイケデリック体験を続けるために使うモバイルアプリである。今回の買収によって同社は、ポケモンGOメーカー、Niantic(ナイアンティック)の新しいツールキットであるNiantic Lightship(ナイアンティックライトシップ)の立ち上げパートナーの一員として、拡張現実(AR)体験に取り組んでいることが明らかになった。

EvolVR(創設者はユニテリアンユニバーサリストの牧師および瞑想インストラクター)は、VRで活動する世界初・世界最大の瞑想コミュニティであると主張しており、4万人を超える人がVRマスクを着けて瞑想に入っているとのことだ。Trippも負けてはいない。同社は、350万を超えるウェルネスセッションを行ってきたと主張している。「瞑想術、フロー誘発ゲーム、バイノーラル音声と呼吸のエクササイズ」を組み合わせて、不可思議な感覚を吹き込み、ユーザーの感じ方を変えるのだ。こうしたセッションは、リラックスと調和に役立つように考案されているが、サイケデリック体験の促進に使用することもできる。

コミュニティを重視する組織を買収して支持者の規模を拡大すれば成長を大きく促進できるが、当然ながら、すべてのコミュニティが「買われる」ことに賛成であるとは限らない。特に、買い手が移行期間に荒っぽいことをすればそうである。TrippのCEO兼創業者であるNanea Reeves(ナネア・リーブス)氏と話して、買収の背景が少しわかった。また、高揚感を得られるVR・瞑想・スピリチュアリティ・サイケデリックのマッシュアップとして次に来るものを知ることもできた。

Trippという名前について尋ねないわけには行かなかった。名前の由来は?サイケデリックとの関係は?

「体験としては、サイケデリックというよりVRです。Oculusの開発キットが初期段階の頃、誰もが四六時中VR体験をしていました。ヘッドセットを外して、『すごい、まさにTrippだ!』と言ってました。ある現実があってそれに気づくという体験をして、それから別の現実も体験することには、何かがあります。もちろん、薬物を使ってもそういう体験はできますが、VRにはそれ自体にそういうメカニズムがあります。そこから名前がひらめきました」とリーブス氏は説明している。

TrippのCEO兼創業者ナネア・リーブス氏(画像クレジット:Tripp)

「先方が当社のサイケデリックな面について知ったのは、当社が消費者向け製品を発売した後でした。私たちがしていることにサイケデリックコミュニティから大きな関心が寄せられ、ケタミンを使うクリニックなどでは当社の消費者向け製品がオーガニックな方法で採用されていることがわかりました。私たちは、それを臨床分野への進出の機会と見ることにしました。(苦痛緩和ケアやサイケデリック療法において)臨床展開に取り組む方法はいくつかあると思います。不安を和らげる治療に備える方法や治療後のサポート方法に大いに力を入れていきたいと思います」。

「当社には、別の取り組みと、サイケデリックなメンタルヘルスの手順を対象としたPsyAssistというアプリケーションバンドルがあります。当社はこれらの分野で支援を行うことができます。2022年の前半に、現時点ではケタミン限定のパイロット試験をいくつか行う予定です」。

「私たちと消費者の最も意味深い関わり合いのいくつかは、人生の終わりに臨んで当社の製品を使用する人との関わり合いであることがわかりました。そうした人にメリットがあった、つまり自分が身体的に経験していることから気持ちを紛らすことができたというだけではありません。家族や世話をする人も、Trippの体験を通してストレスを解消できました。当社のツールキットやアプリがさまざまな点でどのように役立ったか報告してくれるユーザーのフィードバックを見ると、起業家としてそれ以上求めるものはありません。努力によって実際に人々の状況が良くなっていることがわかるからです」。

EvolVRの買収

同社はMayfield(メイフィールド)が取りまとめたラウンドで400万ドル(約4億6200万円)を調達し、その後2021年6月にサイケデリックライフサイエンスを重視する投資会社Vine Ventures(バインベンチャーズ)とMayfieldが取りまとめたラウンドで1100万ドル(約12億7000万円)を調達した。同社は、変革的な体験を実現するために臨床分野とコミュニティ構築を並行して追求することを計画している。EvolVRの買収は明らかに、その課題の中のコミュニティ分野である。

Trippは、2022年の終わり頃にAR製品を発売するために、ナイアンティックライトシップのプラットフォームに取り組んでいる(画像クレジット:Tripp)

「私は、EvolVRのコミュニティについていくつか気づいたことがあります。私はよくVRで人に会っていましたが、彼らはJeremy(ジェレミー)[Nickel(ニッケル)氏、EvolVRの創設者]の話をずっとしていることがよくありました。それがアバターのグループでの瞑想を強制することになるとは思いませんでしたが、私は続けて、特にパンデミックの時期に彼らの瞑想をいくつか試してみました。彼らが案内付きの瞑想体験をしているのが気に入りました。私と一緒に瞑想体験をしている別の人がいるのを感じました」とリーブス氏は説明している。「Electronic Arts(エレクトロニックアーツ)にいたとき、私はゲーム中毒のコミュニティの状況や、彼らが女性に優しくないことがわかりました。EvolVRでは、瞑想グループのリーダーが安心できる場を作っているのがわかりました。彼らは、私が良い印象を受けるようにグループをリードする方法を心得ていました。誰かが煽っても、効果はありませんでした。メタバースが拡大するときも、嫌がらせを無視できる場があることは大切です。私たちは、そうした配慮の行き届いた落ち着ける場を作って、自分自身と他の人とのつながりを深めるお手伝いができます」。

「ジェレミーと私は(買収を)内密にしてきました。彼は、コミュニティの人たちは買収を喜ぶだろうと思っています。私たちは、ジェレミーの14人の瞑想リーダーと意思の疎通を図る必要があります。彼らも私たちの傘下に入るからです。私たちは、配慮の行き届いたメタバースとはどのようなものか、考える努力をしています」。

買収の結果、EvolVRはどう変わるか?

「私はこの買収を記念したいと思っています。2つのコミュニティが一緒になって、アンビエント音楽のDJイベントとローンチパーティーを開くことを考えていました。私たちは、本当にクールなことをしようと思ってわくわくしています」とリーブス氏は語る。「プログラミングの観点からは、単なるグループ瞑想の枠を超えたいと思っています。サウンド入浴を手がけたいと考えています。呼吸法も手がける予定です。アンビエント音楽の『エクスタティックダンス』で体を動かすイベントを行う方法についてアイデアがいくつかあります。VRの抽象的な概念を使ってコミュニティとの調和をサポートするすばらしい機会があります。VRの申し分のない使用事例です。不名誉なことは避けて、自分の家でこっそりできます。きまりの悪い思いをすることはあまりなく、それでいてメリットがあります」。

Trippのプラットフォームを試してみた。慣れるのに少しかかりますが、とてもリラックスできる。写真は私ではない(画像クレジット:Tripp)

「(Trippの)支持者の幅広さにとても満足しています。私たちの支持者の大多数はミレニアル世代で、X世代がとても大きな2番目の世代です。支持者の約8パーセントは65歳以上です。VRはまだ共有のデバイスで、家族全体で使われています。例えば宿題をする前に集中力を高めるのに役立つよう子どもにTrippを使わせているという声もあります。ゆくゆくは、ほとんどの人がデータに対応したヘッドマウントディスプレイを使うようになることを期待しています。理想では、感情的な健全性を管理するお手伝いをしたいと思っています。そこから、依存症ケアや苦痛緩和ケアのような使用事例を対象にすることができます。実際のところ、主なメリットは、その時その時の感じ方に力を作用させるのに役立つということです」。

「音声だけの現行世代の瞑想アプリで、人々はますます快適に解決策を探していると思います。それを次のレベルに持っていくお手伝いができると思います。そうすれば、そのレベルのあり方を体験できます。私の目標を挙げるとすれば、必要な時に利用できるセルフケアの決まったツールキットを継続的に提供することです」。

今回の買収は現金と株式の組み合わせだったが、Trippは取引の詳細を開示していない。

画像クレジット:Tripp

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

自らもメタバースの住人で専用デバイスも開発、Shiftall岩佐氏に聞く「メタバース周りの現状」

Shitallは2022年1月、CESでVRヘッドセット「MeganeX」、ウェアラブル冷温デバイス「Pebble Feel」、メタバース対応音漏れ防止機能付きマイク「mutalk」を発表した。

「メタバース」というキーワードが飛び交っている。デジタルにおける新たなフロンティア、コロナ禍で閉鎖的な現在を生活的にもビジネス的にも変えてくれるかもしれない「メタバース」に大きな注目が集まっている。

Facebookが社名を「Meta」に変更し、メタバースという単語をちりばめることでアピールする新サービス、アプリが昨秋以降、急増していく中で、2022年春における「実際のところ」はどうなのだろうか?

作りたいものを作る!Shiftall(シフトール)のCEO岩佐琢磨氏は、新卒でPanasonicに勤めていたが、独自製品をスピード感を持って開発したいという想いを持って同社を退職。ハードウェアスタートアップCerevoを立ち上げた。

先に開催されたCESでも新製品を発表し、理想や概念ではなく実務として「メタバース」に取り組んでいる​​岩佐琢磨氏。

「当事者」である岩佐氏に、日本そして海外でのメタバースの現状やShiftallがそれにどのように関係してくるのか。また、考えるメタバースの楽しさ、ビジネス、将来について話を伺った。

日本と海外でのメタバースに対する温度差

2018年に、PCレス、ゴーグル単体でVRを楽しめるOculus Goが発売され、2019年に6軸センサー搭載のOculus Quest、2020年にその後継モデルとなるOculus Quest 2(現MetaQuest)が発売されても、一部の人たちを熱心なユーザーは生んだものの、それ以上、一般層にまで浸透しなかったVR。

しかし、Questを販売しているFacebookが、社名をMetaへ変更され「VR」ではなく「Metaverse(メタバース)」という言葉が使われ始めてから、ITと親しいウェブメディアだけでなく、マスメディアでも取り上げられるようになり、盛り上がっている。

そのような状況において、2022年1月に米国で行われた世界最大級の電子機器の見本市CESに参加した岩佐氏は「メタバース関連のアイテムに、あまり盛り上がりが見られなかった」という。

「例年、多くのブースを出す中国から企業が参加できなかった点が大きい。また、メディカル分野のスタートアップが多い韓国からの出展が多かったことなどから、ヘルステックやメディテックが目立っていました。メインはオートモーティブ関連の出展でした」。

国内の報道を日常的に見ていると「メタバース関連がメインではないのか」と感じてしまうが、岩佐氏は「例年に比べて、VRやAR関連の出展は増えていたけれども、現地(米国・ラスベガス)はそれほどヒートアップしていませんでした。日本国内と海外で、メタバースに対する温度感の差が激しい印象です」と語る。

メタバース界隈とインターネット黎明期の共通点

メタバースに関する岩佐氏の話で興味深い点は、同氏がインターネット黎明期とメタバースの現状に共通点を見出していることだ。

「今、ごく一部の人たちがVRChatの中でわいわいと楽しく過ごしています。それって国内でインターネット接続が一般化して、ホームページを作って情報を発信するようになった人が登場し始めた1997~98年の感覚に似ています。HTMLタグを駆使してホームページを作って、CGIを組んでカウンター作ったり『キリ番ゲット』などとインターネットというサービスを楽しんでいたときのノリに近いものが、現在のメタバースにはあります」と岩佐氏はいう。

当時、そのノリに対して、周囲から「何が楽しいんだろうか」と冷ややかな目がよせられることもあったが、現在、メタバース世界を楽しんでいる人たちに対する目もそれに近いものがあるという。

やがて、ホームページをWYSIWYGで作れるホームページ・ビルダーが登場し、わざわざホームページを作らなくても簡単にブログを始められる仕組みが生まれ、女子高生たちはかわいらしいアバターをアメーバピグの中で作っていくようになる。

そしてYouTube、Instagram、ブログ、TikTokなど、人気配信者(ブロガー、ティックトッカーなど呼び方はそれぞれ)が、やがてインフルエンサーと呼ばれ社会に対する影響力が大きくなっていく。

メタバースでも同じように、HTMLタグよろしくBlenderやUnityで手作りしている状況だが、pixivが提供しているVRoid(ブイロイド)のように、マウス操作だけで髪の毛を伸ばしたり、目を大きくしたりできるツールが登場してきており「ワールドすら、近いうちにそれほど知識がなくてもGUIベースで誰もが作れるようになるのではないかと考えている」と岩佐氏は考えている。実際、取材後の2月15日にクラスターは、誰でも簡単に自分の想像したメタバース空間を創造できる新機能「ワールドクラフト」のリリースを発表している。

「ブログから始めて起業したり、有名になった人が生まれたように、メタバース上のワールドを舞台にして人気になり、稼ぐ人が生まれてくるときが来ると思います。すでにその兆しは見えています。堀江さんや三木谷さんが、『これからはホームページでビジネスが回る。数兆円規模の市場になる』と予測したときと同じフェーズに、メタバースもさしかかっています」と岩佐氏はいう。世界を変えるような、次なるビジネスの芽がすでにメタバースの世界に誕生し始めようとしている。

そしてそれを裏づける出来事も生じている。

ShitallのCEO岩佐琢磨氏

調達金額でわかる加速する注目度

2021年、メタバースをめぐる資金調達の流れを振り返ってみたい。中国のVRヘッドセットメーカーPico Technologyが約40億円を調達したのが3月のことだ。Epic Gamesは4月に約1000億円、ソーシャルVRサービスを提供するVRChatは6月に約80億円を調達した。

そして、Pico Technologyは、8月にTikTokを運営するByteDanceに約840億円で買収される。それだけの価値があると認められたわけだ。

岩佐氏は「2021年7月以前と8月以降では、参入してきた人(企業)に変化が見られる」という。

というのも、それまでは多くても調達額は数十億円程度だったが、数百億円、数千億円という話が聞かれるようになったからだ。

Nianticが11月にARメタバースに355億円を調達。VRイベント「バーチャルマーケット」を提供するHIKKYもは2月8日にシリーズAで70億円を調達、12月には韓国ネイバー傘下のメタバースプラットフォームZepeto(ゼペット)が、ソフトバンクグループから約171億円を調達している。すでに、KDDIの資本が入っているクラスターもあり、3大キャリアがそれぞれメタバースに関連した武器を持っている状態だ。「年末近くにはソーシャルVR「Rec Room』が約164億円の調達に成功しています。どうも札束で殴り合いをしているように感じます」岩佐氏はいう。

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メタバースへのアプローチは2種類

岩佐氏が語る「メタバース」は、あくまでも「VRの世界で、コミュニケーションを取るVR SNS」を対象にしている。「『フォートナイト』も『どうぶつの森』もメタバースだと主張する人がいますが、メタバースという言葉が乱用されているのではないでしょうか。他者とコミュニケーションを取るために、VRゴーグルをかぶって入る空間がメタバースだと感じています」。

その上で「『メタバース』に対して2つのアプローチがあることを認識している」と岩佐氏はいう。1つ目がゲームからのアプローチとなる。「他者とコミュニケーションを取れるSNS要素があることを理由に、『フォートナイト』や『Roblox』などは、自分たちもメタバースだと称しています。ゲームをしていない時間でもその空間にとどまれるような工夫もしている、と」。

そして2つ目のアプローチはSNSとなる。「VRChatはSNSからのアプローチ。ゲームもできるけど、バーチャル空間でも現実世界と同じように過ごすことを目指しており、いろいろな試みがなされています。決して朽ちないけれども、もう用済みになってしまった『廃墟』巡りをしたり、誕生日パーティーを開いたり、メタバースの中にお墓を作ったり……。リアルのようでいて、リアルではない楽しさがあります」と岩佐氏は語る。

さらに岩佐氏は「瞬時に世界中の人とつながれるから、国境がないように考えるかもしれないけれど、アバターのデザイン、コミュニケーションの取り方、人との距離などで、国民性が出ます。その様子を見るのも、メタバースの楽しみ方の1つですね」という。

メタバースの世界にいる状態なのに、現実世界においても布団で寝てしまうこともあるという岩佐氏。それほど長くいるのに必要なものをShitallで生み出してきた。次回は「メタバース住民必見」のメタバース向け製品を紹介したい。

世界最大級の暗号資産取引所Binanceのチャンポン・ジャオCEO、規制とアフリカでの活動について語る

「CZ」ことChangpeng Zhao(チャンポン・ジャオ)氏は2017年にBinance(バイナンス)を立ち上げたが、一部の情報によると同社はわずか180日で世界最大の暗号資産取引所へと成長した。

Wall Street Journal(ウォールストリート・ジャーナル)によると、Binanceの1日の取引額は760億ドル(約8兆6331億円)で、これはライバル4社の合計額を上回るものである。

2021年上半期、Binanceはアフリカと中東から1億5100万回、ナイジェリアから1100万回のクリックを集めたとWSJは伝えている。Chainalysis(チェイナリシス)によると、2020年7月から2021年6月までに1056億ドル(約12兆円)相当の暗号資産がアフリカ内で取引されており、アフリカにおける暗号取引の活発さがうかがえる。

額面としては1200%以上の成長を遂げているにもかかわらず、この期間に取引された世界中の暗号のうちアフリカはまだ2%しか占めていない。暗号資産、ブロックチェーン、分散型金融がアフリカ大陸で定着しつつある中、Binanceはこれらの活動を推進するリーダーになりたいと考えている。

しかしそれを実現するためには、アフリカ大陸で直面するであろう規制上の課題を考慮する必要がある。ナイジェリアとケニアという特に暗号が盛んな2つの国で、暗号活動が禁止されてしまったからだ。

米国、中国、英国、日本、マレーシア、タイ、EUの規制当局は、近年の無秩序な成長に懸念を抱いており、同社はすでに打撃を受けている。

今回のTechCrunchとのインタビューで、ジャオ氏は、アフリカでの暗号の使用と導入、Binanceの活動、規制に対する同社のスタンスなどについて語ってくれた。

このインタビューはわかりやすくするために編集されている。

TechCrunch:暗号は複数の政府が規制しようとしている産業の1つです。これについてどう思われますか?暗号は規制されるべきでしょうか?

ジャオ氏:規制は暗号産業にとって不可欠であり、この分野に関心を持つ消費者や機関との信頼関係を構築する上で大きな役割を果たします。結局のところ、暗号の大量導入を実現するためには適切な規制が必要不可欠です。私たちは現地の規制当局と積極的に協力し、ユーザーの利益と保護という共通の目的に向かって業界を導くことで、健全な形でこれを促進できると信じています。

当社の考えでは、10%、20%、80%、99%の(暗号)採用を目指すために規制当局が入って来るのは良いことだと思っています。しかし規制が暗号の成長を妨げるのではなく、補完することも同様に重要です。全体的に見て、効果的な規制は消費者を保護すると同時に成長とイノベーションを刺激しますが、一方で、不適切な規制政策は成長を阻害し、時代遅れで効果のないプロセスや制度を保護します。

世界最大の取引所であるBinanceは、なぜ米国やヨーロッパ、中国で多くの規制問題を抱えているのでしょうか?また、それらに対処するためにどのような措置をとっていますか?

どの暗号資産取引所も世界中の規制当局と密接に連携していると思います。業界のリーダーとして、多くの人がこの業界の代名詞のようにしてBinanceを見ています。模範となり、規制当局と連携して共通の目標を前進させる機会を得たという事実を、私たちは軽視することはありません。

私たちが最大の暗号化取引所であるのは、ユーザーが私たちを信頼してくれているからです。ユーザーを守るためのあらゆる決断と行動によって、その信頼を私たちは獲得してきました。私たちは、世界中の業界や規制当局とベストプラクティスを共有したいと考えています。それがより健全な業界の形成につながると信じています。

各国の規制ガイドラインへの対応の一環として、FATF(金融活動作業部会)の定める国際規制「トラベルルール」に対応するためのShyft NetworkのVeriscopeや、ユーザーが個人の納税義務を迅速に果たせるようにするためのTax Reporting Tool APIなどの新製品を発表しました。

また「Futures Leverage for New Accounts」を更新し、複数の市場でアクセスを制限したり、プラットフォーム全体でKYC(顧客確認)の義務化を開始したりするなど、既存のサービスを見直しました。また最近、コンプライアンスに精通したトップクラスの人材を数名採用しました。

私たちは最近、リーダーシップの一例として、標準的なKYC/AML(アンチマネーロンダリング)処置に加えて、業界のプレイヤーの長期的活動を推進し始め、創業者トークンのロック解除のスケジュールを、2~4年から8~10年に延長するよう働きかけています。どこかの規制当局に求められたわけでないのですが、これが業界の健全化につながると信じています。私たちは、ユーザーを保護する方法を常に模索しているのです。

政府はこの取り組みを正しく行っていると思いますか?また、政府はこの新産業についての知識を持ち、その優位性に磨きをかけることができているでしょうか。

ここには絶対的な正解や間違いといったものはなく、キャリブレーションとバランスが重要になります。暗号だけでなく、暗号への規制も新しい概念であり、多くの政府がこの分野をより明確にしようと試みています。

規制当局は、消費者を保護すると同時にイノベーションを促進するという同じミッションを私たちと共有しています。規制当局が業界との最も効果的な関わり方を模索する中、当社は全世界で100%のコンプライアンスを実現することを約束し、すべてのチームがこの実現に向けて休むことなく取り組んでいます。

暗号資産の導入と発展は、自動車のそれと多くの類似点があります。自動車が発明された当初は、道路交通法も信号機も、シートベルトさえもありませんでした。車が道路を走りながら法律やガイドラインが作られていったのです。今日、私たちが当たり前のように使っている枠組みや法律があるからこそ、この強力なテクノロジーが広く安全に使われることができるのです。

暗号は誰もがアクセスできるという点で似ていますが、誤用や悪質な行為を防ぐためにはフレームワークが必要です。業界の継続的な成長のためには、最初の基準を明確にして構築することが重要です。Binanceはそこに積極的に貢献していきたいと考えています。

暗号の規制が懸念されているアフリカに対してBinanceが強気に出ているのはなぜでしょうか。

アフリカ大陸は、暗号資産の導入と発展のためのユニークなチャンスを秘めているため、私たちは常にアフリカに強気で臨んでいます。暗号は国境を越えた支払いや送金(アフリカ国内や国外への送金)、通貨の切り下げなどの問題を解決してくれます。

多くのアフリカ諸国は高い失業率に悩まされていますが、暗号とブロックチェーンは、この若く優秀な大陸に革新的な雇用機会を提供し、アフリカの人々の経済的自由の獲得をサポートしています。

Binanceがローンチしたその初日からアフリカのユーザーが存在しましたし、実際に彼らは比較的アクティブでした。私がウガンダ、トーゴ、ナイジェリア、そしてエチオピアを訪問したのは2018年の初めだったと思いますが、市場のことを少しでも知っておこうと思ってアフリカを少し回りました。そのあとすぐにBinance Ugandaを開設して、これが最初のフィアットゲートウェイになりました。

アフリカでの利用で特に興味深いのは、多くの人は伝統的な金融サービスにアクセスできないため、銀行口座を持つ人の数がかなり少ないということです。しかしだからこそ、暗号が魅力的なのです。

確かに魅力的ですが、アフリカの中央銀行がここ数カ月間、暗号ユーザーを標的にして、銀行が取引を促進するのを禁止しているのはそのためかもしれません。米国や中国などと同様に、彼らが代わりにBinanceを狙い始めたらどうなるでしょうか?

Binanceは規制を歓迎していますし、規制当局や政府と協力してこの新興産業をナビゲートするアプローチをとっており、コンプライアンス義務を重じています。変化し続けるこの分野の政策、規則、法律を積極的に把握するよう常に取り組んでいます。

関連記事:ナイジェリアが中国の足跡を追ってデジタル通貨を試験的に導入

このように、Binanceは規制当局を支援し、公正な競争条件を設定するための最適な方法を見つけたいと考えています。消費者保護は私たち全員にとって重要なことです。私たちは組織として飛躍的に成長してきましたが、規制当局の要請に応じて、特定のプロセスやプロトコルの更新を行っています。

Binanceやその他の暗号プラットフォームが世界中で政府の規制を受けた場合、暗号の採用や成長は鈍化すると思いますか?

いいえ、そうとは思いません。スマートな規制はイノベーションを促進し、ユーザーの安全を守ります。また、規制とイノベーションは相反するものではないということを理解するのも重要です。暗号ユーザーは、NFT、ステーブルコイン、ステーキング、イールドファーミングなどの新しいテクノロジーや手法に安全にアクセスする権利があるのです。

これについては先日発表した「10 Fundamental Rights for Crypto Users(暗号ユーザーの10の基本的権利)」で触れています。暗号の規制は避けられませんが、ユーザーには、自分が選択したブロックチェーンプラットフォームで業界をどのように進化させるべきか、声を共有する権利があります。

アフリカでの暗号化導入を後押ししているものは何だと思いますか?

さまざまな要素が重なり合っているのだと思います。アフリカは独特の課題を抱えたユニークな大陸です。例えばアフリカの多くの国は、常に通貨の切り下げに悩まされているため、ユーザーは切り下げに対する防衛や価値の保存として、暗号やステーブルコインを使用する傾向があります。

送金や海外送金、決済など、国を越えた支払いはかなり困難ですが、暗号はこれを簡単にしてくれます。

アフリカの多くの人々は、富の創出と経済的自由を求めて暗号を始めます。東南アジアやラテンアメリカと同じく、何百万人もの人々が貧困ラインの下で暮らしています。そのため、富を生み出すための革新的で非伝統的な方法を求める人が増えるというのは自然なことです。

アフリカの総人口のうち、銀行口座を持っているのはわずか11%という報告もあります。銀行口座を持たない人の多くは、銀行を通さずに携帯電話を銀行として利用し、直接暗号にアクセスしているのです。

数字つながりの話ですが、最近のWSJの記事によると2021年上半期、ナイジェリアではBinanceに1100万回のクリックがあったそうです。これはアフリカ大陸におけるBinanceユーザーの数ですか?

ウォールストリート・ジャーナルは当社のシステムやユーザー情報へのアクセス権を持っておらず、第三者が提供した推測に基づく統計データを引用しています。外部の第三者が行った推測に基づく分析について、当社はコメントできません。

より多くのアフリカ人がこれまで以上にP2Pを利用するようになった今、Binanceはどのようにしてアフリカのユーザーがプラットフォーム上で暗号資産を安全に取引していることを確認しているのでしょうか?

アフリカの人々が確実に十分な教育を受け、守られていると確信を持てるようにするため、弊社にとってこれは大きなフォーカスになっています。

特にBinanceのP2Pでは、ユーザーの保護と安全が最優先されます。8月時点で40万人以上のアフリカ人を対象に、ユーザー保護からブロックチェーンでのキャリア構築まで、さまざまなテーマで無料の暗号クラスを提供しました。

最近では暗号エスクローサービスなどの新しいリスク管理手段を導入し、またユーザー保護を強化するためにグローバルKYC要件を拡充し、悪質な業者によるシステムの悪用を防ぐために新しいP2P機能を実装しました。

アフリカなどの新興国にとって、暗号資産やブロックチェーンにはどのような変革の可能性があるのでしょうか?

可能性は無限にあり、新興国ではそれがさらに顕著になります。新しい金融インフラ、システム、プロセスが構築され、人々の生活を変え、経済的自由の可能性を生み出します。

また個人的には、GameFi、Sports Fan Tokens、NFTなど、最近主流になっているイノベーションにも大きな可能性を感じています。これらが非常に大きな変革をもたらすことができるのではないでしょうか。

画像クレジット:Binance team

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

【インタビュー】年初から話題のゲーム「Wordle」制作者が語る、バイラルでの人気とその先にあるもの

ネットの世界で人気なのは、あり得ないようなサクセスストーリーだ。新しい年になろうとしていた頃、そのような話が飛び込んできた。シンプルなアイデアで楽しませてくれて、簡単にプレイできるゲーム「Wordle(ワードル)」だ。6回のトライで5文字のワードを言い当て、結果と、試行を図にしたグリッドを他の人と共有して、泣いたり笑ったりする。

テクノロジー業界にとって一服するための清涼剤のようだった。ゲームクリエイターのJosh Wardle(ジョシュ・ウォードル)氏と話したときのことだ。モバイルアプリなし、24時間で1つのワード、広告なし、登録も必要なし。インターネット接続が切断されてもプレイできる。

しかしおそらく、ゲームそのものより喜ばしいのは、その元々の話だ。

簡潔に言えばこうだ。英国育ちでニューヨークに住むジョシュ・ウォードル氏は、かつてReddit(レディット)で働いていたが、今はブルックリンのアート集団Mschf(ミスチーフ)のソフトウェアエンジニアで、元々は2021年、ワードパズルに熱中していたパートナーのために、一緒にプレーするWordleを作った。

ウォードル氏は、長年他の創作活動のホームにしていたウェブサイトでWordleを提供しているが(powerlanguage.co.uk、英国時代のものが復活)、そのゲームを何げなく家族と共有した。その後、何人かの適切な友人に見せた。しかし、よく知られているように、スターが揃っていると人気に火がつくのは簡単だ。瞬く間に大騒ぎになった。

数週間のうちに、ゲームのプレイヤーは1000人未満から200万人に増えた。

「私が(最初に)作ったゲームを、今皆がプレイしているんです」と、氏はTechCrunchとのインタビューで述べた。「それは決して、私が最初に意図していたことではありませんでした」。

急激に成長にウォードル氏は驚いている。ミスチーフ(物議を醸しているLil Nas X[リル・ナズ・X]氏の「血が入った靴」のような大胆な作品で知られる集団)の仕事をしている彼は、自分の作ったものについて人々が言っていることを見て「夢でも見ている」ように感じることがある、とTwitter(ツイッター)で述べている。

しかし、ウォードル氏は主催者ではないし、今の時点で特に起業家精神にあふれているわけでもない(つまり、良い意味で彼のアプローチは自然体なのだ)。そのことが、思いがけない結果につながっている。

人々が疑ってきたことの確認が取れた。ウォードル氏は、Wordleを次のレベルに引き上げようとする投資家のアプローチを受けてきた。(注:ウォードル氏の雇用主であるミスチーフは、Founders FundのようなVCのバックアップを受けている。したがって、これはこれからの1つの方向性を示す興味深い型になる可能性がある)。しかしウォードル氏は、Wordleで利益を得ようとしているわけではない。

「私は、Wordleをフルタイムの仕事にするつもりはありません。Wordleに投資したり、その類のことをしたりするつもりもありません。現状にとても満足しています」と、ウォードル氏はTechCrunchに語った。「もし(ベンチャー基金が)現れるとしても、後援者がいるか、その種の背景を持つアーティストとしての関連においてだと思います」。

ウォードル氏が今後について考えている間に、そのゲームの成功を見て、それほど健全ではない他のタイプの大きな影響が現れている。大勢の開発者がそのゲームをコピーし、Wordleがウェブ上でおとなしくしていることを利用して、アプリを作って利益を得始めている。

ウォードル氏自身は自分のIPをどうやって守るか、あるいは守るかどうかを考える機会もあまりないうちに、他の人が彼を援護している。Apple(アップル)も、Wordleの作成者の要請とは関係なく、Wordleをコピーしたアプリを削除しているようだ

皮肉なことに、それと同時にウォードル氏も、他の人からWordleのコンセプトを盗んだとして糾弾されている。英国のゲーム番組「Lingo」(リンゴ)のホストは、そのゲームが「我々のゲームのように見えるし、我々のゲームのように動くし、我々のゲームのような匂いがするし、基本的に『我々のゲーム』だ」と考えて、彼がリンゴに誉れを帰していないことを公に非難している。

しかし、ウォードル氏は金銭や名声のためにこのゲームを作ったわけではない。Wordleを作った理由と、それ以降の繰り返しがいかに少ないかを考えれば、こうしたことはすべて的外れのように思える。

「自分で作ったゲームですが、Wordleを手にすると痛みを感じます」と、ウォードル氏は我々に語った。「今日のような日は特に、本当に困惑します。そのことを考えないといけないんです」(我々が話をした日の答えは「疑い」だったが、まったく完全だ)。「気持ちの良い達成感を得ることさえ難しいのです」。

我々はジョシュ・ウォードル氏に、物事をシンプルにしている理由と、次に考えていることについて話を聞いた(以下のインタビューは、わかりやすいように要約されている)。

TC:Wordleで人気があるのは、1日に1回しかプレーできないという点だ。これは、過去に人気に火のついたFlappy Bird(フラッピーバード)のようなゲームとは異なる。Flappy Birdは結局、開発者によって削除された。病みつきになるからだった。1日数分しか時間を取らない性質のゲームを作ることは、どれほど意識していたか?

JW:パートナーと私はNew York Times(ニューヨーク・タイムズ)のワードゲームをたくさんプレイするが、そうしたゲームは、1日に1つという型に従っている。しかし、考えてみるとおもしろいのは、Wordleでプレイできるのは1日に1つだが、同じ日に皆のワードが違っていたら、つまりワードはランダムだがそれでも1回しかプレイできないとしたら、今のように人気が出ることはなかったのではないだろうか。要は、パズルは1つで、それを皆が解こうとするということだ。Flappy Birdのようなゲームだが、際限なく注意を奪うアプリやゲームには少々懐疑的だ。私はSilicon Valley(シリコンバレー)で働いていた。なぜそうなのかはわかっている。Wordleの場合は、実際のところ、拡大目的ならしないであろうことをあえて行った。そして奇妙なことだが、そのことが拡大につながったのだと思う。しかしとても運が良かっただけで、適切な時に適切な場所にいたに過ぎない。人は何も求められないことが明らかなものに対する欲求を持っていると思う。人はそういうものがすごく好きなんじゃないだろうか。

パートナーと一緒にプレーするために作ったゲームが、どうして一躍、センセーションを巻き起こしたのか?

夏に英国に戻っていたとき、そのゲームを家族と共有したところ、家族はとても気に入って、家族のグループチャットの話がそれるようになったので、Wordleのチャンネルを別に作る必要があった。その時は絵文字のグリッドはなかったので、ただチャットに入って「3回でワードをゲットしたよ」とか何とか言っていた。米国の何人かの友人に紹介したところ、Andy Baio(アンディ・バイオ)が自分のブログで共有した。その後、ニューヨーク・タイムズのニュースレター作成者が「ほら、これ楽しいよ」といった感じで感謝祭の補足説明に含めた。それがどういうわけか、ニュージーランドで、それからオーストラリアで大人気になり、オーストラリアのGuardian(ガーディアン)のジャーナリストがそのゲームのことを書いた。私が覚えている限りでは、その時はじめて、次の日にログインして、前日に8万人がプレイしたことを知った。ニュージーランドの初期の利用者の1人が絵文字グリッドのアイデアを思いつき、手作業で入力して、結果をツイッターで共有した。それで私は、それをアプリ自体に統合することにした。明らかに、これには大きなインパクトがあった。

何百万もの人がPower Language(パワーランゲージ)のサイトでプレーしているが、そのトラフィックはどう処理しているのか?

とても簡単なことだ。本当に、ただウェブサイトがあって、JavaScript(ジャバスクリプト)をいくつかダウンロードするだけだ。一度ダウンロードすれば、もう何もする必要はない。電話をオフラインにしてプレイを続けることもできる。だから、バックエンドは何もない。自分のやり方に何か不備があれば、すぐにソースコードを見てもらうようにするので、見た人はすべてのワードがあることがわかり、そのことを調べることができる。もしバックエンドをスケーリングしなければならないとすれば、推測が送信されるたびにサーバーに移動しないといけない。もしそうなら、大変な頭痛の種になっただろう。パートナーと自分のためだけに作ったので、できるだけシンプルに作った。解のソースを調べた人がツイッターで、新聞のパズルを解いているようだと言っているのを見るが、それがすごくいい。パズルを上下逆さまにして、答えを見ることができる。自分がカンニングする場合、誰をカンニングすることになるだろうか。本当にそうしたいのなら、匿名のブラウザを開いて、今日もう一度パズルをすることができるじゃないか。リスクはとても小さい。

(最初、サイトは独立した会社によってホスティングされていて)、しばらくの間私はそこで朝起きていた、プレイする人が少なくなることを願っていた、帯域幅が限界に達しないか心配だった。Wordleの人気に火がついた後、12月の終わり頃は、まだ十分な余裕があった、プレイできる帯域幅が100ギガバイトあった。その後、元レディットの親友の1人、Kevin O’Connor(ケビン・オコナー)氏(現在はKickstarter(キックスターター)のエンジニアリング担当VP)が、Cloudflare(クラウドフレア)を私のウェブサイトの前に置くのを助けてくれた。その後、もっと最近では、費用を支払う限り無制限にスケーリングできるAmazon S3(アマゾンS3)にホスティングを移行した。

非常に多くのベンチャーキャピタリストがWordleをプレイし、結果をツイッターに投稿している。VCからの接触はあったか?楽しいゲームではなくビジネスの可能性について考えているVCもあるに違いないが、そのことについてどう思うか?

数人の人が、とてもお世辞のうまい友好的なVCスタイルで接触してきた(笑)。まだ話し合いはしていない。よくわからないんだ。前にこういう状況になったことはないし、これを無料で提供しているときにそういう話し合いがどういうものになるかはわからない。私は無料で提供するのが好きなんだ。大切なのは無料だということだ。

提案に応じて、どうなるか見るつもりは?

応じないのは愚かなことだと思うだろう?めったにないチャンスのように見える。私は、Wordleをフルタイムの仕事にするつもりはない。Wordleに投資したり、その種のことをしたりするつもりもない。現状にとても満足している。しかし、テクノロジーの仕事をするなら、たぶんテクノロジーの仕事を続けると思うけど、そういう人たちと会って少なくとも話をするのはいいことだと思う。

幸い、Wordleを運用するサーバーを維持するのに少しコストはかかるが、そうする余裕はある。

皆がオンラインで作ったものを無料で提供する必要があるとは思わない。ただ私はそういう方法で始めたというだけだ。そうすることで、続けることが容易になった。私は自分が本当に正しいと感じることをしたが、今人は「収益化したいか?なぜあれもそれもこれもしないのか?」などと尋ねてくる。

これは本当のことだ。パートナーと自分だけで一緒にプレイして本当に満足してた。そういう状況には本当に簡単に誘惑されてしまうが、私は自分を変えようとしている。その時は満足だったし、将来もそうなら幸せだと思う。1日の終わりにWordleがあって、また彼女と自分だけでプレイできれば、それで本当に幸せだと思う。

レディットで働いているときに「Button」(ボタン)と「Place」(プレイス)という2つのとてもクールなプロジェクトに携わったが、それらを作った経緯は?

私のバックグラウンドはアートにあって、おもしろいものを作ることに興味がある。ビジネス面はあまり興味がなくて、お金を払ってもらうことは想像もできない。私が作りたいものは、とても風変わりか、伝統的じゃないと思う。ビジネスとしてはあまり意味がない。もし(ベンチャー基金が)現れるとしても、後援者がいるか、その種の背景を持つアーティストとしての関連においてだと思う。

非常に多くの人がネット上でWordleに関連したミームやアートを作っているが、何かお気に入りは?

創造的な絵文字グリッドが本当に気に入っている。最近フォローし始めたアカウントには、緑色や黄色のMicrosoft Paint(マイクロソフト・ペイント)スタイルの絵がある。誰かがWordleの結果をクロスステッチにしているのを見たが、本当にすばらしい。人はインスピレーションを刺激するこういうものに関心を持ち、楽しんで、表現する。そして創造力を発揮して満足する。これは本当に驚くべき賛辞だ。私は自分でものを作ることが好きなので、自分が作ったものに人がこんなふうに反応するのを見るとすばらしい気持ちになる。

特にツイッターでゲームのことが話題になるように思うが、なぜか?

私に言えるのは、大部分のプレイヤーは実際には結果をツイッターに投稿していないということだ。Wordle Statsというアカウントがあって、ツイッターを調べて、共有されているグリッドをすべて収集し、それを翌日投稿して、こういうんだ。「よし、30パーセントの人が4回で答えた」。2日前だったと思うが、10万かそこらの集計があったとき、200万近い人がWordleをプレイしていた。

私の家族のグループように、WhatsApp(ワッツアップ)のグループで共有されているWordleもある。ツイッターが家族のワッツアップのグループになっている人もいる。しかし、プレイする人の大部分はツイッターを使わない。友人や家族とプレイしていると思う。新型コロナウイルス感染症のためにお互い会うのが難しい家族もいるし、会話の話題についていくのが難しいこともある。しかし、Wordleを始めるのに努力は要らず、ちょっと自分の結果を投稿したり、他の人の結果に反応したりすることもできる。これは、相手の人のことを考えていることを知らせる本当に励みになる方法だ。体験を共有できるんだ。

ウェブサイトを「パワーランゲージ」と呼んでいるのはなぜ?

それはオンラインで長い間使っているユーザー名で、元々は人の言葉を聞き間違えたことから来ている。若い頃、友人と私はある人にひどく られた。お互いに悪態をついていたことで られたんだ。私はその人が「パワーランゲージ」と言ったと思った。思い起こしてみると、その人は「汚い言葉」と言っていたんだが、聞き間違えた。しかし私は、悪態が「パワーランゲージ(強力な言葉)」だという考えをとても気に入って、16歳かそこらのときにするように、それをちょっと引き継いだんだ。

Wordleのコピーがあふれていることをどう思うか?アプリを作りたいと思うか?

アプリのことをよく尋ねられるが、1つの答えとして、私にはそのスキルがない。アプリの作り方を学ぶとすれば時間を投資する必要がある。やればできると思うが、自分の時間を投資することになる。それに、パートナーのためにゲームを作れば、2人で毎日ウェブサイトを使える。それは問題ない。私の目標がWordleを自分のビジネスにしたり、収益化したりすることであれば、そうすることに意味があることはわかる。しかしそうすると、たとえばプッシュ通知を送信するかどうかといった、たくさんのことに取り組まなければならない。間違いなく、プレイヤーと結ぶ契約のことを考えないといけないだろう。通知が欲しいと本当に思うか?これが最善の方法だろうか?少しWordleのことを忘れるのはどうか?

本当にすてきなことがあったので話しておきたい。何年か前に、App Store(アップストア)でWordleというゲームを作った人がいて、突然大量のトラフィックとダウンロードが発生するようになった。その人はGoogle(グーグル)で検索してニューヨーク・タイムズの記事を見つけ、ツイッターで連絡してきた。こんな感じだった。「どうも。あなたのアプローチの仕方がとても気に入りました。アプリがたくさんダウンロードされたのでお金がいくらか手に入りました。寄付したいのですが、どこにすればいいですか?」私は改めてその人に連絡を取る必要があったが、その人はこんなふうに言った。「リテラシーか何かに取り組んでいるチャリティーに寄付したいと思います」。それはすばらしいことだと私は思った。

コピーに関しては、Wordleの実際の機能について微妙な点がいくつかある。私は実際、解のリストにかなり多くの労力を注いだ。実際、かなりの時間を解のリストのフィルタリングに投資した。私にとって大きかったのは、聞いたことのない5文字の言葉がたくさんあるかどうかということだった。もし解がそうした言葉の1つだったら、相手のことを気の毒に思う。

Ringer(リンガー)は「FARTS」(ファーツ)はWordleの解ではないとレポートした。その理由は?

理由はあるが、私はWordleを見つけ、何度もプレイする喜びを知っている。その言葉が含まれていない理由はわかっているが、それは言いたくない。自分で見つけて欲しいと思う。読者の練習問題だ。(注:我々はその答えを見つけたと考えている)。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Ingrid Lunden、Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

Essentialの崩壊後、後継者OSOMはプライバシーを重視した新端末を計画する

2020年のEssential(エッセンシャル)の崩壊は、これほど高い注目を集めた家電スタートアップの敗退としては近年稀に見るものだった。2017年、泣く子も黙る人物が壮大な野心と3億3000万ドル(約377億7700万円)を投じて立ち上げたEssentialは、業界の問題やそれにまつわる失望、創業者Andy Rubin(アンディ・ルービン)氏に対する疑惑などが重なり業務停止に追いやられた。

最終的にはCarl Pei(カール・ペイ)氏が自身の新会社のために同ブランドを購入。ペイ氏は同社名を「Nothing(ナッシング)」と名づけているが「『Essential』は、同社が『Nothing』になる以前に社内で候補としていた名前の1つでした。そのために商標権を取得したのです。Essentialで何かをする予定はありません」と同氏は2022年初めに話している。

より精神的な後継者に近い存在がOSOMという形で登場した。元Essentialの社員らが設立した同社は、ここ数カ月の間にわずかに報道がなされたもののほとんど公になることはなかった。しかし米国時間12月21日、カリフォルニア州クパチーノに拠点を置く同社は、多くの人が予想していたことを正式に発表した。OSOM(「awesome」と同音)は携帯電話を開発しているのだ。

同社が開発中のOV1デバイスを見ると、少なくとも外観的にはEssential PH1を世に送り出したのと同じチームが手がけた作品であることがよくわかる。しかし同製品はモジュール関連の機能ではなく、中核として「プライバシー」を念頭に置いて設計されている。つまりユーザーがデータのプライバシーを確実にコントロールできるように設計されているのである。

MWC 2022を目前にして、それ以外の詳細はまだ明らかになっていない。そこで私は、2021年中旬に共同設立者でありCEOのJason Keats(ジェイソン・キーツ)氏にOSOMとその携帯電話の詳細について聞いてみることにした。

TC:発表は約2カ月後ですね?

JK:そうですね、詳細をお伝えするのは2カ月先になります。MWCで発表を行い、2022年の夏に出荷する予定です。今できるのは、私たちが携帯電話を作っているということの発表だけです。みなさんにはとても期待していただいており、2022年はファンのみなさんに何かをお届けしたいと思っていたので、辛うじて間に合うことができました。

TC:御社はまだ謎めいた存在であるため、どういった人のことをファンと考えたら良いのでしょうか。

JK:驚いたことに、Essentialのファンは初期の頃からとても支援してくださっており、将来に向けて今私たちが作っているものに対しても大きな期待を寄せてくれています。それから今後、根強いAndroidファンのみなさんも多く獲得することができると思います。現在、Pixel以外ではフラッグシップ的なAndroidフォンが存在しません。そこを改善し、またプライバシーを重視したソフトウェアをすでに開発していますし、さらなる改良を続けています。

TC:既存のチームの中で、Essentialから移ってきた人は何人いますか?

JK:EssentialでPH1を作ったときは総勢30人くらいだったと思います。そのチームから15人ほどが参加しています。デザイン、エンジニア、プロダクトデザイン、ソフトウェアエンジニアリングなど、本当にコアなメンバーが揃っています。

TC:チーム全体の規模はどうですか?

JK:約30人です……3分の2以上がエンジニアです。

TC:事実上、ゼロになってしまった会社をどのように再建したのですか?

JK:Essentialで起こったすべての欠陥や出来事の中で、私が(ルービン氏を)永遠に称賛することができるのは彼のリクルート能力です。彼は信じられないような才能を持った人材を採用してきました。彼から会社が潰れると聞いたとき、私は次の行き先を模索しました。Google(グーグル)やApple(アップル)では働きたくないし、Amazon(アマゾン)に行きたいわけでもありません。ここには密接に協力し、一緒に苦難の道を歩んできたすばらしいチームがあります……。

私たちは(Essentialの)最大の問題が、おそらく焦点の欠如であることに気づきました。私たちは目的を持つ必要があると考えました。何のために解決しようとしているのか。特に2020年の時点では、プライバシーに関する一貫した取り組みが行われていないことに気づいたのです。

TC:世間はこれ以上新しい携帯電話ブランドを必要としているでしょうか。

JK:はい、確実に必要だと思います。プライバシーの保護に重点を置いているものが必要であり、それには大きな理由があります。仮に当社がプライバシー保護のためのソフトウェアを開発しているソフトウェア会社だったら、Play Storeで公開して、人々にインストールしてもらえば良いことです。しかし、携帯電話に入れたアプリだけでは、システムに組み込まれていないため簡単に無視したり、オフにしたりすることができます。デバイスに組み込まれていないからです。それが我々のやるべき仕事です。当社はOEMメーカーであり、Qualcomm(クアルコム)のTrustZoneにアクセスでき、そのシステムソフトウェアにアクセスできるため、ユーザーが使用を選択できる真のプライバシー重視のソフトウェアを構築することができます。どちらにしても、ユーザーに選択肢を与えることが重要なのです。

TC:プライバシーを主なセールスポイントとするこの携帯電話に飛びついてもらうというのは、難しいことだとは思いませんか?

JK:米国においては、AppleユーザーではなくAndroidユーザーをターゲットとしています。その場合、Androidユーザーにはブランドロイヤリティがあまりなく、ユーザーはいろいろと試してみたいと考えています。プライバシーに関してはすでに複数のパートナーと提携し、プライバシーのために彼らのソフトウェアやハードウェアを使用している人についての高度な統計データを共有してもらっていますが、そこから見えた数字は驚くべきものでした。プライバシーへの大きな需要があり、人々がプライバシーのためにお金を費やしていることがわかったのです。

TC:現実的にはどのくらいの台数を想定していますか?(米国、カナダ、そしてヨーロッパ全体に)幅広く見据えているようですが、Essentialの数字は予想されていたものとは違っていたようですね。

JK:おもしろいことに、Essentialが開始した時の初年度の目標は10万台でした。結果、初年度のエンドユーザーへの販売台数は30万台弱でした。最大の問題は、(ルービンが)多額の資金を調達していたため200万台の出荷が期待されていたということです。10万台を想定してスタートし、30万台売れたとしたらそれは大成功と言えるでしょう。要はどのような指標を使うかということなのです。OSOMの場合、初年度に20万台売れたら大喜びでしょう。私たちはこれから長い間ここにいる予定ですから。

TC:(Essentialでは)外部からの期待が大きすぎたために物事が崩れてしまったのでしょうか?

JK:何が悪かったのか話し始めれば本が一冊できてしまうほどです。些細なこともたくさんありました。

TC:ひと言でまとめると?

JK:トップが下した多くの決断は、我々が成功するためには直感に反するものでした。

TC:御社の資本金については560万ドル(約6億4000万円)を調達したことが報告されています。これまでの資金調達はどのようなものでしたか。

JK:2000万ドル(約22億9000万円)を確保しました。そのうちのいくらかは投資家によるもので、一部はチャネルパートナーからの予約注文でした。初年度にサポートできるだけの最大数に近い注文数をすでに受けています。投資家の大部分は私と共同設立者のWolfgang(ウォルフギャング)から来るものが多く、外部のVCはすべて主にカナダの企業でした。

TC:最初のシード資金に加えて、シリーズAはありましたか?

JK:現在、シリーズAの真っ最中です。

TC:Playground(プレイグラウンド)は関わっていますか?

JK:いえ、彼らとはじっくりと話をしました。ブルース、マット、ピーターといった同社のチームとは今でもとても良い友人です。今でもアイデアの相談相手として頼っています。

TC:会社が正式に設立されたのはいつですか?

定款は2020年4月20日に提出されました。

TC:社名を「Awesome(すごい)」という単語と同音にした理由は?また名前と文字とどちらを先に思いついたのですか?

JK:(ルービン氏)からEssentialが潰れると聞いた20分後には「よし、自分のことは自分でやろう」と決意していました。私は分かりやす過ぎるものが好きではありません。家中に配線やプラグなどあれこれあって気が狂いそうになりますよね。それで別の製品のアイデアを思いついたのですが、これはいずれ作るかもしれませんし、作らないかもしれません。携帯電話とは何の関係もない、ただクレイジーなアイデアです。でもそのアイデアは目に見えないし、頭にも残っていない。スタートレックで未来のテクノロジーの話をするときに、人々や一般の消費者が本当にイメージするものは何かというと、何かがエーテルの中から答えてくれるという感覚だと思うんです。壁から20cm離れたところの机の上の置いてある、長さ3メートルのケーブルがついた物ではありません。アイデアはエーテルから出てくる「Out of Sight Out of Mind(目に見えず気づかない)」というものでした。ああ、OSOMか。じゃあ「Awesome」と呼ぼうと思い、香港のホテルから登録しました。

TC:そのような初期のアイデアを今応用しているものはありますか?プライバシーは当然その1つでしょうか。

JK:当社のソフトウェアを構築する方法として、まったくその通りの考えを応用しています。目に見えず、気づかないというのが我々の発想ですから、安全を確保したいときには、自分のデバイスが安全を確保してくれているということをただ信じればいいのです。

TC:現在は米国の会社なのでしょうか?

JK:はい。当社はデラウェア州のCコーポレーションです。他のハイテク企業と同じように、おそらくすべてがまったく同じ住所で登録されています。

TC:カナダ政府に対してインセンティブについて話をしているようですが……今後もクパチーノに本社を置き続けるつもりですか?

JK:今のところは宙に浮いた状態です。米国法人であるOSOM Productsは存続し続けますが、いずれ本社はカナダに移すかもしれません。

TC:EssentialとOSOMの共通点は何ですか?哲学、または美的感覚など。

JK:美的感覚は100%共通しています。同じデザイナーDave Evans(デイヴ・エヴァンス)と私がインダストリアルデザインを担当していて、PH1の後継機とは考えていませんでしたが、最初のプロトタイプを見たら「明らかに同じチームがデザインしたものだね」と気づきました。素材の面でも外観の面でも、同じスタッフが引き継いでいます。ソフトウェアチーム、特にAndroidとセキュリティアップデートに関しては、Essentialの超高速アップデートを担当したチームがここOSOMにいます。

TC:広告については、世に溢れる800社の携帯電話メーカーとの差別化をどのように図る計画ですか。

JK:とても楽しみにしているのでまだ何も教えたくありません。でも、こうとだけ言っておきましょう。当社の幅広いチームに同キャンペーンのアイデアやドラフトを見せると、当初からEssentialにいた人たちはみんな「なんでこれを今までやらなかったんだろうと」と言います。差別化のためには、マーケティングに費用をかけなければなりません。調達した資金の大部分がマーケティングに使われています。

TC:スペック面では何を期待したら良いですか?

JK:ハード面でもソフト面でも、フラッグシップモデルといえるでしょう。

TC:最初のハードとして価格を抑えるのは難しいですか?

JK:そんなことはありません。私がEssentialから引き継いだチームは、サプライチェーンに関しては世界でも最高レベルです。パートナーも驚くほど協力的で、驚くようなレートを手に入れることができました。「AppleやGoogleと同じ価格で提供して欲しい」という内容のミーティングを何度か行ったことがあります。

TC:では他のフラッグシップモデルと似たような価格となっているのですね。

JK:1000ドル(約11万円)を大きく下回ることになるでしょう。

画像クレジット:OSOM

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

アマゾンのワーナー・ヴォゲルスCTOがまだ引退できない理由

Amazon(アマゾン)のWerner Vogels(ワーナー・ヴォゲルス)氏がCTOに就任してから16年という月日が経つが、御年63歳の同氏の頭に引退の文字はまだない。「まだまだやるべきことがたくさんあります」。先にラスベガスで開催された同社の年次カンファレンス「re:Invent」で私が行ったインタビューで同氏はそう話す。「今自分たちがやっているすべてのことに夢中になっています。夢のような仕事ですね」。IT予算のうちクラウドに使われている割合がまだ少ないことを指摘し「テクノロジー面ではさらに多くのことが計画されているので、私はどこにも行きませんよ」と同氏は意気込んでいる。

re:Inventを開催することにより、対面式カンファレンスの復活という大きな賭けに出たAmazon。同イベントには通常6万人以上の参加者が参加し、1週間にわたってラスベガス・ストリップが占拠される。2021年の参加者数は約2万7000人となったが、それでもこの人数は新型コロナウイルスの蔓延前の平常時のイベントとしても最大級の技術カンファレンスである。

長年AWSのCEOを務めてきたAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏がJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏率いるAmazonのリテール部門のCEOに就任したことにより、Adam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏がAWSの指揮を執るようになったが、今回のカンファレンスは同氏をトップに迎えて以来初のイベントとなった。セリプスキー氏は今回のイベントで、一部の人間に期待されていたようなAWSの大きな戦略変更を発表することはなかったのだが、それもそのはず、ヴォゲルス氏によると、新しいリーダーシップ下ではまだ大きな変化が何も起きていないのだという。

関連記事:アマゾンのベゾス氏が退任、新CEOにAWSトップのアンディ・ジャシーが就任

「もちろんアダムのことは知っていましたよ。彼はAWSの2年目、あるいは1年目に参加してくれました。その後はご存知のようにTableau(タブロー)に行ってしいましたが、また戻ってきてくれました。彼はこのビジネスを熟知していますから、とてもすばらしいことです」とヴォゲルス氏は話しており、またセリプスキー氏がTableauのCEOに就任する前から、セリプスキー氏とジャシー氏が長い間緊密に協力し合っていたことにも言及した。「ただ継続的に取り組んでいるのみです。私たちを取り巻く世界は当然変化しており、彼が対応しなければならないことはたくさんあると思いますし、AWSについても同様です。我々のビジネスは、現在の栄光に満足してゆっくり座っていられるようなものではありません。革新を続け、自らも革新していかなければならないビジネスなのです」。

画像クレジット:AWS

基調講演の中で、AWSには現在何百種類ものサービスが存在すると言及したヴォゲルス氏。その理由はどんどん欲しがるお客のせいだと言って笑いをとったが、実際のところ同社がどのサービスを進めるのかを判断するのが年々難しくなっており、これは現実的な問題にもなっている。AWSはフレームワークではなくプリミティブを構築することを信条としているとヴォゲルス氏はいうが「しかしそれだけではなく、過去数年間に見られたように、私たちにはより多くのソリューションを構築し、顧客のためにより多くのパッケージ化されたものを構築するチャンスがあると思います。AWSには組み立てなどを得意とするビルダー面もまだ多くありますが、データレイクを必要としているお客様もかなりの割合でいらっしゃいます」。その中には、同社のマネージドサーバーレスデータ統合サービスであるAWS Glueのようなプリミティブを利用して、他のソリューションを構築するAWSの内部顧客も含まれている(もちろん、これらの内部チームからのフィードバックサイクルは非常に迅速である)。

すべてのサービスにおいてユーザーは常にあらゆる新機能を求めているが、同社の開発チームのロードマップはそれに付随している。AWSはしばしば、顧客がサービスをどのように利用しているかに基づいてロードマップを変更するのだとヴォゲルス氏はいう。例えばAWSのNoSQLキーバリューデータベースであるDynamoDBの場合、開発チームは顧客がセカンダリインデックスを必要としていることを知っていたものの「顧客がこれらのデータベースをどのように使い始めるのかを正確に理解するために、あえてインデックスを使わずにサービスを開始することにしました。セカンダリインデックスはすでにロードマップに入っていましたが、実際にはお客様はセカンダリインデックスよりもセルレベル、ロウレベルのセキュリティを求めていました。お客様次第でロードマップを変更することで、より健全なアプローチができるのだと思います」。

クラウドへの移行というテクニカルな部分だけでなく、それにまつわるあらゆることに頭を悩ませている伝統的な大企業も、同社にとってのもう1つの顧客層だとヴォゲルス氏は説明する。そのための組織体制をどのように構築するか、というところでAWSのパートナーネットワークの出番となるわけだが、最近ではこうした企業文化的な変化についてもAWSに直接依頼されるケースが増えているという。

2019年11月7日、ポルトガル・リスボンのAltice Arenaで開催されたWeb Summit 2019の最終日、MoneyConfステージに登場したAmazonのCTO、ワーナー・ヴォゲルス氏(画像クレジット:Harry Murphy/Sportsfile、Web Summit用、Getty Images)

5年前、クラウドへの移行が進んだ主な要因は、開発者の生産性向上とハードウェア所有からの脱却だった。「最近となっては一番の理由はセキュリティです」とヴォゲルス氏は指摘する。「多くの企業、特に大企業は自分たちで自分たちを守ることが不可能だということに気づき始めています。企業がそこまで投資することができなくても、AWSが作って差し上げることは可能です。そのためセキュリティがクラウドへの移行の大きな原動力となっているのです」。

数年前までは企業がクラウドのセキュリティを懸念し、それが理由でクラウド移行をためらっていたことを考えるとかなりの進歩である。それはほぼ「FUD」が原因だとヴォゲルス氏はいう。「Fear(恐れ)、Uncertainty(不確実性)、Doubt(疑念)を意味するFUDです。競合他社はより良い製品を作る努力をする代わりに、嘘の情報を流して恐怖や不確実性を煽ることを好むことがあります。標準的なIT企業は皆、本屋でサーバーを買うなんて頭がおかしいんじゃないかと思っていたのでしょうが、蓋を開けてみたら、誰もが本屋からサーバーを買いたかったのです。人々はAmazonが初めからテクノロジー企業であることに気づいていなかったのです」。

画像クレジット:AWS

ヴォゲルス氏自身も入社前はAWSに対して非常に原始的な見解を持っていたという。学者であった同氏が初めて講演に招かれたとき、同氏はAmazonのことをよく知らなかったという。実際、サービス開始当初はエンジニアの採用が最大の課題の1つだったと同氏は振り返る。「しかし裏側を覗いてみると、Amazonでは分散システムの教科書に載っているようなことが、それもこれまでに見たことのないようなスケールで起きていることに気づいたのです」。

クラウドのセキュリティに関しても、初期の頃は同じような誤解があったという。また、ヴォゲルス氏自身がAmazonの規模について抱いていたような純粋な誤解の他に、別の種類の誤解もあったという。それが「競合他社に対する悪意ある誤解」だ。「今ではとても良いパートナーとなっている当時の競合他社の1社は、以前実際に営業会議で『誰がAmazonからサーバーを買いたいというんだ。まったく馬鹿げている、心配する必要はない』と言っていました。今では状況が違います」。

大企業のCIOやCTOなどの意思決定者と話をしていると、高度なクラウド環境の醍醐味を最大限に活用するためにマルチクラウドにしたいという話がよく出てくる。AWSをはじめとする大手クラウドベンダーは現在、これを実現するために自社の技術を使って競合他社のクラウド上でコンテナやサービスを実行・管理できる何らかのサービスを提供しているが、実際にはこれをしっかり実現できている企業は多くない。実際にはこれでは最低共通項に固定されてしまうという声を聞くことが多く、ヴォゲルス氏も同じことを感じている。

「もし私が大企業のCIOであれば、部下に全部見てみるように指示するでしょうね。私が話をするようなお客様がマルチクラウドに本当に興味があるのであれば、使いたいと思うクラウドの特出した機能が何であるかを調べるべきなのです。開発者にさらに3つ、4つのクラウドに透過的に取り組めとはいうべきではありません。最低共通項に落ち着いてしまうからです。結局クラウドをデータセンターとして利用することになり、せっかくのメリットが失われてしまうのです」。

他のサービスを評価するときと同様に、お客様は出口戦略を持ちたいと考えていると同氏は主張する。実際には単一のクラウドプロバイダーを利用しつつ、必要に応じて他のクラウドに簡単に移行できるようなシステムを構築するということだ。

多くの企業にとってクラウドへの移行とは、いまだ既存のサービスを持ち上げて移行することを意味している。しかし最近では新しい開発パターンにも目が向けられるようになっている。基調講演の中でヴォゲルス氏はサーバーレスのパターンを使うことを特に強調していたが、実際に今後はそれがデフォルトのようになるべきだと考えている。私がこの点について質問すると「ゼロから構築するのであればそれが賢明ですね」と回答した同氏。その上で現在のコンピュートプラットフォームには、インスタンス、コンテナ、サーバーレスの3種類があることも指摘する。SAPシステムであればおそらくEC2上の専用インスタンスへの移行が一般的で、また小さなブロックに分解できる自社ツールなら、コンテナやKubernetesに適している。そしてまったく新しいサービスには、サーバーレスが適しているということだ。

「おもしろいことに、AWSのサーバーレスプラットフォームのLambdaを発表したとき、当時は若い起業家やデジタル系の人間が喜ぶのだろうと思っていました。しかし結果的には、Lambdaの最大のユーザーは大企業だったのです」。ヴォゲルス氏はこれはサーバーレスによって企業がコストをよりコントロールできるようになったからではないかと推測している。

また、サービスがアイドル状態の間はリソースを消費しないサーバーレスでは、持続可能性の確保が見込めるのだと同氏は指摘する。AWSは先週、ヴォゲルス氏が基調講演で発表したように、サステナビリティを自社のフレームワークの6番目の柱に指定している。AWSはクラウドの持続可能性のための共有責任モデルを信じており、2025年までに100%再生可能エネルギーで運営することを計画している。しかし同時に、クラウドを最も効率的に利用する方法を考えるのはユーザー次第なのである。

画像クレジット:AWS

「私はお客様にも何ができるかを考えてもらうよう、呼びかけています。技術的なことだけではなく、例えば少しでも軽いウェブサイトに変更するのはどうでしょう。画像の容量を5メガバイトではなく、50キロバイトにするのは無理ですか?このようなことです。アプリケーションの設計やウェブサイトの設計において、実際に使用するリソースが少なくて済むようなことを意識してみたら良いのです」。ある意味、エンジニアの常識に反する考え方ではあるが、何を最適化するかが問題なのだと同氏は考えている。多少のレイテンシーはコンバージョン率を下げるかもしれないが、持続可能性の目標を達成するには効果的なのである。

「2、3年後にはより多くの開発が行われるでしょうし、もちろんパフォーマンスを測定するためのツールも必要になるでしょう」。しかし、何を最適化したいかを決めるのはお客様自身であると同氏はいう。「お客様が何をすべきかを指示するつもりはありません。ゲートキーパーなど必要ないからです。人はどんな方法でもイノベーションを起こすことができるはずですが、自分で意識する必要があるのです」。

今後の展望として、ヴォゲルス氏が精力的に取り組んでいる技術の1つが量子コンピューティングである。2021年初め、AWSは超伝導量子ビットに賭けて、独自の量子ハードウェアの構築を開始すると発表した。現時点では、IonQ、Rigetti、D-Waveなどの主要な量子プレイヤーと提携し、それらのハードウェアやサービスをBraketのサービスで利用できるようにしている。しかし、GoogleやMicrosoftと同様に、AWSも古典的なチップと同じく、独自の量子ハードウェアを構築したいと考えているのである。

「ハードウェアとソフトウェアが互いに歩調を合わせている分野の1つだと思います。ハードウェアの改善がソフトウェアの改善を生み、ソフトウェアの改善がハードウェアの改善につながります。例えば、量子に関するソフトウェアツールは、古典的な計算を行うためのソフトウェアツールには到底及ばないと思いますが、そのためにはアプリケーションの構築を始める必要があります。Amazon Braketを使ってお客様は調査を始めることができるのです。どのようなアルゴリズムを使っているのか?そのためのソフトウェア開発はどうしているのか?それをどうやって追跡するのか?そのための運用はどうするのか?といったことです。ハードウェアにも影響を与えるような、解明すべきことがたくさんあります。3年後の私たちがどうなっているかとても楽しみです」。

どうやら世界的なロックダウンが再度起こらない限り、re:Invent 2024の最終日にはヴォゲルス氏がステージに立ち、AWSの量子コンピューターの最新の改良点や、会場に訪れた開発者たちがそれを最大限に活用する方法について話すことになるのだろう。

画像クレジット:Noah Berger/Getty Images for Amazon Web Services / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Dragonfly)

Slackのワークスペースに閉じ込められるという悪夢。書評「Several People Are Typing」

10月、Calvin Kasulke(カルビン・カスルケ)のデビュー小説「Several People Are Typing(……が入力しています)」で、私たちは新たな恐怖を感じる。もし自分が職場のSlackのワークスペースに閉じ込められ、Slackbotが自分の身体を乗っ取ってしまったら?カスルケ氏は「資本主義は悪であり、身体は牢獄である。しかし、身体を持たないことは身体を持つことよりももっと悪い」という。

「Several People Are Typing」は、すべてがSlackのメッセージのスタイルで記述されている。作者は、PR会社に勤務する登場人物1人ひとりのタイピングの特徴を記したスタイルガイドまで作成して、登場人物を実在する人間のように描いている。彼らはSlackのワークスペースの中で、ドッグフードのプロモーションの問題、社内恋愛、ジェラルドが「在宅勤務」をしている間に彼の窓際のデスクを誰が使うかという争いなどを話し合う。もはや自分の身体をコントロールできない(身体を持っていない)ジェラルドはオフィスに通勤することはできないが、上司は、ジェラルドがかつてないほど生産性を上げているので気に留めていない(文字どおりSlackの中に閉じ込められているのに、仕事以外に何ができるというのだ?)。ジェラルドが仕事から離れられるのは、Slackbotによってジェラルドとsunset.gifが一体化したときだけだ。Slackユーザーがgifファイルをアップロードするたびに、ジェラルドは彼らのワークスペースに移動する。sunset.gifと一体化しているのも大変そうだ。

TechCrunchの取材に対し、Slackはコメントを拒否したが、カスルケ氏はSlackはこの本を気に入っているはずだと考えている。というのも、この本の出版社であるDoubleday Booksは、(出版を受けて)Slackを使ったプレゼント企画を実施したからだ。しかしながら、この小説はSlack自体ではなく、私たちのワークスタイルを表現している。

The Atlanticは最近の記事で、Slackを「史上初めて、ユーザーに『自分はカッコいい』と思わせることに成功した企業向けのソフトウェア」と評した。カスルケ氏は、Slackスタイルの本というのはギミック(しかけ)であることを認めるだろうが、実際よくできたギミックである。Good Morning America’s Book of the Month(グッドモーニング・アメリカの「今月の1冊」)に選ばれたということは「肉体を得たばかりのSlackbotがミートボールサンドを早食いして、身体を持って生きることが期待したほど良いものではない、ということを身をもって知る」という問題作を、想像以上に多くの人が読んでいるということだ。しかし、カスルケ氏曰く「人間は自分が思っている以上に奇妙な存在」であり、この小説が、日によっては文章よりもチャットを見ることが多いという人々の心に響くのも不思議ではない。

Slackのメッセージ形式で綴られるこの本を参考に、TechCrunchはカスルケ氏にテキストでインタビューを行った。是非楽しんで欲しい。

amanda at 3:08 PM

Slackを使った背景や、Slackのメッセージだけで本を書こうと思った経緯を教えてもらえる?

calvin at 3:08 PM

この本を書いていた頃、僕はコンサルティング会社で仕事をしてた。Slackはしょっちゅう使ってたよ

毎日大量のSlackを書いてた。仕事に関することの他にも、Knicks(訳注:ニックス、バスケットボールのチーム)がプレーオフに進出すると思うか?とか同僚にDMしたりしてたよ

僕は脚本を書いていたこともあるけど、業務用のスラックとは長くてエンドレスな芝居のようなものだ

amanda at 3:10 PM

そうね、この本のおもしろいところはSlackで書かれるような会話しか書けないというところかしら。でもSlackではなんでも起こりうるから、私は本の登場人物がSlackでNSFW(訳注:Not Safe For Work、職場では閲覧注意)なことをチャットしていても驚かなかったわ。マーケティング会社のSlackでは当然のことでしょ?

理論上は上司はSlackのDMをチェックできるって知っているけど、みんな上司に見られたくないことをSlackでDMしてるわ

calvin at 3:11 PM

その通り!仕事の話ばかりしてると思うなんて合理的じゃないよ

業務用のSlackなんて、仕事上のコミュニケーションでは仕事内容しか書いちゃいけないっていう考え方に屈しているようなものだ

楽しみながら仕事をしちゃいけないっていうのかな?

みんなが見れるチャットとプライベートなDMには大きな違いがあって

こういった違いを書き分けるのは楽しかった

公の場で仕事をしている自分、グループDMで仕事中の自分、1対1のDMでの本来の自分は全部違うんだ

仕事では猫かぶってるけど

時々素が出るけど

amanda at 3:13 PM

Slackの言語学ってとってもおもしろいわよね。個人個人のタイピングの癖とか、相手によってどんな風に変わるかとか

(このインタビューもチャット形式で行うことで、これを実証している。)

calvin at 3:16 PM

笑。スタイルガイドも作った

誰がどういう風にタイピングするかっていうスタイルガイド

amanda at 3:17 PM

スタイルガイドはとっても良かったと思うの。だって、チャットだけで誰が書いているのかわからなければ、この本は成功しなかったじゃない?

でも、IRL(訳注:in real life、現実世界、現実では)ではチャットだけでどんな人かを判断しなきゃいけないことも多いと思うの

calvin at 3:18 PM

この本は全体がチャットで構成されていてそれぞれ書き分ける必要があったんだ。だから全員分ルールを作ったんだけど、普通人ってそんなに一貫性がないから、ルール通りにチャットしないこともしょっちゅうだし句読点を工夫した方が効果があることもあるんだよ

そうそう今ではオンラインでしかあったことのない仕事仲間がいっぱいいるよ、ヒュー!

amanda at 3:19 PM

この本は「ギミックみたい」って思われがちだと思うけど、びっくりするぐらい実生活に当てはまるわよね

びっくりといえば

この本って……その……ホラーなの?

悪役のSlackボットってどうやって思いついたの?

calvin at 3:20 PM

それがギミックだよ!ギミックって楽しいだろ?それと、本が単なるギミックで終わらないように、プロットや感情、思考、考察などの肉付けのりょほうを頑張ってみた

ごめん、両方だ

ちょっとわかりにくいかな?

Slackボットね

どうやったらジェラルドがSlackに閉じ込められているっていう状況を盛り上げられるかって考えて、現実世界の身体の運命を使えばプロットを強調できると思ったんだ

Slackのチャットのスタイルは保ったままで、読みやすく

amanda at 3:22 PM

Slackボットは食べることが好きなのね?

calvin at 3:23 PM

ボットは生身の身体で物理的な世界を楽しんでいる。ジェラルドが四六時中書いていたのと同じように

amanda at 3:23 PM

個人的にはあまりSlackボットを使ってなかったけど、もう絶対にボットは使えないわ

calvin at 3:23 PM

そうかい?Slackボットの動機ははっきりしてるよ。倫理観は持ってないから、文字どおり非道徳的なんだけど

まあそうだね

amanda at 3:24 PM

ある日突然自分がロボットだと気づいたら……パニックになるわよねえ

脱出してミートボールサンドイッチを食べようとするかも

Slackボットみたいに(ネタバレ注意)

他にもいろいろやってるけど

calvin at 3:24 PM

生身の身体があったらミートボールサンドイッチは絶対食べたい

煩わしいこの世で生きていたい理由トップ5だね

amanda at 3:25 PM

何が問題かっていうと、あなたが以前言ってたように「常時オンラインでなければならないと感じるような仕事では、いずれにしてもスラックから抜け出せなくなる可能性がある」ってことだと思うの

ジェラルドが「ほんとにSlackから出られなくなったんだよ!」と言い始めたのに、誰も彼を助けてくれないっていう話があるわね

みんな「ヘンなの」と思ってるだけで、上司はジェラルドの生産性が上がってるから気にもしていない(ジェラルドはSlackから逃げられないんだから、当然ね)

calvin at 3:27 PM

A.あまりに荒唐無稽。B. 現実だとしても魔法使いでもないただの人間になにができるか、ってことかな

自分だって会議に出たりメールを出したりメモを作ったりしなきゃいけない。自分はゴーストバスターでも魔法使いでもない。現実だとしてもジェラルドを助けることはできないだろうね、本当のことだとは信じてないんだから

もしジェラルドを信じるとしたら……自分にとっていろいろな意味でまずいことになるんじゃない?

amanda at 3:29 PM

Slackの人にどう思うか聞いてみた?

calvin at 3:30 PM

DoubledayとSlackは一緒にプレゼント企画をしてたよ

amanda at 3:30 PM

あら、すてき

calvin at 3:30 PM

オフレコで連絡をもらったことはあるけど

みんな超喜んでるって誰かが言ってた

プレゼント企画ってことは、本が欲しい人もいるんだよね(笑)

本を読んでSlackボットが怖くなったら知らないけど

amanda at 3:31 PM

Slackが悪いって言ってるんじゃなくて「資本主義とワークライフバランスの欠如が悪い」って言いたいんじゃないの?

calvin at 3:31 PM

資本主義は悪だし、身体は牢獄。でも身体を持たないことは身体を持つことよりももっと悪い

amanda at 3:31 PM

悪い労働条件はSlackやGmailが原因なの?

悪い上司がいけないんじゃないの?

よくわかんない!

calvin at 3:32 PM

Slackのことは非難してないよ、おもしろいプラットフォームだし

amanda at 3:32 PM

Slackの方がGmailより良いわよね。Slackだとこんな風にチャットできるけどGmailだったら絵文字も使えないしきっちり書かなきゃいけないし

calvin at 3:33 PM

労働条件は上司の要求と労働者の我慢によって決まるんだ

それから、この2つに影響を及ぼす経済や労働環境みたいなやつ

amanda at 3:35 PM

もう1つ聞きたいんだけど

GMAの今月の1冊ですって???

もう先月だけど

なにがどうなってるのか気になるわ

本当に良くておもしろくて、考えさせられる本だから超クールだと思うんだけど……ヘンじゃない!?

GMAを読んでる人って私が思っているよりヘンなのかしら……

calvin at 3:38 PM

そう、9月だね!

僕が一番驚いたよ!

amanda at 3:39 PM

ヘンだとは思うけど、私たちの現実の生活に一番近いのかも

calvin at 3:40 PM

僕はこの本に自信を持ってるから、お世辞じゃないと良いなって思ってる

GMAのブッククラブに選ばれたり、ニューヨーカーにレビューが掲載されたり、反響が大きくて本当にびっくりだよ

amanda at 3:41 PM

驚くのも当然だわ、いえ、本当に良い本だとは思うけど……一般的な本とはちょっと違うわよね

calvin at 3:41 PM

人って自分が思っているよりもヘンなんだろ?きっと。それにみんなテキストやチャットやグループDMなんかには慣れっこだし

amanda at 3:41 PM

人は自分が思っているよりもヘン、って良いわね

calvin at 3:42 PM

だからちょっとぐらいヘンな本でも読者はOKなのかも

amanda at 3:42 PM

この本が普通の本と同じように書かれていたら、こんなに刺激的でおもしろいものにはならなかったでしょうね

calvin at 3:42 PM

読み方を学習しながら読めるようにしたんだ

ヘンなことをするときにはルールが必要だから

もうみんなオンラインに慣れてるから、Slackを使ってなくても読めるでしょ

amanda at 3:45 PM

この本で気に入っているのは、ワークライフバランスや自分の生活におけるテクノロジーの役割などにとてもまじめに考えさせられることと、もしSlackボットがミートボールサンドイッチを食べていたらどうしよう、という気持ちにさせてくれるところね

この本を書いたことで、Slackやインターネット、仕事との向き合い方は何か変わった?

calvin at 3:46 PM

笑。今はSlackは積極的には使ってない

通知が鳴らない方が仕事がはかどるっていうのと、自分がチャットの内容を収集してるって思われたくないから

amanda at 3:47 PM

とっても特殊な問題ね

私も、元上司だった友だちが妊娠したって教えてくれたんだけど、ツイートしないでって言われたわ。そのときはまだ妊娠を公表してなかったのよ、それに似てるわ

calvin at 3:47 PM

とてもよくある話だね

ツイートしないでとか、私が写ってる写真を投稿しないでとか、チャットの内容をシェアしないでとか

モラルを身につける前にやってしまいがちだけど

おもしろいメールのやり取りを投稿するときは相手の許可を得るとか、最低でも一般的なモラルは必要だね

amanda at 3:50 PM

フェイスブックが仮想空間でアバターをミーティングに参加させようとしていることについて考えたことはある?

calvin at 3:52 PM

もちろん!そんな形のVRを望んでいる人はいないと思うけど

直接会えない時はチャットするっていう方がまだ主流

amanda at 3:53 PM

テクノロジーをここまで生活に取り入れたいっていう境界線はあるのかしら?あるとしたらどこに?

calvin at 3:53 PM

直接会いたくない人には仮想空間でも会わない方が良いと思う。ゼロスーツ(訳注:ゲーム「メトロイドシリーズ」に登場するサムスの専用インナースーツ。パワードスーツを装着していない能力低下状態)のとき会いたくない人には特に

さて、きちんとした文章に戻って、タイムスタンプなしで書いてみよう(念のため、今は10月18日月曜日11時55分だ)。ここまでの会話についてくることのできた人なら「Several People Are Typing」も問題なく読めるはずだ。オーディオブックでも、Slackのチャットを複数のキャストが読み上げているので、自然に楽しむことができるだろう。この本は、現代のワークスタイルを批判しているが、それほど誇張されたものではない。確かに、複数の企業の専門家たちが頭を突き合わせて、ドッグフードブランドが誤って犬に毒を盛ってしまうという悪夢のようなPR(パブリック・リレーションズ、企業と企業を取り巻くパブリックとの有益な関係を築くための戦略的コミュニケーションプロセス)をどのように展開させるかを考える、というアイデアはかなり馬鹿げているが、実際現実で起こっていることだ。だからこそ、私たちは「Steak-umms」のような公式アカウントに、ソーシャルメディアのアテンションエコノミー(関心や注目の度合いが経済的価値を持つという概念)に関する優れたインサイトを見い出している。

ギミックに関していえば、2004年に出版された、テキストスピーク(メール略語)を多用したテキストメッセージ形式のヤングアダルト小説「ttyl(talk to you later、また後で)」は少しやり過ぎだったように思う。しかし、不条理は、それが現実かもしれないと感じられるときに最も効果的であり、それがこの本の成功につながっている。(この本の)摩訶不思議なシナリオは馴染みにくいかもしれないが、Slackのメッセージほど崇高な日常を感じさせてくれるコミュニケーション手段は他にはない。

画像クレジット:NOAA / Unsplash

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

火星で着るマーズジャケットやホタルのように光るソーラーチャージジャケットなど「未来の服」を作る英Vollebak

Vollebakは、ロンドンを拠点とする設立6年目のアパレル企業で、顧客に直接販売を行っている。Vollebakのウェブサイトを訪れた人は、同社の服に付けられた誇張された宣伝文句に驚くことだろう。例えば「『防水』だけでは不十分な、大嵐のためにデザインされた」ジャケット「雨、風、雪、火から身を守ってくれる」パーカー「先史時代のヒトが着ていた柔らかい獣皮の感触と性能を再現した『氷河期』」フリースといった具合だ。

他の追随を許さないこのマーケティングセンスは、CEOのSteve Tidball(スティーブ・ティドバル)氏本人が生み出したものだ。彼は双子の片割れであるNick Tidball(ニック・ティドバル)氏と共同でVollebakを創設した。2人とも以前広告業界で働いた経験があり、またどちらも活発なアウトドア派なのだが、ここ数年は家族とVollebakでの仕事が忙しくアウトドアアクティビティはご無沙汰となっている。先に「未来の服」を作るVollebakについて行ったインタビューの中で、スティーブ・ティドバル氏は、こうしたコピーを自分で書いていることを明かしてくれた。

このインタビューの中で、彼は衣服の製作にどの程度テクノロジーが関与しているのかという私達の質問に回答し、また、まもなく終了するシリーズAでの資金調達などで、Vollebakがこれまでに約1000万ドル(約11億4000万円)の外部資金を調達したことも語ってくれた。シリーズAは、ロンドンを拠点とするベンチャー企業Venrexが主導し、Airbnbの共同創設者であるJoe Gebbia(ジョー・ゲッビア)氏やHeadspace CFOのSean Brecker(ショーン・ブレッカー)氏などが参加している。このインタビュー記事は、長さの調節と内容を明確にする目的に編集されている。

TC:あなたは、双子のニック氏とともにVollebakを立ち上げましたね。Vollebakの特色として、服につけられたコピーが天才的な感じがします。そのあたりのお話を聞かせていただけないでしょうか。

ST:5年前、Vollebakを立ち上げました。その前は、15年間、どちらも広告業界で働いていました。ですから、コピーがちょっとおもしろいとしたら、それは私達の以前の仕事と関係しているかもしれません。

私達はマーケティングの観点からいえば、信じられないほどシンプルなルールでVollebakを運営しています。そのルールとは基本的に「可能な限りお金をかけない」ことです。例えば、数年前、私達はディープ・スリープ・コクーンという最初の宇宙服を作りました。マーケティングでは、ターゲットが誰かを必ず考えますが、その時の私たちのターゲットはElon Musk(イーロン・マスク)氏その人だったので、SpaceXの向かいにある看板に空きスペースを見つけ、そこにポスターを掲げました。ポスターには「我が社のジャケットは出来ているけど、そちらのロケットはどうなっていますか?」と書きました。これはそれほどコストがかからない方法ですが、とてもおもしろいコピーだったので、次の週、NASAから電話がかかってきて、彼らと少し話をすることになりました。

TC:Vollebakの服は、宇宙旅行からサステナビリティまで、次の世紀に人々が経験しそうだとあなたが想像することが反映されているように思います。例えば、暗闇でもホタルのように光を放つソーラーチャージジャケットがありますね。自然界で最も優れたカモフラージュ方法の1つである、イカの適応迷彩を再現したと言える「ブラックスクイッド」ジャケットもありますね。どの程度テクノロジーが衣服製作に絡んでいるのでしょうか?

ST:私達がここ5年ほど技術面で焦点を当ててきたのは、マテリアルサイエンス(素材の科学)です。これはスタートアップとしてはアクセスしやすい分野なのです。AIや衣服型装置のようなもっと複雑なテクノロジーに焦点を当てようとするなら大変な額の資金が必要ですが、マテリアルサイエンスなら、スタートアップにも扱うことができるからです。これが私達が大変関心を持っている分野です。マテリアルサイエンスをどの程度製品に込めることができるか、ということは通常あまり追求されていないように思います。

私達が発売した商品で最もおもしろかったものの1つが世界初のグラフェンジャケットでした。グラフェンを最初に分離した科学者でさえ、グラフェンでなにができるかをいうことはできませでした【略】そこで、私達は、こちら側にはグラフェンが使われていて、こちら側には使われていない、これをテストして、どうなるか教えて欲しい、と彼らに言ったのです。私達は、グラフェンは驚くべき作用があり、熱を保存し再分配することができる、そしてグラフェンが保存できる熱の量には制限がない、という理論を持っていました。テストでは、驚くような結果が2つ出ました。ある米国人医師が非常に寒い夜のゴビ砂漠で過ごすことになったのですが、彼はまずグラフェンジャケットをラクダに巻きつけ、そのジャケットがラクダの熱を吸収した後、もう一度そのジャケットを自分で着込みました。そうすることで、彼は一晩暖かく過ごすことができました。

別のロシア人の友人の場合は、ネパールの山で凍死しそうになったのですが、グラフェンジャケットに最後の一筋の太陽光を吸収させたところ、ジャケットが温まり、彼はそれをインナーとして着ることにしました。この友人は、夜通し体を暖かく保ってくれたのが、グラフェンジャケットだと信じています。

TC:グラフェンシャツやセラミックシャツをどのように作るのですか?特別な織り機があるのですか?それとも3Dプリンターでしょうか?プロセスを教えて下さい。

ST:とても困難なプロセスを経る、というのがその質問への回答です。そのために、当社の製品は通常の衣服より値段が割り高です。具体的には、特殊な工場、特にヨーロッパの工場でそれらを作ります。そうした工場には、わずかな人しかアクセスできない非常にハイテクな機器が備えられています。

TC:生産期間は通常短期ですか?

ST:そのとおりです。最初は、資金があまりなかったので、可能な範囲でできるだけ多くの服を作りました。それらはあっという間に売り切れ、また作る、という形でビジネスは拡大していきました。私達の製品には非常に複雑で、非常に実験的な部分があるので、1万着も作るのは無謀なことです。そこで、うまく機能するか、改善点はあるか、などを見るために、最も実験的なものについては短期で生産しています。

TC:そうした実験的な新製品の1つが、マーズジャケットですね。どこで着るものなんですか?

ST:火星のために何かを作るといっても、結局それを地球で検証しなければならないのですから、その皮肉さがちょっとおもしろいですよね。しかし、火星や宇宙旅行が現実になった場合、そこへ出かける人の数や、そこに行った際に彼らが行うべき仕事は指数関数的に増加するでしょう。科学者、生物学者、建設業者、エンジニア、建築家などが必要になるでしょうが、彼らは何かを着なければなりません。ですから、私達は今のうちから作業を始め、月か、火星か、もっと軌道の低いところかを問わず、実際に行うべきタスクにはどんなものがあるのか検討し、それらがどんな作業か、そして対処すべき課題はなにか、といったことを考えたいと思っています。マーズジャケットには吐くためのポケットがついているのですが、これは無重力になるとヒトの前庭器官が混乱に陥るためです。

TC:前庭器官について知っているなんてすごいですね。あなたはマーケティングの天才だと思っていたのですが、科学者でもあるんですか?

ST:私は、科学者のフリをしているエセ科学者ですね(笑)。まあ、私達の周囲には本当におもしろい人達がたくさんいて、彼らは未来の戦争について考えていたり、今後の宇宙旅行について考えていたりします。私達はよく、うちの事業はWhatsAppの上で行われているね、と冗談を言っています。

TC:顧客からのフィードバックは主にどこで集めていますか?一部のD2Cブランドは、ソーシャルメディアやインスタグラムで活発に活動して、Slackチャンネルも持っていますよね。Vollebakはいかがですか?

ST:私は当初から、革新的なテクノロジーとフレンドリーな人々をメールでつなげたら素敵だな、という考えを持っていました。

TC:Vollebakは、サイトを通した直接販売のみを行っていますが、今後このスタイルが変わることはありますか?

ST:現在のスタイルを短期間で変えることはありません。私達のブランドにとって絶対的に重要なことの1つがお客様からフィードバックを得ることですが、現在の販売スタイルを変えることで、お客様とのつながりを失ってしまうことが心配です。例えば、お客様が当社のシャツ、あるいはジャケットでなにかよい経験をしたとしても、それを買ったのがどこかの小売店なら、お客様は私達と本当のつながりを持っていないことになります。これは情報の喪失だと感じます。

当社では、近々メタバース空間でより多くのことを行おうとしています。メタバースという考え方、つまり仮想世界と現実世界との間に競争や統合が起こるというアイデアがとてもエキサイティングだと思うからです。そのために現在、その空間ですごいものを構築しており、ある物を処理できる強力なスーパーコンピューターを探しているところです。基本的に、未来を決定づけると思うものは何でも深く掘り下げていくつもりです。

編集部注:インタビュー全体はこちらでお聞きいただける。インタビュー全体には、Vollebakの女性製品発売計画や資金調達状況なども含まれている。

画像クレジット:Vollebak

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

数分の1のコストで何日分も電気を蓄えられるというForm Energyのバッテリー、秘密主義な同社CEOがその理由と歩みを語る

現在の数分の1のコストで何日分も電気を蓄えることができる充電池を開発していると語るForm Energy(フォーム・エナジー)は、2017年にひと握りの創業者によって設立されて以来、優良な支援者から3億6000万ドル(約410億9600億円)以上の資金を得ているにもかかわらず、秘密主義に走りすぎていると非難されてきた。

その創業者の1人であるForm EnergyのCEOであるMateo Jaramillo(マテオ・ジャラミロ)氏は、テスラのエネルギー貯蔵グループの創設を主導した人物だ。先に開催されたイベントでジャラミロ氏は、元TechCrunchの記者で現在はCNBCの特派員であるLora Kolodny(ローラ・コロドニー)に、同社が一種の社外秘を貫いてきた理由について話した。ジャラミロ氏はフォーム・エナジーの運営方法について説明した他、テスラでElon Musk(イーロン・マスク)の下で働いた7年以上の期間を振り返り、なかなか厳しい時間であったことを語った。

インタビューの全編は以下から視聴できる。以下は、そのインタビューからの抜粋となる。

なぜ今、再生可能エネルギーの波が押し寄せ、フォーム・エナジーは別としても多くの企業が注目され、投資資金を集めているのか。

現在、世界で最も安価に入手できる電力源は再生可能資源であり、つまり地域にもよりますが、太陽光や風力です。しかし最も安い電気料金を探しているのであれば、現在では再生可能エネルギーになるでしょう。もちろん、再生可能エネルギーは天候によって左右され、天候はある程度しか予測できず、しかも断続的に変化します。つまり完全に再生可能な脱炭素の送電網を実現するためには、関連するすべてのタイムスケールにおいて断続的なエネルギー源を蓄えることができなければならないのです。

そう、太陽は毎晩沈み、毎朝戻ってくるため、その間を繋がなくてはなりません。また、季節や長い期間の気象パターンに関連したギャップについても考える必要があります。再生可能エネルギーは過去15年から20年の間に非常に大きな進歩を遂げたため、現在の普及レベルでは、電力系統の最後の30%から40%について、再生可能エネルギーや発電機を使ってどのように信頼性とコストを提供するかを真剣に考えなければなりません。

画像クレジット:Dani Padgett

ジャラミロ氏は、フォーム・エナジーが採用している鉄空気の技術が、50年近く前に連邦政府機関によって調査されたが(一度も商業化されなかった)、突然エネルギー貯蔵の方法としての意味を持つようになった理由についても言及している。

まず、最も普及している技術は揚水発電です。現在、世界にあるエネルギー貯蔵技術の中では圧倒的に揚水発電が多いのです。ですがその上を行く技術は、もちろんリチウムイオンです。このイベントにいる全員が5つのリチウムイオン電池を持っていると思います。それだけリチウムイオン電池が普及しているということです。

しかし、再生可能エネルギーの普及が進むと、リチウムイオンの能力とは異なるものが必要になってきます。風力、水力、太陽光などの再生可能エネルギーを100%使用するだけでなく、数時間を超える電力供給の中断についても考えなくてはなりません。そのためには、リチウムイオンよりもはるかに安価である必要があります。

(一方)鉄は非常に豊富な金属物質です。地球上で最も多く採掘されている金属です。人間は鉄についてよく知っています。鉄をいじくり回して、鉄にちなんだ名前が付いた時代もありました。そして多くのことがわかりました。そして現在も、もちろん鉄鋼生産の主原料として使用しています。鉄はまた、非常に安価です。どの大陸にも豊富にあり、世界最大級の規模を誇る産業でもあります。そして、これは新しい化学ではないというのはその通りです。フォーム・エナジーは鉄空気を化学的に発明したわけではありません。私たちがやったことは、2つの国立研究所が最初に研究したともいえる化学物質を、50年先の未来に引っ張り出し、現代の技術と方法論、電気化学、腐食、金属工学に関する現代の知識を適用して、40~50年前に存在していた性能を今日において可能なところまで引き上げたのです。つまり、将来のリチウムイオンの10分の1のコストのデバイスに取り組んでいるのです。(つまり)深い脱炭素化、高度な再生可能性、安価で信頼性の高い電力網を実現することができるということです。

「鉄空気電池」とはどういう意味でしょうか。簡単に言えば、電気化学的に鉄を錆びさせ、錆びていない状態に戻すということです。それが私たちのやっていることです。非常に可逆的なプロセスですが、非常に優れたやり方で行わなくてはなりません。

さらにジャラミロ氏は、同社がシステムの効率性について秘密にしてきた理由についても言及した(「秘密にしてきたのだとしたら、それは私たちのやっていることが不必要に誇張されるのを避けようとしてきたからです」)。

彼は、技術がどのように機能するかについてより正確に話してくれた。現在、鉄鋼業界で年間1億トンもの大量生産が行われているブルーベリーサイズの「高純度の」鉄ペレットをフォーム・エナジーがどのように活用しているのかが気になる方は、10分前後の部分をご覧いただきたい。

さらにコロドニーは、テスラで学んだことのうち、フォーム・エナジーで再現しようとしていること、そして自動車メーカーでのキャリアから学んだことのうち、再現したくないことを尋ねた。

私はテスラに約7年半いました。2009年に入社して、2016年末に退社しました。テスラはレッスンの工場です。クルマを作っているともいえますが、実際にやっていることは人々にレッスンを提供することです。その弧の中にいるのはすばらしい場所でした。私が入社したときの社員数は数百人でしたが、私が退社するときには3万人、4万人といった規模になっていました。

私が退職したのは、当時、テスラのエネルギー事業であるPowerwall(パワーウォール)とPowerpack(パワーパック)をすでに立ち上げていたからです。私は結婚しています。妻と私の間には3人の子どもがいます。結婚生活を続けたいですし、子どもたちの人生の一部でありたいと思っています。イーロンと一緒に働いた7年半は、私にとっては十分でした。また、私は意図的にイーロンと良い関係のまま退社したいと思っていましたし、物事は良い方向に向かっていましたので、私にとってはそれで良かったのです。

画像クレジット:Dani Padgett

私は後悔なく退社しましたが、多くのことを学びました。それは一緒に仕事をする人たち、そしてその人たちの質ほど重要なものはないということです。彼らは、取り組んでいる仕事のミッションに対して、可能な限り情熱的にコミットしていなくてはなりません。

もう1つの教訓は、時には人をその人自身から守らなければならないということです。それは転倒する可能性があるからです。美徳も行き過ぎれば悪徳になります。だからこそ、会社にコミットし、ミッションに熱心に取り組んでいる人に求めることには限界があり、限界を置くべきということを認識することが大切です。フォーム・エナジーでは、現在約200名の社員が働いていますが、全員が非常に情熱的で、献身的で、使命感を持っているという文化を作り、かつ家庭などを維持できていることを願います。この2つは相反するものではありません。

画像クレジット:Dani Padgett

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

【インタビュー】CMUロボティクス研究所の新ディレクターが語るロボット研究の未来

カーネギーメロン大学のロボティクス研究所では、2年間にわたって暫定的にポストを担ったSrinivasa Narasimhan(スリニヴァサ・ナラシマン)教授が退任し、この度6人目となるディレクター、Matthew Johnson-Roberson(マシュー・ジョンソン=ロバーソン)氏が着任した。2005年にカーネギーメロン大学コンピュータサイエンス学部を卒業した同氏は、ミシガン大学の海軍建築・海洋工学部および電気工学・コンピュータサイエンス部の准教授を経て同ポジションに就任することとなった。

関連記事:フォードがロボティクス研究でミシガン大学に研究者やエンジニアら100人を配置

ジョンソン=ロバーソン氏はUM Ford Center for Autonomous Vehicles(ミシガン大学自動運転車Fordセンター)の共同ディレクターも務めており、今回はそのオフィスから新しい役職における今後の計画や、ロボット研究の将来像について語ってくれた。

TC:今はミシガンでFord(フォード)関連に取り組んでいる最中なのですか?

MJR:そうですね。数人の生徒とともにロボット関連の研究をして楽しんでいますよ。

TC:そこでの主な取り組みは何でしょうか。

とても多くのことを進めています。Fordのための長期的で既成概念にとらわれない研究です。Argo(アルゴ)のように、できれば半年から3年以内に道路を走れるようになる予定のものを対象に多くの研究を行っています。道路を走れるようになるのが5年から10年先のようなものに対しても長く取り組んでいます。新タイプの奇妙なセンサーから人間の予測や安全性の保証まで、あらゆることに非実際的なアプローチをとることができるのが大学の良いところです。

TC:Fordとミシガン大学がとっているような連携システムは、多くの大学にとっての手本のような存在になるのだと感じます。特にCMU(カーネギーメロン大学)のような大学には、裕福な資金提供者との長い歴史があります。こういったパートナーシップは今後大学研究のモデルになっていくとお考えですか?

これは、過去20年間にわたってロボット工学が通り抜けてきた変革を反映しています。90年代、00年代に開発された技術の多くが成熟して商用製品として展開されるようになり、多くの産業の未来に大きな変化をもたらしています。企業と大学が徐々に関係を持ち始めるようになったというのは、自然な流れだと思います。ピッツバーグという街を見ても、天然資源や鉄鋼を中心とした重工業からの転換が進んでいますが、この転換はさらに加速するでしょう。

関係性を継続し、新しい関係を築いていくことが私の目標の1つです。産業界だけでなく政府や政策など、これからのロボット工学に関連するあらゆることを考慮し、そうした関係を築いて研究所ですでに行われている技術的な仕事の強みを生かしていきたいと思っています。これは私が特に楽しみにしていることです。

TC:ピッツバーグでは地元スタートアップ企業が数多く存在する一方で、Google(グーグル)のような大企業も研究や法廷を学んだ卒業生の近くに進出してきています。このような関係をさらに深めるため、CMUはどう取り組んでいるのでしょうか。

CMUのある教授と共同するためにWaymo(ウェイモ)のオフィスを開設しています。このような関係は、教員とだけでなく学生に対しても見られます。高度な訓練を受けた新しい従業員こそがこういった企業の生命線です。採用活動で優位に立ち、人々が来たいと思うような文化を築くためにできることは、これらの企業にとって大きな利点となります。また、企業が共同研究を行ったり、研究のスポンサーになったりして、新しいプロジェクトを開発したり、入学してくる学生との新しい関係を築いたりしています。大学の最もすばらしい点は、毎年世界で最も賢い人々が新たに入ってきてくれるという点です。

TC:大学という幅広い文脈の中で、これらのスタートアップ企業の成長を支援するというのはあなたのタスクの1つとお考えですか。

そうですね。私自身、スタートアップを立ち上げる機会がありましたし、知識に大きなギャップがあることを知りました。非常に賢く、世界に対して大きな野心を持っている学生が大勢いるため、彼らがそれを実現できるように支援する方法を考えることが私の役割だと思っています。今あなたが強調したのもスタートアップですし、エコシステムという言葉がよく聞かれます。その地域に他のスタートアップ企業があるということもありますが、それに加えて一緒に何かをしたり、何かを作ったりする気の合う仲間を見つけることができるコミュニティがあるということです。

TC:現在ミシガン大学にいらっしゃるので、デトロイトで起きている変革を目の当たりにしていると思います。スタートアップコミュニティの育成という点でデトロイトはピッツバーグほど進んでいないかもしれませんが、そこには多くのチャンスがあります。CMUが惹きつけた人材を維持するために、学校はどういった役割を果たせるでしょうか?

いくつかのことがあります。近年ますます重要だと感じることの1つは、まずチャンスがそこにあることを認識するということです。ロボット産業のスピードと規模は、私たちの誰もが予想できないほどの速さで加速しています。そのために重要なのは、そのことを認め、じっとしていようとしないことです。業界は変化し、ロボットを取り巻くエコシステムが変化し、またこれらの企業を取り巻く規模やスケールも変化しています。これを実現するための方法をともに考えていきたいのです。

TC:ロボット工学は歴史的に最もインクルーシブな分野ではありません。その中でCMUはどのような役割を果たしていけるでしょうか? CMUのようなところに入学する多くの人は、入学する前からロボット工学に慣れ親しんでいる人たちなのではないでしょうか。

今回私はCMUにいる間に2つのことを残したいと思っています。1つ目は機会を増やし、参加者の幅を広げ、各分野における多様性を高めるということです。そして2つ目はもっと重要なことだと思います。大学は若い人たちの心を形成するのに適した場所です。私がロボット工学に多様性と包括性を持たせるための変革を起こすためには、第一級のロボット研究機関にいるということ以上に効果的な方法はありません。次世代のロボット工学者の誕生の場にいるということなのですから。

TC:あなたはCMUに入学した当初、ロボット工学を専攻していたわけではないので、良い例ですね。

まったくその通りです。さらにもう一歩踏み込むと、CMUに入学したとき私はとても苦労しました。みんなが自分よりも賢いという場所に足を踏み入れたのは初めてのことでした。それこそがあの場所の特別なところだと思います。何があってもロボット工学を辞めることにはなりませんでした。それは当時も今も、あの場所にいる人々のおかげだと私は思います。

TC:最近のロボット工学において最も楽しみにしていることは何ですか?

世界各地で展開されている大規模なロボット工学分野のシステムは、現在まさに変曲点に来ています。いつか、米国や世界のどこにいても、窓の外を見ればロボットが何か役に立つことをしているという状況になって欲しいと思っています。今の世界はそうではありません。工場の現場などに行けばロボットを見ることができますし、もしかしたらロボット掃除機を持っているかもしれませんが、私は窓の外を見るとロボットがいるというレベルにしたいと思っています。

画像クレジット:CMU

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

モバイルゲームの巨人ZyngaのCEOが広告危機への対応とブロックチェーンゲーミング部門について語る

ウォール街と自身のガイダンスを上回る実績を上げたZynga(ジンガ)は、第3四半期決算で売上7億500万ドル(約804億円)、前年同期比40%を記録し、月間アクティブユーザー数1億8300万人、前年同期比120%増でモバイルユーザー数は過去最大に達した。

第2四半期にはApple(アップル)のプライバシーポリシー変更の深刻な影響を受け、8月5日から11月4日の間に持ち株の30%を売却するという劇的な出来事があったにも関わらず、予測を超えるユーザー数を獲得し、好調のうちに年を終える見込みが立ったことを伝える米国時間11月10日のニュースを受け、Zyngaの株価は急騰した。

ZyngaのCEOであるFrank Gibeau(フランク・ジボー)氏(画像クレジット:Zynga)

TechCrunchはZyngaのCEOであるFrank Gibeau(フランク・ジボー)氏をインタビューし、モバイルゲームの巨人がどうやって広告危機を乗り越えながら、クロスプラットフォームの拡大とブロックチェーンへの進出という転換ができているのかを尋ねた。

嵐を乗り切る

4月26日、Apple(アップル)はIDFA(広告識別子)を変更し、デベロッパーにATT(アプリ追跡透明性)ツールを使ってユーザーがiOSアプリを横断して追跡されることからオプトアウトできるようにすることを要求し、モバイル広告エコシステムを震撼させた。ロックダウン中に獲得した新規ユーザーは、パンデミックによる制約が解除されると一気に離脱し、獲得コストは急増した。企業は次々と15~20%の売上減少を報告し始めた、とConsumer Acquisitionは伝えている。中でも最も影響が大きかったのが、Snapchat(スナップチャット)のような広告プラットフォームや広告主のPeloton(ペロトン)、広告プラットフォームでも広告主でもあるZyngaなどだ。

「2021年の中間点は大変でした」とジボー氏がTechCrunchに語った。「当社はIDFAと大きな再開需要の問題の重なりから最初に立ち直った企業の1つです。進路を正すために、広告出費を抑え、新しいツールと技術の実験を開始して、9月には平常状態に戻りはじめました」。

ジボー氏は、「FarmVille 3」の公開を成長速度が回復するまで待ったことを話し、11月4日の発売後、この新作ゲームがiPadとiPhoneのApp Storeでそれぞれ第1位と第2位になったことを大いに喜んでいた。

「最悪の状態を脱したことを実感し、第4四半期に向けて新規ゲームへの投資を拡大できることを喜んでいます。この時期を乗り越えるための鍵は、当社のファーストパーティーデータ(自社で収集したデータ)をChartboost(チャートブースト)プラットフォームでどう使うかです」と、Zyngaが2021年買収した広告ネットワークに言及した。

「プレイヤーが当社のゲームにやってきた時に起きることやプレイしたイベント、当社の既存サービスで広告主が何をしているかなどに関して、私たちは大量のデータを持っています。ファーストパーティーデータを活用することで、会社にとって有益なリターンやオークションを予測するためのモデルを構築することができます」と同氏は語った。

Zyngaは、Unity(ユニティ)、Google(グーグル)、Iron Source(アイアンソース)とも提携して、プレイヤーをターゲットするよりよい方法を見つけようとしている。

「この問題には多くの賢い人が取り組んでいます。これはどちらかというと時間の問題で、答えがないわけではありません。長期的に見て、Appleは健全な広告市場を支える有効なプラットフォームを作ると同時に、プレイヤーのプライバシーを守ろうとしているので、私たちは喜んで協力しています」と同氏は語った。

ハイパーカジュアルを使いこなす

Zyngaのビジネスの80%はサブスクリプションとアプリ内購入の少額決済だが、売上の5分の1は広告によるものだ。ハイパーカジュアルゲームと呼ばれる、シンプルなインターフェースで通常30秒以内にプレイが終わるゲームの人気が広告を支えている。

第3四半期、Zyngaは広告売上を前年同期の2倍近くに伸ばした、とジボー氏はいう。この成功に寄与したのは、Zyngaが1年前に買収したトルコ拠点のゲームメーカーRollic(ロリック)で、Zyngaが同カテゴリーのトップ3パブリッシャーになるきっかけとなった。

「アプリストアのインストール数を見ると、ハイパーカジュアルは最大のカテゴリーです。非常に安上がりのゲームで膨大なオーディエンスにリーチできるので、広告を主要な収益方法として利用しています。当社にとって非常に実入りの良い分野であり、私たちのネットワークにユーザーを誘う理想的な入口です。このネットワークは、2022年以降に当社の成長を支える大規模なパブリッショングと広告のプラットフォームを作るという私たちの野心的計画につながっています」とジボー氏は言った。

すべての道はメタバースに続く

Zyngaが次にリリースする大型ゲームは、「Star Wars:Hunters」で、Androidの一部市場で2021年11月中旬に限定公開し、iOSとSwitchで2022年にテストを開始するとジボー氏はいう。これは同社にとってゲーム専用機で動く最初のクロスプラットフォームゲームであり、「Farmville 3」は、macOSで公開された最初のクロスプラットフォームゲームだった。

ジボー氏は、Zyngaのモバイルゲームを他のプラットフォームでプレイできるようにすることへの関心について話した。

「FarmVilleファンとStar Warsファンはどこにでもいるので、プラットフォーム無依存にして私たちの体験をできるだけ多くの場所に提供するのは至極当然のことです」と彼はいう。「結局私たちは、ゲームは1人より一緒にプレイするほうが楽しいと信じているソーシャルゲーム会社です。だから、革新を起こして新しいことを試すことは会社カルチャーの一部なのです」。

2020年以来、ZyngaはSnapchatGoogle Nest、およびAmazon Alexaでゲームを提供してきた。そしてつい最近、TikTokで同社初のゲーム、Disco Loco 3Dを公開した。これは無料でプレイできる音楽とダンスのチャレンジだ。

関連記事:TikTokがモバイルゲームに挑戦、まずはZyngaとの提携で

「ゲーミングの世界では、次のプラットフォームを逃すと窮地に追い込まれます。そこで失敗すると、非常に痛い目にあいます。だから、さまざまなソーシャルプラットフォーム向けに体験を開発して、チャンスがあるかどうかを見ることは非常に重要だと思いました。Snapchatとの提携では、彼らのエコシステムでゲーミングの存在を大きくするに方法を協力して考え、いくつか良い結果を得ていますが、まだ始まったばかりです」とジボー氏はいい、それらのゲームは概念証明が目的であり収益を生むためではないことを強調した。

Netflix Gaming(ネットフリックス・ゲーミング)は11月2日に公開され、Zyngaの元最高クリエイティブ責任者であるMike Verdu(マイク・バードゥ)氏が指揮をとった、とジボー氏は語った。「Netflixにとって、このビジネスのサブスクリプション部分にどうアプローチしたいのか、ユーザーはゲームをどのような操作するのかなど、検討すべきことがまだたくさんあるので、彼らがサードパーティーコンテンツを受け入れる準備ができているのかどうか私にはわかりませんが、将来どこかの時点で話をするのはとても有意義だと思います」。

さらにジボー氏はこう付け加えた「それがNetflixでもRobloxでもEpicでもValveでも、そこにプラットフォームがあり、私たちのコンテンツがそこにあって聴衆に届けることが理に適っているなら、私たちは間違いなく追究していきます」。

しかし、おそらくZyngaにとって今後最大の冒険は、元EA(エレクトロニック・アーツ)幹部のMatt Wolf(マット・ウルフ)氏を新設のブロックチェーンゲーミング部門の責任者として迎えたことにかかっている。NFT(非代替性トークン)の狂乱がゲーミング業界に吹き荒れ、ブロックチェーンのスタートアップ、Mythical Games(ミシカル・ゲームズ)やAnimoca(アモニカ)やForte(フォーテ)の評価額は過去数カ月で10億ドル(約1140億円)に達し、デベロッパーがゲームを横断して使える永久収集アイテムを作る後押しをした。

「この分野には多くの資金と人材が流れ込んでいます」とジボー氏は言い、決断のタイミングを説明した。「当社のファンダーで会長のMark Pincus(マーク・ピンカス)氏と、長年取締役を務めているBing Gordon(ビン・ゴードン)氏がこの分野に非常に熱心なので、ブロックチェーンは長期的にゲーミングの一部になると私たちは信じています。

ウルフ氏が現在最適な道筋を見極めるための専門部隊を立ち上げているところで、FarmVilleで農場を所有することでエンゲージメントや定着率が向上するかどうかなどを調べる予定だとジボー氏は語った。

「私たちはZyngaのスピードで動くつもりなので、数カ月のうちには何かをお見せできると思います」と同氏は語る。

画像クレジット:Zynga

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(文:Martine Paris、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Riot Gamesの元同僚二人が設立した新しい投資会社Patronが約103億円確保

Axie Infinityからのワンシーン(画像クレジット:Yield Guild Games)

テック関連のニュースを追っている人なら、ブロックチェーンベースの「遊んで稼ぐ」トレンドに関する記事が増えていることにおそらくお気づきだろう。これは個人が暗号資産によるゲームをし、そのゲームの中で資産やトークンを稼ぎ、それを「現実」のお金に替えて生計を立てることができるものだ。

「Axie Infinity」と呼ばれるベトナムの会社が、この動きを推進している。同社は非常に人気があるため、フィリピンには「Axie Infinity」でゲームを始めたい人向けにお金を貸すためだけに存在しているスタートアップがあるほどである(ゲームを始めるにはまずデジタルクリーチャーを購入する必要がある)。このお金の貸し手も、ゲームの背後にある会社も、どちらも現在Andreessen Horowitzから資金援助を受けている。

このトレンドは一過性のものではないと、Patronと呼ばれるアーリーステージ専門の新しい投資会社を創設したある共同創設者2人はいう。彼らは「Axie」のようなゲームが分散型「Web 3」と呼ばれる時代の最大の消費者になると信じている。

私たちは、先にPatronの創設者たちにもっと詳しく話を聞くためにメールをした。彼らのうちの1人、Brian Cho(ブライアン・チャオ)氏は、過去7年間Riot Gamesで過ごし、ビジネスおよび企業開発のグローバル責任者を務めた(また、彼は2012年からアンドリーセンホロウィッツに2年間勤務している)。共同創設者であるJason Yeh(ジェイソン・イェ)氏は、過去4年間、ドイツのベルリンで自ら投資会社を立ち上げ運営していた。またそれ以前はEU Esportsの責任者としての業務も含め、8年間Riot Gamesで働いていた。

2人には多くの共通の知り合いがおり、そうした人々がPatronの新しい投資家層を形成している。その中には、Andreessen Horowitzのパートナー数人や、Union Square VenturesのFred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏、 Initialized CapitalのGarry Tan(ギャリー・タン)氏、GGV CapitalのHans Tung(ハンス・タング)氏などが含まれる。2人は、Patronの今度の道筋についても語ってくれた。

TC:お2人はRiot Gamesで知り合ったのですよね。ご自身の会社を立ち上げるために、いつ頃独立する決心したのですか?

BC:私たちはRiot Gamesで同僚として知り合い、過去10年ほどにわたってさまざまな取引に共同で投資する中で、次第に関係を深めて行きました。Patronのコンセプト自体は長い間温めてきたのですが、ごく最近になるまで、私たちがもともと思い描いていた種類の会社を作ることができるようなマーケットニーズがありませんでした。

TC:Patronには著名な多くのVCが投資していますね。最初に投資してくれたのはどこですか?

BC:私たちは、ゲームに個人的に関与し、私たちの会社がシリーズAを順調に達成できるよう支援したいと考えてくれている投資家を引き入れることに意図的に力を入れました。また、これは予期していなかったのですが、私たちの初期のLPが、全体的な資金調達と市場で最も競争力のあるシード取引を勝ち取ることに非常に大きな影響を及ぼしたようです。結果的に 4カ月で9000万ドル(約103億円)を集めることができました。

LPの多くは、過去10年ほ多くの期間、同僚や共同投資家として親しい関係にあった人々です。したがって彼らに最初に関わってもらうという判断は理にかなったものでした。最初に資金提供してくれたのは、私たちのボスでメンターだったa16zのChris Dixon(クリス・ディクソン)氏やMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏、FirstMarkのRick  Heitzmann(リック・ヘイツマン)氏やAmish Jani(アミッシュ・ジャニ)氏といった人々、そしてRiot Gamesの創設者です。個人からの資金提供額平均は40万ドル(約4600万円)を超えており、多くの方々が個人的に多額の資金援助をしてくれました。

TC:機関投資家は関与していないのですか?Riot Gamesはどうでしょう?

JY:Horsley Bridge PartnersとInvesco が当社の最も重要な機関投資家です。Riot Gamesは当社には出資していません。というのも、私たちは資金を提供するための戦略よりも個人や機関を優先したいと考えていたからです。

TC:「遊んで稼ぐ」は「Axie」のおかげで今突如としてトレンドになっていますね。お2人はこのトレンドにどれくらいの期間注目してきたのですか?そして興味深いスタートアップは他にもありますか?そしてそれはなぜですか?

BC:私は約4年前にRiot Gamesを退社して、Cryptokittiesの発売に合わせてNFTゲーム関連の会社を立ち上げました。残念なことに、当時は消費者や投資家の関心が高くなかったので、タイミングがよくありませんでした。2018年に市場の景気は底を打った後は特にです。それでも、過去1年間で私たちにとって最も重要なシグナルだったのは「AxieInfinity」や「 NBATop Shot」など非暗号ユーザーをプラットフォームにオンボーディングできる製品に関するものでした。

さらに、BAYCやPunksといった暗号資産ベースの製品がメインストリームになってきました。Coinbase NFTマーケットプレイスでの230万件のウェイティングリストと、AAAおよびWeb 2ゲーム開発者がこの分野で会社を立ち上げるために現在の勤め先を退社するという流れは、すべてすばらしい兆候でした。

TC:現在までにいくつ投資を行いましたか?

JY:発表はまだされていませんが、いままでのところ4つの投資を行いました。

TC:トークンや株式を買うために資金を使う予定ですか?これらの異なる投資のモードについてどうお考えですか、そしてこれについて御社のLPはどのように考えているのでしょうか?

JY:はい、その予定です。私たちの最初の取引の1つは純粋なトークン取引です。私たちはこれらを1つ1つ評価しています。またこのトークン取引が、創設者が構築しようとしているスタートアップや製品のタイプに適した配慮の行き届いたものであるべきだ、と考えています。私たちはLPに対し、ゲームとWeb 3の強力な融合を考えると、Web 3やトークンに資金の相当な部分を使うことになると伝えてあります。それが、彼らがPatronでの投資活動に興奮している理由の1つです。

TC:投資の対象を考えたとき、ロサンゼルスに拠点があるということは、なにか特別な利点があると思われますか?

JY:はい。ロサンゼルスには現在アート、創作、ゲーム、エンターテインメント、暗号資産が色濃く交差しています。そうはいっても、私たちは仮想的な性質をもった会社であり、ロサンゼルスやシリコンバレーで存在感を発揮する一方、サービス提供は国際的なものになるでしょうし、取引の約半分はアメリカ国外のものになると予想しています。

私は過去10年間のほとんどをベルリンで過ごし、最近ロサンゼルスに戻ってきたところです。そしてブライアンも私もRiot Gamesでは、東アジアや東南アジアにおけるビジネスチャンスのために働いていました。私たちは、こうした地域のどこからでも世界的な消費者ビジネスを構築できると信じています

TC:出資の額面についてですが、あなたが投資する際の最低出資額、そして上限については、どのようにお考えですか?

JY:私たちは高い信念と集中型ポートフォリオモデルを持っています。つまり、私たちは量よりも質を重視し、シードステージでの機会を主導または、共同で主導することを目指しています。これは、私たちが活動するステージにおいて、主要投資家として早い時期に高い割合でオーナーシップを持つことを目標に100万ドルから400万ドル(約1億円から4億6000万円)の間で投資することを意味しています。

TC:興味深いプロジェクトをどこで見出すのですか?

JY:私たちのLPは私たちの取引の流れ、そして競争の厳しい取引を勝ち取るための最善のソースです。また、もちろん、TwitterやDiscordが私たちにとって創設者たちと繋がるのに自然な場所になるでしょう。また私たちはDAOsや緊密に結びついたエンジェルシンジケート(私たちもその一部ですが)といった新しい領域が私たちの取引の流れの重要なソースになることを期待しています。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

中国との関係は競争ではない、戦争だ。書評「The Wires of War: Technology and the Global Struggle for Power」

ここしばらく、自由市場経済に取り組んでいるように見えた中国だったが、2021年、その幻想は完全に打ち砕かれた。3年前、憲法から自らの任期の制限を撤廃した習近平(シュウ・キンペイ)国家主席は、自国のハイテク企業の権限を突然奪い、今までよりも厳しいメディア検閲を行うように指示した(任期制限の撤廃については、当時NPR[旧称ナショナル・パブリック・ラジオ]が指摘したように、中国はいずれにせよ「何千年もの間、絶対君主によって支配されてきた」国であり、任期制限は1980年代に初めて導入されたものも、短期間の実験的なものであった)。

ブルッキングス研究所の中国戦略イニシアチブ共同議長であり、スタンフォード大学サイバーポリシーセンターの元シニアアドバイザー、Google(グーグル)の元ニュースポリシーリード、さらには米国大統領選挙運動中に米国運輸長官のPete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)氏の顧問を務めたJacob Helberg(ジェイコブ・ヘルバーグ)氏は、米国、特にシリコンバレーは、習近平国家主席の権力の強化にもっと注意を払う必要があると指摘している。ヘルバーグ氏は「The Wires of War:Technology and the Global Struggle for Power(戦争への引き金:テクノロジーと世界的権力闘争)」と題された新著の中で、中国の「テクノ全体主義」体制が中国国民(本の中では「最初の犠牲者(first victims)」と表現されている)に与える影響、そしてインターネットのソフトウェア / ハードウェアをさらにコントロールしようとしている中国の取り組みが、なぜ米国やその他の民主主義諸国にとって、確かに現存し、急速に拡大する危機なのかを説明している。

ヘルバーグ氏は、米国の民間企業と米国政府が一体となって抜本的な対策を講じなければ、2020年中国政府からサイバー攻撃という脅しを受けたと推測され、2000万人規模の都市で停電が発生したインドと同じことが米国でも起こると話す。現地時間10月13日、TechCrunchはヘルバーグ氏にチャットによる取材を申し込んだ。以下は要約であるが、興味があれば詳細をこちらで確認して欲しい。

TC(TechCrunch):あなたは、2016年の米国大統領選挙の直前に、Googleでグローバルなニュースポリシーを扱う職に就いていますね。当時、ロシアとその疑惑のキャンペーンに注目が集まっていたことを考えると、米露関係についての本ではなかったことに驚きました。

JH(ジェイコブ・ヘルバーグ):この「グレー」の戦争には、実際には2つの戦線があります。まず、人々が見るものをコントロールするというフロントエンドのソフトウェアの戦線です。ここにはさまざまなプレイヤーが存在しますが、ロシアは他国への干渉という領域で最初に動きを見せた国の1つです。そして、物理的なインターネットとその物理的なインフラに焦点を当てたバックエンドのハードウェアの戦線があります。本書が主に中国に焦点を当てることになった理由の1つは、この戦争で最も決定的な要素は、物理的なインターネットインフラをコントロールすることにあるからです。インターネットのインフラを支配すれば、その上で動くあらゆるものをコントロールしたり、危害を加えたりすることができます。バックエンドをコントロールすれば、フロントエンドも併せてコントロールすることが可能です。だからこそ、私たちはバックエンドにもっと注意を払うべきなのです。

バックエンドとは、携帯電話、衛星、光ファイバーケーブル、5Gネットワーク、人工知能などですね?

人工知能もソフトウェアとハードウェアの組み合わせなので興味深いところですが、基本的には光ファイバーケーブル、5G衛星、低軌道衛星などです。

この本では、中国が2020年インドをサイバー攻撃したとされる事件が早速取り上げられています。この事件では、列車や株式市場が停止し、病院は非常用発電機に頼らざるを得なくなりました。米国にも、私たちが中国による攻撃だとは気づかなかったサイバー攻撃があったのでしょうか?

グレーゾーン戦争の特徴、つまり米国政府がこれほどまでに新たなグレーゾーン戦術に力を注いでいる理由の1つは、(攻撃者の)帰属(アトリビューション)を明らかにすることが非常に難しいという点にあります。米国では民間企業がインターネットの多くを運営しています。中国とは異なり、米国の民間企業は政府から完全に分離されています。このような民営化されたシステムにより、民間企業には、市場的にも法的にも、サイバーセキュリティ侵害を過少に報告する一定の動機が存在します。サイバーセキュリティ侵害を受けた企業は、被害者であると同時に、場合によっては過失と見做され責任を問われる可能性もあります。そのため、企業はサイバーセキュリティ侵害の報告に非常に慎重になることがあります。

また、(攻撃者の)帰属を明らかにすることが非常に難しい場合もあります。米国でもインドと同様のサイバー攻撃が行われた可能性がないわけではありません。米国もかなりの規模のサイバー攻撃を受けていることは事実であり、多くの情報機関が米国のエネルギーグリッドが無傷でいられるかどうかを懸念しています。人事管理局がハッキングされたことは明白ですが、これも重要な問題です。というのも、中国は現在、極秘情報にアクセスできる多くの政府職員のリストを持っているということになるからです。サイバー攻撃は数え上げるときりがありません。

あなたはインドのハッキングは米国への警告だったと考えていますね?

インドへのハッキングが歴史的に重要な意味をもつのは、もしこのグレーゾーン戦争が激化すれば、独立戦争以来初めて、米国が他国の攻撃者によって物理的に破壊されるような戦争になる可能性がある、という最初のシグナル(危険信号)だったからです。内戦だった南北戦争や9.11を除けば、外国勢力が実際に米国に上陸して大量破壊を行ったことはありませんでした。しかしながら、今回のインドへのサイバー攻撃を考えると、中国との関係が悪化した場合には(米国内の)原子力発電所の安全性を確認しなければならない、というシナリオも考えられますね。

こういった脅威に私たちはどのように対応すべきですか?米国政府は、米国内にインフラを構築しようとしているHuawei(ファーウェイ)に対し、非常に強い姿勢で臨んでいます。あなたは、Zoom(ズーム)のような企業には多くの中国人従業員が在籍し、中国の諜報機関に(米国の情報が)さらされる可能性があると指摘していますね。どこで線引きをすべきですか?(これらの問題に対応しながら)企業の権利を保護するには、政府はどうすれば良いでしょうか?

特に中国が台湾に侵攻するリスクが迫る中、これは私たちが現在直面している危機的局面における非常に重要な問題です。私は米国政府が対米外国投資委員会(CFIUS)の枠組みを構築することを強く支持しています。現在、米国政府には国家安全保障を理由として外国からのインバウンド投資を審査し、(危機を)阻止することができる枠組みがあります。この考え方の基本に則り、アウトバウンド投資にも同じ枠組みを適用すると良いでしょう。米国政府が国家安全保障に基づき、米国から米国外への投資、特に中国への投資を審査する手段をもつ、ということです。ここまでの話からもわかるように、米国企業が中国に何十億、何千億ドル(日本円では何千億円、何十兆円)もの資金を投入すれば、時として深刻な問題を引き起こす可能性があります。

中国に進出し続ける企業がもつ経済的なインセンティブ(動機)を考慮すると、アウトバウンド投資への枠組みはどの程度現実的だと思われますか?

私の提案に類似した、アウトバウンド投資への枠組みを目指す法案がすでに議会で検討されています。ですから、このアイデアが実現する日もそう遠くはないと思います。この問題が差し迫ったものになり、議会で優先的に審議され、大統領に署名してもらうために必要な支持を得られるのはいつなのか、という点については、実際の危機というきっかけが必要なのかもしれません。(私たちがこれまで観てきたように)残念ながら、ワシントンでは実際に危機が起こって初めて多くのことが決定されるからです。

米国の銃規制のように、イエスでもありノーでもある、ということですね。あなたが、米国vs中国の競争であるというアイデアを捨て、この問題を(戦争として)提起したことは興味深いと思います。(米国、中国間には)これまでルールがあったかのように見えたとしても、実際には相互で守るべきルールが存在しない、ということですね?

競争には負けても良いという意味が内包されます。競争には、勝つか負けるかという余裕があるからです。商業的にはドイツや日本と常に競争していますが、トヨタがゼネラルモーターズよりも多くの車を販売していても、実際にはそれほど大きな問題ではありません。それが市場であり、お互いが守るべきルールに基づいて、同じ土俵で活動しているからです。一方、現在の中国との関係において「戦争」という言葉がはるかに正確で適切な表現である理由は、これが政治的闘争であり、その結果が私たちの社会システムの政治的な存続に関わるからです。また、これは「戦争」なので、これに打ち勝つために優先順位を上げ、十分な決意と緊急性をもって対処する必要がある、ということが理解しやすくなるというのもその理由です。

もう1つの理由は、戦争であれば、結果を出すために短期的なコストを負担することもできるという点にあります。第二次世界大戦では、ゼネラルモーターズが戦車や飛行機を製造し、国中が動員されました。Apple(アップル)に空母を作れとは言いませんが、私たちはサプライチェーンを中国から中国国外に移動する際にかかる短期的コストを真剣に考え始める必要があります。多額の費用がかかり、手間もかかる難しい問題ですが、サプライチェーンが利用できなくなることで生じる潜在的なコストは莫大です。手遅れになる前に労力やエネルギー、時間を費やして移動を実現する価値があります。その方がコストもかかりません。

あなたは本の中で、このように国家安全保障を目的として経済外交を中断すれば、冷戦時代に戻ると指摘したうえで、アウトバウンド投資へのCFIUSプログラムの適用と、すべてのサプライチェーンを中国国外に移すことを提案しています。民間企業が中国を切り捨てるために、あるいは巨大な市場機会としての中国への関心を減らすために、他にどのようなインセンティブが必要だとお考えですか?

過去に成功したプログラムの多くは、要は「アメとムチ」です。私は中国への機密性の高い投資を行う投資家や企業に一定の罰則を適用する一方で、米国や民主主義にリスクを及ぼさない他国との取引などの行動にインセンティブを与えるという組み合わせであれば、おそらく成功し、経済界の共感を得ることができると思います。

米国が戦争をしているのは権威主義的な中国政府であって、中国の人々ではないという違いを指摘していますね。大変残念なことに、この指摘が伝わっていない人もいるようです。

「グレーゾーン戦争」について語るとき、さらに中国との問題について国家的な議論をするときには「これは中国国民や中国文化に対するものではなく、中国の政治体制や中国共産党に対するものだ」と繰り返す価値はあると思います。

中国との関係において、私たちが正しいことをしているとする理由の1つは、最初の犠牲者、つまり中国共産党によって最も苦しんでいる人々が中国国民であるという事実です。三等国民として扱われているウイグル人やチベット人、政治的反体制派の人々も中国国民であることを忘れてはいけません。また、中国国営のニュースメディアは「中国に対して強硬な態度をとることは中国に対する人種差別である」というストーリーを流布しようとすることが多々あります。これも覚えておく必要があります。

画像クレジット:Simon & Schuster

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

「映像やテキストよりもリアルな人そのものを届けたい、残したい」、Voicyが目指す世界観

Voicyとスタディプラスが「大学に特化した」音声配信サービス開始、初期導入大学として新潟医療福祉大学が決定

2021年10月27日~31日の5日間にわたり、音声プラットフォーム「Voicy」は「Voicy FES ’21」を開催した。これは、総勢70人以上のパーソナリティによる50以上のセッションを「放送」する声の祭典だ。

なぜこのような大がかりなフェスを行うに至ったのか、またVoicyというサービスそのものや、それが生まれた背景について、Voicy代表取締役CEOである緒方憲太郎氏と参加パーソナリティの1人、国家資格キャリアコンサルタント / フリーアナウンサー 戸村倫子氏に話を聞いた。

織田信長のような魅力ある人のエッセンスを声で残したい

Voicyは「声のSNS」「声のブログ」ともいえる音声プラットフォームだ。配信者はVoicyアプリを使い10分未満の音声を録音して配信、リスナーはVoicyアプリまたはウェブブラウザを通じて番組を聴取できる。

利用時の基本料金は無料だが、お気に入りを含む任意のパーソナリティへねぎらいや感謝の気持を持って「差し入れ」を贈る機能や、特定のパーソナリティに毎月課金することで特別な放送の聴取権を得られる、いわゆる「推し」との強い絆を結べる「プレミアムリスナー」機能もある。

通常、「月額制」といえば、サービス全体に課金するものが多い。パーソナリティとリスナーが結びつくような仕組みは一風変わっている。

これが、単なる音声ブログではなく、音声SNSとも呼べる理由である。リスナー側から音声を発信することはできないが、コメントや「いいね」でリアクションできるうえ、プレミアムリスナーにはそれとわかるシンボルがコメントに付され、応援している、応援されている、という感覚をお互いに持つことができるからだ。

では、Voicyはどういった背景で誕生したのだろうか。

緒方氏は、Voicyという音声プラットフォームを「コンテンツではなく、人を届けるツール」と位置づけている。「魅力的な昔の人、例えば織田信長の声を聞けるのであれば、聞きたいですよね?未来のある地点から現在を振り返ってみて、魅力的だと思われる人の声を残し、聞くことのできる、人を届けられるサービスだと考えている」と説明した。

Voicyの収録アプリでは、音声を編集できない。そのことには2つのメリットがある。

1つは、「人そのもの」をリスナーに届けられること。「生活音が聞こえることで、その人の日常に想いを馳せられるし、その人の感情が生々しく伝わる」と緒方氏。「テキストや動画では、加工できるから加工された人物像しかユーザーには伝わらない。Voicyは、画像なしの動画ではなく、その人そのものをさらけ出し、人を届けられる」という。

もう1つは、配信者に負担を強いることがないというもの。

「魅力的な人、魅力的な情報を持っている人が、受信者が簡単に時間をかけず楽しめるよう、多くの時間をかけて配信用コンテンツを作っているのが、既存サービスの欠点だった。そのようなことでは、ただでさえ忙しい魅力あるリアルが充実している人が、配信サービスから離れてしまう。しかし、Voicyでは、10分のコンテンツを作るのに必要な時間は10分だけ。配信者に負担を強いることなく、またリスナー側も簡単にサービスを利用できるようになっている」と緒方氏はいう。

音声プラットフォームにこだわるのには、緒方氏の背景が関係している。というのも、緒方氏の父親はプロのアナウンサーとしてテレビ局やラジオ局で、いわゆる「声の仕事」をしていたからだ。

「父親も含め、アナウンサーたちが声だけで人々を魅了している場面を目にしてきたが、話す枠がなければ、その魅力を発揮できません。1人1枠、自分のチャンネルを持つことができれば、いつでも自分のリスナーに声を、自分の魅力を届けられるのにと考えました」。

また、公認会計士という緒方氏のキャリアも関係している。ベンチャー企業のブレインとして国内外問わず情報収集で回っているうちに、声を届けるプラットフォームがないと感じ「世の中にまだない新しいものを作りたい。ITの力で、声による人の魅力を届けるものを作りたい」とのことで、Voicyを2016年に創業したのだ。

ニューノーマル時代の聴取スタイルの変化

創業から4年ほど経過し、世の中を新型コロナウイルス感染症が襲った。人々は、外出を控えるようになり、自宅にこもることを余儀なくされた。このことは、Voicyのリスナーやサービスに影響を与えたのだろうか。

「通勤時間帯に聴取してくれているリスナーが多かったため、その部分で若干、利用率が下がったこともあった」と緒方氏。しかし「家の中で聞いてもいいんだ、という気づきがあってからは、家事など、何かをしながら聞いてくれるリスナーが増えたし、バラエティに富んだ放送が増えてきた」と振り返る。

また緒方氏は「生活しながらでいい、手を止めなくていい、ということで、むしろ聴ける時間が増え、わたしたち側ではパーソナリティの人となりをたくさん届けられるようになったと、好影響があったのではないかと感じている」という。

届けられる「人」を応援したい人たちが集まったVoicy FES ’21

そのような中、大規模なフェスが行われたわけだが、これにはどのような意図があったのだろうか。

緒方氏は、2つの理由を挙げた。

1つは、ある文化を作るには熱量が重要であると考えていること。もう1つは理解や認知を得たい、ということだ。

「声で人を届けるという文化を作り上げる中で、一極に熱量を集中させるタイミングが必要だと感じた。そこで、チケットを購入すれば、誰でも全プログラムを生で、またアーカイブで聴取できるフェスを開催することにした」と緒方氏。また「新しいものを作ると、理解されないことが多い。存在感を主張することで、理解や認知を深めたいと考えた」と説明する。

Voicyでは、2018年から2020年の間、「Voicyファンフェスタ」としてファンと配信者の交流イベントを行ったが、今回は参加パーソナリティ数、セッション数、期間などの規模をアップ。チケット購入で参加(聴取)できるようにした。

結果、参加者は6600人。これはリアルイベントでいえば東京国際フォーラムのAホールを埋め尽くすほどの人数だ。また公式Voicyフェスグッズなどの特典付きで、通常チケットより高額なスペシャルサポーターやサポーター枠もすぐに完売したという。

緒方氏は「それぞれ40人ずつの募集だったが、即完売。それほどパーソナリティたちを支えたい、応援したいというユーザーが多いんだなと実感できた」と想いを語った。

戸村氏は、Voicyの人気番組「ながら日経」の月曜日を担当するパーソナリティ。セッションへの登壇を直後に控えているタイミングだったが、Voicyのパーソナリティになったきっかけや、その影響、またフェスへの想いについて聞くことができた。

もともと、ラジオ局とテレビ局など3社で報道に関わる仕事をしていたという戸村氏。ライフスタイルの変化により、仕事との両立が難しくなり、いったん離れたが、ニュースを発信したいという想いを抱き続けていた。

そのようなときに、ながら日経パーソナリティの募集があることを知り、応募し、見事、オーディションを通過した、というわけだ。

「音声でニュースを届けられるため、高いクオリティを持ちつつ機動力もあるのが魅力」とVoicyというプラットフォームについて語る戸村氏。Voicyで配信するようになってから「子ども向けの話し方講座や学生向けキャリアセミナーなどで、聞いているよと声をかけてもらうことが増え、認知度の高まりを実感している」という。

フェスについては「普段は、音響のことを考え、ウォークインクローゼットの中で収録しているが、フェスでは他のパーソナリティに会える。同窓会のような、文化祭のようなこの雰囲気を楽しみたい」と語っていた。

作り手も楽しんでいるからこそ、リスナーも楽しめるし、応援したくなるのか、と話を聞きながら感じることができた。

音声市場はオワコンではない

2021年に入り、海外製音声サービスが上陸し、国内では熱狂的に迎えられた。それに追随するかたちで、Twitterなど古参のSNSサービスでも、音声でのやり取りに力を入れるようになった。

早い段階で海外製音声サービスが冷めてしまったことについて、緒方氏は「あれは、音声というよりオープンなミーティングサービス。リアルタイム性が求められるので、仕方ないところはあるだろう」と分析。そのうえで「音声業界は伸び続けているし、音声会話サービスを始めたTwitterなど他のサービスとは、音声SNS文化をともに作り上げていく仲間だと考えている」と思いを述べた。

事実、Voicyの年間UUは1100万人。実に、日本人口の10分の1近くに上る。また、配信登録者数は1000人を超えており、さらに毎月の応募者の中から3%ほどが審査を通過しているため、今後も増加が見込まれる。

「今は、トップスピーカーに牽引してもらいたいため、応募からの審査という流れになっているが、数年先には誰でも自分の番組を持てるようにしたい」と緒方氏。「音声での『人』のエッセンスをどんどん蓄積していけたら」と抱負を述べた。

最後に、Voicyの今後の展開について語ってもらった。

「今は、テキストにしろ、動画にしろ、情報を得るためにいったん立ち止まる必要がある。しかし、近い将来、耳さえ空いていればいつでも情報を取り入れられる、自分の好きな“人を聴ける”ようになる。

海外では、音声市場がかなり活性化してきているので、国内でも、耳から取り入れる「note」と言われるような立ち位置を目指していきたい」。

なお、Voicy FES’21を聞き逃した、あるいは興味が出てきた、という人は、今からでもチケット購入により、11月いっぱいはアーカイブを聴取できるとのこと。人そのものが声で届くという感覚を味わってみるのはどうだろうか。

今、対応を迫られている気候変動リスクとは何か?ジュピター・インテリジェンスCEOとキャシー松井氏がわかりやすく解説

Jupiter IntelligenceのCEOリッチ・ソーキン氏

気候変動リスクへの対応が迫られている。2022年4月には東京証券取引所が「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編され、プライム市場に上場する企業は気候変動リスクを開示しなければならない。日本初のESG重視型グローバル・ベンチャー・キャピタル・ファンドであるMPower Partners Fund(エムパワー・パートナーズ。以下、MPower)でゼネラルパートナーを務めるキャシー松井氏は「投資家は投資先のリスクを評価して意思決定を行いますが、企業が気候変動リスクを開示しなければ『十分なリスク評価』は行えません」と話す。

気候変動リスクを予測・分析するプラットフォームを提供するJupiter Intelligence(ジュピター・インテリジェンス。以下、ジュピター)CEOのRich Sorkin(リッチ・ソーキン)氏と同氏が対談し、気候変動リスク対応の今後を語った。

「気候変動リスク」とは?

気候変動リスクはビジネスにおいてどう重要なのでしょうか?

ソーキン氏:エネルギーセクターを例に考えてみましょう。気温が下がり過ぎてしまうと、発電設備が停止してしまうことがあります。あまりに強い風が吹けば電線が吹き飛ばされてしまいます。水温が高すぎると、発電設備全般、特に原子力発電の冷却効率が下がります。洪水が起きればオペレーションが止まったり、送電が止まってしまいます。

米国では2021年2月「February Freeze」と呼ばれる現象が起き、テキサス州全域の送電網が2週間と3日にわたって停電しました。影響はメキシコにもおよび、一部サプライチェーンの停止も引き起こしました。こうした例は枚挙にいとまがありません。

MPower Partners Fundでゼネラル・パートナーを務めるキャシー松井氏

地球温暖化などによる気候変動は、エネルギー供給に影響します。さらに、どんなビジネスもどこかのプロセスで電力を使うので、無関係ではいられません。気候が工場や社屋、ロジスティクスに与える影響を考えれば、その重要性が極めて大きいことはご理解いただけるでしょう。

MPowerは9月中にジュピターに投資を行いました。ESGと気候変動リスクの関係をお教えください。

松井氏:少し前まで、ESGは「コンプライアンスの問題」とされていました。しかし今、企業の成長においてESGは避けては通れない課題です。世界的に規制が増加を見てもわかるように、環境への配慮が社会的に要請され始め、気候変動リスクの開示も求められています。

投資家は、投資先を決定する上で、企業のリスクを評価します。先ほどソーキンさんが話した通り、気候、天候がビジネスに与える影響は大きなものです。つまり投資家は、気候変動リスクの評価を抜きに十分なリスク評価はできないのです。企業が成長する上で、気候変動リスクを開示し、ESGにも配慮して投資家を惹きつけることは喫緊の課題なのです。企業、官公庁などの組織が気候変動リスクをより正確に把握し、リスクマネジメントすることの重要性は増すばかりです。

ジュピター・インテリジェンスのビジネス

ジュピターはどのようにしてスタートしたのでしょうか?

ソーキン氏:当社の創業は2017年ですが、ビジネスのアイデア自体は2016年頃からありました。気候変動の影響が大きくなり、2015年のパリ協定で設定した目標を各国が達成したとしても、状況の悪化は避けられないのだと、私は考えたのです。しかし、この事態が何を意味するのか、どうすればいいのか、明確な答えを持っている人はいませんでした。それにもかかわらず、企業、官公庁、NGOなどの意思決定者は行動を起こさなければならなかったのです。

そこで、気候変動による物理的な影響や、深刻化の進捗の具体的な割合、影響を受ける地域などをソフトウェアによってモデル化し、可視化しようと考えました。

創業から今までの間にコロナ禍があり、クライアント企業の状況も変わっていく中で、山も谷もありました。ですが、コロナが落ち着き始め、一度去ったクライアントが戻り、2021年には米国の国防総省とのコラボレーションが始まりました。また、もともと米国内の気候変動リスクの分析のために当社を活用していたクライアントが、ヨーロッパやアジア地域の会社資産の気候変動リスクの分析も任せてくださるなど、活躍の場を広げています。

松井氏:ジュピターは日本でも顧客を増やしています。2020年7月からはMS&ADインシュアランス グループ ホールディングスとMS&ADインターリスク総研と連携し「TCFD向け気候変動影響定量評価サービス」を提供しています。また、チューリッヒ保険やNASAなど、大きなクライアントを抱えています。MPowerは気候変動リスク分析ではジュピターがリーディングカンパニーだと考えて投資しています。

気候変動リスク分析とは

ジュピターはどのように「気候変動リスク分析」を提供しているのでしょうか?

ソーキン氏:当社では大きく分けて2種類サービスを提供しています。1つは、リスクに曝されている資産すべてをスキャンするサービスです。顧客層としては、1000万件の住宅ローンを保有する銀行や、世界中に工場を持つ製薬会社を想像してもらうとわかりやすいでしょう。このサービスでは、顧客は世界中に分散している自社の資産が気候変動によって受けるリスクを確認することができます。

もう1つのサービスは、資産の種類ごとにリスクを分析するサービスです。こちらはワクチン生産の施設や、発電所、軍の基地、ホテル、大きなオフィスビルなど「物理的な資産」を念頭に考えていただくとわかりやすいと思います。こうした物理的な資産は、特定の場所に存在し、その場所特有の気候変動リスクに曝されています。それを分析するのです。

ジュピターのサービスはどんな問題を解決するのでしょうか?

ソーキン氏:順を追って説明しましょう。誰かが何かを建てようとするとき、その建築物は想定されるリスクに耐えられるように設計されます。そのリスクは風だったり、洪水だったり、水を使う施設なら、水温だったりします。こうした想定リスクは、設計時点での「平均的な天候」を基に計算されています。

ここで、完成して10年経った発電について考えてみましょう。発電所の建設には時間がかかるので、完成の10年前くらいに計画が始まります。この発電所の計画時点で採用される想定リスクのデータは、過去10年ほどの平均データです。それを使って10年かけて発電所が建てられます。つまり、この発電所の完成時点における想定リスクは、20年前の想定リスクです。

リスクが変動しないのであれば、想定リスクのデータが古くても問題ありません。しかし、実際、20年もあればリスクも変動し、洪水のリスク、海面の上昇、風の状況などが変わります。さらに、この発電所はすでに10年使用されており、その間にリスクも刻々と変化しています。つまり、既存のやり方で想定リスクに対応しても、実際のリスクには対応できていないのです。

では、ジュピターはその問題をどう解決するのでしょうか?

ソーキン氏:私たちは今の気候、天候はもちろん、1年後、5年後、10年後と、それぞれのタイミングで気候と天候がどう変化していくのかを予測します。火災、風、水温などの予測データを活用することで、顧客はより洗練された設備を建設することができます。また、顧客がすでに保持している特定地域の施設や建物などの資産が将来的にどんなリスクに曝されているのかを知り、対策を練ることもできます。

企業に迫る「開示」の圧力

2022年4月には東京証券取引所が新しい3市場に再編され、プライム市場に上場する企業は気候変動リスクを開示しなければなりません。

松井氏:「気候や天候が企業にとって大きなリスクである」という認識は、世界的に急速に広がっています。金融庁も有価証券報告書による気候変動リスクの情報開示の義務化を検討しています。対象になるのは上場企業や非上場企業の一部など約4000社といわれています。

開示に関する規制が迅速に進んでいく一方、企業の情報開示のための体制が整っていないのもまた事実です。そのため、ジュピターのようなサービスを提供している企業が重要になってくるのです。

ソーキン氏:気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures, 以下、TCFD)の提言をきっかけに当社のサービスを検討する企業も多くあります。TCFD提言は、企業等がビジネスに影響する気候変動のリスクと機会を把握し、ガバナンス、戦略、指標と目標について開示することを推奨するものです。

気候変動リスクに関する情報を開示するということは、リスクを理解することです。リスクを理解したら、企業は手を打たずにはいられなくなります。そのため、TCFDは自社の気候変動リスクに向き合うとても良いきっかけになります。

松井氏:どの企業も、どの業種も、規模に関わりなく気候変動リスク対応を行わなければなりません。気候は刻一刻と変わっています。日本だけでも深刻な自然災害が次々に起こっています。気候変動リスクを把握できていなければ、資産、人、地域に対するリスクも把握できていないということです。私たちのような投資家やステークホルダーは、投資先企業の全体像を見なければなりません。こうした背景があるからこそ、日本政府もカーボンニュートラルを急いでいます。

測れないものは管理できません。気候変動リスクの対策をするなら、リスクを把握することから始めなければいけません。これはもう選択の問題ではなく、避けられないことなのです。

ジュピターが日本でしようとしていることがあればお教えください。

ソーキン氏:日本は当社にとって非常に重要な市場です。私たちには、パートナーや顧客とコミュニケーションをとる日本担当のカントリーマネージャーが必要です。銀行、保険、電力、パブリックセクターに強い人材を必要としています。なぜかというと、私たちは「日本でビジネスをする米国企業」ではなく「日本の企業」としてこの国でビジネスを行いたいからです。興味のある人はぜひ、挑戦してもらいたいですね。

本日はありがとうございました。

ロボットにスナイパーライフルを装着させるという一連問題

ロボットに銃を装備させるというのは、実用的な四足歩行ロボットが登場して以来、我々が追い続けてきたトピックだ。先の展示会で、SWORD(スワード)と呼ばれる企業が設計した遠隔操作可能な狙撃銃がGhost Robotics(ゴースト・ロボティクス)のシステムに装着されているものがお披露目されたため、この問題がさらに重要性を増してしまった。

これはBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)がどうにかして自らを遠ざけようとしていた問題である。当然のことながら戦争マシンを作っているという事実は、一般的に見て企業イメージにもよろしくない。しかし、多くのロボット産業がそうであるように、DARPA(国防高等研究計画局)の資金援助を受けたBoston Dynamicsが恐ろしいSF映画のようなロボットを生み出しているという事実は事態を複雑にしている。

先のコラムでは、威嚇や暴力を目的としたSpotの使用に対するBoston Dynamicsのアプローチについて話をした。また、ロボットの背中に銃を取り付けることについての筆者自身の考えも少し述べたつもりだ(繰り返しいうが、私は銃やデスマシン全般に反対である)。記事を書く前にGhost Roboticsに連絡を取ったものの、返事をもらったのは記事が公開された後だった。

筆者はその後、同社のCEOであるJiren Parikh(ジレン・パリク)氏に、同氏が「歩く三脚」と呼ぶこのシステムについて話を聞くことができた。Ghostはペイロード、この場合はすなわちSWORD Defense Systemsの特殊用途無人ライフル(SPUR)を設計していないため、こういった呼び方をするのだろう。しかしここには重要な倫理的疑問が詰まっている。歩く三脚と同社は呼ぶが、実際の責任はどこに置かれているのだろうか。ロボット開発会社なのか、ペイロードを製造する会社なのか。またはエンドユーザー(例えば軍隊)なのか、はたまたこれらすべてなのか。

銃を装備したロボット犬の軍隊が誕生し得るという可能性があるのだから、これは非常に重要な問題である。

自律性の観点からお話を伺いたいと思います。

ロボット自体には、武器のターゲティングシステムのための自律性やAIを一切使っていません。システムを作っているSWORDについては、私からはお話しできませんが、私の知っている限りでは、武器は手動で発射されるトリガー式であり、ターゲティングも裏で人間が行っています。トリガーの発射は完全に人間がコントロールしているのです。

完全な自律性というのは、越えるべきでない一線だとお考えですか。

我々はペイロードを開発していません。兵器システムを宣伝したり広告したりするつもりがあるかと聞かれれば、おそらくないでしょう。これは難しい質問ですね。私たちは軍に販売しているので、軍がこれらの兵器をどのように使用しているのかはわかりません。政府のお客様にロボットの使い方を指図するつもりはありません。

ただし販売先に関しては境界線を設けています。米国および同盟国政府にのみに販売しています。敵対関係にある市場には、企業顧客にさえロボットを販売しません。ロシアや中国のロボットについての問い合わせは多いですね。企業向けであっても、こういった国には出荷しません。

貴社が望まない方法でロボットが使われないようにするための権利を留保していますか?

ある意味ではそうですね。弊社にはコントロール権があります。全員がライセンス契約にサインしなければなりませんし、我々が望まない企業にはロボットを売りません。弊社が納得できる米国および同盟国の政府にのみロボットを販売しています。ただし軍の顧客は、彼らが行っていることすべてを開示しないということを認識しなければなりません。国家安全保障のため、あるいは兵士を危険から守るために、特定の目的でロボットを使用する必要があるのであれば、私たちはそれに賛成します。

画像クレジット:SWORD

ロボットを使って何をするかではなく、誰がロボットを購入するかというのが審査対象という事ですか。

その通りです。このロボットを使って格闘技のビデオを作ったり、ロボットがとんでもないことをするリアリティ番組を作ったりしたいという声が寄せられています。しかし誰が使うかわからなければお断りしています。ロボットはあくまでも道具です。検査やセキュリティ、そしてあらゆる軍事的用途のためのツールなのです。

先に見た写真に関してですが、タイムラインはあるのでしょうか。

2022年の第1四半期後半には、スナイパーキットのフィールドテストを行う予定だそうです。

このケースにおける契約内容は何ですか?国防総省は御社やSWORDと個別に契約をしているのでしょうか。

契約はありません。彼らは市場機会があると信じているただのロングガン企業で、彼らは自分たちのお金で開発し、我々はそれが魅力的なペイロードだと思った。顧客がいるわけではありません。

画像クレジット:Reliable Robotics

さて、(少なくとも今回)軍用犬ロボットの話はここまでにしよう。陸上での案件から、海や空へと話を移したい。まずはベイエリアに拠点を置く自律型貨物機企業、Reliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)が1億ドル(約114億円)を調達した。設立4年目の同社の総資金額は、今回のシリーズCラウンドにより1億3000万ドル(約148億円)となり、自律型トラック輸送モデルを空へと移行させるべく計画を進めている。

無人航空機といえば、Alphabet(アルファベット)の子会社であるWing(ウイング)が米国でのドローン配送を本格的に開始することを発表した。オーストラリアとバージニア州の小さな町でパイロット版に成功した同社。その後ダラス・フォートワース都市圏で自律走行による配達を開始するべく、Walgreens(ウォルグリーンズ)とのパートナーシップを発表したのである。

画像クレジット:Alphabet

Wingは規制面での取り組みについて次のように話してくれた。

2019年4月、Wingはドローン事業者として初めて米連邦航空局から航空事業者としての認定を受け、数マイル先にいる受取人に商材を届けることができるようになりました。この認定の拡大版として、2019年10月にバージニア州でローンチすることができました。現在この拡大版の許可に向けて作業を進めており、その一環として、今後数週間のうちにテストフライトを行い、この地域で新しい機能を実証する予定です。ダラス・フォートワース都市圏でのサービス開始に先立ち、私たちは地元、州、連邦レベルの当局と協力して、すべての適切な許可を確保してまいります。

画像クレジット:Saildrone

水上はというと、こちらでも1億ドル規模のシリーズCが行われている。科学的なデータ収集を目的とした自律航行船を開発するSaildrone(セイルドローン)は、すでにかなりの数の無人水上飛行機(USV)を配備しており、その総走行距離は約50万マイル(約80万Km)に達しているという。

最後に、パンデミックによる人手不足の中、ロボットウェイターを採用するというThe New York Times(ニューヨーク・タイムズ)の興味深い記事を紹介したい。ロボットウェイターというのは大して興味深いわけでもないのだが、おもしろいことに、この結果人間のウェイターが受け取るチップが増えたと報告されたのである。

Serviによってウェイターがキッチンを往復する手間が省かれ、常に忙しいウェイターは客と会話する時間を増やし、より多くのテーブルにサービスを提供することができたため、ウェイターはより高いチップを得ることができたのである。

自律型システムは既存の仕事を置き換えるのではなく、企業が現在の人員では補えない部分を補うものであるという、ロボット関連企業が以前から主張してきたことが、このニュースで裏付けられた形になった。自律型システムが既存の仕事を完全に取って代わる事はなく、現在の人員では補えない部分を補完するのだということがよく分かる。これが完全な自動化への一歩となるかどうかは疑問だが、人間がより人間的な仕事に専念できるようになることに、大きな意味があるのではないだろうか。

画像クレジット:SWORD

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

ツイッターの元企業開発責任者で、現在はVCに身を置くセクソム・スリヤパ氏に話を聞く

Seksom Suriyapa(セクソム・スリヤパ)氏は、ベンチャーファームに身を置く運命にあったようだ。スタンフォード大学ロースクールを卒業後、2つの優良投資銀行で勤務し、その後サイバーセキュリティ企業McAfeeに上級企業開発部門の従業員として入社した。さらにヒューマンリソースソフトウェア企業SuccessFactorsで6年間勤務した後、2018年にTwitterに加わり、6月まで12人の企業開発チームを率いた。

意外なのは、スリヤパ氏はロサンゼルスに拠点を置くベンチャーファームUpfront Venturesに加わったばかりなのだが、もっと早い段階で飛躍を遂げなかったことだ。「きっかけは、私にぴったりの会社を見つけたことでした」とスリヤパ氏はいう。

サンフランシスコのベイエリアに住むスリヤパ氏に、Upfrontでの新たな役割と、創業者のYves Sisteron(イヴ・シスタロン)氏とともに成長ステージのプラクティスを拡大していくことについて話を伺った。

同氏はまた、最近少しばかり買収に拍車をかけているTwitterが買収についてどう考えているかについても明らかにした。我々の会話は長さのために軽く編集を加えている。

TC(TechCrunch):Upfrontに参加した経緯をお聞かせください。

SS(スリヤパ氏):(Upfrontで長年パートナーを務める)Mark Suster(マーク・サスター)氏と私は、ベンチャー業界におけるビジネス上の共通の知人の紹介で出会ったのですが、長い年月の間に同氏のことを知るにつれ、本当にすばらしい人物であることが分かりました。同氏はビジネスそのものに対して思慮深い、卓越したブランドビルダーです。(Upfrontは)ロサンゼルスをベンチャーマップに載せたと言えるかもしれません。

TC:同社は長い間アーリーステージ企業だった時期もありましたが、現在は「バーベル」戦略をとっています。あなたの新しい仕事は、ポートフォリオ企業が成長していく中で、その株式を維持できるようにすることですか?あなたはそのポートフォリオ以外で買い物をすることができますか?

SS:私にとってのミッションは、規模を拡大しようとしているUpfrontの100社を超える既存のポートフォリオ企業の中で最も優れた企業をサポートすることであると同時に、プラットフォーム上の通貨ではない企業に投資することでもあります。そして(後者では)今後ますます多くのことが起こると予想しています。

TC:Twitterは、あなたが在籍していた数年間、企業開発の分野でより活発に活動していました。理由を教えていただけますか?

SS:私が2018年に同社に参加したとき、約3年間CEOを務めていたJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は、パブリックな会話を促進するというコアミッションに真に注力していました。そのためにTwitterは多くの事業から身を引き、賢明な人たちからも距離を置くことになりました。

TC:2016年に従業員をレイオフしたと記憶しています。

SS:それから派生したことの1つは、新プロダクトの生産性がかなり下がったことです。そのため、私が加わる前の3年間、新規の買収はありませんでした。運動をしないと筋肉は萎縮します。(私の参加の前に)ジャック(・ドーシー氏)は経営陣を刷新しました。それまでは比較的重役の回転ドアのようなものでした。そして私は、数年間沈黙していた会社の開発を復活させるという使命に導かれました。(CFOの)Ned Segal(ネッド・シーガル)氏がGoldman Sachsの銀行員だった頃とSuccessFactorsに在籍していた頃のことを知っていたので、人づてにその役割について聞いたとき、私はコンタクトを取ったのです。

TC:Twitterは、ニュースリーダーサービスのScroll、ニュースレタープラットフォームのRevueを買収して、買い物を始めました。これらの決定はトップから下ってきたのでしょうか、あるいはその逆でしょうか?

SS:それを説明する最善の表現として、それはプロダクトニーズ主導型であった、と言い表せるでしょう。同社にはいくつかの異なる目標がありました。1つは、Twitterが広告主導型のビジネスであることに依存するのを多様化することでした。収益の80%は広告から来ているといった点です。

第2に、企業として機械学習(ML)と人工知能(AI)を強化すべきであるという、驚くほどの必要性が存在していました。会話の中の有害性を探す場合、そのために何万人もの人を雇うことはスケーラブルではありません。それを見つけるには機械学習が必要です。またTwitterは、ユーザーにとって最も興味深い会話を表示できるようにすることも上手く成し遂げていますが、そのためには、ユーザーがフォローしたり、読むことに時間を費やしたりしているものや、ユーザーがやり取りしているものからのシグナルを取得する必要があります。その中核はML AIです。(関連して)ジャック(・ドーシー氏)には、ネイティブ言語でツイートする人は誰でも、グローバルな会話の一部としてネイティブ言語で他の人と話すことができるようにする必要があり、そのために(自然言語処理)技術を大幅に拡充しなければならない、というビジョンがあります。

TC:コンシューマーアプリケーションへのフォーカスというものもありますね。

SS:それが3つ目の目標です。フォロワーとクリエイターがお互いとの会話に使えるツールは何でしょうか?そこで(Twitterは)ClubhouseのライバルであるSpacesを通じて音声を追加しました。SubstackのライバルであるRevueを買収しました。このようにして、Twitter上で見たり作成したりすることが期待されるコンテンツの種類に関係する多くのイノベーションが起こっています。

TC:これらの買収について、プロアクティブ(先見的)とリアクティブ(反応的)のどちらであると説明しますか?

SS:外から見ると、リアクティブに見えるかもしれませんが、実際には私たちは、Clubhouseが離陸する前からSpacesのようなものについて考えていました。注目すべきなのは、Twitterのような企業が、その領域に特化した企業と真っ向から対決するケイパビリティと新プロダクト領域を構築し、それがDay 1から競争力を持つようになったのを(Spacesの事例で)初めて見たことだと思います。TwitterがClubhouseを打ち負かしたのは、Android版にリソースが注ぎ込まれていたからであり、Twitterの仕組みやクリエイターがTwitterを利用しているという事実の多くが、このセグメントを勝ち抜くための絶好のスポットにTwitterを位置づけていると私は考えています。

Twitterはまた、ソーシャルメディアを利用しているときに警戒すべき有害性や事柄を発見するための膨大な専門知識を持ち合わせています。Clubhouseほどの規模の企業は、少なくとも創業当初は、そこまで到達するのにかなり苦労することになるでしょう。

TC:Twitterは、暗号資産や分散化など、非常に多くの関心事を抱えていますね。

SS:Twitterの優先事項に関しては、今後5年から10年の間に登場すると予想される技術の点では多くが秘匿状態にあります。ですが、暗号資産とそれを取り巻く基盤プロトコルのインパクトについて、そして人々のプライバシーを保護し、コンテンツがどこに保存されているかを人々が心配しなくて済むような分散型インターネットが置かれている、信頼性の低い無許可状態(の世界)にTwitterがどのように参加するかについて(に多くの考慮が払われている)でしょう。人々はTwitterを単なるコンシューマーアプリと捉えているかもしれませんが、内部には驚くべき多様性が秘められています。

TC:現在の規制環境の影響で、FacebookやGoogleに吸収されたかもしれない企業やプロジェクトと協業する上で同社は優位に立っていると思われますか?

規制環境という点では、FacebookとGoogleを等式から外しても、競争力のある買収者が存在し、それがステップアップして買い物をすることになりますので、この2社だけを考えるのは少し近視眼的だというのが現実的です。しかし、彼らが活動的だったときでさえ、私たちは(取引を)勝ち取っていました。私たちが買収した企業の多くはTwitterに入ることを自ら選んでいます。Twitterが象徴しているもの、そして組織を率いるジャック・ドーシー氏のやり方を気に入っていて、同氏が取っている方針と、同氏とその指導者たちが主唱している見解を信じているからです。

TC:あなたは今、まったく異なるブランドを体現しようとしています。Twitterで行ってきたことは、Upfrontを代表して取引を勝ち取る上でどのように役立つと思われますか?

SS:私は世界中にすばらしい起業家のネットワークを擁しています。自分のキャリアを通じて買収を支援したり、買収を試みたりした企業や、ビジネスを運営している人々のネットワークです。私はさまざまなステージにいるVCとも関係を持っていて、世界中のビジネスを積極的に見つけて(そして企業の開発チームに紹介して)います。Twitterにはダイバーシティとインクルージョンのプログラムがあり、今後数年間で25%のリーダーシップを多様化させようとしていることを知っている人もいるかもしれません。私のチームはしばしば、多様性のあるターゲットを見つけて獲得するための最善の方法を見出すことに関わってきました。私はまた、新興ファンドへの一連のLP投資を指揮しました。ラテンアメリカ系のファンドもあれば、女性が設立したファンド、黒人が設立したファンドもあり、地理的な観点からも多様で、遠く離れた場所にある企業をスカウトしているファンドもありました【略】。

TC:Twitterは直接投資も行っていますか?

SS:私たちは直接投資を行いましたが、(ファンドマネージャーを支援することは)よりレバレッジドなアプローチです。そのほとんどはシードファンドで、30社から60社への投資につながります。しかし、そうです、私は(インドの)ShareChatを含む遠く離れた場所の企業をスカウトしました。ShareChatでは、私は2年間取締役を務めています。(編集部注:TechCrunchは2021年初め、TwitterがShareChatの買収を検討していると報じた。同社はその後何度も資金調達を行っており、直近では投資家から30億ドル[約3300億円]近くの評価を受けている。)

TC:あなたは豊富なリレーションシップを築いていますが、他にも多くの組織が投資している中で、成長ステージの取引で競争するのは非常に厳しそうに思われます。どのように競うことを想定していますか?

SS:こうしたネットワークを利用して取引を見つけていくことは間違いないでしょう。Upfrontがすでに投資しているセクターに投資するつもりですが、最初のうちは、私が強い関心を持っている、クリエイターエコノミーのエコシステムを含む領域でダブルクリックしようと考えています。その多くにTwitterで携わっていましたし「Web 3.0」、この無許可の(Twitterもフォーカスしている進化の)地帯でもあるからです。しかし、私は自分を甘やかすことはしません。バリュープロポジションが何であるかを学ぶことにより、競合していくことができるのだと思います。Twitterでは、私の戦略は、スピードで勝利すること、人々をより早く知ること、そして(取引をまとめるために)Twitterのバリュープロポジションを強調することにありました。まだ実装していませんので私の(VC)戦略についてお話しできることはありませんが、メガファンドが提供しないような、起業家にとって最も興味深い何かを見つけ出す必要があるでしょう。

画像クレジット:Seksom Suriyapa

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)