ニュースソースの信頼度をランク付けするNuzzelRank、本誌TechCrunchは総合4位だった!

Elon MuskAdBlock Plusも、誰もかれもが、信頼できるニュースソースはこれだあれだと主張する。今回、ニュースアグリゲーターのNuzzelももその仲間に加わった。

このほど同社がローンチしたNuzzelRankは、CEOのJonathan Abramsによると、“人気も評価も高い何千ものニュースソースを優秀なビジネスインフルエンサーたちからのシグナルに基づいて、権威あるランク付けを行ったもの”、だ。彼によるとそれは、これまで同社のニュースモニタリングとリサーチサービスNuzzel Media Intelligenceで使っていたランキングシステムをリプレースする。

NuzzelRankは、同社のMedia Intelligenceリポートの外で見ることもある。たとえばNuzzelのトップソースには新たにランキングのページがある。またAbramsによると、パブリッシャーは自分のWebサイトにNuzzelRankのスコアのバッジを貼り付けることができる。このバッジ機能は、API化するつもりだ。

ではでは、Nuzzelはどのようにしてランク付けをしているのだろうか? トップソースのランキングで本誌TechCrunchが、全体の中で信頼度4位であることを知ったら、ますますそれを知りたいだろう。1〜3位はThe New York Times, The Washington Post, The Atlantic(1857年創刊!)と老舗有名紙誌が並ぶが、The New YorkerやWiredは本誌より下だ…こいつらはどちらも、きれいごとの記事が多く、ちょいとアホっぽいもんね。

Abramsによると、Nuzzelのランク採点法は主に三つあり、まず、読者が読んだか読まなかったかというNuzzel自身のデータ。第二に、“ニュースソースのエンゲージメントと権威に関する外部のシグナル”を見る。

第三は、いろんな独自のやり方でニュースソースを採点している大量の外部団体を参考にし、それらを信頼性でソートする。そのためNuzzelは、Trust ProjectとCredibility Coalitionに参加しているし、またNewsGuardやDeepnews.aiとパートナーしている。

NuzzelRankの発表声明の中でAbramsは、同社は人間編集者に依存していないし、彼らの判断をそのまま使うことはない、と強調している。“Nuzzelはつねに、スケーラブルなソリューションの構築にフォーカスしており、そのためにソフトウェアを使って既存の貴重なシグナルを集積し、有用で役に立つ結果を提供している。人間的なアプローチはスケーラビリティがなく、偏りがちだ”、というのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Comcast、Fox買収に650億ドル正式提示――連邦地裁決定を受け、Disneyと競り合いへ

アメリカのケーブルテレビ最大手のComcastは21世紀フォックスの買収案を持っているとわれわれは報じたが、事実だった。ComcastはFoxの映画およびテレビ事業を650億ドル(1株あたり35ドル)で買収する提案を行った。

この金額は昨年12月にDisneyとの間で合意に達していた524億ドルを19%上回る。

アメリカ連邦地裁がAT&TとTime Warnerの合併を認める決定を下したことでComcastgがFox買収で新たな動きを見せるはずだと強く予測されていた。反トラスト法に基づく司法省の合併差止を連邦地裁が覆したことで、キャリヤ企業とメディア企業の垂直統合が広く認められることになるはずだ(ちなみにTechCrunchの親会社OathはキャリヤのVerizonのデジタルメディア事業部)。

Foxの経営陣宛 (つまりルパート・マードックらマードック家の3名)書簡でComcastのCEO、Brian Robertsは次のように述べている

昨年われわれが会った後、 経営陣はComcastこそFoxの事業にとって戦略的に理想的な居場所だと結論した…(われわれの買収提案の方が)はっきりと高額であったにもかかわらずFoxがDisneyの買収提案を受諾したことに失望していた。

AT&T/Time Warnerの合併を巡る昨日の裁判所の決定およびFoxの株主総会の期日が迫っているという事情に照らし、われわれは引き続きFox買収に強い意欲を持っているので以下に全額キャッシュによる新しい買収案を提示する。これはFox買収に関するこれまでの取締役会の意思を完全に引き継ぐものだ。

これでComcastとDisneyはFox買収を巡って全面的に対決することになった。買収の対象は Foxの映画スタジオ(『アバター』シリーズ、X-MENの映画化権、『ファンタスティック・ビースト・フォー』、オリジナルの『スター・ウォーズ』を含む)、テレビスタジオ、ケーブルネットワーク、Huluの持ち株だ。

Robertsは書簡で「(ComcastによるFox買収は)Disneyによる買収と同等かそれ以上に規制当局からの承認を受ける可能性がある」と述べ、さらにFoxがDisneyとの合意を解消する場合に必要な制裁金15億ドルをComcastが肩代わりする用意があるとした。

アップデート: Foxは新たな買収案を提示する書簡を受け取ったことを公表した。この声明で同社は「Comcastからの提案により、株主総会を延期ないし一時休止するかどうか、まだ結論を得ていない」としている。Foxでは7月10日にDisneyの買収提案を議題とする株主総会を開催する予定だった。

画像:Mike Mozart / Flickr under a CC BY 2.0 license

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

連邦地裁、AT&TとTime Warnerの合併を承認――政府の差止決定を覆す

反トラスト法に基づいてAT&TとTime Warnerの合併を差し止めたアメリカ政府の決定を連邦地裁のRichard J. Leon判事は覆した。この数週間、こうした決定が下されると予想されていた。当初からこの合併に反対してきたトランプ政権には打撃となるはずだ。決定はニューヨーク証券取引所の取引終了後に発表された。時間外取引への影響は軽微だった。

独自のコンテンツ製作者の立場を確立しようとしてComcastは21st Century Fox(21世紀フォックス)の買収を狙っていた。今日の決定を受けて、Comcastは早ければ明日にも正式な買収提案に動くと予想されている。

2016年10月に AT&TはTime Warnerを854億ドル(純負債を含めて1080億ドル)で買収する計画を発表した。 これに対し、政府は3月に「競争を阻害し、消費者の選択を狭める」として合併を差し止める決定を行った。

今回の連邦地裁の決定が持つ意味は重要だ。AT&TとTime Warnerの合併という個別案件にとどまらずメディアの再編というさらに大きな問題に影響を及ぼすはずだ。

まず第一に、反トラスト法の目的は経済力が1社に過度に集することによってもたらされる不公正なビジネス慣行から消費者を保護することだ。こうした案件では常に合併の結果生じる会社の規模が問題にされる。しかし反トラスト法の目的は規模を制限することではない。垂直統合においては新たな企業が競争を阻害せず、むしろ消費者の選択を増やす場合が往々にしてみられる。

垂直統合というのは、異なった、ないし相補的な関係にあるビジネス分野の2社が合併するような場合だ。新会社が適切な利益を上げつつつ、消費者は同一あるいはより低い料金で以前より広い範囲のサービスを選択することでできる結果となることが珍しくない。もちろんだからといって垂直統合が無条件に承認されるわけではない。FTC(連邦取引委員会)は2000年以来22件の垂直統合を差し止めている。しかし概して水平統合よりも審査は厳しくない。

AT&T/Time Warnerの件は垂直統合の例と考えられる。AT&Tはキャリヤであり、コンテンツの配給者であるのに対してTime Warnerはコンテンツの製作者だ。しかし他の要素が問題を複雑化していた。

まずこの分野で活動するプレイヤーの数がきわめて少なく、それぞれが強い影響力を持つ世界的企業だ。AT&T自体、世界最大のテレコム企業であるし、傘下のDirecTVを通じてアメリカ最大の多チャンネル配信者でもある。一方Time WarnerはHBO、TBS、TNT、ワーナー・ブラザース・エンタテインメント、NBA、MLB、NCAA March Madness、 PGAなどのスポーツ試合を中継する有力メディア・コングロマリットだ。

そこで司法省は「AT&T-Time Warnerの合併が行われれば、新会社は競争相手に料金引き上げることを余儀なくさせ、競争力を失わせるために通信料金の引き上げを行うことができる」と主張した。政府はまたネット中立性を担保する規則が廃止されるため、たとえばAT&TはNetflixがTime Warnerのコンテンツを配信しない場合、通信料金を引き上げるのを防ぐことができないと論じた。

これに対してAT&TとTime Warner側は(事実巨大企業ではあるが)激しい競争にさらされており、ライバルとなる有力デジタル企業、FAANG(Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Google)はすべてビデオ配信を最優先事項のひとつしていると反論した。CNNMoneyが報じたところによれば、AT&T-Time Warnerの弁護士、Daniel Petrocelliは「〔Time-Warneのような〕伝統的形態のメデイア企業はデジタル革命にすでに大きく遅れを取っている」と述べている。

CNNMoneyによれば、こうだ。

PetrocelliはLeon判事に「推算によればFAANG企業の時価総額合計は3兆ドルにもなる。これに対してAT&T-Time Warnerの合併後の時価総額は3000億ドルにしかならない。われわれは彼らの後ろを懸命に追いかけているところだ」と述べた。

一方、トランプ大統領は選挙キャンペーン中から合併に強く反対してきた。Time WarnerはCNNを所有しており、トランプ大統領が目のかたきにしているメディアだ。2016年の選挙戦の演説でトランプ候補は「私が大統領になればこの合併は断固阻止する」と述べ、メディア事業への政治の介入の懸念を高めていた。ただしトランプ大統領は反トラスト担当者にこの件で連絡は取っておらず、合併を承認しないという決定はホワイトハウスからの指示ではないという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


【以上】

アメリカのインターネットサービスプロバイダーは顧客満足度が最低の業種

ISP(インターネットサービスプロバイダー, internet service provider)に対する不平はほとんどの人が持っているし、近年、その評価が上がるような要素も見当たらない。それどころかその評価は、最新のAmerican Customer Satisfaction Index(ACSI, 全米顧客満足度指数)によると、下がる一方なのだ!

ACSIの数字は、数千名の消費者を対象とするアンケート調査の結果だ。そしてさまざまな業種の中でもとくにISPは、昨年の最下位のときからさらに満足度が落ち込んだ。

(注: VerizonはOathのオーナーで、後者は本誌TechCrunchのオーナーだ。もちろんこの記事ではVerizonの数値は元のままである。)

ACSIの報告書はこう述べている: “有料ケーブルテレビと並んで、これまでで最低のISPはすでに、ACSIが対象とする全業種中で顧客満足度が最悪である。顧客はその高価格と低サービスに不満だが、しかしインターネット接続は選択肢が少なく、全世帯の半数以上が高速ブロードバンドに関しては選択の自由がまったくない”。(関連記事: 米FCC、インターネット・スピードマップを公開、地域別通信速度が一目でわかる

FCCやブロードバンド企業が言うこととは逆に、モバイルのような比較的寡占傾向の業種と比べてさえ、ブロードバンドに関しては良い選択肢が少ない。そしてそのサービスは、ユーザーがその企業を気に入り好きになるものからはほど遠い。

昨年2017年に比べると、すべてのサービス科目で評価は落ちている(下図)。ComcastやCoxなどはサービスの改善と料金体系の簡素化を約束していたにもかかわらず、この結果だ。

ISPに対する評価(黒が今年(2018))。

ぼくのところはComcastでまあまあだが、しかしそれは今の迷路のようなサービス体系の中からカスタマーサービスの人が苦労して最適メニューを選んでくれた結果だ。平均的には、決して良いとは言えないだろう。これで料金が予告なしに上がったりしたら、ぼくの評価も急激に下がるだろうな。

ストリーミングサービスとビデオオンデマンドが、この調査に初登場しているが、評価はかなり良い。NetflixとPlayStation VueとTwitchが中でも好評で、最低のSonyのCrackleでさえ、万年不評の有料ケーブルテレビより良い。なお、有料ケーブルテレビのプロバイダーの多くは同時にまた、同じく不評のISPでもある。それははたして、偶然だろうか?

ISPはソーシャルメディアよりも不評(しかしソーシャルメディアのこの得点、高すぎでは?)。

航空会社や保険会社は全業種の中でも、70点の前半という低い評価だが(上図)、ISPと有料ケーブルテレビはそれらよりもさらに低い。好きなコンテンツを見るためのテレビ(オンデマンド)は、テレビサービスの中ではトップだ。ISPという業種業界は、そろそろ大きく変わるべき時期だね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Spotify、「憎悪行為」ポリシーを再考へ

音楽ストリーミングサービスのSpotifyは、今月上旬に「憎悪行為」ポリシーを発表して物議を醸した。数週間が過ぎた今、同社はすでに方針を再考しているらしい。アーティストや社内からの反発を受けてのことと思われる。

Bloombergの最新記事によると、同ストリーミングサービスは、アーティストを音楽以外の活動を理由に推奨プレイリストから除外するというポリシーを先日発表し、適用対象となったアーティストのうち、このほど少なくとも1名の措置を撤回することを検討している。

「われわれはアーティストやクリエーターの行動を理由にコンテンツを検閲することはないが、編集権 —— プログラム内容の決定 —— は維持したい」と5月10日に同社は書いた。「アーティストやクリエーターが有害あるいは憎しみに満ちた行為(子供に対する暴力や性的暴力)におよんだ場合、当社の当該アーティストやクリエーターとのつきあい方やサポートに影響を与える可能性がある」

具体的には、SpotifyはR. KellyおよびラッパーのXXXTentacionの除外に踏み切ったようだ。後者は本人が女性を殴打するビデオが公開された後、同サービスの人気プレイリスト、Rap Caviarから除外された。一連の暴力事件の一つだ。

しかし最近記事によると、結局SpotifyはXXXTentacioaを収集プレイリストに戻し、新たに契約交渉しているという。しかしR. Kellyは除外されたままのようだ。

本誌はSpotifyにコメントを求めている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

GDPRの施行でアメリカのニュースサイト触法懸念でヨーロッパからの読者を敬遠

EUの新しいプライバシー法が施行された金曜日(米国時間5/25)には、アメリカの一部のニュースサイトがヨーロッパの読者にとって存在しなくなった。そのGeneral Data Protection Regulation(GDPR)と呼ばれる規則は、消費者の何らかの個人データを集めるインターネット企業が従うべき厳格な要件の集合を定めている。その影響はきわめて大きいので、アメリカのメディア企業Troncは、何かが違反と見なされることと、それがもたらす予期せざる結果を恐れて、ヨーロッパの読者をすべてブロックすることに決めた。

EUをブロックするTronc傘下のサイトは、Los Angeles Times, The Chicago Tribune, The New York Daily News, The Orlando Sentinel, The Baltimore Sunなど、地方の名門紙が多い。Lee Enterprises傘下の新聞、The St. Louis Post Dispatch, The Arizona Daily Starなども、ヨーロッパの読者をブロックした

[Tronc傘下の新聞はどれもGDPRに違反しているようだ、ヨーロッパからのトラフィックを遮断した]

ヨーロッパの人たちが読まなきゃ(当面)文句ないだろう、と考えたTroncと違って、アメリカの大手全国紙の多くは、Webサイトの問題箇所を削除改変したバージョンを提供したり、ユーザーデータの利用に関してオプトインを求めたりしている。NPRは、同サイトのプレーンテキスト・バージョンを読者にすすめて、喜ばれている。

[USA TodayのGDPR遵守バージョンは広告も自動再生ビデオもなく、すっきりしてとても良い]

多くの地方紙が、その多くがアメリカの市場に貢献しているEUのユーザーを遮断して良しとしているが、一部は、これを機にむしろ、国際的な読者を惹きつけて目立とうとしている。彼らは、のけ者にされたヨーロッパのユーザーに、遮断作戦を公然と批判するよう、すすめている。

彼らは、批判されて当然である。GDPRのプライバシー規則は2016年4月に採択されたから、企業がコンプライアンスを整備する時間は規則の施行まで2年もあったのだ。

GDPR入門記事(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Netflixは時価総額でComcastを超えた――絶好調という噂一覧

Netflixの時価総額は今やケーブルTVの最大手、Comcastを超えた。企業を評価する尺度は時価総額以外にも多数あるが、象徴的な意味としてはAppleの時価総額がExxonを追い越したときと比較できる。テクノロジーの発達におけるある種の分水嶺となるかもしれない。

Netflixについて、実際の意味はともかく、象徴的に目立つ話題をいくつか拾ってみよう。

  • Netflixのユーザー数は依然上昇中:ユーザー数は市場が最初に注目する数字であり、Netflixの株価(つまりは時価総額)が上昇しているのもこれによる。
  • ケーブルTVの解約が続く:. Netflixはコンテンツの配信をビジネスとしており、ケーブルTVを提供しているわけではない。しかしNetflixから配信を受けるためにはインターネット接続が要るので現状では家庭になんらかのケーブルを引き込む必要がある。もちろん将来すべてが無線接続になれば話は別だ。
  • Netflixはコンテンツ製作に大金を投じている:人々が望む(消費する)のはコンテンツだ。ケーブルTVも結局はそのコンテンツを売っているわけだが料金が高い。Comcastはこれに対抗してNetflixをバンドルし始めた
  • NetflixとComcastは株価の基準が大きく異なる:Comcastの株価はその現実の収益性に基づいている。Netflixは…なんというか、成長中の会社として、将来はComcastより大きなビジネスになるだろうという期待に基づいて評価されている。そうなるかもしれないし、ならないかもしれない。
  • Comcastの売上はNetflixよりはるかに大きい:今年第1四半期の売上はNetflixが37億ドル、 Comcastが228億ドル、フリーキャッシュフローが31億ドルだった。一方、Netflixは2018年のフリーキャッシュフローについて30億ドルから40億ドルの赤字を予想している。

ともあれNetflixは2ヶ月くらいのうちに次の四半期決算を発表するはずだ。上に挙げたような指標にも変化が生じるだろう。Netflixの株価は市場の期待に基づいているため、簡単に動く。もちろん株価の変動はBitcoinほど大きいわけではないが、ランダム性も高く予測は難しい。

おっと、これからNetflixでリバーデイルのシーズン2を見なければならない。やっぱりこういう独占コンテンツがあるからComcast より強いのだろう。あと数時間は忙しいので悪しからず。

画像:Ethan Miller

〔日本版〕現在のNetflixの時価総額は1518億ドル、Comcastは1455億ドルとなっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

YouTubeが有料会員制のRedサービスを改築して単独の音楽ストリーミングを提供Google Play Musicはそっちへ吸収

メッセージングに関するGoogleのフォーカスもそうだが、ストリーミングと音楽を独立のプロダクトにしたいというYouTubeの取り組みにも、混乱と出鱈目がもっぱら感じられる。今回同社は、それを単純化し一本化すべく、音楽と動画を分離し、前者に関して新たなサービスを立ち上げた

そのYouTube Musicは名前が示すとおり、5月22日にローンチされる音楽ストリーミングサービスだ。それはApple MusicやSpotifyとまともに競合することを目指し、業界の標準的なやり方として、最初は無料の試用期間、その後は月額$9.99の会員制になる。

広告が入る無料バージョンもあるが、それにはBGM化や曲のダウンロード、音楽発見機能などの、有料版にある機能がない。なお、気になっていた人もいると思われるが、これまでのGoogle Play MusicサービスはYouTube Musicにリプレースされる。

YouTube Musicは元々、有料制のビデオストリーミングサービスYouTube Redの一部だった。しかし今回の分離により、月額$11.99出してYouTube Redの会員になる人は、両方のサービスを利用できる。そしてこれからは、音楽とビデオの両方をカバーするという意味で、YouTube RedはYouTube Premiumへと改名される。

ますます混乱してきたようだが、要するにYouTubeは、顧客に音楽オンリーの有料会員制サービスを提供し、あと2ドルでビデオも楽しめますという人参をぶら下げたのだ。もっと意地悪な見方をすれば、YouTube Redが2ドル値上げされたのだ。お好きな方の解釈を、お取りいただきたい。

でもこの分割はとても合理的だ。SpotifyやApple Musicのような優れた音楽ストリーミングサービスがあるのに今でもYouTube上で無料で音楽を楽しんでいる人は多い。とくに途上国では、公共交通機関の中や、いろんなところに、たくさんのYouTubeリスナーがいる。それは、Spotifyなどが食い込めない市場だ。

しかしYouTubeのこの新しいサービスは当初、先進国市場(“第一世界”)だけを対象とする。それらは最初、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、そして韓国。次の段階でオーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ロシア、スペイン、スウェーデン、イギリスへ展開される。

画像クレジット: Patrick T. Fallon/Bloomberg, Getty Imagesより

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AIでお利口になったGoogle NewsアプリがiOSとAndroidに登場

Googleは先週のI/Oイベントで、AIで強化したNewsアプリの新バージョンを披露したが、今日(米国時間5/15)ついにその新装アプリのiOSバージョンAndroidバージョンが127か国でローンチされた。この、設計もデザインも一新されたアプリは、これまでGoogle PlayにあったNewsstandアプリをリプレースする。

ニュースの発見や消費が前よりも容易になり、ユーザー体験を読者がカスタマイズでき、そして各種のメディア刊行物をこのアプリからサポートする。AIが読者の嗜好から学んでその人向けのコンテンツを提供するが、アプリ全体のデザインとレイアウトはきわめてすっきりしている。

アプリを開くと‘For You’(おすすめ)タブがあり、現時点の上位5つの記事や、あなたに向いていると思われるオピニオン、その下の長い読み物などがある。

‘Headlines’(ヘッドライン)というタグは最新のニュース集で、国際、国内、ビジネス、テクノロジー、エンタメ、スポーツ、科学、健康などに分かれている。記事タイトルをクリックすると、関連記事や社説、オピニオン、ツイート、ビデオ、イベントのタイムラインなどのリストが表示される。

  1. google-news-3

  2. google-news-1

  3. google-news-2

ユーザーが設定するカスタマイズには、AIが介入しない。だから好きなトピックやニュースソース、位置などを自由に指定できる。これは良い! 検索や記事を保存しておけるし、それらを一発で呼び出せる。

‘Newsstand’(ニューススタンド)というセクションでは、好きなメディアを指定できる。雑誌は1000種以上に対応しているそうだから、その中から好きなやつをタップして選ぶ。ただしこのセクションは、まだ建設途上のようだ。完成していない。

これもまだ未来形の機能である“Subscribe with Google”(Googleから購読する)では、各種メディアをGoogleのアカウントで有料購読できる。決済情報は、Google上のそれが使われる。それらのコンテンツは、NewsだけでなくGoogle Search(検索)や発行者のWebサイトでも閲読できる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Netflixは支出の85%をオリジナル作品の製作に投ずる、既存の超大作映画などは儲からない

まだ疑っている方がおられるかもしれないが、今のNetflixは確かに、オリジナルコンテンツに軸足を置いている。コンテンツ担当最高役員(Chief Content Officer1) Ted Sarandosの推計では、今後の同社の支出の85%が、新しい番組やムービーの制作に向けられる。

今日(米国時間5/14)、MoffettNathansonのMedia & Communications Summit 2018におけるSarandosの所見を載せたVariety誌の記事によると、今後の年内のオリジナルの制作予定は470本あり、今年全体では1000本近くになる。

同社がオリジナルを重視するのは、当然かもしれない。なにしろ最近では、訪れたユーザーが最初のページで目にするのは既存大手の大ヒット映画/番組等ではなく、同社の新作オリジナルだ。またAppleAmazonHuluなども、オリジナル作品への支出を増やしている。

ただし、支出ではなく収入はどうか。それはまだ他社からライセンスしたコンテンツが断然強くて、最近の調査では アメリカにおける視聴数の80%がライセンスされたコンテンツだ。

全体的な状況としてはどうなっているのか、というと、これまでNetflixにライセンスを売ってきた大手映画会社等は今では、自分のコンテンツを自分でストリーミング提供したり、ライセンス料を上げたりする傾向にある。そのことが、ストリーミング各社のオリジナルコンテンツへの傾斜の背景にある。

またSarandosによると、ムービーはNetflixにおける全視聴件数の1/3を占めるが、しかしいわゆる大作映画に巨額のライセンス料を払うことはもはや、ストリーミングサービスにとって割に合わない。超有名超大作は、すでに映画館で見たという人が多いからだ。

“前から言っているように、今では、10億ドルあったらそれを生産物契約(output deal)に投じるより、オリジナルの制作に投じた方が良い”、と彼は述べる。

Sarandosはさらに、Queer Eyeのような、台本のない、社会的メッセージ性のあるリアリティ番組や、Shonda RhimesRyan Murphyのような有能な番組プロデューサーの起用に今後の商機を見ている。

オリジナル作品に対するNetflixの今年の予算は70〜80億ドルだった。そして今日は、(ぼくも大好きだったLost in Spaceリメイクの第二シーズンと、Shape of WaterのGuillermo del Toroand監督による連続ホラー10 After Midnightの製作が発表された。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

2017年の音楽の売上の43%、ストリーミングが再び音楽産業を成長路線に戻した

音楽産業に関する新しい報告書によると、ストリーミングサービスとその会費収入が音楽ビジネスを救った。2017年までの3年連続で業界の売上が伸びたのも、デジタルミュージックの消費のおかげだ。録音音楽の2017年のグローバルの売上は174億ドルで、2016年は160億ドルだったから8%の増だ。これには増加率39%で売上74億ドル(上記174億ドルの43%)のストリーミングの貢献が大きい。

ダウンロードや物理的アルバムなど古い形は7億8300万ドル減ったが、上記の成長ぶりはこれを補ってあまりある。

アメリカだけに限れば、昨年のデジタルの売上は15%増の65億ドルで、前年の56億5000万ドルから増加した。この売上の大半がストリーミングの会費収入で、2016年の25億ドルから2017年の40億ドルへ63%増加した。〔端数を含めると63%、という意味だろう。〕

アメリカは今や、ストリーミングの最大の市場であり、全世界の録音音楽の売上の40%を占める。アメリカの音楽サービスはイノベーションと多様化が進んでいるので、この報告書は2025年の有料会員数が今の4910万の倍近い9010万人になる、と予測している。

この報告書は、メディアとテクノロジーの分析企業MIDiA Researchと、デジタルメディアの業界団体DiMAの共作だ。

デジタル音楽はその売上額のほかに、音楽消費の形を変えたことの貢献度も大きい。

たとえばストリーミングサービスは利用が簡単なので、海賊行為は2013年に比べて50%以上減少した。また多くの人が、音楽の新しいジャンルやアーチストたちを、積極的に発見するようになった、と同報告書は言っている。挙げられている顕著な例は、Chance the Rapperが初めてストリーミングだけでグラミー賞を取り、YouTube上の音楽のトップテンの内6つがスペイン語であることだ。“Despacito”のようなヒット曲は、97日で視聴回数10億に達した。

ストリーミングによって生まれたもうひとつの大きな変化は、プレイリストの強大化だ。アンケートによれば、今や消費者の54%が、アルバムではなくプレイリストで音楽を聴いている。

2016年に比べて14億ドル売上が伸びたことによって、2017年のグローバルの総売上174億ドルは、2008年の177億ドルに接近した。過去10年間に見られた減少傾向が止まり、業界は再び成長モードに入ったようだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

2018年に中国のスマホ使用時間はテレビを超える(eMarketer予測)

2018年は、中国でスマートフォンの使用時間がテレビの視聴時間を超える年になる。すべてはデジタルビデオプラットフォームの成長による。eMarketerの最新レポートが伝えた。

世界最大のスマートフォン市場である中国では、すでに起きていたと思われてもしかたがないが、 eMarketer は、まもなくその歴史的瞬間が来ると予測する。

レポートによると、今年中国の平均的成人は1日あたり2時間39分モバイル機器を利用すると予想されている。これは2017年より11.1%多い。一方テレビの視聴時間は2%減の2時間32分だ。

デジタルビデオサービスの成長がこの変化の「主要な促進力」だとeMarketerは言う。同社は成人の1日あたりのオンラインビデオ利用時間は前年より26%増えて58分になると予測している。また2020年には中国の成人は自由時間の1/3をビデオ視聴に費やすとも予測している。

中国におけるデジタルメディアの勢いを示す兆候はこれまでにも見られており、同国のトップ企業が揃って相当額の資金を有力プレーヤーに注ぎ込んでいる。

Alibabaは2015年にYoukuを買収し、このYouTubeに似たサービスを46億ドルと評価した。一方、ライバルのTencentには独自サービスの “Tencent Video” があり、Baidu —— 中国の伝統的三大IT企業の残る一つ —— はビデオサービスのiQiyiを育て今年はじめに米国で上場を果たし15億ドルを調達した。3つのストリーミングプラットフォームはいずれもユーザー生成ビデオと制作作品シリーズの両方を提供しており、後者の一部はNetflixから供給されている

この三社以外に、Bilibili(米国でつい最近上場した)などのアニメーションプラットフォームやTencent-backed Kuaishouをはじめとするライブビデオプラットフォーム、さらにはeスポーツ専門で、今年はじめにGoogleから投資を受けたChushouなど、分野を絞ったバーティカル・ビデオサービスも出てきている。

ビデオは大きな促進要素に違いないが、中国人をスマホに縛りつけている唯一の理由ではもちろんない。チャットアプリのWeChat は中国全体でもっとも定着しているモバイルアプリだ。同社によるとアクティブユーザーは9億人以上で、毎日380億件のメッセージと2億500万件の通話が飛び交っている。

WeChatにはオフライン支払いの機能もあり、これも中国の新しい重要なスマートフォンの使い方になっている。WeChat Payのほかに、AlibabaAlipayは、5億2000万人のユーザーがカードや現金の代りに同サービスを使って商品を購入していると言っている。

AliPayの親会社であるAnt Financial新たに90億ドルの資金を調達し、会社評価額は1500億ドルにも及んだと言われている。

@sirstevenの情報に感謝。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Netflixがモバイル上で30秒のプレビュービデオを開始、まずiOSから

NetflixはSnapchatや、Instagramのストーリーなどに倣って、モバイルのビューワー(視聴者)のために30秒のプレビュービデオの提供を開始した。

そのプレビューはInstagram Storiesととてもよく似ていて、複数のサムネイルが循環するし、コンテンツは仮想ビデオで再生される。つまり、スマートフォンを手に持ったままでよい。それに加えて、スライドショウ的にスワイプやタップで次のビデオへスキップでき、いちいちメインのスクリーンに戻る必要がない。おもしろいと思ったプレビューは、ボタン一つでリストに保存でき、あとで見られる。

この機能はNetflixのiOSアプリで今日から使えるが、Androidにやってくるのは“もうすぐ”だそうだ。

これは、待望の機能である。NetflixはプレビューをWeb上同社のTVアプリで開始し、今回の機能でやっと、スマートフォンからコンテンツを見つけて見ることができるようになった。

同社のブログ記事はこう説明している: “何年もテストした結果、プレビューがあれば試視聴も少なくなり、新しいコンテンツを早く見つけられることが分かった。今回モバイルのプレビューをローンチしたことにより、スマートフォンでビデオの試し見がもっと楽しくモバイルに合った形でできるようになった”。

Netflixは最近好調で、会員増により時価総額は1500億ドルに接近している。

2018年の第一四半期に新たに増えた会員は741万人である。そのうち約200万がアメリカで、次の四半期にはさらに620万の新会員が加わる、と同社は予想している。そうなれば、同社の総顧客数は1億1900万に近づき、2年前から行っている国際展開の効果が出てきた、と言えそうだ。

同社のストリーミングサービスは売上も継続的に伸びていて、Q1の売上36億ドルは前年同期比で約43%の増加だ。

画像クレジット: Netflix(画像は修正加工された)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ゴールは“起業家を増やすこと”——スタートアップメディアの「THE BRIDGE」がPR TIMES傘下に

PR TIMES代表取締役の山口拓己氏(左)、THE BRIDGE取締役・共同創業者の平野武士氏(右)

TechCrunchがシリコンバレーで産声を上げたのは2005年のこと。翌年にはその日本版であるTechCrunch Japan(当時のサイト名はTechCrunch Japanese)がスタートした。そこから12年、日本発でスタートアップの情報を伝えるメディアやブログが徐々に立ち上がっていった(そして、いくつかは消えていった)。そんなスタートアップ向けメディアの1つである「THE BRIDGE」のイグジットに関するニュースが飛び込んできた。

プレスリリース配信事業などを手がけるPR TIMESは4月19日、THE BRIDGEの運営元である株式会社THE BRIDGEからメディア事業を譲受したことをあきらかにした。譲受に関する金額は非公開となっている。なお今後もTHE BRIDGE取締役・共同創業者でブロガーの平野武士氏が中心となってメディアや有料コミュニティの運営を継続。加えてPR TIMES内の編集部にてニュースの執筆なども準備する。一方、THE BRIDGEが開催する仮想通貨をテーマにしたイベント「THE COIN」については、平野氏が個人で運営する予定だという。

THE BRIDGEは2010年の設立(当時の社名はbootupAsia、2013年に社名変更)。エンジェル投資家などから支援を受けていたが、2016年1月にはフジ・スタートアップ・ベンチャーズおよびPR TIMESから資金を調達した。これに先駆けるかたちで2015年2月には、PR TIMESに掲載するスタートアップ(創業7年以内)のプレスリリースの転載を実施。それと前後してPR TIMESが同社のイベント協賛を行うなど、連携を進めてきたという。

なお先に開示しておくと、僕は前職のメディア「CNET Japan」において、THE BRIDGE設立以前の平野氏と契約して1年以上に渡って共同でスタートアップの取材を行っていた関係がある。さらにさかのぼれば、平野氏は立ち上げたばかりのTechCrunch Japanでライター等として活躍。現在はビジネス上の関係はないが、一時は運営元の変更で閉鎖の可能性もあったTechCrunch Japanを支えてきた人物でもある(TechCrunch Japanのこれまでについてはこの記事も参照して欲しい)。また同時に、PR TIMESは僕らが毎年開催してきたスタートアップ向けイベント「TechCrunch Tokyo」のスポンサードをしてくれている企業の1社でもある。

スタートアップのエコシステムとともに成長

THE BRIDGEには当然広告枠もあるが、主な収益源となっているのは、イベントや大企業とスタートアップを結び付けるマッチング・勉強会を軸にした会員制の有料コミュニティだ。「とにかくインプレッション、ユニークユーザー、ページビューといった指標で記事を書く場合、どうしても扇動的な内容やゴシップ、激しいものが必要になってくる。一方でスタートアップの情報は地味。誰も知らない起業家の突拍子もないアイデアや情報を書くので。広告、課金というインターネットのビジネスモデルに当てはめたときに、課金や積み上げのモデルを探したかった」(平野氏)。

また、コンテンツ課金についても考えたが、「誰もが情報発信ができる時代では、コンテンツの価格は限りなくゼロになってくる。それでお金を払ってもらうというのはどうしても信じられなかった」として、ビジネスを模索する中でリリースワイヤー、つまりプレスリリース配信サービスのモデルに興味を持ち、以前からスタートアップコミュニティに積極的にアプローチしていたPR TIMESと関係を深めていったと語る。

一方のPR TIMESは、THE BRIDGEへの資本参加より以前の2015年1月から、特定条件を満たした創業2年以内のスタートアップのプレスリリースを月間1本無料にする「スタートアップチャレンジ」といった取り組みも行ってスタートアップとの関係性を強めてきた。2018年2月末時点では、累計約3200社のスタートアップ(創業2年以内と定義)がサービスを利用している。PR TIMESの利用企業社数は累計2万2000社。スタートアップの割合は決して小さいものではない。

PR TIMES代表取締役の山口拓己氏は、今回の事業譲受にも至ったこれらの取り組みについて、「スタートアップのお客さんを増やして行きたいと思っていたものの、一方でメディアは非常に少ない。生産量も少ない。ニーズはあるが生産者に届くものは少ないので(スタートアップを取り扱うメディアとの)関係を含めたいと考えていた」「PR TIMESが始まった2007年は、PRと言えば大企業のものがほとんどだった。それはメディアが、(メディアの)枠が、尺が限られている中では大企業や社会的役割が大きいところが中心だったから。一方で我々は裾野を広げようと思った。中小企業からスタートアップ、最近では地方まで広げている。その課程の中でスタートアップの人にリリースを活用頂きたいと考えていた。その中でスタートアップチャレンジを始めたり、THE BRIDGEと資本業務提携を進めたりしてきた」と説明する。

スタートアップのプレスリリース配信件数がこの数年で増えているというのは僕も感覚的には理解していたし、そのリリースの種類についてもプロダクトローンチから資金調達、提携、上場と幅広くなっているとは思っていた。実際、山口氏の話では、2017年に上場した90社中40社は上場時にPR TIMESでプレスリリースを配信していたのだそうだ。「 自分たちがスタートアップをけん引したのではない。スタートアップのエコシステムが広がった結果としてこの数年で会社も伸びてきた。 そのエコシステムを作っているのは『参加者』だ。メディアもそうだし、起業家、投資家も増えた。大企業とのコラボレーションも広がった。その核となるメディアに協賛や業務資本提携をしてきたことで、スタートアップのエコシステムの広がりとともに私たちの事業も広がった」(山口氏)

起業家は人をエンパワーする

少し余談になるのだが、日本のオンラインメディアで「ベンチャー(もしくはVB、Venture Business。これは和製英語だという説も)」から「スタートアップ(動詞、名詞として)」という言葉に変わっていったのは、ざっくりした肌感では2009年から2010年頃のことだったと思う(翻訳記事は除く)。そういう意味では平野氏や僕らは国内で「スタートアップ」のニュースに関わった初期の人間かも知れない。

そんな国内のスタートアップの環境の変化について、平野氏は2010年にスタートしたシードアクセラレーションプログラム「Open Network Lab」の存在が1つのターニングポイントになったのではないかと振り返る。「それまであったインキュベーションではなく、3カ月といった期間でスタートアップを生み出すようなプログラムが2008年頃に米国で起こり、それを日本に持ってきたところから環境が変わっていった」「イベントにしても、これまでは登壇者が並んで、話を聞いて、名刺交換をして帰るという、『行くこと』が目的だった。一方で(西海岸を中心に)『ミートアップ』と呼ばれる起業家と投資家が会って、エコシステムを作るための場所ができはじめた。そういうモノをやりたいというのが自身の最初のアクションだった」(平野氏)

そんな平野氏は、メディアの“中の人”から起業家として自らメディアを立ち上げるに至った経緯についてこう語る。

「一番最初はコンプレックスからスタートした。(TechCrunchに関わり始めたのは)30歳になった当時で、米国に行ったこともないし英語もできない。毎日面倒くさくて、給料をもらえればそれでいいくらいだった。でも記事を見ると、シリコンバレーには無茶苦茶なことをやっている起業家達がいた。YouTubeだって違法アップロードが当たり前だし、Napsterのようなサービスもあった。彼らを見て、自分はどう生きていくか考えて、『元気にやっていこう』と気付かされた。自分がそれで元気になれたのだから、もっと色んな人が元気になれるんじゃないかと思った。 起業家は人をエンパワーする力を持っている。 リスクだらけだし、金を借りて出ていくだけかも知れない。人からは怒られるし、詐欺師だとまで言う人がいるかも知れない。ネガティブな話ばかりだ。それでも進んでいって、最後にはみんなを幸せにする人が出てきた。この界隈は本当の詐欺師のような人もいるので、『この人はいい人だ』と伝えていくことにしても、情報を出す意味もある」

「自分で記事を書き始めてむずがゆいところがあった。 取材空いては全員が創業者。何かをやって実績がある人ばかり。だから聞けないことも多かった。じゃあ自分もやってみよう。 そうすれば少なくとも『金に苦労した』ということだって話せると思った。そういうことから同じ年代の起業家と話が聞けるようになると思った」

ゴールは「起業家を増やす」

冒頭にあるとおりだが、PR TIMESは今後、THE BRIDGEのメディアを中心にしつつ、イベントやコミュニティ形成を強化するとしている。またスタートアップに限らず、幅広い層に対してプレスリリースという手段で自身の行動を発信するための施策を展開していくとしている。

また平野氏はTHE BRIDGEのゴールについて「起業家を増やすこと」と語る。「それに取り組んできた10年だし、だからこそ自身で起業もやった。日本でメルカリみたいな規模の会社をもっと作れるはずなのに、なぜ見つからないのだろう。 例えば渋谷には人がたくさん歩いているが、彼らが起業したらどうなるだろうか。でもそんな選択肢を考えるには情報が足りない。大学を出て、いい会社に入って……と思う人はたくさんいるから。ニッチな情報を出すメリットを伝えないといけない」

「今は情報を出す側の人間も圧倒的に少ない。また、今は起業家と投資家を見ると今は投資家のほうが強い。そうなると、どの起業家にどのビジネスをさせると成功するかというのが分かるようになってしまった。ある意味ではリスクを取らなくなってしまった。そういう人達の情報を出すにはPR TIMESなども活用していけばいいと思う。一方でスマートフォンシフトのような大きな波が暗号通貨やブロックチェーンのまわりで起こっているが、情報が足りない。何が正しいのか、誰が悪いのか、そういう情報も分からない。だから情報を出す側も勉強しないといけないし、企業も学ばないといけない。この大きなパラダイムシフトを理解して情報を出すメディアを作らないといけない」(平野氏)

 

広告をブロックするブラウザーBraveがDow Jones Media Groupとパートナーしてブロックチェーンを実験

Mozillaの前のCEOだったBrendan Eichが始めた広告をブロックするWebブラウザーBraveに、少なくとも一社の、大手ニュース発行者が味方についたようだ。

Brave Softwareと、Dow Jonesのメディア部門Dow Jones Media Groupが今日発表したパートナーシップにより、Media Groupのコンテンツ、具体的にはBarrons.comや有料のニューズレターMarketWatchへのフルアクセスが、Braveブラウザーをダウンロードしたユーザーの一定数に、早いもの勝ちで提供される。

さらに、Barron’sとMarketWatchは、BraveのBasic Attention Token(BAT)プラットホーム上の公認パブリッシャーになる。それは、消費者と、最終的には広告主たちがパブリッシャーに支払うための、ブロックチェーンを使ったシステムだ(Braveは昨年、ICOで大成功を収めた)。

そして両社は、メディアや広告の業界におけるブロックチェーンのさまざまな有効利用について今後実験を重ねていく。

Barron’sのSVP Daniel Bernardが、発表声明で述べている: “グローバルなデジタルパブリッシャーとして弊社は、高品質な顧客体験の構築に利用できる新しいテクノロジーを継続的に探求していくことが重要、と信じている”。

なお、パートナーシップの相手はDow Jones Media Groupであり、The Wall Street Journalなどを発行しているより大きなDow Jones本体*ではない。また両社の発言からは、実験が今回のパートナーシップの主な目的であることが伺われる。〔*: さらにそのオーナー企業がNews Corp.〕

でも、パブリッシャーたちはこれまでもっぱら、ブラウザーの広告ブロック機能を痛烈に批判してきたのだから、今回の動きは劇的な変化だ。たとえば2年前には、WSJ紙を含む新聞発行者のグループが、Braveのビジネスは“われわれのコンテンツを盗んでWebサイト上に載せることと同じだ”、とする書簡を発表した

Braveはまた、最近発表したリフェラルプログラム(referral program, 紹介制度)により、ファンをBraveブラウザーに切り替えさせたクリエイターに報奨としてBATを提供している。その発表声明の中では、当ブラウザーの月間アクティブユーザーが200万、と言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

今度のGoogle Chromeでは自動再生ビデオの音声をカットできる

Google Chromeのユーザーに良いニュース。全世界で人気最高のこのブラウザーの最新のアップデートでは、音声の自動再生を無効にできる。サイトを開くと広告のビデオが勝手に再生されて、音がガンガン鳴る、なんてことは、ユーザーがそれを有効にしないかぎり、今後はない。

迷惑なだけでなく、自動再生ビデオはデータを大食いし、Webの閲覧そのものを遅くする。モバイルデバイスでは、たいへん困ることだ(データ契約でインターネットに接続してる場合)。

このアップデートは、数日後にユーザーに行き渡る。この機能の開発は昨年から行われていた。機能には、例外が少々ある。

まず、自動再生は、サイト自体が音を含んでいないときだけ許される。あるいはユーザーが、そのメディアに関心があるときには音があっても許される。過去にそのサイトに頻繁に訪れているときは、関心があると判断される。そのサイトのページの上でタップやクリックを頻繁にやったり、モバイルではそのサイトをホーム画面に載せているときも、関心あり、と判断される。

Chromeのこの最新バージョンを最初に見つけたVentureBeatによると、YouTubeはあまりにもビデオの数が多いので、関心ありを単純には判断できないそうだ。

しかしそれでも、今度のChromeはコントロールの粒度が細かくなり、特定のWebサイトだけビデオの自動再生を恒久的にブロックすることもできる。だからYouTubeでもどこでも、オーディオの勝手な自動再生をやらせないことができるのだ。

画像クレジット: AFP

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YouTube TVがFirefoxに対応、しかしまだ割高感が

YouTube TVが、Googleが作ったのではないブラウザーでも見られるようになる。

これまでChromeに閉じ込められていたこのライブTVサービスが、今ではFirefoxで動いているYourTechExplainedが最初に見つけたこの事態はしかし、衝撃的とは言えない。Googleは、ほかのブラウザーもサポートすると約束していたし、その約束が守られたのは良いことだ。SafariやEdgeしか使わない人は、気の毒だけど。

この月額40ドルのストリーミングサービスで視聴と録画ができるのは、NBA TV, MLB Network, Comedy Central, MTV, そしてCNNだ。まだ割高感はあるが、今後もっと対応ネットワークと機能が増えれば、テレビの視聴でケーブルテレビ会社の支配を脱したいと願っている、いわゆるコードカッター(cord-cutters, ケーブルを切る人)たちも、徐々に買い気をそそられるかもしれない。

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Google、サブスクリプション型ニュースを立ち上げ――News Inisitativeに3億ドル投資

今日(米国時間3/20)、Googleは独自の総合的なニュースサービス、News Initiativeを発表した。CBO(最高ビジネス責任者)のPhillipp Schindlerによれば、「Googleのニュースに関する取り組みをジャーナリズムの世界と結びつける」努力だという。

GoogleによればNews Initiativeはクオリティー・ジャーナリズムの強化、長期にわたって維持可能なビジネスモデルの確立、最新のテクノロジーによるニュースルームのイノベーションという3つの幅広い目標を目指すという。またGoogleは向こう3年間に各種のジャーナリズム関連のプロジェクトに3億ドルを投資することを明らかにした。

ニューヨークで開かれたプレスイベントでジャーリストを含む聴衆に対し、Schindlerは「Googleのビジネスは、その本質からして、われわれの目指す使命と結び付けられている。これは大企業にありがちな修辞と聞こえるかもしれないがそうではない」と述べた。もう少し直截に表現すれば、ニュースメディアはGoogleその他のインターネット・プラットフォームを友好的な目では見ていない。その理由は、Googleなどがオンライン広告ビジネスで圧倒的な地位にあるだけでなく、あからさまなフェイクニュースを別にしても、センセーショナルで内容に疑問の多い情報の拡散に大きな役割を果たしていると考えるからだ。

しかしSchindlerによれば、Googleがクオリティー・ジャーナリズムをサポートすることには「2つの面から明確なビジネス上の動機がある」という。

「第一に、Google検索はその本質からして、開かれたウェブとその情報への開かれたアクセスをビジネスの前提とする。その情報は当然ながら高品質のものでなければならない。第二に、GoogleのDoubleClickの広告ビジネスはパブリッシャーに利益を分配するシステムであり、昨年だけでも126億ドルがパートナーのパブリッシャーに支払われている」という。

「経済的な関係ははっきりしている。ジャーナリズムが成長しなければGoogleの成長もない」と Schindlerは述べた。【略】

Google.orgのJacqueline Fullerによれば、たとえばMediaWiseプロジェクトはPoynter Institute、Stanford University、Local Media Associationと提携し、2年間に300万ドルを投じてティーンエージャーにおけるメディア・リテラシーを高めるキャンペーンを組織するという。

ビジネスモデルについては、Googleはユーザーがパートナーのニュースを簡単に有料購読できるSubscribe with Google〔アメリカではUSA Today、New York Times、Washington Postなど、日本では毎日新聞が参加〕というサービスを開始する。ユーザーはGoogleアカウントさえ持っていれば、ワンクリックでニュースを購読できる。以後そのサイトではログインや支払処理など煩わしい手間は一切発生しない。

GoogleはまたGoogle Analyticsに新たにNews Consumer Insightsと呼ばれるダッシュボードを作成し、パブリッシャーが購読者の実態を分析し、売上を伸ばすことに役立てられるようにする。

テクノロジー面ではAMP(Accelerated Mobile Pages)フォーマットの利用によりモバイルデバイスへの記事のロードが高速化される。新しいAMPフォーマットは従来のテキストから画像、ビデオ、アニメーションを多く含むページに拡大されている。また各ニュースメディアのジャーリストリスト向けにOutlineという独自のVPNを提供し、安全なインターネット接続を可能にする。【略】

写真:Jonathan Brady/PA Images via Getty Images

アップデート:: プレスイベントの最後で行われたQ&AセッションでSchindlerは「News InitiativeはGoogleのニュースに対する取り組みの方向を変更するものではなく、これまで各種の活動を行ってきたニュース関連プロジェクトにより多くのリソースを割り当て、活動を支援することが目的だ。プロジェクトは最終的に[CEOのスンダル・ピチャイ]自身が指揮する。彼はこのことについて深い関心を寄せきた」と述べた。

SchindlerはまたGoogleは各種のパブリッシャーと協力して3億ドルの資金の使途を決定すると述べた。ただしこの新たなイニシアチブはビジネスモデルとしてもテクノロジーとしてもまずGoogleを益すると付け加えた。

Googleのニュース事業のバイスプレジデント、Richard GingrasはSubscribe with Googleというサブスクリプション(有料購読)モデルについてもう少し補足した。それによれば、パブリッシャーは購読者とメールを通じて独自に会話を行うことができるという。

Googleとパブリッシャーの間で購読料がどのような割合で分配されるのかについてGingrasは明確にするのを避けたが、「〔パブリッシャーにとって〕きわめて有利な条件だ」と述べた。Googleは処理のコストをカバーする最小限のみ受け取るという。「われわれの目標はこれによって利益を上げることではない」という。

Gingrasによれば、Googleは将来各種のプロダクトにサブスクリプション・モデルを拡大していくという。

「このNews Iisitativeは将来のGoogleのサブスクリプション・モデルの基礎となる。サブスクリプションに各種のプロダクトをバンドルしていくのはきわめて合理的なビジネスモデルだ」とGingrasは述べた。

〔日本版〕Google News Labのページが日本語でニュースイニシアチブについて説明し、報道機関からの問い合わせを受け付けている。GOOGLE NEWS INITIATIVEには毎日新聞を含め世界の主要なニュース・パートナーを示した地図が掲載されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

「フェイクニュース」拡散の原因はボットではなく人間だった――MITが発表

嘘の伝わる速さは何世紀にも渡って語り継がれており、1710年の時点で既にジョナサン・スウィフト(『ガリヴァー旅行記』の著者)が「まず嘘が広まり、真実はその後をノロノロとついていくものだ」という言葉を残しているほどだ。そうはいっても、このような事実を示す証拠というのはこれまでほとんど存在しなかった。しかし、ここ数年のソーシャルメディアの様子を見ると、嘘が真実に大きな差をつけながら信じられないほどの速さで広がっており、もはやそれが当然のようにも感じられる。

そしてこの度、MITが10年分ものツイートを分析した結果、嘘が真実よりも速く広まるだけでなく、ボットやネットワーク効果がその原因とは言い切れない――つまり、私たち人間が嘘を広めている――ということがわかったのだ。

3月9日、Scienceで発表された同研究では、ツイッター上で拡散された(もしくは拡散されなかった)10万件以上のニュース(第三者機関によって虚偽のニュースかどうかが判別されているもの)がどのように伝播していったかに焦点があてられている。結果はレポートの要旨(Abstract)に記されている通り、「どのカテゴリーにおいても、嘘は真実よりも遠く、早く、深く、広範囲に広がっていった」。

Image: Bryce Durbin/TechCrunch

この結果を見て、ロシアや時系列に並んでいないニュースフィード、選挙などを槍玉に挙げるのは早計だ。というのも、虚偽のニュース(政治的な意図をはらんだ、いわゆる「フェイクニュース」と区別するためにあえてこの言葉を使用する)がこんなにも速く拡散する背景には、私たち人間が存在するからだ。

「嘘が真実よりも広まりやすいのは、人間が正しい情報よりも虚偽のニュースをリツイートしやすいからだということを調査結果は強く示している」と同レポートの共同著者Sinan Aralは語る。

その一方で、彼は次のように注意を促す。

「もちろん、人の頭の中に入り込んで、何らかの情報を消費したり、リツイートしたりする過程を調査したわけではないので、本研究ではまだ問題の深層部にはたどり着けていない。そもそも、どのように虚偽のニュースがネット上で拡散するかについての大規模な調査はほとんど行われていないため、まだまだ継続的な努力が必要だ」

とは言うものの、「人間は虚偽のニュースを拡散しがちだ」というMITの研究結果からは、極めてストレートかつ強烈な印象を受ける。

残念ながら、人間はアルゴリズムや価格モデルのようにアップデートできるものでなければ、報道機関のように無視できるものでもないため、この結果にはある種の歯がゆさも感じる。というのも、レポート内でも指摘されているように、明確な解決策など存在しないのだ。だからといって、問題から目を背けるべきではない。

10年分のツイートを解析

MITの研究プロセスは次の通り。なお、共同著者の1人であるSoroush Vosoughiによれば、「フェイクニュース」に関する騒ぎが起きるずっと前から同研究は進められていたようだ。

まず研究チームは、2006〜2017年の間に公開された何百万件ものツイートを集め、6つのファクトチェッカー(Snopes、PolitiFact、FactCheck.org、Truth or Fiction、Hoax Slayer、About.com)の少なくともいずれかひとつで真偽判定が行われた12万6000件のニュースと関連があるかどうかを調査。その結果に応じてツイートを分類していった。

その後、ツイート・リツイート数、一定のエンゲージメント数に達するまでの時間、情報元となるアカウントから見たリーチ範囲といった指標をもとに、各ニュースがどのように広がっていったかを観察。

最終的に、各指標をもとに「滝」のようなグラフが生成された。例えば、急激に拡散された後、すぐに話題から消え去ってしまった情報は、横の広がり(=拡散度合い)はあるものの、深さ(おおもとのツイートから何層にわたってリツイートされたか)はほとんどなく、バイラル性も低い。

そして虚偽のニュースと真実の「滝」を比較したところ、少数の例外を除いて、虚偽のニュースの方がより多くの人に、より速く広まり、何層にも渡ってリツイートされていることがわかった。

しかもこれは数%といったレベルの差ではない。具体的な数値については以下を参照してほしい。

  • 真実は1000人以上にリーチすることさえめったにない一方で、虚偽のニュースのうち拡散度合いで上位1%にあたるものは、ほぼ常に1000〜10万人もの人びとにリーチしていた。
  • 真実が1500人にリーチするには、嘘よりも6倍近い時間がかかる。
  • 虚偽のニュースは広範に拡散し、グラフのどの箇所においてもリツイート数で真実を上回っていた。
  • 政治に関する虚偽のニュースはすぐに何層にもわたってリツイートされ、結果的に他のカテゴリーの虚偽のニュースが1万人にリーチするよりも3倍近い速度で2万人以上ものユーザーにリーチした。

以上の通り、どの角度から見ても虚偽のニュースの方が真実よりも何倍、もしくは何乗も速く、多くの人にリーチするということがわかった。

反対意見

上記の研究結果の考察や、研究者が考える解決策、将来の研究アイディアについて触れる前に、想定される反対意見について考えてみよう。

ボットが原因なのでは? 結論から言うとボットの影響はほぼない。研究者はボットを検出するアルゴリズムを使って、明らかにボットによると思われるツイートは事前に取り除いていた。また、ボットの行動パターンを別途精査し、収集したデータをボット有のパターンとボット無のパターンでテストしたが、先述の傾向に変化は見られなかったのだ。この点についてVosoughiは「ボットもわずかに真実より虚偽のニュースを広めやすいということがわかったが、我々の結論に影響を及ぼすほどではなかった。つまり拡散度合いの差はボットでは説明がつかない」と話す。

「虚偽のニュースの拡散にはボットが深く関係している、という最近よく耳にする説とは真逆の結果が研究から明らかになった。これはボットの影響を否定するものではないが、少なくともボットを嘘拡散の原動力と呼ぶことはできない」とAralもVosoughiに賛同する。

ファクトチェックサイトにバイアスがかかっているのでは? 確かにまったくバイアスがかかっていないファクトチェッカーというのは存在し得ないが、研究者が参照した6つのサイトに関し、ある情報が真実かどうかの判定は95%以上の割合で共通している。客観性や証拠を重視するこれらのサイトすべてに共通のバイアスがかかっていると考えるのは、もはや陰謀論の域とさえ言えるだろう。それでも納得できない人は次のAralのコメントを参照してほしい。

「ファクトチェッカーを含め、研究対象に選択バイアスが生じないよう私たちは細心の注意を払っていた。その証拠に、メインの研究とは別に1万3000件のニュースから構成されるもうひとつの対照群について独自に真偽を確認し、そのデータを分析したところ、ほぼ同じような結果が得られた」

このファクトチェックはMITの学部生3名が行ったもので、判定結果は90%以上の割合で共通していた。

虚偽のニュースの拡散には大規模なネットワークが関係しているのでは? レポートによれば、現実はその逆のようだ。

ネットワークの構造や各ユーザーの特徴から虚偽の情報が拡散しやすい背景を説明できるのでは、と考える人もいるかもしれない。つまり、虚偽の情報を広める人ほどフォロー数やフォロワー数、ツイート数が多く、認証バッジを取得している人や昔からTwitterを利用している人の割合も多いのではないかという説だ。しかし嘘と真実の拡散具合を比べると、実はその逆が正しいということがわかった。

虚偽のニュースを広めやすいユーザーの特徴は以下の通り。

  • フォロワー数が少ない
  • フォロー数が少ない
  • ツイートの頻度が低い
  • 認証ユーザーの割合は少ない
  • アカウントの保有期間が短い

「このような特徴が見られたにもかかわらず、虚偽のニュースがより速く、広く拡散した」と研究者は記している。

なぜ虚偽のニュースの方が速く拡散するのか?

この問いに対する答えは憶測でしかないが、少なくとも同研究に携わったMITの研究者の「憶測」は、データに支えられたものであるという事実は無碍にできない。さらに、嘘の大規模な拡散は最近見られるようになった現象で、十分に研究されていないとはいえ、幸運なことに社会学や心理学からはいくばくかの示唆が得られる。

「コミュニケーション学の分野では、特定のニュースが拡散する理由について、既に包括的な研究が行われている」と3人目の共同著者Deb Royは言う。「人はポジティブなニュースよりもネガティブなニュース、平和なニュースよりもショッキングなニュースを広めやすい傾向にあるというのは既によく知られているのだ」。

もしも本当に人が目新しくて(Royいわく「目新しさこそが最重要要素」)ネガティブ(「血が流れればトップニュースになる」現象)なニュースを広めやすいとすれば、残された疑問は虚偽のニュースが真実よりも目新しく、ネガティブかどうかという点だけだ。

Photo: SuperStock/Getty Images

そこでMITの研究者は、一部のユーザーのアクティビティを分析し、虚偽の情報が含まれるツイートと真実しか含まれていないツイートの目新しさを比較した。すると確かに、「目新しさに関するどんな指標と照らし合わせても、虚偽のニュースが真実を上回る」ということがわかったのだ。

また、ツイート内で使われた言葉や関連する感情に注目したところ、虚偽のニュースには驚きや不快感を示すリプライがついていた一方、正しい情報へのリプライには悲しみや期待感、喜びや信頼といった感情が込められていることが多いとわかった。

まだまだ多くの検証が必要とはいえ、本研究からは虚偽のニュースは真実よりも速く拡散し、前者は後者よりも目新しく、ネガティブだという結論が導き出された。あとは「目新しくてネガティブだからこそ虚偽の情報は速く拡散する」という両者の因果関係を証明するような研究の発表が待たれる。

私たちには何ができるのか?

本研究で示された通り、虚偽のニュースを人間が広めているとすれば、それを防ぐためにどうすればよいのだろうか? 冒頭のジョナサン・スウィフトの言葉通り、これは決して最近生まれたものではなく、人びとはこれまで何世紀にも渡ってこの問題に対して何らかの策を講じようとしてきた。しいて言えば、問題のスケールには違いがあるかもしれない。

「何百万人――複数のプラットフォームをまとめると何十億人――もの人びとが、リアルタイムでニュースの拡散度合いに影響を及ぼすというのは、これまでなかったことだ」とRoyは言う。「ネットワークで繋がった人びとの行動についてのみならず、それがニュースや情報の伝播にどのような影響を与えるのかという点についてはさらなる研究が必要だ」。

さらにRoyはこの問題を人間の健康状態のように捉えている。実はJack Dorsey(Twitterの共同創業者でCEO)も、Royが設立した非営利組織Corticoのブログポストを引用元として、同様の比喩を用いた以下のツイートを投稿していた。

我々はコミュニティー全体の健康状態やオープンさ、さらにはプラットフォーム上で交わされる会話のマナーの向上に努めるとともに、その進捗に責任を負うと約束する。

またRoyをはじめとする研究者たちは、TwitterはもちろんFacebookやInstagram、オンライン掲示板といったプラットフォーム向けの「健康診断機」の開発にあたっている。しかしRoyは、これらのプラットフォームは氷山の一角に過ぎず、インターネット全体の「体調」を向上するにはさらなる努力が必要だと指摘する。

この点に関し、Aralは経済的な活動を例に挙げ、「ソーシャルメディア上での広告活動が虚偽のニュースを拡散するインセンティブとなっている。というのも、広告主にとってはビュー数がもっとも大事な指標だからだ」と語る。つまり虚偽のニュースを減らせば広告料も減ってしまうため、プラットフォームの健全化に向けたインセンティブが生まれにくいということだ。

「短期的には虚偽のニュースの拡散を止めることで金銭的なデメリットが発生するが、だからといって野放しにしておくと長期的な問題が発生してしまう。例えば、あるプラットフォームが虚偽のニュースや不適切な会話で埋め尽くされてしまうと、ユーザーはそのプラットフォームを一切使わなくなってしまうかもしれない。そういう意味では、FacebookやTwitterには、長期的な利益を確保するためにこの問題に取り組むインセンティブがあると考えている」(Aral)

しかし問題の根幹に人間だけでなく、アルゴリズムや広告料も関係しているとするならば、どうすればよいのだろうか?

「大事なのは、ユーザーの手を一旦止め、自分たちの行動がどんな影響を持ちうるか考えさせることなのだが、行動経済学の世界でもよく知られている通り、これはとんでもなく難しいことだ」とRoyは言う。だが、もしもそのプロセスが簡単かつどこにでも導入できるとすればどうだろうか?

「スーパーへ買い物に行くときのことを考えてみてほしい。すべての食べ物には、製造工程や製造・販売元、ナッツが含まれているかといった情報を記したラベルが貼り付けられている。しかし情報にはそんなラベルは存在しない。『この会社は虚偽の情報を発信することが多いのか?』『このメディアは3つの独立した情報源と照らし合わせて真偽を判定しているのか(それとも1つだけか)?』『何人がこの報道に関わっているのか?』といった問いに対する答えはニュースには含まれておらず、私たち消費者はただメディアが提示する情報を消費するしかないのだ」(Aral)

さらにAralは、ある情報がTwitter上で拡散する前にその信頼性を測定できるようなアルゴリズムをVosoughiが考案したと語った(Vosoughi本人は謙遜からか、ただ忘れていたのか、取材時にはこの点について触れなかった)。ではなぜFacebookやGoogleのように、膨大なデータや機械学習・言語に関する知見を持ち、プラットフォーム上の情報や活動、エンゲージメント、さらにはサイト全体に関してさまざまな変革を経てきた企業が、Vosoughiのような取り組みを行わないのかという点については疑問が残る。

この問題について、議論は活発に行われているが、なかなかそれが具体的なアクションには繋がっていないようだ。さらにRoyは、TwitterやFacebookといったサイトからは、特効薬のような解決策は生まれないだろうと釘を刺す。

「ソーシャルメディアを運営するためには、さまざまな点に注意しなければいけない。プラットフォーム自体はもちろん極めて重要だが、それ以外にもコンテンツを作る人や広告主、インフルエンサー、そしてユーザーが存在する。彼らの役割はそれぞれ異なるため、ポリシーの変更や新たなルール・ツールの導入による影響は、ステークホルダーによって変化する」

「それ自体は悪いことではない。というのも、そうであるからこそ私たちのような研究者がとやかく言えるのだから」

データセットについても同じことが言えるだろう。なお、本研究で使われたデータは(Twitterの同意のもと)公開される予定なので、誰でもMITの研究結果を確認したり、さらに考察を深めたりできる。

今後、本問題についてさらなる研究が行われることを期待したい。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Amazonの新規Prime会員のうち500万はビデオのオリジナルプログラムを見たい人だった

Amazonのオリジナルコンテンツへの取り組みは、少なくともPrimeの新会員を大きく増やしたことで、十分報われている。Primeは今や誰が見ても、このコマース巨人のメインの価値だ。Reutersが入手した文書によると、Primeビデオの、19の番組から成るトップのオリジナルプログラムは、2014年の終わりから昨年の初めまでの間のPrimeサービスの新規会員のなんと1/4を集めている。

その文書によると、Primeビデオのアメリカのオーディエンスは、オリジナルとライセンスコンテンツの両方を含めて、およそ2600万に達する。そして、そのプログラムを見たいがために入会したPrime会員はおよそ500万、そのうち115万はAmazonのThe Man in the High Castleシリーズが目当てだった。その製作費7200万ドルを新規会員獲得コストと考えると、Amazonの内部文書によると、年会費99ドルの新規会員の獲得に一人あたり63ドルのコストを要している。Amazonがオリジナルプログラムの編成に力を入れるのも、当然である。

でも、Primeの新規会員の登録動機がPrimeビデオの番組だった、とどうして言えるのか? 同社は、彼らの会員になってから最初のストリーミングが何であるかを調べ、また以下はぼくの想像だが、最初のとは言ってもその番組を見るためにあまり日にちや時間が経ったやつは、除外しているだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa